Golf Tips Vol. 203

Magic Move(魔法の動作)でスコアを減らす

 

伝説的インストラクターHarvey Penick(ハーヴィ・ピーニック、1904〜1995)は屈指のチャンピオンたちを育てました。彼の教え子にはBen Crenshaw(ベン・クレンショー、1984と1995のマスターズ優勝)、Tom Kite(トム・カイト、1992年USオープン優勝)、Mickey Wright(ミッキィ・ライト、四度のUS女子オープン優勝)、Betsy Rawles(ベッツィ・ロウルズ、四度のUS女子オープン優勝)などがいます。

[Magic move]

'Harvey Penick's Little Red Book'
by Harvey Penick and Bud Shrake (Fireside, 1992, $10.00)

「もしゴルフ・スウィングに"Magic Move"(魔法の動作)というものがあるとすれば、それは私にとっては練習場やこの本で繰り返し強調している、ある一つの動きである。

あなたはこれまで私が何度も云うのを聞いたことがあると思うが、私はもう一度云う、《ダウンスウィングの開始は、体重を左足に移し、同時に右肘を身体に引き下ろすことだ》 これを一挙動で行う(二つの動きではない)

この動作を何度も何度も練習しなさい。この練習にクラブは要らない。その感じとリズムが身につくまで練習し、その練習を継続する。目をボールがあるべき位置に据え、頭はその後方に留めるように注意すること。

プレイヤー個々にとって"Magic Move"(魔法の動作)が何かは異なるものだろうが、あなたがこの《左足=右肘》の連携する動きを学べば、ボールを魔法をかけたように打つことが可能になる」

文字だけだと漠然としていますが、右図のように左膝と右肘がロープで結ばれているとイメージすれば簡単明瞭です。切り返しで先ず左膝がターゲット方向に動けば、その動きに引っ張られて右肘が身体の右側面に近づきます。これがHarvey Penickの云わんとするところです。

この左足=右肘の連携動作を確実に身につけるには、いくつかの方法があります。

1) スローモーション・ドリル

これはHarvey Penick推薦の方法です。ボール 無しで、通常の四倍速くらいの非常にゆっくりしたスウィングをする。切り返しで左足=右肘を同時に動かすことに焦点を当てる。ダウンスウィングの最初の1/3(左腕が胸の当り)で、動きを止め、元のトップに戻る。再度左足=右肘を同時に動かしてダウンスウィングの1/3まで。このトップ〜胸の間の動作を四回繰り返した後、スローモーションのままでフィニッシュまで行く。

このゆっくりしたスウィングを青写真として脳と筋肉に記憶させる。

2) 左踵の上げ下げ

スコットランド発祥のクラシックなゴルフ・スウィングでは、バックスウィングで左踵を上げました。Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)もJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)も、Ben Crenshaw、Tom Kiteなどもバックスウィングで左踵を上げます。ですから、彼らにとっては切り返しで左踵を地面に下ろし同時に右肘を身体に引きつける動作は簡単とてもだったでしょう。

Harvey Penickは意図的に左踵を上げることには賛成しませんが、バックスウィングで自然に上がるのならそれに逆らうなと云っています。浮いた左踵を地面に下ろすのを切っ掛けに、右肘を動かすのは難しくありません。私がこの方法を用いる時は、左踵を上げながら「Up(アップ)」と云い、トップに達したら「Down(ダウン)」と云いつつ左踵を下ろします。無理なく左踵を上げ下げ出来るゴルファーには、これが最適です。

[left knee]

3) 左膝の逆転を切っ掛けとする

Harvey Penickは「一挙動で行う(二つの動作ではない)」と云っているのですが、うまく一挙動で出来ない場合、ダウンスウィングの開始を左膝の逆転で行うだけでも効果があります。要するにこの"Magic Move"(魔法の動作)は手打ちを防ぎ、大きな身体の筋肉の逆転でボールを打とうとするのが目的なので、下半身でダウンスウィングを始めるだけでも御利益があるのです。

私がこの左膝の逆転を始めた頃、真っ直ぐピンに向かうボールを見て驚嘆したものでした。自分のショットとは思えない鋭い弾道!。下半身主導で腕・手が受け身で動くことによって(手打ちの反対)、インパクトでクラブフェースが正確にスクウェアになるせいだと思われます。

4) 両足をくっつけて素振りする

これは私が考案したスウィング前の予習法ですが、"Magic Move"の練習法としても使えます。

通常のスタンスではなく、両足をくっつけての素振りで"Magic Move"を達成すべく努力します。両足がくっついていると、ダウンスウィングのスタートは左膝を左に動かすしかありません。否応なく左膝が牽引車になります。この素振りを数回繰り返してから本番に移ると、ピュアなショットが生まれます。

【参考】
・「置き去り」小史(tips_201.html)
・「置き去り」練習法( 〃 )
・「置き去り」速習法( 〃 )

(January 01, 2022)

やさしいヒット・ダウン

 

[logo]

「裸地からの脱出」(12/20)というtipに「ボールの前半分(ターゲット方向)に目を据えてスウィングする。こうすればボール後方の地面を打つことを防げる」という箇所がありました。

裸地ではなくフェアウェイで試してみました。これ、なかなかいいです。効果があります。

本当はボール前方(ターゲット方向)10センチのところを凝視して打つとプロ並みのヒットダウンが達成出来るのですが、このボールの前半分を見つめながら…というのも充分役に立ちます。

もしローカル・ルールや日頃一緒にプレイする仲間うちのルールが「ボールに触ってもよい」と寛容なのであれば、ターゲット側にボールのロゴを向け、それを凝視しながら打つと楽チンです。


(January 01, 2022)

バンカー・ショットに不可欠な三ヶ条

 

PGAツァーで四勝を挙げているプロChris Kirk(クリス・カーク)によるバンカー・ショットのコツ。

'Cheat sheet for the sand'
by Chris Kirk ('Golf Digest,' January 2016)

「1) 左足に80%の体重をかける。これがディセンディング・ブロー(下降気味の一撃)を準備する。多くのゴルファーがボールを上げようと右足に体重をかけるが、上げようとするのでなく、ヒットダウンしなければならない。

2) クラブフェースを少しオープンにして、アウトサイドにバックスウィングする。そして、アウトサイド→インサイドの軌道でダウンスウィングする。だが、あまりにも急角度に振り下ろすと、クラブヘッドを砂に埋め込んでしまうので、横にスライドさせる動きが必要だ。サンドウェッジの部厚いバウンスに砂を取る深さを決めさせよ。

3) スローでスムーズなリズムを心掛けるべし。長いフォロースルーが必要だが、それはむらのないテンポで振り抜くことでしか得られない」

[icon]

左足体重がバンカーでヒットダウンするのに結びつくというのは気がつきませんでした。確かに右足体重だと掬い上げることになり、トップし易い。

フェースをオープンにするのはロフトを増すと同時に、浅い角度で砂の“津波”を起すためですね。

(January 10, 2022)

体型別スウィングでスコアを減らす

 

普通のインストラクションは書かれたものであれヴィデオであれ、実際のコーチから教わる場合であれ、生徒個々の体型は無視され、平均的体型を対象にして教科書的に一律に教えられるか、有名プロのメソッドの模倣か、コーチ自身が修得した彼の技を強制するかのどれかではないでしょうか。しかし、ゴルファーの体型は千差万別であり、本当はバックスウィングの高さ、捻転の方法、体重移動の仕方など、体型によって無理なく(効果的に)遂行されるべきものです。

[arm length]

そこへ行くとインストラクターMike Adams(マイク・アダムズ)らが1998年に発表した本'The LAWs of the GOLF Swing'は、ゴルファーの体型を三つに別け、それぞれに相応しいアドレス、バックスウィング軌道などを特定するという画期的な名著でした。今回は、その後Mike Adamsが継続調査・研究した結果を統合して紹介します。

'The Driving Book: Best Instruction Book Ever!'
edited by David DeNunzio (Time Home Entertainment Inc., 2012, $32.95)

1) 身長と手の長さを比較するテスト

身長より広げた両手の長さ(中指から中指まで)が10センチ以下の人

この体型のゴルファーは、正しいダウンスウィング領域に戻すためのトップを自然に形成出来るので、単純に身体を回転させればよい。【回転型ゴルファー】

身長よりも広げた両手の長さ(中指から中指まで)が10センチ以上長い人

この体型のゴルファーはインストラクターJim Hardy(ジム・ハーディ)が「二つのプレーン」で“2プレーン”と定義した体型に他ならない。身長より長い手を持っているので、両手が肩より遥か上になるトップを形成するため、容認出来るダウン・プレーンにするには、ダウンスウィング初期に水平移動が必要になる。【水平型ゴルファー】

もし、身長に較べ両手の長さが10センチ以内なら、アドレス時に両肩を少し後方に引けばよい。これなら、クラブのフラット過ぎるライ・アングルを回避出来る。

両手の長さが短い範疇に入る人は、肩を丸めて(背中ではない)前方に突き出せば手の短さを補完出来、ボールに近く立つ必要がなくなる。

[elbow hinge]

2) 肘折りテスト

右肘を身体の傍にくっつけた状態で、右手の親指を肩の方に折る(左図)。これは右前腕の長さを知るテストで、右腕を後方に振り上げる時、右前腕が(上腕に較べて)長ければ右肘との関係においてはクラブヘッドをより高く上げられることを意味する。

このテストの結果は、1) 親指が右肩の上を指す【高プレーン】、2) 親指が右肩を指す【中プレーン】、3) 親指が右肩の下を指す【低プレーン】…のいずれかになる。 写真の私の場合は「中プレーン」です。

[ 3 planes]

高プレーン

このタイプのゴルファーのバックスウィングは、ターゲットライン後方を通過して右肩に向かうのが正しい。

中プレーン

このタイプのゴルファーは、クラブをバックスウィングでターゲットライン後方に引き、アドレス時の右肘先端を通過する軌道でトップに向かうべきである。

低プレーン

このタイプのゴルファーは、アドレスした時のシャフトの角度を変えずにそのまま後方に引けばよい。

理想的にはバックスウィングとダウンスウィングは、ゴルファーに適した同一プレーンで往復すべきものである。Rickie Fowler(リッキィ・ファウラー)は低プレーンで上げ、低プレーンで下ろし、Earnie Els(アーニィ・エルス)は中プレーンで上げ、中プレーンで下ろす。

しかし、バックとダウンでプレーンを変えるプロも多い。Bill Haas(ビル・ハース)は高プレーンで上げ、中プレーンで下ろし、Matt Kuchar(マット・クチャー)は低プレーンで上げ、中プレーンで下ろす。

プレーンを変えるのがゴルファーの体型に合っていれば問題ないが、合っていない場合は不正確なショットを生むことになる。

[lower body]

3) 体重移動法の個人差を知るテスト

太腿の前に垂らした両手で一本のクラブ(どれでもよい)を水平に持ち、両足を腰の幅に広げ爪先をやや開いて立つ。クラブが身体から離れないようにして腰を後転・前転させ、その時の体重がどの足にかかるかを確認する。

体重が後転・前転どちらでも左足一本にかかって変化しない人【左一本柱ゴルファー】(写真)

このタイプの人はアドレスで、右爪先はターゲットラインに直角、左爪先は(ターゲット方向に)やや開く。このオープンにした左爪先が左膝を緩めるのを助けてくれる。ダウンスウィングで伸びた左脚が背骨を伸ばし、左に壁を作って最大の加速を生み出す。

体重が後転で右足、前転で左足へと移る人【左右二本柱ゴルファー】

バックスウィングの回転軸は右踵の上で確立される(一本目の柱)。ダウンスウィングを開始すると左腰が左踵の上に逆転して、左踵が回転軸となる(二本目の柱)。このスウィングはSam Snead(サム・スニード)風のガニ股を作り出す。

後転・前転どちらでも終始体重が身体の中心にある人【中央一本柱ゴルファー】

このタイプの人は骨盤の周りで身体を回転させる。バックスウィングで右腰が身体の背後に廻り、ダウンスウィングでは左腰が身体の背後に廻る。

4) 腰の回転速度のテスト【略】

[90 degrees]

