Golf Tips Vol. 30

フェード考

時々コースで出会うDon(ドン)に、「フェードの打ち方を見せてくれ」と頼んだことがあります。彼の説明では、1) オープン・スタンス、2) グリップはしっかり握る、3) アップライト・スウィング…というもので、これ以外の何も考えなくていいというものでした。その後、会う度に「フェードは打てるようになったか?」と聞かれます。「いやあ、難しい」と答えると、「絶対諦めるな」と励まされます。

実は、これまで何人かにデモンストレーションを頼んだのですが、一人として「これぞフェード!」という球筋を見せてくれた人はいません。ほとんどストレートに近いものでした。ロー・シングルのDonですらです。まあ、急に「さあ、見せろ!」と云われて実演するのも大変なのでしょうが、上手い人達にもフェードは結構難しいものらしいと感じました。

「ストレートな球筋というものはない。必ずどちらかに曲がる。どっちに曲がるか分らないというのでは最低で、思い通りの方に曲がる球筋を会得すべきである」という説があります。また、フックは距離は稼げますが、どんどこ転がるため林やOBへの近道でもあります。どうしてもフェードを身につけたいところです。

ただ、これ迄読んだフェードの打ち方は、説明は簡単そうでもなぜかうまく実行出来ませんでした。Donのセオリーも例外ではありません。ところが、今日の練習で初めて「あ、これでいいのか!」と実感出来るショットがいくつか出ました。フェードでなくストレートになることもありますが、フックは回避出来ます。まだ、ほんの緒についただけなので、この時点で報告するのは気が引けますが、多分このまま練習を重ねればいいのだろうと思います。この蔭には二冊の本の助けがありました。

'The Complete Golfer'
by Tom Dorsel, Ph.D. (Allyn and Bacon, 1996, $19.00)

「1) ターゲットの一寸左を向いたオープン・スタンスに構える。

2) 両腕の位置を動かさずに、クラブ・フェースがターゲットを指すようにクラブを回す。

スウィングには何の変更もしない」

'Corey Pavin's Shotmaking'
by Corey Pavin with Guy Yocum (NYT Special Services, Inc., 1996, $11.20)

「1) ターゲットの左に両足と両肩を揃える。

 

2) 大抵のアマチュアは普通のグリップで握ったまま、クラブ・フェースをオープンに捻ろうとするが、これではオープンにしたことにならない(フェードではなく、プルになってしまう)。先ず、クラブ・フェースをオープンにしてからグリップを締める。

3) いつも通り、両足と両肩で作られる線に沿ってスウィングする」

上の二つの記事には、ウィーク・グリップだの、アウトサイド・インの軌道だのという説明が一切ありません。結果的にはそれと同じことが起るのですが、筆者たちは巧妙にシンプル化した説明に撤しています。

これ迄私が失敗していたのは、グリップが原因でした。Corey Pavinが云うように、私も構える前にグリップしたままだったのです。上記二つの説明を総合した結果、クラブ・フェースをターゲットに向けたまま、(そのままだとストロング・グリップになってしまうので)オープンにした足、肩に合わせて通常のグリップになるようにセットする(クラブ・フェースとの関連で云えば、結果的にウィーク・グリップになる)。

更に、以前は「両足と両肩で作られる線に沿ってスウィング」でなく、ターゲット・ラインに沿ってスウィングしていたので、超インサイド・アウトのスウィングになっていたのです(無茶苦茶)。「両足と両肩で作られる線に沿ったスウィング」ですと、(ターゲット・ラインとの関連では)黙っていてもアウトサイド・インになります。これならボールは右回転するわけです。やっと納得。

次は、私の個人的セットアップ順序です。

1) クラブ・フェースをターゲット・ラインに合わせる。
2) フェースの向きを保持したまま、身体全体をオープンにする。
3) 足、肩のラインと平行の線がスウィング軌道なので、それにスクウェアになるようにグリップをセットする(ホンのちょっぴり左に廻すことになる)。
4) 足、肩のラインに沿ってスウィング。

(October 05, 1999)


Squareな奴(左にフェード?)

