公開：2007
監督：Quentin Tarantino
地域：テキサス州、テネシー州
出演：Kurt Russell、Zoe Bell、Rosario Dawson、Sydney Tamiia Poitier、Tracie Thoms、Quentin Tarantinoほか
範疇：アクション／元スタントマン／車／若い娘たち／殺人鬼

私の評価 ：☆1/2

【Part 1】

奇才Quentin Tarantino（クェンティン・タランティーノ）が、製作・脚本・監督・撮影をやってのけたという一編。

テキサス州オースティン。町のラジオ局でD.J.をやっている黒人娘Sydney Tamiia Poitier（シドニィ・タミラ・ポワチエ、高名な同姓の男優の娘）を中心に、よその町から来た友人Vanessa Ferlito（ヴァネッサ・ファリト）と、金持ちの娘Jordan Ladd（ジョーダン・ラッド。有名なAlan Laddの孫）が集まって、週末をどう過ごすか相談する。Sydney Tamiia Poitierは、先ずメキシカン・レストランでマルガリータを引っ掛け、誰かマリファナを持っていそうな友達をバーに呼び出そうと提案する。その後はJordan Laddの父親の湖畔の家に行く事になる。

メキシカン・レストランでSydney Tamiia PoitierはVanessa Ferlitoに意外なことを語る。朝のラジオ番組で「町でVanessa Ferlitoを見かけた男性が次の詩を暗唱したら、彼女がlap dance（ラップ・ダンス、客の膝に座り込んで踊るセクシーなダンス）を披露するでしょう」と放送したのだという。ウェイトレスが男役となってVanessa Ferlito相手に、現われるであろう男性との会話のリハーサルをする。

三人がレストランから酔って出て来るのを、車内からじっと見つめている男がいた。頬に長く大きな傷跡のある元スタントマンKurt Russell（カート・ラッセル）である。彼が車のバイザーを引っくり返すと、何と三人の娘たちの写真が止めてある。

娘たち三人はQuentin Tarantinoがバーテンをしているバーに行く。彼は女性たちに珍しい酒を振る舞う。Vanessa Ferlitoが煙草を吸いにポーチに出ると、雨の中に大きく髑髏のマークをつけた黒い車が駐車していた。その車の主、Kurt Russellはがつがつと手づかみで食事していた。客の女性Rose McGowan（ローズ・マゴワン）がバーテンに「誰か車で送ってくれないかしら？」と云うと、Kurt Russellが手を挙げるが「ただし、すぐではない。おれが帰りたくなったら…のことだ」と云う。

娘たちにマリファナを持って来てくれた友人がいて、一同はポーチの椅子に座り込んで楽しむ。Kurt Russellがやって来てVanessa Ferlitoに向かって詩を口ずさむ。見知らぬ男を気味悪がったSydney Tamiia Poitierは、「もう彼女は別のバーでlap danceをした」と云い張るが、ずっとストーキングして来たKurt Russellにはそれが嘘だと分っている。「あんたはペテン師か？」とKurt Russellが迫るので、Vanessa Ferlitoはlap danceをすることを決意する。

バーが閉店になり、Kurt Russellは待っていたRose McGowanを車に案内する。彼の車には助手席がなく、しかも運転席との間がアクリル樹脂で仕切られている。「これはスタント場面撮影用の車で、助手席にカメラをセット出来るようになってるんだ」と云い、お尻を乗せるだけのストゥールをくっつける。「心配するな。これは"death proof"（絶対死なない車）だ」と自慢する。

Kurt Russellは乱暴運転を繰り返してRose McGowanを恐怖させ、挙げ句に急ブレーキで彼女を死亡させる。彼は、湖に向かうSydney Tamiia Poitier一行の車に追いつき、追い越し、Uターンしてヘッドライトを消す。彼は全速力で娘たちの車に向かい正面衝突し、娘たち全員を死亡させる。