5) 全てのテスト結果を統合してアドレス・ポスチャーを完成させる

全ての回転型ゴルファー(身長より広げた両手の長さが10センチ以下の人)のポスチャーは、クラブ・シャフトと背骨の角度が90°であるべきだ(右図)。【編註:私がこれを実行しようとすると、クラブヘッドのトゥがかなり浮いてしまい、フックやプルを多発する恐れがあるため未だ取り入れていません】

両手の長さが身長より10センチ以上の人(水平型ゴルファー=2プレーン)は、90°よりももっと上体を立てたポスチャーが望ましい。

2プレーン・ゴルファー(両手の長さが身長より10センチ以上長い人)は手の長さを調整するため、スタンス幅を広げるべきである。手の長さ2.5センチ毎にスタンスを1.3センチ広げること。

二本柱ゴルファーでバックスウィングの捻転が容易でない人は、右爪先をオープンにする。
一本柱ゴルファー(2プレーン・ゴルファー)は、左爪先をオープンにする。

・ボール位置
二本柱ゴルファーのドライヴァーのボール位置は左腋の前方。2プレーンの人のボール位置は左肩の外側が適切。

ツァー・プロやロー・ハンデのゴルファー100人をテストした結果、爪先の開き方やボール位置を無視すると、飛距離が27ヤード減り、正確度が37%落ちた。

【耳寄り情報】上記の本には含まれていないのですが、同じ筆者による「体型別スウィング(プレーン篇)」(tips_137.html)に見逃せない重要な箇所があります。

「クラブ無しでアドレス体勢を取り、両掌を合わせる。(肩を廻すことなく)手を離さずに左腕が胸を横切るように廻す。あなたの右腕は、自然に次の三つのどれかになる筈だ。

a) 右腕が折れながら持ち上がるのであれば、あなたは(肘折りテストの結果にかかわらず)高プレーンであることを示す。
b) 右腕が後退しつつ下がるようであれば、あなたは(肘折りテストの結果にかかわらず)中プレーンであることを指し示す。
c) 右腕が即座に折れるようなら、あなたは(肘折りテストの結果にかかわらず)低プレーンであることを示唆する」

私は肘折りテストでは中プレーンなのですが、上のテストでは最後の(c)「右腕が即座に折れる」タイプです。練習ラウンドで試してみました。ドライヴァーを低プレーンで打つと引っ掛けが多発しましたが、ハイブリッドとアイアンでは驚くほど正確にボールが打てます。ワン・ラウンドで二回もアイアン・ショットがピン傍30センチについてOKバーディが得られました。「体型別スウィング」さまさまです^^。

【体型別バックスウィングの練習法】

友人にクラブを一本持って貰い、自分のプレーン(高・中・低)のトップの高さで保持して貰って、バックスウィングを繰り返す。友人が手にしたクラブの高さぴったりのトップに慣れるまで繰り返す。

【参考】
・体型別スウィング(プレーン篇) (tips_137.html)
・二つのプレーン(tips_90.html)

(January 20, 2022)

飛距離を増してスコアを減らす

 

ゴルフ仲間の一人(アメリカ人)が私にこう云いました。「あんたはわれわれのグループの一番の飛ばし屋だ」と。「ええっ?」私はその間違いを正そうとしました。私より飛ばす人は何人かいるからです。その男は続けました、「ポンド当たりではあんたが最も飛ばすよ」 と。背も高く筋肉モリモリで体重180〜200ポンド(80〜90kg)級がぞろぞろいる中で、身長164センチ、体重50kgの小兵の私が、アメリカ人たちに負けず劣らずのティー・ショットを放つのは確かに驚異かも知れません。しかし、私としては体重当たりの飛距離では不満で、彼ら以上に飛ばしたいと思っているのです^^。

[ball and driver]

飛距離を伸ばす方策はいくつもあります。
1) 「身体を鍛えてスコアを減らす」(tips_200.html)で紹介した手・腕、足腰、肩などの鍛錬によってパワーをつける。
2) 身体を柔軟にする体操によってスウィング・スピードを増す。
3) レイト・ヒットのテクニックをマスターする。

以上はどれも日々の運動や猛練習が必要です。それらはインスタントな妙薬を期待している怠惰なあなたには相応しくないでしょう^^。そこで、私自身が経験によって得た、簡単かつ霊験あらたかな方法だけを選りすぐってお伝えすることにします。

○ スウィート・スポットで打つ

糸巻きボールとパーシモン・ヘッドの時代に300ヤードを放っていたプロGeorge Bayer(ジョージ・ベイヤー)は次のように云っていました。《ボールを遠くに飛ばしたいなら、ハードに打つのではなく、(スウィート・スポットで)正確に打て》

いくらクラブヘッド・スピードが速くても、スウィート・スポットで打たなければ満足な飛距離は得られません。トゥで打ったりヒールで打ったりすれば、プロだって数10ヤードは距離を損います。クラウンで打てばポップアップして目の前のレディース・ティーに着地するだけです。また、どれほどパワーがあっても、スウィート・スポットで打たなければボールは正しい軌道で飛びません。

スウィート・スポットで打っているか自己診断するには、ゴルフ用品店で「インパクト・シール」あるいは「インパクト・マーカー」などを購入するか、粉末タイプの「水虫スプレー」をクラブフェースに噴霧することによって、クラブのどこでボールを打っているかを分析します。

[Moe]

実際にはスウィート・スポットで打つには、そう簡単とは云い切れないいくつかの条件があります。
a) スウェイしない。
b) スウィングの間中、頭を上下させない。(左右への僅かな動きは可)
c) 左腕を伸ばしたインパクト。(手首も真っ直ぐでなければならない)
d) 頭を残してフォロースルー。

「飛ばそう!」と欲張ったり、方向を無理矢理制御しようとしなければ、高い確率でスウィート・スポットで打てます。「飛ばそう!」と力むから身体が上下左右に揺れ動き、それにつれて頭も動き手首も曲がったりします。単にアドレスした状態に戻すインパクトを心掛ければいいのですが、当てに行ったり人為的に方向をコントロールしようとするため、手が縮こまったり、手首をこねたりする余計なアクションが生じます。遠心力と重力に任せたインパクトを目指すべきです。

私は、御覧の写真のカナダの異才Moe Norman(モゥ・ノーマン)のように左手を一杯に伸ばしてアドレスします。スウィングの間に左肘を曲げなければ、クラブフェースの中心が必ずボールに戻る筈です。この手法は長期にわたって私にストレートな弾道をもたらしてくれています。

[sweet_spot]

スウィート・スポットで打つためには、もう一つ大事なことがあります。ドライヴァーのトゥ寄りでアドレスすることです。「インパクトの物理学(トゥ寄りでアドレスすべき理由)」(tips_175.html)をお読み下さい。練習場でのテストの結果、私はドライヴァー・ヘッドに記されている目印の2センチほどトゥ寄りに赤いビニール・テープを貼り、そこでアドレスして打っています。ここでアドレスすると、スウィート・スポットで打てるのです。

○ イーズィにスウィングする

年に一度の市のシニア・トーナメントを控えた前日の練習ラウンドで、私は大振りしたり、力んでスウィングして肩や腕を疲れさせるのは得策ではないと考え、No.10のティー・グラウンドからは、バシーっ!ではなく単にスコーン!と打つことにしました。

驚いたことに、力んで懸命に打ったドライヴァー・ショットより遥かに飛び、方向もフェアウェイのド真ん中でした。バシーっ!ではなくスコーン!と打ったティー・ショットはNo.11、(No.12はアイアンで打つPar3)No.13、No.14、No.15、No.16、No.17、No.18と、日頃の平均飛距離を5〜15ヤードも超える地点に届きました。

PGAプロ(インストラクター)のDr. Gary Wiren(ゲアリ・ワイレン博士)は、「指の中で最も弱い左手の最後の三本の指を鍛えること。手で握り締める運動器具を手の届くところ(TVやコンピュータの前など)に置いて、暇さえあれば用いるように」と云っています。それは馬鹿力でクラブを強く握るためではなく、強く鍛えた指で軽くグリップするためだそうです。彼は次のようにも云っています。《ゴルファーは強靭であるべきだ。目一杯引っ叩くためではなく、イーズィにスウィングするために》

イーズィにスウィングすればスウェイもオーヴァー・スウィングにもならず、身体のどこにも強ばりは生じません。ダウンスウィングで重力と遠心力のままに伸ばされた左腕はきちんとアドレス時の位置に戻るでしょう。イーズィにスウィングすることは、スウィート・スポットで打つ最大の基盤となります。スウィート・スポットを欠いては、どんなショットもミス・ヒットでしかなく、最長飛距離には結びつきません。

○ 左脇を締め挙げる

これは、少年野球のコーチをしているMichael Witte(マイケル・ウィット)が発見した理論です。彼はメイジャー・リーグのホームランバッターたちのスウィングを分析し、隠れた共通点を発見しました。そしてそれは、ゴルフ・スウィングにも利用出来るものでした。

「並のゴルファーは早めに右手首のコックを解(ほど)いてしまう。すると左腕だけが余りにも早くインパクト・ゾーンに突入してしまい、右腕が追いつけず伸び切れない。そこで並のゴルファーは左腕の動きをストップさせ右腕の到着を待つことになる」

[pinch]

上のような動作はチキンウィングに他なりませんし、インパクト・ゾーンで左腕の動きを止めて飛距離増を望むのは無理というものです。

ボールにパワーを与えるには、インパクトからフォロースルーまで(クラブヘッドがターゲットを指す段階まで)左右の腕を伸ばし切る必要があります。そのためには《両腕が右腰の上に近づく段階で左脇を締め、インパクト直前に左肩を挙げてすぐさま飛行線後方に引く》というのが彼が発見した飛ばしの原理です。【詳細は「左脇を締め挙げろ」(tips_94.html)をお読み下さい】これは、さして難しいメソッドではありません。そして実際に飛距離に結びつくのです。

私がこのメソッドを利用し始めた頃、普段は常に数10ヤード置いて行かれる強打者の友人の飛距離に徐々に肉薄し始めました。彼は私を侮れなくなり、焦った気配が濃厚でした。われわれは云わず語らずのうちの飛ばしっくらをすることになりました。

[Lee]

「左脇を締め挙げろ」には次のような効能があります。

a) 「左脇を締め挙げろ」を実行すると、インパクトで否応無く左手が伸びます。それはアドレス時のクラブヘッドの位置に完全に戻ることを意味します。スウィート・スポットで打てる要因です。

b) 「左脇を締め挙げろ」を実行すると、自然に"stay behind the ball"(頭をボール後方に留めよ)を達成出来ます。インパクトでターゲット方向に身体がスライドすると、その動きは発射角度を低くし、スピンを増やしてしまいます。昔、「左の壁に向かって打て」と云われましたが、それに似ているとも云えます。

c) 砲丸投げのように、全身を使ってクラブヘッドを抛り出すスウィングが可能になります。エネルギーを最大限ボールに伝え得る動作です。

この方法が効験あらたかであることを証明する実話:「左脇を締め挙げろでドラコン二つ」

「左脇を締め挙げろ」をこの『日記』で紹介した直後に、ある日本の女性ゴルファーがお便りを下さいました。

この方のそれまでの平均飛距離は190ヤードだったそうですが、「左脇を締め挙げろ」の練習をしたら平均200ヤードに伸び、数日後の女性62名が参加したコンペのドラコンでは午前の部で210ヤード、午後の部200ヤードで両方の賞を独り占めされたそうです。ドライヴァーの飛距離のお蔭で、パー4のホール全部の第二打を(ウッドやハイブリッドではなく)アイアンで打つことが出来、ハーフ初の30台も達成されたとのこと。たった一度の練習で最高20ヤードも飛距離を伸ばされたのです。

上の実話が証明する通り、《インパクトで左脇を締め挙げろ》は間違いなく飛距離増に繋がります。数ヶ月の鍛錬も筋肉増強剤も新しいドライヴァーも、一切不要。超簡単。お試し下さい。

