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Huckleberry Finn



[Poster]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:1920年
監督:William Desmond Taylor
地域:ミシシッピ川一帯
出演:Lewis Sargent、Frank Lanning、George Reed、Orral Humphrey、Tom Batesほか
範疇:原作もの/無声映画/少年と逃亡奴隷/筏で川下り/ペテン師たちとの出会い

私の評価 : ☆

【Part 1】

[the South]

Mark Twain(マーク・トウェイン)原作のHuckleberry Finn(ハックルベリィ・フィン)の物語の映画は、このサイトでは次のように既に四本紹介しています。
・'The Adventures of Huckleberry Finn'『宿なしハックの冒険』(1939)
・'The Adventures of Huckleberry Finn'(未)(1960)
・'Huckleberry Finn'『ハックルベリーの冒険』(1974)
・'The Adventures of Huck Finn'『ハックフィンの大冒険』(1993)

しかし、五本目となる今回の'Huckleberry Finn'は、何とHuckleberry Finnの物語の初映画化なのです。1920年ですから、当然無声映画。公開された当時、地元ミズーリ州の人々が「亡きMart Twain(マーク・トウェイン)も『いいね!』と云うような出来栄えだ」と褒めそやしたそうです。

この映画は公開後長く失われてしまい、誰の目にも触れぬままでした。1960年にデンマークで発見されましたが、フィルムの保存状態は悪く、しかも字幕タイトルはデンマーク語に置き換えられていました。アメリカのNational Film Preservation Foundation(フィルム保存基金)の数年にわたる作業によって画像が修復され、字幕も英語に再変換されました。

Mark Twainは病床にあった。Lewis Sargent(ルイス・サージェント)演ずるHuck Finnが「ボクの物語を書いて?」と頼む。

Huckとその仲良しのTom Sawyer(トム・ソーヤー)が見つけた泥棒の金56,000ドルは、判事が銀行に預け、二人とも一日1ドルをお小遣いとして貰っていた。Huckは優しいダグラス未亡人の養子になって幸せだったが、夫人の姉ミス・ワトスンに何でもかんでもガミガミ叱られるのにはうんざりだった。

Frank Lanning(フランク・ラニング)演ずるHuckの父親が判事のところへやって来て、お涙頂戴の話をして金を欲しがるが、判事はその手に乗らない。仕方なく、Huckの父親は息子を誘拐して身代金を稼ぐことにする。息子をボートに乗せ、川を横切り、オンボロの小屋に連れて行く。

Huckの父親は息子に食事のための魚を釣らせるが、Huckがちょっとのんびりしていると殴る、蹴るの暴行を加える。家の中でも酒を呑んで暴れ、Huckを棒で叩く。

翌朝、父親が酒を買いに出た隙にHuckは家を抜け出し、銃で七面鳥を射つ。Huckは一計を案じ、七面鳥の血を小屋から川まで滴らせ、七面鳥を捨てる。自分が暴漢に襲われて川に逃げて溺死したという筋書きである。その計略は成功し、Huckの失踪が村中を騒がせる。

ミス・ワトスンには、George Reed(ジョージ・リード)演ずる黒人奴隷Jim(ジム)がいたが、彼女のところに奴隷商人がJimを買いに来る。Jimは悪辣な奴隷商人を恐れる。

捜索隊が船でHuckの溺死体を探し廻る。Huckは、ある島に潜んでいたが、自分が溺死したと思われていることを確信して安心する。翌朝、Huckが兎狩りをしていると、寝ている人間を見つける。それは、売られるのを恐れて逃げ出して来たJimで、「一緒にいさせてくれ!」とHuckに頼む。

HuckはJimに筏を作らせる。真ん中に寝られるような小さな小屋がついた立派な筏である。川下りで村を離れる前に、Huckは女装して近くの主婦を訪ね、失踪した自分たちがどう扱われているかを探る。JimがHuck殺しの犯人にされ、間もなく二人が潜んでいた島に逮捕に向かって来ることが判る。Huckは飛んで帰り、Jimを急かせて筏を出す。

ある町の川辺に筏を寄せた時、町民大勢から追われる二人の男が逃げ込んで来る。若い男はOrral Humphrey(オラル・ハンフリィ)演ずる"Duke"(デューク、公爵)で、ハゲで山羊鬚の年寄りがTom Bates(トム・ベイツ)演ずる"King"だと名乗る。二人の男は次の町の劇場に人を集め、金だけ取ってとんずらする。

数日後、次の町を筏で通過すると、ボートで近寄って来た男が、「あなた方はミスター・ウィルクスとその弟じゃないか?あなた方の弟のピーターは、数日前にあなた方に遺産を残して亡くなったよ」と云う。二人はミスター・ウィルクスに成り済ませて金を頂いちゃおうと企み、弟の死を悼んで泣き真似する。Huckには何が何やら分からない…。

無声映画というのは、映画のリズムとテンポが字幕に遮られるのが最大の欠点です。しかも、この映画の場合、原作の味わいを尊重したためか字幕の字数が多い。従って字幕の映写時間も長い。ますます、お話が途切れ途切れになります。

主人公Huckを演じているLewis Sargentは、当時16歳だったそうです。演技力を買われて採用されたのでしょうが、もう少年というより分別盛りになりかけた感じで、ソバカスや歯抜けのメーキャップが似合いません。舞台でなら通用するでしょうが、映画のクローズアップは誤摩化せません。Tom Sawyerを演じている少年俳優の若々しさと較べると、それは歴然です。

原作にイラストを描いた画家がこの映画を観てびっくりしたそうです。人物もポーズも、イラストにかなり忠実に映画化されていたからです。

ただし、物語の方は原作に忠実とは云えません。島で暮らしているHuckが変装して村へ戻る際女装しますが、島のどこで女の子の衣装を見つけたのか疑問に思えるようになっています。原作では難破船を探索した時に手に入れたことになっているのですが、その挿話が抜けているので御都合主義に見えてしまいます。原作では、黒人奴隷Jimがその難破船でHuckの父親の死体を見つけるものの、Huckに川下りを続けさせるために黙って教えない設定になっています。この挿話も削除されています。この映画ではJimは愚かな黒ん坊としてしか扱われておらず、演技もそのようになっています。

ペテン師二人に騙されている姉妹の一人Mary Jane(メアリ・ジェーン)に恋したHuckは、Tom Sawyerの伯母さんの養子となって教育を受け、Mary Janeの恋人になることを夢見つつ映画は終わりますが、美しいMary Janeとソバカスに歯抜けのHuckの間抜け面が余りにも対称的なので、「バーカ、そんなの無理だろーが」と思わざるを得ません。他のHuckleberry Finnものでは、野生児のような彼が養子となって教育を受けるなんて真っ平で、新たな冒険を画策するエンディングになっています。そちらの方がずっと納得出来ます。

この映画もカリフォーニア州で撮影されています。“南部もの”らしさは全く見受けられません。

この映画に関するPart 2はありません。

(March 21, 2012)


Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema」は株式会社スティングレイの登録商標です。




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