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公開:2005年
監督:James Mangold
地域:アーカンソー州、テネシー州ほか
出演:Joaquin Phoenix、Reese Witherspoon、Ginnifer Goodwin、Robert Patrick、Dallas Robertsほか
範疇:範疇:音楽もの/カントリー歌手ジョニー・キャッシュの自伝に基づいた映画/ロマンス/転落と再起
私の評価 : ☆☆
【Part 1】
1974年、アーカンソー州。綿摘み農家の少年Johnny Cash(ジョニー・キャッシュ)は、ラジオでカントリー・ミュージックの草分けカーター・ファミリーの音楽に聞き惚れていた。彼の年上の兄Jack(ジャック)は牧師になりたいというほど、頭が良かった。二人は仲が良かったが、ある日、兄Jackは電動のこぎりの事故で亡くなってしまう。父親は、「神様は選択を間違えた」(死ぬべきなのはJackでなく、Johnnyだったという意味)と嘆き、Johnny Cashの心を傷つける。
1952年、Joaquin Phoenix(ホアキン・フィーニックス)演ずる成長したJohnny Cashは、朝鮮戦争の時期に徴兵されて空軍に入り、ドイツの空軍基地に赴く。彼は、Ginnifer Goodwin(ジニファー・グッドウィン)演ずる若い娘Vivian(ヴィヴィアン)にドイツから電話し、「結婚してヴェニスへ新婚旅行しよう」と云う。Vivianは「たった一ヶ月デイトしただけで、二年も会ってないのよ?あたしのこともよく知らないでしょ?」と呆れる。
基地の映画会で、Folsom Prison(テキサス州にあるフォルサム刑務所)の映画を見たJohnny Cashは、その刑務所をテーマにした曲を作る。
1955年テネシー州Memphis(メンフィス)。除隊したJohnny Cashは、Vivianと結婚して赤ん坊がいる。彼は家庭用品のセールスマンとして訪問販売をするが、うまくいかない。ベーシストと電気ギターを弾く二人の友人とバンドを結成して、歌の練習をしていたが、ある日Dallas Roberts(ダラス・ロバーツ)演ずるSam Phillips(サム・フィリップス)のレコーディング・スタジオを見かけ、オーディションを受けさせてくれと頼む。
オーディションでJohnny Cashたちがゴスペル・ソングを歌って聞かせると、Sam Phillipsは「そういう曲は売れない。売れないものをレコードにしても仕方がない」と告げる。「何がいけないのか?」と食い下がるJohnny Cashに、Sam Phillipsは「あなたが死ぬ間際に一曲だけ歌えるとしたら、何を歌う?あなたの人生が凝縮され、神様が『ああ、この男は地球上にいる間、そんな風に感じていたのか』と思うような歌だ。人々はそういう歌を聴きたいと思い、そういう歌で救われるんだ。自分の生き方を信じることだ」と云う。Johnny Cashは空軍時代に作ったフォルサム刑務所の囚人の気持を歌った曲を演奏する。その内容に感じ入ったSam Phillipsは、その曲をレコードにする。
レコードが売れ、Johnny Cashのトリオはテキサス州でのショーに出て成功する。そこで、Reese Witherspoon(リース・ウィザースプーン)演ずる女性歌手June Carter(ジューン・カーター)と出会う。彼が少年時代に憧れていた少女歌手の成長した姿であった。二人は打ち解けて話す。テネシー州の家に帰宅するが、妻Vivianは彼の成功のことも、ツァーの話も聞きたがらず「家にいる時は普通の夫と父親でいてほしい」と冷たく云い放つ。
1956年。新曲'Cry, Cry, Cry'がBillboard(ビルボード)誌の14位に入り、Johnny Cash人気が高まる。彼はJune Carterに云い寄るが当時離婚したばかりで精神不安定だった彼女から拒否され、ファンの娘たちと手当り次第に浮気する。Elvis Plesley(エルヴィス・プレスリィ)と一緒のショーに出た時、初めて薬物に手を染める。Johnny CashはJune Carterとのコンビでツァーを始め、デュエットで歌うようになる。
