公開：1935
監督：John Ford
地域：ルイジアナ州
出演：Will Rogers、Anne Shirley、Irvin S. Cobb、Francis Ford、John McGuire、Berton Churchillほか
範疇：原作もの／コメディ／伯父と甥／ロマンスと殺人／蒸気船レース

私の評価 ：☆☆☆

【Part 1】

“西部劇の名匠”として有名なJohn Ford（ジョン・フォード）ですが、結構な数の“南部もの”も手掛けているようです。当サイトでは既に、貧しい農民の喜劇'Tobacco Road'『タバコ・ロード』（1941）、南部での北軍の活躍を描いた'The Horse Soldiers'『騎兵隊』（1959）などを紹介していますが、今回の映画はそのものずばりミシシッピ川を舞台にした作品です。

1890年代の初め、ミシシッピ川流域。'Pride of Paducah'号という乗り合い蒸気船にさまざまな人が乗っている。"New Moses"（新モーゼ）と自称する予言者Berton Churchill（バートン・チャーチル）は、集まった人々に「“悪魔の酒”であるラムを断て」と説いている。"Doc"（ドク）と呼ばれるWill Rogers（ウィル・ロジャース）は、インディアンの秘薬（？）『ポカホンタス』を売って儲けている。

Will Rogersは操舵室に行き、顔馴染みの船長Irvin S. Cobb（アーヴィン・S・コッブ）と話す。Will Rogersは「甥の水先案内人John McGuire（ジョン・マグワイア）と二人で蒸気船'Claremore Queen'を買った。1884年に蒸気船レースで優勝した船だ」と自慢する。船長Irvin S. Cobbは「じゃ、今年のレースで賭けをしよう。買った方が相手の船を頂戴するんだ。どうだ？」 Will Rogersは売り言葉に買い言葉で承諾する。

蒸気船'Claremore Queen'に甥のJohn McGuireがやって来るが一人ではなかった。若い娘Anne Shirley（アン・シャーリィ）を連れて、何故かおどおどしている。Will Rogersが聞き出すと、Anne Shirleyは"swamp people"（湿地に住む人々）で、John McGuireとの交際を咎める父に虐待されて逃げ出した身の上。その彼女にある蒸気船の機関士が横恋慕して、John McGuireにナイフを抜いて喧嘩を仕掛けて来た。日頃はおとなしいJohn McGuireだったが、ついカッとなって殺してしまった…とのこと。その一部始終を見ていた目撃者は、只一人、予言者"New Moses"（新モーゼ）。

Will Rogersは「そういう経緯なら正当防衛で罪にならない。シェリフに自首すべきだ」と云い、John McGuireも同意するが、それまで黙っていたAnne Shirleyが突如「駄目よ！自首したら縛り首だわ！」と反対する。Will Rogersは「"river man"（川の男）の話に"swamp trash"（湿地のクズ）は口を出すな」と云う。John McGuireは憤激する彼女をなだめ、保安官事務所に向う。

Anne Shirleyを連れ戻しに父親ほか二名の"swamp people"がやって来る。Will Rogersは「この娘はおれの甥の嫁さんだ。勝手な真似をするな」と、刃物を振り回して追い返す。Will Rogersが自分を見下していると憤慨していたAnne Shirleyだったが、Will Rogersが彼女を認め、救ってくれたことに感謝する。Will Rogersは衣装ケースから亡き妹（甥の母親）のドレスを引っ張り出し、彼女が裁判所に傍聴に行っても恥ずかしくないように配慮する。貧しい育ちのAnne Shirleyは、初めてのドレスにうっとりする。

裁判でJohn McGuireは有罪となり、死刑を宣告された。Will Rogersは、金を作って有能な弁護士を雇って抗告することと、目撃者"New Moses"を探す決意をする。シェリフEugene Pallette（ユージーン・パレット）が、Will Rogersに持ち主が夜逃げし置き去りにされた蝋人形館を見せる。Will Rogersはその人形を借り受け、自分の蒸気船を蝋人形館としてミシシッピ川流域でショーを開催し、弁護士費用を捻出するアイデアを得る。

元の持ち主が北部の人間だったため、蝋人形に南部で有名な人物はいなかった。Will Rogersは英国女王の一人をインディアン娘ポカホンタスに、モーゼ兄弟をジェシー・ジェイムズ兄弟に、北軍の英雄グラント将軍を南軍の英雄リー将軍に変えてしまう。

Will RogersはAnne Shirleyに蒸気船の操縦を教える。彼女が川の向こうから現われた船を見つけ"Steamboat round the bend!"と叫ぶ。Will Rogersは「おお、それこそ"river people"（川で生活する人々）の言葉だ」とにっこりし、彼も"Steamboat round the bend!"と叫ぶ。

何とか弁護士費用を作り出した二人が町に戻ると、シェリフが「抗告は棄却された。John McGuireはルイジアナ州の州都Baton Rouge（バトン・ルージュ）に送られ、死刑になる」と云う…。

Will Rogers（1879〜1935）の名は今では映画史に埋もれてしまっていますが、チェロキー・インディアンの血を引き、乗馬と投げ縄を得意とするカウボーイとしてショーマンとなり、71本の映画に出演し、合衆国の切手に二回も登場するという大スターでした。この映画でも投げ縄を使うシーンが二回出て来ます（歳のせいかうまくいかなかったようで、編集で成功したように見せかけていますが）。根っからの俳優でないせいで、台詞廻しにメリハリがありませんが、人のいい伯父さんを地のように自然に演じています。

ヒロインAnne Shirleyは、子役からの女優で芸歴は長いのですがやや表情が硬いのが難。しかし、鄙びた土地の粗野な娘として登場し、次第に洗練されて美しく優しい女性になって行く変化が素晴らしい。"New Moses"（新モーゼ）を演ずるBerton Churchillは'Stagecoach'『駅馬車』（1939）の傲慢な金満家の役で有名な俳優。ここでは厳かな口調の予言者が、一転蒸気船の缶焚きとなって奮闘するというコメディ演技に徹しています。

シェリフを演じる小男のデブEugene Palletteも'The Adventures of Robin Hood'『ロビンフッドの冒険』（1938）など、この時期の映画でよく見る顔。牢の中で若い男女を結婚させる"Justice of The Peace"（治安判事）の役を堂々と演じています。Will Rogersの船の機関士となるアル中の老人Francis Ford（フランシス・フォード）は、この映画の監督John Fordの実兄。ちとトロい黒人を演じるStepin Fetchit（ステピン・フェチット）の台詞の大半はアドリブだそうです。いまこういう“抜け作”の黒人を登場させたら人種問題になりそうな感じ。

後半は十隻近い蒸気船が勢揃いして、大砲の号令一発でスタートするという非常に珍しい蒸気船レースが展開します。これは見ものです。

(December 17, 2007)

Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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