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Back Roads

(未)


[Poster]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:1981
監督:Martin Ritt
地域:アラバマ州、ルイジアナ州、テキサス州
出演:Sally Field、Tommy Lee Jones、David Keith、Miriam Colonほか
範疇:コメディ/道中もの/娼婦とボクサーくずれ/LAへのヒッチハイク

私の評価 :☆

【Part 1】

CBS製作ですが、TV映画ではなく歴とした劇場公開作品。'Norma Rae'『ノーマ・レイ』(1979)でアカデミー賞をはじめ1980年の主演女優賞を総なめにしたSally Field(サリィ・フィールド)とその監督の二年後の再会ですから、期待は高まります。これが日本で公開されていないというのは不思議です。インデペンデント映画として軽視されたのでしょうか。

アラバマ州Mobile(モビール)。Sally Fieldは一回20ドルの街娼。Tommy Lee Jones(トミィ・リー・ジョーンズ)は、バーで踊っている客のテーブルからお釣りやチップの小銭を盗んでは賭けをするケチな文無し。バーでTommy Lee Jonesを引っ掛けたSally Fieldは、彼を自分のアパートに連れ込んで商売する。しかし、彼は「20ドルなんて持ってない」と云う。“只乗り”に怒り狂ったSally FieldはTommy Lee Jonesを叩き出し、次の客を物色に通りへ。ところが彼女がモーションをかけたのは、何と刑事だった。それを知らないTommy Lee JonesはSally Fieldを助けようと刑事を殴ってしまう。

その朝保釈で出て来たばかりのSally Fieldは、「今度は捕まったら刑務所に入れられてしまう!」と大慌てで荷物をまとめ、アパートから逃げ出す。Tommy Lee Jonesが「おれんとこへ来い」と云うのでついて行くと、そこは建物の一角を不法占拠している乞食の部屋みたいなもの。Sally Fieldは「刑事を殴ったんだから、あんたもしょっぴかれるわよ」と警告する。

翌朝、Sally Fieldはそっと抜け出して町を出ようとするが、一つだけしたいことがあった。彼女には産んですぐ養子に出した男の子がいたのだ。後にその子のことが気になり、彼女は病院の看護婦を買収して子供の所在を掴んだ。彼女は小学校の登校時間に合わせて、時々その子を見にやって来ていた。今日も我が子の姿を見ることが出来た。しかし、その子を送って来た母親が「うちの子につきまとうと、警察を呼ぶわよ」と宣告し、Sally Fieldは泣き出してしまう。

Tommy Lee Jonesも町を出る気になっていた。働いていた洗車場は馘になるし、警察にも追われている。潮時だった。ボクシング・ジムのロッカーに入れておいたプロ時代の品物を取り出す。“家”に帰るとSally Fieldが戻っていた。二人は一緒に町を出ることにする。彼女は「西へ行きたい。出来ればL.A.へ」と云う。

ヒッチハイクで、次々と別な車に乗せて貰う。そのどれかでSally Fieldは財布を盗まれ、二人は無銭飲食するしかなくなる。カリフォーニア州のSan Diegoの軍港に向うという水兵David Keith(デヴィッド・キース)の車に乗せて貰う。ルイジアナ州の港町にさしかかったところで、町のお祭りに出くわす。David KeithはSally Fieldに惚れ、食べ物や綿菓子を買い、二人でダンスする。四人組の地元の水兵がSally Fieldにつきまとい、David Keithを殴って金を奪い、Sally Fieldを犯そうとする。間一髪Tommy Lee Jonesが駆けつけ、二人を助ける。彼女が娼婦であると知った水兵David Keithは悪態をついて去って行く。

Sally Fieldは長距離バスの運賃を稼ぐため商売しようとする。Tommy Lee Jonesが客を殴って金を奪う。Sally Fieldは「強盗はやめて!あたしたちはボニーとクライドじゃないんだから」と云う。バスに乗ると、Sally Fieldは彼の指にマニキュアを始める。L.A.に行ったら、マニキュア師になるのだと云う。「人間は変われるものじゃない」と云うTommy Lee Jones。「今度、生き方を変えられなかったら死んだ方がマシ」と云うSally Field。気まずくなった二人は、以後口をきかなくなる。

テキサス州に着く。Tommy Lee Jonesは血を売ってハンバーガーを食べる。町をうろうろしたSally Fieldは、空腹のあまり商売しようかどうするか迷うが、偶然Tommy Lee Jonesと再会し、食事を奢って貰う。彼は「明日、ボクシングの八百長試合で金を稼ぐ」と打ち明ける…。

スケールの大きい話ではなく、人物の数も決して多くはありません。その分、いい脚本(台詞)や演出・演技によって味わい深い佳作になっています。

アカデミー主演女優賞で自信をつけたSally Fieldは、ここでも気のいい純朴な娼婦を飾り気なく演じていて、安心して見ていられます。アカデミー賞を狙う女優は、よく娼婦などの汚れ役を熱演しますが、そういう熱演っぽいわざとらしさは皆無。私が感心したシーン。物語の後半で二人がかなり打ち解けた段階で、Tommy Lee JonesがSally Fieldにそっとキスします。それはセックスの前戯としてのキスではなく、愛情の表現としてのキスです。そんなキスをされたことがない娼婦のSally Fieldは当惑します。彼女はとまどいの笑みを浮かべながら"What's that?"(どういうこと?)と問いかけます。このシーンのSally Fieldの表情は愛らしく素晴らしい。彼女は便乗した小型トラックの上で何度もひっくり返ったり、深い水たまりに落ちて頭からずっぽり濡れたり、大奮闘します。

Tommy Lee Jonesはまだ髪がふさふさしていた時期で、しかも長髪気味にしています。当時35歳ですが、もっと若く見えます。彼の人物像は、脚本でもあまり書き込まれていないようで、ボクサーらしく粗暴でありながら、Sally Fieldにかなり従順であるという心理の振幅の間があまり埋められていません。しかし、登場人物の数人から"ugly"(醜悪だ)と云われる役としては相応しい感じです:-)。

David Keithは当時27歳。この翌年に"An Officer and a Gentleman'『愛と青春の旅だち』に出演、翌々年'The Lords of DiscIpline'『影の私刑(リンチ)』で主演…という登り坂の頃。若く素直に演技しています。

Mobileはアラバマ州南西部の商業都市。メキシコ湾岸に突き出た一角に位置し、州でただ一つの港湾都市として知られています。日本語版Wikipediaでは「モービル」となっていますが、現地音は「モゥビール」。ルイジアナ州の件(くだり)もMobile郊外で撮影されたようです。テキサス州の場面は、メキシコ国境に面したテキサス州最南端の町Brownsville(ブラウンズヴィル)で撮影されています。カリフォーニアへ行く時に通る町ではありません。

撮影(John A. Alonzo)・編集(Sidney Levin)も'Norma Rae'『ノーマ・レイ』を担当した一流陣です。長距離バスが走る時間経過など、時間をかけた丁寧な撮影・編集がされていて、並の映画以上。音楽はHenry Mancini(ヘンリィ・マンシーニ)で主題歌も作曲しています。これも並以上。

なお、原題の"back road"とは「裏道路」、「田舎道」という意味。“人生の裏街道”という意味も含まれているかも知れません。

(December 21, 2007)



Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema」は株式会社スティングレイの登録商標です。




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