公開：2004
監督：Ray McKinnon
地域：アーカンソー州
出演：Billy Bob Thornton、Lisa Blount、Ray McKinnon、Harry J. Lennix、Walton Gogginsほか
範疇：交通事故／心身を病んだ妻／贖罪を願う夫／ドラマ

私の評価 ：☆

【Part 1】

南部生まれの映画人たちが自分たちのために作った映画。

アーカンソー州。夜の山道を妻子を車に乗せて走るBilly Bob Thornton（ビリィ・ボブ・ソーントン）。いつからかパトロール・カーに追尾され、気になった彼はスピードを上げて路肩を外れ、車を転覆させてしまう。幼い息子は死に、Lisa Blount（リサ・ブラウント）演じる妻も重症で首に障害が残ってしまう。【原題'Chrystal'（クリスタル）は妻の名前】

20年後。妻Lisa Blountは色情狂になっていて、近所の若者たちに自由にセックスさせる。刑務所を出所したBilly Bob Thorntonが戻って来る。彼は妻が自分の罪を許してくれないものと考え、ポーチに一人寝る。荒れ果てた庭を片付けるうちに、彼は息子の三輪車を見つける。庭で見つけたガラクタを積み上げ、彼は何かを作り始める。

女占い師が、首の不自由なLisa Blountに、「あなたの首に子供がいるのだ」と云う。

Billy Bob Thorntonは顔馴染みのWalton Goggins（ウォルトン・ゴギンズ）や二人の青年とフィッシュ・キャンプ（食堂）に行く。薄気味の悪い麻薬売人Ray McKinnon（レイ・マッキンノン）が絡んで来る。Billy Bob Thorntonは「表へ出ろ」と云い、興奮した客たちが円陣を作った広場で二人は対峙する。

その頃、近くのフォーク歌手の家では大勢を前にした演奏が佳境に入っていた。そこへLisa Blountが、山道で動けなくなっていたシカゴの黒人大学教授Harry J. Lennix（ハリィ・J�・レニックス）を連れて来る。彼はフォーク・ミュージック研究者で本を書くため、音楽の録音に来たのだった。周囲の勧めでLisa Blountはトラディショナルの'Rockin' Chair'を歌う。

Billy Bob Thorntonは平手打ちと蹴りの応酬という珍しい喧嘩を優勢に進めていたが、聞こえて来た妻の歌声に気を取られてRay McKinnonから反撃される。Billy Bob Thorntonは殴られることによって妻への贖罪を果たそうとでもするかのように抵抗もせず、さんざぶちのめされる。

妻Lisa BlountはBilly Bob Thorntonに「愛しているなら私の首を切って！」と包丁を渡し、そのまま彼の手を取って首筋を切ろうとする（占い師の言葉の影響）。その夜、「Billy Bob Thorntonは麻薬を栽培している」というタレコミにより、警官隊が家を包囲して踏み込んで来る…。

先ず、Billy Bob Thorntonがアーカンソー州生まれ。妻を演ずるLisa Blountもアーカンソー生まれでこの映画のプロデューサーの一人であり、製作・脚本・監督・助演のRay McKinnonの実際の妻でもあります。そのRay McKinnonはジョージア州生まれ。助演のWalton Gogginsはアラバマ州生まれのジョージア州育ちであり、もう一人のプロデューサーでもあります。Lisa Blountの母親を演ずるGrace Zabriskie（グレイス・ザブリスキ）はニューオーリンズ生まれ。青年の一人はノース・キャロライナ生まれ。見事に南部人で固めています。ついでですがシカゴから来た大学教授を演ずるHarry J. Lennixは、実際にシカゴ出身。

Lisa Blountはあまり知られた女優ではないようですが、作品リストを見ると相当な数の映画に出演しています。そういう出演料を貯め込んでおいて、夫の力も借りてこの映画に賭けたんでしょう。さすが大枚をはたいて主演を張っているだけに体当たりの演技に圧倒されます。歌も自分で歌っており、なかなか聴かせます。彼女の賭けは図に当たり、ストックホルム映画祭で主演女優賞を獲得しました。

Billy Bob Thorntonは'Monster's Ball'『チョコレート』（2001）を引き摺ったような暗い芝居ですが、まあ可も無く不可も無し。製作・脚本・監督・助演のRay McKinnonは存在感を出しており、印象に残ります。

Walton Gogginsを初めて見たのは'Red Dirt'（2000）で、その時「Billy Bob Thorntonを若くしたような俳優だな」と思いました。その二人が共演するという映画なので楽しみにしていましたが、こうやって並ぶと、ちっとも似ていませんでした。

聞く所によると、アーカンソー北部とミズーリ、オクラホマにまたがる高原を"Ozark Mountain"（オウザーク山地）と云い、そこには独特のフォーク・ミュージックが伝わっているとか。シカゴの教授はそれを録音しに来たという設定です。

「フィッシュ・キャンプ」とは、南部では主にナマズの唐揚げを食べさせる大衆食堂です。この映画に出て来るような、飾り気のない大きな建物に、質素な机と椅子が並んでいるだけ。メニューには色々並んでいても、目玉はナマズの唐揚げです。南部一帯は養殖ナマズの大産地として有名。鱈をさっぱりさせたような白身の肉で、コーン油やピーナッツ油などで揚げるので（コレステロールの心配もなく）くどくありません。切り身もあるのですが、この映画のように頭と内蔵だけ取ったナマズを丸のまま揚げたものが人気。「食べ放題」を選ぶと、皿が空になればすぐ補充されます。“わんこナマズ”ですね:-)。コールスローがサイド・ディッシュで、これも食べ放題です。

(December 20, 2006)

Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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