Golf Tips Vol. 64

[007]007のゴルフ

シニアのJ.B.は読書家です。「ゴルフの上達は諦めて、本を読んでるんだ」と云っています。私の100冊余りになるゴルフ蔵書は、ほぼどれも現在手に入るものばかりですが、彼の蔵書は違います。'Flagstick Books'という、古今の名著の復刻版の大シリーズなのです。Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)の'Down the Fairway'やコース建築家の本、ゴルフ・ライターの本まで、全て初版本の体裁で復刻されています。唯一、初版と違うのは、このシリーズ向けに書き下ろされた識者の前書きがあることです。

Ian Fleming(イアン・フレミング)の'Goldfinger'『ゴールドフィンガー』には、有名なゴルフ・シーンがあります。J.B.がこれを渡してくれた時、断るつもりで「映画を観ましたよ」と云ったのですが、「映画で何分だったか知らないが、本では二章にわたってプレイするんだよ」と云う言葉に驚き、そこだけ読むつもりで借りました。

'Goldfinger'
by Ian Fleming (Flagstick Books, 1959)

先ず、前書きを読んでもっと驚きました。作者のIan Flemingはハンデが9なので、それでボンドとゴールドフィンガーもハンデ9にしたのだそうです。もっと下手なのかと思い込んでいました。

彼はHuntercombe(ハンターコム)というゴルフ場と、ブリティッシュ・オープンでも有名なRoyal St. George's(ロイヤル・セント・ジョージズ。ここでの作者のハンデは13)の二つのコースで会員となっており、後者をRoyal St. Marks(ロイヤル・セント・マークス)と改名して、ボンドとゴールドフィンガーのマッチ・プレイの場に設定しました。

Royal St. George'sではAlbertとCyrilのWhiting(ホワイティング)父子がクラブ所属プロを勤めていましたが、小説ではAlfredとCecilのBlacking(ブラッキング)父子になっています。ボンドのキャディはHawker(ホーカー)ですが、作者のキャディはHawks(ホークス)でした。

映画ではRoyal St. George'sとは似ても似つかないコースで撮影され、ゴールドフィンガーのキャディは手下のOddjob(ハロルド坂田)が担当しましたが、小説ではコース所属のキャディになっています。

クラブ所属プロAlbert Whitingの回想によれば、「私はIan Flemingが有名になるずっと前から知っていた。彼とは毎週のようにラウンドしたものだ。彼はパワフルだったが、どちらかといえばオーソドックスなスウィングではなかった。私は彼のグリップを直そうと試みたが、彼はいい生徒とは云えなかった。Ian Flemingはギャンブルが好きで、ハンデのギリギリの能力を絞り出した。彼は負けず嫌いで、マッチ・プレイをタフな真剣勝負に変えてしまい、誰もが気違いのようにプレイするハメになった」そうです。

'Goldfinger'の本文は英語版で310頁で、二人のマッチ・プレイはNo.1からNo.18まで詳述されるので、33頁もあります。本全体の10%を越える分量です。ゴルフに興味の無い読者はどう感じながら読んだのでしょう?映画のゴルフ場面は約8分で、全体の7.3%でした。

ゴールドフィンガーですが、「皺のない額」という表現が出て来るので、映画のGert Frobe(ゲルト・フレーベ)よりは若いようです。ゴールドフィンガーはボンドも舌を巻く安定したスウィングで、ステディなゴルフを展開します。卑劣なテを使うのは映画と同じで、そのためボンドは一時スリー・ダウンまで追い込まれます。

映画ではボンドがゴールドフィンガーのボールをすり替え、ペナルティを課してかろうじて逆転勝ちしますが、小説では彼のキャディがすり替えるようになっています。

ボンドのスウィングですが、驚くなかれお立ちあい、トップで間(ま)を置くんです。以下は彼が自分に語りかけるスウィング・キィです。

"Remember to pause at the top of the swing, come down slow and whip the club head through at the last second."(トップで間を置くことを忘れるな。急がずダウンスウィングし、最後の瞬間にクラブヘッドを鞭のように振るんだぞ)

つまり、ボンドはTommy Armour(トミー・アーマー)Bobby Jonesの二人の理論を実践していることが解ります。この結果、彼のキャディが「私がこの30年間に見た素晴らしいショットの一つです、サー」と云うほどのナイス・ショットを放ちます。

(February 09, 2002、改訂May 31, 2015)


