Golf Tips Vol. 7

決まり文句

アメリカのゴルフ中継およびThe Golf Channel(ゴルフ・チャネル)のインタヴューなどを見ていますと、かなりの数のプレイヤーが口にする定番の文句があります。

いいスコアで廻ったプレイヤーが好調の理由を聞かれて、"I played one shot at a time. And I tried to stay in present."と答える人が結構多い。これは既に何回か御紹介したDr. Bob Rottella(ボブ・ロテラ)が推奨する有名なプレイ態度です。前のショットの失敗をくよくよ嘆いたり、終ってもいないラウンドのスコアを数えたり、表彰式での挨拶を考えたりするのは、これから打つショットに集中していない上の空の状態に他なりません。「現在の一打に専念すること」というのがBob Rottellaの心理学的指導の骨子です。これが、いまや広範囲に受け入れられ成果を納めているという証しなのでしょう。

「明日の最終日はどう攻めるのか?」と聞かれた場合、誰しも勝ちたいものの一寸先は闇というのがこのゲームの特徴、自信満々で勝利を予告出来る人などいません。「ゲーム・プラン通りにプレイするだけ」という素っ気ない答えに、最後は"We'll see what happens."(どうなることやら)となります。これは相撲取りから「感無量です」という返事が出て来る頻度に匹敵します。

U.S. Senior Open '98の最終日の前日、3打差でリードしていたRay Floyd(レイ・フロイド)がThe Golf Channelのインタヴューを受けていました。「Hale Irwin(ヘイル・アーウィン)があなたを追いかけているけど、Haleとの勝負はどうですか?」これに対し、「Hale Irwinは偉大な競争相手だが、勝負は私とコースの間のものであって、彼のことは意識しない」これはまだ“決まり文句”にはなっていませんが、大変優等生的返事という一例。最終日、「今日のバーディの数じゃ、クラブ・チャンピオンも難しい」という彼の言葉通り、残念ながらRay Floydのスコアは伸びずHale Irwinが優勝しました。

(July 31, 1998)


週末ゴルファーの王者

'Golf Magazine's Pro Pointers and Stroke Savers'
Edited by Charles Price (Harper & Brothers, 1960)
'Tips for the Weekend Player' by Ruth Boyer Scott

Jack Westland(ジャック・ウェストランド、出版当時54歳)は全米アマ、西部アマ、全仏アマなどで優勝し、三回もWalker Cupアメリカ代表に選ばれた人。彼はかなり上のランクの公務員として忙しく、週末にしかプレイ出来ない境遇をものともしなかったという意味で、“週末ゴルファーの王者”と云っていいと書かれています。

ウィークデイはゴルフが出来ないわけですが、奥さんをゴルフ場での夕食に連れて行き、食後奥さんが顔見知りとお喋りしている間にショートゲームの練習をする、早朝に出掛けて練習グリーンの周辺でピッチ、チップに励む…要するにショートゲームの上達だけ考えたそうです。

彼の助言その壱:ゴルフ場へ着く頃にはリラックスしたゴルフを楽しむ気分に浸っていなければならない。土曜午前の予定を慌ただしくこなし、ランチをかっこんで、コースへ猛スピードの運転で到着するようでは、スウィングも速くなってしまう。

助言その弐:トラブルに陥ったら、脱出することだけを考えること。奇跡のショットを試みたりしてはいけない。99%失敗すると思った方がいい。木の周りをカーヴさせるなんてのはプロに任せなさい。ボールを林に入れたら、脱出が先でグリーンに乗せるなんて考えちゃいけない。深いラフに入ったら、5番アイアンか6番アイアンを手にしてフェアウェイに戻すこと。

彼の座右の銘:「破壊主義的プレイをしてはいけない。あなたをより劣悪なポジションに陥れる恐れのあるプレイをしてはいけない」

(August 05, 1998)


