'Golf Digest'の別冊付録'Golf Digest Woman' September 1998に'The simplest swing'というLiselotte Neumann(リセロッテ・ノイマン)の記事が掲載され、分解写真も出ていました。
右の図は、彼女のスウィングのトップです。もうこの後腕は上がりません。次の齣はダウン・スウィングです。いかにコンパクトであるかの証明です。既に300万ドル稼ぎ出したスウィングですから、コンパクトだから駄目、飛ばないから駄目と云い切ることは出来ません。
私が注目したいのは、バックスウィングが短いとは云っても、肩は十分廻されていて、左肱はビンと伸びていることです。私などは、バックスウィングを短くしようとする場合、つい肩の回転を中途半端にし、左肱を折ってしまいがちなのです。どうせやるならLiselotte Neumann式にしたいところです。
思うにスウィングにおける「諸悪の根源」は折れた左肱のような気がします。そのまま下りてくればトップします。コックがストレートならいいが、左右どちらかに手首を折った場合、アンコックと折れた左肱を伸ばす動作が完全にシンクロしないと、クラブフェースが開いたり閉じたりする筈です。シンクロしたら幸運というべきでしょう。ただ、あまりに左肱を伸ばそうと意識すると、重心が右へ移動しがちで、リヴァースCのダウンスウィングになって盛大にダフることがあります。これも恐い。
(August 25, 1998)
The Golf Channel(ゴルフ・チャネル)のある番組で、パターのグリップ・エンドに近いところを握るのが奨励されていました。「それで姿勢が高くなり過ぎる場合はシャフトを短くしろ」とまで云っていました。私はここのところシャフトに近く、パターを短く持つ方式でやっていましたので、長めに持つのは一寸した変革です。
色々試しているうちに、「クロスハンデド・グリップでやってみよう!」という気になりました。しばらく前にFred Couples(フレッド・カプルズ)の影響で一度やろうとしたのです。しかし、面白半分であり、決意して始めたことではないので、数日の結果の悪さで放棄してしまいました。最近のトーナメント中継を観ていると、PGA、LPGA、Sinior PGA(シニアPGA)、どれを取ってもクロスハンデド・グリップがわんさかいます。もはや少数派とは云えません。そういうトレンドと、彼等のポンポン入るパットの影響です。
私の場合、両手の掌を重ねると落ち着かないので、重ねないスプリット・ハンズのクロスハンデド・グリップという、ちと変わったグリップになります。これに「パッティング・ドクター」でHarold Swashが要約したパットの公式を取り入れました。さらにDave Stockton(デイヴ・ストックトン)推奨の乗馬スタイルの姿勢(足を広げ、曲げた膝の角度がやや強)を加えています。
TVのトーナメント解説者の誰かが「クロスハンデド・グリップはショート・パット向き」とか云っていましたが、プロ達はロング・パットもぼんぼん入れますし、その解説者は認識不足のようです。
1998年発行の'Golf Digest'にSe Ri Pak(日本表記:朴セリ)関連の記事がいくつかありましたが、一つは彼女のクロスハンデド・グリップ。あるトーナメント初日はヒールにシャフトがついているパターでプレイしていて、残り54ホールはパターの中心よりにシャフトがついているものに変更。これによって26バーディをマークし、たった一週間で1998年のLPGAパッティング順位を71位から43位にジャンプさせたそうです。
なお、Dave Pelz(デイヴ・ペルツ)は何度か御紹介した'Putt Like The Pros'(1989)という本の中で、「私はクロスハンデド・グリップでプレイする人を見たことがない。誰も身体の前で手をクロスさせたりしない」と云っていて、正しくは"Left-hand-low"(レフト・ハンド・ロー)と呼ぶべきだと書いています。云われてみれば、確かにどこもクロスしてません。Dave Pelzは、"Left-hand-low"はパッティングには満点のグリップだと評価しています。
その後のラウンドで、18ホールでワン・パットが9つ。残りの半分はツー・パットなので、合計27パットというのが二回ありました。勿論、寄せが上手く行ったというケースもあるので、全てがクロスハンデド・グリップの効用とは云いませんが、新しいグリップが自分に合ってなければこうは行かないでしょう。