もう一つ、「先行捻転で飛ばす」(下記リンク)という飛ばしの策があるのですが、これには練習が必要です。

【参考】
・Moe Norman(モゥ・ノーマン)のスィング (tips_195.html)
・左肩を挙げよ (tips_199.html)
・20ヤード増への最短コース (tips_129.html)
・先行捻転で飛ばす (tips_161.html)
・先行捻転・再履修 (tips_195.html)

【おことわり:写真はhttps://fwtx.com/downloads/、http://moenormangolf.com/、https://www.womensgolf.com/にリンクして表示させて頂いています】

(February 01, 2022)

アドレス時の背中の角度(改訂版)

 

[back_anggle]

'Anatomy of Greatness; Lessons from the Best Golf Swings in History'
by Brandel Chamblee (Simon & Scuster, 2015, $30.00)

Brandel Chamblee(ブランデル・シャンブリー)は、PGAツァーで四勝したプロで、現在はThe Golf Channel(ゴルフ・チャネル)のメインの解説者です。この本はスウィングの最初からフィニッシュまでを世界の名人たちの写真やヴィデオを研究し、最大公約数を導き出してまとめたものですが、これにポスチャーについて書かれた一章があり、「なるほど!」と思わされると同時に、以前に公開した記事は間違っていたと反省しました。で、前の記事は削除し、図版も手直しし、ここに改訂版をお届けする次第です。

「背を丸めずに真っ直ぐ伸ばすアドレス(上図の右から二番目)は最近教えられている一般的ポイントであり、ツアー観戦に行くとほぼ全てのプロが棒のように真っ直ぐな背中をしてアドレスする。これは見た目には魅力的かも知れないが、これは私に云わせれば矯正過剰というものだ。

[Snead] [Jack]

背の上部を真っ直ぐにしようとすると、背の下部が過度に凹み易い。この背骨を真っ直ぐにしようという上部と下部の綱引きは、あまりにも多くの緊張を生み出す。それはスウィング後半を短くするのはもちろんのこと、バックスウィングの開始に当たってわれわれが必要とする滑らかさを得ることをほぼ不可能にする。

ゴルフのビッグ・イヴェントに優勝した人々に共通する一つの分野があるとすれば、それは背骨の下部が中庸かあるいはやや凹んでいて、背骨の上部がカーヴしたアドレスである。背中上部は自然に僅かな角度でカーヴする(上図右端)。ボールに向かって上体を傾げると両腕は身体の前に自然に垂れ下がり、クラブを保持した両手の上腕はリラックスして胸の上に位置する。これが正しく行われると無数のポジティヴな累積的効果が得られる。

切り返しの際、背の上部は一時的に身体を拡張して、一度に二つの方向に動く。アドレスで背中をカーヴさせていれば、投球を開始する前の野球のピッチャーと同じようにリラックスしている筈だ。これはリラックスした位置から切り返しの拡張へと推移する動きであり、スウィングにおける運動能力の神髄である。

もし背の上部を頑なに真っ直ぐ伸ばし、腰を過剰に凹ませたスウィング開始をすると、正しい時点での胸の膨張という恩恵に与れない。その恩恵とは連続的なパワーの増加と、正しい動作の結果である滑らかさである。

[Tiger]

ゴルフ名誉の殿堂は前屈みアドレスをした人々で一杯である。今日の過剰に背を真っ直ぐ伸ばしたポスチャーは“完璧”に見えるかも知れないが、この場合完璧に見えない方が実際には完璧なのである」【写真左はSam Snead(サム・スニード)、右はJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)】

[icon]

写真左のやや背を丸めたTiger Woods(タイガー・ウッズ)のポスチャーは彼がメイジャー・トーナメントに四連勝した時期(2000〜2001年)、写真右の背を伸ばし頭を上げたポスチャーは最低の時期(2017年)だそうです。

【参考】Brandel Chamblee(ブランデル・シャンブリー)の 左踵を上げてスウィング(tips_169.html)


【おことわり:写真はhttps://golfdigest.sports.sndimg.com/、https://pbs.twimg.com/、https://cdn.mos.cms.futurecdn.net/にリンクして表示させて頂いています】

(February 20, 2022)

バンカー・ショットを会得してスコアを減らす

 

[bunker shot]

バンカー・ショットは一般にことさら難しく教えられていると思います。図のように「ボールの2インチ(約5センチ)後ろを打て」とかなんとか…。しょっちゅうダフったりトップしたりするわれわれトーシロにボールの5センチ後ろに正確にクラブヘッドを打ち下ろすなんて無理な注文というものです^^。

プロやインストラクターたちが上手にバンカー・ショットした後、ボールの後ろ何センチだったかを物指しで計ったら平均5センチ前後だった…というだけであって、プロやインストラクターたちも正確に5センチ後方を目指したのではないように思われます。

そもそもボールの後ろ5センチってのが果たして根拠のある数字なのか?The Masters(マスターズ)とPGA選手権に優勝し、ゴルフ名誉の殿堂入りもしているJackie Burke, Jr.(ジャッキィ・バーク二世、1923〜)は次のように云っています。「グリーンサイド・バンカーでは、出来るだけ高く砂を抛り上げるように。この考えはボール後方約4インチ(約10センチ)の砂を正しい量を取ることを助けてくれる。これがボールをピンに近づける鍵である」ね?彼は5センチではなく10センチと云っています。


[sole]

有名なTV解説者兼インストラクターのPeter Kostis(ピーター・コスティス)はこう説明します。「ボールの何インチ後ろを打たねばならないとかいうのは神話である。思ったより大雑把でいいのだ。ボールの後ろの2〜6インチ(5〜15センチ)のどこかしらで、十分満足出来る結果が得られる」…と。ボールの後ろ何センチにクラブを突入させようが、そこから鍋物の灰汁を掬うようにクラブヘッドを平行に横移動させ、砂の津波を起せばいいのです。あるセオリーによれば「もしボールに近いところにクラブを突入させたらボールは低く出てランが多い、ボールから遠くに突入させたら飛ぶ距離は長いがランが少ない、かくしてどっちのボールも同じ距離に到達する」とされています。「大雑把でいい」…これがバンカー・ショットの真の姿なのです。

あるインストラクターが12ヤード(約11メートル)のバンカー・ショットを実演した後、どれだけの分量の砂を抉(えぐ)ったかを調べたら、平均170グラムだったそうです。これは大きめの飯茶碗一杯のご飯の量に匹敵します。その分量を弾き出すには、《草の上で打つ時の三倍ハードにスウィングする》必要があります。

バンカーでスウィングする際はバウンス(クラブ底部の膨らみ)が、クラブヘッドが砂にめり込むのを防ぐ役目をします。《バンカーではクラブフェースをオープンにする》という理論は、このバウンスを剥き出しにして効果を挙げるためです。重要な考え方は《リーディング・エッジでボールを打つのではなく、クラブのソールで地面を打つ》ということです。ソールが砂の津波を起し、ボールと接触せずに砂を押し続けてボールを弾き出すわけです。ボールを打つという時、われわれはどうしてもリーディング・エッジを考えてしまい、ソールで砂を打つなんて想像も出来ませんが…。【注意】 砂が湿っているなんて状態を遥かに越えて硬く固まっている場合は、裸地と同じでサンドウェッジのソールが地面で撥ね返されてしまいます。こういう場合はピッチングウェッジの鋭いリーディング・エッジを使うべきだそうです。

なお、クラブフェースをオープンにするのはグリップを固める前にやっておく必要があります。グリップしてからそれをオープンにしても役に立ちません。

[bunker impact]

右の写真はあるインストラクターのアドレスとインパクトの二つの瞬間を重ね合わせたものです。超高速度撮影ではないので、見えているクラブはアドレス時のものであり、インパクトの瞬間クラブは見えず砂煙しか写っていません。アドレス時、クラブのバウンスは剥き出しになっています。そしてボール(赤丸)のかなり後方(緑色矢印)で砂に突入し砂の津波を巻き起こすことでボールを弾き飛ばしています(ボールとは直接接触しない)。この写真では5センチ後方どころか、凄く遠い距離から砂を取り始めています。写真を計ってみるとボール四個分なので、約17センチ。大雑把でいいという証明です。

色々模索していて、次の発見をしました。これは200冊以上のゴルフ本読破、20年余のゴルフ雑誌購読でも出会わなかった新発見です。バンカー外の通常のスウィングのボール位置は胸骨の真下が最適であると云われます。バンカー・ショットの練習で試しにボールを胸骨の真下、その右や左など位置をずらして打ってみました。この練習の結果判明したことは、ボールとの関係ではなくクラブヘッドを打ち下ろしたい場所に胸骨を揃えるのが正しいということです。胸骨の位置がスウィング弧の最低点となるので、ボールの10センチ後方にクラブヘッドを打ち込みたいなら、ボールの10センチ後ろに胸骨を揃えるべきなのです。そしてスウィングの間中、ボールではなくその後方10センチの砂の部分を凝視する必要があります。ボールを見てしまうと「アイ=ハンド・コーディネーション(目と手の協調作業)」の作用で、スウィング弧の最低点がボール方向に移動してしまう恐れがあります【結果はトップ】。

私の通常のショットは、左膝を内側に押し込んで左右の脚の長さの違いを相殺するのですが、バンカー・ショットでは右膝を内側に押し込みます。右脚が長いと自然にアウトサイド・インのスウィング軌道になるため、通常のショットではそれを相殺しないといけないのですが、バンカーではどっちみちアウトサイド・インのスウィングをすべきなので、左足体重の安定したスタンスの方が望ましいからです。

乾いたバンカーで砂の津波によってボールを弾き出す場合、手には砂を運んだだけの「ふわっ!」とした感触しか残りません。あまりの手応えの無さに「ショートか?」と思ってしまいますが、三倍の強さで打っていれば選んだクラブ通りの距離が得られます。湿った砂では「ドスッ」という重い音がします。「ガツン」という手応えはボールを打った音ですから、いいバンカー・ショットではありません。

バンカー・ショットのコツとしてあまり語られないのは、強めにコックすることです。アドレスで腕を下げて最大限低く構えると手首が折れて自然にコックされますが、そのコックを維持しながら(というか、コックを強めて行く気持で)バックスウィングします。これはヒールを寝せてヘッドが一定の深さで砂の中を滑走することを確実にします。三倍の強さで打つには力だけではなく、コックの助けが必要です。

伝説的インストラクターHarvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)は、「バンカーではグリップエンドが股間を指すように構えろ」と云いました。バンカーではハンド・ファーストではなく、“ハンド・ラスト”です。手を下げ、なおかつグリップエンドが股間を指すようにすれば、オープンフェースを保つことが保証されます。

伝統的インストラクションは、この記事の最初に掲載した図のようにスタンスもオープンにし、スタンスラインに平行(アウトサイドイン)にスウィングせよという教えです。オープンフェースのクラブでアウトサイドインにスウィングすれば物理的にボールはターゲットの右へ飛ぶことになります。ですから、ボールを打つ前にターゲット(ピンなど)の左にスタンスを揃え、右へ出てもいいように備えます。

スコアを減らすためにはただ出すだけではなく、ピン傍に寄せたいもの。距離調節のためには打つ強さやクラブの突入地点を変えるよりも、クラブを変える方が簡単です。どのクラブでどの距離になるかは人それぞれでしょうが、私の場合は60°ウェッジで10ヤード、サンドウェッジで13ヤード、ギャップウェッジで16ヤード、ピッチングウェッジで20ヤード、9番アイアンを少し短く持って25ヤード…という感じです。さらさらの砂で抵抗が強いと少し距離が減ります。

Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)は「バンカー・ショットはゆっくり打て」と説きましたが、われわれがゆっくりスウィングするとどうしても力が弱まります。草の上からのピッチングの三倍の強さで打つにはパワーが必要です。ゆっくり打ったとしても飯茶碗一杯の砂を弾き出すには断固たる強さが欠かせません。慌てる必要は全くないとしても、腰砕けのスウィングでは砂に負けてしまい、砂を弾き出せません。

スィングの最後に不可欠なのは《高いフィニッシュをすること》です。三倍の強さでスウィングすれば自然にそうなるとはいえ、意識的に毎回フル・フィニッシュを心掛けるべきです。

