Golf Tips Vol. 45

一生に一度のショット

U.S.オープンの最終日No.18で、一位タイの二人をごぼう抜きして優勝するかどうか…というのは“一世一代のショット”です。これは緊張して、おしっこがチビりそうです。

そういうモノ凄いのではないにしても、我々のどのショットも“一生に一度のショット”であるということに気が付きました。

私は食いしん坊です。キャビアを愛好するとか、月に一回コンコルドでMaxim de Paris(マキシム・ド・パリ)に行かないと落ち着かない…というような“グルメ”とは違います。食べるものは豚汁でもカレーでもいいのです。まずいものを食べたくないという食いしん坊です。中年以降になると、一生の先が見えて来ます。あと何十年生きるか、×365、×3、それが食事の回数です。一回でもまずいものを食うと、限りある食事回数を台無しにしたことになります。

ゴルフ・ショットも実は同じなんですね。目の前のショットは一生に一度のショットです。2000年8月XX日XX時XX分XX秒のショットは、もう二度と巡って来ません。同じ場所から打ち直したとしても、それは前のとは別なショットです。

私が一打に集中出来ないのは、まだまだ無限の回数でラウンド出来、無限の回数でショット出来ると思っていて、目の前の一打もそうした中の"one of them"であると軽視しているからだったようです。昔、パチンコが手動だった頃、その日のお小遣いも一杯あり、箱に山のように球がある…という時は、どの球にも思い入れなどありませんでした。しかし、既に一万円注ぎ込んで箱には十発ほどしかない…となると、一球、一球、祈るような気持ちで大事に打ったものです。ゴルフでも一打、一打を大事に打てない筈がありません。

「成功しようとしまいと、この一打は一生に一回のショットなんだ。上の空ではなく、丁寧に打とう」と考えて、「ゲッ!」とか「ギャアア!」とか奇声を発しないで済むようにしたいものです:-)。

(August 10, 2000)


ボールを池に叩き込め!(続・池越えの秘訣)

私の通っているコースはNo.1が150ヤードは飛ばないといけない池越え(Par 4)で、続くNo.2も150ヤード付近を蛇行する小川が横切っています(Par 5)。150ヤードを越すのは何でもない筈なのですが、ラウンド開始直後だけにこの二つは常に難関です。身体が温まっていない、スタートで躓きたくない、ギャラリーがいる…等々で、プレッシャーも大です。

最も大きな過ちは、とにかくボールを宙に浮かべたいという思いでしゃくり上げるスウィング。他人の池ボチャも自分のも、この範疇が大半です。もう一つは、「安全第一」とばかり力の無いスウィングをしてスピンがかからず、やはり池ボチャ。

悟りました。池にボールをブチ込めばいいのです。しゃくり上げないで、ボールをダウンブローに押しつぶす。池に叩き込む。結果としてスピンがかかりますから、たとえ低く出たとしても結構な距離が稼げます。勿論、池など問題ではありません:-)。

(August 12, 2000)


Big Bertha(ビッグ・バーサ)物語

Callaway Golf(キャラウェイ・ゴルフ)の「社史」のページを見ますと、「第一次大戦の大砲の名を取って命名された'Big Bertha'(ビッグ・バーサ)」とあるだけで、詳しいことは分りません。Internetのサーチ・エンジンで探しましたら、次のような記事がありました。

「'Big Bertha'はエッセン(ドイツ)のクルップ兵器工場で製造された巨大な移動型包囲攻撃用大砲である。正式名称は『Krupp 420mm重榴弾砲』だが、世界的に'Big Bertha'として知られるようになった。この大砲は、ベルギー、フランスの前線の砦を攻撃するための兵器として、ドイツ軍が注文したものである。

最初の'Big Bertha'は1914年8月に完成。大砲一基について1,000人の要員を必要とした。'Big Bertha'はそれ迄の大砲のどれよりも大きく、どれよりも重かった。930gの砲弾を毎時十発発射出来た。射程は15km。

