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Crossroads

『クロスロード』


[Poster]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:1986
監督:Walter Hill
地域:ミシシッピ州
出演:Ralph Macchio、Joe Seneca、Jami Gertz、Joe Morton、Robert Juddほか
範疇:音楽もの/ブルース/ギター/老黒人との旅/悪魔との契約

私の評価 :☆1/2

【Part 1】

[Johnson]

ミシシッピ州のGreenwood(グリーンウッド)から北のテネシー州Memphis(メンフィス)にかけては「ブルース街道」と呼ばれています。ブルースは黒人が弾き語りで、呟くように嘆いたり憂えたりした歌が始まりのようです。私はあまりこのテの音楽は好きではありません。淡谷のり子や青江三奈のブルースと違ってメロディアスでもなく、どれも同じように聞こえるし、大体陰気くさいのでレコードなど一枚も持っていませんでした。2004年に『公民権運動・史跡めぐり』の取材で州北部のGreenwoodに行った折り、Greenwood Blues Heritage Museum & Gallery(ブルース展示館)のオーナー(30歳の黒人の若者)に色々教えて貰い、御礼に売店のCDを買うことにしました。

このブルース展示館は、「ブルース街道」のどこかの十字路(crossroads)で“悪魔に魂を売って楽才を手に入れた”と云われる伝説的なシンガーRobert Johnson(ロバート・ジョンスン)に捧げられています。Georgeの父親はRobert Johnsonの著作権管理者だったそうで、ゴールド・ディスクなどが壁一面に飾られています。Robert Johnsonは27歳で夭逝しましたが、毒殺されたとか色々な説があり、おまけにお墓もあちこちに三つもあり、ひょっとするともっと増えるかも知れないと云われています。で、私は生まれて初めてブルースのレコードを買いました。当然Robert Johnsonの'Cross Road Blues'(1936)が入ったCDです。今回取り上げるこの映画は、この“悪魔との契約”をした十字路を山場にしたものです。

ニューヨーク。ジュリアード音楽院でクラシック・ギターを学ぶ17歳のRalph Macchio(ラルフ・マチーオ)は抜群の腕で将来を嘱望されていたが、彼の本心はブルース・ギターをマスターすることにあった。彼はRobert Johnsonが作曲したものの埋もれている幻の曲があることに気づき、その楽譜と自分の演奏をセットにして売ったら一躍有名になれるだろうと考える。

Robert Johnsonの友達だった黒人の老人Joe Seneca(ジョー・セネカ、約80歳)が、その幻の曲を知っているに違いないと考え、服役中の老人が入っている刑務所付属老人ホームを訪れる。老人の面会拒否にあったRalph Macchioは、「パートタイム募集」の張り紙を見て清掃係として雇われ、老人に接触する。

[the South]

青年の熱意に負けた老人は、「あんたがわしをここから脱出させ、一緒にミシシッピ州Yazoo Cityまで連れて行ってくれたらRobert Johnsonの幻の曲を教えよう」と云う。翌日、Ralph Macchioは警備の目をかいくぐって老人を連れ出し、グレイハウンド長距離バスでテネシー州Memphis(メンフィス)へと向かう。ここからは老人の金でミシシッピ州へと南下するはずだったが、実は老人は文無しであることが分り、二人はヒッチハイクを余儀なくされる。

ミシシッピ州北部。雨宿りした廃屋で17歳の娘Jami Gertz(ジェイミー・ガーツ)と知り合う。彼女はダンスが得意で、家出してロサンジェルスへ向かう途中だった。三人は演奏で小銭を稼いだり、Jami Gertzを誘惑しようとしたバー・オーナーの財布と車を巻き上げたりして、南への旅を続ける。

ある町の白人のバーから追い立てられたRalph MacchioとJami Gertzは、老人が訪れていた黒人のジューク・ジョイント(踊れる酒場)へ行くが、「ここは白人の来るところじゃねえ」と黒人たちに囲まれる。老人がハモニカを吹き、Ralph Macchioを招き寄せて二人で演奏し、危機を脱する。老人が本当にRobert Johnsonの友達だったことが、ここで明らかになる。

Jami Gertzは自分の夢を追って一人旅立つ。彼女と懇ろになっていたRalph Macchioは、悲しみのブルースを奏でる。

ついに二人は老人の想い出の町Yazoo Cityにやって来た。二人は老人が悪魔と契約した十字路(crossroads)に立ち、ギターを奏でて悪魔の出現を待つ…。

Ralph Macchioは'Karate Kid'『カラテ・キッド』(1984)が大ヒットした二年後の作品。IMDbのデータですと、彼はこの時25歳だそうですが、17歳の役がおかしくないほど若いです。事実、この後二本も'Karate Kid'の続編を撮っています。彼の名の後半は"Pinocchio"(ピノッキオ)と同じですから、「マッキオ」が正しいのでしょうが、本人も正しい読み方を知らず、自分ではマチーオと呼んでいるそうです。なお、この映画の役はニューヨークの金持ちが住むLong Island出身ということになっていて、Joe Seneca老人から「Long Island出身でブルースを弾くだと?ワハハハ」と馬鹿にされます。ブルースは貧しく哀しい者の音楽だというわけです。で、Ralph Macchioは本当にLong Island出身なのです:-)。

Ralph Macchioのギター演奏の指さばきはとても良く見えますが、本当は(一部を除き)Ry Cooder(ライ・クーダー)による吹き替えだそうです。私は1994年に奈良・東大寺で行なわれた「GMEあおによしコンサート」の舞台裏の撮影で、何日間もRy Cooderを目にしていましたが、彼が喜納昌吉のバックをつとめてせいもあって、あまり大したミュージシャンじゃないと思っていました。しかし、コンサート本番になると彼への声援が結構あり、「意外に人気あるんだな」と認識を改めた次第でした。彼はこの映画の監督Walter Hill(ウォルター・ヒル)の信頼が篤いようで、二人はこれ以外に六本も一緒に仕事をしています。そういうことを知っていたら、もっと尊敬の眼差しで見たのでしょうが。

この映画のうまいところは、Robert Johnsonの有名な'Cross Road Blues'(十字路ブルース)をヒントに、その歌詞に出て来る"My friend Willie Brown"に命を吹き込んでJoe Seneca老人に仕立て上げたことでしょう。彼は本当にWillie Brownなのか?幻の曲は実在するのか?そして、十字路で何が起るのか?と興味をかき立てられます。

映画のロケ地であるYazoo Cityへのサーヴィスか、この映画では問題の十字路がYazoo Cityにあるように決めつけていますが、実際のところはそれがどこか誰も知らないようです。私はそれはGreenwoodと北のClarksdale(クラークスデイル)を結ぶハイウェイ49号線のどこかが相応しいと思います。根拠は薄弱で、Yazoo Cityよりも音楽が盛んだった「ブルース街道」の南半分というだけのことですが。

多数のいい職人たちが仕事をしたようで、映像も音声も演技も安心して観ていられます。

驚いたことに、このアメリカ版DVDには日本語字幕がついていました。こんなの初めてです。英語か日本語か二択で、スペイン語もフランス語も無し。

(December 26, 2006)



Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema」は株式会社スティングレイの登録商標です。




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