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公開:2006
監督:Richard Elias
地域:ルイジアナ州ニューオーリンズ
出演:Nathan Grubbs、Gabrielle Sfardini、Ed Zajac、Charles Allen、Alex Petrovitch、Reid Collumsほか
範疇:水先案内人/ロマンス/麻薬中毒/ギャングとのつきあい/アクション
私の評価 :☆
【Part 1】
典型的なワンマン・インデペンデント映画。男優Nathan Grubbs(ネイサン・グラッブス)が製作・脚本(監督と二人で共同脚本)・主演しています。彼の映画出演は現在のところこれ一本限り。監督もやらなかったのが不思議ですが、実は監督のRichard Elias(リチャード・イライアス)は照明係や"grip"と呼ばれる裏方をやって来た人間で、この映画が初監督・初脚本(共同)。推測ですが、こういう無名・未経験の人間を雇ったというのはNathan Grubbsが“傀儡政権”を目指したのだと思われます。
Nathan Grubbsはニューオーリンズに住むミシシッピ川の水先案内人。水深の浅い川で大型船舶を安全に航行させる、重要な仕事である。ちゃんと公式免許を持つ、水先案内人の会社の従業員である。快活で行動的な彼は皆に好かれ、友人も多かった。
Nathan Grubbsは四年前に麻薬を断ち、AAミーティング(註参照)に欠かさず出席しているほどなので、酒も飲まずタバコも吸わない。友人たちとバーに行くが、この日もソフト・ドリンクだけを飲んでいた。トイレに行くと、古い付き合いの薬剤師Alex Petrovitch(アレックス・ペトロヴィッチ)が鼻でコカインを吸い込み、「あんたもやらないか?」と執拗に勧める。Nathan Grubbsは断り続ける。
【註】"AA"は"Alchoholics Anonymous"(アルコール中毒者更正会)の略。匿名のアル中、麻薬中毒者が定期的に集まり、悩みや誘惑に打ち克った報告などを交換し、努力を続ける誓いを新たにする会合。
海運業者主催の川での船上パーティ。Nathan Grubbsとその友人たちもスーツを着込んで参加する。友人の一人Reid Collums(レイド・コラムズ)が女性二人に接近し、彼女たちを仲間に紹介する。イタリア女性Gabrielle Sfardini(ゲイブリエル・スファルディーニ)に一目惚れしたNathan Grubbsは、彼女と踊りまくり、呑みまくる。彼女の以前の婚約者で海運業経営者Ed Zajac(エド・セイジャック)が「こんな連中と付き合うな」とGabrielle Sfardiniにお節介を焼くが、彼女は聞き入れない。
そのパーティには薬剤師Alex Petrovitchも出ていて、またトイレでNathan Grubbsにコカインを勧める。Nathan Grubbsが断り切れずに慣れた手つきで一服吸うと、Alex Petrovitchは瓶ごとくれる。Nathan Grubbsはイタリア女性Gabrielle Sfardiniをフレンチ・クォーターの彼女のアパートに送って行き、ディナーを共にする。
Nathan GrubbsはGabrielle Sfardiniに車をプレゼントする。感激した彼女は身を許し、二人は電撃結婚する。彼はコカインを吸い続ける。
ある日出勤したNathan Grubbsは上役の前でよろめいて倒れ、血液検査の結果麻薬中毒がバレ、会社から馘を云い渡される。そんな時に現われた薬剤師Alex Petrovitchは、Nathan Grubbsの苦境も知らず能天気に新入荷のヘロインなどを見せびらかす。Nathan Grubbsは“毒食わば皿まで”の心境で買い求める。
Nathan Grubbsが支払い継続しないため、妻Gabrielle Sfardiniの車は販売会社がレッカー車で持って行ってしまう。彼女は夫の個人小切手帳を調べたがるが、彼は見せない。二人は"Shut up!"(黙れ)を連発して罵り合う。そこへ彼女の元の婚約者Ed Zajacから電話。彼はNathan Grubbsに親切めかして黒人ギャングの親分Charles Allen(チャールズ・アラン)を紹介するが、裏でCharles Allenに「奴をホームレスにしてくれ」と依頼する。Nathan Grubbsの仕事は麻薬取り引きの現場で、麻薬の純度を確かめるモルモットの役目だった。
Nathan Grubbsはお腹が大きくなった妻Gabrielle Sfardiniを連れて、友人たちとバーに行く。友人の一人Reid Collumsと妻が仲良く踊るのを見て嫉妬し、「お腹の子は俺のか?そいつの子か?」と怒鳴り、妻をはじめ友人たちみんなに置き去りにされる…。
