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Driving Miss Daisy

『ドライビング・MISS・デイジー』

[Poster]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:1989
監督:Bruce Beresford
地域:ジョージア州
出演:Morgan Freeman、Jessica Tandy、Dan Aykroydほか
範疇:戯曲の映画化/ドラマ/人種問題

私の評価 :☆☆1/2

【Part 1】

1960年代のジョージア州アトランタ。Jessica Tandy(ジェシカ・タンディ)演ずるMiss Daisy(ミス・デイジー)は80歳代の未亡人。ある日、自動車を操作ミスで隣家に突入させてしまい、息子から「今後運転は止めて下さい。私が雇う運転手に任せなさい」と云われます。早速Morgan Freeman(モーガン・フリーマン)演ずる70歳の黒人運転手Hoke(ホーク)がやって来ますが、むくれているMiss Daisyは彼を無視します。

数日後、忍耐強いHokeの努力で、やっとMiss Daisyは彼が運転する車に乗るようになります。ただし、速度を落とせとか道順が違うとか、うるさいことこの上もありません。

Miss Daisyの90歳の兄の誕生日にアラバマ州まで泊まりがけでドライヴ旅行をします。Hokeが車を停めて「おしっこさせてくれ」と云うと、「どうしてさっきのガソリンスタンドでしなかったの?」「あそこには白人専用しか無かったもんで」公民権運動以前の状態がさりげなく示されます。

Miss Daisyにとって、次第にHokeはなくてはならない存在になりますが…。

二人の20年にわたる交流を描いたオフ・ブロードウェイの戯曲を映画化したもので、1989年度アカデミー作品賞、主演女優賞、脚色賞、メークアップ賞を獲得しました。Jessica Tandyは気位が高く、頑固で気難しい老婦人を好演しています。Morgan Freemanは、大分前に観た時には入れ歯をモゴモゴさせる芝居が煩わしく感じられましたが、今回は何も感じませんでした。こちらが慣れちゃったんでしょうか?口を閉じて含み笑いしたり、かん高い声で話すなど工夫していますが、一本調子の傾向が無くはありません。アカデミー主演男優賞候補にはなったものの、逃がしました。

Miss Daisyの息子役はDan Aykroyd(ダン・エイクロイド)です。面倒見のいい、母親思いの息子を真面目に演じています。

Miss Daisyはマーチン・ルーサー・キング牧師の演説を聴きに行くぐらいの人なので、人種差別の意識はありません。二人のそういった人種的ぶつかり合いはなく、あくまでも個性的なぶつかりあいがあるだけです。しかし、背景として時代の潮流、人々の意識は抑制されたトーンできちんと表現されています。

後味のいい映画です。

(March 7, 2001)


【追記】オフ・ブロードウェイの舞台は、押し寄せる観客によって小劇場から中劇場に移行せざるを得ないほどのヒットでした。舞台はDana Ivey(デイナ・アイヴィ)という女優とMorgan Freemanによるものでした。この戯曲の映画化権を獲得したプロデューサーは、本格的製作資金集めに奔走しますが、どこの映画会社も冷ややかでした。やっとかき集められた資金はたった750万円でした。ある映画会社のお偉方は「男優はEddie Murphy(エディ・マーフィ)にしたらどうかね?」と云ったそうです。プロデューサーはついに大物プロデューサーJake Eberts(ジェイク・エバーツ)を掴まえました。彼は'Chariots of Fire'『炎のランナー』(1981)、'Gandhi'『ガンジー』(1982)、'Dances with Wolves'『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(1990)などを製作・資金援助した人です。彼が325万円出し、ワーナーが450万円出すことになりました。

女優のDana Iveyは当時40代で、舞台では老けを演じられてもスクリーンでは無理ということで、当時80歳のJessica Tandyが選ばれました。舞台が大成功だった'A Streetcar Named Desire'『欲望という名の電車』が映画化された時、Jessica Tandyだけが映画に出られませんでした。今度は逆のことが起ったのです。彼女はそれまでに40本もの映画に出演していましたが、いつも脇役でした。80歳にしてやっと主演が廻って来たJessica Tandyは、まるでハリウッドに再発見された女優の気分だったそうです。保険業界は80代の女優が主役ということで、その健康が真夏の南部で最後まで持ち堪えられるかどうか疑問視しました。仕方なく、彼女は自分の懐から保証金を出さなくてはなりませんでした。その甲斐あって、見事にアカデミー主演女優賞を射止めたのです。

この映画はグロスで1億4,500万ドル以上の興収を稼ぎ出し、レンタル料5,000万ドルを加え、当時の最も成功した映画となりました。

Morgan Freemanは「私の後でこの役を演じた俳優たちは、怒りを含んだり卑屈だったりする演技をしていた。そうではない。この役に不可欠なのは"ironclad dignity"(打ち破ることの出来ない威厳)なのだ」と語ったそうです。彼の実父が実際に白人の未亡人の運転手をしていたことがあるそうで、その父と親戚の何人かの男たちをモデルに演じたそうです。

【出典】'Morgan Freeman: A Biography' by Kathleen Tracy (Barricade Books Inc., 2006)

(September 12, 2007)



Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema」は株式会社スティングレイの登録商標です。




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