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『ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜』

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・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:2011年
監督:Tate Taylor
地域:ミシシッピ州
出演:Emma Stone、Viola Davis、Bryce Dallas Howard、Octavia Spencer、Sissy Spacekほか
範疇:原作もの/黒人メイド/人種偏見/白人女性との交流/メイドたちの証言集の出版

私の評価 : ☆☆☆

【Part 1】

この映画は公開時(2011年8月)に映画館で観ました。物語の舞台がミシシッピ州の州都Jackson(ジャクスン)なので、アクションものか若者向けコメディものが多い私の町の劇場での観客動員もよく、大人向けの真面目な映画にしては珍しく八週間も連続上映されました(不入りなら一週間で終り)。カミさんが「ある日の上映では、感動した黒人と白人たちが手を繋いで観ていたそうだ」という信じられないような話をしたので、わざわざ客の入りのいい日曜日に観に行ったのですが、その日の観客は黒人の数が少なかったせいか穏やかで、特筆すべきリアクションはありませんでした。今回、このリヴューを書くため、あらためてDVDをレンタルして再視聴しました。

1962年、黒人たちの公民権運動勃興期。ミシシッピ随一の大学を出て作家となることを夢見ている女性Emma Stone(エマ・ストーン)が、郷里ミシシッピ州の州都Jackson(ジャクスン)に戻って来る。直ちに地方紙の編集部を訪れた彼女は、家事に関する読者の質問に答えるコラム担当として雇われる。

家事などと一切無縁の生活をしているEmma Stoneには、新聞の家事コラム執筆のための助言者が必要だった。で、Ahna O'Reillyの黒人メイドであるViola Davis(ヴァイオラ・デイヴィス)に白羽の矢を立て、彼女に読者からの質問をぶつけて記事を書くことを目論む。【註:映画は、実際にはViola Davisのナレーションで進行します】

Viola Davisの祖母は奴隷だった。母親は白人の子を育てるメイドで、Viola Davisも物心ついた時から自分もメイドになることを疑わなかった。彼女は17人の白人の赤ん坊を育てて来た。朝8時から午後4時まで週六日働き、時給95セント、週に182ドルである。赤ん坊の世話だけでなく、料理、掃除、洗濯、アイロンがけ、食料品の買い物など、何でもやる。

Viola Davisの仲良しのメイドOctavia Spencer(オクタヴィア・スペンサー)は“ミシシッピ一番”のコックで、特に彼女の作るパイは絶品とされていた。彼女の女主人はBryce Dallas Howardで、アフリカの黒人を助ける慈善活動を企画したりしているが、当人は黒人メイドを蔑視し、「黒人は特殊な病気を持っていて危険だから、白人家庭はメイド専用トイレを作るべし」という法律を通すべく宣伝活動をしている。

黒人メイドCicely Tyson(シシリィ・タイスン)に育てられ、いつの間にか姿を消した彼女を今も慕っているEmma Stoneは、Bryce Dallas Howardの人種的偏見を苦々しく思っていた。Viola Davisと打ち解けて話せるようになった彼女は、ニューヨークの出版社社長Mary Steenburgen(メアリ・スティンバージェン)に「黒人メイドの側から見た白人家庭についてのインタヴューをまとめて本にしたい」と持ちかける。社長は「黒人メイドが正直に話すとは思えないけど、やってみて原稿を見せて頂戴」と云う。Viola Davisに打診すると「白人家庭の話などしたら馘になっちゃう」と拒否される。

Bryce Dallas Howardが黒人メイドOctavia Spencerのために作ったトイレは家の外にあった。あるトーネイド(暴風雨)の夜、とても外に出て行けないOctavia Spencerは家の中のトイレに入ったところをBryce Dallas Howardに見つかり、馘になってしまう。

Emma Stoneは再度Viola Davisにインタビューを申し込むが、「私の従兄は選挙投票に行っただけで車を燃やされた」と云って、又も拒否。ミシシッピ州の法律を読んだEmma Stoneは、黒人の社会的平等を唱える本を出版しただけで刑務所行きになることを知る。

黒人メイドOctavia Spencerは、Bryce Dallas Howardから泥棒だという噂を立てられ、雇ってくれる人がいなくなった。彼女の粗暴な夫は稼ぎがなくなった妻に殴る蹴るの暴行を加える。Viola Davisが教会の日曜学校に行くと、牧師が『出エジプト記』のモーゼの勇気について説教をした。Viola Davisは自分も勇気を出して行動すべきだと発奮する。Viola Davisは人名を全て変えることを条件に、Emma Stoneのインタヴューに応じる決意をする。

