[English] [Japanese Home] [Studio BE] [America Offline] [公民権運動] [英語の冒険] [英語の冒険2] [Golf] [Hummingbird]



[Banner]



Fireproof

『ファイアー・ストーム』

[Poster]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:2008年
監督:Alex Kendrick
地域:ジョージア州
出演:Kirk Cameron、Erin Bethea、Ken Bevel、Harris Malcom、Perry Revellほか
範疇:教会・信徒による自主制作もの/消防士/共稼ぎ結婚生活/結婚の破局と修復/両親のサポート/信仰

私の評価 : ☆☆☆

【Part 1】

'Facing the Giants'『フェイシング・ザ・ジャイアント』(2006)、'Flywheel'(本邦未公開)などを自主制作し、アメリカ全土だけでなく世界中から好評をもって迎えられたジョージア州Albany(オルバニィ)の教会とその信徒一同による手作り映画の第三弾。今回は"Samuel Goldwin Presents"となっていますから、ハリウッドの資金援助があったようです。それでも、スタッフもキャストのほとんども全て無報酬の牧師や信徒のヴォランティア活動であることに変わりはないようです。現場では一日の初めと終りだけでなく、折りに触れて全員が輪になって神に祈りを捧げながらの撮影だったとか。

スタッフの中で撮影監督だけはプロ。主演男優Kirk Cameron(カーク・キャメロン)は十代の頃からTV出演しているプロの俳優ですが、報酬は彼が設立した福祉施設への寄付という形だったそうです。主演女優Erin Bethea(エリン・ベセイ)は教会の信徒の一人で、現在はOrlandoのディズニィ・ワールドや宗教関係のTV番組で働いています。撮影中、彼女は他の女優たちのメーキャップ係補佐を務めました。消防の副署長役の黒人Ken Bevel(ケン・ビヴェル)は海兵隊の隊員で、当時はAlbanyに駐屯していたそうですが、撮影終了後は中東に派遣されたということです。

素人による映画と馬鹿に出来ません。確かにハリウッド映画に較べれば、火災場面が多少ちゃちであったり、話がこじんまりしている憾みはありますが、俳優たちもみな頑張って演技しており、クライマックスでは涙を禁じ得ないほどの出来映えです。

ジョージア州のある町の消防の一分署。Kirk Cameron(カーク・キャメロン)は若いながらも署長である。彼は火災出動から戻って来て、新入りの消防士をたしなめる。「絶対にパートナーから離れちゃいけない。独走は危険なんだ」

Kirk Cameronの妻Erin Bethea(エリン・ベセイ)は、ある病院のメディア対応のPRウーマンとして働いている。彼女の母親は脳卒中で歩けず、話も出来ない。母親は病院のようなベッドと車椅子が必要なのだが、保険はきかず父にそれらを買う能力もなく、Erin Betheaの給料では購(あがな)えない。

【註】主演女優Erin Betheaの姓をどう読めばいいのか、映画のプロダクションに問い合わせました。秘書の女性からのメールに「"Beth"(ベス)+"ay" in "May"である」と書かれていましたので、カタカナでは「ベセイ」という表記が近いようです。

Kirk Cameronが24時間勤務を終えて早朝に帰宅するが、朝食に食べるものがなく不機嫌になる。妻のErin Betheaは「あなたは48時間の休みがあるんだから、自分で食料買い出しに行けばいいでしょ!」と云う。「君がフル・タイムで働くことはないじゃないか!」という夫に、妻は「あなたは自分のためにボートを買おうと$24,000も貯金して、給料を一銭も家に入れない。光熱費だの水道代、食料品の買い物は全て私。お金が要るのよ!」と云う。夫は「家や二台の車の月賦は僕が払ってるんだ。少しは尊敬してほしいもんだ」。これに対し妻は「休みにはインターネットのポルノ・サイトを見るだけじゃない。尊敬なんか出来ないわ!もう終りよ」と云う。