現在感じていることは、距離感が抜群に反映出来るということ。左手主導でシャープにヒットすれば、先ずいい結果が期待出来ます。主導権が曖昧だと、へにゃへにゃのヒッティングになったりします。これの練習にはAl Geiberger(アル・ガイバーガー)の“新理論”「パットの内ゲバを鎮圧する」を理解する必要がありそうです。右手でバック、左手でヒット、そして十分な加速。
'Total Shotmaking'
by Fred Couples with John Andrisani (HarperPerenial, 1995, $15.00)
Fred Couples(フレッド・カプルズ):「1992年からずっとクロスハンデド・グリップでプレイしている。しかし、伝統的グリップに絶対戻らないとは云わない。もし、あなたがパッティングのインパクトで左手を折ってしまうとか、左方向にプルしがちというプレイヤーなら、クロスハンデド・グリップはお勧めだ。このグリップだとインパクト後も左手をクラブ・フェースに先行して保持出来るし、それがパッティング・ライン上のパットとなって開花する」
(August 24,25,27, 1998)
'Putt Like The Pros'
by Dave Pelz with Nick Mastroni (HarperPernnial, 1991, $13.50)
「70で廻るプロの平均パット数は30である。85で廻るゴルファーの平均パット数は35、95で廻る人は38パット」
…私の過去数カ月を調べてみましたが、少ないのが30で、多いのは39、平均が34でした。上の言葉は正しいと思います。
パットした際のボールの転がりですが、そう大きい差はないものの、
・コンプレッションの高いボールは若干長く転がる
・糸巻きバラタに較べ2ピース・サーリンカヴァーのボールは若干長く転がる
・長く転がるものは比較的ブレイクが少なく転がる
…と報告されています。ボールをごちゃ混ぜでプレイするのは自滅の因のようですね。
「ボールがスタートする際は、パターの軌道に沿ってではなく、クラブフェースの向きに従って転がりを開始する」
「パッティングの理想的グリップは(指の付け根で握るウッドやアイアンのショットと異なり)掌で握る」
「パットの前に静止状態で立っていてはいけない」
…リズムを壊し、筋肉が強ばってしまい、腕だけのぎごちない動きになってしまうそうです。
「マスル・メモリに新しいスウィングを記憶させるには10,000回の練習が必要(そういう調査結果がある)。古いスウィングが戻って来ないように確固として定着させるには20,000回の練習が必要」
【おことわり】画像はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。
(August 27, 1998)
'From 60 Yards In'
by Ray Floyd with Larry Dennis (HarperPerennial, 1992)
Skins Game(スキンズ・ゲーム)というのがあります。1ホール毎に何万ドルとか賞金がかかっていて、一人だけロー・スコアを出したプレイヤーが頂く。該当者がいなければ次のホールに積み上げる。スター・プレイヤーが四人で競うのが普通。Ray Floyd(レイ・フロイド)は最近トーナメントでこそパッとしませんが、Senior Skins Game(シニア・スキンズ・ゲーム)では毎年賞金王です。ここぞという時にチップ・インが出たり、ロング・パットを決めたりと、しぶとく、ガッチリしているのです。彼のこの本のタイトル(60ヤード以内)は、彼の絶品のショート・ゲームを象徴しているわけです。
ピッチ・ショットがボールをスタンスの中心より右に置き、手を先行させる(フェースがややクローズになる)のに比べ、ロブ・ショットではボールを左足側に寄せ重心も右側に置いたままスウィングするのだそうです。この方法なら高い軌道になるのは確実。「ピッチ・ショットでは最高にスピンをかけてボールを止めるが、ロブ・ショットは高い軌道で止める」
「ロブ・ショットは難しい部類に入るので、馬鹿の一つ覚えのようにこればかりやるのは感心しない(なぜ、Ray Floydは私のゴルフを知ってるのだ?)。ピッチが相応しい時にロブを選ぶべきではない。常に、簡単で安全な方法を選ぶべきだ」
「裸地でのロブ・ショットは危険極まりない。タイト・ライ(芝があるか無きかのところ)でも不可能に近い。ボールが芝の上に半ば浮いているような状況がベスト」
【おことわり】画像はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。
(August 30, 1998)
'From 60 Yards In'