フェードの練習を重ねていますが、妙なことが起きています。アイアンでは綺麗なフェードがかかるようになったのですが、フェアウェイ・ウッドになるとダック・フックになるのです。

'Practical Golf'
by John Jacobs with Ken Bowden (The Lyons Press, 1972, $13.76)

著者のJohn Jacobs(ジョン・ジェイコブス)は、英国有数のインストラクター。

この本はAnthony Ravielli(アンソニイ・ラヴィエリ)のイラスト付きです。著者John Jacobsも、わざわざ「Anthony Ravielliに挿絵を描いて貰って光栄だ」と書いています。'Ben Hogan's Five Lessons'『モダン・ゴルフ』のイラストほど素晴らしくはありませんが、それでも一流の仕事ではあります。

加えて、'Why better golfers fight a hook'という一章が目に付きました。只のフック解消法ならごまんとありますが、「何故ベター・ゴルファーはフックに悩むのか?」という、“ベター・ゴルファー”という表現が気に入りました。私はフックに悩んでおりますが、ベターと云って貰えるのは嬉しいものです:-)。

John Jacobsの説明によって、私のは単純なフックではないことが分りました。フックは、一度右へ出たボールが左に曲がるものであり、ストレートに出て左へカーヴするのは"Tail-away hook"(テイル・アウェイ・フック)、左に出てさらに左へカーヴするのは"Pulled hook"(プル・フック)だそうです。私のレパートリーには両方含まれますが、いずれの場合もクラブ・フェースがインパクトでクローズになるのが原因。“ベター・ゴルファー”によるフリーな腕とクラブヘッドによるスウィングが、このクローズド・フェースをもたらすのだそうです。

ここで重要なのは、プル・フックはアウトサイド・インの軌道によるもので、スライスの親戚なのだそうです。クラブ・フェースがクローズだからスライスにならず、プル・フックになるだけ。これは驚きでした。私の場合、過度にインサイド・アウトはあり得ても、アウトサイド・インは無いと思い込んでいたからです。

で、フェースがクローズにならないような練習をやってみたのですが、相変わらずフェアウェイ・ウッドでは乱れます。そして、あることが判明しました。フェアウェイ・ウッドになると頭の角度が妙に落ち着かないのです。スクウェアな構えなら、頭(両目を結ぶライン)もターゲット・ラインに揃えますが、フェードを打つ場合は足・肩のラインに揃えなければなりません。ところが、頭を足・肩のラインに固定しようとするとクラブ・フェースもそれに近くなろうと勝手にじわじわとクローズ目になり、クラブ・フェースを固定しようとすると頭は足・肩のラインを裏切ってターゲット・ラインに揃ってしまう。つまり、フェースと頭が連動してしまうのです。

頭(両目を結ぶライン)がターゲット・ラインに平行な場合、スウィングもターゲット・ラインに沿って振られて過度のインサイド・アウトとなり、最悪のプル(真っ直ぐ左)になります。

なぜ、こんなことが起るのか。シャフトが長くなって、ボールとの距離が離れてオープンの角度が落ち着かないほど大きくなったから…というのが一つの解釈です。もう一つは長年スクウェア一筋でやって来たため、それから脱却出来ないという見方。"Square"という言葉には「旧式の」、「堅物の」という意味もあります。どうも私の場合、四角四面で融通が利かない“Squareな奴”という形容詞が相応しいみたいです。

(October 11, 1999、改訂May 29, 2015)


上り、下りの度合い

以下は1999年4月のアンケートの際、お応え下さった皆様に御礼としてお届けしたTipsの一つです。

私のパッティングの準備ですが、先ず勾配の下から上り、下りの度合いを判断します(「ストックトンの技法」参照)。次にボールの後ろに廻って、先ほどの勾配を勘案してラインを想定します。で、パット。

上り、下りの度合いは即座に判りますが、ラインを考える方は時間がかかります。あれこれ考えているうちに心はラインに占領され、ヒットする強さの基準となる上り、下りの度合いを忘れてしまうことがあります。打ってから「いけね、相当な下りだったんだ!」 で、物凄くオーヴァーしたりしちゃいます。

そこで登場するのが、上り、下りの度合いをユニークな表現で記憶し、アドレス後にそれを復唱するという方法。例えば、上り、下りの度合いを調べる時に「もの凄い上り」、「死にそうな位の上り」、「わあ、大変な上り」、「結構な上り」、「やや上り」、「ちょい上り」、「さりげない上り」、「全く気にしなくていい上り」などと定義します。一風変わった表現の方が、後で思い出すのに楽です。その日の気分によって変えます。

「えっと、“結構な上り”だったな…」とか思い返すのが最終チェック。これで強さを間違えることはなくなります。

(November 09, 1999)


フィニッシュ・ポジション

'Mind Under Par'
by David F. Wright, Ph. D (Behavior Change Media, 1997, $15.96)

「バック・スウィングのトップでの両手の位置に焦点を合わせた場合、右側に留まり過ぎてプッシュ、カット、スライスなどを誘発する。あるいはクラブが減速して、ファットに打ってしまい、どでかいディヴォットをとる結果になるかも知れない(編者註:私はこれが出ることが多い)。

スウィング・ポジションについて考えるなら、フィニッシュ・ポジションを考えること。このイメージと思考の焦点はボールを通して大胆に振り抜く結果をもたらす」

(November 21, 1999)


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