公開：2010年
監督：Daniel Stamm
地域：ルイジアナ州
出演：Patrick Fabian、Ashley Bell、Iris Bahr、Louis Herthum、Caleb Landry Jonesほか
範疇：ドキュメンタリー風ホラー／不信心牧師／悪魔に憑かれた少女／エクソーシズム（悪魔祓い）

私の評価 ： ☆1/2

【Part 1】

スター不在、CGI無し、特殊メーク無しの安上がり映画ですが、"mockumentary"（mock documentary、ドキュメンタリーもどき）のスタイルと、「一体どうなるのか？」という興味で引っ張るのが巧みなお話。2012年に'The Last Exorcism 2'が公開される予定であることからして、結構受けた映画のようです。

Patrick Fabian（パトリック・ファビアン）は、牧師である父によって子供の頃から説教師たるべく育てられた。彼は父の後を継いで牧師となったが、実は真摯なクリスチャンとは云えなかった。日曜の説教にしても、信徒たちは話の内容など聞いておらず彼のパフォーマンスに酔っているに過ぎないと考え、それを母の得意なバナナ・プディングの作り方を説教に折り込むという悪ふざけで証明して見せる。

彼の父が金庫からエクソシズム（悪魔祓い）に関する、ラテン語で書かれた古い書物を取り出し、彼らの家系には代々エクソシストが存在し、父は150件のエクソシズムを行なったと云う。

Patrick Fabianがカメラに向かって云う、「聖書にはdemon（悪魔、悪霊）の記述で満ち溢れている。あなたがイエスを信じるなら悪魔も信じるべきだ。イエス自身エクソシストだった。だから、あなたがクリスチャンで聖書を信じイエスを信じるなら、悪魔の存在も信じなきゃならない」

10歳で最初のエクソシズムを行なったPatrick Fabianはは、次のように語る。「私は悪魔を信じてはいないが、エクソシズムを行なう時は信ずる振りをする。人々は悪魔を頭の中に住まわせていると考えている。私はその想念を取り除く助けをするのだ」

Patrick Fabianの妻が息子を早産した時、息子の命が危なかった。息子が無事と分かった時、Patrick Fabianは医師に感謝した。本当は神に感謝すべきだったのに…。彼は「それは信仰の危機であった。私が本当に神を信じているのか疑問を抱き始めた」と云う。

テキサス州の少年がエクソシズムの最中に窒息死したというニュース。その少年はPatrick Fabianの息子と同年代だったせいか、Patrick Fabianは息子の頭にビニール袋を被せて窒息死させる悪夢を何度も見るようになった。そこへ、ヴァチカンの新しい教皇がエクソシズム学院を設立するというニュースが伝わる。エクソシズムを芝居だと考えるPatrick Fabianはヴァチカンの方針に憤慨し、エクソシズムはインチキであるという暴露映画を製作する決意をし、ディレクター兼インタヴュアー兼録音担当の女性Iris Bahr（アイリス・バー）とカメラマンを雇う。多くのエクソシズム要請の手紙の中からルイジアナ州Ivanwood（アイヴァンウッド【編註：架空の土地】）を選び、一行は車で出発する。Ivanwoodの住民数名が悪魔や新興宗教の存在について話す。

手紙の主の農夫Louis Herthum（ルイス・ハーサム）は「最近、子牛が二頭、羊が一頭、鶏が数頭惨殺された。その度に16歳の娘Ashley Bell（アシュリィ・ベル）の血だらけの衣類が見つかったが、娘は覚えていないと云う。彼の妻は二年前に乳ガンで亡くなっており、彼が娘をホーム・スクール（在宅教育）で教えていた。以前、彼女は教会の日曜学校に通っていたのだが、父が「日曜学校が完全に宗教的なものに思えない」とやめさせていた。Ashley BellがディレクターIris Bahrのワークブーツを賛嘆し、履かせて貰う。ぴったしなので、Iris Bahrはそれを娘に与える。

娘の兄Caleb Landry Jones（ケイレブ・ランドリィ・ジョーンズ）は撮影クルーに反感を持っており、「この件は父の迷信と飲酒のせいに過ぎない」と云い、「妹の身に何かあったら只じゃおかない」とクルーを脅す。

水の入った容器に娘Ashley Bellが両足を浸すと、水の温度が上昇した。Patrick Fabianは、「彼女は"Abalam"という悪魔に取り憑かれており、救済手段は死かエクソシズムである」と宣告する。

娘Ashley Bellが身を清めている間に、Patrick Fabianは彼女の寝室を下見し、テグスで絵の額を揺らす仕掛けや煙の出る十字架などの準備をカメラに向かって見せる。Ashley Bellをベッドに寝せ、父親と兄が見守る中でエクソシズムを開始する。Ashley Bellはもがき、叫ぶ。ベッドや額縁が揺れ（Patrick Fabianが揺らしている）、彼の手の中の十字架が煙を出す。エクソシズム（の芝居）は成功し、父親は多額の金をPatrick Fabianに渡す。Patrick Fabianはその金で息子の補聴器を買うつもりである。

撮影クルーが泊まっているモテルに、Ashley Bellがやって来て嘔吐する。一行は彼女を病院に連れて行く。Patrick Fabianは「精神病医に診せるべきだ」と父親を説得するが、八人の医師が妻の命を救えなかったことで医師不信に陥っている父親は承諾しない。Patrick Fabianは地元の教会の牧師と会って協力を求める。

何故か、Ashley Bellの兄が刃物で切りつけられる。Ashley Bellの部屋の壁に、血だらけの猫の絵が貼られ、その夜一家の飼い猫が殺される。Patrick Fabianは家の留守番電話に医師からのメッセージで「彼女は妊娠しているから、○○などの薬物は与えないように」と録音されているのを聴く。クルーは近親相姦を疑う。

その後、娘Ashley Bellの部屋の壁に「炎の中に飛び込んで行くPatrick Fabian、手足を切断されたディレクターIris Bahr、首を斬られたカメラマン」の絵が貼られているのを見て、一同は怖気を震う…。

劇中でも云われるように、「悪魔祓い」はローマン・カソリックだけでなく世界中のどの宗教にもあるし、アメリカのどこが舞台でもいいわけです。何故この映画がルイジアナ州を選んだかですが、ここにはローマン・カソリックもあり、バプティストもペンテコステ派（神による治癒を重んずる一派）も、Voodooすらもある地域なので、こういう怪し気な題材には最適と考えたのでしょう。ハリーケン・カトリナによる被害の傷痕や鰐などはちょっと出て来るものの、あまり“南部もの”らしい雰囲気もルイジアナらしい風物や慣習も登場しません。

Patrick Fabianは主にTV畑の俳優ですが、18年も前に人気のあった人気TVシリーズがいまだに放映されているので、結構名は知られているようです。芸歴が長いだけに安心して見ていられる演技で、主演の座を見事に務め仰せています。

悪魔に憑かれた16歳の少女を演じるAshley Bellは、この映画公開時には24歳でした。最初の方の、初々しく可愛らしい表情では、とても24には見えません。大きな役はこれが初めてと云える芸歴です。彼女はもともと身体が柔らかく、この映画の異様なポーズ（ポスター参照）も特殊撮影やCGIではなく、彼女が自然に行なったものだそうです。

（December 17, 2011）

Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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