by Ray Floyd with Larry Dennis (HarperPerennial, 1992)
Ray Floyd(レイ・フロイド)は、先ず重心を60:40で左側に置き、パッティングの間中そのままにするそうです。50:50にすると、必ずや体重を移動したい衝動が出て来るからとか。
彼は「パターはボールを通過して加速し続けなければならない。“打つ”のでないので、勘違いしないように。加速は急速なものではない」と考えています。
「左から右への切れるパットの場合、若干オープン・スタンスで、しかもボールにやや近めに立つのがコツ。逆に右から左へ切れる場合はややクローズに構え、少し遠めに立つ」…これらは、云われてみればまあ納得出来ますが、最近好調のBilly Mayfair(ビリイ・メイフェア)のパットはどうなのでしょう。まるで卓球で球をカットするように打ち、軌道も当然スライス・ラインになります。ロング・パットではやってないようですが、短いのは全部この方式。解説者もあきれていましたが、それがポンポン入るので更にあきれます。
「急な傾斜で、右から左へ切れる場合はパターのトゥ(先の方)で打ち、左から右への切れるパットではパターのヒール(かかと側)で打つ」
芝目を読む方法の一つとして、Ray Floydはスパイク・マーク(靴で引っ掻かれた跡)に注目します。当然ながら、芝は芝目とは反対の方に持ち上げられるからだそうです。
(August 30, 1998)
私は日英ゴルフ用語の比較にも興味を持っているのですが、“スライスライン”、“フックライン”は完全に日本語です。英語では"left-to-right breaking putt"、"right-to-left putt"などという長ったらしい表現しかありません。この場合は日本語の方が端的でいいようです。
カリフォーニア在住の矢野さんから、Ray Floydのパッティング に関連して次のようなメールを頂きました。
「左に切れるラインではパターのトウ、右に切れるラインではヒールと言うのは私も実践でやってます。
更に私の場合はボールの位置も多少変えます。左に切れるラインでは普段よりも右足寄りに移動(右足前にと言う意味でなく)。右に切れるラインでは左足寄りに移動してます。
理由は左に切れるラインでは球離れを早くしてホールの右上側に打ち出すため。右に切れるラインではボールとの接触時間を長くして引っ張りホールの左上側に打ち出すためです」
(September 04, 1998)
【追記】現在、NBC-TVの解説者Johnny Miller(ジョニィ・ミラー)が「スライスライン、フックライン」という言葉を使っています。ただし、他の解説者やオンコース・リポーターはそういう表現をせず、Johnny Millerただ一人です。もちろん、他のTV中継では聞かれません。私は「スライスライン、フックライン」という言葉が英米で広まることを願っていますが。
(July 30, 2007)
'Eye position'
by Joe Buttitta ('Golf TIPS,' June 1997)
パッティングの際に目をどこにおくかですが、これは気分で決めていいものではなさそうです。
1. ボールの真上
この場合、ターゲット・ラインに沿ってテイクアウェイし、ストレートにフォロースルーする。完全に振り子運動なので、シャフトがパター・ヘッドの中央についているタイプを用いるのが相応しい。Brad Faxon(ブラッド・ファクソン)やMark O'Meara(マーク・オメラ)がこの流儀。
2. ターゲット・ラインの内側(ボールは目線の外)
この目線が快適ならば、シャフトがヒールについているパターがベスト。Ben Crenshaw(ベン・クレンショー)やLee Trevino(リー・トレヴィノ)がこれで大成功をおさめている。Ben Crenshawの場合、パター・ヘッドはテイクアウェイでターゲット・ラインのやや内側に向い、インパクトでスクウェア、フォロースルーで再び内側に向かう。ヒールにあるシャフトが重要な働きをしている。
(September 04, 1998)
'Golf Magazine'『ゴルフ・マガジン』誌October 1998の表紙はDavid Duval(デイヴィッド・デュヴァル)です。インパクトの瞬間の写真ですが、異常なことに視線はボールに注がれていず、ターゲット方向を見ています。「何だ、これは!」と誰しも思います。そこで見出しの大文字に気付くわけですが、"HEADS UP!"と大書してあり、否が応でも本文を読まずにはいられなくなる仕掛けです。