14ヶ月後。テネシー州Lebanon（レバノン）。奇跡的に命をとりとめ、骨折などの癒えたKurt Russellがやって来る。町のコンビニの前に駐車した彼は、若く魅力的な三人の娘を見つける。娘たちは全員映画関係者（メーク、女優など）で、ニュージーランド からやって来たスタント・ウーマンZoe Bell（ゾーイ・ベル）を迎える。Zoe Bellは映画"Vanishing Point"『バニシング・ポイント』（1971）の大ファンで、その映画に使われた1970年製Dodge Challengerがこの町で売りに出されていることを掴んでいた。彼女はその車を試乗させて貰い、"Ship's Mast"（船の帆柱）と呼ばれるスタントをしたいと願っていた。それは、二本のベルトだけで身体を支え、高速で田舎道を走る車のボンネットに寝そべるという極めて危険なスタントである。試乗に向かう娘たちの車を、Kurt Russellの車が追尾する…。

この映画は、'Pulp Fiction'『パルプ・フィクション」(1994）や'Kill Bill'『キル・ビル』シリーズ(2003、2004)などを手掛けたQuentin Tarantino脚本・監督の作品とは思えないような安っぽい作りになっています。それには理由があって、わざとそうしているのです。
・フィルムに擦り傷を付けて古い映画のように見せている。
・娘たちのお喋りが（意味も無く）長い。
・CGIを使っていない。
・意味もなく白黒画面にした後、意味もなくカラーに戻したりする。
・登場人物の行動に必然性もなく説得力もない。
・中編二本立てのような構成になっている。

Quentin TarantinoはもともとB級映画のファンなのですが、この映画は発想からしてB級アクション映画へのオマージュとして作り上げたものなのです。TVが映画館を侵略する以前、大都市には"Grindhouse"（ストリップの腰回転ダンスが語源）と呼ばれるB級専門映画館がいくつもありました。それらはB級のポルノ映画、暴力映画を休憩無しに連続興行しました。この'Death Proof'は、そういう"Grindhouse"映画を懐かしみ、復興させようという意図で作られたのです。娘たちの他愛ないお喋りが長いのも、予算の少ないB級映画が、一つの場面で上映時間を膨らまそうとした苦肉の策を模倣しているようです。

配役で、看板スターKurt Russellの次に来るのがZoe Bellです。彼女は他の女優たちより歳をくっていて、一寸異質に見えます。役名も無く、本名（芸名）で出ています。彼女は知る人ぞ知るスタントウーマンで、『キル・ビル』シリーズでUma Thurman（ウマ・サーマン）のスタント吹き替えを務めた女性なのです。彼女は'Kill Bill'の撮影で骨折したそうで、今回の抜擢は監督Quentin Tarantinoによる埋め合わせかも知れません。しかし、彼女のボンネット上のスタントは見ものです。ヘルメットも命綱も付けずに走行中の車のボンネットに寝そべるなんて。しかも、Kurt Russellが車で追突したりして来るのですから。

【突然ですが俳優名について】

Uma Thurmanをallcinema ONLINEは「ユマ・サーマン」と表記しています。どうして"Uma"が「ユマ」になるのでしょう？多分、'Pulp Fiction'あたりの時に日本の輸入会社がろくに考えもしないで「ユマ」にしてしまったのでしょう。「女優が“ウマ”（＝馬）じゃ色気ねえじゃねえか」とか云っていたのではないでしょうか？今回、WWWを検索しますと、Uma Thurmanの父親はチベット仏教の専門家で、仏教用語の一つを娘の名として与えたのだそうです。さらに、日本語のチベット仏教関連サイトでは同じ言葉が「ウマ」あるいは「ウーマ」と表記されていました。最後に駄目押し。映画'Paycheck'の英語版予告編を見ましたら、ナレーターが出演者名を並べ立てた時、はっきりと「ウマ・サーマン」と発音していました。

私がなぜこのページで俳優名を横文字にしているか御存知ですか？妙ちきりんなカタカナの名前を何度も繰り返したりしたくないからです。Uma Thurmanの代りに「ユマ・サーマン」と書かねばならないとしたら、私の腸は煮えくり返り、「もうこんなページやってらんない！」となるからです。

(August 07, 2009)

Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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