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Cross Creek

『クロスクリーク』


[Poster]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:1983
監督:Martin Ritt
地域:フロリダ州
出演:Mary Steenburgen、Rip Torn、Peter Coyote、Dana Hill、Alfre Woodard、Malcolm McDowellほか
範疇:女流作家のノンフィクションの映画化/ニューヨークから沼沢地へ/創作活動/地元民との交流/ロマンス

私の評価 :☆

【Part 1】

名作映画'The Yearling'『子鹿物語』 (1946)の原作者(ピューリッツァー賞受賞)であるMarjorie Kinnan Rawlings(マージョリー・キンナン・ロウリングズ)の半自伝的エッセイの映画化。

1928年。Mary Steenburgen(メアリ・スティンバージェン)は新聞記者の夫とニューヨークに住み、小説を書いていた。題材は当時人気があった“ゴシック・ロマンス”と呼ばれる中世を舞台にした怪奇・恐怖小説だった。夫も出版社も彼女の才能は認めてくれたが、まだ一冊も本になっていなかった。彼女は創作に専念すべくフロリダ州のCross Creek(クロス・クリーク)という湖岸の地に居を移すことにする。そこは僅か12家族ほどが住んでいる沼沢地である。夫は職を捨ててそんな辺鄙なところへ行く気はなかった。

Mary Steenburgenはポンコツ自動車を駆って一路南下する。クロス・クリークに近い町に入った時、車がエンコする。タクシーのあるような町ではなく、ホテルのマネジャーPeter Coyote(ピーター・カイヨティ)が車で送ってくれる。彼女が購入した家は、人里離れ、荒れ果て、ツタに覆われ、室内も埃だらけの凄まじい状態だった。30ヘクタールの果樹園(オレンジ)も惨めな状態だった。

発電機で電気をつけ、屋内・外の掃除をする。黒人娘Alfre Woodard(アルフリ・ウッダード)がやって来てメイドとして雇ってくれと云う。Mary Steenburgenは創作活動を邪魔されそうで恐れるが、娘の積極性に気圧されて試すことにする。鉄砲を手にした隣人のRip Torn(リップ・トーン)が、13歳の男の子のような格好をした娘Dana Hill(デイナ・ヒル)を連れて挨拶に来る。

翌日、娘のDana Hillが虫刺されの薬を届けに来る。彼女は可愛い仔鹿を従えている。Dana Hillは彼女の母親の「パーティに来てくれ」というメッセージを伝える。Mary Steenburgenは手作りのケーキを持って訪れる。Dana Hillの母はピアノを弾き、次男はハモニカを吹き、次女は踊りを披露し、三女はシュロの葉で蚊を追ってくれる。

Rip Tornが一人の独身青年を紹介する。Mary Steenburgenは果樹園を復興する計画にその青年を雇う。青年は彼女の果樹園に水を引く作業に従兄の青年に手伝わせる。彼は妻帯者で、妻にMary Steenburgenの井戸水をやってくれと頼む。その妻は"Jacob's Ladder"『ヤコブの梯子』という歌をうたいながら水を貰いに来る。畑に水が引かれ、ついにオレンジ農園は復興する。

ホテルのマネジャーPeter Coyoteは、Mary Steenburgenのポンコツ車を修理し、車体も塗り替え、新品のようにして届けて来る。彼女は何くれとなく彼女の面倒を見てくれる彼に好意を抱く。ある日、彼女はPeter Coyoteをディナーに招待し、デザートにピカン・パイとウィスキー入りコーヒーを出す。二人はキスする。

Mary Steenburgenは「これまで書いたものの中で一番出来がいい」と自賛した小説をニューヨークの出版社に送る。近況を伝える手紙には、クロス・クリークの隠遁者のような人々のこと、仔鹿を飼っている少女のことなどを記す。出版社からは「小説は他の作家の影響が顕著でユニークさに欠ける。あなたの手紙に書かれている隠遁者のような人々の話は面白い。是非、それを書いてみてくれ」と云ってくる。豪雨が訪れる。Mary Steenburgenは雨に打たれ、出版社からの手紙を読み返し、タイプライターに向ってクロス・クリークの人々の物語『ヤコブの梯子』を書き始める…。

原作者は1953年に亡くなったそうですが、この映画製作当時彼女の二番目の夫(Peter Coyoteが演じた人物)はまだ存命で、彼が様々なことをスタッフ・キャストに教えてくれたそうです。そのせいで、原作者の性格や行動(かなりアルコールが好きだったことなど)はかなりリアルに描かれているようです。【その夫本人は、Mary Steenburgenが初めて町へ着いた時、道を教える老人として特別出演しています】

監督Martin Ritt(マーティン・リット)は何本か“南部もの”の秀作を作った人ですし、この映画は'Norma Rae'『ノーマ・レイ』(1979)の四年後ということで期待したのですが、彼が69歳という年齢のせいか実話に即した脚本のせいか、起伏に乏しくメリハリもありません。逆にそれが、人里離れ孤立した単調な生活、執筆活動が世に受け入れられるかどうか分らない重苦しい気分などを醸成しているとも云えます。そういう平板な物語を救うのが、フロリダの湿地帯の美しい風景です。Mary Steenburgenは「私が出た映画の中で最も緑が多い映画」と定義しています。緑ばかりでなく、水面の反映にもうっとりします。

Mary Steenburgenはこれが劇場映画六本目。最近は脇役専門ですが、何本かヒロインを演じていたデビュー当時の一本。あまりにも華奢なので、荒れ果てた家の修繕や果樹園の作業なんて無理なように見えます。性格俳優Rip Tornは豪快な演技、Peter Coyoteの役は当時モデルが現存していたせいか、よくある主人公のサポーター役に留まっていますが、彼の持ち味でリアリティーを出す努力が見られます。Alfre Woodardは若さを活かして軽妙・溌剌なアクションをしていて強烈な印象を残します。なお、Mary SteenburgenはDVDの談話で、「アルフレ」ではなく「アルフリ」と発音していました。当サイトのAlfre Woodardの発音も全て「アルフリ」に統一しました。

仔鹿を飼う少女を演じるDana Hillは、十歳の時から糖尿を患い、そのせいで成長が止まってしまったそうです。この映画の役は13〜14歳で、子役にしては達者で手堅い演技だと思っていましたが、彼女の当時の実年齢は19歳だったとか。この後はTV出演やアニメの声優などを務めていましたが、病状の悪化で32歳で早世してしまったそうです。

主人公の文才を見抜き、路線変更を助言し、ついに出版するまでに至る編集者としてMalcolm McDowell(マルカム・マクダウェル)が出て来ます。当時彼はMary Steenburgenの旦那だったので(七年後に離婚)特別出演したのだそうです。

(September 22, 2007)



Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema」は株式会社スティングレイの登録商標です。




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