製作・共同脚本・主演のNathan Grubbsは、実際に水先案内人で俳優ではありません。それにしては演技はまあまあです。明るく生きが良いのは前半だけで、後半は泣いてばかりいますが。Gabrielle Sfardiniはさほど美人でもなく、声もハスキーで台詞が聞き取りにくい。キャスティングに問題ありのような気がします。
この映画でプロの俳優らしいのは脇役のAlex Petrovitch(薬剤師)、Ed Zajac(海運業)、Charles Allen(黒人ギャングの親分)ぐらいのものです。この黒人ギャングは凄みがなく、あまり恐くないのが難。
この映画はPanasonic DVX 100というデジタル・カメラ(3-CCD、380,000画素、MiniDVテープ使用、市場価格$2,000〜$3,000)で撮影されています。このカメラにはフィルム撮影と同じ1秒24齣で撮影出来るモードがあるため、多くのインデペンデント映画で使われています。撮影後はApple Computer Inc.の'Final Cut Pro'というソフトで編集。多くの映画は、この後オリジナルをHDテープにコピーし、それを劇場用フィルムにコンヴァートするようです。この映画もその方法を取ったと思われます。
この映画の撮影監督にASCなどという肩書きがないところを見ると、この撮影監督はアメリカ撮影監督協会には所属していないようです。しかし、彼自身ライトマンをやったこともあるし、クレディット・タイトルを見るとちゃんとライトマンも雇っているのに解せない点があります。特にNathan GrubbsとAlex Petrovitchが二人で真っ昼間の室内で麻薬を楽しむ場面。大きな窓をバックに、長椅子に二人が座ります。こういう状況の撮影は非常に難しいのです。晴れていても曇っていても、窓の外はとてつもなく明るく、室内は暗い。両方のバランスを取るためには、室内がサウナの温度になるぐらい照明を当てないといけません。それも、キイ・ライト(主光源)とオサエ(主光源で発生する影を消すライト)を3:1ぐらいの割合で当てるのが普通。ところがこの映画ではほとんどノー・ライトに見えるような撮影をしています。まあ、ノー・ライトだと人物の顔が真っ黒けになってしまいますので、若干は当てているのでしょうが、それでもほとんど人物の表情は見えない感じ。しかも、このシーンがやたら長いのです。うんざりさせられます。
インデペンデント映画に共通することですが、室内の録音もひどい。セットでなく、本当の建物の中で撮影しているため台詞が篭って(反響して)聞き取りにくい。メイジャーの映画ならアフレコで鮮明な音に換えるところでしょうが、予算のないインデペンデント映画は現場で全てを終えてしまうわけです。
黒人ギャングが麻薬売買のデータベース作成にApple MacintoshのPower Bookを使っているというのが妙です。私はMacユーザーなので画面でMacを見るのは嬉しいのですが、一体全体麻薬の売人がMacを使うものでしょうか?MacはWindowsマシン(Dellなど)に比べて高いし、ユーザーも少ないのでソフトウェアの違法コピーも入手しにくい。このギャングがハーヴァードを出たインテリだというのなら別ですが、いつも小型の斧を持ち歩くような粗暴な男ですからね。なお、クレディット・タイトルにはちゃんとApple Computerと出て来ますので、交渉してタダで借りたか宣伝料を貰ったのでしょう。
物語はNathan Grubbsがどんどん麻薬の深みにはまり、ギャングとも腐れ縁が出来て行きます。しかし、金がなくなって麻薬も買えず、夫婦で家も追い出され、親元に住むしかなくなります。途方に暮れたNathan Grubbsは昔馴染みの黒人の老人の助けで禁断症状を克服し、悪人たちに一泡ふかせる挙に出て結構なアクション・シーンが展開します。
“ハリケーンKatrina来襲前の最後の映画”という謳い文句に釣られて見たのですが、ニューオーリンズ風景などあまり出て来ません(タイトル・バックが主)。つまり、最初の水先案内人の仕事のシーン以外は、ただの麻薬中毒者の生活なので、実はどこの街(西海岸でも東海岸)でもいいようなお話なのです。
最初の30分が一時間にも思え、「あと一時間もあるのか!」とげんなりしてしまったことを告白します。
この映画についてはPart 2はありません。
(July 14, 2007)
2007年8月下旬の新聞によれば、ニュー・オーリンズの人口はKatrina以前の60%に減ったままだそうです。オープンしている病院も、Katrina以前の約半分とか。
(August 30, 2007)
Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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