ボールからピンまでの距離が近かったり、顎が低いとついバンカー・ショットを甘く見てチッピングのようにソフトに打ってしまい、大幅にショートします。《バンカーでは通常より三倍強く打つ》という法則を貫くには、どのバンカーでも右の写真のような顎の高いバンカーであると想定すべきです。このような高い顎だと普通のピッチングやチッピングの強さではまず出ないし、出てもかなりショートするに決まっています。ボールを適切な距離に運ぶには、大きな断固たるスウィングをしないといけません。

 

【参考】
・どれだけ砂を取るべきか(tips_143.html)
・ソールで砂を打て(tips_199.html)

(February 20, 2022)

湿ったバンカー・ショットのコツ

 

'Golf Magazine's Complete Book of Golf Instruction'
by editors of Golf Magazine (Harry N. Abrams, Inc., 1997)

「湿った砂は固くてクラブヘッドの進入を拒むので、クラブヘッドは砂を掘るよりは撥ね返されてしまって、多くのゴルファーにとってボールを高く上げるのが難しい。しかし、スコットランドのコースでよく見られるこの湿って締まった砂のコンディションを好む上級ゴルファーも多い。もしクラブヘッドを正しく働かして攻撃的なスウィングをコントロール出来るのなら、ボールの下で砂の層を薄く払うように削ぐことが出来る。このショットはグリーンに着地するや否や停止する。

《セットアップ》

・オープン・スタンスで、両足・両膝・腰・肩をターゲットの左に揃える
・ボール位置は左踵の前(頭を後方に留め、クラブヘッドをボールの下で滑らせ、ボール軌道を高くするため)。
・バウンスの少ないサンドウェッジか60°かそれ以上のロブ・ウェッジを用いる。
・クラブフェースが空を向くほどオープンにし、クラブを約4インチ(約10センチ)短く持つ(これはアップライトなスウィング・プレーンを作り出し、掬い上げるようにクラブが砂を打つ)。

《バックスウィング》

・下半身を動かさないようにし、手と腕でスウィングする。テイクアウェイで早めにコックする。【編註:左手首を凹型にする】

《ダウンスウィング》

・オープンなクラブフェースをしっかり保持する(もしクローズにするとボールは左へ飛んでしまう)。

・通常の「ボール後方2インチ(約5センチ)」ではなく、3インチ(7〜8センチ)後方にクラブを突入させる。(湿った砂は固く締まっているので、クラブは砂を深くカット出来ない。ボールのかなり後方を打つとパワーが削がれるが、加速させてフォロースルーを達成すべく努力すること)。

[icon]

「ボール後方7〜8センチを打つ」というのは、その地点でヘッドが撥ね返されてトップしそうですが、Yuotubeヴィデオに「湿った砂では2〜4インチ(5〜10センチ)後方を打て」というのがありますから、別に異常ではないようです。

実際にやってみました。砂の津波を起す距離が長くなるので、その分渾身の力で振り抜かなくてはなりませんが、この手法でなら湿って固い砂からでも出せます。25ヤードのショットにボールの10センチ後方に胸骨を揃え、9番アイアンを使ってみましたが、四発打った三発までがワンピン以内に寄りました。

《ヴィデオ》 「5〜10センチ後方を打て」 湿った砂のショットはヴィデオの後半。

 

(February 20, 2022)

左踵の研究(身体に優しいスウィングをせよ)

 

[bobby's heel]

Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)は右のアニメのように左踵を浮かし、左膝を右に寄せてバックスウィングしました。ダウンスウィング開始の切っ掛けは、上げた左踵を地面に下ろすこと。この動作によって、彼は正確無比なショットを放ったのです。

1992年にインストラクターJim McLean(ジム・マクレイン)は"X-Factor"なる理論(腰の回転と肩の回転の差が大きければ大きいほど良い)を提唱しました。それによればバックスウィングで左踵を上げたりして目一杯腰を廻すのは、肩の回転とのギャップを減らしてしまうのでパワーが得られない云々。1975年生まれで1996年にプロ入りしたTiger Woods(タイガー・ウッズ)は、まるで"X-Factor"の申し子のように、両足をべったり地面につけたバックスウィングをし、誰も彼も(プロもアマチュアも)彼の真似をしました。

以後、バックスウィングで左踵を上げる動作は"X-Factor"理論に押しやられ、ゴルフ界からほぼ消え去りました。しかし、若い時のTiger Woodsは身体に柔軟性があったのでべた足でよかったのでしょうが、中年以降の彼の度重なる下半身の故障を思うと、両足べったりはかなり身体の負担になっていたと思われます。

[Snead]

'The Anatomy of Greatness: Lessons from the Best Swing in History'
by Brandel Chamblee (Simon & Schuster, 2016, $30.00)

この本の著者Brandel Chamblee(ブランデル・シャンブリー)は、PGAツァーで四勝したプロで、現在はThe Golf Channel(ゴルフ・チャネル)のメインの解説者となっています。彼はJim McLeanの"X-Factor"を「極刑に値する理論」と批難し、われわれゴルファーはBobby JonesやSam Snead(サム・スニード、右の写真)、Byron Nelson(バイロン・ネルスン)、Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)など、身体に優しいスウィングをしていた名人たちのスウィングに回帰すべきだ…と主張します。

「私は今日のトップ・プロたちのスウィングが間違っていると云っているのではない。彼らは下半身の回転不足をとてつもない上半身の動きでカヴァーしようと、身体に不必要な仕事を強制している。脚、腰、腰背部の筋肉は限界までストレスを強いられ、腰背部と腰の障害(ギックリ腰)の原因を作り出す。1980年代に始まったこの流行は、バネを巻くように下半身の抵抗によってトルク(捩りモーメント)とスピードを構築せよ…というものだった。この前提は全く間違っており、その悪影響は30年間続いて、PGAツァーとLPGAツァーのプレイヤーたちから、前世代の遺産(よきメソッド)を受け継ぐことを妨害し、同時に彼らの健康を損なわせている。

身体は巻かれるべきバネではない。抵抗によってトルクを生み出したと思っても、回転不足では解き放つべきエネルギーは充分ではない。『下半身で抵抗せよ』という極刑に値する理論は、アマとプロ双方にこれ見よがしに提供されたのだが、それは作り話に過ぎず、全く無益なものである」

[icon]

[Sadlowski]

その証左としてBrandel Chambleeは、2008年と2009年の世界ロング・ドライヴ・チャンピオンJamie Sadlowski(ジェイミィ・サドロウスキ)のスウィングの写真を提示します。なんと、ロング・ドライヴ・チャンピオンも左踵を高く上げてバックスウィングしているのです(右図)。Brandel Chambleeは「腰を廻すなという理論の信奉者たちは、ロング・ドライヴ・チャンピオンのスウィングを間違っていると云えるのか?」と食って掛かっています。

私は下半身主導のダウンスウィングをする切っ掛けとして、上げた左踵を下ろすのがいいのではないか…という思惑で左踵の研究を始めたのですが、左踵を上げるのが「身体に優しいスウィング」であるというのは魅力ですし、ロング・ドライヴ・チャンピオンも実行しているテクニックであるなら尚更云うことはないと考えます。

Bobby Jonesはグランド・スラム達成直後に引退していますが、それはハリウッドの映画に出るためと、その後には病気のせいであり身体の故障のせいではありませんでした。Sam Snead(1912〜2002)、Byron Nelson(1912〜2006)、Jack Nicklaus、Ben Crenshaw(ベン・クレンショー)ら、身体に優しいスウィングをしていた人々は息長いゴルフ生活をエンジョイしています。われわれも90歳までゴルフをしようと思ったら左踵を上げ下げすべきでしょう。

私はBobby Jonesほどではありませんが、僅かに浮かす程度に左踵を上げるスウィングを始めました。

【参考】
・Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)「左踵を上げるのは最少限にせよ」(tips_169.html)
・サショウ・マッケンジー博士の「ダウンで左足を一気に踏みつけろ」(tips_187.html)
・Harvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)の 「腰の捻転を抑制してはならない」(tips_153.html)


【おことわり:Sneadの画像はhttps://images.squarespace-cdn.com/、Sadlowskiの画像はhttps://cdn.shopify.com/にリンクして表示させて頂いています】

(March 01, 2022)

ツァー・プロはオープン・スタンスを好む

 

Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)はほぼ常にフェードで攻めますから、オープン・スタンスでアドレスするのは理解出来ます。しかし、ツァー・プロのほとんどがオープン・スタンスを好むというのは初耳でした。

[Byron Nelson]

'The Anatomy of Greatness: Lessons from the Best Swing in History'
by Brandel Chamblee (Simon & Schuster, 2016, $30.00)

この本の著者Brandel Chamblee(ブランデル・シャンブリー)は、PGAツァーで四勝したプロで、現在はThe Golf Channel(ゴルフ・チャネル)のメインの解説者です。

「多分、ツァー・プロに関する最も大きな誤解の一つは、ターゲットにスクウェアに構えるということだと思う。これはターゲット・ラインと平行な線路の一方に両足を揃えるという説明として好都合であろう。これを信じてどのクラブにもこの方法を当てはめたら、構えに失敗する可能性が高い。

最近の測定機器のお蔭で、ほとんどのプロが(ドライヴァー以外の)全てのクラブでヒットダウンすることが判っている。クラブが下降しながらボールを打てばクラブヘッド軌道はターゲットラインの右に向かう。これがほとんどのプロがオープンに(ターゲットラインの左に向かって)構える理由である。

Byron Nelson(バイロン・ネルスン、1912〜2006)はその著書'Shape Your Swing the Modern Way'(1976)において『ややオープン・スタンスで狙って構えよ』(右図)とし、『それはダウンスウィングで降りて来る右サイドに左サイドが道を開けるのを容易にする』と云っている。これは長いクラブではさほどでもないが、短いクラブではより重要なポイントであり、(多少の例外を除いて)歴史的に正しい。

正しい軌道を得る以外に、このオープン・スタンスはプロにダウンスウィングでの身体の回転に有利なスタートをもたらす。その回転は打撃の質とスィングのスピードにとってとても重要なものだ。世界レヴェルの名人たちのラグ(レイトヒット)を助けるのは、この回転の速度である。

仮にアドレスで両足がターゲットラインに平行に置かれていたら、あなたはインパクトでターゲットの右へスウィング軌道が向かうことを本能的に察知する。あなたはダウンスウィングで左サイドをクリアしたり急速に回転することが出来ず、軌道が右に向かうのを本能的に修正しようと身体の回転を遅らせ、完璧な手打ちを遂行する。

もちろん、このオープンな構えは両足だけに適用されるものではなく、偉大なプロたちの多くは肩のラインもオープンにする。この構えはダウンスウィングと回転を容易にするための公然の“カンニング”であるが、これは身体の中心から外側へ向かうクラブヘッド・スピードを幾層倍にも増す。

[skater]

両腕を伸ばせば回転は遅くなるが、両腕を身体に密着させると早い回転となる。フィギュア・スケーターを見れば一目瞭然だ。彼らはスピン速度を遅くしたい時に腕や脚を伸ばし、早めたければ身体に近づける。ゴルフも同じで、両腕を身体に引きつける。ダウンスウィング初期に左腕を上体に密着させ、右腕を右脇に近く保つ。これがラグ(レイトヒット)の効果を早期に失うことを防止し、打撃を遅らせスウィングを早め、クラブとボールの正しい接触を生む。アドレスで両足と肩をややオープンにするという単純な行為が、これら全てに測り知れないほどの助けをしてくれるのだ」

[icon2]

左爪先をオープンにするだけでは駄目です。肩もオープンにしないとプッシュします(経験者は語る)。Byron Nelsonのように両方オープンにすると驚くほど真っ直ぐターゲットに向かって打てます。右サイドのパワーのターゲット方向への突進が容易になるせいで、飛距離も伸びます。

【参照】
・Brandel Chamblee(ブランデル・シャンブリー)の 左踵を上げてスウィング(tips_169.html)
・アドレス時の背中の角度(改訂版)(2/01)

