'Bobby Jones on The Basic Golf Swing'
by Robert Tyre (Bobby) Jones, illustrated by Anthony Ravielli (Doubleday, 1969)
「正しいスウィングでは、全てのパワーはボールの場所で消え去るのではなく、ボールを通過した後も突き進む。左腰が(左へ逆転する過程で)スピードとパワーを生みながらボールに向かう動きをリードする。インパクトの瞬間、腰はアドレスした時の状態に戻る。エクストラのパワーを与えようと努力すると、両手が強張って抵抗が生ずるため、動きは加速するのではなく減速してしまう。
左腕をターゲットラインに沿って真っ直ぐ打ち抜くことが重要である。右手はインパクトが過ぎたかなり後まで左手を追い越したり、左手の上にかぶさったりすべきでない。もしボールを打つ前に右手が左手にかぶさっていたりすれば、フックかゴロを打つ結果になってしまう。
完璧に正しいスウィングは、おおげさに云うと静止した頭の下で遂行されるべきであり、頭は終始後方に留まる。頭は絶対に肩と一緒に動いてはならないし、逆に後方に動くものだ。【註】
【編註】確かにインパクト前後で頭をターゲットライン後方に移すプロは少なからず存在します。この動きは「何がなんでもターゲット方向にスウェイしないぞ!」という決意から来るものでしょう。
左の写真のMaria Fassi(マリア・ファッシ)はLPGAの飛ばし屋の一人として知られていますが、トップからインパクトにかけて優に1グリップの長さほど頭を後方に動かしています。彼女の2022年のDriving accuracy(ドライヴァーの正確度)は67.38%です。なお、頭を上下に動かすのは良くないのですが、左右はインストラクターたちも容認しています(程度問題ですが)。
(January 01, 2023)
●クラブが肩に巻きつくフィニッシュをせよ
これはLPGAツァーで48勝を挙げたNancy Lopez(ナンシィ・ロペス)のtip。
'100 Classic Golf Tips'【LPGA version】
edited by Christopher Obetz (Universe Publishing, 2008, $24.95)
「私のフォロースルーは大きく弧を描くようにスウィングの幅を広げる。私は止めようとしても止まらないほど全てを投げ出すようにスウィングする。クラブは私の肩に巻きつき、私の身体はターゲットを向く。
アマチュアの女性たちを見ていると、彼女らの多くがインパクト直後にスウィングを停止してしまう。もっと幅を広げて大きく弧を描く方が効果的なのに!」
現在のLPGAの若手プロたちのほとんどはクラブが肩に巻きつくようなフィニッシュをしています。私も真似しようとするんですが、全然駄目です。とてもこういう姿勢にはなりません。
何故かと考えると、トップから全力で振り下ろそうとするからかと思われました。走り幅跳びでも助走から全力疾走したりしません。ゆっくり走り始め、徐々にスピードを上げ、踏み切り(インパクト)で最速になるように調整します。助走の最初から全力で走ると、踏み切りの際に息切れする状態になってしまいます。
必要なのは「勢い」なんですね。インパクトがゴールではなく、勢いは留まることなくその先まで行くしかなく、肩に絡みつくまでの余勢が残っていなくてはならないのです。
【画像はhttps://golfweek.usatoday.com/にリンクして表示させて頂いています】
(January 01, 2023)
●新・頭の研究
「飛ばそう!」と思うと頭も上体も何もかもがターゲット方向にスライドしちゃうことがあります。これは重症の場合極めて恥ずかしいポップアップ、軽症で醜いプルの原因となるので絶対に避けたい動きです。
《頭を右膝の上に置いてダウンスウィングする》にこだわってみたらどうかと思いました。それを実践したラウンドのNo.3(227ヤード、パー3)で打った9番アイアンの第二打はピンに1.5メートルにつき、うまくパットしてバーディ。No.6(396ヤード、パー5)で打ったハイブリッド24°による第三打はピンの向こう1.5メートルについて、これもいいパットが出来てバーディ。
ただし、この方法はフックになる弊害も出ました。考えてみるとダウンスウィングで右膝は左へ動くわけですから、右膝と共に頭も左へスライドしてしまう恐れがあるわけです。上の例が真っ直ぐ飛んでバーディを射止められたのは単なる偶然に過ぎなかったようです。
頭を動かさず身体をスライドさせない良いコツはないかと探し求めました。
・Jack Nicklaus(ジャック・二クラス、写真右)
'Golf My Way'
by Jack Nicklaus with Ken Bowden (Simon & Schuster, 1974, $14.00)
「頭を静止し続けるというのは、ゴルフ習得の中でも最も難しいものだ。私のコーチJack Grout(ジャック・グラウト、写真左の白ズボン)は、私がボールを打つ間、彼のアシスタントに私の髪の毛を掴ませた。これを思い出すと、今でも頭の皮がチリチリする。痛くて何度も涙が出た。私が15歳になる迄に、私は頭を一箇所に保持する術(すべ)を習得した」
残念ながら、私には髪の毛を掴んでくれる人間はいません。
・Arnold Palmer(アーノルド・パーマー)
'My Game and Yours'
by Arnold Palmer (Simon and Schuster, 1963)
「簡単に頭を静止させられるなら、100を切ろうとして四苦八苦するゴルファーはいないだろう。誰もが70台か、80台前半で廻れる筈だ。まるでゴルフ天国。ここで私が読者に《頭を動かさずに済む10の法則》てなtipを提示出来たら、どんなにいいことだろう。しかし、出来ない。私は先ず正しいグリップを身につけるために苦闘し、次いで足の問題に取り組んで解決し、最後に頭の問題に集中して数年を費やした。練習場でもコースでも、ボールを打つ際、常に頭のことを考えた。そして、私は頭を静止させる決意をし、ショットに失敗したらこの次はちゃんとやろうと自分に云い聞かせるようにしている。頭の問題は集中心の問題と云える。一旦動かさないと決意したら、後は実践あるのみである」
・スポーツ心理学者Dr. Tom Dorsel(トム・ドーセル博士)
ドーセル博士は、ある18ホールのラウンドの間クラブヘッドがボールを通過する様(さま)を見ることに専念し、自己記録を塗り替えてハンデを二つ減らすことが出来たそうです(8→6)。
「クラブヘッドがボールを通過する様(さま)を見る」ということは「ボールの残像を見る」と同じです。私は長いこと「ボールの残像を見る」ことが頭を動かさないコツであると信じていました。しかし、これは間違いでした。残像を見るのは実は頭を動かしても出来ることなのです。試してみて下さい。頭を1メートル横に動かし続けながらだって、ボールから眼を逸らしていないと云えるのです。
つまり、ボールをじっと見るってことは頭を動かさないこととは無関係なのです。もっと確実な方法が必要です。
・インストラクターAlex Morrison(アレックス・モリスン、1896~1986、写真)
Alex Morrisonは1930年代に絶大な人気を誇っていたコーチで、彼が教えた名人たちにはWalter Hagen(ウォルター・ヘイゲン)、Gene Sarazen(ジーン・サラゼン)、Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)、Byron Nelson(バイロン・ネルスン)、Sam Snead(サム・スニード)、Ben Hogan(ベン・ホーガン)など錚々たる人々がいました。彼は次のように云っています。
'A New Way to Better Golf'
by Alex J. Morrison (Simon & Schuster, 1932)
「身体の他の部分の動きから独立させた顎をボールの後部の一点に向け、ボールが打たれたかなり後までそのまま向け続けよ。どんなスウィング・メソッドを採用していようが、上のようにしない限り、ショットに成功することは不可能。私は『頭を下げ続けろ』とか、『ボールから目を離すな』なんてことを云っているのではない。文字通り、身体のアクションから独立させた顎をボールの後ろに据え、ボールが打たれた後までそこに向けたままにするのだ。これは正しいスウィングにとって最重要の動作である」
顎をボールの後ろ(右側)に向けたままスウィングするというのは、慣れないことなので最初はまごつきます。しかし、これは素晴らしいtipです。飛距離が伸びるわけではありませんが、ドライヴァーからフェアウェイウッド、ハイブリッドまで、驚くほどボールを真っ直ぐ飛ばせるようになります。
以前、「パー3に乗せるコツ」として「インサイド→スクウェアのスウィングで、左肩がターゲットを指すフィニッシュ」という方法を紹介しましたが、当時なぜそれが効果があるのか理由は不明でした。この度、顎をボール位置に残すスウィングを試みているうちに、その謎が解けました。顎をボール位置に残してスウィングすると左肩がターゲットを指すインパクトにならざるを得ないのです。左肩がターゲットを指すインパクトを迎えると頭が動かずに残るのです。これら二つは実は同じことだったのです。頭(=顎)を動かさないことが真っ直ぐにボールを打つ秘訣なのでした。
ただし、頭を残していても手打ちでは駄目です。左膝・左腰がリードするダウンスウィングを行わない限りいいショットにはなりません。
私が参考にしたいのはLPGAのLydia Ko(リディア・コゥ、写真)のスウィングです。スムーズで、力んだところがなく、下半身主導のダウンスウィングをしていて、頭も立派に残しています。完璧です。
スローモーション・ヴィデオで彼女のスウィングを見ると、バックスウィングで左手が地面と平行になる辺りから左肩に押されるように顔が後方(右)を向き始めます。Lorena Ochoa(ロレナ・オチョア)はダウンスウィングで頭を右に向けるのですが、Lydia Koはバックスウィングです。私の場合だとダウンスウィングで左肩がターゲット方向に逆転するにつれ、顔も左を向き始めてしまうところですが、彼女はダウンスウィングでぐいっと顎を引いて頭を不動にしています。これが頭を動かさない秘訣のようです。
【参照】 https://www.youtube.com/embed/3wLk27z0Yvk 【Lydia Koのドライヴァー・ショットの超スローモーション。2:45】
【参考】
・「頭の研究」(tips_49.html)
・「頭を残すドリル」(tips_185.html)
【Jack Nicklausの画像はhttps://www.golftipsmag.com/、Arnold Palmerの画像はhttps://ca-times.brightspotcdn.com/にリンクして表示させて頂いています】
(January 01, 2023)
●新・頭の研究【パート2】
長いゴルフ人生で遅ればせながら頭を動かさないスウィングの重要性に目覚めたのですが、私にはJack Nicklaus(ジャック・二クラス)のように髪の毛を引っ張ってくれる人がいないので、代わりの方法を考えました。以下は屋内で出来る方法です。練習用の重く短いクラブを使えば室内で振ることが出来るので、練習場へ行く必要もボールの必要もありません。
鏡を用意します。それに自分の頭が映るように配置し、鏡上部の真ん中に何か目印をつけます。私は赤いビニール・テープを貼りました(図の矢印の先)。
・目印の真下に頭の天辺を位置させてアドレスします。
・トップまでバックスウィングし、目印と頭がずれていないかどうかチェックします。
