サモア独立国(旧西サモア)の日系ホテルの総支配人・田中さんからのお便りです。サモアは美しい自然に恵まれた“楽園”というだけでなく、一人でも廻れる“ゴルフ天国”でもあるそうです。このサモアを訪れた中さんの体験記(次項)と併せてお読み下さい。
・サモアは何処に
南太平洋にポツリと浮かぶ孤島の楽園サモア。日本人の来島者の年平均が100人以下と、日本人には未知の南海の孤島ながら、何でこんな小さな島に2.5ヶ所(来年は3.5ヶ所)も立派なゴルフ場があるのか不思議な島がサモアです。人口は17万人、広さや容姿とも韓国の済州島に良く似た、二つの火山隆起の島を美しい珊瑚礁が囲んでいます。位置はフィージーの北東600Km、交通はニュージーランドのオークランドや豪州、フィージー、ハワイからも週数便が飛んでいます。しかし正直、日本からの旅は至難の業、ちょっとゴルフにという所ではありません。未だ好き者の島、でもでも何と此処に日本企業のホテルが13年間も頑張っているのです。それが我らホテルキタノツシタラです。長野の北野建設の直営でニューヨークのホテルキタノとのチェーン。そんな訳でサモア名物のまぐろ刺身と伊勢海老に加え、ホテルでは和食も味わえるし、来るに大変でも来た甲斐のある、矢張り南海の楽園です。
・サモアはどんな国
サモアの愛称は"Heart of Polynesia"、南太平洋に広がるポリネシア文化の中心、昔この島からココナツを携え南十字星を頼りにポリネシア人は大海原を越えハワイやタヒチまで広がっていったと云われています。例えば挨拶の「タロファ」がハワイの「アロハ」になったと云われ、アニメに出てくるラピュータの名前もこの島で発掘されるラピュータ土器から来ています。
また過去ドイツやニュージーランド統治の時代もありましたが、南太平洋の国としては一番早い1962年に独立、98%がポリネシア人からなる平和な独立国です。今やインド人が半数のフィージーやフランス系のタヒチ、日系や米国人のハワイなど、多くが多民族化している南太平洋諸国の中で、サモアのような単一民族国家は稀で、為にポリネシアの古い習俗・慣習が色濃く残り、お陰で治安の良さは抜群の上大変友好的な国民性です。気候は海洋性の為熱帯に位置しながら年中23℃〜31℃前後の快適な暮らしにより未だ60%の人々が伝統的な壁の無い家に住み、パンの木や椰子、バナナ等での自給自足の生活を維持している全島がポリネシア文化センター状態。また産業に乏しい島の為に国は貧しいながら血縁組織が強いため市内でも乞食や物乞いの姿を見るのは皆無に等しく、また国際環境賞をとった村々は清潔で熱帯の花と緑に囲まれたガーデンアイランドです。ところが意外やそんな原始的イメージに反し、安定が各国政府の援助を呼び、全島電化の上道路もほとんどが舗装、何処へ行くにも快適なドライブが楽しめます。
・サモアは安・近・短ゴルフ
さて、そんな島のゴルフ事情ですが、何せフィージー出身ビージェー・シンの活躍でゴルフ熱は高まるばかり、首相もゴルフ好きの上政府の支援もありで、現在アピア市近郊に18ホールのゴルフ場が二ヶ所。またビーチリゾートにハーフのゴルフ場が最近開発され、来年には空港近辺にも国際級のゴルフ場が誕生する予定です。
サモアのゴルフは嬉しい「安」「近」「短」。安い、近い、すぐ出来る気楽なゴルフ天国。
まずは「安」。毎年サモア・オープンが開催されるファガリのロイヤルサモアGCはビジターのグリーンフィーが30タラ(約1,200円)、カートが同じく30タラ、キャディーは村人のアルバイト、ボラれない様事前交渉で20〜30タラ。年会費では何と600タラ(24,000円)で一年間プレーし放題です。パブリック・コースのファレアタGCになると、何とグリーンフィーは15タラ(600円)、カートが30タラ(1,200円)に加え400ヤードある広大な打ちっぱなしは一籠100球で5タラ(200円)。手で拾い集めてくるにしては超破格。
「近」。人口4万人のサモアの首都アピア市、その中心から車で15分の距離に両ゴルフ場ともあります。とはいえ両コースとも都会の喧騒から十分離れた環境。グリーンの質やフェアーウエーの整備は日本と比べようもありませんが、とりあえずまともなフェアーウエーを持っています。