【おことわり:スケーターの画像はhttps://wp.dailybruin.com/にリンクして表示させて頂いています】

(March 01, 2022)

Brandel Chamblee(ブランデル・シャンブリー)推奨のグリップ

 

Brandel Chamblee(ブランデル・シャンブリー)は、PGAツァーで四勝したプロで、現在はThe Golf Channel(ゴルフ・チャネル)のメインの解説者。

彼は下記の本で古今の名人たちのスウィング各部の共通項を抽出して、それらの重要性についてわれわれの注意を喚起し、忘れ去られたテクニックにはその復権を試みています。ゴルファーならプロ・アマ問わず誰しも『名誉の殿堂』入りしている名人たちの技を継承すべきである…という彼の趣旨にガッテンです。

'The Anatomy of Greatness: Lessons from the Best Swing in History'
by Brandel Chamblee (Simon & Schuster, 2016, $30.00)

[right] [left]

「Ben Hogan(ベン・ホーガン)の'Five lessons'(邦訳『モダン・ゴルフ』)は、一般大衆に誤解を与えた本であった。彼は自分の病的なフックを防ぐためウィーク・グリップにしたのだが、これはインパクトでクラブフェースをオープンにしてスライスを生むため、フックを患っている人にしか役に立たない代物である。フックなどと縁のない一般ゴルファーは、ストロング・グリップを採用すべきだ。

・左手

人差し指の第二関節から掌の下方の膨らみの下にかけて握る(写真のLeadbetter‘s leftと同じ)。Vの字は右肩を指す。間違って完全に掌で握ると手首の動きの幅を失い、スウィングのトップでクラブの安定性を損なう。

親指はハンドル中央の右寄りに添える。ハンドルの真上に当てると、クラブの重さに負け、手首を凸型にし易い(フックを生む)。

・右手

右手も対称的に先端は人差し指の第二関節に当てるが、後端は小指の付け根に当てる(写真のLeadbetter‘s rightと同じ)。ほぼ指で握ることになる。これが世界的に成功したプロたちのグリップである。

右手の親指はハンドルの真上ではなく、そのやや左側を押さえる。右手のVの字も右肩を指す。

[Jones' grip]

【編註】 上のようにグリップすると、左の写真のようになります。これはBobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)のグリップです。

・グリップ・プレッシャー

スウィング・スピード、ヘッド・スピードはリラックスした状態から生じる。上に述べた正しいグリップをしていれば、自ずと正しいグリップ圧が備わりイーズィにスウィング出来るようになる筈だ」

【参照】
・Brandel Chamblee(ブランデル・シャンブリー)の 左踵を上げてスウィング(tips_169.html)
・アドレス時の背中の角度(改訂版)(2/01)
・ツァー・プロはオープン・スタンスを好む(3/01)

(March 10, 2022)


左踵の研究 Part 2

 

[Bobby Jones]

Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)のヴィデオを見直してみました。図の左の"Top"でお分かりのように、彼はターゲットに完全に背を向け、左肩はボール後方を指しています。肩・胸・腹・腰・脚の全ては、アドレス時から90°も右に廻されてターゲットと逆方向を向いています。

Bobby Jonesの場合は、身体の捻転を助けるために左踵を上げていると云っていいでしょう。左踵を上げないと、ここまで腰は廻りません。彼のスウィングは下半身だけでなく胴体全部を逆転させるパワーでボールを打っている感じです。

これはわれわれ素人が腕の力で打とうとするのと正反対です。「ゴルフは大きな筋肉で打て」と云われますが、Bobby Jonesのスウィングはその見本です。自由の利く小手先で打つとボールは右へ行ったり左へ行ったりしますが、大きな筋肉で打った彼のボールは常に正確にターゲットに向かって飛んだのです。

[Ben]

同じく左踵を上げるスウィングをするBen Crenshaw(ベン・クレンショー)のヴィデオも見てみました。スローモーションで見て判ったのですが、彼は腰の捻転を助けるために左踵を上げているわけではありません。腰の回転がほぼ完了する時点で、やおら左踵を上げているだけなのです。

写真で一目瞭然ですが、完全にターゲットに背を向けているものの、腰は約40°ぐらいしか廻していません。Ben Crenshawは熱心なBobby Jones研究家であり彼を尊敬している人でもありますが、下半身の捻転の度合いはBobby Jonesを模倣していないのです。

Ben Crenshawの体重は腰の右への回転開始と同時に右足に移っていますから、体重移動のために左踵を上げるわけではない。左踵を上げるのは極限まで腰を廻すためでもない。とすると、彼の場合、恩師Harvey Penick(ハーヴィィ・ピーニック)が唱える"Magic move"(ダウンスウィング開始は、左踵を地面に下ろすのと腕を引き下げるのを同時に行う)を実行するための切っ掛けとして左踵を上げているに過ぎないと云えます。

[Tiger]

なぜ左踵を上げるメソッドが廃れてしまったのか。理由は色々あると思いますが、その一つは見た目が雄々しくないということではないでしょうか?両足とも大地から離さず踏ん張ってのスウィングに較べると、左踵を上げるスウィングはなよなよした感じで、何となく女々しい。特にBobby Jonesのバックスウィングはスタンスも狭く両膝がくっつくようなバックスウィングで、ちっとも雄々しく見えません。Tiger Woods(タイガー・ウッズ)のトップと較べるとその差は顕著です。

しかし、私は女々しく見えようが何だろうがなり振り構わず左踵を上げることにしました。Bobby Jonesほど極端ではなく、どちらかと云えばBen Crenshaw程度の上げ方ですが。別にファン・クラブがあるわけでもないので、雄々しく見えなくたっていいのです^^。リズムとテンポさえよければ、ピン傍につくショットが生まれるので、ほくほくしています。

【おことわり:Tiger Woodsの画像はhttp://australiangolfdigest.com.au/にリンクして表示させて頂いています】

(March 10, 2022)

利き目の研究

 

ゴルファーの多くは自分の利き目と利き腕を知っていることでしょう。しかし、その知識をパッティングの時にだけ当てはめていなかったでしょうか?以下はいくつかの記事の要約です。

'This could change your golf game forever: Do you know your dominant eye?'
by John Jamieson ('Golf Digest')

[dominant eye]

「人間は二つのタイプに別けられる。
タイプA:利き目は右、右利き、利き足も右
タイプB:利き目・利き腕・利き足のどれか二つが左
なお、人々の約70%の利き目は右であり、そのうちの80%が右利きである。人々の約24%が利き目も利き腕も左である」

【参考:どちらが利き目か調べる方法】
・左右どちらかの腕を精一杯伸ばし、両目を開けたままその手の人差し指と親指で作った円内に何か物体を入れる。【図参照】
・左目を閉じ、まだ円内に物体が入っているかどうか確認する。
・両目を開け、今度は右目を閉じ、円内に物体が入っているかどうか確認する。もし、否であって物体が円の右にあれば、右目があなたの利き目である【タイプA】。円内にあれば左目が利き目で【タイプB】。

「簡単に云うと、利き目とそうでない目で見るのでは次のような現象が起る。 a) 利き目で見た対象(例:ボール)には焦点が合わされ続ける。 b) 利き目でない方の目で見た対象(例:ボール)は見えなくなる。

それぞれの役割は次のようである:利き目はボールの位置を定め、利き目でない方の目はボールまでの距離を計算する。

タイプAのゴルファーが過剰な動作でバックスウィングすると、利き目はボールを視界から失ってしまうため、利き目でない方の目がボール位置を探そうと努力しなければならない。タイプAのゴルファーはダウンスウィングでボールの新しい位置に補正しつつスウィングしなければならない。

タイプBのゴルファーは終始利き目でボールを見続けられるので、何ら支障を来さず、安定したダウンスウィングを遂行出来る。Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)もTiger Woods(タイガー・ウッズ)も左目が利き目で右利きである。PGAツァー・プロの90%は左右両方が利き目である。

PGAツァーがロングヒッター全盛の時代となった時、タイプAのプロたちの苦難が始まった。バックスウィングのトップで、彼らの左肩が視野を妨げ(ボールが見えなくなる)、John Daly(ジョン・デイリィ)のように打とうとすると悲惨な結果につながったからだ。

[Annika]

幸い、タイプAのプロたちもコーチの助けを借りて充分な成功を収めた。その筆頭はDavid Duval(デイヴィッド・デュヴァル)とAnnika Sorenstam(アニカ・ソレンスタム、写真)である。彼らはタイプAのプロだ。【註:二人とも打ちながらボールを見送るスウィングが特徴】 Jim Furyk(ジム・フューリク)も妙なスウィングをするが、彼もタイプAである。みなショート・ヒッターではないか?と云うと然に非ず。Jon Rahm(ジョン・ラーム)もタイプAだがロング・ヒッターである」

'How your “dominant eye” affects your golf swing, and the proper adjustments'
by Tom Stickney II ('golfwrx.com')

「タイプAのゴルファーは背骨を真ん中に、頭もボールの(右側面ではなく)真上を見下ろすアドレスをする必要がある」

'Jim Suttie: Check your eye dominance for a more consistent swing'
by Dr. Jim Suttie ('archive.naplesnews.com')

「タイプAのプロたちは、短いバックスウィング、不動の頭、体重を左足に移しながらの素早いダウンスウィングをする。Arnold Palmer(アーノルド・パーマー)、Paul Azinger(ポウル・エイジンガー)、Jason Dufner(ジェイソン・ダフナー)などがタイプAで、彼らはインパクト・ゾーンで急速に腰を回転させる」

[Jack] [icon]

アマチュア・ゴルファーの多くがスライサーだというのに、自分がフッカーだったせいでフェードを打つためのグリップを推奨した本を書いたのはBen Hogan(ベン・ホーガン)でした。おかげで彼の言を信じた人々はスライスを量産しました。

Jack Nicklausも、地球上の人間の70%の利き目は右であるということを知らずに、自分の利き目が左だったせいで頭を右に傾げ左目でボールを見るアドレスを自著で詳説しました。これを模倣した世界中のタイプAのゴルファーがミスを犯しました。

どちらも「推奨したわけではない。自分はこうやっているということを書いただけだ」と主張するでしょうが、彼らが超一流だったために皆が真似をしてしまったのです。罪作りな所業でした。

タイプAのゴルファーである私もJack Nicklausのスタイルを真似した時期がありましたが、利き目でない方の目でボールを見ると、ボールの姿がぼやけてしまいます(眼鏡の縁に邪魔されてしまう)。で、彼のスタイルは自分には合っていないことを悟り、真似するのは止めました。しかし、顔は右に傾げないもののやはりJack Nicklaus風にボールの右側を右方から見るアドレスをしていました。上の記事のような「タイプAの人間はボールを真上から見よ」という教えは初耳でした。ボールを真上から見るというのは、云い替えれば「胸骨の前にボールを置く」ことと同じです。

[address]

私の場合、ドライヴァーはボールではなくヘッドの前の仮想ボール(図の青丸)を見つめるのですが、気がつけば実はこの青丸も胸骨の前にあたります。こう考えると、タイプAの人間のボール位置はどのクラブでも胸骨の前とすべきではないかと考えられます。

ラウンドで試してみました。《胸骨の前》は正しい。ハイブリッドでミスしたことはありましたが(ハイブリッドはプルし易いように設計されている)、その他のクラブでは正解でした。

【おことわり】 Annika Sorenstamの画像はhttp://myhome4golf.com/にリンクして表示させて頂いています。

(March 20, 2022)

『プロのようにスウィングせよ』シリーズへの前口上

 

これからお届けする'Swing Like a Pro'(プロのようにスウィングせよ)という本の骨子を紹介するシリーズを「なんだ、また基本かよ…」と馬鹿にせず、心してお読み下さい。かく申す私も、この本の教えによって見違えるように正確なプレイが出来るようになっています。これらの記事を熟読して実行すれば、必ずや飛躍が望めます。

普通、目新しいことを身につけるには多少時間がかかるものですが、既に基本が身についているならば多少の修正・調整で済みますから、数回の練習で充分でしょう。私の場合は数週間かかりましたが。

このシリーズを読んで、「このサイトをフォローしていて良かった」と云って頂けるものと信じています。

'Swing Like a Pro'(プロのようにスウィングせよ)[本の紹介]

(April 01, 2022)

ニュートラル・グリップはなぜいけないのか?