私がこれを試したら、頭は鏡の上で優に10センチは右に動いていました。何度も繰り返しましたが、どうやってもその10センチが縮まりません。無理に頭をテープの真下にし続けようとすると、体重が左足にかかったままになってしまいます。これはいわゆるリヴァース・ピヴォットと忌み嫌われる現象です。
初心者が左足に体重を残して上体をターゲット側に弓なりにしたバックスウィングをし、次いで右足体重でインパクトを迎えてギッコンバッタンする症状がリヴァース・ピヴォットです。私が属するシニア・グループに典型的なリヴァース・ピヴォットの男がいるのですが、誰も助言しません。当人はそれでいいと思っており、批判されるのを嫌うからです。飛ぶ時はかなり飛ぶので、それが忘れられないのでしょうが、チョロやゴロの連発はしょっちゅうです。それを見ているのでリヴァース・ピヴォットだけはご免だという気持です。で、リヴァース・ピヴォットに見える二人の名人のトップを研究してみました。
Ben Hogan(ベン・ホーガン)のスウィングについて、あるインストラクターがリヴァース・ピヴォットだと云いました。悪口ではなく、これこそが”ホーガンの秘密”なのだと主張したのです。確かにそう見える写真がないではありません。私が描いた左図のオリジナルの写真もその一つです。私も「え?こんなんでいいのかな?」と思わされました。しかし、ベン・ホーガンの頭から真下へと線を下ろしてみると身体は左(ターゲット方向)には曲がってはおらず、背骨を中心に正しく捻転されています。右脚を突っ張っているように見えるのでリヴァース・ピヴォットかと錯覚するだけなのです。左膝はちゃんと右に折れていますから体重も右に移っていると思われます。
Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)もスウィングのトップを後ろから撮った写真だけ見ると、体重が左に残っているように見えます。しかし、頭から真下へと線を引いてみると、上体はターゲット側に傾いていないのでリヴァース・ピヴォットではありません。ボビィ・ジョーンズの場合赤線を元に分析すると背骨を中心に完全な捻転をしていて、体重がちゃんと右に移っていることが判ります。ホーガンもボビィ・ジョーンズも、(実際には右膝はズボンの中でゆるんでいる筈ですが)真っ直ぐ突っ張ったように見える右脚によってリヴァース・ピヴォットだと錯覚させられるのです。大体、両人とも力まずに260~270ヤード飛ばしていた人たちです。リヴァース・ピヴォットだったらそんな距離を飛ばせるわけがありません。
これらの図から私が学んだこと。それは背骨を軸に回転・逆転すべきだ…ということです。頭を固定することにこだわるとリヴァース・ピヴォットになったり身体が強張ったりしますが、背骨を軸に捻転することを第一に考えれば動作的にも心理的にも楽であり、結果的に頭は動かずに済むことになります。
とはいえ、云うは易く…で、これは本当に難しい。頭を動かさずに体重を右足に移すのってウルトラC級の難度。特に身体の固い男にとっては…。しかし、私は解決策を見出しました。ジョーンズ風に左踵を上げてバックスウィングすれば、体重は右足に移らずにはいられません。その際頭は動かさない。そして背骨を軸として捻転する。これなら私にも出来ます。ベタ足ではほぼ不可能(私には)。
最初は鏡を見ながら頭を目印から離さないようにしつつ、背骨を回転軸としたバックスウィングを繰り返し練習し身体に覚え込ませます。時々鏡を見ずに(あるいは目をつむって)トップまで行き、頭が目印からずれていないかどうか確認します。
こうして、次第に頭を動かさないスウィングが身体に沁み込んで違和感がなくなれば、ショットが安定し打数も減ることが期待出来ます。
【参考】
・「頭の研究」(tips_49.html)
・「新・頭の研究」(01.10.2023)
・「Ben Hogan(ベン・ホーガン)の“最後の”秘密【リヴァース・ピヴォット篇】」(tips_167.html)
(January 16, 2023)
●チッピングのショート病への妙案
ここしばらく、チップ・ショットをちびるミスがちらほら出て困っていました。私のゴルフが飛ばし屋に対抗出来るイコライザーはショート・ゲームなので、チッピングがピンに寄ってくれないと勝負になりません。
市営ゴルフ場のフェアウェイの芝は高級ゴルフ場のようにふかふかではなく、雑草混じりの草を短く刈っているようなところも多いため、クラブヘッドが手強い雑草でつっかえたりします。また、地面が湿っているとクラブヘッドが滑らず、ザックリしてガックリすることもあります。 かといって強く打つとか、経験を基盤にした勘よりも大きなバックスウィングをする…なんてことはしたくありません。本来の勘が狂ってしまいます。 「そうだ!バックスウィングと同じ幅のダウンスウィングをしたらどうだろう?」と思いました。これはピッチングやバンカー・ショットのコツとしてよく云われる手法です。例えば時計の文字盤で云うと、《3時のバックスウィングをしたら、9時のフィニッシュ》ということです。 練習してみるとバッチリでした。スウィングの終点を遠くに定めるため勢いがつきます。不幸にしてザックリでクラブヘッドがつっかえても、勢いがあるのでこれまでのようにベラボーにショートしたりしません。 ダウンスウィングの幅を長くすることは、バックスウィングで蓄えたエネルギーを100%使うことです。スウィングの途中で力を篭めるのは120~150%のエネルギーを使うことで、これは常人にはコントロール不可能に思えます。これまでの私はバックスウィングの幅だけ考えて、インパクト以後のことをろくに考えていませんでした。 |
これを思いついた日のラウンド、7メートルの距離をチップインさせることが出来ました。その次のラウンドでも一度14メートルをチップインさせ、入らないまでもカップぎりぎりに寄せられたことが多数ありました。
(January 16, 2023)
●Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)式トップの作り方【詳説】
スウィングのトップをどう構築するかは最も重要なポイントです。従来のアドレス→テイクアウェイ→トップという順を追った説明ではなく、Bobby Jonesは簡単至極でしかも完璧なトップを完成する方法を教えてくれます。コックの度合、捻転の程度、クラブシャフトの方向などトップでなすべきことが一挙に理解・達成出来る斬新な説明です。私はクラブが垂れ下がったトップまで真似しようとは思いませんが、彼の正確無比なショットを生成する基本は模範にしようとしています。
’Bobby Jones on Golf'
by Bobby Jones(Doubleday, 1966)
「ゴルフ・スウィングに、簡単な一つの動きで構成される部分というものは存在しない。全てがスムーズでリズミカルな動きが達成されるまで溶け合い、関連し合い、調和し合って一つとなる動作である。
実際にクラブを振る時、他の動きが開始される前に身体の回転や手首の動きが個別に完了しているなどということはない。しかし、それぞれのあり方を説明するちょっとした演習は以下のように実行可能である。
クラブを握ってアドレス体勢をとる。クラブを握ったグリップは軽く、手首と前腕はリラックスしており、左肩からクラブヘッドまではほぼ一直線となっている。身体を動かすことなく胸の前に離して上げる。手首をコックし、シャフトが右肩と重なるようにする。目はボールを見続け、身体を静止させたまま背骨を回転軸として身体を廻す。完全に捻転を達成すれば、完成したスウィングのトップの位置がどうであるかおおよそ解る筈だ。以上で正しいバックスウィングに不可欠なコックと捻転二つを溶け合わせた動作を遂行したことになる。
【編註】上のBobby Jonesの説明が解りにくい場合に備えて、自作図解とともに補足説明をします。アドレス後、手を身体の前に伸ばしてクラブ・シャフトを地面に水平にしただけではコックされていません。そこから手首を垂直に折ると90°コックした状態になります(図の1)。その手首を右におよそ45°斜めにし、【鏡で見た場合】シャフトが右肩の突端と重なったように見える角度にします(図の2)。その状態から背骨を軸として身体を充分に捻転すると自然にジョーンズ風トップの出来上がり(図の3)…というわけです。この時、左手首が凹型(甲側に折れる)や凸型(掌側に折れる)にならないように注意します。力まなければ、普通折れることはない筈ですが…。この方法を試みた時、これまでの私のトップはかなり高めであることに気づかされました。そこで、トップをフラット目にするとジョーンズ風、あるいはBen Hogan(ベン・ホーガン)風になりました^^。
スウィングのトップで重要なことは数多あり、それらについて書くとかなりの頁数を費やすことになる。だがいま私の頭にある一つの主要なポイントは、初心者が完全に無視しており、しかもスウィングを成功させるために不可欠のものである。
スウィングのトップで、クラブシャフトはほぼ水平でターゲットのやや右を向いているべきだ。これは世界レヴェルのプロたちに共通する定石と云ってよい。これはクラブを捻転によってトップへと上げた結果であり、初心者がやるようなクラブを手・腕だけで持ち上げた結果とは全く異なるものだ」
Ben Hogan(ベン・ホーガン)も両手をフラットに後方に伸ばすバックスィングであり、両手を高く上げたりしていません。Bobby Jonesは臍(へそ)がターゲットと逆方向を向くほど最大限身体を捻転していますが、Ben Hoganの捻転は抑制気味であり、左肩もボール位置の真上で留められています。両人ともクラブヘッドは水平ではなく垂れていますが、どちらも左手首は平らです。この手首の角度が真っ直ぐボールを打つ秘訣です。
Jack Nicklaus(ジャック・二クラス)もTiger Woods(タイガー・ウッズ)も、両手を頭の遥か上になるようなトップだったせいか、現在の若手プロたちの多くもそのスタイルを模倣しています。しかし、フラットなトップだからといって飛ばないわけではありません。Bobby JonesもBen Hoganもドライヴァーで平均260~270ヤード飛ばしていましたし、Bobby Jonesがその気になれば300ヤード飛ばせたそうです。ヒッコリー・シャフトとパーシモンヘッドの組み合わせでですよ?スティール・シャフトやグラファイトだったらどれだけ飛ばしたことか。ですから、トップを高くすれば飛距離が伸びるというものでもないのです。
【参考】「Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)のトップ」(tips_205.html)
(February 01, 2023)
●手首の制御
われわれはトップで図Aの緑線のように左手首を極力平らに真っ直ぐに伸ばさなくてはなりません。これがクラブフェースをスクウェア(45°)にし、真っ直ぐボールを打つための基本です。
もし図Bのように手の甲側に凹型に折ってクラブフェースが垂直だとスライスになります。
図Cのように手首を掌側に凸型に折ってクラブフェースが天を向いていればフックを生みます。
LPGAのLydia Ko(リディア・コゥ)のトップをご覧下さい。左手首はすんなり真っ直ぐ伸びています。これが理想的なトップの手首です。その結果、クラブフェースは自然にスクウェアな斜め45°になります。これならボールはピンめがけてまっしぐらに飛ぶことでしょう。
こうならない場合は腕時計のベルトに30センチの物差しを挟んで練習するという方法があります。手首が物差しと常にソフトに接触し続けていれば完璧な手首の状態と云えます。
(February 01, 2023)
