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Crimes of the Heart

『ロンリー・ハート』


[Poster]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:1986
監督:Bruce Beresford
地域:ミシシッピ州
出演:Diane Keaton、Jessica Lange、Sissy Spacek、Sam Shepard、Tess Harperほか
範疇:戯曲の映画化/三姉妹の再会/夫を射つ/口論と和解/コメディ

私の評価 :☆☆

【Part 1】

[the South]

女流劇作家Beth Henley(ベス・ヘンリィ)による戯曲はピューリッツァー賞を受賞していて、彼女がこの映画の脚本も執筆しています。彼女はミシシッピ州生まれで、“南部もの”の戯曲をいくつも書いています。この作家の戯曲の映画化としては'Miss Firecracker'『ミス・ファイヤークラッカー』(1989)というのを先に観ましたが、☆一つという内容でがっかりしていたため、この'Crimes of the Heart'も期待していませんでした。それは嬉しい誤算でした。この映画はDiane Keaton(ダイアン・キートン)、Jessica Lange(ジェシカ・ラング)およびSissy Spacek(シシィ・スペイセック)ら三女優のお芝居を充分楽しむことが出来ます。DVDのデジタル化も素晴らしく、鮮明でカラフルな映像になっています。

ミシシッピ州。Diane Keaton、Jessica Lange、Sissy Spacekは三姉妹。三人の父は彼女たちの少女時代に出奔し、ほどなくして母親は首を吊って自殺した。その後、三姉妹は祖父の手で育てられたのだが、その祖父が現在は高齢で弱っていて、長女Diane Keatonが嫁にも行かず世話している。次女Jessica Langeは歌手兼女優になるべくハリウッドに行っている。三女Sissy Spacekは金持ちの地方名士と結婚していた。

そのSissy Spacekが夫を拳銃で射ち、重傷を負わせた。Diane KeatonはJessica Langeに電報を打ち、呼び寄せる。Jessica Langeが長距離バスで戻って来た日、丁度Sissy Spacekも保釈で出て来る。この日はDiane Keatonの誕生日でもあった。隣りに住む従妹Tess Harperは三姉妹を良く思っていない小うるさい女だが、誕生日のプレゼントとしてチョコレートの箱をくれる。Diane Keatonはクッキーに小さなロウソクを立て、一人"Happy birthday to me."と歌う。

勢揃いした三人は再会を喜ぶ。姉妹は「なぜ旦那を射ったのか?」とSissy Spacekに尋ねるが、彼女は理由を話したがらない。母の墓参りに行くSissy Spacekについて行ったJessica Langeは、やっと銃撃事件の顛末を聞き出す。Sissy Spacekは15歳の黒人少年の犬を引き取り面倒を見ていた。彼女は少年が犬に面会に来ることを許し、庭で少年と犬が遊ぶのを見て心を和ませていた。しかし、ある日帰宅した夫が黒人少年を殴ったり蹴ったりして追い出したため、拳銃を持ち出して夫を射ったのだ…と説明する。

Jessica Langeは勝手にDiane Keatonの誕生日プレゼントのチョコレートを開け、半分齧っては残りを箱に戻していた(ナッツを探していたのだと云う)。Jessica Langeは自分が捨てたSam Shepard(サム・シェパード)が既婚者であるのを知りながら逢い引きに出ようとする。Diane Keatonはそうした自分勝手なJessica Langeに怒りをぶつける。Jessica LangeはSissy Spacekから内緒で聞いたDiane Keatonの短期間のボーイフレンドのことを持ち出して、Diane Keatonを憤激させる。Diane Keatonは卵巣が萎縮する病に罹っていて、子供が産めない身であることを知ったため別れたのだった。

Sissy Spacekの弁護士は、夫の姉が私立探偵を雇って撮らせたSissy Spacekの写真を持って来た。それは彼女が納屋で黒人少年と****している写真だった…。

'Miss Firecracker'『ミス・ファイヤークラッカー』よりもユーモア(ブラック・ユーモア)が満ち溢れていて、笑えます。三人の女優の芝居の見せ場もそれぞれ公平に用意されていますし、彼女たちのアンサンブルも見事です。Diane Keatonはいかず後家の悲哀をさらりと表現し、Jessica Langeはハリウッドでの失敗を隠して陽気に振る舞う二面性を巧みに演じ、Sissy Spacekは末っ子の可愛さと素っ頓狂な発想と行動で笑わせてくれます。

しかし、'Crimes of the Heart'という原題を『ロンリー・ハート』にするとは、呆れ果ててものも云えません。原題も意味がよく分らないとは云え、『ロンリー・ハート』だと悲しく寂しい映画のように誤解されるでしょう。面白い部分のいくつかをPart 2で紹介しますが、これはコメディです。

映画の冒頭近くでSam Shepardが大きな袋に入ったpecan(ピカン)をDiane Keatonに上げます。pecanはアメリカ中部と南部で育つクルミ科の木で、クルミに似た木の実を秋に地面に落します。クルミ同様、それ自体では甘くありませんが、炒った後香ばしくなります。殻を割って中身をほじくり出すのは結構大変なので、私はあまりやりたくありません。食料品店では殻を取ったものも売られています。pecan pie(ピカン・パイ)というお菓子に用いるのがポピュラーです。

Diane KeatonはSam Shepardの奥さんについて「ヤンキーよ」と云います。日本ではアメリカ人を総称して“ヤンキー”と云うようですが、アメリカ国内で“ヤンキー”と云えば北部出身の人を差します。

Jessica Langeは買って来たばかりのバーボン・ウィスキーを茶色の紙袋に入ったまま、キャップだけ開けて袋ごと掴んで呑みます。酒屋では酒類を必ず茶色の紙袋に入れてお客に渡す習慣がありますが、禁酒法時代の名残りか、アル中と分るのを嫌がるお客へのサービスなのか、根拠はよく分りません。

最初にDiane Keaton一人で"Happy birthday to me"と歌われ、最後にJessica LangeとSissy Spacekによって普通に"Happy birthday to you"と歌われる曲は、アメリカ人の教師姉妹によって作られ、当初はクラスで"Good Morning to All"と歌われたものだそうです。それが"Happy birthday to you"になった時、著作権が申請されたので、法律的にはこの著作権保有者の許諾無しに公衆の前で演奏・放送されると違法行為となるそうです。信じられないような話ですが本当です(http://en.wikipedia.org/wiki/%22Happy_Birthday%22 参照)。この映画のクレジット・タイトルにもちゃんと題名と作詞・作曲者名が表示されます。この曲の著作権が消滅するのは2030年だそうです。

(January 24, 2007)



Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema」は株式会社スティングレイの登録商標です。




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