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Belizaire the Cajun

(未)


[Poster]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:1986
監督:Glen Pitre
地域:ルイジアナ州
出演:Armand Assante、Gail Youngs、Stephen McHattie、Will Patton、Loulan Pitreほか
範疇:薬草医/村からの追放/牛泥棒/絞首刑/ロマンス

私の評価 :☆1/2

【Part 1】

映画の冒頭、「Mr. Robert Redford(ロバート・レッドフォード)とMr. Robert Duvall(ロバート・デュヴァル)に感謝します」と謝辞が出ます。二人とも、この映画の実現に手を貸した恩人なのだそうです。

タイトルの"Belizaire"(ベリゼール)というのは主人公の名前で、"Cajun"(ケイジャン)というのは元々はフランスからカナダに移住し"Acadian"と呼ばれた人々のことです。彼らは英軍によってカナダを追われ、南下してルイジアナ州南西部のスワンプ(湿地帯)に住み着きました("Acadian"が訛って"Cajun"に変化)。彼らは独自の文化によりフランス語と英語をミックスして喋り、「ケイジャン料理」という独特の料理や「ケイジャン・ミュージック」という民謡を継承していることでも有名です。ですから、この題名は『ケイジャンのベリゼール』ということになります。

DVDで見たのですが、多くのインデペンデント映画同様「聴覚障害者のための字幕」というものがないため、フランス語混じりの英語で理解不能の箇所が多々ありました。お断りしておきます。

1859年(南北戦争以前)、ルイジアナ南西部のスワンプ。字幕で「カナダを追われた流浪の民は、ルイジアナを永住の地にしたかったのだが、一世紀経つと、再び彼らは望ましくない人々と考えられ始めた」という説明があります。Armand Assante(アーマド・アサンティ)は薬草についての造詣が深く、この地域の医者代わりも務めている。呼ばれて子持ちのケイジャン女性Gail Youngs(ゲイル・ヤングズ)のところへ行く。病気ではなく妊娠だった。実は彼はこの女性に恋していたのだが、彼女は牧場主(生粋のアメリカ人)の長男Will Patton(ウィル・パットン)と結ばれてしまったのだった。診察後お喋りをしていると当のWill Pattonが帰って来て、「もう二度とここに来るな」と云う。

ケイジャンを疎んじるアメリカ人たちで構成された自警団(尖り頭巾こそ被っていないがK.K.K.そっくり)は、夜中に松明をかざして馬を駆り、ケイジャンの数軒の家に「不道徳の罪で有罪。二週間以内に立ち退かない場合は縛り首にする」と宣告して歩く。Armand Assanteも警告された一人で、自警団の中にはWill Pattonの顔もあった。

「二度と来るな」と云われたにもかかわらず、Armand AssanteはGail Youngsに薬草を渡しに行く。彼女は昨夜夫がくれたピカン(胡桃に似た木の実)の袋を治療代として渡す。その夜、Will PattonがArmand Assanteを訪れ、「来るなと云ったのに、なぜ又来た?」と咎め、「おれのピカンを盗んだな?」と取り返そうとし、二人は殴り合いを始める。Gail Youngsから彼女の妊娠については口止めされていたのだが、あまりにWill Pattonが分からず屋なので、「あんたがまた父親になるんだ」と云って、喧嘩を終わらせる。

牧場主は息子であるWill Pattonを跡継ぎにするつもりなのだが、Will Pattonの姉の旦那Stephen McHattie(スティーヴン・マカティ)は、Will Pattonを差し置いて自分が牧場の実権を握ろうとしている。

牧場の牛が盗まれる。盗んだのはArmand Assanteの従弟Michael Schoeffling(マイケル・シューフリング)で、親たちを含む一家が立ち退き先で暮らすための資本にするつもりだった。