●テイクアウェイの過ち、二つ
これはインストラクターButch Harmon(ブッチ・ハーモン)のtip。
'100 Classic Golf Tips' edited by Christopher Obetz (Universe Publishing, 2007, $24.95)
「テイクアウェイの段階で間違えることが二つある。1) すぐクラブを持ち上げること、2) インサイド引っ張り込むこと…の二つだ。
クラブを持ち上げると、左肩が落ちてしまう。傾げるのはいいが、肩を廻してはいけない。左サイドに重心を置くとリヴァースピヴォットになり、ボールをトップするかチョロすることになる。
インサイドにクラブを引くと、左腕があまりにも身体の外側に出てしまい、バックスウィングの途中では左腕が右腕の上になってしまう。クラブは身体の後ろに廻ってしまうが、ダウンスウィングでは同じ道筋を辿るためスライスかプルを招く」
(February 01, 2023)
●Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)のダウンスウィングの方法【詳説】
「Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)のトップの作り方【詳説】」の続きです。正しいトップの作り方をマスターしたら、次に重要なのは切り返しとダウンスウィングです。他の本で発見して驚いた秘訣が、その30年以上も前にBobby Jonesによって書かれていたことに、またまたびっくりさせられています。Bobby Jonesのセオリーはモダン・ゴルフの基本だったのです。
’Bobby Jones on Golf'
by Bobby Jones(Doubleday, 1966)
「ここまでのところは多くのゴルファーがかなりの程度達成出来るが、次のステップで躓いてしまうのが常である。
ボールを強打する準備が出来た時、抵抗出来ない衝動が右手に過度の自由を与えてしまう。常に監視を怠るべきでない暴力団のようなその右手は、クラブを右肩から離しターゲットラインのアウトサイドから身体の前に向かって鞭のように振り下ろされる。ボールに接触するクラブフェースがオープンかクローズかによって、結果はゴロかひどいスライスとなる。稀にまともなショットが生じたとしたら、それは何かの間違いとみなすべきである。
正しいダウンスウィングの開始は、シャフトのグリップエンドが指している方向へ向かう。トップでのクラブヘッドはターゲットのやや右を向いているのだから、グリップエンドはボールへと向かう縦の軌道からかなり離れているはずだ。言葉を変えれば、ダウンスウィングの開始でクラブヘッドはボールに向かう軌道の遥か下方に落下せねばならない。
【編註】Ben Hogan(ベン・ホーガン、写真)のダウンスウィングは、まさにグリップエンドが指している方(後方)に向かっています。コックを緩めず、逆にさらにコックを強めている結果でもあります。
次の動作は重要である。右肘を急速に身体の右脇に落下させるのだ(Bobby Jonesの写真の赤矢印)。こうすることで、クラブフェースでスクウェアにボールを打てる用意が完了したコンパクトな位置が得られる。アウトサイド・インで打つ恐れは皆無となる。
トップまでに目一杯コックする人、少な目にコックする人…様々であるが、どちらであってもダウンスウィングの最初にそのコックをほどいてはならない。多くのゴルファーがかなり急速にコックの角度を開いてしまい、インパクトの瞬間にパワーはほとんど残っていない。左手とクラブシャフトが一線になってしまったら、折角コックした効果は雲散霧消してしまう」
Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)は「ダウンスウィングはのろのろと始めよ」と云っているのですが、彼はslowly(ゆっくり)ではなくleisurely(のろのろと)と言葉を選んでいます。われわれはトップに達するや否や、アンテロープを餌食にしようとするライオンのようにボールに向かって突進します。しかし、アンテロープは必死で逃げるもののボールは逃げないのですから躍りかかる必要は全くありません。電車がゆっくり発進し次第に速度を増すようにじわじわとインパクトに向かうべきなのです。どっちみちインパクトでは遠心力によってコックはほどかれるのですから焦る必要はありません。早期にコックをほどくのは早漏と同じです。必死で堪(こら)えなくてはなりません^^。
J「そんなことを云われても、どうやってコックを維持したらいいか解らない」ですって? 右肘を身体の右脇にくっつければ自然にコックが維持出来るのです。「そんなことをして、ヘッドがボールに当たるの?」ご心配なく。遠心力の作用でインパクトで左腕はちゃんと真っ直ぐ伸びるのです。ただし、ドライヴァーの場合トゥ寄りでアドレスしていないと、ボールが真っ直ぐ飛ばない恐れがあります。【参照】「インパクトの物理学(トゥ寄りでアドレスすべき理由)」(tips_175.html)
【参考】
・「Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)式トップの作り方【詳説】」(02.01, 2023)
・「Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)の切り返し」(tips_205.html)
・「Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)のダウンスィング」(tips_205.html)
(February 09, 2023)
●クラブのトゥ寄りでボールにアドレス
新発見のBobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)のスウィング写真を、Ben Crenshaw(ベン・クレンショー)が解説した本を購入しました。
'Classic Instruction'
by Bobby Jones and Ben Crenshaw (American Golfer and Broadway Books, 1998)
驚くべき点はいくつかあったのですが、その一つはドライヴァーのアドレスでした。Bobby Jonesはクラブヘッドのトゥからはみ出すような位置でアドレスしているのです。ここに掲載した写真はワーナー・ブラザースのDVDからのものですが、上記の本の写真ではトゥの内側に納まっているのに、こちらはほとんどヘッドの外側です。右のミドル・アイアンではトゥでアドレスしています。
なぜこんなアドレスをするのかについてBobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)自身の本を探し廻りましたが見つかりませんでした。その理由を確かにどこかで読んだ気がしたのですが。
'The Methods of Golf's Masters' by Dick Aultman & Ken Bowden (The Lyons Press, 1975) という本にBobby Jonesの説明が紹介されていました。
「トゥの外側でアドレスするのは、インパクトでストレッチすることを許すよい方法だ」
正面からの写真を見るとBobby Jonesは左手を真っ直ぐに伸ばしておらず、Yの字アドレスもどきです。Jack Nicklaus(ジャック・二クラス)のような左手とクラブシャフトが一直線になる逆Kのアドレスではありません。逆Kならそれ以上左手は伸びないのでクラブフェースの真ん中でアドレス出来るのですが、Yの字のアドレスでは当然インパクト時に手・腕が真っ直ぐになるのでクラブヘッドは前に出ます。だったらヒールでアドレスすべきところです。
私は昔から逆Kのアドレスですが、ドライヴァーではトゥ寄りでボールにアドレスします。それは「インパクトの物理学(トゥ寄りでアドレスすべき理由)」(tips_175.html)で紹介したようにデカヘッドの重心と遠心力との作用に対応するためです。
ヒッコリー・シャフトがスウィング中にねじれることは知っていましたが、その後の調べで「ねじれだけでなく”しなり”もある」ということが解りました。Bobby Jonesがトゥでアドレスしていた理由は、われわれがデカヘッドとグラファイト・シャフトのクラブをトゥ寄りでアドレスするのと同じように、しなりを相殺する予防策だったのです。
トゥ寄りでアドレスする理由について調べる中で面白い記事を見つけました。カナダのプロGeorge Knudson(ジョージ・ヌードソン)の本の一節です。彼はスティール・シャフト時代のプロです。 'The Natural Golf Swing' 「私の若い頃、ドライヴァー・フェースの真ん中でアドレスすると、絶対に真っ直ぐにボールを打てなかった。ヒールでボールを打ってしまい、ドライヴァーのヒールの部分が欠けてしまったほどだ。私はそういう醜く短いショットにうんざりした。 ある日、私はトゥでボールを捉えようと決意した。私はトゥでアドレスし、そこでボールと接触しようと考えた。そこはスウィートスポットではなかったが、どっちみちスウィートスポットでアドレスしてもろくでもないショットにしかならなかったのだから同じことだ。何が起こったか?以前に較べればロケットのように飛ぶボールが得られた。当時、私はクラブシャフトが伸びるのだろうと思った。 後で解ったのだが、遠心力がクラブヘッドを下向きにするせいなのだ。遠心力はわれわれが自然なスウィングをするための法則の一つである。無理などしていない感じなのに、ボールが遠くへ真っ直ぐ飛ぶのを見るのは素晴らしい体験だ。遠心力は最大のスウィング弧(あるいは拡張)を生む手段でもある」 |
(February 09, 2023)
●新・コックの研究
私はこれまでコックについてはほぼ無関心でした。インストラクターHarvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)が「コックは自然のままになるだけで十分。意図的にやる必要はない」と云っていたのと、意識的にコックしようとすると手首が凸型になったり凹型になったりするトラブルが多かったからです。
しかし、昨今の飛距離減によってコックの必要性を痛感しました。鏡を見ながら、トップでクラブシャフトを水平にしようとしてみたのですが、なりません。どうやってもならない。Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)は水平以下に垂れ下がるようなトップでしたが、そんな真似は私には到底出来ません。
以前、手首を鍛える運動として写真のように重い練習用クラブを上げ下げする方法を紹介したことがあります。右手だと90°(地面と水平)に出来ますが、左手では90°まで上がらず、せいぜい85°という感じ。実際のクラブを使っても同じです。
つまり、私の左手首は90°には曲がらないということが判明したのです。ということは、私のトップでのクラブ・シャフトは85°傾斜していれば充分にコックしている状態なので、それ以上きついコックを望むのはインチキを強制することであり、グリップを緩めたり手首を凹型(甲側に折る)に崩壊させたりする以外の何ものでもないということが解ったわけです。
ここでカナダの異才Moe Norman(モゥ・ノーマン、1929~2004)を思い出しました。彼は、世界一正確にボールを打った人ですが、彼のコックはどうだったのか?彼は写真のように両手がやっと肩の高さに届くか届かないかぐらいのトップでドライヴァーを打っていましたが、これは私のトップより低く短い。そして、きついコックをしているようにも見えません。このスウィングで平均265ヤード打っていたそうです(パーシモン・ヘッド+XXシャフト)。スウィング速度と筋力で飛ばしていたのでしょうか?彼は毎日1,000個のボールを打っていたそうですから筋力はあったでしょう。
