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公開:1993
監督:Stephen Sommers
地域:ミズーリ州、ミシシッピ川一帯
出演:Elijah Wood、Courtney B. Vance、Robbie Coltrane、Jason Robards、Ron Perlmanほか
範疇:原作もの/少年と逃亡奴隷/川下り/ペテン師たち
私の評価 :☆☆
【Part 1】
Mark Twain(マーク・トウェイン)の'The Adventures of Huck Finn'『ハックルベリィ・フィン』の冒険の三度目の映画化。他の二本(1939、1960)は正式に"Huckleberry Finn"と表記しているのですが、これだけは"Huck Finn"(ハック・フィン)と短縮しています。日本では劇場未公開でヴィデオだけ販売されていますが、そのタイトルも「ハックフィン」と“中点”を省いて、ちと普通じゃない表記にしています。
この映画の監督Stephen Sommers(スティーヴン・ソマーズ)は1995年の映画'Tom and Huck'『トム・ソーヤーの大冒険』の脚本も書いていて、この'The Adventures of Huck Finn'では脚本・監督の二足のわらじです。Mark Twainの二つの代表作を一人で手掛けるという快挙を成し遂げています。この映画ではHuck Finnのナレーションで物語るという趣向で、長い話を短くする工夫も。
物語に入る前に先ず、Mark Twainの1884年刊行のオリジナルの挿絵を御覧下さい。これはEdward W. Kemble(エドワード・W・ケンブル)という画家が描いたHuckleberry Finnです。この顔かたちは今回の主役Elijah Wood(イライジャ・ウッド)にそっくりだと思いません?この映画の製作者たちがElijah Woodを選んだ時点で、この映画の成功は約束されたも同然だったでしょう。
ミズーリ州。同級生に囲まれて、ミシシッピ川の川辺で殴り合いの喧嘩をしていたHuck Finnは、砂地の上に父親の靴跡を発見しぞっとする。彼の父親は呑んだくれで乱暴で、Huck Finnをよく殴るのだ。彼は母の死後Watson(ワトスン)夫人の家で養われていた。Watson夫人はHuck Finnの嘘を見抜く冷徹な存在だったが、彼女の姉のDouglas(ダグラス)未亡人はHuck Finnにやさしかった。
夜、Huck Finnの部屋にRon Perlman(ロン・パールマン)演ずる父親が忍び込んで来て、「学校なんか行かなくていい」と二人の婦人たちを突き飛ばしてHuck Finnを川っぷちの自分の小屋に連れて帰る。親父は酔って刃物を持ってHuck Finnを追い廻す。翌日、この親父はHuck Finnを小屋に閉込めて外出する。Huck Finnは野生の猪を鉄砲で射ち、猪の血を斧に塗りたくり、自分の髪の毛をくっつける。小屋中に血を塗り、仕上げに猪を川まで引き摺る。強盗がHuck Finnを殺し、ミシシッピ川に捨てたという設定である。戻って来た父親が驚きの叫びを挙げるのを聞きながら、Huck Finnはニヤリと笑みを浮かべつつカヌーで川を下る。
ある島に上がって魚を釣ってカヌーに戻ろうとしたHuck Finnは、Watson夫人の奴隷Jim(ジム)に遭遇する。Jimは「町は、あんたを殺した殺人鬼を捕まえようと大騒ぎだ」と云う。JimはWatson夫人が奴隷商人の「Jimを$800で買う」という言葉に乗りそうであることに気づき、売られたら最後妻子と会えなくなることを恐れ、逃亡して来たと告白する。
Jimは「ミシシッピ川を下りたい」と云う。Huck Finnは「逃亡奴隷が南に行くの?北じゃないの?」と疑問に思う。Jimは「ケンタッキー州のCairoでミシシッピ川はオハイオ川と合流している。Cairoから東へ川を上れば自由州に行ける」と説明する。
Huck Finnは女装して町へ行き、ある家の主婦と話しながら色んな食べ物をくすねる。その家の主人の言葉からJimが魚を焼いている煙が発見され、間もなく武装した町民が島へ押し寄せることを知る。彼らはJimがHuck Finnを殺して逃げたと思い込んでいるらしい。二人は大慌てで島を逃げ出し、以後は夜間のみ川を下ることにする。
嵐の夜。二人は難破船に忍び込む。JimはHuck Finnの父親の死体を見つけるが、Huck Finnには黙っている。カヌーが沈み、難破船に渓流されていた筏(いかだ)に乗る。二人が話し込んでいる間に蒸気船が近づき筏を壊す。Huck Finnは反目しあって二家族で殺し合いの闘争を繰り広げているプランテーション・オーナーの一人に捕まり、その息子Billy(ビリィ)と友達になる。Jimも捕まり、その家の奴隷にされ鞭打たれる。やがて、敵対する一家によってプランテーション・オーナーとBilly一家は殺され、再びHuck FinnとJimは筏で川を下る。ある地点で聞くと、もう川の合流点Cairoを通り過ぎていることが分り、二人は愕然とする。筏では川を遡上出来ないではないか…。
この後、物語はお馴染みのペテン師二人組Jason Robards(ジェイスン・ロバーズ)演ずるThe King(王様)と、Robbie Coltrane(ジェイスン・コルトレイン)演ずるThe Duke(公爵)の登場になります。彼らは英国からやって来た兄弟になりすまし、前日亡くなった男の遺産を横領しようとします。Jimが逃亡奴隷であることを知ったペテン師たちは、Jimをスワヒリから来た黒人とし(でたらめのスワヒリ語を話す)、Huck Finnを従者に仕立てて遺族を騙そうとします。
上のあらすじの、プランテーション・オーナーとBilly一家の件は他の二本の映画にないエピソードです。また、ペテン師たちがほぼ成功しそうになった時本物の兄弟がやって来ますが、どちらが本物か分らなくなった町民は公開の人民裁判を行ないます。これも他の映画にはない追加点。Jimは逃亡奴隷であることが判明し、獄に繋がれますが、Huck Finnは鍵を盗んで二人で蒸気船を目指します。追う町民たちが発砲し、Huck Finnは流れ弾に当たります。Jimは友情からHuck Finnを見捨てられず、あわや町民たちから吊るし首にされそうになります。これも新しい趣向です。やはり、映画としては“最新作”だけに、色々工夫されているわけです。
Huck Finnを演ずるElijah Woodは悪戯っ子の野生児というよりは、頭も良く繊細な感受性の持ち主のようになっていますから、Huckleberry Finnとして100点満点というわけには行きませんが、それでも顔かたち・表情・幼さ・健気さなどが相まって好感の持てる演技を展開します。
Jimを演ずるCourtney B. Vance(コートニィ・B・ヴァンス)は、やや間延びした風貌によって無学な黒人らしさを醸し出すと共に、真面目な表情と口調によって“自由と平等”を語り得る存在でもあることを両立させています。そういう彼がアフリカ土着民風衣装で“スワヒリ語”を扱う場面は滑稽です。
二人のペテン師は、三本の映画の中では最も知名度の高いコンビが揃ったと思います。Jason Robardsにはもう少し臭い芝居を期待したのですが、どちらかと云うと抑えた演技に終始しています。
Disney(ディズニィ)映画らしくお金も充分かけ、いいスタッフを揃えた作り方で、撮影・照明・装置・衣装など、全て安心して観ていられます。
前二作が安直にカリフォーニア州で撮影を済ませたのに較べ、この映画はちゃんとミシシッピ州にやって来て撮影を行なった点も評価したいと思います。
(January 12, 2007)
Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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