 

17年もかけて100人以上の男女ツァー・プロのスウィングを撮影・分析し、それらの最大公約数をまとめた本のエッセンスを紹介するシリーズのパート1。

ニュートラル・グリップとは、左右の手を対称に握り、両方の親指がハンドルの真上、Vの字がゴルファーの鼻を指すグリップです。Ben Hogan(ベン・ホーガン)やJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)はニュートラル・グリップを推奨していますが、下記の本の著者たちの意見は異なります。シリーズ第一回。

[hands_position]

'Swing Like a Pro'
by Dr. Ralph Mann and Fred Griffin (Broadway, 1998)

「ゴルフ・インストラクションの大多数はいいスウィングのモデルとしてニュートラル・グリップを推奨する。この教えはそれを信じたゴルファーのスウィングをずっと妨害して来た。僅かな人々が成功したものの、そのためにはエヴェレストに登るような苦労を強いられた。ニュートラル・グリップは世界のベスト・プレイヤーの選択肢ではないし、あなたのためのものでもない。

アドレス時、両手は身体のほぼ真ん前に位置する。しかし、インパクト時、両手はアドレス時よりも5インチ(約13センチ)もハンド・ファーストでターゲット方向に先行してボールと接触する。実際にやってみると解るが、クラブフェースがオープン・フェースとなり右を向いてしまう。そこにニュートラル・グリップの問題点がある。

ニュートラル・グリップはスクウェアなアドレスをするために考えられたものだが、インパクト・ゾーンで両手はスクウェアなクラブフェースを支えて維持することが出来ない。インパクトで両手がアドレス時よりも先に出ると、クラブフェースは自動的にオープンになるのである。

【註】図はあるLPGAプロのアドレスからインパクトにかけての変化。両手の位置は身体の右から左へ10センチ以上移動しています。

われわれがスウィングを録画・分析したベスト・プレイヤーたちは、一般に推奨されているニュートラル・グリップよりも強めのグリップを採用しているが、それこそがボールと接触する際にクラブフェースをスクウェアにするために考えられたものだ。ゴルフ人口の85%を悩ませているスライス病とおさらばするための最初の処方は、プロたちのように強めにグリップすることだ。

われわれはヴァードン・グリップを推奨する。これは現在のベスト・プレイヤーたちも採用しているグリップであり、生体力学的に見ても最高のものである。左右どちらもパームでなくフィンガー主体で握る。

[hands]

【左手】
クラブ・ハンドルは左人差し指の第二間接から小指の一番下の間接にかけて横切る(フィンガー・グリップ)。そして掌の右下の膨らみ(赤丸)がハンドルの真上に来るように手を閉じる(もし膨らみがハンドルの真上に来なかったらフィンガーでなくパームで握っている証拠であり、それは不可)。最後に、左手の親指をハンドルのやや右側に置く【←重要】。

【右手】
右手の薬指を左手の人差し指に当てる。クラブ・ハンドルを右人差し指の第二間接から薬指の根元の間接にかけて斜めに握る。右手の生命線(青線)がぴったり左の親指を覆うように右手を閉じる。右手親指をハンドルの左側に当てる。右小指は、左の人差し指と中指の間の谷間に置かれる。

[Jones' grip]

【両手のVの字】
左手のV(親指と人差し指の合流点が形成する皺)は右の耳を指す。右手のVは右肩を真っ直ぐ指す。【写真はBobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)のグリップ】

・ベースボール・グリップ
これは手首の動きを制限し、両手を一体化させるのを妨げるので、最悪の選択肢である。

・インターロッキング・グリップ
Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)などが支持しているものの、アマチュアがこのグリップを用いると、ハンドルを両手のパーム(掌)で握ることになり易い。

・ウィーク・グリップ
スライスを多発する多数派のゴルファーにとって、オープンフェースのインパクトをもたらすウィーク・グリップは最大の敵である。

・過度にストロングなグリップ
スライサーにとっての一時しのぎの手段としては役立つが、これは自由に腕を振る能力を殺してしまい、プルを多発することになる。

[Lee's grip]

・グリップ圧
ドローやフェードを打つ際であっても、グリップ圧をきつくしたり緩めたりしてはならない。スウィングの間じゅうグリップ圧は同一でなくてはならない」

[icon]

私はドライヴァーだけは超ストロング・グリップですが、ハイブリッドとアイアンは全てニュートラル・グリップでした。グリーンやピンを狙う際にはニュートラルがいいだろうと思っていたことと、特にハイブリッドはフックするように設計されているからです。

試みにストロング・グリップでハイブリッドを打ってみましたが、やはりプルが多発します。この本の出版時にはハイブリッドは一般的でなかったのでしょう。私は今後ともハイブリッドはニュートラルで握ることにします。

アイアンではプルは出ないのでストロング・グリップがいいようです。

【参考】
'Swing Like a Pro'(プロのようにスウィングせよ)[本の紹介]

(April 01, 2022)

Swing(スウィング)とhit(ヒット)の違い

 

[finish]

ハイブリッドでもアイアンでも、コンスタントにクラブのスペック通りの距離を飛ばせるコツを発見しました。

切り返しの後、流れるようにフィニッシュに向かうようにスウィングするのです。その際、インパクトのことは考えない。ダウンスウィングからフィニッシュへの途中に、たまたまボールがあって飛んで行ってしまった…と、こういう風に打てると小気味よい打感で望んだ距離にボールが飛んで行きます。

普通、われわれはボールと接触するインパクトに焦点を合わせます。こういう時の想念はインパクトが終点であり、その後のフォロースルーは余勢に過ぎません。これはhit(ヒット)です。

そうではなく、フィニッシュまでを一連の動きと考えるのがswing(スウィング)です。力まずスムーズにインパクトを通過し安定した理想的なフィニッシュのポーズを取る。こうすると勢いのついたクラブヘッドによって適切な飛距離が得られます。力まないので手首が強ばったりせず方向性も良くなります。

山手線の東京がトップとすれば、有楽町(インパクト)で停まるのではなく新橋、いや浜松町まで振り抜くのです。

何回かの素振りでフィニッシュまで流れるような動きを予習します。それを本番で再現すればいいのです。発作的で暴力的ダウンスウィングをすると、飛距離も正しい方向性も得られません。あくまでも流麗なスウィングをするのがコツです。LPGAのプロたちの多くがそうしています。

この考え方とスウィングによってパー3(スリー)でワン・オンすることが多くなりました。嬉しい。

【おことわり】画像はhttps://golfdigest.sports.sndimg.com/にリンクして表示させて頂いています。

(April 01, 2022)

アップライトにアドレスすべき理由

 

17年もかけて100人以上の男女ツァー・プロのスウィングを撮影・分析し、それらの最大公約数をまとめた本のエッセンスを紹介するシリーズのパート2。

[physics]

「インパクトの物理学(トゥ寄りでアドレスすべき理由)」(tips_175.html)は「(ドライヴァー・ヘッドの)トゥ寄りでアドレスせよ」という説で、その証明は右の図のようなものでした。図のシルエット表示がアドレス、写真表示がインパクトです。シルエットの方はクラブへッドのトゥ寄りでボールにアドレスしていることを示しています。写真の方はインパクトですが、よく見るとクラブシャフトがしなっていて、それでもボールをヘッドの真ん中で捉えているのが分かります。これがトゥ寄りでアドレスすべきであるという理論でした。

別な角度から同じ結論に達した理論を紹介します。次の本は17年もかけて100人以上の男女ツァー・プロのスウィングを高速度カメラで撮影・分析して最大公約数を求めた結果を上梓したものです。

'Swing Like a Pro'
by Dr. Ralph Mann and Fred Griffin (Broadway, 1998)

[bending]

「全てのクラブヘッドは僅かにアップライト(トゥが地面から浮くよう)に作られている。手や上体によってアップライトにすべきものではない。理由、以下の通り。

1) ダウンスウィングの段階で、遠心力は左腕とクラブシャフトを引っ張って一直線にしようとする。この力は実際上両手をアドレス時よりも高く持ち上げてしまう。この手の動きはシャフトをも持ち上げるので、結果的にアドレス時にアップライトだったクラブヘッドを地面と平行に置いたのと同じ状態にしてしまう。

2) 高くなる手の位置に加えて、遠心力はまたクラブシャフトを僅かに撓(たわ)めてしまう(左の写真)。この作用は"droop"(下垂)と呼ばれるが、これがさらにクラブヘッドを下向きにする。その結果、クラブのライは、アドレス時より最高で10°も変化する。

これらの変化を相殺するには、アドレスする際にクラブヘッドのトゥが地面から浮くぐらいにアップライトに構えるべきなのだ。そうしないと、あなたのクラブヘッドはインパクトで垂れ下がり、フェードやスライス・スピンの量を増加させてしまう。あなたが多くのゴルファーと同じなら、これは絶対に避けるべきことである」

[Impact] [icon]

結論として、クラブヘッドの真ん中をボールに当ててアドレスしてはいけないし、無理にクラブヘッド(特にドライヴァー)のライを地面と平行にしようとしてもいけないのです。ボールへの正しいアドレスは右図の左のようなものです。心配しなくてもインパクトでは遠心力の作用で図の右のようになります。私は2016年以来ずっとこの方法を用いて真っ直ぐ飛ばしています。

【参考】
'Swing Like a Pro'(プロのようにスウィングせよ)[本の紹介]
・ニュートラル・グリップはなぜいけないのか?(tips_203.html)


(April 08, 2022)

レイトヒットでスコアを減らす

 

[Sergio]

レイトヒット(=レイト・アンコック)は飛距離を増すだけでなく正確無比な方向性をもたらしてくれる強力なテクニックです。私が発見した考え方でレイトヒットを実践していた頃、あるパー4で9番アイアンで打った二打目がチップインし、イーグルを得たことがあります。正確な方向性が得られればスコアが減るという実例です。

しかし、これまでレイトヒットの重要性はさんざん語られ書かれて来たものの、どうすればわれわれ素人がマスター出来るのか具体的な手順は全く見つかりませんでした。

プロの中にはトップからの切り返しの際に再コックして(コックを強めて)クラブシャフトの角度を狭める人がいます。鐘楼の紐を引くように両手を垂直に引き下ろしてコックを保つ人もいます(右図)。どちらも修練の賜物であって、素人にはおいそれと真似出来ない方法です。

[pocket]

私は2000年にFred Couples(フレッド・カプルズ)のスウィングを分析・研究した結果、ある秘訣を発見しました。その発見とは《ダウンスウィングの際、右肘はインパクト直前までズボンの右ポケットを越えてはならない》というものです。【参考:「正確無比なショットの秘訣」(tips_185.html)】これはインストラクターJim McLean(ジム・マクレイン)が雑誌に書いた《右肘がズボンのポケットに入り込もうとする感じ》に先立つ9年も前の発見でした。

私は自信を持って《身体に引きつけた右肘がズボンの右ポケットを越えないようにする》が、レイトヒットを実現するコツであると断言します。「クラブヘッドの動きを遅らせろ」とか、「ダウンで再コックせよ」などと難しいことを教えられるよりも、この動作は具体的で実行しやすい。右肘が右ポケットを越えないということは、下半身(脚と腰)が先行してそれにクラブヘッドが追いつかないということを意味します。「意地でも右ポケットを右肘から逃げ切らせてみせる」と決意すると、信じられないようないいショットが出来ます。

上の手順が完全遂行されると、自然に(副次的に)次のようなことが起ります。左下の写真の円内のように、インパクト直前に右前腕とクラブシャフトが完全に重なるのです。これはFred Couplesだけに見られるものではなく、「ダウンスウィングの研究」(tips_185.html)に写真(下図)を掲載した10人のプロたちのように、一流と云われる人々はみな一様にこの形を見せています。

インパクト直前にクラブシャフトが右前腕に重なるのは、下半身のリード(足・腰の逆転)が遂行されている証明ですが、逆に意識的にシャフトを右前腕に重ねる努力をすると、否応なく下半身でリードしなければならなくなるので、どちらにしてもこの形を追求することはゴルファーにとって有益この上もありません。