筋力のない私はコックする他に途はありません。私は自分の身体的条件が許す限りコックしようと決意しました。
「Johnny Miller(ジョニイ・ミラー)の早めのコック」(tips_4.html)という記事を思い出しました。現在の主流はトップに近づいてからのコックですが、早期にコックするプロも少なからず存在します。全米と全英オープン両方に優勝したJohnny Millerもその一人です。目に見えないところ(トップ近辺)で無理にコックしようとするから凸型や凹型になるので、テイクアウェイ直後にコックしてしまえば正しくスクウェアにコック出来ます(図)。その後で身体を捻転させ、安心してトップを形成すればいいわけです。
'Bobby Jones on Golf'
by Bobby Jones(Doubleday, 1966)
Bobby Jonesの本の「トップの作り方」の項を読むと、以下のようになっています。手を前に伸ばしてクラブ・シャフトを地面に水平に上げる(まだコックはされていない)。そこから手首を折ってクラブを垂直にすると90°コックした状態になる(図の1)。手首を平らに維持したまま右45°斜めにし、(鏡に映した場合)シャフトが右肩の突端と重なったように見える角度にする(図の2)。その状態のまま背骨を軸として身体を充分に捻転するとジョーンズ風の正しいトップが完成する(図の3)。
これが正しいコックです。トップの形も安定しています。これを身に着けようと思いました。
「Harvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)の飛距離増プログラム」(tips_153.html)によれば、「練習用の重いクラブを日に10回振ることを三週間続けろ。三週間経てば目立った結果が出るはず」だそうです。私は一日おきにこれにトライすることにしました(中間の日は筋肉組織を安定させる日)。ジョニィミラー風に早めにコックし、ジョーンズ風に左踵を上げながら大きな捻転をし、ダウンスウィングの開始で左踵を下ろし、右肘を右脇につけてダウンスウィングします。
練習マットが目に触れる度に、練習用の重いクラブを振って上図のジョーンズ式正しいトップをマスルメモリに定着すべく努力しています。まだ完全に身についたわけではありませんが、正しく遂行出来るとわれながら素晴らしいボールが生まれます。
【参考】
・「コックの研究」(tips_54.html)
・「コックの全て」(tips_109.html)
・「Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)式トップの作り方【詳説】」(02.01, 2023)
(February 16, 2023)
●新・頭の研究【パート3】
頭を動かさないスウィングの研究、その後の進化です。
「Bobby Jonesをモデルにするなんて古いし、かっこ悪い」と思われる方はこの記事を飛ばして下さい。確かに彼はヒッコリー・シャフト、パーシモン・ヘッドの時代に活躍した人ですから古いのは間違いありません。しかし、いまや骨董品のそういう道具で彼が当時前人未到の偉業を達成したのも事実です(彼は必要と思えば300ヤード飛ばせました)。彼は身長体重もわれわれに近いし、そのスウィングは自然で堅実であり、優雅であるとさえ云われ、われわれが模範とするに足るメソッドだと思います。
・準備1) 頭を動かさない第一の要件は、スウェイしないことです。そのために、スウィングを始める前に右膝を左に押し込んでおきます。ストッパーの役目です。Tiger Woods(タイガー・ウッズ)もそのようにしていると彼の本に書いています。私は、後で右足体重にする時のために、右足の拇指球を意識します。
・準備2) バックスウィングの捻転を始めると左肩が顎を押すため、頭が右に動きがち。それを避けるため顎を上げてアドレスし、後で左肩が顎の下にすっぽり納まるように準備をしておく。
・バックスウィング1) テイクアウェイ開始と同時に左踵を上げる。スウェイしないように右足の拇指球で踏ん張る。
・バックスウィング2) 左膝をボールに方向に押し進めると同時に背骨を軸として身体を捻転する。左足は拇指球で立つ。
Bobby Jonesはスタンスが狭く、しかも上半身も下半身も大きく右に捻転させます。左膝はボールの40センチぐらい後ろまで移動させます。よく見ると、彼のトップでは顎・左肩・左膝が垂直に一線に並んでいます(左図)。「これが秘訣だ!」と思って真似しようとしましたが、Bobby Jonesのように大幅に左膝を右に動かすと頭も右に動いてしまいます。断念しました。左膝を右へではなくボールに向かって動かせば頭は動きません。左膝をボールに向かって押すだけに留め、背骨を回転軸として捻転することだけ考えれば、頭を動かさずに済みます。
Bobby Jones風バックスウィングは物理的にはリヴァース・ピヴォットではないのですが、これまで頭を野放図に水平移動していたゴルファー(私)にとっては感覚的にはリヴァース・ピヴォットめいた動作に思えます。目立つような体重移動がないからです。「これでいいのだろうか?」と不安になります。
往年のツァー・プロCary Middlecoff(ケアリ・ミドルコフ)の言を読んで納得出来ました。「Bobby Jonesのようなスウィンガーにとって体重移動は必要なかっただろう。彼はバックスウィングで横移動の徴候など見せずに、単に身体を捻転している」
'Bobby Jones on Golf'という本で、 'Bobby Jones自身が「バックスウィングの間に体重を後方に移さねばならないという論は信じ難い。アドレス時に充分にボールの後ろに立っているなら、その必要がないことは確かである」と云っています。必要なのは捻転・逆転のエネルギーだけだということです。これらによって、「体重移動はない」と私が感じたことが正しかったことが判りました。
Bobby Jonesはまた「ボールと左目を含んだ壁が立っていると想像し、ダウンスウィングでその壁にぶち当たらないようにする」というイメージを紹介しています。これを実行すれば、インパクト・ゾーンで身体が左にスライドすることを防げます。
右の写真はLPGAのLydia Ko(リディア・コゥ)のアドレスとインパクトを合成したもので、薄いイメージがアドレス、濃いイメージがインパクトです。インパクトで彼女の頭は10数センチ下がってはいますが、左右には全く動いていません。見事です。
Byron Nelson(バイロン・ネルスン)は「インパクトでの理想的ポジションは、顎が右膝の上に位置することだ」と云ったそうです。先月、まさに「顎が右膝の上のインパクト」でパー5のピン1.5メートルに3オンさせる正確なショットでバーディを得たのですが、その時は頭を残したベストのスウィングが出来ていたのでしょう。顎が右膝の上だとしても、頭と上体が一緒に左へスライドしたのでは正しいインパクトにはなりません。やはり不動の頭が大前提です。
上の手順をマスターしようとしていますが、ラウンドではつい顎を上げるのを忘れます。それと、どうしてもバックスウィングで頭も身体も右に動きがちになります。そうしないとパワーが生じないとでも云うかのように…。長年そうやってゴルフして来たんですから一朝一夕に変えられないわけです。しかし、上の手順を落ち着いて(ゆっくり)遂行するとうっとりするほど真っ直ぐな軌道のボールが打てます。もちろん、ダウンスウィングを下半身主導で始めないといけません。頭を残しても手打ちではいいショットにはならないのです。
一々頭で考えなくても自然に上の手順を実行出来るようにしたいものです。
【参考】
・「Ernie Els(アーニィ・エルス)の顎を上げてアドレスせよ」(tips_80.html)
・「Tiger Woods(タイガー・ウッズ)の顎」(tips_151.html)
(March 01, 2023)
●全てのパットはストレートである
スポーツ心理学者Dr. Joe Parent(ジョー・ペアレント博士)執筆のメンタルtips集より。 'Golf: The Art of the Mental Game' 「私は常々『全てのパットはストレートである』と教える。それは文字通りの意味ではないものの、スタートにおいては誰しもどのパットもストレートであるかのようにストロークする筈だ。 ラインにパターフェースを垂直に構えて狙ってストレートにストロークする。これがパットをムラのないものにするのであって、ブレイク(曲がり)を処理するためにボールをプッシュしたりプルしたりは絶対にしない。ストロークで変動する唯一の要素はストロークの幅だけである。 全てをストレートにパットするというポイントは、ブレイクを見込んで狙いを定めたら、後は引力とグリーンの傾斜がボールをカップに向かって送り届けるがままにするということだ。 パットしてどうなったかを見、その結果から未来のパットを読むことを学ぶ。だが、常にストレートにストロークすべきだということが解るだろう」 |
左にブレイクする短いパットだと、カップの上数センチに中間目標を定めたとしても、無意識にパターを左(カップ方向)に押したくなります。何しろ、カップが目の隅に見えてるんですから本能的にそうしたくなるわけです。しかし、これは真っ直ぐ左へプルするだけの結果となります。
われわれは中間目標にストレートに打つしかないのです。パターフェースでスライスやフックを生じさせることは出来ません(不可能ではないが、かなりの修練が必要でしょう)。ペアレント博士が云うように、われわれは中間目標に真っ直ぐ打つと考えるべきなのです。ボールをカーヴさせるのはグリーンの勾配と芝目です。人間が舵を取ってはいけません。
(March 01, 2023)
●クラブを短く持って打つ
「えっ?何云ってんの?少しでも遠くへ飛ばしたいのに、短く持つだとーっ?」と云う声が聞こえるような気がします。
私は飛ばし屋ではないのですが最近のある日のラウンドのNo.16(200ヤード、上りのパー4)であわやグリーン手前のバンカーに入れそうになったのです。シニアでも若く体格のいい飛ばし屋はグリーン・オーヴァーすることもあるのですが、通常私はバンカーから20ヤード(ピンまで50ヤード)手前まで飛べばいい方でした。一時、「飛距離が落ちたのは齢のせいか?」などと思っていたのですが、そうではなく正しいスウィングをしていなかっただけだったようです。私だってまだまだ飛ばせるのです。しかしバンカーに入るのはまずい。その5ヤード手前、いや10ヤード手前でもいい…と思いました。
《クラブは1インチ(2.5センチ)短く持つと距離が10ヤード減る》という法則があります。私の場合、10ヤード手前に刻むのであればクラブを2.5センチ短く持って打つことになります。クラブを短く持つとスウィート・スポットで打てる確率が増えるため、方向性が良くなることで知られています。
写真のLydia Ko(リディア・コゥ、LPGA)は常時クラブを短く持って打ちます。アイアンが多いですが、写真のようにドライヴァーの場合もあります。多額の賞金を獲得するためには、10~20ヤード遠くへ飛ばすよりもラフやバンカーを避けるべきだという信念でしょう。
「待てよ?」私は思いました。この飛距離減作戦はNo.13(184ヤード、パー3)でも役に立つのではないか?このホール、ここのところドライヴァーを目一杯長く持って打ってもショートし、それどころか右や左の旦那様が普通だったのです。ドライヴァーを短く持てば少なくとも右や左の旦那様だけは回避出来るのではないか?