1965年。Johnny CashはツァーでJune Carterと愛し合うようになるが、彼女から薬物摂取を見咎められる。彼は薬物を飲み過ぎてショーを台無しにし、ツァーはキャンセルされる。さらに、空港でギターに隠した薬物を発見され、逮捕される。しかし、それはヘロインなどではなく処方箋で買えるものだったため、すぐに釈放された。帰宅すると妻Vivianは彼の言ではなくマスコミの報道を信じ、彼を犯罪者のように決めつめて蔑む。彼がバンドの写真入り額を壁に飾ろうとすると、彼女は嫉妬心からJune Carterの写真だけは飾らせず、二人は取っ組み合う。それを娘たち三人が泣きながら見ていた。Vivianは娘たちを連れて実家に戻ってしまう…。
この映画の企画を知らされた生前のJohnny Cashは、'Gladiator'『グラディエーター』(2000)を観て知っていたJoaquin Phoenixを自分役の俳優として承認し、June Carter当人もReese Witherspoonを自分を演じる女優として承認したそうです。
アメリカ映画のこの手の音楽ものに共通なのですが、吹き替えでなく俳優たち自身が歌っているのが凄い。Joaquin Phoenixは歌唱とギター演奏を、Reese Witherspoonも歌唱とオートハープ(手に抱えるツィター)を数ヶ月稽古したそうです。ただし、映画の最初の方のJoaquin Phoenixの歌は「音程合ってるんかいな?」と思わせるようなたどたどしいもので、一寸心配にさせられます。撮影裏話を読んだら、クランクイン前、彼の声はJohnny Cashより高く、バンドメンバーはそれに合わせた高いキーでの演奏を強いられたそうです。ところが、クランクインする頃にはJoaquin Phoenixは低い声が出せるようになっていて、バンドは急遽低いキーによる伴奏を強いられたとか。
Joaquin Phoenixは父親から愛されない切なさ、最初の妻から理解されないやるせなさ、June Carterの愛に向かって一直線に突き進む素直さ、切れると暴れまくる荒々しさなど、さまざまな感情表現を幅広くこなして見応えがあります。私はコメディに主演するReese Witherspoonの軽さから、この映画のこの配役を疑問視していましたが、この映画の彼女は絶品です。ショーにおける歌唱演技が素晴らしいだけでなく、他のシーンでの目の演技なども的確で、かつ愛すべき人物像を彷彿とさせているのは見事です。
助演陣もそれぞれよくやっていますが、脚本であまり書き込まれていないせいと、演出がおざなりなので印象に残りません。Robert Patrick(ロバート・パトリック)演ずるJohnny Cashの父親にしても、Johnny Cashの最初の妻を演ずるGinnifer Goodwinにしても…。特にGinnifer Goodwinの場合は、後半のロマンスを際立たせるための悪妻役を演じるしかなく、人間味を見せることを許されていない感じです。
レコーディング・スタジオの持ち主Sam Phillipsを演ずるDallas Robertsは、抑えた演技ですがいい台詞のある儲け役を南部訛りでうまく演じています。彼はテキサス州生まれなので、南部訛りはお手の物なのです。
原題の'Walk the Line'は、Johnny Cashのヒット曲'I Walk the Line'から取られています。'I Walk the Line'というタイトルは既に1970年のGregory Peck(グレゴリィ・ペック)主演の映画で使われていますので、区別するために"I"を省いたのでしょう。'Walk the Line'は日本語にすれば「真実一路を貫く」という感じの意味です。
実はこの映画は数年前に観ていたのですが、場所的に“南部もの”に入ることに気づかずにいました。それほど、南部らしさが薄いということです。少年時代の綿摘みの場面やGrand Ole Opry(グランド・オール・オプリィ)の舞台などは出て来ますが、ただそれだけの話で、この映画には南部臭さがほとんどありません。Ray Charles(レイ・チャールズ)の伝記映画'Ray'『Ray/レイ』(2004)に南部臭さがなかったのに似ています。
'Ray'と云えば、あれも成功→ロマンス→薬物中毒→転落→カムバック…と、こちらと似たような筋書きでした。ストーリィ的には、あまり代わり映えしません。こっちはロマンスが山場に来ているだけの違い。撮影、演出では'Ray'の方が抜きん出ています。
この映画のPart 2はありません。
(June 09, 2012)
Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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