'Big Bertha'は1914年8月12日にベルギーのLiege(リエージュ)で初使用され、数日でベルギーの要塞を破壊した。Liegeにおける'Big Bertha'の成功は、他の参戦諸国に巨大移動型大砲の製造を促進させた」

(August 12, 2000、改訂May 30, 2015)


瞑想

'Integrating Mind & Body for Better Golf: Meditation'
by Dr. Nick Rosa (Peak Performance Psychology, 1998, Audio Tape, 30', $19.95)

[P3 Meditation]

Dr. Rosa(ドクター・ローザ)の"Peak Performance Psychology"(P3)による「瞑想篇」。

Dr. Rosaによれば、プレイの15分〜1時間前の10分間の瞑想は、血圧と血流量を安定させ、集中心と精神の安定、スタミナも確保出来るのだそうです。

テープA面は10分間の短縮版、B面は20分のスタンダード版が入っています。先ず、お経の文句を選びます。簡単で気分を落ち着かせる言葉、例えば"Calm"(落ち着き)、"Peace"(平安)、"Placid"(穏やかな)、"Serene"(のどかな)、"Easy"(気楽な)、"Relax"(リラックスした)等…のどれか一つを選びます。私のお経の文句は'Quantum Golf'の"superfluid"です。邪魔の入らない場所で、椅子に腰を下ろします(出来ればヘッド・レストの無い椅子)。目を閉じて、先ほど選んだ言葉を繰り返します。10分後、目を開けて30秒〜2分ほど深呼吸と腕のストレッチングをします。

上の説明でテープの構成に疑問を抱かれた方は鋭い。10分の間、お経を唱えるのはこちらですから、テープはBGMを流すだけ。テープの仕事は「10分経ちました」と時間経過を教えてくれるだけです。ただ、そのBGMが普通のムード・ミュージックとは違います。

Dr. RosaはテープのBGMとしてαとθ(シータ)の周波数のシンセサイザー音楽を使っています。脳波が8〜12Hzだとαで、軽いリラクセーションとポジティヴな観念化作用を生じ、4〜7Hzだとθで深いリラクセーションと瞑想的状態、拡大された創造性と直感をもたらすそうです。

では、ゴルフ場へ行くまでの間、車の中でα音楽を聴いたらどうかと思い、Dr. Rosaに問い合わせてみました。αとθの音楽を聴きつつ運転したり、大きな装置を操縦したりするのは危険だそうです(特にθはウトウトしてしまう)。

しかし、多くのアーティストや作家達は、その創作活動を高めるために、こうした音楽を聴きながら作業するとか。

Dr. Rosaのお薦めは、

"Alpha Relaxation System"
"Theta Relaxation System"
"Brain Wave Suite"
by Dr. Jeffrey Thompson

"Music for Accelarated Learning"
by Steven Halpern

なお、60 bpm (beats per minute)より遅いテンポのバロック音楽はα状態を作り出し、最もゆっくりのバロック音楽だとθ状態になるそうです。

運転中に聴くものとしては、遅いテンポのバロック音楽が良さそうですね。Dr. Rosaは「数回テープを聴いた後はテープ無しでやりなさい」と云っています。α音楽抜きになりますが、スタート前の10分間に、ゴルフ場のロッカー・ルーム、あるいは駐車場の車の中で瞑想状態を作るわけです。

'The New Toughness Training for Sports'
by James E. Loehr, Ed.D. (Penguin Books USA Inc., 1994, $12.95)

「遅めの脳波の活動とθ周波数だけが、通常近づけない潜在意識と無意識領域への接近を可能にする」

'Golf: The Mind-Body Connection'
by Tom Saunders, M.D. (Mind-Body Golf Limited, 1996, $39.95)