私の想念はさらに膨らみました。もし短く持って方向性が改善されるのなら、どのホールのティー・ショットでも短く持つべきではないか?ま、10ヤード減るのは勿体無いので1.25センチ短く持って5ヤードを犠牲にし方向性を得るという作戦が考えられます。5ヤードぐらいグリーンに近くても遠くても大勢に影響はないし、アプローチ・ショットで5ヤードぐらい難なくカヴァー出来ます。5ヤード長く飛ばして左右にバラけるよりはフェアウェイ中央(あるいは狙ったところ)にボールを飛ばす方が望ましい。
ある日のラウンドで、全てのパー4とパー5で5ヤード減作戦を実行してみました。全体的にはいつもと変わらない飛距離が得られました。私に今回のヒントを与えてくれたNo.16では、ピンまで50ヤードに打てました。短く持っていつもと変わらない距離に届き、なおかつバンカーに入る恐れはないという望ましい結果でした。
二つのパー3でもドライヴァーを短く持って打つことにしました。No.4(140ヤード)をドライヴァーってのは老人というより老女のゴルフみたいですが、私が持っているクラブで最もストレートに飛ぶのはドライヴァーなのですから、パー3にはぴったりなのです。5センチ短く持って穏やかに打ってもたまに飛び過ぎることもありますが、ハイブリッドで打つより乗る確率が高くなっています。
No.15(パー4)は下って登って砲台に乗せる難しいホールです。COVOD-19の前はジム通いで筋肉を鍛えていたので2オンも出来たのですが、最近は全然乗りませんでした。ここの二打目では3番ウッドを使うのですが、試しに3番ウッドを短く持って打ってみました。何と、乗っちゃいました。正確にはエッジでしたが乗ったも同然です。これにはびっくりしました。ドライヴァーにせよ、3番ウッドにせよ、短く持つと正確に打てるだけでなく、飛距離も伸びるのです。
結論:《クラブを短く持って打つ》は正解です。5ヤードを諦めるのは「損」ですが、障害物を避けフェアウェイをキープするという多大な「得」を得ることが出来ます。以前、"Less is more."という文句を紹介したことがあります。「控え目にすることが逆に大きい成果を上げる」という意味です。クラブを短く持つとより遠くへ飛ぶというのは、まさに"Lass is more."の典型です。
【参考】「手軽に飛距離を伸ばす」(tips_90.html)
(March 09, 2023)
●新・頭の研究【パート4】
伝説的トップ・アマ中部銀次郎は次のように云っています。【『ゴルフの大事』by 中部銀次郎・三好 徹、ゴルフダイジェスト社、2006】
「どうしたら頭を動かさないで済むかと考えるから難しくなる。そうではなく、逆に頭が動かないといういうのはどういう状態かを知るべきだ。
私は壁に頭をつけて(クラブ無しで)フル・スウィングを練習してそれを体得した。前後に頭が動けばごつんごつんと壁に当たって痛い、左右に動けば皮が引っ張られてとてもスウィング出来ない。
この感覚、どういう状態が頭が動かないことなのかを知って覚えることが先決」
上の方法はインストラクターDavid Leadbetter(デイヴィッド・レッドベター)が’示唆する練習法と同じです。こちらはクッションを壁につけて頭で抑え、両手を胸の前で組んでスウィング動作をします。
私の、鏡に映る頭の位置に印をつけてスウィングするというアイデアもあります。どの方法をとっても結果は私が学んだことの追認になるでしょう。《左膝をボール方向に押し出しながら、背骨を軸として上体を捻転する》 これが正しいバックスウィングなのだ…と。【横移動は無しです】
(March 09, 2023)
●バンカーの砂への突入位置の決め方
バンカーでのクラブの突入位置は「2.5~5センチ」(Annika Sorenstam)、「7.6センチ」(Tiger Woods)、「10~10.5センチ」(Hank Haney)などと様々に云われ、われわれトーシロはどうしたらいいのか迷ってしまいます。このtipはその疑問に明快に答えてくれます。
これはツァー88勝を挙げたLPGAプロKathy Whitworth(キャスィ・ウィットワース)のtip。
'100 Classic Golf Tips'【LPGA version】
edited by Christopher Obetz (Universe Publishing, 2008, $24.95)
「バンカーショットがなぜエクスプロージョン・ショットと呼ばれるかと云うと、先ず砂を打ってからボールを打つからだ。ボールはあなたのサンドウェッジの爆発によって作られた砂の座布団に乗ってバンカーを去って行く。
問題は常にボール後方何センチにクラブを突入させるかである。これについて人々はいろんなことを云う。
ベストな決定法は《あなたのスウィング弧の最低点がどこになるかを見定め、その2.5センチ前方にボールが位置するようにアドレスする》ことだ。
スウィング弧の最低点は、ショート・アイアンでは通常スタンスのほぼ中央だろう。だから、その2.5センチ前方にボールがあるようにすれば、その後方で打つことが出来る。
これはボールの2.5センチ後ろにクラブを突入させようなどと試みるより、ずっといい方法である」 上のtipは従来の「ボール後方2.5センチが突入ポイント」ではなく、「スタンス中央の2.5センチ前にボールを位置させる」というコペルニクス的転回ですが、これが正しいことはやってみれば判ります。クラブ選択による距離調節さえ正しければ、ピタピタ寄ることが期待出来ます。 私がプレイするゴルフ場のバンカーは、砂というより土をふるった貧弱なものなので、雨の後数日は湿って固くなってしまいます。こういうバンカーでのコツは以下の通り。 ・バウンスの少ないクラブを用いる【重要】。 |
(March 23, 2023)
●バンカー・ショットは長く、スムーズに
これはLPGAツァーで26勝を挙げ、後にTV中継解説者となったJudy Rankin(ジュディ・ランキン)のtip。 '100 Classic Golf Tips'【LPGA version】 「ある種のゴルファーにとっては、バンカー・ショットは医師から注射を受けるように嫌なものらしい。だが、そんなひどい思いをする必要はない。 まあまあのライからボールを弾き出す鍵はいいテンポなのだ。テンポに集中すると、より完全に、より流麗なスウィングが可能になる。 ゴルフにおいてテンポとは、のったり、ゆっくりしたものでなく、ムラのない速度を維持することを意味する。だから、バンカーでは爆発という短く荒っぽいスウィングではなく、長くスムーズなスウィングを心掛けることだ。LPGAのバンカーの達人たちの多くは¾スウィングをしている。 この方法ならクラブヘッドはボール後方に突入し、ボールの下の砂を潜り抜けることが期待出来る」 |
(March 23, 2023)
●ダウンヒルのバンカー・ショット
これはTom Watson(トム・ワトスン)のtip。 '100 Classic Golf Tips' 「ダウンヒルのバンカー・ショットでありがちなのは、砂より前にボールを打つか砂でバウンドしたクラブでボールを打つかによって、ボールをトップすることだ。 ダウンヒル・ライではセットアップ(体勢)が成否を分ける。私は砂の傾斜に逆らわずに立つ。左肩は右肩より下になる(肩のラインと足のラインは平行)。体重は左足の内側にかかる。ボール位置はスタンス中央で、身体もクラブフェースもややオープン。。 バックスウィングでは、通常より早めにコックし、腕で急速に振り上げる。平らなライの バンカー・ショットと同じようにボールの手前にクラブを突入させる。傾斜に沿ってフォロースルーを行い、可能な限りクラブフェースをオープンにかつ低く保つ。 このショットではボールは低く出て、いつもよりランが多い」 |
(March 23, 2023)
●ラフからのチップ
これはTom Watson(トム・ワトスン)のtip。
’Getting Up and Down'
by Tom Watson with Nick Seitz (Random House, 1983, $14.00)
「私はラフからのショットではサンドウェッジかピッチングウェッジで、バンカーショットと同じようにプレイする。
ボール位置はスタンス後方か、少なくともスタンス中央。両足はオープンに構え、クラブフェースもオープンにする。
私は右手首を早期にコックしつつ、クラブを急速に持ち上げる【編註:縦に持ち上げる】。テイクアウェイで草との接触を出来るだけ避けるためである。
ダウンスウィングでは、左手の最後の三本の指でしっかりフェースをオープンにし続け、クラブヘッドをボールの下で滑らす。
バンカーショットのようにボールの後方を打っても、いい結果が得られる。
ラフから出たボールは通常のライからよりも遠くへ転がることを忘れないように」
(April 01, 2023)
●ラフの法則
ラフから打つ際に知っておくべきことを、ゴルフの百科全書とも云うべき本が教えてくれます。
’Golf Magazine's Complete Book of Golf Instruction'
edited by George Peper et al. (Harry N. Abrams Inc., 1997, $45.00)
「ラフの状態を読むにはちょっとした経験が必要だが、常にいくつかの法則がある。
もしボールがフライヤー・ライ【註】に入り込み、しかも草が朝露で覆われていたら通常より高く長く飛ぶことを覚悟すること。だが極端に湿った草はクラブの動きを遅らせるので、ややハードに打つ必要がある。
【編注】「フライヤー・ライ」(写真)というのは草あるいはその表面の水分がクラブフェースとの間に挟まってスピンを減らすため、7番アイアンで打ったのに6番か5番で打ったかのように飛んでしまうライを指す。
逆に極度に乾燥したラフでは、草の中にボールが潜っていても脱出は比較的容易である。
草がどちらに向いて伸びているかに注目せよ。もしターゲット方向に成長しているのなら、脱出はかなり簡単に出来る。フライヤーが超フライヤーになることはあるが。
伸び方がショットと反対の方向であれば、ボールを上げて飛ばすために余分の力を篭めないといけない。この場合、唯一の安全な方法はウェッジを使うことだ。
アメリカ南部で一般的なバミューダ・グラスのラフには警戒せねばならない。これは北部の草よりクラブに絡みついて手強いからだ。5センチのベントやライ・グラスであれば200ヤード飛ばせるかも知れないが、同じ長さのバミューダからは単にフェアウェイに戻すことだけ考えるのが上策である」
【参考】「ラフからの脱出(フライヤー・ライ篇)」(tips_135.html)
【おことわり】画像はhttps://2.bp.blogspot.com/にリンクして表示させて頂いています。
(April 01, 2023)
●グリーンサイドのラフから巧妙に寄せる
これはLPGAプロでインストラクターでもあったBetty Hicks(ベティ・ヒックス)のtip。 '100 Classic Golf Tips' 【LPGA version】 「ボールがグリーン近くの深いラフに入ったら、クラブフェースとボールとの間に草が挟まる量を最少限にするため、ピッチングウェッジを普通の攻撃角度よりも急角度にして打つべきだ。 ボールを打ち終えたら、即座に手首を折るように感じる。フォロースルーはバックスウィングと同じ幅にすること。 素振りは極めて重要である。ボールの近くで似たような長さと質感のラフの場所を探す。素振りをしながらどれほど草の抵抗があるかを調べる」 |
(April 01, 2023)
●右に行きたくないならグリップを緩めるべし
私がプレイするコースのNo.2(275ヤード、パー4)は下って急傾斜で登る難しいホール。しかも第二打でグリーンを右に外すと、ピンは旗しか見えないような崖下から打ち上げる寄せが残ります。グリーンの左は水平のライですから簡単なので、外すなら左一択です。そう考えているのに、なぜか右へ外すことが多く、われながら自分の不甲斐なさに呆れてしまいます。 「Bobby Jones(ボビィ・ジョ-ンズ)のインパクト~フィニッシュ」(tips_207.html)に次のような箇所があります。 「エクストラのパワーを与えようと努力すると、両手が強張って抵抗が生ずるため、動きは加速するのではなく減速してしまう」 これで判りました。私はフェードのコツを知っているのですが、その一つは両手を強張らせることなのです(フックを打つ時は逆にゆるゆるにする)。私のNo.2の第二打の失敗の原因は、真っ直ぐ打とうとする余り手を強張らせてしまうので、ボールが右に向かうための招待状を送っていたのです。今後、No.2での第二打では手首をゆるめにする必要があることが判りました。グリーンの左に飛んだとしても寄せワンが期待出来ますが、右ではボギー確実なのです。 こう悟ったある日のNo.2。グリップと手首をゆるゆるにし過ぎて、グリーンの遥か左に打ってしまいました。程度問題ですね。「ガチガチとゆるゆるの中間」でないといけないようです。 チーム・ゲームに参加したある日のNo.2。ピンまでの残り距離は152ヤード。急な上りなので21°ハイブリッドを選択。手首を緩め、グリーン左を狙った二打目は当人が驚くほど真っ直ぐ飛び、カップの手前1.5メートルで停止しました。仲間は「凄いっ!」と驚嘆しました。あと1.5メートル転がってくれれば、またもやパー4イーグルになるところでした^^。最近の研究が実っているようです。 |
(April 01, 2023)
●一本でチップするか、複数クラブか?
