[English] [Japanese Home] [Studio BE] [America Offline] [公民権運動] [英語の冒険] [英語の冒険2] [Golf] [Hummingbird]



[Banner]



Andersonville

(未)

[DVD]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:1996
監督:John Frankenheimer
地域:ジョージア州
出演:Jarrod Emick、 Frederic Forrest、Ted Marcoux、Carmen Argenziano、William H. Macyほか
範疇:実話の映画化/TV映画/南北戦争/捕虜収容所

私の評価 :☆

【Part 1】

CNN創立者のTed turnerが製作してケーブルTVのTNT (Turner Network Television)で放送したTV映画で、現在はヴィデオが販売されています。Ted Turnerは南北戦争ものに傾倒していていくつかのTV映画、劇場映画を製作していますが、どれも'Gone With the Wind'『風と共に去りぬ』を凌ごうという長編で、この映画も160分を越えています。戦闘シーンは冒頭数分で終わり、後の舞台は南軍の捕虜収容所に絞られます。

この収容所は当初8,000人を収容するために作られたものでしたが、何と45,000人もの北軍兵士を詰め込み、14ヶ月後には12,912名が死亡していたという凄まじい施設です。雨を避けるテントも満足に無く、食料も最低限、医薬品はゼロで、栄養失調や肺炎などで死んだ兵士が多かったようです。南軍は戦争末期自分たちの食料にも事欠く始末でしたから、捕虜に贅沢な食事をさせることなど出来なかったでしょうが…。南北戦争で戦犯として死刑になった将校は、この収容所長只一人だったということでこの施設のひどさが解るでしょう。

1864年、ヴァージニア。マサチューセッツ出身者で編成されている北軍の小隊が捕虜となる。彼らは軍曹Frederic Forrest(フレデリック・フォレスト)と伍長Jarrod Emick(ジャロッド・エミック)の統制のもと、列車で移送される。

着いたところはジョージア州南西部。西部の砦を思わせる巨大な柵に囲まれた、Andersonville(アンダースンヴィル)と呼ばれる広大な捕虜収容所だった。柵の外には北軍兵士の死体が多数並べられていた。中は地面はぬかるみ、生気のない人々で溢れかえっていた。その中にマサチューセッツ出身のGregory Sporleder(グレゴリィ・スポールダー)がいた。髭は伸び放題、青白く、足を悪くして杖無しでは歩けない状態だった。彼の助けで、“レイダーズ”(略奪者)と呼ばれる牢名主の一味に手荷物一切合切を奪われずに済んだ。彼は「湿地の水を飲んではいけない。雨が降ったら服に浸みた雨水を絞って飲むんだ」など、サヴァイヴァルのコツを伝授する。

この収容所は南軍大尉Jan Triska(ヤン・トリスカ)が狂気じみた統制を敷いていた。人手不足を補うため、見張りの一部は少年兵士たちだったが、彼らは立ち入り禁止区域に足を踏み入れた者は容赦なく撃ち殺す。脱走を試みるものは、首と両手を板に挟まれ、立ち尽くめで野ざらしになる刑を受けた。

マサチューセッツ小隊はペンシルヴェイニア出身の小隊と親密になる。既に半分掘ってあるトンネルを一緒に力を合わせて掘ることに合意する。

“レイダーズ”は突如ペンシルヴェイニアのTed Marcoux(テッド・マルクス)のバンジョーを奪い、身体不自由なGregory Sporlederを殺していく。力自慢の男が「返せ!」と怒鳴り込むと、雲つくような大男が出て来てファイトが始まる。勝負はつかなかったが、“レイダーズ”とペンシルヴェイニア小隊の溝は深まる。

ついにトンネルが完成し、“大脱走”が開始される。しかし、最後の十人目が見張りに発見され撃たれる。直ちに多数の軍用犬が放たれ南軍兵士の追跡が始まる。伍長Jarrod Emickは、足元がおぼつかない軍曹Frederic Forrestに従っていたため逃げ切れず、他の過半数と共に捕まり、立ち尽くめの野ざらしの刑に処せられる。たまたま、この収容所の視察に来た南軍大佐William H. Macy(ウィリアム・H・メイシー)は所長の酷い仕打ちを見兼ね、野ざらしの刑を受けていた兵士を許す。

“大脱走”以後、平穏に戻るかに見えたAndersonville捕虜収容所だったが、“レイダーズ”の横暴に堪忍袋の緒を切らした人々が決起し、遂に北軍兵士同士の大乱闘が始まるのだった…。

小川で水浴するのが関の山で、着の身着のままですから、45,000人の浮浪者の大軍団が集まっていると思って間違いありません。浮浪者一人でも相当凄い匂いがするのに、45,000人ですよ。映画では匂いまで言及していませんが、私には想像出来ます。同じ国民同士が闘うだけでさえ悲惨ですが、こんな捕虜収容所に入れられたら尚更です。私のようなヤワな男は一ヶ月も保たずに1,2,912名の死亡者の一人でなっていたことでしょう。

冒頭の蒸気機関車の走りは模型だとすぐバレるような幼稚さですが、いったん収容所に移ってからは、広大な収容所を埋め尽くす人の群れの描写などよく出来ています。コンピュータ・グラフィックスだとしても見分けがつきませんから優秀です。登場人物がやたら多いにもかかわらず、人間関係は分りやすく描かれています。年期の入ったJohn Frankenheimer(ジョン・フランケンハイマー)が監督してるんですから当然でしょうが。

南軍でいい人間は大佐William H. Macyただ一人というのは、ちょっと少なすぎる気がします。また、“レイダーズ”について詳しい説明はないのですが、その親玉の将校が緑色の制服を着ているところから見てアイリッシュ系なのでしょうか。そうだとすると、'Gangs of New York'『ギャング・オブ・ニューヨーク』 (2002)と同じ対立の構図ということになります。北軍同士で殺し合うというのも、悲惨を通り越して狂気の世界です。

映画の後半は、その“レイダーズ”を人道的に裁判にかけるのが一つのヤマです。元弁護士のCarmen Argenziano(カーメン・アルジェンツィアノ)が“レイダーズ”の弁護に立ち、「ここは文化果つるところだ。法律などない。彼らを有罪にすることなど出来ない」と主張します。Jarrod Emickは「我々はまだ兵士であり、上官の命に服している。それが法律だ」と反論します。アメリカ人の裁判好きは、このような状況下でもちゃんと生き延びていたわけですね。

(May 17, 2003)



Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema」は株式会社スティングレイの登録商標です。




Copyright © 2001-2011    高野英二   (Studio BE)
Address: Eiji Takano, 421 Willow Ridge Drive #26, Meridian, MS 39301, U.S.A.