[arm] [pros]
[Paul]

と、 以上は真っ当なレイトヒット修得法でした。身につけるには少し時間がかかります。「そんな時間はない!」とおっしゃる御用とお急ぎの向きにふさわしい方法もないではありません。

下のヴィデオのインストラクターPaul Wilson(ポール・ウィルスン)は"lag"(læg、レァグ)と呼んでいますが、この言葉は“レイトヒット”と同じことで、両手とクラブが身体の動きに遅れて追随するという意味です。彼は『二分で身につくレイトヒット』と豪語しています。二分で理解出来るのは確かですが“身につく”かどうかはゴルファー次第。私が試したところ、ろくに練習もしないのに驚くほど真っ直ぐ飛び、しかもいい飛距離が得られました。

彼の理論は簡単至極、「左肘を曲げていいから、②トップで地面と水平にしたクラブシャフトで首を叩け(右図)」というものです。実際にシャフトで自分の首を打つのです。結果的にコックが最大になります。「そのトップを作ってからボールを打つ。自信がついたら次第にシャフトを少しずつ首から離していく」というプロセスで常識的なスウィングに変えて行きます。「左肘を曲げていい」とか「首を叩く」とか云うと、上級者は「何だ、そりゃ?」と眉を顰(ひそ)めるでしょう。しかし、結果オーライなのですから「邪道だ!」と決めつけることは出来ません。事実、このYoutubeヴィデオの下には感謝のコメントがわんさと届いています。

この方法を用いる際、注意すべき点がいくつかあります。
・左肘は曲げていいとしても、左手首は左側であろうが右側であろうが絶対に折ってはいけないということです。左手首は真っ平らに保持すること。首に向かって手首を凸型に曲げると盛大なプルになります。伝統的なグリップではクラブ・ハンドル右側に左手親指先端の左側を当てますが、そのポイントに圧がかかるようにコックすれば間違いありません。こうしないと方向が滅茶苦茶になりますので御注意。
・「シャフトで首を叩け」なんて云われると脳味噌は手の動きに集中しがちですが、スウィングはあくまでも全身運動であることを忘れてはいけません。左肘を曲げた楽なスウィングだからといって、手打ちでいいと誤解しないように。
・あくまでも下半身主導のスウィングをすべきです。【参照】Magic Move(魔法の動作)でスコアを減らす(tips_203.html)
・飛距離を得ようと慌てふためいて急速にスウィングする必要はありません。腕とクラブシャフトの角度が飛距離を保証してくれるのですから、大船に乗ったつもりになればいいのです。

もしうまくいけば、これはシニアが飛距離を増す最適の方法と云えるでしょう。実はこれに似た方法を、私がプレイするシニア・グループの若手(と云っても60代)の一人がやっていて、飛ぶ時はベラボーに飛ぶのですが方向が全く安定しないという症状を呈していて、私は日頃それを見ながら苦々しく思っていました。この方法はその彼のスウィングにそっくりなのです。私は、彼のトップでクラブヘッドの跳ねるような切り返しが方向性を損なう原因ではないかと考えていました。そうではなく、実際には彼のトップでの手首が真っ平らでなかったからのようです。

 

上のどちらの方法でもいいので、レイトヒットをマスターして楽しくスコアを減らしましょう^^。

【おことわり】最初の画像はhttps://lh3.ggpht.com/にリンクして表示させて頂いています。

(April 08, 2022)

アドレスで決まるショットの成否

 

[Jin Young Ko]

下記の本は17年もかけて100人以上の男女ツァー・プロのスウィングを高速度カメラで撮影・分析して最大公約数を求めた結果を上梓したものです。協力したプロとしては、Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)、Arnold Palmer(アーノルド・パーマー)、Greg Norman(グレッグ・ノーマン)、Davis Love III(デイヴィス・ラヴ三世)、Tom Kite(トム・カイト)、Bobby Clampet(ボビィ・クランペット)、Brandel Chamblee(ブランデル・シャンブリー)など百数十名。シリーズのパート3。

'Swing Like a Pro'
by Dr. Ralph Mann and Fred Griffin (Broadway, 1998)

「・ボール位置
正しいボール位置はスタンス前方(ターゲット側)である。ドライヴァーは左足の内側で、9番アイアンに至るまで少しずつ後方(右側)に移動する。9番アイアンのボール位置はドライヴァーの3インチ(約8センチ)後方である。伝統的にはショート・アイアンはスタンスの中央と云われて来た。しかし、われわれが分析したベスト・プレイヤーたちはその伝統に従っていない。【編註:ハイブリッドで初心者用にフック・フェースで設計されているものは、スタンス前方のボール位置だとフックが多発します。ハイブリッドの癖に合わせる必要があります】

[Open stance]

オープン・スタンス
左爪先をターゲット方向に25°開く。右足はほぼ真っ直ぐだが、左足より僅かに前に出す(オープン・スタンス、右図赤線)。これはバックスウィングでの腰の捻転を制限するので、バックスウィングでの最大の捻転をすべきだと教えた伝統的インストラクションに反するものだ。しかし、プロたちは最大のパワーはバックスウィングではなく、ダウンスウィングの回転で加えるべきだということを発見した。オープンにした左足はダウンスウィング→インパクト→フル・フィニッシュへの動きを容易にしてくれる。

[reverse K]

肩もオープンに構える
肩もターゲットラインよりもやや左を向く(右図黄線)。これはハンドファーストに構えるのを容易にし、バックスウィングとダウンスウィングの適切な回転をお膳立てする。【編註:両足と肩をオープンにしても、クラブフェースはターゲットを向いていなければならない】

背骨を右に傾ける
背骨を僅かに右へ傾け、左肩より低くする。この角度をトップまで維持すれば、ダウンスウィングの開始にあたって腰がいち早く先行している状態を作ることが出来る。このポスチャーは、Kの字を左右反対にしたように見えるので“逆Kのアドレス”と呼ばれる(左図)。

背を自然に曲げる
ゴルファーは背骨を真っ直ぐ伸ばせと教えられるが、これは悪い助言である。背骨は何ヶ所か(特に上体と背中)で自然に曲がるものなのだ。肩を前に垂らして丸まった猫背はゴルフに最適のものである(右下図)。猫背から自然に垂れた両手は、クラブを身体の前で掴むことを容易にする。

[shoulder]

腕の角度と位置
左腕はワイドなスウィング弧を確実にするためほぼ真っ直ぐに、右手は肘のところでややゆったり構える。そのため飛行線後方から見ると、右腕の向こうに左腕が見える。

スウィングのゆとりを持たせるため、プロはドライヴァーでは肩の中心(腋の下)からクラブの末端を5センチ離して構える。9番アイアンは腋の下の直下である。

拇指球で立つ
両足に均等に体重を配分するが、左右どちらも拇指球(親指の付け根の膨らんだ部分)に体重をかける。これは終始バランスを適正に保つために不可欠である。

右膝を内側に押す
プロたちの秘密の一つは、右膝をターゲット方向に押すことだ。これはダウンスウィングでの右へのスウェイを防止し、体重を両足の内側に保つ。この動きはまた切り返しの後で腰の左への動きを助けてくれる」

[icon]

前に紹介したBrandel Chamblee(ブランデル・シャンブリー)の本'Anatomy of Greatness; Lessons from the Best Golf Swings in History'のいくつかの部分は、この'Swing Like a Pro'のイタダキですね。「背中を丸めよ」「右膝を内側に押せ」「ツァー・プロはオープン・スタンスを好む」など、全部20年前に出版されたこの本に書かれていたことですから。とはいえ、この'Swing Like a Pro'という本の存在を教えてくれたという点で、私はブランデル・シャンブリーに感謝していますが^^。

【シリーズ目次】
'Swing Like a Pro'(プロのようにスウィングせよ)[本の紹介]
・ニュートラル・グリップはなぜいけないのか? (tips_203.html)
・アップライトにアドレスすべき理由 (tips_203.html)

(April 16, 2022)

パー3に乗せる

 

ここのところ、パー3(スリー)でワン・オンする確率が増えています。あるラウンドでは四つのパー3のうち三つでワン・オン出来ました。

[par 3]

別に変わったことはしていないのですが、備忘録として現在の方法を書きとめておきたいと思います。

・クラブを身体の前に突き出し、水平から45°にした時にリーディング・エッジがスクウェアであることを確認する。

・「Swng(スウィング)とhit(ヒット)の違い」(04/01)で述べたように、インパクトを終点として焦点を合わせるのではなく、インパクトを越えてさらにフィニッシュへと向かう一連の流れるようなスウィング動作をすべく、何度か素振りを繰り返す。

・スウィング軌道はインサイドに引き、フォローで左肩が目標(ピンその他)に向かう《インサイド→スクウェア》のスウィングをする。【註:バックスウィング軌道は体型によって異なります。参照:「体型別スウィングでスコアを減らす」(tips_203.html)】

・左肩で目標(ピンその他)を真っ直ぐ狙ってアドレス。「このホールはよくプッシュするから」とか「プルしがちだから」などという過去は無視して目標を狙う。

・クラブフェースは目標を狙ったまま、両足と肩をオープンに構える。

・手首を柔らかく維持し、フィニッシュまで力を入れないよう努力する(手・腕の力でなく身体でスウィング)。

左肩が目標を指すようなフィニッシュを心掛ける。=《インサイド→スクウェア》のスウィング。

もちろん、グリーンに乗る適切なクラブ選択が必要です。上に述べたスウィングはパワーを使わないので、私の場合ピンまでの距離よりは長めのクラブを使う必要があります。

【おことわり】画像はhttps://ichef.bbci.co.uk/にリンクして表示させて頂いています。

(April 16, 2022)

正しいバックスウィングの手順

 

[Minjee Lee]

17年もかけて100人以上の男女ツァー・プロのスウィングを撮影・分析し、それらの最大公約数をまとめた本のエッセンスを紹介するシリーズのパート4。

'Swing Like a Pro'
by Dr. Ralph Mann and Fred Griffin (Broadway, 1998)

「・最初の体重移動
アドレスが完了した時、両腕と肩を結ぶ線で三角形が出来る。手が右ポケットに到達するまではその三角形を崩すべきでない。つまり腕の動きを最少限にすることだ。

テイクアウェイが進行し、クラブシャフトを地面と平行にすると同時に体重が右足に乗ったと感じるまで身体全体(腰、肩、頭)を右に動かす。この動きはたったの2インチ(約5センチ)の水平移動である。頭も動かさないと体重を右に移すのが困難になり、リヴァース・ピヴォット(左に逆Cの字に反っくり返る)になりがちである。

最初のターン
クラブシャフトが地面と平行になり体重が右足に乗ったら、身体の捻転を始める。右脚を回転軸とし、単純に腰、上体、肩を一体としてボールから遠ざける。回転であって、もはや横移動をしてはいけない(さらに横移動するとスウェイになってしまう)。

[Jing Young Ko]

左腕を伸ばし、ワイドなスウィングを心掛ける。捻転が進行したら、もう両腕を独立して動かしてよい。最後まで腕と身体の動きを一体化しようなどとすると、スライスの原因となる。

クラブフェース
バックスウィングの間中、クラブフェースはターゲットラインに対しややクローズであるべきである。これはヴァードン・グリップの機能の一つであり意図して行うことではない。正しいグリップをしていてワンピース・テイクアウェイが実行されていれば、フェースはスウィングの間じゅう自然にややクローズになる。

コック
コックはクラブの重さへの反応として自然に開始されるが、クラブが垂直になって以後意識的に行う

速度
われわれが研究材料としたプロたちのテイクアウェイ〜トップまでの所要時間は0.9秒であった。これはダウンスウィングの四倍であるが、アマチュアの多くが認識するよりはずっと早い。よく云われる《バックスウィングはいくら遅くてもよい》という理論は間違いだ。あまりにもゆっくりバックスウィングしてはいけない。バックスウィングはアスリートの動きであり、正しく遂行されるべき勢いが必要である。

《要約》
バックスウィングの動きは"Shift then Turn"(体重移動してから回転)と覚えること。これを念仏のように唱えて練習すべし」

【シリーズ目次】
'Swing Like a Pro'(プロのようにスウィングせよ)[本の紹介]
・ニュートラル・グリップはなぜいけないのか? (tips_203.html)
・アップライトにアドレスすべき理由 (tips_203.html)
・アドレスで決まるショットの成否 (tips_203.html)

(April 24, 2022)

チップする時、どちらの目でボールを見るべきか?