ゴルフの「百科全書」ともいうべき本の一章より。
'Golf Magazine's Complete Book of Golf Instruction'
edited by George Peper et.al. (Harry N. Abarms, Inc., 1997)
「チッピングに関して最も一般的に問われる質問は、疑がうべくもなく『一本で処理すべきか、複数か?』というものである。どのゴルファーに対しても適切であるような一つの答えというものはない。どちらの論をもサポートする証拠がある。
Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)は『一本派』の頭領である。彼は、長いランを必要とするチッピングを除いては、全てのチップをサンドウェッジ一本で処理する。彼は『六本のクラブを一本につき10分ずつ練習するより、一本のクラブで一時間練習する方がより熟練出来るし自信もつくので一本でプレイすることを好む』と云う。
『多数派』のリーダーはBobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)である。彼はずっと以前から3番~9番アイアンのどれかを使うと述べている。『スウィングを変えるよりクラブを変える方がシンプルであることは明らかだ。とても短いショート・アプローチにおいて、器用にカットしたり繊細なバックスピンをかけたりする困難に悩まされずに済む』
チッピング名人Raymond Floyd(レイモンド・フロイド)は『チッピングを成功させるにはクラブ選択が重要だ。私は必要に応じて4番アイアンからサンド・ウェッジまでを用いる。グリーンまでの距離、カップの位置、グリーンの速さ等に応じてクラブ選択とストロークの長さを変える』と云う。
ショートゲーム専門インストラクターDave Pelz(デイヴ・ペルツ)は、グリーンに低い角度で着地すると真っ直ぐ跳ね、ターゲットの周りで散らばる分布も狭くなることを発見した。これは多くのクラブを使うメソッドへの有利な根拠である。可能と思われる最も低い軌道をどんな状況でも選べばよいのだ。
多くのクラブでチップすることは、それぞれのクラブがどんな風に仕事をするかを練習によって知ることだ。ウェッジからミドル・アイアンまで練習しながら、軌道の高さ、キャリーの長さ、ラン、そして個々のクラブが作り出す全体の距離を記憶すれば、状況によってベストのクラブを選ぶことが出来る。
どちらかのメソッドが正しく、他方は間違いだろうか?そうではないが、今日『多数』が広く教えられている。多くのインストラクターはどちらのメソッドであれ、ポジティヴな態度と自信をもたらすものを推奨する。なぜなら、あなたがどちらかのメソッドを用いて『自分はチップ名人だ』と思えるなら、多分それは正しいからだ」
【参考】「ピッチングとチッピングの距離調節・簡略版」(tips_195.html)
【おことわり:画像はhttps://m.psecn.photoshelter.com/にリンクして表示させて頂いています】
(April 10, 2023)
●Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)のチッピング
チッピングについてJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)は次のように述べています。
'Golf My Way'
by Jack Nicklaus with Ken Bowden (Fireside , 1974)
「パッティングだけでなくチッピングの名人でもあったBobby Locke(ボビィ・ロック、南ア)は、すべてのチッピングをピッチング・ウェッジでやっていた。ここ数年私はグリーン周りの様々なショットをサンドウェッジでこなすようになった。一本のクラブでチップすることを好む理由は、六本のクラブを一本につき10分ずつ練習するより、一本のクラブで一時間練習する方がより熟練出来るし自信もつくからだ。
とはいえ、5番アイアン以下のクラブをチッピングに用いることはある。だが、ある日の私の精妙なプレイの遂行はサンドウェッジによるものであろうと確信している。珍しく長いランが必要な場合に、6番アイアンを一本予備にすることはあるだろうが」
以下は同書で説明されている彼のチッピング・メソッドです。
・狭いオープン・スタンス
・体重は終始左足
・ボール位置は左足踵の前方(しかし、スタンスが狭いので実質両足の中央と云える)
・両目の真下にボールが来るように立つ(ストレート・バック、ストレート・スルーのスウィングをするため)
・左肩からクラブ、ボールまで一直線に構える
・両手は僅かにボールの前方でアドレス(ハンド・ファースト)
・しっかりと、しかしイーズィに。ゆっくり、だがインパクト時に加速すること
・ランを多くしたい時は、手首をアドレス時よりも反時計方向に廻してフェースを立てる(ロフトが減る)
・急速に停止させたい時は、手首を時計回りに回してフェースを寝せる(ロフトが増える)
【おことわり:画像はhttps://collections.st-andrews.ac.uk/にリンクして表示させて頂いています】
(April 10, 2023)
●正確にボールをチップする練習法
ピン傍を狙ったチップ・ショットでダフってショートするのは口惜しいし、恥ずかしい。トップしてグリーン・オーヴァーはもっと恥ずかしい。インストラクターGlenn Deck(グレン・デック)が、手軽に間違いなくクリーンに打てる練習法を教えてくれます。
'How to catch every chip clean' by Glenn Deck
from 'The Best Instruction Book Ever!—Expanded Edition'
edited by David DeNunzio (Time Home Entertainment Inc., 2012, $29.95)
「ボールを宙に浮かべようとすると、ボールの天辺を叩いてホームランを出してしまう。ソリッドにボールを打ちたいなら、ボールを上げようとするのでなくヒット・ダウンすべきなのに。
あなたが夢見るようなチッピングを現出させる練習法がある。必要なものはミネラル・ウォーター(でもコークでも何でもよい)などの瓶一本である。
その瓶の上にクラブを一本寝せ、ハンドル部分を手前にしてバランスをとる。
そのクラブ・ハンドルの後方30センチにボールを置き、そのクラブを叩かないように打つ。
ボールに向かって下降するスウィングをし、インパクト後もクラブヘッドが地面に沿った低い軌道が必要であることが解る筈だ。もし、ボールを掬い上げようとしてクラブヘッドが両手を追い越すようなスウィングをすると、クラブと瓶を撥ね飛ばすことになる」
この方法を用いて練習すれば、ヒット・アップしてトップしたりダフったりすることを防げるようになり、ピタピタとピンそばに寄ることが期待出来ます。
(April 10, 2023)
●腰からダウンスウィングせよ
「ゴルフの百科全書」ともいうべき本の一節より。
'Golf Magazine's Complete Book of Golf Instruction'
edited by George Peper et.al. (Harry N. Abarms, Inc., 1997)
「インストラクターDavid Leadbetter(デイヴィッド・レッドベター)は'Golf Magazine'誌で次のように述べている。
"laid-off position"(レイドオフ・ポジション=クラブヘッドがターゲットの左を向く)のトップから、クラブがより浅い角度で、しかもインサイドからボールに接近するようにスウィング弧をフラットにしなければならない。
そのためには、ダウンスウィングの最初の動きは腰を水平移動させる。腰はフォロースルーのパワーが腰を否応なくオープンにするまでターゲットラインにスクウェアに保つこと。
浅い角度のインサイドからのスウィング弧がスクウェアなインパクトを準備する。
トップに達した後、急速な腰の回転で下降する手・腕のために道を空ける。右肘は右の胸郭に沿って正しい位置に向かう。腰はボールを打つ瞬間に約45°オープンになるように集中せよ。
上のようにすればスクウェアなクラブフェースのインパクトが得られる」
驚きました。David Leadbetter(デイヴィッド・レッドベター)は'Swing Like a Pro'シリーズのpart 7「ダウンの開始で右肘を引き下ろせ」(tips_203.html)と全く同じことを云っているのです。'Swing Like a Pro'は1998年の出版ですが、この記事はその一年前に公開されています。しかし、ダウンの開始で右肘を引き下ろす重要性については1992年に出版されたHarvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)の本に既に書かれていました。さらに遡れば、'Bobby Jones on The Basic Golf Swing' (1969) でBobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)が発表していたことです。全てはBobby Jonesが源流なのです。
Lydia Ko(リディア・コゥ、LPGA)のダウンスウィング(写真)をご覧下さい。ダウンのごく初期、右肘が右胸郭に向かって引き下ろされクラブ軌道をフラットにしています。「腰は?」と見るともうとっくにターゲットラインに平行になっています。腰(下半身)が上体をリードしていることの証明です。左肩はまだボールを向いているのに、左腰は既にターゲットを向いている。両肩を結ぶ縦の線と両腰を結ぶ横の線とが、まるで十文字のようになっています。われわれが模範とすべきはこの状態でしょう。
(April 20, 2023)
●2秒でスウィングすべきか否か
'Swing Like a Pro'(プロのようにスウィングせよ)という本を読む以前、私のスウィングは1-2-3のリズムで(2がトップ)、どちらかというとスローなテンポのバックスウィングでした。それが「2秒でスウィングせよ」と説かれて慌てふためいているせいか、方向性がかなり悪くなりました。仲間内で以前は短身痩躯の割に飛ばす奴として知られており、しかもフェアウェイ・キープ率も結構高かったのです。それがどちらも落ちてしまいました。
そんな時《ゴルファーには生まれつきのテンポがある》というセオリーを思い出しました。私はせっかちな性格ではあるものの、どちらかというと慎重な傾向ですし荒っぽい行動をする方ではありません。ですから2秒でスウィングするとどこかで欠陥が生じるのではないか?2秒でスウィングすれば飛距離が伸びるというのなら魅力的ではあるものの、そんな徴候は皆無。そして方向まで乱れるのであれば何もいいことはないではないか。
というわけで、無理に急速なスウィングすることはやめました。かといって以前のスローなスウィングに戻したわけではなく、昔よりはずっと速いです。単に急がないだけ。これに加えてメリハリのあるスウィングをするよう心掛けて飛距離と方向性を取り戻しました。「メリハリ」というのは説明が難しいのですが、例えば「バックスウィングを完結させる」とか、「フォワードスウィングの前に右肘を落下させて身体の右脇にくっつける」などを実行すると、その一瞬にいわゆるタメが出来るようになります。これらを実施することによって、方向性も飛距離も満足出来るようになります。
Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)は「ダウン・スウィングはのろのろと始めなくてはならない。それが、スウィングのバランスとタイミングを損なわずに徐々にスピードを増す秘訣である」と述べています。Tom Watson(トム・ワトスン)も「Byron Nelson(バイロン・ネルスン)が、トップで短い躊躇(ためらい)のときを作って、急がずにダウン・スウィングすべきだと云っていた。これだとダウン・スウィングでしっかりとしたクラブヘッドのスピードを構築出来る」 上り坂の若手ツァー・プロCameron Young(キャメロン・ヤング、右のヴィデオ)は明瞭にトップで動作を一時停止します。最近のプロとしては珍しいスウィングですが、Bobby JonesやByron Nelsonに誉められるようなスウィングに思えます。 振り子運動は連続動作ではあるものの、両端で一瞬静止するように見えます。あの瞬間にボールに篭めるエネルギーが蓄えられるのだと思います。そしてクラブヘッドを落下させる重力との二人三脚でインパクトを迎える。これが"タメ"でしょう。 |