Swing Magic(スウィング・マジック)試用リポート

東京にお住まいの安藤さんからメールを頂きました。お許しを頂いて転載させて頂きます。安藤さん、ありがとうございました。

「以前紹介されておられた「Swing Magic」が最近日本のTV・雑誌等でも頻繁に宣伝されており、友人と共同購入し、使用してみました(練習場でのボールを使用しての練習です)。

感想ですが、サイト内で紹介されておられたメリットの他に、小生の感じた点を羅列しておきます。

1) 適正なグリップが身に付く(小生は今までかなりフックに握っていたようです)
2) トップでのスウェイが発生しにくい(過剰な回転が出来ないため)
3) ダウンスイング〜インパクトまでインサイドインにスイングすることが出来る
4) フィニッシュが美しい

(4)は自己満足ですが、VTRに収めたところ、腕でかち上げるようなフォローではなく、全体に極めてスムーズな動きになっていました。その結果が形のいいフィニッシュになっていたんだろうと推察します。

ちなみに、日本での購入価格は15,000〜16,000円といったところです。ご参考まで」

前回の記事は去年の四月に書いたもので、当時アメリカでの価格は$90.00でした。$1.00=132円として11,000円です。私にはこれでも高いと思われましたが、15,000円だと尚更ですね。共同購入は賢いアイデアだと思われます。

(March 06, 2002、改訂January 07, 2019)


ラウンド後半を成功させる秘訣

心理学者Dr. Nick Rosa(ニック・ローザ)自己催眠テープについては過去に紹介しました。氏のサイトに掲載されているQ&Aの転載について快諾頂きました。これはその一回目です。原文は長いので要約であることをお断わりしておきます。

質問:アウトでワン・オーヴァーで廻れたのに、インで崩れてしまいました。つい最終スコアを考え、どれだけいいスコアで廻れるかを想像してしまいます。先のことは考えず、目の前のショットに集中しようとしていますが、成功した試しがありません。最終スコアを考えないようにするには、どうしたらいいのでしょうか?

回答:あなたはワン・オーヴァーという好成績と、それをインの素晴らしい結果に結びつけようとして、かなり興奮していた筈です。

人間にとって食べ物、空気、水などは生命を維持するために必要であり、それらへの欲求が満たされることの重要性は周知の事実です。しかし、刺激への欲求についてはあまり知られていません。スカイ・ダイヴィング、バンジー・ジャンプ、ジェット・コースターなどの遊園地の乗り物…これらへの欲求を無視は出来ません。私達は自分を刺激するものが必要なのです。

私達が喉の乾きを覚えたとき、飲むもの(水など)のことを考えます。何か他の事柄を考えようとしても、いつの間にか想念は水を飲むことに舞い戻ってしまいます。いったん、水が与えられた場合、たった一口で満足出来るものでしょうか?とんでもない。私達は喉の乾きが癒されるまで、ぐびぐびと飲む筈です。十分に飲み終えたとき初めて、私達は他の事柄を考えることが可能になるのです。

好成績で廻ったハーフの話に戻りましょう。最終スコアがどれだけ素晴らしくなるか考えるのは、これは刺激的なことです。自然な成り行きとして、それについて考えることを止めたりは出来ません(水を欲するのと同じ)。ただし、その刺激を満足させてしまえば話は別です。

あなたはあまりにも早く次のショットに集中しようと試みたのです。刺激を十分満足させることを否定した結果になったわけです。ショットに集中しようとすればするほど、(刺激が満たされないので、意に反して)成果のことを考えてしまうのです。

私の処方ですが、次回いいスコアで前半を終えたら、数分を以下のように使いなさい。後半も素晴らしいプレイをしてロー・スコアを達成した状態を想像し、自分の刺激(欲求)を満足させなさい。水で云えば一口ではなく、ぐびぐび飲んだくらいに満足させなさい。こうすれば、その後は目の前のショットに集中出来ることでしょう。

(March 13, 2002、改訂May 31, 2015、再訂January 07, 2019)


練習場の成果をコースで再現する

心理学者Dr. Nick Rosa(ニック・ローザ)のサイトに、興味深いQ&Aが掲載されています。氏の許可を得た転載の二回目です。原文は長いので、以下は要約です。

質問:練習場では何の問題もないのに、コースに出ると身体が固くなり、肩が廻らないためリヴァース・ピヴォットとなり、振り抜くというより球に当てに行くスウィングになってしまいます。助けて下さい。