ところが「David Duvalのパワー・シークレット」と謳っている割りには、筆者(コーチ)のCraig Shankland(クレイグ・シャンクランド)はDavid Duvalがやっていることをなぞっているだけで、ヘッドアップの効能やそうすべき理由には何ら触れていません。僅かに「胸主導でスウィングすることがパワーの源泉」と云っているだけです。腕で打つのではなく、常に胸が先行するスウィングがタメを作りパワーを生み出すと云っているわけです。確かにヘッドアップすれば、スムーズに胸が先行出来ますが、これだけでは納得出来ません。何しろ、ヘッドアップは忌避すべき最初のものとして長く教えられて来たわけで、いきなりそれをやれ!と云われても戸惑うばかりです。
そうこうするうちに、TV中継でAnnika Sorenstam(アニカ・ソレンスタム)のスウィングのスロー再生に遭遇しました。解説者が「御覧なさい!インパクトの瞬間、Annikaの顔はターゲットを向いています。ボールを見ていません。これはDavid Duvalのスウィングと同じです」と云っていました。David DuvalもAnnika Sorenstamも、現在賞金獲得額レースのトップ・クラスです。これは最高の説得力であると云わざるを得ません。
実は数年前、私はこの「ヘッドアップ打法」に近い写真と記事を目にしているのです。しかし、あまりにも教科書を逸脱しているので、眉唾ものとして全く無視していました。雑誌のバックナンバーをめくっていたら、ありました、ありました!当時出版された単行本から抜粋して記事としたものです。
'Extraordinary Golf'
by Fred Shoemaker with Pete Shoemaker ('Golf Magazine,' May 1997)
筆者のFred Shoemaker(フレッド・シューメイカー)は某ゴルフ学校のオーナー兼インストラクター。色々変わった遊びを試みる性癖があって、ある日、ボールをヒットすると同時にゴルフ・クラブを放り投げるという教材を考案。生徒にやらせたところ、どうやってもクラブが左にしか飛ばない。ところが、ボール無しで同じことをやって貰うと、見事にターゲット方向に飛ぶことを発見します。ここから何かが得られるという強烈な予感はあったものの、それが何か分らぬまま先生と生徒数名が一体となって研究に取り組みます。一同でヴィデオ・テープの分析をしたところ、ノーマルのスウィングでは何年練習しても直らないリヴァースC、アーリイ・アンコック、手が先行しないパワーレス・インパクト、フルに伸びないフォロースルーなどが認められるのに、クラブを放り投げる練習では、プロ並のトップ、レイト・アンコック、手が先行したパワフルなインパクト、十分に伸びたフォロースルー等が写されていることに驚嘆します。初心者からハンデ10の生徒まで、一様に似た傾向でした。
Fred Shoemakerの結論は、「ひたすらボールを見つめるという従来のメソッドは、ゴルファーに様々なトラブルをもたらす。テイクアウェイで身体が起き上がってしまうというのが、その一例。人間の本能は最適の身体の動きをわきまえているので、その本能にターゲットを示すだけでよい。ゴルフ・クラブを放り投げる場合、自然に顔はターゲット方向を向く。それがパワフルなスウィングの秘訣である」 これに似た論理として、「バスケット・ボールのフリースローの際に自分の足元を見つめているプレイヤーはいない。誰しも輪っかを凝視するものだ」というのがあります。そらまそうですわね:-)。
で、私にこの「ヘッドアップ打法」を試す勇気があるかどうかですが、う〜む、かなり抵抗がありますねえ。面白半分で一寸やってみるかも知れませんが、本気で取り組むかどうかは疑問です。
(September 30, 1998)
'When Your Magic Move Becomes Your Tragic Flaw'
by Eric Alpenfels ('Golf TIPS,' April 1997)
松葉の上にボールがある場合、5番か6番アイアンによるパンチ・ショットが効果的。極端に低いボールがお望みなら、4番アイアンを選ぶ。
ボールはスタンスの右足寄り。自動的にロフトが減少するので、4番アイアンより小さいロフトではゴロになりやすい。
スタンスは肩幅でスクウェア。体重はやや左。クラブは短めに持ち、グリップは通常よりしっかり握る。
あとはフェアウェイでのピッチ・ショットと同じ。適切なバックスウィングと、それに見合った適切なフォロースルー。
ワン・ポイント:必ずボールと先に接触すること。ダフリは禁物。
(November 05, 1998)
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