18ホールの秘密

'Golf Magazine's Pro Pointers and Stroke Savers'
Edited by Charles Price (Harper & Brothers, 1960)
'Why There Are 18 Holes in a Round'

「ゴルフ場が何故18ホールとなったか」に関するもっともらしい話は、スコットランド人が1ホール終る毎にウィスキイをがぶ呑みし、ボトルが空になるとラウンドを終了した。それが18ホールであった…というもの。

ゴルフ発祥の地はスコットランドのSt. Andrews(セント・アンドリュース)だと思われていますが、違うんですね。18世紀にLinks of Leithというエディンバラのコース(5ホール)でプレイしていた連中が先ずルールや基準を作ったのだそうで。

「次第にSt. Andrews所属のRoyal and Ancient Golf Club(R&A)がリーダーシップを取るようになった。この頃のSt. Andrewsは12ホール。11ホールプレイしたら10のグリーンを逆にプレイして戻って来る。クラブハウス近くにエクストラ・グリーンがあり、これらを合計すると22ホールとなる。

1764年にSt. Andrewsは大改造を行ない、最初の4ホールを合わせて二つに変更した。必然的に戻りのホールも二つ減り、結果的に18ホールとなった」

(August 07, 1998)


そのスピードが死を招く

'The Waste of Haste'
by Al Barkow ('Golf Illustrated' August, 1996)

「速すぎるスウィングは目標の左へ逸れる傾向がある。'96 Masters最終日のGreg Norman(グレッグ・ノーマン)はほとんどのショットを左にミスした。全てのゴルファーはスピードが命取りになることを知っており、いいゴルファーはスローダウンする術を知っている」

「Walter Hagen(ウォルター・ヘイゲン)は、まるで数時間かかりそうな無気力さでテーブルの塩やコップに手を伸ばしたものだ。そうやって、彼は自分のテンポを作り出す努力をしていたのである」

「イギリスの高名なインストラクターPercy Boomer(パースィ・ブーマー)は、心の中にワルツを聴くべしと教えた。彼の説では、ワルツこそがスウィングの模範とすべきテンポなのだった」

(August 15, 1998)


ベスト・スウィングの秘訣

'Breathing 101'
by Phil Murphy, Ph.D. ('Mid-South Golfer,' August 1998)

ベスト・スウィングの秘訣を発見しました。一銭もかからず、必要な時間はほぼゼロ。これでベスト・スウィングがモノに出来るのですから、こんな素晴らしいことはありません。

お断りしておきますが、ここでベスト・スウィングというのはBen Hogan(ベン・ホーガン)やTiger Woods(タイガー・ウッズ)などのスウィングではなく、我々自身のスウィングのベストということです。高望みしてはいけません。

'Mid-South Golfer'というのは、南部のゴルフ・ショップやコースで無料配布されているタブロイド版の月刊誌。Dr. Murphyは「メンタル・タフネスと実行能力増強に関するコンサルタント」だそうです。

で、その秘訣ですが、ショットやパットの前に深呼吸をするのです。ただの深呼吸ではなく、腹式呼吸。胸をふくらませたり肩を持ち上げたりせず、ゆっくり鼻からお腹へと息を吸い込みます。息を吐くのは口からです。

なあんだ!とがっかりされるのは早過ぎます。やってみれば分りますが、これはベラボーにいい効果があります。私の場合、スウィングの前に三回ほど深呼吸している間に、欲や見栄や失敗への恐怖が薄れ、スウィングに関する細々した注意事項も消え去り、単に「これまで体得したものを忠実に再現すればいいのだ」という心境になります。限りなく透明に近い心理状態とも云えましょう。

「初めてコースでプレイする初心者なら深呼吸していても可愛い気があるが、結構な経験者としてはどうも格好悪い」という方もおられるかも知れません。プレショット・ルーティーンは人様々であり、あなたのプレショット・ルーティーンが深呼吸を含むということを広めてしまえば問題無いと思われますが、どうでしょう。結果が良いのですから、他の皆さんも真似したがるでしょう。