回答:コースのティー・グラウンドで、あなたはネガティヴな精神生理学の状態に陥っているのです。パヴロフの条件反射によって、ティー・グラウンドに上がると身体が固くなり、それが肩が廻らない症状を引き起こすのです。

練習場ではポジティヴな精神生理学の状態にあり、身体はリラックスし、自信と期待に満ちています。呼吸も、グリップも姿勢も、全てポジティヴな気分の影響下にあります。これは私が"Peak Performance state"(最高度能力発揮状態)と呼ぶもので、練習場では頻繁に出現する状態です。そう!この状態を練習場からティー・グラウンドに移せばいいのです。

1) 練習場でドライヴァーを使います。スウィングのフィーリングが良く、距離にも方向にも満足出来たショットの時、すかさず深呼吸します。息を止め5〜7まで数えてから、ゆっくり息を吐きます。これを仮に"Magic breath"(魔法の呼吸)と呼ぶことにします。上のようないいショットが出来たら、毎回この「魔法の呼吸」を繰り返します。これによって特別の呼吸法と最高度能力発揮状態を関連づけて行きます。

2) 家で、目を閉じて魔法の呼吸をしながら、ティーグラウンドで、素晴らしい距離と正確さでティー・ショットを放つあなた自身をイメージします。これを数回繰り返します。

次に、上と同じことをしますが、次の二点を付け加えます。足の下の地面を感じることと、手の中のドライヴァーを感じることです。

3) ティーグラウンドでボールをセットし、スウィング開始の直前に「魔法の呼吸」をします。これは最高度能力発揮状態へのキッカケとなり、あなたのスウィングにポジティヴな影響を与えます。

 

4) ティーグラウンドでもフェアウェイでも、いい感覚でスウィング出来、うまくボールを運べた時は、すぐさま「魔法の呼吸」をします。息を止め5〜7まで数え、ゆっくり息を吐きます。これは「魔法の呼吸」と最高度能力発揮状態の絆を強め、効果を確かにします。

以上、1〜4を実行すれば、練習場のリラックス状態がコースで再現出来ます。私は予言しますが、実際には再現以上のもっと素晴らしい結果が得られます。

(March 24, 2002、改訂May 31, 2015)


呼吸法・メンタル篇

'The Mental Edge'
by Kenneth Baum with Richard Trubo (The Berkley Publishing Group, 1999, $11.16)

「スポーツをする時に限らず、人々は間違った呼吸法をしている。胸を持ち上げて息をするし、浅く途切れ途切れの呼吸である。これは血液中に二酸化炭素を作り出し、活動中の元気回復を遅くし、めまいや朦朧とした状態をもたらす。この過程で、身体の筋肉の正しい連携や集中心を損なってしまう。

呼吸はお腹で行わなくてはならない。深呼吸し、肺の下部から徐々に上へと進んで、肺全体に空気を詰める。獲物を追尾し、茂みから突進してアンテロープを襲おうとしているライオンを見なさい。ハンティングのストレスの下でも、ライオンはお腹による深くリズミカルな呼吸を続ける(彼は『今度アンテロープに逃げられたらどうしよう?』などとは考えない)。

東洋武術の入門者が最初に習うのは、呼吸コントロール法である。心(脳の両半球)と身体を調和させて一つにする。

[deep breathing]

【呼吸でリラックスする方法】

・ゆっくり、穏やかに鼻から息を吸い、肺の下部奥深くに送り込む。
・お腹を膨らませて(胸を動かしてはいけない)、肺の上部まで空気を溜める。
・そのまま、5秒息を止める。

・次に、急速に息を吐く。
・普通に呼吸する。

・もう一度お腹で呼吸する。
・同時に右手で拳を作る。
・3秒間、息を止めて拳を握りしめる。

・ゆっくり息を吐き、同時に拳をゆるめる。
・緊張と不安を押し流す。

・リラックスした右手を見ながら、自分をリラックスさせる言葉を掌の上に思い描きなさい。
・完全にリラックス出来たら、1秒間親指と人指し指をきつく合わせながら、自分専用のキイ・ワードを声に出して云いなさい。

【編者註:この指とキイ・ワードのコンビネーションは'Trigger gesture'(引き金となる仕草)とかアンカー(錨)とか呼ばれているもので、脳と身体にリラックスした状態を定着するアクションです。ゴルフ場で同じアクションをすれば、そのリラックス状態が呼び出せます】

