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Carmen Jones

『カルメン』


[Poster]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:1954
監督:Otto Preminger
地域:南部のどこか(ルイジアナ州?)
出演:Dorothy Dandridge、Harry Belafonte、Olga James、Pearl Bailey、Joe Adamsほか
範疇:オペラの映画化/英語の歌詞/オール黒人/ロマンス

私の評価 :☆

【Part 1】

フランスの音楽家ジョルジュ・ビゼー作曲の『カルメン』は、1820年頃のスペインを舞台に衛兵のドン・ホセと煙草工場の女工カルメン、闘牛士のエスカミーリョなどが主な登場人物ですが、映画では朝鮮戦争前の時期の米軍パラシュート工場の女工とそこを警備する兵士、プロ・ボクサーなどに置き換えられています。英語による歌詞はOscar Hammerstein II(オスカー・ハマースタイン二世)によって作られ、出演者は全部黒人です。

監督はこの映画の五年後に'Porgy and Bess'『ポギーとベス』(これも[ほぼ]オール黒人のミュージカル)を作ることになるOtto Preminger(オットー・プレミンジャー)。

私は、これが“南部もの”に入るとはずっと気づきませんでした。ま、もともとスペインの話ですから南部であろうと北部であろうとどうでもいいのですが、台詞にはニューオーリンズという言葉が何度か出ますし、最後の舞台であるシカゴへはニューオーリンズから直行の列車が出ていますから、ルイジアナ州かアラバマ州のどこかが主な舞台として設定されているようです。

軍の施設であるパラシュート工場にバスが着き、女工たちがぞろぞろ下りる。その中にOlga James(オルガ・ジェイムズ)演ずるCindy Lou(シンディ・ルー、オペラではミカエラ)が訪問者として混じっている。彼女は工場を警備しているHarry Belafonte(ハリィ・ベラフォンテ)演ずる伍長Joe(ジョー、オペラではドン・ホセ)の婚約者だった。Joeは近々航空学校に入る予定で、パイロットになるという明るい未来が待っていた。二人は食堂へ行き、「今日、教会へ行って結婚しよう」と相談し合う。

そこへDorothy Dandridge(ドロシー・ダンドリッジ)演ずる女工のCarmen(カーメン)がやって来る。兵士たちが彼女にちやほやするが、婚約者と仲睦まじくしているJoeだけがCarmenを無視するので、Carmenは躍起となってモーションをかけ、赤いバラを彼目掛けて抛る。

昼休みが終った工場で女同士の喧嘩が起る。その一人はCarmenで、規律違反ということで逮捕される。Joeは軍曹の命令でCarmenを軍刑務所までジープで護送することになる。近道を選んだら手入れされていないひどい旧道で、橋が落ちてジープは動かなくなり、近くのCarmenの祖母の家まで歩くことになる。

Carmenは様々な手練手管でJoeをたぶらかし、ついにJoeはCarmenの色香に迷ってベッドを共にする。彼が目覚めた時、Carmenは既に逃げ去った後。Joeは職務怠慢で軍刑務所に入れられる。

刑務所のJoeのもとに、Carmenから小包で赤いバラが一輪届く。JoeはCarmen恋しさでバラをずっと胸ポケットに隠し持ちながら重労働をする。

Carmenは女友達Pearl Bailey(パール・ベイリィ)の酒場を訪ねる。そこへJoe Adams(ジョー・アダムズ)演ずるプロ・ボクサーHusky Miller(ハスキィ・ミラー、オペラでは闘牛士エスカミーリョ)がやって来てCarmenを見初めるが、Carmenは無視。ボクサーの命を受けたマネージャーが、「一緒にシカゴへ行って面白おかしく過ごそう」とCarmenに汽車の切符を渡す。

刑務所を出たJoeが酒場へやって来て、二人は久し振りの再会を喜ぶ。Carmenが「私を愛してるなら一緒にシカゴに行こう」と誘い、もう一度刑務所に入れられたら航空学校行きがパアになるJoeは断る。二人がああでもないこうでもないとぐじゃぐじゃやっているところへ来合わせた軍曹とJoeが喧嘩を始め、軍曹はのびてしまう。Carmenは「シカゴに行こう」とJoeに迫り、「また刑務所行きは御免だ」とJoeも脱走兵となることを決意する…。

Dorothy DandridgeもHarry Belafonteも立派な歌手なのに、歌は全部吹き替えだそうです。何故なら、彼らがオペラの唱法を学んでいなかったためとか。主な吹き替え歌手は以下の通り。
Dorothy Dandridge(カーメン) =Marilyn Horne(マリリン・ホーン)
Harry Belafonte(ジョー)=LeVern Hutcherson(ルヴァーン・ハッチャースン)
Joe Adams(Husky Miller)=Marvin Hayes(マーヴィン・ヘイズ)
Diahann Carroll(ダイアン・キャロル、役名はMyrt)=Bernice Peterson(バーニス・ピータースン)

Olga JamesとPearl Baileyの吹き替え歌手が見当たらないところをみると、彼らは地で歌っているようです。なお、Marilyn HorneはUSC(University of Southern California)在学中の女子学生で、僅か$300で雇われたそうです。その後は一流のオペラ歌手になりました。

タイトル・デザインはSaul Bass(ソウル・バス)。『黄金の腕』(同じくOtto Preminger監督作品)の斬新なアニメ・タイトルで世界をあっと云わせた彼ですが、この映画は彼の初めてのタイトルとあって、バラのイラストにかぶさって真っ赤な炎が燃え盛るだけの大人しい趣向に留まっています。この後、Saul BassはOtto Premingerの12本の映画のタイトルを飾ることになります。

監督はサウス・キャロライナとシカゴでこの映画を撮りたかったそうですが、製作会社がそれを許さず、屋内も屋外もカリフォーニアで撮られていて、南部らしさは皆無です。

色彩は素晴らしい。特に初めてCarmenが登場する時の、黒い半袖ブラウスに真紅のタイト・スカートという衣装は見事。定番かも知れませんが、それでも誉めたい。彼女は後にピンクのドレスを着ますが、これもいいデザインです。

ビゼーのオペラはフランス語で私には理解不能ですが、英語の歌詞ですと何とかついて行けるので嬉しい。アメリカ人には"dat"(=that)、"dem"(=them)など黒人英語のステレオ・タイプが煩わしいようですが。

この映画のCarmenは「私にああしろ、こうしろと云わないで。私は自由な女なんだから!」と、ウーマン・リブの先駆けのように勇ましい。Dorothy Dandridgeは、この映画の“演技”でアカデミー賞主演女優賞候補となりました(明らかに“歌唱”ではなく)。黒人女性として初めての主演女優賞ノミネーションでした。

(January 01, 2007)



Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema」は株式会社スティングレイの登録商標です。




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