妊娠初期の女性Jessica Chastain(ジェシカ・チャステイン)が職にあぶれているOctavia Spencerを雇う。Jessica Chastainは地元の女性達のグループに加わりたいのだが、Bryce Dallas Howardから“白人のクズ”として村八分にされている。Jessica Chastainは「メイドを雇うのは初めてなの」と興奮し、Octavia Spencerの調理から学ぼうとし、一つテーブルで一緒に食事しようとまでする(黒人と白人が一緒の席に座るというのは、当時あってはならないことだった)。

Viola Davisは主人Ahna O'Reillyが、一晩中長女のおむつも替えないのに、二人目を身籠ったことに呆れ果て、ついにAhna O'Reillyの家庭のことも話す気になる。夜間Viola Davisの家を訪れたOctavia Spencerが、Emma Stoneのプロジェクトを知り、彼女も協力する決意をする。彼女は滔々と喋りまくる。

Emma Stoneの母は、結婚どころかボーイフレンドもいない娘を心配していた。Bryce Dallas Howardが好青年をEmma Stoneに紹介した。多少のぎくしゃくはあったが、Emma Stoneと青年は親しくなり、青年は「キミが信じることを書け」と彼女を励ます。

ここまでの原稿を読んだ出版社社長は「面白い。公民権運動も盛り上がりかけてるし、グッド・タイミング。でも、あと12人のメイドの証言が必要よ」と云う。そんなに勇気のある黒人メイドがいるとは思えず、三人は頭を抱える。

折も折、Octavia Spencerの後継者として雇われたメイドが、主人の家から指輪を盗んだ嫌疑で逮捕される。怒りに燃えたメイドが12人、インタヴューに応じることになる。さらにOctavia Spencerは、生涯絶対漏らすまいと決意していたというBryce Dallas Howardとの間の凄まじい事件を話し出す…。

エピソードはたわいのないものが多いのですが、女優陣がみな好演していて、彼女たちの達者な演技がたっぷり楽しめる一篇。Viola Davis、Octavia Spencer、Jessica Chastainの三人がアカデミー賞にノミネートされていることが、その証明です。他の女優たちもそれぞれ所を得て、さまざまな女性像を好演しています。

Sissy Spacek(シシィ・スペイセック)はあまり活躍する時間が与えられていませんが、例によって楽しそうに芝居をしています。彼女のはアクターズ・スタジオ系の役になり切る演技とは異なり、「Sissy Spacekが芝居をしている」のがあからさまなのですが、彼女の芝居する喜びが感じられてこちらまで楽しくなってしまいます。

Cicely Tysonはまだ79歳ですが、よぼよぼの90歳近い老女を巧みに演じています。

何と云ってもこの映画の見所は黒人メイドMinny(ミニィ)を演じているOctavia Spencerです。彼女はこの映画の原作者および監督と以前からの友達で、原作者はOctavia Spencerをモデルにこの役を書いたのだそうです。役者に合わせて書かれた役ですから、その役者が生き生きと演じられるのは当然ですよね。役柄は教養のない、しかし、人生経験豊かで人間味溢れる女性像ですが、実際のOctavia Spencerはアラバマ州の有名大学(Auburn)を出た、歴とした学士なのです。無教養なんぞではありません。儲け役である上に、バイタリティで完全に主演のViola Davisを食っています。これを書いているのは2012年アカデミー賞授与式が始まる三時間ほど前ですが、私はこのOctavia Spencerの助演女優賞受賞を全く疑っていません。

監督Tate Taylor(テイト・テイラー)は、ミシシッピ州Jackson(ジャクスン)出身の原作者の女性と幼馴染みで、それが縁でいち早くこの小説の映画権を得ていました。彼は俳優出身で、現在も監督と二足の草鞋を履いています。俳優だから演技の引き出し方が上手いのでしょうか?Bryce Dallas Howardは憎まれ役ですが、一寸した微妙な表情で憎たらしさを巧みに表現しています。彼女も助演女優賞候補になっておかしくないレヴェルの演技を展開しています。

撮影も丁寧で綺麗、音楽も悪くありません。

【四時間後の後記】予想通りOctavia Spencerは助演女優賞を獲得しました。会場を埋め尽くした有名俳優・監督たちはスタンディング・オベーションで彼女の演技を讃えました。マイクの前で涙に濡れたOctavia Spencerは、握りしめたオスカーを出身地アラバマ州に捧げました。

(February 26, 2012)



Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema」は株式会社スティングレイの登録商標です。




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