Dr. Murphy推奨のいい呼吸法を身につける訓練は、仰向けに横になって八つ数えながら息を吸い、吐くのにも八つ数えるというもの。これを毎日五分間続け、他の想念が邪魔しないで呼吸だけに意識を集中出来るようにします。20分迄これが続けられれば最高だそうです。

(September 10, 1998)


レッドベターの叱言

'Doctor on Call'
by David Leadbetter with Mike Stachura ('Golf Digest,' September 1998)

'Golf Digest'名物のインタヴュー・シリーズ。David Leadbetter(デヴィッド・レッドベター)の授業料だの、彼から去って行ったプロの話だの、きわどくも面白い話が出ています。

以下は、編集部が「リサーチによれば、ここ20年の平均ハンディキャップはほとんど変わっていない。雑誌記事、本、ヴィデオ、練習用具、そして質のいいインストラクター等に囲まれながら、どうして我々のゴルフは進歩しないのか?」と質問したのに答えたもの。

「ゴルフのスウィングというのは格別不自然な動きで(習得が難しいもので)あるが、我々のゴルフが進歩していないというのは承服出来ない。大勢の人達のゴルフが改善されていると云える。上達するためには、ゴルフへの取り組み方を現実的にしなければならないが、大方は現実的ではない。目標と時間割りを作り、プログラムを実行し、練習の目的を持つべきである。大概の人間はそうしない。彼等は単にコースに出て行って、いいプレイが出来るといいなあと思うだけだ(済みません)。自分のゴルフ・ゲームをデザインすべきである。インストラクター達が実際に仕事としてやっているのは、そういう“ゲームのデザイン”なのだ」

(September 14, 1998)


呼吸法・上級篇

カリフォーニア在住の矢野さんから、呼吸法についての実践レポートを頂きました。

「私の実践している方法(いつもしようと思いますが、時々頭に血が上ると忘れます)は、

【A】息を止める場合は息を吐いた状態でテイクアウェイして打つ
【B】出来れば吐きながら(難しいです)テイクアウェイ、ヒット、フィ ニッシュまで行く

人は力を入れる時に息を止めますよね。特に球をひっぱたく時などはなおさらです。ですから如何に無駄な力を入れないかとの考えで、息を吸った状態で止めないで、吐いてから、もしくは吐きつつ打つように心がけてます。

深呼吸して息を止めますと肺に空気が入った状態で上体が膨らみ、スイングのスムーズさが無くなる気がします。どちらかというと息を吐いて肺の中の空気を少なくした方がスイングがスムーズに出来るように感じます」

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私は既に【A】は実施していましたので、【B】に挑戦してみました。家での素振りではなかなかシャープに振れ、いい感じが得られました。で、実際のラウンドではどうか。

「息を吐きながら打つ」という方式は確かに矢野さんのおっしゃるように難しいのですが、私はこれに新たな観点を発見しました。何が難しいかというと、「息を吐く」タイミングを得るのが難しいのです。で、そのタイミングを取るために数回深呼吸していますと、全神経が「息を吐く」→「バックスウィング開始」というタイミングに集中します。他の雑念が入る余地は全くありません。これはでしゃばりコーチをブロックするで紹介しましたように、'The Inner Game of Golf'の著者Timothy Gallwey(ティモシー・ゴルウェイ)が「内面の二つの自己のうち理論家でコーチで評論家でもある自己(Self 1)のでしゃばりを防止するために呪文を唱える、あるいはバックスウィングで鼻歌を歌う」と書いていた効果と同じものです。鼻歌を歌うより「息を吐きながら打つ」方が数段洗練されています。

人それぞれのプレショット・ルーティーンで変わって来ると思いますが、私の場合、ボールの後ろに立ってアライメントを確認している間に三回ほど深呼吸出来ます。セットアップしてワッグル終了までに二回。ここからが本番ですが、「息を吐く」タイミングを捕まえるのを焦ると失敗します。相撲取りの立ち会いのように最適の呼吸を捕まえる必要があります。