「自己催眠と他の似たような療法(ヨガ、禅、瞑想、深い弛緩状態、生体自己制御等)は同じような神経生理学的状態を目指す。これは白昼夢に類似した働きをするメンタルな状態である。視覚、聴覚、感覚、希に嗅覚などの中の一つの感覚に意識を狭めていく。通常、心の平安とリラックスした感覚、そして環境から超越した状態が得られる。これは白昼夢を経験した人間には自然な現象である。白昼夢を見る時、我々の右脳がアクティヴになり、普段優勢な左脳が沈黙する。これは瞑想や催眠状態と同じである」

(August 14, 2000、改訂May 30, 2015)


Tiger-proof(タイガー対策)

1997年のThe Masters(マスターズ)でTiger(タイガー)が大量リードで優勝した時、USGAを初めとするゴルフ・トーナメントを統括あるいは主催する人々は慌てふためきました。「この若者が伝統あるスポーツをオモチャにしてしまう」そこで、翌年のThe Mastersから"Tiger-proof"(タイガー対策)が講じられました。無理をしてでもコースの距離を長くし、そしてフェアウェイを狭くしたわけです。2000年のU.S.オープンも全英オープンもティー・グラウンドを下げたりして、距離を伸ばしました。

PGA選手権 2000の会場Valhalla(ヴァルハラ)は、雑誌記事によれば「このコースはメイジャーに相応しい品格と難度を備えていない」とか。ここもティー・グラウンドを下げたようですが、そう長くも出来ずパー5などは誰でも2オン可能のようでした。

三日目までTigerに食い下がったScott Dunlap(スコット・ダンラップ)、最終日、一歩も譲らなかったBob May(ボブ・メイ)、その他J.P. Hayse(ジェイ・ピー・ヘイズ)、Greg Chalmers(グレッグ・チャルマーズ)ら、ほぼ無名に近いプロ達の健闘を観ていて、距離を伸ばす"Tiger-proof"は無意味だと思いました。Tigerは400ヤード以上でも飛ばせるのに抑えているだけですから、彼にとって距離は問題ではありません。コースのヤーデージを伸ばせば、そうは飛ばないその他大勢との差が開き、Tigerの独走を許すばかりです。逆に、Valhallaのようにヤーデージが短いと飛ばないプロにもチャンスが訪れます。"Tiger-proof"は「距離を短くする」のが正解だったようです。

(August 20, 2000)


ビールの功罪

'A Sprited Game'
by Ron Kaspriske ('Golf Magazine,' September 2000)

「"Drugs and the Athlete"(薬物とスポーツマン)の著者Gary Wadler(ゲアリ・ワドラー)博士は云う、『数本の缶ビールあるいはウィスキーのシングルは、No.1ティーに立つ神経質なゴルファーの助けとなるかも知れないが、インに入った頃、それはバーディよりはボギーを出す方に貢献する』

12オンス(355 ml)のビール、4オンス(118 ml)のワイン、1オンス(30 ml)のリカーは、その影響を身体で感じるまでに一時間かかる。しかし、アルコールが血液中に入り肝臓に移動したとなると、ゴルファーはバランス感覚、集中力、時として脱水症状などとも格闘することを余儀なくされる。アルコールはまた、中枢神経を抑制する働きもする。

『アルコールの影響は様々な要素によって異なる。どれだけの量を、どれだけ急速に呑んだか…など』とWadler博士は云う。一旦血液として流れ始めたアルコールは、スポーツの技能を14時間にわたって阻害する。

スポーツ栄養士のJonatan Writeは、ゴルファーがアルコールを摂取するならラウンド後半に一杯か二杯にせよと示唆する。ビールやウィスキーと一緒に、水も沢山飲むこと。

ビールは完全な悪者ではない。最近の研究では、一日32オンス(946 ml)のビールは心臓病の危険を減らすとされている」

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普通の缶ビールは12オンスですから三本を越えると多いという勘定。午前9時にラウンド開始と仮定すると14時間前は午後7時です。これ以降の飲酒はまずいということになります。

(August 22, 2000)