プロたちは練習量も多く、強靭な体力と素晴らしい運動能力を持っているわけですが、こちとら素人はまるで違います。「理想は2秒だが、多少遅くても許される」という考え方で充分かと思われます。
事実、こう悟った次のラウンド、ティー・ショットは18ホールで100%フェアウェイをキープしましたし、寄せも良くなりました。
【おことわり】上の画像はhttps://www.golfdigest.com/にリンクして表示させて頂いています。
(April 20, 2023)
●切り返しはスクール・ゾーンである
これはインストラクターRandy Smith(ランディ・スミス)のtip。
'100 Classic Golf Tips'
edited by Christopher Obetz (Universe Publishing, 2007, $24.95)
「ゴルフ・スウィングにスピードは重要であるが、切り返しの時点だけは別である。トップからあまりにも早く動くと手打ちとなり、パワーを失ってしまう。
よい切り返しをする一つの方法は、バックスウィングのトップはスクール・ゾーンだと思うことだ。そこではスピードを落とし、そこを過ぎたら加速し最高速にしてよい」
【おことわり】画像はhttps://cdn-webcartop.com/にリンクして表示させて頂いています。
(April 20, 2023)
●左脳派と右脳派のパッティング
これはインストラクターMike Shannon(マイク・シャノン)のtip。
'Golf Magazine: The Best Putting Instruction Book Ever!' Mike Shannonはゴルファーを個性によって二つのタイプに別け、それぞれはグリーンの読み方と対処法が異なると指摘します。 a) 左脳派 左脳派はパットのラインを直線として考える。左に切れるラインであればカップの右手前40センチを目標にストレートなラインとして打ち、カップまでの残りの曲がりはグリーンの勾配に委ねる。【PGAツァーの85%がこのタイプである】 b) 右脳派 |
右脳派は切れるラインをカップまでトータルに読み、カップに向かってストロークする。
・左脳派のストローク手順
ボール後方に立ち、ボールが切れるであろう頂点を視覚化し、その頂点を中間目標として定める。
その中間目標にボールに描いた直線を合わせ、アドレス体勢に入る。この《狙ってからアドレス》という手順は非常に重要である。パターフェースが正しく中間目標を向いているかどうか、数回目を往復させて確認する。必要であれば中間目標を見つめながら素振りをする。
ストロークする前に、パターフェースが中間目標を向いているか最終確認をし、ストロークする。
・右脳派のストローク手順
ボール後方に立ち、カップまでのボールの転がりを視覚化し、カップのどの部分(左・右、手前・奥など)をボールの入り口とするか決定する。
アドレス体勢をとり、カップへの入り口を見ながら素振りし、両足・両肩の向きを微調整する。
最後にボールに目を戻してストロークする。
(May 01, 2023)
●チッピングをマスターする
アメリカの'Golf Magazine'誌が過去に出版したショートゲームの本からチッピングの骨子を抜き出してみました。
'The Golf Magazine: Short Game Handbook'
by Peter Morrice and the editors of Golf Magazine (The Lyons Press, 2000, $14.95)
「・チッピングとは
飛行部分が全行程の1/3を越えず、残り2/3(あるいはそれ以上)はランとなるショットがチッピングである。グリーン外の芝の上からボールをガツン!と弾いてグリーンに着地させ、そこからピンまで転がす。これはパッティングを除けば最も単純な動作であり、単純な動作であればあるほどミスを犯す危険が少ないショットと云える。
宙を飛ぶボールは着地して予想外の方向に跳ねたりするが、転がるボールにはその可能性は少なく、どう進むか予想し易い。
パッティングは最も安全であるが、グリーン外からパットするにはライがよく、全行程の地面ががスムーズでなければならない。そうでなければチッピングの出番だ。
肝に銘じておくべきことは、危険を最小にすることである。
・チッピングすべきでない場合 ピンとの間に深いラフや砂地がある時、砲台グリーンに打ち上げる時、草がボールとの接触を邪魔している時…など。 ・チッピングの準備 ボールからカップまで歩いて、ボールの着地点、グリーンの傾斜、転がす予定の最終段階などを調べる。そしてショットとボールの進行を心の中で思い描く。 着地点はグリーンエッジから少なくとも1メートルのグリーン上であるべきだ。これなら多少強く打っても弱く打っても許容範囲である。 ・クラブ選択 二つの流儀がある。一本のクラブの異なる幅のスウィングで距離を打ち分ける一派と、多数のクラブ(SWから5番アイアンまで)を用いる一派である。どちらも一理あるが、後者の方が単純と云える。 ・チッピングの前提 何より大事なのは正確さと筋肉の弛緩である。距離が短いほど大きな筋肉を使う必要はなく、リズムとタイミングに頼ることが出来る。緊張はリズムの大敵なのだ。選択したクラブに納得し、心の目でボールの進行をイメージする。似たようなライで数回素振りした後、ラインを一瞥したらボールを打つ。《(心眼で)見る→納得する→打つ》という順序で遅滞なく遂行すれば、緊張が忍び込む隙きが無い。 |
・チッピングの基本
チッピングの基本はクラブが下降するヒッティングであり、スウィング弧の最低点が地面に達する前にボールと接触する。この下降しつつボールを打つ様(さま)を、ボールをクラブフェースと地面とで締め付ける動作と考えればよい。
ボールとクラブフェースのクリーンな接触が重要である。草が挟まるとクラブヘッドの勢いを殺し、スピンの効果を予測出来ないものにする。草の影響が小さいものであっても、短い距離のショットにとっては致命的影響となり得る。
・チッピングのボール位置
ボールを右足甲の前に置き、両手を左太股に達するまで傾ける(ハンド・ファースト)。これは急角度のバックスウィングとインパクト・ゾーンで下降するクラブヘッドの動きを準備する。
・体重
アドレスで60〜70%の体重を左足にかける。これはボールへと下降する角度を助けるだけでなく、体重移動の動きを封じる。左足にかけた体重はそこに留まるべきであり、体重移動はチッピングには不必要なものだ。
・スタンス
両踵の間を15〜20センチ離し、体重移動無しでスウィングする。このスタンスは体重移動する誘惑に抗し、アップライトなスウィングをお膳立てし、手・腕が身体に近い位置で動くようにコントロールする。
・クラブを短く持て
両手をスライドさせ、右手がほぼハンドルの端に達するように握る。このようにクラブを短くするとスウィングのパワーを減じ、コントロールを強化する。
・オープン・スタンス?
スクウェア・スタンスはインパクト・ゾーンでのクラブヘッドの軌道をストレートに保つ点で理に適っている。しかし、いい視野が得られるというのでオープン・スタンスを好む人々もいる。快適な方を選択すべきだが、もしオープン・スタンスでチップ・ショットの結果が逸れるようならスクウェア・スタンスを用いるべきである。
・スクウェアなクラブフェース
ボール位置をスタンス後方にするとクラブフェースがオープンになりがちである。これはスウィングの最中に微調整でもしない限りインパクトまで続き、ボールをターゲット・ラインの右に打ってしまう。
これに抗するには、ボール位置に無関係に常にクラブのリーディング・エッジをターゲット・ラインに垂直にしておくべきだ。
・スウィング
『ワンピース・テイクアウェイ』という言葉を聞いたことがあると思う。フル・スウィングをスタートさせる時、両手・肩・クラブを一体として同期させて動かすというものだ。チッピングには、これはスタート時点だけでなくスウィング全体に必要なことだ。両腕と両肩で形成される大きな三角形を終始保ちながらスウィングせよ。【上の写真参照】 手・手首・前腕などの小さい筋肉はゴルフ・スウィングにおいて最も信頼出来ないものなので、それらに動きをリードさせるべきではない。
体重を左足に固定したまま頭も静止させ、手・腕・肩で出来る三角形を崩さず振り子のように動かす(パットのような感じである)。胴体は不動のまま留まる。
・リラックスせよ 手と腕の緊張、あるいはアドレス時の身体の緊張は、間違いなく急速なスタートに繋がり、取り返しがつかないミスだ。緊張を防ぎスムーズな最初の一歩を始めるには、アドレスで目をターゲット・ラインに注ぎながら、クラブヘッドを浮かして前後にワッグルすることだ。 ・身体のリアクション チッピングする間、手首は意識的にコックすべきではないが、クラブが振られる動きに自然に反応して動くのは許される。これはグリップをゆるく保っている場合に自動的に起こることだ。 下半身に関しても、リラックスし反応する感じを抱くべきだ。膝と腰はバックスウィングにつれてスウィング動作への反応として僅かに後方に回転すべきだ。 ・ダウンスウィング ダウンスウィングはバックスウィングの鏡像であるべきだ。単純に腕と肩で出来る三角形をターゲットに向けて戻せばよい。インパクト・ゾーンでクラブヘッドが自然に加速するのに任せて…。 ・フィニッシュ クラブヘッドをバックスウィングの幅に対応する長さで振り抜く。手首を返してはならないし、肩の回転を止めてもいけない。フィニッシュでのクラブヘッドは向こう脛の高さで、上体はターゲット方向に半分向いているべきだ。 |
(May 10, 2023)
●予告
次回は「ピッチングをマスターする」を二回にわたって掲載し、さらにその後チッピングとピッチングのテクニック対照表も付け加える予定です。
(May 10, 2023)
●ピッチングをマスターする【パート1】
アメリカの'Golf Magazine'誌が過去に出版したショートゲームの本からピッチングの骨子を抜き出してみました。
'The Golf Magazine: Short Game Handbook'
by Peter Morrice and the editors of Golf Magazine (The Lyons Press, 2000, $14.95)
「・チップとピッチの違い
寄せの全行程(飛行+ラン)で飛行部分が1/3以内のショットはチップ、飛行部分が1/3かそれ以上のショットがピッチである。【編註;飛行がランと同じかそれ以上のショットがピッチという意味】
・ピッチングの前提
ゴルフコースがよく整備され、充分灌水されるようになり、グリーンでボールを停めることが出来るようになってピッチングに人気が出た。しかし、ロフトの多いクラブはリスクが大きいものだ。
基本のピッチングは満足出来るライと、チッピングよりも長く複雑なスウィングが不可欠である。スウィングの要素が増えれば増えるほど、許容範囲が狭くなるので結果が悪くなる恐れが増大する。ロフトの多いクラブがリスキーである理由だ。
だから、ピッチングは必要悪だと思うべきである、グリーン周りでチップでは軌道が低過ぎたりランが多過ぎたりする状況が訪れた場合がピッチングの出番である。
覚えておくべきことは、ロフトが増すにつれスウィングも大きくしなければならないということだ。スウィングのエネルギーはボールを上方と前方とに送り出すが、上げる力が強いと推進力を弱めるため、距離が減ってしまう。
ロフトが増えるとランが減るということも忘れてはならない。地面に急角度に下降するためランが減る。だから、高いボールを打つということはカップの近くまでキャリーで運ぶということなので、もしミスすればグリーンの向こうのトラブルに突入することになる。
・ピッチングの準備
ピッチングにとって最重要なのはライである。ピッチングはチッピングよりもダウンブローに打たねばならないので、ボール後方の草が邪魔する度合いも増す。
グリーンまで歩いてどこにボールを着地させるか、ピンのどちらの方向からパットしたいか、自問自答し着地点を定める。
・ピッチングの心構え
ロフトの多いクラブを用いる目的は二つ、1) ハザードを越える、2) ボールを素早く停める…であるが、多分あなたはこれらの二つに自信がないかも知れない。不安は筋肉を緊張させ、手首を固くし、テンポを早めてしまう。
グリップの緊張は手首・腕・そして肩へと伝染するため、それらが自然に動くことを妨げてしまう。緊張の副産物は予期せぬスウィング速度だ。もし、アドレスでクラブ・ハンドルを強く締め付けたら、ひったくるようにボールからクラブを遠ざけてバックスウィングし、強打するようなダウンスウィングをすることだろう。
