公開：1982
監督：Paul Schrader
地域：ルイジアナ州ニューオーリンズ
出演：Nastassja Kinski、Malcolm McDowell、John Heard、Annette O'Toole、Ruby Dee、Ed Begley Jr.ほか
範疇：リメイク／人食い黒豹／兄妹相姦／ロマンス／ホラー／ファンタジー

私の評価 ：☆

【Part 1】

未開の砂漠地帯の大木に、黒豹が何頭も群れている。原住民が若い娘を生け贄として豹に差し出し、木に両手両足を縛り付ける。豹に気に入られた娘は、豹の洞窟で暮らす。

現代、ルイジアナ州ニューオーリンズ。若い娘Nastassja Kinski（ナスターシャ・キンスキー）が空港に到着し、兄のMalcolm McDowell（マルコム・マクダウェル）が出迎える。二人は幼い時期に離ればなれになり、今回やっと巡り会えたのだった。Nastassja Kinskiは兄の住む家で黒人の家政婦Ruby Dee（ルビー・ディー）から歓迎される。

夜、眠っているNastassja KinskiのベッドにMalcolm McDowellが猫のように跳び乗り、「ガウー」と吠える。

市内の連れ込みホテルにマッサージ師（売春婦）がやって来る。彼女は浴室にいる筈の客に話しかけながら下着になって行くが、ふと気づくと、ベッドの下に動くものがある。それは豹の黒い尻尾だった。

ホテルの「覗き用カメラ」で豹の存在を知ったマネジャーの通報で、警察がホテルの周囲を封鎖し、30代の動物園園長John Heard（ジョン・ハード）と若い女性アシスタントAnnette O'Toole（アネット・オトゥール）らがやって来る。John Heardは室内から出られず暴れ回る黒豹に麻酔銃を射ち、生け捕りにして動物園の檻に入れる。

Malcolm McDowellが行方不明になった。Nastassja Kinskiはニューオーリンズ市内観光を楽しむが、最後に動物園に行き、捕らえられた黒豹に魅せられ、スケッチを始める。閉園時間を過ぎても園内にいる娘を不審に思ったJohn Heardが何か問いかけようとすると、Nastassja Kinskiは走って逃げ、灌木の上に猫のように身軽にジャンプする。John HeardはNastassja Kinskiと食事に行き、彼女が職を探していると聞くと、動物園の土産物売り場の店員になることを勧める。

園長のアシスタントAnnette O'TooleがNastassja Kinskiを呑みに誘う。Nastassja Kinskiにモーションをかけて来る男たちを無視しない彼女に、Annette O'Tooleが「自分を安売りしない方がいいわよ」と云うと、Nastassja Kinskiは「愛想よくしてるだけよ。まだセックスしたくなるような男性に会ったことないわ」と云う。Annette O'Tooleは「じゃ、まだあなた処女なの？」と驚く。突如、後ろの席にいた見知らぬ女が"Mi hermana."（＝My sister）とNastassja Kinskiに呼びかけて去って行く。

動物園の黒豹がNastassja Kinskiの目の前で飼育係の男性の腕を食いちぎり、出血多量で死亡させる。園長John Heardが銃を持って駆けつけた時、檻の戸が開いていて黒豹は逃げ去っていた。

Nastassja Kinskiが帰宅すると、兄Malcolm McDowellが戻っていて「刑務所に入っていた」と云う。Malcolm McDowellは「おれだけがお前に触ることが出来、お前だけがおれに触ることが出来る。おれたちは同種だからだ」と云い、Nastassja Kinskiに襲いかかる。Nastassja Kinskiは二階の窓から猫のように地面に跳び下り、来合わせたパトカーを止める。警官たちは警察犬の異常な興奮を見て、刑事を呼ぶ。刑事はMalcolm McDowellの家の地下室で人骨を何体か発見し、黒豹はここで飼われ、売春婦や家出人が餌にされていたと推理する。警察は家政婦Ruby Deeを逮捕し、Malcolm McDowellを指名手配する。