・以上で、心拍は遅くなり、筋肉はリラックスし、呼吸は穏やかになります。
・これを三回も練習すれば、誰でもマスター出来るでしょう」

【おことわり】画像はhttp://www.lequre.com/にリンクして表示させて頂いています。

(April 10, 2002)


ゴルフ金言集 Part 5

以下の金言集は当サイトが独自に収集・翻訳したものです。無断転載・引用を禁じます。

「マリガン:もう一度20ヤードのゴロを打ちたがったアイルランド人による発明」
Jim Bishop(ジム・ビショップ)

「ゴルフとはフォア!と叫び、シックス・ショットし、ファイヴと書くゲームだ」
Paul Harvey(ポール・ハーヴィ)

「ゴルフは感情のゲームである。感情をコントロール出来ないものは、プレイ出来ない」
Ben Hogan(ベン・ホーガン)

「80%のゴルファーは、バックスウィングを完了させないままダウンスウィングを始めてしまう」
Grantland Rice(グラントランド・ライス)

「生徒にパットの重要性を理解させるのは難しくない。難しいのは、彼等にパットの練習をさせることである」
John Duncan Dunn(ジョン・ダンカン・ダン)

「あなたに完璧なグリップが出来るなら、完璧なスウィングも出来る筈だ」
Harvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)

「スウィングの間、300以上もの留意点を守ろうと考えてはいけない」
Henry Beard(ヘンリィ・ビアード)

「一緒に廻ることになった男が、凄く日焼けし、バッグに1番アイアンを入れていて、その上薮睨みだったら、絶対に握ってはいけない」
Dave Marr(デイヴ・マー)

「私としては、ボールが地面から2フィート上にあり、しかも動いていてくれると助かるんだが」
Stan Musial(スタン・ミュージュアル、野球選手)

「プロが左から右へ打てばフェード、アマチュアが左から右へ打てばスライスと呼ばれる」
Peter Jacobsen(ピーター・ジェイコブセン)

(May 29, 2002)


Think Like Tiger

'Think Like Tiger'
by John Andrisani (G.P. putnum's Sons, 2002, $23.95)

[Tiger]

『タイガーのように思考せよ』というわけで、「Tiger Woods(タイガー・ウッズ)のメンタル・ゲームの秘密を明らかにする」という触れ込みの本。著者のJohn Andrisani(ジョン・アンドリサニ)は何冊かTigerの名を冠した本を出版していますが、いずれもTigerにインタヴューすらせず(出来ず)、ヴィデオ・テープや関係者の談話を元に執筆しています。この本も同様です。ただし、Tigerの少年時代から現在までの三人のコーチの談話、Tigerのお抱えスポーツ心理学者、Tigerの両親の談話など、考えられる限りの取材はしたようです。

この本の目玉はTigerのアマチュア時代のメンタル・ゲーム攻略の実態の一部が暴かれたことです。Tigerの父親の先見の明でしょうが、Tigerは10歳の頃から能力を最大限に発揮するため催眠術の助けを借りていたそうです。

Tigerのお抱えスポーツ心理学者はDr. Jay Brunza(ジェイ・ブルンザ)博士と云います。彼は海軍士官学校のスポーツ心理学顧問だったそうなので、Tigerの父とも軍を仲立ちに知り合ったのでしょう。彼はTigerのジュニア・アマ、U.S.アマのトーナメントにキャディを勤めたそうです。スウィング・コーチがキャディをするのは珍しくありませんが、心理学者とは凄い。当時Dr.BrunzaがTigerを昏睡状態にするのに一分もかからなかったそうで、集中する能力は士官学校の生徒より優れていたそうです。といっても、マッチ・プレイの最中に催眠術をかける暇があったかどうか疑問ですが、少なくとも集中させる助けにはなったでしょう。彼は1991、1992、1993年のU.S.ジュニア・アマ、1994、1995のU.S.アマを含むイヴェントで39回のマッチ・プレイのキャディを勤め、33の勝ち星を上げました。1996年のU.S.アマの最中に、何故かTigerはキャディを高校時代の親友にチェンジしたそうです。

スウィング・コーチ、スポーツ心理学者を含むメンバーを、Tigerの母親は"Team Tiger"と誇らしく呼んでいますが、Dr.Brunzaは突如チームから外されたわけです。多分、報酬の問題か何かがあったのでしょう。いずれにせよ、この綻びからそれまで極秘扱いされて来たTigerの秘密の一端が解けて来たわけです。