気軽さの「短」。ここサモアでは予約は一切不要、行きたい時に行ってチェックインすればそのままスタート。プレーヤーの数も一人であろうが五人であろうが、最高九人でプレーしていた組もありました。それで詰まればサッサとスルーの声、時にホールをジャンプ、スコアーよりプレーそのものが楽しいサモアです。またエチケットにうるさい方には不満でしょうが、此処ではスタイルも自由。ショートパンツどころか、スニーカー、ゴム草履や裸足に加え、カートも走行自由。一人で居れば気軽に一緒のプレーの声が掛かかります。先日友人が一人のプレーヤーに声を掛けられ終わってみたら何と首相だったとの話。コンペも盛んで毎週土曜は要注意。でも誰でもその場でコンペに参加させてくれるので、がっかりする必要はありません。特にコンペでは九人でやるベスト3マッチが人気で、下手な私のお気に入り。何せ藪に突っ込もうが3人のベストショットから打てるので気軽さも倍増、正にスポーツとしてのサモアのゴルフです。此処ではお金も、道具も、衣装も、靴も、人数も問題ではなく、兎に角時間さえあればプレーができる気儘なゴルフがサモア流です。
・ゴルフ場の概況
ロイヤルサモアGCは珊瑚礁を見遥かす丘の上のIN、チャレンジングなジャングルコースのOUTからなり、渓流越え〈2番〉、ジャングルポット〈8番、ジャングルにぽっかり空いた鍋底へ打ち下ろす)、椰子の木回廊(3番、椰子林を縫う細いフェアーウエー)と結構ゴルファー泣かせの名物ホールが一杯。またショートでも180ヤード、日本ではロング扱いもここはパー4で、スコアーメイクも難しく、馬鹿にしてかかるとひどい目に。特にフェアーウエーを外れるとこれまた90%がロストする羽目に。サモアには蛇も毒虫もいませんがこのジャングルだけは大敵、たかが10cmが忽然と消えてしまうのです。フェアーウエーとて時に同じ、豪快ショットも所在の確認までは安心できません。案内板も少なく初めての方はアドバイスかキャディーが必要。さもないととんでもない方向へ打ったりホールの順番を間違えたり、カートは川を大きく迂回しなければならず道が分からなくなったりします。クラブハウスはあって無きが如し。コンペの際だけ二階のホールが開かれる程度で、ましてシャワーや食事は一切期待できません。レンタルは中古バッタの商品レベルですが、我がホテルにちゃんとした道具が4セット揃っていますのでご心配なく。プレーのねらい目は日曜の午前、地元の方は全員教会でゴルフ場独占状態が楽しめます。
パブリックコースのファレアタGCは山裾に広がる高原風の、幾分フラットなコース。広々とした敷地にはいつも爽やかな海風が吹く気持ちの良いコースです。雄大に広がるグリーンにはOBもなく、上級者には物足りなさはありますが、遠くにアピア市や珊瑚礁が望まれる、初心者でも気軽に楽しめるコース。プレーしない奥様や彼女を連れてのピクニック風ゴルフも楽しいものです。但し日曜日はスタッフ全員教会の為11時開業、それ以外は営業時間もあやふやで「プレーしたければどうぞ」の世界です。クラブハウスはサモア式大屋根のみのファレがあり、ビールやカップラーメン程度の軽食が可能、夜には時々政府主催のパーティー会場にもなります。シャワーはありますが、サモア式に帰り道に珊瑚礁のビーチでつかるのも楽しいもの。一粒で二度美味しいサモアです。
さてあと二つ、ハーフのシナレイリゾートコースは先週オープンしたてで未経験ながら、入り口からコテージの群がるビーチまでの広い椰子の茂る芝地のゴルフ場、ドライバー不要のアイアンコース。また来年オープンのアギーリゾートGCは何やら米国の有名な方が監修・設計の高級なゴルフ場になるとかで現在椰子畑を掘り起こし中。でも利用料もお高くなるとのオーナーのお話。初めてのビーチサイドのゴルフ場になる点が楽しみです。
・最後に
20世紀初頭に書かれた現代批判の名著『パパラギ』の中で「我々サモア人は何も持っていない、だが風や光や豊かな自然を一杯持っているので我々は白人より数倍幸せである」と酋長ツアビが語った通り、道具やスタイル、スコアーにこだわらない数倍幸せなゴルフが楽しめるサモアです。加え『宝島』の著者であるロバート・R・スチーブンソン(愛称ツシタラー、ホテル名の由来)は19世紀末、44歳にてサモアで他界、アピア市のシンボルであるバイエ山頂に葬られています。多分スコットランド人の彼の事ですからサモアでのゴルフを夢見ながら生涯を終えたのかもしれません。その山を挟んで両ゴルフ場もあり、共にこの山がゴルフ場のシンボル、今もスチーブンソンに見守られています。
【おことわり】画像はhttps://i0.bookcdn.comにリンクして表示させて頂いています。
(December 01, 2004、改訂January 03, 2017)
●サモアのゴルフ体験記既に「ニュージーランドのゴルフ」をお寄せ頂いている中さんによる、サモアでのラウンド・リポートです。「サモアに行ってみよう!」と思われた方は参考になさって下さい。