園長John HeardはNastassja Kinskiをバイユー（川、湖などにある沼のような入江）のコテージに誘い、ボートに乗ったりザリガニ釣りをしたりする。夜、John HeardはNastassja Kinskiを抱こうとするが、Nastassja Kinskiは"I can't."と拒む。（その頃、兄Malcolm McDowellも旅行中の女性を引っ掛けてホテルに泊まっていたが、こちらも興奮出来ずに呆然としている） 夜中に起き出したNastassja Kinskiが川辺を歩くと、闇の中なのに猫の目で見るようにヘビやフクロウなどがはっきり識別出来る。彼女は野うさぎに襲いかかり、口の周りを血だらけにする…。

私はホラーものは嫌いなのですが（恐いから）、ホラーだという理由でこの映画を“南部もの”から除外していたわけではなく、これが“南部もの”とは知らなかったのでした。このサイトの読者のお一人が教えて下さったので、「へえ、これが！」と思った次第。この映画がホラーであれ何であれ、若く美しいNastassja Kinskiを観るだけでも価値があります。その透き通るような肌、美しい目、魅力的な唇。おまけに、惜しげなく何度も全裸になってくれます。日本公開時には多分ぼかしが入ったであろうようなショットさえ何度かあります。アメリカのDVDではぼかしはなく「ウシシ」です:-)。後半ではAnnette O'Tooleも豊かな乳房を披露してくれますし、サーヴィス満点（男性観客にとってだけですけど）。【この映画がアメリカのTVで放映された際、最後の30分（女性の裸が一杯出て来る）はたったの5分程度に切り詰められていたそうです】

これは1942年製作の映画のリメイクとは云うものの、旧作を大幅に書き換えてあるそうです。オリジナルの舞台はニューヨーク。監督Paul Schrader（ポール・シュレイダー）は「何故ニューオーリンズに変えたかというと、ニューオーリンズなら何でもありなので、このような物語も存在し得るからだ」と述べています。なるほど、他所からはそう思われてるんですね。Voodoo（ヴードゥー）があったり、バーボン・ストリートのようにジャズ酒場とヌード劇場が入り混じっているところがあったり、売春も盛んなようですから、他所目にはニューオーリンズは相当いかがわしい街に見えるようです。だから、'Tightrope'『タイトロープ』(1984)とか'Angel Heart'『エンゼル・ハート』(1987)などという、おどろおどろしい映画の舞台にされちゃうんですね。

John HeardとNastassja Kinskiが生牡蠣を食べるシーンがあり、「どう食べたらいいのか分んない」と云うNastassja KinskiにJohn Heardが実演して見せます。「先ず、レモンのスライスを絞ってカキにかけ、ワサビと"red sauce"をちょっぴりかける。カキの縁を持って、啜るように喉に滑り込ますんだ」と説明します。ここで"red sauce"と云っているのはケチャップだと思います。タバスコがタイアップ（宣伝料負担）をOKしなかったのかとも思いましたが、だとすると言い換え語は"red spicy sauce"とならなければいけないでしょう。'Birth of the Blues' 『ブルースの誕生 』(1941)と'The Cincinnati Kid'『シンシナティ・キッド』(1965)では「タバスコをかける」と云っていました。なお、ここでJohn Heardが呑んでいるビール'Dixie'は、ニューオーリンズの地ビールです。

私はニューオーリンズの動物園には行ったことがないので、「あんな凄いデザインの動物園なら行ってみたい！」と思って観ていましたが、屋根に豹の彫像が沢山並んでいる素晴らしい動物園はセットだそうです。檻が見える部分は全てユニヴァーサル・スタジオの屋外に建てられたセットで、動物の専門家と動物愛護連盟の立ち会い（監視？）のもとで撮影されたとのこと。

ニューオーリンズ市内の撮影は数ヶ所で行なわれています。動物園の入り口と公園、オーク・トリーの分離帯がある昼なお暗い通り。由緒ある古い建物の数々。そしてフレンチ・クォーター。しかし、その大部分は交通を遮断して撮影したような感じで、人気（ひとけ）がなくあまり自然には見えません。

118分と長い映画ですが、Nastassja Kinskiがいつ豹になるのか？という興味で、最後まで厭きずに観られます。彼女が映画の最初のシーンを再訪するところで、「あれ、これで終りか？」と思わされますが、実はその後でJohn HeardとNastassja Kinskiのロマンスが完結します。100分ぐらいだったらいいのに…という気もしますが、短縮されるのがエロティックな場面だとするとこの映画の特徴が失われてしまいます。それはつまらないですね。このままでいいのでしょう、多分。

(April 21, 2007)

Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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