著者のJohn AndrisaniはTigerと同時期にDr.Brunzaの世話になったRay Oakes(レイ・オークス)というプロを探し出しました。Ray OakesはTigerの父の勧めでDr.Brunzaに会ったそうです。彼は「白いカーペットのイメージを見るように」と云われたことを覚えています。同時に「さあ、仕事だ。ボールを正確に打つんだ」というポジティヴな指示が想起されます。彼は「そういうリラックスして自信に満ちた状態に陥ると、本当に白いカーペットがフェアウェイに伸びてるように見えた。そこから逸れるなどという心配は浮かばなかった。結果としてすごいゴルフが出来た」と述懐します。

John Andrisaniは「Tigerはトーナメントの最中、両目を非常にゆっくり閉じ、またゆっくり開けるということを数回繰り返すが、これも意味がある行動に違いない」と書いています。これまで、何度か自己催眠について触れて来ましたが、トリガー・ジェスチャー(引き金となる動作)を使ってコースでも簡単に自信を取り戻すことが出来ます。確かに、両目のゆっくりした開け閉めも、いいトリガー・ジェスチャーです。

158頁もある本ですが、実はTigerのメンタル・ゲームについては以上のようなことしか出ていません。後はTigerの三人のコーチの回顧談を踏まえたスウィングの話です。メンタル・ゲームについては大して書くことが無いので、上げ底にしている感じです。

(June 04, 2002)


無用のルーティーン

'Make it Routine'
by Editors of 'Golf Magazine' ('Golf Magazine,' June 2002)

「スポーツ心理学者Dr. Richard Coop(リチャード・クープ)博士によれば、多くのゴルファーに共通した、無用のプレショット・ルーティーンが見られるという。

その一つはショットと無関係な惰性の素振り。何回もやる人がいるが、本気の予行演習でない限り意味が無い。集中ゾーンに入るシグナルとして煙草を捨てるというような無意識の動作で行なうのも効果が無い。靴ひもを結ぶとか歯を磨くのと同じことで、何も考えずに出来ることは集中心を鋭くする役には立たない。

浅い急速な呼吸もリラックスする助けにはならない。繰り返し何度もピンを見ることも、狙いを狭める役には立たない。

上のような無用の習慣を捨てることは、あなたのプレショット・ルーティーンを本当の財産に変えることだろう。

では、プレショット・ルーティーンには何を含めるべきか。

1) 何か、自分の内面に『スウィング開始!』と呼びかけるキュー(サインとなる動作)で始める。シャツの袖をたくし上げるとか【編註:Tigerがやってますね】、クラブヘッドで地面をとんとん叩く、あるいは手袋のヴェルクロをベリっとやるとか。

2) ターゲットとボールの間に中間目標を定め、クラブフェースを合わせる。この動作は、正しいアライメントの役に立つだけでなく、ショットへの最初の心理的集中を形成する。

3) スウィングの直前に深呼吸する。上半身全体で大きく呼吸する。これは両腕をリラックスさせ、テンションを軽減する」

(June 15, 2002)


長いコースの攻略
[CD]

'Shape Your Swing the Modern Way'
by Byron Nelson with Larry Dennis (Golf Digest, Inc., 1976)

これはByron Nelson(バイロン・ネルスン)の含蓄あるお話。

「距離の長さはゴルファーを恫喝し、度を越して力のこもった、早いスウィングをさせる要因となる。9番アイアンを力一杯振る人はいないだろうが、ドライヴァーは過度に力が入り易い。とても長いコースに行くと、優秀なプレイヤーでさえこの傾向に陥る。

Billy Casper(ビリィ・キャスパー)はオーガスタ・ナショナルとは相性が悪いと云われていた。私が彼のプレイを見守ってみると、彼がThe Mastersに優勝出来ない理由は見つからなかった。

彼は新聞だの何だので『オーガスタはロング・ヒッター向きのコースだ』と書かれているのを読み、毎春コースに着くなりスウィング・テンポを変えていたのだった。Billy Casperのドライヴァーとフェアウェイ・ウッドのスウィングは素晴らしいものだったが、オーガスタでは力一杯、より遠くへ飛ばそうと努力していたのだ。結果として、無意識にスウィングを早めていた。これはボールをしっかり捉えられず、いつもより距離が出ない原因となっていた。

私は自分の観察をBilly Casperに告げ、彼は翌年のThe Mastersで優勝した」

【おことわり】図版はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。

(June 22, 2002)


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