先日、サモアへ10日ほど旅行する機会があり、現地でゴルフをして来ました。サモアには現在三つのゴルフ場があり、そのうちの二つでプレーをしたのですが、いかにも南国、というのんびりしたゴルフ場で楽しめました。プレーをしたうちの一つは、「ロイヤル・サモアン」。イギリス系の国で、“ロイヤル”の冠が ついたゴルフ場ですから、もちろんそれなりのしっかりしたゴルフ場。フロントナインはアップダウンあり、ブラインドありのトリッキーな設計、バックナインはどちらかと言うと素直な設計でした。南国で飛距離が出る、ということもあるかもしれませんが、パー4は幾つかを除いてはあまり距離がなく、ドライバーがあたれば二打目はショートアイアンになるホールがほとんどでした。
気温は30℃くらいなのですが、とにかく日差しが強い。ニュージーランドではカートを使う事はほとんどない私ですが、この日差しでは脱水症状を起こしそうなので、カートを使いました。実際、カートでのプレーでも汗だくで、汗で日焼け止めが流れてしまい、プレー後は日焼けではだがひりひりしました。
フェアウェイの芝は南国特有(?)の葉の広い芝で、グリーンはあまり刈っていないので、極端に遅い。ついこの間、当コースでサモア・オープンが開催され、オーストラリアやニュージーランドのプロがプレーをしたそうですが、その際もグリーンのスピードはあまり変らなかったとか。プロもさぞかし苦労した事でしょう。
駐車場にはサモア人が10人以上たむろしていて、私のようなカモがやって来ると、するすると近づいて来て、チェックインやら、カートの世話やらこまごまと世話をし、頼んでもいないのにそのままキャディーとして付いて来ます。キャディーといっても、距離やらラインやらの助言はほとんどなく、一緒に回って励ましてくれる、というのが彼のお仕事です。
生来貧乏性の上、キャディー同伴のプレーに慣れず、またチップ制のないニュージーランドに暮らす私は、ラウンドの途中で、チップをどのくらい渡したら良いのだろう?と気になってプレーに集中できずに参りました。プレー後、妻と相談した額を渡したら、「その額では足りない。その倍くれ」と催促。また、途中バーディーが出たのだから、バーディーのご祝儀もくれるべきとさらに上乗せを催促されました。さすがに御祝儀は断りましたが、しっかり嫌味を言われた上、帰るときについでに車に乗せて行ってくれ、と頼まれる・・・ちゃっかりしたサモア人には苦笑いでした。後日、ホテル総支配人の田中さんと再度同コースでプレーする機会がありましたが、田中さんとゴルフ場に行くと、たむろするサモア人たちは近づいて来ない。田中さんにキャディー・フィーの話をしたら、「そりゃちょっと払い過ぎたったね。地元の人にはキャディーはつかないよ」といわれました。やっぱり“いいカモ”だったみたいです。
(December 01, 2004)
●危険な兆候'Pressure Golf'
by Michael Clarkson (Raincoast Books, 2003, $16.95)
あなたがあまりにもゴルフに真剣になり過ぎている場合の兆候ベスト10。
10. 指が震えて手袋を外すのに苦労する。
9. ホールアウトするかしないかのうちにスコアを記入する。
8. 自宅の机はスコアカードで溢れている。
7. 知人のハンデを全部知っている。
6. パターはあなたの車よりぴかぴかに光っている。
5. グリーンズキーパーの名前を調べに行ったりする。
4. 90を切った記念日はよく覚えているが、結婚記念日はうろ覚えである。
3. クラブのグリップを頻繁に交換しなくてはならない。あまりにも強く握り締めるからである。
2. 「フォーアッ!」と叫ぶのを止める。ボールが隣のフェアウェイにいる人間に当たればOBにならなくて済むという魂胆からだ。
1. あなたの同伴者たちが「フォーアッ!」と叫ぶのを止める。ボールがあなたに向かっているというのに」
(December 05, 2004)
●木越えはやめて転がすべし'Local Knowledge'
by editors of 'Golf Tips' ('Golf Travel Annual,' December 2004)
「木の枝に邪魔された時、『木の90%は空気である』という悪魔の囁きに耳を貸すのは賢い方法とは云えない。木越えの高いショットは超上級者に限定さるべきオプションである。
もしボールとターゲットの間にバンカーや障害物が無いなら、打ち上げる考えを捨て、パンチ・ショットで木の枝の下を転がすべきである。