ボールに忍び寄る方法

U.S.オープン優勝者Ken Venturi(ケン・ヴェンチュリ)の世にも珍しいtip。

'Stroke Savers'
by Ken Venturi with Don Wade (Contemporary Books, 1995, $14.95)

「ドローを打ちたいと思ったらかなり左からボールに近寄ること。スウィングしたいのと同じインサイドの角度を保って近寄る。これは、あなたの心と身体に『インサイド』の感覚を植えつける。

フェードの場合は、ターゲット・ラインの外側から近寄る。ターゲットの左に肩と腰、両足を揃えてオープンなアドレス・ポジションを見定めながら。

これらは一寸理解しがたい教えのように思えるだろうが、やってみるとその効果に驚く筈だ」

(August 28, 2000、増補May 30, 2015)


科学的事実

'Tips from a great instruction book: mine'
by Dan Jenkins ('Golf Digest,' December 1996)

常にグリーンの高い方へミスすべし。高い方からならボールが偶然転がり込むことはあるが、低い方から転がり込むことは絶対に無い--地震の最中ででもなければ。それに、我々全員がカリフォーニアに住んでいるわけでもないのだ。

(注)アメリカの場合、西海岸以外ではほとんど地震はありません。

(August 29, 2000)


エネルギー補給マニュアル

'Fuel for Shots'
by Neil Wolkodoff, PH.D. ('Golf Magazine,' September 2000)

「ゴルフのための適切な栄養補給の目標は、四時間にわたるスウィング、フォーカスを維持するため、エネルギーを均等に放出することである。

最近の研究によれば、ゴルファー達は栄養補給の面では有罪であることが判明した。食事を抜かす、OUTとINの間にとる脂肪の多い食事、そして不十分な水分補給。あなたも多分同罪だろうが、それは何を、いつ食べるべきか知らないからだ。

【水】

家を出る迄に8オンス(24 CC)の水を飲むこと。コースに着いたら6オンス(18 CC)、No.1から始めて3ホール毎に3オンス(9 CC)の水を飲む。もし気温が80゜F(26.7℃)を越え、湿度が60%以上であれば、3ホール毎の水を2オンス(6 CC)ずつ増やす。

【健康バーと健康ドリンク類】

ゴルファーは多量の炭水化物を含んだエナジー・バーとかスポーツ・ドリンクに頼り過ぎる。これらは糖分による高揚した状態と、一転しての虚脱状態をもたらす。しかしながら、健康バーと健康ドリンク類は、エネルギー欠乏を防ぐに十分な炭水化物、たんぱく質、脂肪を含んでいる。

 

適度に補給するには、400カロリーの健康ドリンクをコース到着前に飲み、OUTとINの間に250カロリーの健康バーを食事代わりに食べる。そして、No.15でさらに250カロリーの健康バーを食べる。

【食事】

ゴルフの前にいい朝食で満タンにすること。お薦めは卵二個、トースト、オートミール(約500カロリー)である。もし、コースで朝食をとらなければならない時は、ベーグルと低脂肪ミルク、果物を何か一つ。

OUTとINの間では七面鳥サンドイッチ(アメリカでは低脂肪食品としてとてもポピュラー)、網焼きチキン・サンドイッチ(なければバーガー)を食べる。ピクルスは食べてもいいが、マヨネーズとポテト・チップスは避けること。

No.15でオレンジジュースを少し、エナジー・バーあるいはスポーツ・ドリンクをとる(ラウンド後半であれば炭水化物が多くてもOKである)。

もし、乗用カートを使用するなら、エネルギー消費は少なくなるので上のメニューの内容を減らす。もし一週間に四時間以上運動をする人は10%ずつカロリーを増やすこと」

日本も猛暑のようですが、こちらも9月というのに30〜41℃という毎日です。以前は'Powerade'(スポーツ・ドリンク)をガブ飲みしていたのですが、上の記事を読んでから方針を変えました。'Powerade'の591 mlボトルの空き瓶を二本用意し、一本には水を1/4ほど入れ、冷蔵庫の氷を3/4詰めます。もう一本には'Powerade'の中身を製氷皿で凍らせたものを同じような分量で詰めます。スポーツ・ドリンクは水のように固まらず、シャーベット状ですので、溶けるのが早いです。OUTは水を主に、'Powerade'は三回に一回、INでは水と'Powerade'を平均して飲むようにしています。

