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Cockfighter

『コックファイター』


[Poster]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:1974
監督:Monte Hellman
地域:ジョージア州
出演:Warren Oates、Richard B. Shull、Harry Dean Stanton、Ed Begley Jr.、Patricia Pearcyほか
範疇:原作もの/闘鶏師/野望/闘鶏試合/ロマンス

私の評価 :☆

【Part 1】

闘鶏はアジア諸国やインド・パキスタン、中米などではまだ盛んなようですが、世界的には動物愛護の観点から残虐であると考えられており、アメリカでもほとんどの州で禁止されています。この映画が製作された頃は全米50州のうち47州で禁止されていたそうです。それも最近では49州となり、唯一残っていたルイジアナ州でも闘鶏を禁止する法案が通り、2008年夏に施行される予定です。

この映画はWarren Oates(ウォーレン・オーツ)演ずる闘鶏師が、ある年の闘鶏師No.1になるまでの経緯を描いたもので、題材と物語のスケールはB級ですが、様々な点でB級を超える特徴があります。先ず、撮影監督がFrancois Truffaut(フランソワ・トリュフォー)の'Les Deux Anglaises et le Continent'『恋のエチュード』(1971)などを手掛けたNestor Almendros(ネストール・アルメンドロス)であること。彼はヨーロッパでいくつもの名作を手掛けていましたが、これがアメリカ進出第一作。闘鶏の激しい動きのディテールの描き方は素晴らしい。また、'Summer Place'『避暑地の出来事』(1959)のTroy Donahue(トロイ・ドナヒュー)、'The Diary of Anne Frank'『アンネの日記』(1959)のMillie Perkins(ミリィ・パーキンス)など、懐かしい顔が出ているのも魅力。有名な黒人俳優(声優でもある)James Earl Jones(ジェイムズ・アール・ジョーンズ)の父親Robert Earl Jones(ロバート・アール・ジョーンズ)も出ています。

闘鶏師Warren Oatesは、闘鶏を育てている農家から見込みのある雄鶏を購入して仕込み、闘鶏トーナメントで賞金を稼ぐ男。彼は自分の鶏を選ぶ眼力とトレーニング・メソッドには溢れるほどの自信を持っている。

彼はRV(キャンピング・カー)に乗り、若い女を道連れに旅していた。ある日の試合で、彼の鶏はHarry Dean Stanton(ハリィ・ディーン・スタントン)の鶏に負け、RVを女ごとHarry Dean Stantonに取られる。Warren Oatesは鞄一個と闘鶏を入れる篭一個を手に、裸同然で歩き出す。

Warren Oatesは聾唖ではないのだが全く喋らない。ほとんどの会話を身振り手振りで行なう。込み入った話になると筆談で処理する。数年前、いい鶏を得たWarren Oatesはその鶏の素晴らしさを吹聴し、試合が待ち切れずにホテルの室内でライヴァルHarry Dean Stantonの鶏と対戦させたのだが、彼の鶏は殺されてしまった。Harry Dean Stantonは「あんたは喋り過ぎだ」と忠告する。それはその年の“南部一”を決めるトーナメント目前だったため、彼は年間No.1の称号を得るチャンスをフイにした。そのショックを教訓にWarren Oatesは喋ることを止めたのだ。周囲も彼の表情・ジェスチャーを読み取ることに慣れ、彼の言葉を期待しなくなっていた。

Warren Oatesはある闘鶏育成農家で有望な白い雄鶏に目をつける。値段は500ドル。先ず、金を作らなくてはならない。彼はバスで自宅に戻る。それはモービル・ホーム(可動式住宅)で現在弟のTroy Donahueとその妻Millie Perkinsが住んでいた。Warren Oatesは六ヶ月も会っていなかったガールフレンドPatricia Pearcy(パトリシア・ピアスィ)と再会し、屋外でセックスする。彼女は結婚し子供を作りたがっており、彼に腰を落ち着けて貰いたがっていた。しかし、彼は闘鶏師No.1になる野望を捨て切れない。