ミドル・アイアンを短く持ち、ボールはスタンスの後方。少しフォワード・プレスし、手首を使わないでショットする。低く出たボールはかなり転がる」
実は私も何度か木越えのショットを試みているのですが、練習もせずいつもぶっつけ本番のせいか、たいてい木琴の演奏に終始しています。ある時、ドッグレッグの残り110ヤードでボールが木に阻まれました。友人が「高いショットかね、転がすのかね?」と聞くので、「今、どっちにするか考えてるところだ」と応えると、「おれなら転がすね」と云いました。木越えの失敗を繰り返していた頃だったので、素直に転がすことにしました。ハイブリッドの21°を手に、ボールは(Dave Pelz方式で)右足より外に置き、ゴツーン!とヒット。フォローはあくまでも低く(高いフォローだとボールは意図に反して上がってしまう)。結果は木の下をすり抜けて、グリーンの端にオン。友人は「おれがやりたかったのはそれだ!」と拍手してくれました。
なお、低くボールを出す場合の秘訣はゆっくりスウィングすることだそうです。速いスウィングではバックスピンがかかって、ボールを上昇させてしまうからです。
このショットは雨の日や大雨の後のコースではうまく行きません。ボールが転がってくれないので。
(December 08, 2004)
●Zone(ゾーン)への5ステップ本年5月に77でラウンド出来ましたが、その理由を私は「その日はゴルフの出来なんかどうでもよかった。いい結果など期待していなかった」ゆえと結論づけました。なぜなら、当時十日ほどの旅行を計画していて、ひょっとすると$65.00(一ヶ月廻り放題のパス)のモトが取れない恐れがあり、とりあえず旅行前に一回こなしておこう…というラウンドだったからです。80を切るだの、バーディをいくつだの、チップインだの、そんな高望みは全くしていませんでした。
この私の推理を支援する内容の本を見つけました。著者はジャーナリストですが、心理学者、スポーツ心理学者、コーチ、ツァー・プロなどから学んだことを体系付け、ゴルフの緊張と恐怖によるビビリを回避する方法を探求しています。次に紹介するのはZone(著者は"flow"と呼んでいますが)を追究する章の一部。私のケースをZoneと称するのはおこがましいので、私のは単に「80を切るチャンス」とお考え下さい。
'Pressure Golf' 「あなたがZoneを見つけることは出来ない。Zoneがあなたを見つけるのだ。それはゴルファーの一生で12回あるかないかの美しく、しかも至福の体験である。 もしあなたが幸運にもコースでZone状態に達した場合、ラウンド前はどのような状況だったのか、帰宅してからよく反芻してみるようお勧めする。 ・多分、その日あなたは楽しみだけを求めていて、スコアを気にしていなかった。 あるスポーツ心理学の大学教授は『Zoneを作り出すことは出来ないが、挑戦への意欲、雑念の排除、集中法の学習などの準備によってZoneを招き寄せることは可能だ。プレショット・ルーティーンのような儀式を確立することもZone到達への第一歩である』と述べている。 |
Zoneへの5つのステップ:
・あなたに手の届く範囲で挑戦的にプレイする。
・練習場で潜在意識に自信を植え付け、自分のスウィングを信じる。
・その日のあらゆる経験を楽しむように心掛ける。
・色々考えず、ゲームに没入する。
・ゲームのプロセスに集中する。スコアとか、誰かを打ち負かすとか、自己満足のためではなく。
Johnny Miller(ジョニィ・ミラー)が1973年のU.S. Open最終日に63で廻った時はZone状態だった。彼は云う、『フェアウェイのことだけ考え、ピンめがけてボールをひっぱたいた。安全にプレイしようなどとはさらさら思わなかった。まるで少年がプレイするであろうようにプレイしていた』」
(December 11, 2004)
●留意事項'Golf Doctor'
by John Jacobs with Dick Aultman (The Lyons Press, 1979, $16.95)
「練習の際、スウィングの留意事項は二つまでに制限することをお勧めする。ラウンドの際は一つに絞ること。どのショットの時も、プレショット・ルーティーンを実行する。
いくら練習嫌いでも、ラウンド前には少なくとも数個のボールを打つべきである。それはクラブのフィーリングを掴むのに役立つばかりでなく、その日の留意事項を決めるのに不可欠だからだ。スコアを良くするには、必ず留意事項を一つ決定してからNo.1ティーに向かうべきである」
(December 13, 2004)