アプローチ・ショットやパットでも「息を吐きながら打つ」をやってみたのですが、まだ慣れないせいか、他の理由があるのか、目を見張るような効果はありませんでした。ロフトを活かしてピシッと打たなくてはならないロブ・ショットなどでは、息を吐きつつではヘロヘロになる感じでした。「深呼吸、息を吐いた状態で打つ」だけで十分な気もします。これは間違っているかも知れませんが。

(September 17, 1998)


呼吸法・上級篇 Part 2

カリフォーニアの矢野さんの「深呼吸して息を止めますと肺に空気が入った状態で上体が膨らみ、スイングのスムーズさが無くなる気がします。どちらかというと息を吐いて肺の中の空気を少なくした方がスイングがスムーズに出来るように感じます」というお考えに関して、福岡市にお住まいの倉岡さんが感想を寄せられました。倉岡さんは医学関係の専門家です。

「吸息状態では胸郭(肋骨と背骨で形成される「カゴ」のようなもので、中に肺を入れています)の前後径、左右径共に大きくなっております。おっしゃる通り、上体が膨らんでいるのは確かですから、スウィングに対する影響は否定できない、というか意外と大きいのではないかと思います。

残念ながら特につけ加えるべき医学的、科学的な根拠は思い当たりませんが、スウィング時における呼吸様式については各人で充分検討すべきテーマでしょうね」

さて、昨日に続いて今日も「呼吸法・上級篇」を実践してみました。いい時はベラボーにいいのですが、何度かザックリが出ました。「それはお前さんの体重移動が悪いんで、呼吸法とは関係無いんでないかい?」そうかも知れません。いや、そうでしょう。ただ、タイトライ(商品名ではなく、“劣悪なライ”の意)でクリーンでシャープにヒットすることに専念しなければならない時に、呼吸に専念しているのはまずいような気がしました。

アウトを昨日に引き続き「息を吐きながらスウィング」を実施して43、インではあまり呼吸にこだわらずにプレイして43。何とも云い様がありません。

(September 18, 1998)


月1ゴルファーに捧ぐ

'The New Golf Mind'
by Dr. Gary Wiren and Dr. Richard Coop with Larry Sheehan (Simon & Schuster, Inc., 1978, $9.00)

「アメリカの某バスケットボール・チームで、学者達によるある実験が行なわれました。チームを二つに分け、スローイング・テクニックを上達させる異なったメソッドの可能性を比較・検討するという実験です。

一つのグループはバスケット・コートでフリー・スローの練習を15分間行います。残りのグループはロッカー・ルームに座って、フリー・スローを行なっているところを視覚化(ヴィジュアライズ)するだけ。実験終了後に、双方のグループとも、フリー・スローの熟達度を計るテストを行ないました。最初のグループはかなり上達したことが判明しますが、頭の中だけで練習したグループもほぼ同じように上達していました。上達度のデータ上の違いは、顕著なものではありませんでした。

結論としてはっきり云えるのは、視覚化(頭の中での練習)が実際の練習と同じように実技を助けることが可能だということです」

いかがです?月に三回、頭の中でラウンドすれば週1ゴルファーと同じように上達出来るわけです。好きなコースを選択し、出来るだけ細かいディテールも思い描きながら(風、ライ、地面の湿り具合、グリーンの固さ、グリップの感触等を感じながら)18ホールをプレイするのは容易ではありません。しかし、理想的なクラブ、スウィングを選択出来るので、実際のラウンドよりスムーズに廻れるでしょう(無理に失敗のシーンを入れたりする必要はありません)。メロメロの週1ゴルフを繰り返すより、逆に頭の中のラウンドの方が上達を促進するかも知れません。

(October 02, 1998)

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