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Sweet Dreams

『ジェシカ・ラングの スウィート・ドリーム』


[Poster]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:1985
監督:Karel Reisz
地域:ヴァージニア州、テネシー州
出演:Jessica Lange、Ed Harris、Ann Wedgeworth、David Clennon、John Goodmanほか
範疇:伝記もの/C&W女性歌手Patsy Cline(パッツィ・クライン)の成功物語/離婚・結婚/横暴な夫

私の評価 :☆

【Part 1】

この映画を製作したのはHBOというCATVの会社ですが、TV映画ではなく劇場映画であり、主演女優Jessica Lange(ジェシカ・ラング)はこの映画でアカデミー賞主演女優賞候補になっています。'Coal Miner's Daughter'『歌え!ロレッタ愛のために』(1980)のSissy Spacek(シシー・スペイセック)のように、Jessica Langeも自分で歌っているのか?と思いましたが、全曲Patsy Cline(パッツィ・クライン)の録音を使った“口(くち)パク”でした。

20年以上前の映画とあって、Ed Harris(エド・ハリス)も髪がふさふさとしていて男性的魅力を発揮しています。あのデブのJohn Goodman(ジョン・グッドマン)も、この頃はまだ顔も常人並の横巾で、お腹も出ていません。人間の変貌も恐るべきもんです。

1956年、ヴァージニア州。田舎の町のダンスホールで、Jessica Lange演ずる売れないC&Wの女性歌手Patsy Clineが歌っている。Ed Harris演じる男が女連れでやって来たもののPatsy Clineに一目惚れし、女を抛り出して聞き惚れる。ステージが終って彼女が出て来た時、Ed Harrisがモーションをかけるがさらりと躱される。

Patsy Clineは結婚していたが、夫は彼女には無関心で自分の趣味に没頭していた。Patsy Clineはもう別れるべき時かも知れないと思う。

またPatsy Clineが歌っているダンスホールにEd Harrisがやって来る。踊りもせず、彼女の前に立ち尽くして歌声に聞き惚れる。飲んでいる彼女にEd Harrisが近づく。彼女が名前を聞くと「Charlie Dick(チャーリィ・ディック)だ」という答え。彼女は苦笑する("dick"には卑猥な意味がある)。彼女が「目的は何?」と聞くと、Charlie Dickは「キミをよく知りたいんだ」と云う。「よく知りたいって、あんたの車の後部座席で10分間過ごすこと?」と彼女。「そんなんじゃない」と彼は云い、二人はダンスホールの駐車場で踊る。二人は打ち解け、Patsy Clineは「父は、私が16の時に母と私を捨てて行ったの」と告白する。コンヴァーティブルの中で抱き合う二人を、折り畳みの幌が隠して行く。

Patsy Clineは退屈な夫と別れ、実家に戻る。Patsy ClineとCharlie Dickは結婚する。地元TV局の音楽コンテストで優勝したPatsy Clineはレコードを吹き込む。数週間後、Decca(デッカ)レコードから電話があり、彼女の'Walkin' After Midnight'が全米ヒットチャート16位にランクされたと告げる。

幸せはそう続かず、夫は陸軍に徴兵され、ノース・キャロライナ州のFort Bragg(フォート・ブラッグ)基地へ配属される。Patsy Clineは車を飛ばして基地へ行き、二人モテルで服を脱ぐのももどかしくセックスする。

1958年。Patsy Clineはバンドと共に二台の車でツァーを始める。受けたのは良かったが、バンド一同疲労困憊する。そんな最中、Patsy Clineは妊娠したことを知る。彼女はツァーを中断し、夫が基地の外に借りたアパートに移る。一寸した口論がもとで、二人は顔を叩き合うような喧嘩をする。怒った彼女は母の家に戻る。

出産が迫り、休暇を取ったCharlie Dickが戻って来て妻に詫びる。二人は仲直りする。ある日の夕方Charlie Dickは友達と遊び歩くうち、昔馴染みの女に誘惑され夜明かしをしてしまう。その間にPatsy Clineは女の赤ちゃんを産む。

まだ基地勤務が終らないCharlie Dickは、Patsy Clineに電話し「赤ん坊と一緒に来てくれ。前よりずっといいアパートを借りた」と云う。妻は「私、また歌うの。赤ちゃんはお母さんに見て貰う」と答える。Charlie Dickは夜中にオートバイを飛ばして家に戻り、妻をダンスホールの駐車場に連れて行って踊り、愛を確認する。

Patsy ClineはC&WのメッカNashville(ナッシュヴィル)へ行って運試しを決意する。その第一段階として音楽マネジャーと契約する。Patsy Clineは「歌が真っ当なものなら、私はそれが聴衆の胸に届いたことが彼らの表情で分るの。私はHank williams(ハンク・ウィリアムズ)になりたい」と云う。

1961年。音楽マネジャーはいい録音プロデューサーをつけ、男声バックコーラスを雇う。ついにPatsy Clineはナッシュヴィルの憧れのGrand Ol' Opry(グランド・オール・オープリィ)の舞台に立つ。Charlie Dickも客席にいる。彼女のスロー・バラードはスタンディング・オヴェイションで絶賛される…。

'Coal Miner's Daughter'『歌え!ロレッタ愛のために』(1980)は現存する歌手の半生を映画化したものでした。こちらは主人公が飛行機事故(1963)で亡くなった22年後に製作されているという点が違います。しかし、どちらも成功物語であり、夫の不品行(酒、女、暴力)や、夫婦喧嘩が出て来るのが共通点です。

主演のJessica Langeは満点とは云えないまでも、浮き沈みする主人公の感情を頑張って表現しています。特に目の演技がいい。“口(くち)パク”による歌唱場面は(かなり練習したのでしょうが)完璧に演じられており、違和感はありません。

Ed Harrisも、強引だが優しさも兼ね備えたレッドネック風男性を若々しく魅力的に演じています。彼のファンなら、この映画は必見でしょう。

感心したのはPatsy Clineの母親を演じるAnn Wedgeworth(アン・ウェッジワース)です。脚本でもうまく描かれているのですが、娘を愛しながらも甘やかすことはしない(サポートはする)という女性を控えめに、しかし的確に演じています。普段は上品なのに、娘のお産に駆けつけて来ない婿に怒りを爆発させるシーンは面白い。

John Goodmanは、ちょい役であまり見せ場はありませんが、Patsy Clineの名唱'Crazy'を口ずさみながら泣き真似するシーンが可笑しい。まだ顔の面積も身体の体積も常人並であった頃の彼が見られるのも貴重です。

いくつかいい場面があります。真夜中の(閉店後の)ダンスホールの駐車場で二人が踊る場面。小雨が降っているという、本当はあり得ないようなシチュエーションですが、離れて暮らしている夫婦(特にCharlie Dick)が愛を再確認しようという必死の感情がよく出ています。夜の雨の撮影も見事です。地域のお祭りの夜、ツァーで疲れている妻に歌わせながら、自分はどこの誰ともつかぬ女性と遊んでいる夫にPatsy Clineが腹を立てます。夫が無視するので、仕返しに彼女もどこの誰ともつかぬ若者とダンスに興じます。お互いに見せつけながら、お互いに傷ついて行くというスリリングな場面は、演出も編集もうまく処理されています。

'Crazy'という曲は、曲そのものもいいのですが、この映画の中でのあしらいもよく、強く印象に残ります。

(March 20, 2008)



Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema」は株式会社スティングレイの登録商標です。




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