【参考】
・「80を切る栄養学」(tips_5.html)
・「80を切る食事」(tips_61.html)
・「ゴルフのための食事」(tips_117.html)
・「朝のゴルフ・午後のゴルフ」(tips_69.html)
・「コンペ前夜」(tips_108.html)
・「エナージィ・ドリンクの飲み方」(tips_121.html)

(September 05, 2000、増補May 25, 2015)


睨(ねめ)付ける

スポーツ心理学者Dr. Tom Dorsel(トム・ドーセル博士)推奨の厳しい凝視。

'Maintain Focus'
by Tom Dorsel, Ph.D. ('Golf Illustrated,' November/December 1999)

「目を彷徨(さまよ)うままにまかせてはいけない。Ben Hogan(ベン・ホーガン)が"The Hawk"(鷹)と呼ばれたのは、彼が翼を持っていたからではない。彼の目が獲物を前にした猛禽のように、刺すような目付きだったからだ。まるで使命を帯びた人のような激しい凝視は、Raymond Floyd(レイモンド・フロイド)やTiger Woods(タイガー・ウッズ)の目にも見たことがある筈だ。

フェアウェイの真ん中を凝視し、スウィング・キーをおさらいするか、これから打つショットの美しい軌道を視覚化しなさい」

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睨(ねめ)付けるというのは、お相撲さんが塩を取りに行く前の睨み合いの気迫です。ボクサーの合同記者会見における睨み合いというのもありますが、あれはお芝居という気もしないではありません:-)。

ターゲット・ゴルフの項で、「ピン傍で停まったイメージ上のボールが、ニコニコと笑って『ここだよ〜!』と私に呼びかける」という視覚化について書いたことがあります。結果としては同じことなのですが、ボールの着地点を凝視することによって、脳に距離感がインプットされ、そこへ到達するための軌道、それを達成するスウィングの振幅、ヒッティングの強さ等が筋肉に指令されるわけです。Dr. Dorselは単に“見る”程度では駄目で、「睨(ねめ)付けなくてはいけない」と説いているわけです。

ずっと試していますが、効果はてきめんです。睨付けたら、後は脳+筋肉のチームに任せなくてはいけません。「さっき、ショートしたから、今度は強めに」などと考えると、チームの賢明な判断を横暴なオーナーが邪魔するような結果になります。チームはバック・スウィングの巾、インパクトの強さを適切に処理してくれます。

(September 10, 2000)


ダッファーの法則

・とらぬ狸の皮算用

 ハーフ終わるまで合計打数を数えないこと。「次をパーなら30台だ」ということが解ってしまうと、プレッシャーが強くなり過ぎます。出来れば、ワン・ラウンド終わるまで数えない方が良さそうです。

・何度数えてもスコアは同じ

 不思議なことに、No.9あるいはNo.18をホールアウト直後、結構猛スピードで計算した合計は常に正しい。40台前半だった場合など、「ゆっくり数えれば計算違いを発見し、実際は30台かも?」という期待はいつも裏切られます:-)。簡単な数字だから間違えっこないのでしょうか?それとも、「絶対に多くならないように」という“自衛本能”が働いての計算なので、保証付きの最小スコアになるのでしょうか?

