公開：1953
監督：Gerald Mayer
地域：南部のどこか
出演：Dorothy Dandridge、Philip Hepburn、Harry Belafonte、Barbara Ann Sandersほか
範疇：原作もの／学校もの／女教師と少年

私の評価 ：☆☆1/2

【Part 1】

南部のある田舎町。Harry Belafonte（ハリィ・ベラフォンテ）が校長を務める黒人用小学校（教師たちも全て黒人）に、新米の女教師Dorothy Dandridge（ドロシー・ダンドリッジ）が着任する。彼女の担当は四年生の男女。

そのクラスには問題児C.T.（シー・ティー、11歳、Philip Hepburn演）がいた。彼は授業に興味を示さず、休み時間に他の子供たちと遊ぶこともしなかった。おとぎ話を楽しむような態度を馬鹿にし、現実主義、実用主義的で、子供らしい考え方を押し付けられることに反発した。そのせいで、他の教師たちは彼を見放し、過去に彼を二度も落第させていたし、最近では彼を他の学校に追いやろうとする意見まで出ていた。

校長Harry Belafonteは、C.T.をかばうDorothy Dandridgeの“熱中先生”的姿勢を買い、しばらく様子を見ることにする。

C.T.は生き物が好きだった。学校へは愛犬と一緒に来るし、学校の裏の林で見つけた毛虫の成長を楽しみにしていた。彼は同級生のTanya（タニャ、Barbara Ann Sanders演）と仲良しで、いたずら小僧たちから彼女をかばったり、一緒に手をつないで下校する。

日曜学校。Dorothy Dandridgeは生徒たちと一緒に歌う。Tanyaに誘われてC.T.も来ていたが、彼は「神様が自分に似せて人間を作ったのなら、どうして僕らの皮膚は黒いの？」と質問し、Dorothy Dandridgeを困惑させる。

クリスマス。C.T.は自分で集めた天然の蜂蜜を母親にプレゼントする。新年になって、クラス一同で『眠りの森の美女』のお芝居をすることになる。お姫様役となったTanyaは妖精が魔法を解いても目覚めない。C.T.がパニックになる。Tanyaはウイルス性肺炎に冒されていて、医師の手当の甲斐もなく息を引き取る。

Tanyaの死を悲しんだC.T.は、ますます授業に無関心になる。同級生の男の子たちとの喧嘩も絶えず、遂に校長命令で誰とも口を聞いてはいけないという罰を受けることになる…。

この映画は歌手Harry Belafonteの映画登場第一作目。校長室でギターを奏でながらバラードを一曲歌うシーンがあります。どう見てもプロの歌手であり、校長には見えません。しかし、歌は素晴らしい。ポスターではDorothy Dandridgeがイヴニングドレスを着て歌い踊るように見えますが、これは嘘です。彼女はずっと教師に相応しい格好のままです。

医師の役で白人が一人登場する以外は、全て黒人俳優です。大人の俳優たちはあまり出番がなく、子供たちが主ですからギャラの心配が要りません。おまけに白黒スタンダードで、これぞ安上がり映画の見本。

C.T.が見守っていた毛虫はさなぎになり、やがて蝶になります。その瞬間をクラス全員が見守るという設定は中々いいと思います。単に教師と生徒のドラマだけでなく、こういう要素を取り入れた映画は珍しいのではないでしょうか。C.T.自身が“醜いアヒルの子”のように、毛虫から綺麗な蝶のように脱皮して行くという隠喩かも知れません。

あまり期待しなかったせいか、私には楽しめました。C.T.に突っ込まれて窮地に陥ると、Dorothy Dandridgeが自分自身を励ます独白が出たりして、新米教師の気持もよく表現されています。C.T.をはじめ子役たちも好感の持てる演技。演出もべたつかず、さらっとしています。悪者が一人も出ないので、懐疑的な性格のC.T.に云わせれば「綺麗ごと過ぎらあ」という感じでしょうが、心地よい小品に仕上がっています。

(January 03, 2006)

Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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