公開：1988
監督：Ron Shelton
地域：ノース・キャロライナ州
出演：Kevin Costner、Susan Sarandon、Tim Robbins、Trey Wilson、Robert Wuhlほか
範疇：スポーツもの／野球／マイナー・リーグ／野球選手に恋する女／投手と捕手

私の評価 ：☆

【Part 1】

アメリカ南部は綿やサトウキビ農園の多さで有名ですが、タバコ栽培の大産地でもあります。この映画の原題'Bull Durham'（ブル・ダーラム）はノース・キャロライナ州にあるタバコ会社の名前。そのタバコ会社がスポンサーとなっているマイナー・リーグの野球チームの一つがDurham Bulls（ダーラム・ブルズ）。"Durham"は地名で、"Bull"は雄牛。対戦チームの名前の一つにWinston-Salem（ウィンストン＝セイレム）というのが出て来ますが、これもタバコの銘柄を二つ並べたものです。

そのDurham Bulls、今シーズンの話題は“100万ドルの腕”を持つ投手Tim Robbins（ティム・ロビンス）のプロ・デビューだった。そのデビューが四分後に迫っているというのに、Tim Robbinsはロッカー・ルームで地元資産家の色情狂の娘とセックスしていた。こんな具合では試合に勝てるわけがない。彼は18人を三振で打ち取ったが、暴投で18人を出塁させ、大勢の関係者にボールをぶつけたりしてリーグの新記録を作りつつ敗退する。監督は「奴は100万ドルの腕に、5セントの頭しか持っていない」とこぼす。

Durham Bullsはマイナー・リーグ12年のヴェテラン捕手Kevin Costner（ケヴィン・コスナー）を雇うことにする。Tim Robbinsの野球と私生活両方の御養育係としてである。二人は、バーでSusan Sarandon（スーザン・サランドン）とダンスの順番をめぐって喧嘩する。Susan Sarandonは二人の男に「私は1シーズンに一人の選手とつきあうことにしてる。あなた方二人のどっちかにするわ」と云う。Kevin Costnerは「選ばれるよりは選ぶ方に廻る」と云って去る。Susan Sarandonは「あたしとのデイトを断る男なんて初めてよ」と呆れる。国語の先生であるSusan Sarandonは、裸のTim Robbinsをベッドに縛り付け、古典文学を朗読して聞かせる。

Kevin Costnerは試合で三振し、Susan Sarandonから「腰を引くのが早過ぎるわ」というメモを受け取る。二人はバッティング・センターで練習し、お喋りする。Susan SarandonはKevin Costnerに惹かれる。彼女はTim RobbinsとセックスしながらKevin Costnerの名前を叫ぶ。むくれるTim Robbinsに「じゃ、彼とセックスしながらあなたの名前を叫ぶ方がいいの？」と云い、“5セント頭”のTim Robbinsは納得する。

ある試合で、Tim Robbinsはがむしゃらにストライクを取ろうとし、Kevin Costnerの「カーヴを投げろ」のサインを拒否する。頭に来たKevin Costnerは、バッターに「次は速球だ」と教え、ホームランを打たせる。「奴は速球が来ることを知ってたみたいに打ちやがった」というTim Robbinsに、Kevin Costnerは「そう、奴は知ってた。おれが球筋を教えてやったからだ」と応じ、Tim Robbinsを唖然とさせる。

チームはツァーに出る。Susan SarandonはTim Robbinsにガーター・ベルトを渡し、「これをつければ無心に投球出来るわ」と云う。バスの中でKevin CostnerはTim Robbinsに「カーヴを覚えろ。大リーグでは速球は誰にでも打てる」と助言する。「大リーグにいたこともないくせに」と冷ややかなTim Robbinsに、「21日間大リーグにいた。生涯最良の日々だった。荷物は自分で運ばなくていいし、豪華ホテルでルームサーヴィス付き、練習でも白いボールだし、女たちはみな脚が長く頭もいい」と述懐し、チーム一同をうっとりさせる。Tim Robbinsは恥ずかしがってガーター・ベルトを着用せず、試合に負け続ける。

チームは地元に戻る。Tim Robbinsはガーター・ベルトをつけ、Kevin Costnerの指示通りに無心で投げるようになり、連勝を開始する。Tim Robbinsは「連勝している間はセックスしない」と宣言し、Susan Sarandonの誘惑に乗らない。Susan Sarandonは欲求不満で気が狂いそうになる…。

Kevin Costnerはまだ若さが残っている渋い男の色気を発散し、Tim Robbinsは脳足りんの若者が次第にゲームの奥深さを教えられて成長して行く様を見事に演じています。Susan Sarandonは'Thelma & Louise'『テルマ＆ルイーズ』(1991)の三年前、'White Palace' 『ぼくの美しい人だから』(1990)の二年前ですから、超有名になる寸前で、この映画公開当時42歳。この役を得たいために旅先のイタリアから自費でロスまで飛んだそうです。この映画の共演が縁となって、Tim Robbins（当時30歳）と現在まで続く内縁関係（子供二人）が始まります。

脚本・監督のRon Shelton（ロン・シェルトン）は、自身が五年ほどマイナーリーグの選手（二塁手）だったそうです。Kevin Costnerがつけている背番号8番は、現役時代のRon Sheltonの背番号でもあります。彼はいくつかの映画の脚本を書いた後、この映画は自分で監督したいと念願。しかし、当時ハリウッドは野球ものに食指を動かさず、製作開始までにはかなり難航しました。一つの製作会社が出資してくれることになり、さらに野球チームDurham Bullsのオーナーの一人もプロデューサーとして加わりました。内容に魅力を感じた俳優たちは、自分のギャラを減額してこの映画に参加したそうです。

脚本・監督のRon Sheltonは「野球の試合を伝えるだけなら、17台もカメラを使うTVに敵わない。だから、TVが伝えられないマウンドでの投手・捕手の会話、同じくマウンドでのチームメイト達のお喋り、ロッカールーム、シャワールームなどの場面を多く取り入れた」と云っています。

私はこういうヴェテランが新米を教育するという映画が好きです。Henry Fonda（ヘンリィ・フォンダ）が新米保安官Anthony Perkins（アンソニィ・パーキンス）を育てる'The Tin Star'『胸に輝く星』（1957）とか、スパイ育成、刑事の現場実習などのテーマとか。ヴェテラン捕手の投球指示を拒否する投手にお灸をすえるため、対戦チームの打者に次のボールの種類を教えてホームランを打たせちゃうという荒療治が破天荒。これを見るだけでも価値があります。野球ファンにはこたえられないでしょう。

(September 19, 2007)

Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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