Warren Oatesは弟夫婦に無断で家を売り払って金を作る。早速例の白い雄鶏を購入し、様々な設備を使って仕込む。闘鶏育成農家の髭男Richard B. Shull(リチャード・B・シュル)が年間パートナーになることを希望し、Warren Oatesは承諾する。

白い雄鶏は公式試合でも、闘鶏自慢の農家の親子との非公式対戦でも勝ち続け、相棒Richard B. ShullはWarren Oatesに「今年のNo.1はあんたで決まりだぜ!」と云う。“南部一”決定トーナメントの晴れ舞台を前に、Warren OatesはガールフレンドPatricia Pearcyに招待券を郵送するのだが…。

これまでにも闘鶏シーンが含まれている映画は沢山観ましたが、さすが'Cockfighter'という題だけあって、この映画の闘鶏は凄い。雄鶏たちが噛み合い、ジャンプして空中で蹴り合ったりします。羽を広げた鶏の姿が美しい。他の闘鶏では剃刀の刃のようなものを鶏の脚につけるようですが、この映画では鋭利な金属の鈎のようなもの(写真参照)を拍車のように脚に装着しています。この映画の撮影はその鈎の動きをアップで見せてくれます。相手の鶏を踏みつけると、その鈎が相手の身体に突き刺さってお互いに身動き出来なくなります。これはボクシングのクリンチみたいな状態なので、審判の判断で両者をブレイクさせます。次第にお互いが傷つき、血みどろになります。とりわけ、白い鶏だと返り血や自分の血で赤く染まるのが凄絶です。この映画の試合は相手の鶏が逃げ出すか殺されるまで試合を継続します。確かに残酷ですが、スペインやメキシコの闘牛も、出て来た牛は生きては帰れないのですから、残酷さはどっちも同じですよね。イギリスでは残酷さを理由に上映禁止になったそうです。【写真はwikimedia.orgにリンクしています】

監督はDVDのコメンタリーで、「映画の中で死んだように見える鶏も、実際には死んではいない」と云っていますが、Warren Oatesが鶏の首を刎ねるシーンで使った斧は、ゴム製ではなく本物だ」と云っていますから、殺された鶏もいるわけです。

非常に珍しいのは、主役が99%喋らないこと。Warren Oatesは台詞を覚える手間が要らずに喜んだでしょうが、少しトボケた顔の彼が表情だけで必死に感情を表そうとすると、情けないような頼りない男の顔になるのが欠点。

闘鶏試合の観客で出演している人々は、全て本物の闘鶏師たちだそうです。俳優は主要な役だけで、後は全部素人を使ったわけです。それを監督は「この映画の50%はドキュメンタリーである」と云っていますが、闘鶏の試合も(本物そっくりではあっても)正式の試合ではないのでドキュメンタリーとは云えません。Warren Oatesの白い鶏は連戦連勝しなければならないので、これには金属の鈎を付け、相手の負けなければならない鶏にはゴムの鈎を付けたそうです。

Warren Oatesのガールフレンドは「あんたの鶏を見る目は、鶏を愛してもいないし、哀れんでもいない。冷血だわ。あんたよりは鶏の方が心を持ってるわよ!」と糾弾します。「闘鶏師を100%賛美するのもナンだから、少し批判も入れとこう」という、製作者側の意図が見えるようです。

この項にPart 2はありません。

(January 13, 2008)


【追記】

アメリカ本土において闘鶏が許されていた最後の地ルイジアナ州で、ついに2008年8月15日に闘鶏禁止法が施行され、違反者には最高$1,000の罰金と六ヶ月の懲役が課せられることになりました(刑は初犯の場合であり、繰り返せばもっと重くなるようです)。

ただし、アメリカの飛び地であるプエルトリコ、サモア、グアムでは闘鶏は違法ではなく、お隣のメキシコやフィリピンその他の国々では闘鶏は人気のある催しなので、闘鶏が地上から消えたわけではありません。

(August 11, 2008)


Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema」は株式会社スティングレイの登録商標です。




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