緊張はまた手首と肩の動きの幅を減少させてしまうので、ダウンスウィングでの打つ強さ(スピード)を生むことを手と腕に強制する。こうしたパワー製造は手・腕の筋肉の完璧なタイミング次第なので全く当てにならない。アドレスでグリップをソフトにし、それをスウィングの間じゅう維持することによって手・腕によるアクションを弱めるべきである。
アマチュアの多くは、ボールを宙に浮かべる短いショットの能力を信じていない。アマチュアはボールを空中に上げるクラブ・デザインも、それを使う自身の能力も信ぜず、ヒッティング・ゾーンでボールを上げるために急速に手首を返したりする。これはムラのあるプレイへの招待状である。
ピッチ巧者になるためには、常にリラックスし、成果に関して自信を持つべきである。
・クラブ選択
どのクラブを用いるかはあなた次第だ。ロフトが多いクラブはハザードを楽に越えられるが、ロフトの多いクラブで距離を得ようとすると長いスウィングをせねばならず、失敗するもリスク増大する。
ピッチングのボール位置
ボール位置は両踵の中間。両手を僅かにターゲットに傾ける(ハンド・ファースト)。これがヒットダウンのスウィングをお膳立てする。
・体重
アドレス時の体重は左右の足に均等。ピッチングはスケールこそ小さいがフル・スウィングと変わらない体重移動をする。
・スタンス
両踵間を25~30センチ開く。スクウェア・スタンスは最も簡単だが、ややオープンにしたスタンスはダウンスウィングを容易にする。両方試すべきである。
・グリップ
クラブを短く持たないこと。短く持つとクラブ自体を軽くしてしまうため、パワーが減ってしまう。それを相殺するには長く早いスウィングをしなくてはならなくなる。
クラブをフルに握るとクラブヘッドの重みを感じることが出来、ダウンスウィングで手首のコックをほどき、両手の打つアクション抜きでボールの下をスライドさせることが出来る。
【パート2に続く】
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(May 20, 2023)
●座頭市症候群
ボールの行方を早期に見送るlook up(=ヘッドアップ)とは違います。打つ瞬間に目を閉じるようなミスです。まるで座頭市がゴルフしているような塩梅。座頭市も相手が人間なら斬れるかも知れませんが、小さなゴルフ・ボールを斬るのは難しいでしょう。仲良しの上級者に恥を忍んで聞いてみたのですが、なんと「オレも時々同じ症状が出る」ということで、何の助けにもなりませんでした。
そこで思い出したのが「一意専心」(tips_18.html)という記事です。これはスポーツ心理学者Dr. Tom Dorsel(トム・ドーセル博士)が普段79前後で廻っていた際に、「クラブヘッドがボールを通過する様(さま)を見る」という集中実験を行ったところ、76という自己新記録を出したというリポートでした。
ここで注目すべきは「ボールを見る」ではないことです。われわれはボールを見ているようでも、実際にはぼやっと焦点の定まらない目で見ていることが多く、本当にボールを見ているとは云えないことがあります。それに抗するため、以前「ディンプルを見よ」というtipを考案したことがあるのですが、現在使用中のCallaway Supersoft(つや消し仕上げ)はディンプルがハッキリしないので、これは使えません。
単に「ボールを見る」のではなく「インパクトの瞬間を見る」ように集中すれば座頭市症候群から脱却出来るかも知れないと思いました。
その後、私は一打毎に「インパクトを見よ!」と呟きながら打つようにしました。これは役に立ちます。しかし、先ず一回ミスを犯してからこの文句を思い出して真剣になるというパターンなので、紛れもなくドジですが(^^;;。
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(May 20, 2023)
●ピッチングをマスターする【パート2】
'The Golf Magazine: Short Game Handbook'
by Peter Morrice and the editors of Golf Magazine (The Lyons Press, 2000, $14.95)
「・フェースの狙い方
チッピングの場合はスウィングが短くゆっくりで、ボールは単にフェースで跳ね返るだけなのでスクウェア・フェースがベストである。しかし、ピッチングのように長く早いスウィングでは、ボールは《スウィング軌道とインパクト時のフェースの向きとの間のどこか》に向かってスタートする。
もし、あなたがスクウェア・スタンスを採用しているなら、ターゲット・ラインに沿ってスウィングする傾向があるだろうから、アドレスでもクラブ・フェースをスクウェアにしておくべきだ。
あなたがアドレスでオープン・スタンスを採用しているなら、インパクトでアウトサイドからインサイドへカットする傾向があり、オープンなフェースはスウィング軌道のやや右へボールを送り出す。また、オープンなクラブフェースはロフトを増す。
どちらが最も良い方法だとは云えない。あなたが快適で自信を持てる方法がベターであるということになる。
・スウィング
奇妙に聞こえるかも知れないが、ピッチングにはパワー(それもかなりのパワー)が不可欠である。あなたはそう思わないだろう。何しろピッチングはソフトに浮くようなボールの飛行を生み出すのだから。しかし、ボールを前方へ向かわせるだけでなく高く上げる必要のあるピッチングには、強い力が必要なのだ。パワーはボールの後部ではなくその下(地面との接点、右図のB)に用いられる。
ピッチ・ショットをトップした場合のことを考えてみてほしい。リーディング・エッジはボールの真ん中を捉え、宙を切り裂いてグリーンをオーヴァーする。これはボールが、期待したように上方に向かってでなく、前だけに向かって発射されたからだ。結果として、誤った方向へのパワーによってボールは計画したより三倍も四倍も遠くへ飛んでしまう。
「ボール位置」の項で述べた構え(左右均等の体重とスタンス中央のボール位置)をすれば、パワーは自ずとボールの下に向かうインパクトとなる。チッピングに比べれば水平のこの攻撃角度が厚いクラブヘッドのソールをボールの下に向かわせ、クラブフェースから高く上げる発射角度を生み出す。
チップ・ショットのボールは前方に向かうだけだが、ピッチングは上にも向かうため長く早いスウィング(=パワー)を必要とする。チッピングでは一種類のテコ(左肩)を使うだけだが、ピッチングでは二種類のテコを用いる。すなわち左腕と、手首のコックを伴うクラブとの二種である。このコックが長いスウィングとエクストラのパワーを生み出す。
もうお分かりだろうが、ピッチングはフル・スウィングのミニチュア版なのだ。明らかなコックを特徴とするだけでなく、必要とするパワーを生み出すために捻転と若干の体重移動も行う。これらフル・スウィングに必須の要素が、最も短いピッチングにも(程度の差はあるものの)見られるのだ。だから、ピッチングする際、必要充分な効果的パワーを生成せねばならない。
30ヤードの距離でピッチング・ウェッジを用いる基本的な鍵は、15ヤードの飛行、15ヤードのランである。
・グリップ圧
バックスウィングで手首を折る(コックする)ためには軽いグリップを維持しなくてはならない。アドレスで前後にワッグルし、手をソフトに、手首をしなやかにしておくべきだ。クラブを動かし続けることで手と手首をアクティヴにし、不必要な緊張を感じなくすることが出来る。
・腕と肩を一緒に動かせ
チッピングでも同じだが、腕と肩を一緒に動かしてスウィングを開始すれば、身体はターゲットに背を向けるように回転する。これは頭を不動にするために絶対必要なことだ。ボールとソリッドな接触をするには、インパクトを過ぎるまで頭は縦にも水平にも動いてはならない。
・コックせよ
バックスウィング開始と同時にコックし、クラブヘッドのトゥが空を指すようにする。たとえ30ヤードのピッチショットでも手首は左腕と90°の角度になるべきだ。もっと距離が長ければ、肩と腰の回転(と、若干の体重移動)を増す。だが意識的に体重移動をするのでなく、上体のアクションの結果として自然に動くべきである。
・ダウンスウィングを同期せよ
クラブヘッドをボールに戻す際は、身体全体がギプスで覆われていてバラバラには動かせないかのように、一緒に動かすこと。ダウンスウィングの遠心力が手首のコックをほどき、左腕を一直線に伸ばしてインパクトを迎える。身体全体(膝・腰・胸・肩)を回転させながらクラブを落下させるように感じること。
・なるがままにせよ
あまりにも多くのアマチュアがダウンスウィングでクラブやスウィング・スピードをコントロールしようと土壇場の悪あがきをする。アドレスでお膳立てした必要なロフトとバックスウィングで構築した必要なパワーを信じるべきである。ダウンスウィングはバックスウィングの動作を単純にフィニッシュへと戻せばよいのだ。
・逆転の終了
身体がインパクトへとスムーズに逆転すれば、ショットを過剰にコントロールしようとしたりせずリラックスしたままの筈だ。手と腕の緊張を知るには、バックスウィングの鏡像のように右腕で90°のコックをする(右の写真)。フィニッシュでベルトバックルと胸はターゲットを向き、ほとんどの体重は左踵にかかっているべきだ。これらは、あなたが手と腕の機敏な動きではなく、大きな筋肉を使ってスウィングしていることの良きサインである。
・ピッチングのよくある過ち
最も多い過ちは、クラブに備わったロフトを信じないで、ボールを上げようと余計な操作をすることだ。
ボールを上げようとする(余計な)”努力”の筆頭はアドレスで背骨をターゲットから遠ざけ、ボールをスタンス前方に置き、体重をボールの後方にかけることだ。そうすればボールの下を打って高い軌道が得られるという思い込みである。【編註:これらは全て間違い】
アドレスはいいとしても、バックスウィングで右に移した左に体重を戻さず、ボールを打ち上げようとする者もいる。この結果はボール後部を打ってゴロかてんぷらとなる。
もう一つの過ちは掬い打ちか、手を返してボールを上げようと早期に右肘を伸ばすことだ。上級者は意図的にロフトを増すため時折この手法を用いるが、中級者は完璧にボールを打てずダフるかトップが関の山である。
ウェッジはボールを上げるために充分なロフトを備えている。《ヒットダウンすればボールは上がる》という公式を信じなければいけない。
【おことわり】画像上はhttps://koreajoongangdaily.joins.com/、下はhttps://dxbhsrqyrr690.cloudfront.net/にリンクして表示させて頂いています。
(May 30, 2023)
●納得出来るまで素振りする
練習ラウンド(月・火)と本戦(木・金・土・日)【註参照】を含めれば連日のようにプレイしているツァー・プロでさえ、ショットの前に素振りを欠かしません。だったら、そう頻繁にラウンドしているわけではない我々は充分に納得出来るまで素振りすべきでしょう。【註】水曜日はプロ=アマ・トーナメントの日で、これに出るプロは水曜日もラウンドします。前週予選落ちしたプロは、早めに次のコースにやって来て、土・日も練習ラウンドします。
TVのトーナメント中継を見ていると、プロたちはドライヴァーを打つ時には一回か二回の素振りをします(ゼロというプロはいません)。フェアウェイやバンカーでは二回か三回の素振り。チップ・ショットになると五回ぐらい素振りします。ラフからのショットをする前には合計十回ぐらい素振りするプロがいます。 ティー・グラウンドは比較的平らで、ボールはティーに乗っていますから、そう神経質にならずに潜在意識に任せてスウィング出来ます(自転車に乗るように)。しかし、いったんフェアウェイに移動するとライは傾斜し、草の長さも異なります。素振りをしてクラブヘッドが地面のどこを削るかを見極める必要があります。何度素振りしても地面との接触点(インパクト地点=スウィング弧の最低点)がスタンス後方なら、それに逆らわずボールがスタンス後方になるように立つべきです。でないとトップしたりする恐れがあります。 「素振りに時間をかけると同伴競技者に嫌われるだろう」…という意識は捨てましょう。納得出来るまで素振りしないで打って林や藪に打ち込んでみんなでボール探しに時間をかけるよりは、素振りに時間を掛けてもいいショットをする方が時間の節約になります。 ツァー・プロがどれだけ素振りをするか、今度TV中継を見て確認してみて下さい。プロより下手で自信がない我々は、プロ以上に多く素振りして当然と思うべきではないでしょうか。 |
(May 30, 2023)
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