[English] [Japanese Home] [Studio BE] [America Offline] [公民権運動] [英語の冒険] [英語の冒険2] [Golf] [Hummingbird]



[Banner]



Get Low



[Poster]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:2009年
監督:Aaron Schneider
地域:テネシー州
出演:Robert Duvall、Sissy Spacek、Bill Murray、Lucas Black、Bill Cobbsほか
範疇:原作もの/隠遁老人の秘密/生前葬パーティ/葬儀社の協力/赦し

私の評価 : ☆

【Part 1】

『子連れ狼』に「生前香典」という一章がありましたが、調べると日本では昔から「生前葬」というものが珍しくないようです。この映画のテーマはそれに近いものです。

原題'Get Low'ですが、New York Observerというサイト(http://www.observer.com/2010/culture/do-not-miss-get-low)によれば、主人公の台詞"It's time to get low."は「死への準備をする時だ」という意味だそうです。

1930年代の南部。Robert Duvall(ロバート・デュヴァル)は40年間も山里に隠遁している老人。髪はぼさぼさ、髭も伸び放題。町の牧師がRobert Duvallの顔見知りの男の逝去を伝える。Robert Duvallは墓参に行く。その夜、彼は愛した女の写真を見つめ、何か考える。

Robert Duvallはラバに引かせた馬車で町に行く。町の人々の様子から、Robert Duvallは不気味で剣呑な人物であると思われていることが解る。Robert Duvallは先日の牧師に会う。彼は大金を丸めた玉を差し出し、牧師に「生きている間に葬儀を執り行ってくれ」と頼む。牧師は断る。二人の会話を、妻子と共に教会へ来ていたLucas Black(ルーカス・ブラック)が聞いていた。

Lucas Blackは葬儀社の社長Bill Murray(ビル・マレイ)に雇われている。Bill Murrayが「よそでは死人が出てるが、この町の人間だけ死なない」とクサっているので、「葬儀を望んでいる人がいますよ」と伝える。二人は早速山の中のRobert Duvallの家に赴く。Bill Murrayは「セールスマンとしてのキミの能力を試す時だ」と、Lucas Black一人を交渉に行かせる。Lucas Blackが窓から室内を覗こうとすると、銃がぶっ放される。背後にRobert Duvallが立っていた。

Robert Duvallは真面目な若者Lucas Blackを信じる。彼を兎の肉の料理でもてなす。翌日、Robert Duvallは葬儀社にやって来て、「葬儀パーティを催したい。誰であれ、わしについて話せるストーリィを持っている人に来て欲しい」と告げる。

Bill Murrayがパーティに関する宣伝ビラ作成用にRobert Duvallを写真館に連れて行くと、Robert Duvallは床屋でやけに長い髭を短くし、髪も切ろうとする。Bill Murrayが「それでは誰もあなたを認識出来ない』と説得し、ぼさぼさ・もじゃもじゃのまま写真を撮る。その後、Robert Duvallは床屋でさっぱりとする。町中にポスターが貼られる。

Bill Murrayのお膳立てでRobert Duvallはローカルのラジオ局に行き、市民に葬儀パーティの参加を呼びかける。一同が驚いたことに、Robert Duvallは「5ドルの申し込み金で、抽選でわしの死後わしの家と300エーカー(約1.2平方キロ)の山林を進呈する」と宣言した。

ラジオ放送を聞いた、Robert Duvallの昔馴染みの女性Sissy Spacek(シシィ・スペイセック)がRobert Duvallの家を訪れる。彼は自分の土地を彼女に見せる。彼女は医師と結婚してセント・ルイスに移ったのだが、夫の死後この町に戻って来たのだった。彼女は壁に貼ってある女性の写真を目にし、涙ぐむと突如出て行ってしまう。

ある日、Robert DuvallはLucas Blackに霊柩車を運転させ、「北へ行け!」と命ずる。車はどんどん北へ行き、いつしかイリノイ州に入っていた。Robert Duvallは、とある田舎の教会の黒人牧師Bill Cobbs(ビル・コッブズ)と再会する。Robert Duvallは牧師に葬儀パーティで自分について喋ってくれと懇請するが、彼がイエスの赦しを願っていないことを知った牧師は拒否する。

黒人牧師は、Lucas Blackに「この教会を建てたのは彼だ」と告げる。Lucas BlackはRobert Duvallの暗い過去に思いをめぐらす。

その夜、Robert Duvallは雨でびしょ濡れになりながらSissy Spacekの家を訪れる。Sissy Spacekが見た写真は彼女の亡くなった姉だった。既婚の姉とRobert Duvallとの間に何があったのか?彼が姉とのロマンスについて語ろうとした時、不倫の匂いにたまりかねたSissy Spacekは「出て行け!」と命ずる。

翌日、葬儀社を訪れたRobert Duvallは「葬儀パーティは止めようかと思う」と告げ、Bill Murrayを驚かす…。

この映画に出て来る主要人物三人は、いずれも南部もので有名な俳優たちです。Robert Duvallは本邦未公開の珠玉作'Tomorrow'(1972)、Sissy Spacekは'Coal Miner's Daughter'『歌え!ロレッタ愛のために』(1980)、そして'Sling Blade'『スリング・ブレイド』(1996)など多数の南部ものに出演しているLucas Blackは正真正銘アーカンソー州出身の南部人です。彼らの南部訛りは(私の耳には)それらしく自然に聞こえます。Bill Murrayはシカゴで長く暮らしたという設定になっているので、南部訛りで話さなくてもいいようになっています。

以上の四人に加え、黒人牧師役のBill Cobbsもいい味を出していて、彼らの芝居は安心して観られます。特にRobert Duvallはexecutuve producerも兼ねているので、真剣に演じています。Lucas Blackは堅物的役柄のせいで損をしていますが、Bill Murrayはいつもの軽薄演技でなく、深い人物造形で伸び伸びと演技していて好感が持てます。撮影も丁寧だし、演出も悪くありません。

(January 20, 2011)



Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema」は株式会社スティングレイの登録商標です。




Copyright (C) 2001-2011    高野英二   (Studio BE)
Address: Eiji Takano, 421 Willow Ridge Drive #26, Meridian, MS 39301, U.S.A.