・気をつけよう、甘い言葉とバーディの後

 結構飛んだティー・ショット、結構寄ったアプローチ、うまく転がったロング・パット、他人が褒めっようが、褒めまいが、これらは内心「俺って、なかなか出来るじゃん」的“天狗”状況を醸し出します。自信をつけるのはいいのですが、“天狗”はいけません。よくあるでしょう、バーディの後のダブルとかトリプル。あれは“天狗”になったことへのしっぺ返しなんでしょうね。うまく行っている時は、「ヨーシ、ここまではうまく行った。正念場はこれからだ」と、兜の緒を締め直す気持ちが必要です。何せ、私は“天狗”になって何度も失敗している経験者ですから、100%自信を持って断言出来ます:-)。

[3 Stooges]

・見て欲しいときにはギャラリー誰も居ず

 まあ、ギャラリーが居ないからいいショットが出来たのかも知れませんが:-)。

・遠く探して赤恥さらす

 フェアウェイ・ウッドによるショットを見失うと、ボール探索には結構時間がかかります。何故かというと、最近の低重心ウッドはかなり球が高く上がるため、相当飛んだと思いたい当人の目には、かなり飛んだような錯覚を与えるからです。当人が100ヤードも前の方を探している際、冷静なパートナー達がずっと後方でボールを見つけてくれた時の恥ずかしさは、ほかに類がありません:-)。これを防ぐには自分の平均飛距離の一番短い方から探すのが賢明です。

フェアウェイにボールが数個転がっている場合も、謙虚に一番後ろからチェックして行くのが正しいようです。遠くのボールからチェックして戻って来ると、何やら劣等感を抱く原因となります。

・パスせぬ組に祟りなし

 かなり近づいてしまうと、「あの連中はパスさせてくれるだろうか?」とやきもきしがちです。これは余計な想念を混入させ、ゲームに集中出来なくなります。

 運良く前の組がパスさせてくれるとなると、突如自分を見つめるギャラリが数人出現し、空振りだのチョロだのてんぷらだのを心配しなくてはなりません。

 出来ることなら、自分のペースを失わない程度にゆっくりプレイした方が良さそうです。ホール・アウトしたグリーンでパットの復習をするとか、上手な人から何か教わるとか。

 PGAツァーもやたらプレイが遅くなったようで、午後スタートのプロ達ほど待ち時間に苦しむようです。Colin Montgomerie(コリン・モンガメリ、スコットランド)などはすぐ頭に来るようで、これがメイジャーに勝てない原因かも知れません。Tigerも内心は苛々しているでしょうが、「勝つために来てるんだ。こんなことで優勝を棒に振れるか」と平然と構えているように見えます。この態度を見習いたいものです。

・悪い予感は必ず当たる

 いい予感というのはそれほど実現しないものですが、悪い予感は100%実現しますね:-)。「池に入りそう」とか「木に当たりそうだ」とか。悪い予感がその日の調子に基づくものであれば、クラブを変えるとか刻むとか、打法を変えるとか、何か対処しなければなりません。単に「入ると嫌だな」という程度であれば、自分の過去のいいショットとその時の自信を思い出して、悪い予感を払拭しましょう。

・下手な考え、休むに劣る

 フェアウェイあるいはショート・ホールのティーに立った時、本能が「7番アイアンだな」とか、「6番だな、ここは」とか囁きます。しかし、フェアウェイのヤーデージのサインやティー・グラウンドの表示を見て、「いつもは8番だから」、「ヤーデージからすれば5番だよな」などと変更すると、大体において失敗します。直感(本能)はその日の体調を冷静に判断し、疲れ気味で飛ばないからとワン・クラブ上を示唆したり、飛んでいる場合はその逆を指示するのでしょう。その日の湿度なども皮膚感覚で取り込み、当人の知らないうちに案配してくれているかも知れません。その本能を理性でねじ曲げようとすると、プレイヤーの身体の中でコンフリクトが生じると云えるでしょう。

 グリーン上での傾斜やスピードの読みについて『直感が常に正しい』とは、よく云われることです。多分、それまで経験したパッティングのデータベースが脳内にあり、目から入った情報により瞬時に類似の状況がピックアップされるのでしょう。囲碁・将棋で『下手な考え、休むに似たり』という格言がありますが、“下手な考え”を優先させて脳内データベースの検索結果を無視するのは、“休む”より数段悪いようです。

(September 14, 2000)


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