踏み切りで起った自動車事故を処理中、貨物列車が迫って来る。野次馬たちの力を借り、男たちで車を線路外に押し出す。消防士の一人が列車によってヘルメットを弾き飛ばされるが、危うく助かる。

息子の結婚の危機を知ったKirk Cameronの両親が、四時間のドライヴをものともせずやって来る。妻寄りの考え方をする母親が煩わしく、Kirk Cameronは父Harris Malcom(ハリス・マルコム)とだけ話したがり、二人で青少年のキャンプ地となっている森を散歩する。父は自分も妻との間で離婚の危機があったが、信仰がそれを救ってくれたと話す。息子は「神は存在するかも知れないが、私と私の抱える問題には無関心だ」と云う。妻の態度に腹を立て、離婚への一本道を辿ろうとする息子に、父が「わしのために40日間だけ待ってくれ」と頼む。

後日、父から郵便が届く。それは'The Love Dare'『愛の挑戦』という題がついている父の手書きの本であった。それは、40日間のカリキュラムで、一日毎に何か伴侶のために思いやりを示す方法が書かれていた。Kirk Cameronはうんざりしながらも父への義理立てで毎日実行し始める。しかし、妻Erin Betheaから全く無視される。

病院のErin Betheaの女性同僚たちは、彼女から「夫の最近の打って変わった優しい行動が理解出来ない」という話を聞き、「それは離婚前に妻を騙す煙幕だ」と云い、Erin Betheaもそれを信じる。この間、病院の医師の一人がErin Betheaにモーションをかける。夫と違って彼女の話を聞いてくれる医師に、Erin Betheaは次第に心を開いて行く。

『愛の挑戦』を初めて18日経った。Kirk Cameronが夕食を作り、蝋燭を立ててロマンチックな雰囲気を整えて妻を待つ。しかし、Erin Betheaはそれを無視したばかりでなく、「私はもうあなたを愛していない」と宣言する…。

素人たちによる映画作りがどのように行なわれたかは、別項'Facing the Giant'『フェイシング・ザ・ジャイアント』を御覧下さい。

この映画の好ましいところは、いかに父が信仰を説き神に頼れと息子を諭しても、息子は頑として神に頼ろうなどと考えないことです。父の説得だけで神に祈って目覚めてめでたしめでたしというのでは、あまりにも安っぽく御都合主義ですよね。夫も妻も、お互いに相手の姿勢が気に入らず意固地になっていて、信仰などとは無関係だと思っている点が、無宗教の私に好感が持てたポイントです。

脚本は、監督でもあるAlex Kendrick(アレックス・ケンドリック)とStephen Kendrick(スティーヴン・ケンドリック)兄弟によって書かれました。二人は脚本を書いては、教会の集まりで討議の材料とし、さらに内容を練り上げたそうです。この映画にはいい台詞、会話が沢山あります。それはPart 2で紹介します。

'The Love Dare'『愛の挑戦』は出版されており、http://www.bhpublishinggroup.com/lovedare/ から購入出来ます。私は模擬革装版を本屋さんで見ましたが、一日分は先ず1〜2ページの読み物があり、その最後に短く「今日の使命」が書かれています。主人公Kirk Cameronは、40日分しか書かれていない'The Love Dare'を43日間実行します。

原題'Fireproof'は「耐火(建築)」を意味します。Kirk Cameronは同僚の黒人Ken Bevelにこう云います、「結婚は耐火建築ではないね。時々火がつくんだ」すると、Ken Bevelは「耐火建築だからって火が近寄って来ないわけじゃない。しかし、火が近づいたら抵抗出来るのが耐火建築なのさ」と云います。日本の映画館で『耐火』や『防火』という題名では客が来ないでしょうが、『ファイア・ストーム』と称するのは嘘ですね。映画には「火の嵐」なぞどこにもありませんから。

(January 13, 2010)



Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema」は株式会社スティングレイの登録商標です。




Copyright (C) 2001-2011    高野英二   (Studio BE)
Address: Eiji Takano, 421 Willow Ridge Drive #26, Meridian, MS 39301, U.S.A.