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公開:1942
監督:William Dieterle
地域:テネシー州
出演:Van Heflin、Ruth Hussey、Lionel Barrymore、Marjorie Main、Regis Toomeyほか
範疇:原作もの/伝記/アメリカ第17代大統領
私の評価 :☆
【Part 1】
映画的粉飾はされているものの、かなり事実に近い、アメリカ第17代大統領Andrew Johnson(アンドルー・ジョンスン、 1808-1875)の伝記。一介の洋服屋に過ぎなかった彼は次第に政治への道を辿り、南北戦争終了後、リンカーン大統領の二期目の副大統領に任命され、リンカーンが暗殺されて後自動的に大統領に昇格。しかし、彼の政治姿勢が同じ党内の憤激を買い大統領罷免の裁判を受けるという数奇の運命を辿ります。
1830年、テネシー州東部の町Greenville(グリーンヴィル)。鍛冶屋の裏庭に浮浪者然とした男Van Heflin(ヴァン・ヘフリン)演ずるAndrew Johnsonがやって来て水を飲む。ズボンの綻びに気付き、やおら針と糸を取り出して縫い出す。鍛冶屋の一家が出て来て、男の足の片方に足枷があるのを発見する。逃亡囚だ!しかし、鍛冶屋は親切で、やすりを手渡す。男は「タダで借りたくない。俺は洋服屋なので代りに縫い物をする」と云う。
Andrew Johnsonの正直さを気に入った鍛冶屋一家は、一軒の家で彼に町で唯一の洋服屋を開業させる。近所の女性Ruth Hussey(ルース・ハッセイ)がAndrew Johnsonに読み書きを教える。彼が何でも読めるようになった時、彼女は「独立宣言」を朗読させる。社会的意識に目覚めていた彼は「独立宣言」で実現されていない事柄に不満を云う。彼女は「それについて人々の前で議論しなさい」と勧める。二人は結婚する。
彼の政治活動を好まない既存勢力はシェリフを使って脅す。演説会場でAndrew Johnsonとサポーターの鍛冶屋が殴られ、鍛冶屋は死ぬ。一家が復讐のため武器を取って出掛けようとするのをAndrew Johnsonが止める。「選挙で勝って、この中の誰かがシェリフになればいいのだ」と諭す。皆は彼がシェリフになるべきだと指名する。
30年後の1860年、Andrew Johnsonはシェリフ、市長、下院議員、州知事などを歴任し、今度は民主党上院議員に当選していた。折しも南北の摩擦は極限状況となり、Andrew Johnsonの「連邦は一つ。分離はいけない」との力説にもかかわらず、上院からは南部諸州の上院議員たちが離れて行く。一人残るテネシー州のAndrew Johnsonには南部議員たちから罵声が浴びせられる。
南北戦争が終わり、リンカーンは二期目の選挙戦において、共和党に鞍替えしたAndrew Johnsonを副大統領候補に指名した。選挙は勝利し、1865年3月、Andrew Johnsonは副大統領として宣誓する。腸チフスが治りきっていず、元気づけに呑んだウイスキーのせいで酔っ払い、史上稀に見る無残な宣誓式となった。
その6週間後、リンカーンは暗殺され、Andrew Johnsonは自動的に大統領に昇格した。1968年、Lionel Barrymore(ライオネル・バリモア)演ずるペンシルヴェイニア州選出の上院議員Thaddeus Stevens(サディアス・スティーヴンス)を初めとする急進的共和党員たちは、戦後、南部諸州から土地を没収しそれを黒人に分配すること、戦犯とも云える南部の軍人や政治家の活動停止…などを求めていたが、Andrew Johnsonの南部に甘いポリシーに憤激し、ついにアメリカ史上初の現職大統領罷免という裁判を起す騒ぎとなる…。
Van Heflinは後に'Shane'『シェーン』(1953)の農夫、'Airport'『大空港』(1970)の爆弾犯人などが有名ですが、それらのフランケンシュタインもどきの顔からは想像できない、若々しく颯爽とした人物になっています。映画会社がSpencer Tracey(スペンサー・トレイシィ)に次ぐ演技派として期待しただけあって、雄弁な政治家を見事に演じきっています。
彼を教育する女性が後に妻となり、大事な局面で常に夫をサポートする姿も印象的です。Ruth HusseyとVan Heflin二人の老けのメーキャップもよく出来ています。
Andrew Johnson罷免の中心人物Thaddeus Stevensを演ずるLionel Barrymoreも名演技。憎々しく、堂々たる政治家を熱演。この人物は日頃車椅子に乗っていますが、当時の国会議事堂は身体障害者向きに作られていなかったので、黒人二人が担ぐ輿に乗って入場します。Lionel BarrymoreはDrew Barrymore(ドリュー・バリモア)のお祖父さんの兄弟(大伯父)です。
'Friendly Persuasion' 『友情ある説得』(1956)の粗っぽい婆さん役が印象的だったMarjorie Main(マージョリー・メイン)は、ここでその原型のような芝居を見せています。
リンカーンは劇中の写真と、シルクハット越しの髭が見えるだけで、彼に扮した俳優は登場しません。紙芝居のように見えることを恐れたのでしょう。
監督William Dieterle(ウィリアム・ディターレ)はドイツ生まれで、いくつか伝記映画を手掛けた人。
(May 10, 2003)
Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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