ケイジャンのダンス・パーティが開かれ、Armand Assanteは達者なアコーディオンで参加する。Gail Youngsが来ると二人で踊る。従弟のMichael Schoefflingも来るが、彼はテキサスへ行くのが恐ろしく、がぶがぶ酒を呑んで酔いにまぎらわせる。彼も女性と踊るが、しつこくして嫌われ、追い出される。その彼を牛泥棒として自警団が捕らえ、鞭打つ準備をする。Will Pattonは「酔っている奴を鞭打っても仕方がない」と放免しようとするが、姉の旦那Stephen McHattieが「意気地なしめ」と罵るので、心を鬼にして鞭打つ。Armand Assanteは従弟の背中にクモの巣を張り付けて癒す。

翌日、Will Pattonが溺死体となって沼に浮かぶ。Armand Assanteは従弟を馬でテキサスに発たせる。彼を追って、自警団が馬を走らせる。Gail Youngsの息子(少年)は「父を殺したのはArmand Assanteだ」とシェリフに囁く。Gail YoungsがArmand Assanteの家を訪れ、「早く逃げて!」と云うが時すでに遅く、シェリフの一行が迫っているのだった…。

ケイジャンの歴史と文化は、一般のアメリカ人にもよく知られていないようです。"Creole"(クリオール)と混同されて理解されることも多いようです。ルイジアナ州は、元もとはフランスの領土で、合衆国がナポレオンから買い取って、州の一つに併合しました。ですから、フランス系移民は数多く、彼等の子孫を"Creole"と呼び、彼等の話すフランス語もクリオール。当然、フランス料理とアメリカ料理が混ざった料理があり、それもクリオールです。つまり、フランスから直接アメリカ大陸に移住して来たクリオールと、フランスからカナダに移住し、そこを追われてルイジアナ州の湿地帯にやって来たケイジャンと、同じフランス系でも経路の違いによって、呼ばれ方も異なるわけです。聞くところによれば、ケイジャンもどんどんアメリカナイズされ、その言語や文化、音楽なども絶滅寸前だとか。

脚本・監督のGlen Pitre(グレン・ピトル)は、実際にケイジャンの子孫です。この映画は「題材が特殊過ぎて客の入りが見込めない」とアメリカでは公開されず、カンヌ映画祭などで評価されてから、やっと細々と公開されたようです。

Armand Assanteは恐れを知らず常にポジティヴで口が達者で行動的という役を、大胆に、かつ情熱的に演じています。彼からひたむきに愛されるGail Youngsは、笑い転げる演技が素直でリアル。Will Pattonはフットボール映画'Remember the Titans'『タイタンズを忘れない』(2000)で、もともとのコーチを演じた人。ここでは、芝居の見せ場もないうちに死んでしまいますが。悪役Stephen McHattieはJames Woods(ジェイムズ・ウッズ)を細くしたような風貌。

Robert DuvallはWill Pattonを埋葬する場面での説教師役で、祈りの文句を読むだけ。賛助出演ですね。

この映画で初めて知ったことがあります。Will Pattonが亡くなり、彼の姉の旦那Stephen McHattieは自分が牧場の実権を握れると考え、早くもボス面をし始めます。その旦那に妻(Will Pattonの姉)がこう云います。「ここはミシシッピではないの。ルイジアナの法律では相続人は私であってあなたではないの。私よ」と。この旦那は妻からも義父からも信用されていない、というか実際には嫌われているようで、映画のクライマックスでは妻と義父の口から「死んでもいい」みたいな言葉が漏れるほど。可哀想な旦那です(ワルだから当然なんですが)。

結末についてはPart 2ということで、クライマックスの予告編だけほんの一寸。Armand Assanteは他のケイジャン二人と共に絞首刑になることになり、絞首台に上ります。ここからが凄い。死をも恐れぬArmand Assanteの一世一代の大芝居と賭けが始まり、そこら辺のコメディやアクションものも敵わぬような趣向が用意されています。このシーンだけでも観る価値はあるでしょう。

もう一つ、あらゆる映画紹介で激賞されているのが、この映画で使われているMichael Doucet and Beausoleil(マイケル・ドウセットとボーソレイユ)によるケイジャン・ミュージック。これは正真正銘の本場物だそうで、この音楽を聴くためにDVDを買った人もいるそうです。

(March 27 2007)



Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema」は株式会社スティングレイの登録商標です。




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