 

このtipは、The Golf Channel(ゴルフ・チャネル)の『ゴルフの学校』の先生Martibn Hall(マーティン・ホール)によるものです。

[Martin]

'Play Like a Pro'
edited by David DeNunzio (Time Home Entertainment, 2013, $29.95)

「チップショットのアドレスをする際、人々は致命的なミスを犯す。多くのゴルファーが首を右に傾け右目を地面に近づけてアドレスする。この過ちは距離のコントロールを難しくするだけでなく、ボールとのソリッドな接触を台無しにしてしまう。

この問題を解決するには、首を反対側に傾け左目を5〜7センチほど地面に近くすべきだ。このシンプルな変更は自然に体重をターゲット側に移し、左手の甲でターゲット方向を狙うことを推進する。

首をターゲット側に傾げ、左目でボールを見るようにすると、左右の肩の高さが地面と平行になり、これはチッピングに望ましいポスチャーとなる。この体勢だとやや下降気味の軌道で、クラブフェースと地面の間でクリーンにボールを挟みつけてヒットすることが出来る。初心者風の上昇軌道による掬い打ちとはおさらばである」

[icon]

このtipは左目が利き目の人には何ら問題ないでしょうが、私のように右目が利き目だと悪影響があるやも知れぬ…と右目アドレスと左目アドレスで交互にチップしてみました。短時間の練習では、どちらもあまり変わらない感じでした。

しかし、確かに右目でボールを見ると、肩が左上がりに傾斜し、掬い打ちになる危険があります。これは悪くするとダフりに繋がるので避けたいところです。そういう意味では左目アドレスに慣れる方がいいのかも知れないと考えています。

(April 24, 2022)

スウィングのトップで為すべきこと

 

[Tiger]

17年もかけて100人以上の男女ツァー・プロのスウィングを撮影・分析し、それらの最大公約数をまとめた本のエッセンスを紹介するシリーズのパート5。

'Swing Like a Pro'
by Dr. Ralph Mann and Fred Griffin (Broadway, 1998)

「スウィングのトップは動きが少なくチェックし易いので、ゴルファー当人やインストラクターが頻繁にチェックするが、完璧なトップを形成したからといって素晴らしいプレイが出来るものではない。しかしながら、トップの体勢はショットの成功に重大な影響を与える。

『プロ的切り返しをせよ』(次回)で述べるように、クラブがトップに達した時、腰は既にインパクトに向かって逆転しているべきものだ。

トップで正しい位置に置かれたクラブは実質的に軽くなるため、最速のスピードでダウンスウィング出来、理想的な軌道で振ることが可能になる。

先ず第一に、スウィングのトップはいかにグリップ、アドレス、バックスウィング、そして切り返しの要素などを正しく遂行したかを見極める手段として用いるべきである。それらが適切なら、この時点で身体やクラブを調整することなく、自然に良い位置のトップに収まる筈だ。どれかの要素に欠点があれば、それがトップで露呈する。

[Brooke]

《スクァットする》

いいプレイヤーたちのトップで最も目立つのは(そして最も見過ごされているのは)トップでのスクァット(しゃがみこむ)体勢である。飛行線後方から見た時、体重は右踵へと移り、左右の膝はアドレス時の柔軟性を保っている。バックスウィングで右腰が胴体下部と脚を伴って背後に回転すると、大部分の体重も自然にそれに伴って右踵に移ってその上で回転する。これが目一杯の正しい回転である。その時、ゴルファーは腰掛けにスクァットする感覚を得る。

トップで起り得る傾向は伸び上がろうとする姿勢で、これはダウンスウィングでボールを打つために沈み込むことを余儀なくさせる。ちいちゃなボールを長いクラブを用いて時速100マイル(45m/s)で打とうという際に、目を上下させてはコトを難しくするだけである。

スクァットは頭を静止させるだけでなく、テニス、野球など全てのスポーツでも見られる胴と脚によるパワフルな爆発をお膳立てする体勢である。ゴルフのトップでは次の点に留意する。

[Ko]

・頭と上体はほんの僅か下に動く。
・右腰と尻は後方に回転する。
・体重は右踵に乗る。

《右膝の柔軟性を保つ》

体重を右踵に移し、上体を少し下げるためには、アドレスでセットされた右膝の柔軟性の度合いを維持しなければならない。

【ドリル No.1】スウィングのトップで停止し、その時右膝の柔軟性が増しても減ってもいないことをチェックする。トップで右脚を真っ直ぐ伸ばしてしまうのは危険なミスである。

【ドリル No.2】スウィングのトップで停止し、苦労せずに右爪先を地面から浮かせられるかどうかチェックする。バランスが保たれていれば、右爪先を上げることが可能な筈だ。

[shaft]

《シャフトの方向》

トップでクラブシャフトはターゲットを指すべきであり、これが基本である、だがドライヴァーではややターゲットの右を指し(図のC)、ショートアイアンでは僅かにターゲットの左を指す(図のB)。

【シリーズ目次】
'Swing Like a Pro'(プロのようにスウィングせよ)[本の紹介]
・ニュートラル・グリップはなぜいけないのか? (tips_203.html)
・アップライトにアドレスすべき理由 (tips_203.html)
・アドレスで決まるショットの成否 (tips_203.html)
・正しいバックスウィングの手順 (tips_203.html)

(May 01, 2022)

プロ的切り返しをすべし

 

[Lee]

17年もかけて100人以上の男女ツァー・プロのスウィングを撮影・分析し、それらの最大公約数をまとめた本のエッセンスを紹介するシリーズのパート6。

'Swing Like a Pro'
by Dr. Ralph Mann and Fred Griffin (Broadway, 1998)

「アドレスからバックスウィングまでの基本は、一旦取り組む決意をして記憶すれば一般ゴルファーにとっても容易なものである。しかし、切り返しの動作は少し複雑であり、世界レヴェルのゴルファーと一般ゴルファーとを劇的に隔てる要素である。

一つ例を挙げれば、クラブがトップに達した時点で、腰は既にインパクトに向かっているのである。腰はオープン、肩は未だにクローズ。これを達成しなければならない

上体、肩、腕がバックスウィングを完了する一瞬前に、腰にリードされた下半身がターゲットの方向に回転を開始する。胴体から腕までの筋肉は伸ばされ、凄い速度と強さを生むためにぴんと張り詰める。

ターゲット方向への下半身の動きが、上体を逆転させるための堅固な基盤を構築する。下半身の前方への最初の動きが、上体への連鎖反応を引き起こして正しい軌道でクラブを移動させる。

[Oh]

切り返しの主な目的はパワーを生むことだが、もう一つの効果として正しいスウィング軌道をも生み出す。ゴルファーがスライスを打つ主な理由は、上体とクラブが降りて来る前に下半身が邪魔にならないように下半身をクリアしておかないからである。下半身が邪魔をするとアウトサイド=インのスウィングしか出来ないので、スライスを生む。切り返しは、初期の段階で身体をターゲット方向に移しながら、邪魔物を取り除いてしまう。

切り返しは、スウィングのトップでクラブヘッドがボールから遠ざかる動きをも生む。この動きはクラブヘッドを自動的にダウンスウィングでのインサイド=アウトサイドの軌道に乗せる。

一般のゴルファーにとって、まだバックスウィングが完了していないのに下半身を逆転させることを学ぶのは、とてつもないことであろう。理解するのも大変なのだから、実行するのはなおさらだ。お勧めは、ベスト・プレイヤーのスウィングを目の前で見ること、彼らのスウィングをヴィデオで見ること、そして以下に述べるドリルを実行することだ。

【野球式切り返しドリル】
1) ショート・アイアンを手に、普通にアドレスする。
2) バックスウィングしながら全身を右側に移す。両肩も右足の上に。
3) クラブが垂直になった時点で、左踵を右踵にカツンと当て、肩と腕がバックスウィングを完了している間に、左腰と左脚を(地面を擦らずに)ターゲット方向に駆り立てる。パワフルな胴の筋肉が肩の回転を停め、腕とクラブをダウンスウィングに引っ張る感覚を得る筈だ。
4) 胴と腕の筋肉を伸ばしてダウンスウィングする。切り返しを急いではならない。パワーが構築されインパクトへ向かうのを感じ取ること。

[takeaway]

【重いクラブで切り返し】
練習用の重いクラブでもいいし、ドーナツ型の錘をクラブに嵌めてもよい。
1) バックスウィングでクラブシャフトが地面と平行になった時点(左図)で一時停止。
2) ゆっくりスウィングを再開し、全身の動きでトップへと向かう。
3) クラブが垂直になった時、クラブを腰→肩→腕の順で逆転させる。
4) 切り返しが完了したら、スウィングを継続し、勢いのままにフル・フォロースルーへと向かう。

《切り返しで起る諸問題》
・ボール位置がスタンス後方だと切り返しが困難になる。
・ウィーク・グリップだと切り返しが困難になる。
・体重を左に移さないと切り返しが困難になる。
・下半身を動かさないで上体でダウンスウィングすると切り返しが困難になる」

【シリーズ目次】
'Swing Like a Pro'(プロのようにスウィングせよ)[本の紹介]
・ニュートラル・グリップはなぜいけないのか? (tips_203.html)
・アップライトにアドレスすべき理由 (tips_203.html)
・アドレスで決まるショットの成否 (tips_203.html)
・正しいバックスウィングの手順 (tips_203.html)
・スウィングのトップで為すべきこと (tips_203.html)

(May 08, 2022)

手打ちを防ぐ簡単なコツ

 

「あ、いけね。手打ちをしちゃった!」という場合、単に「次のショットでは注意しよう」と考えるだけではうまくいきません。手打ちは悪性の病気なので、症状はそう簡単には消えてくれないのです。下半身主導でスウィングしようと考えるのは正しい方針ですが、二、三回素振りをしたぐらいでは身体に定着しません。【←経験者は語る】

どうすべきか?「トップの間(ま)」を使うのです。トップで一瞬の間を置き、クラブヘッドがボールに戻ろうとする動きを待つ。重力がクラブヘッドを引き戻す動き。それを察知した瞬間左膝で体重を左方(ターゲット方向)に移す。完璧な下半身主導のスウィングの実現。手打ちよ、さらば。

ある日のラウンド。私の手打ちの症状は三ホール続き、上の「トップで間(ま)を置く」をその後三ホールで自分に強制しなければなりませんでした。その後は意識することなく下半身主導でスウィングが出来るようになり、手打ちは消滅しました。

手打ちは、クラブに備わった飛距離性能を目一杯使おうとか、クラブの限界以上に飛ばそうとする際に起きがちです。あるいはライのせいでボールを宙に浮かべることに自信がなく、結果的に掬い打ちしちゃう場合とか…。ゆとりを持って打てる長いクラブに換えるとか、斜面に平行にスウィングするなどの智恵を使う必要があります。

 

【参考】
・「Butch Hamon(ブッチ・ハーモン)の手打ち防止法」(tips_92.html)
・「手打ち防止法」(tips_143.html)
・「手打ちの解剖学的考察」(tips_143.html)

(May 08, 2022)

ダウンの開始で右肘を引き下ろせ

 

[down swing]

17年もかけて100人以上の男女ツァー・プロのスウィングを撮影・分析し、それらの最大公約数をまとめた本のエッセンスを紹介するシリーズのパート7。

'Swing Like a Pro'
by Dr. Ralph Mann and Fred Griffin (Broadway, 1998)

「巷間『飛距離と正確性は両立せず、片方を選べば片方が犠牲になる』と云われる。これは真実に基づいているものの、実はトップ・クラスのゴルファーたちのジレンマに過ぎない。一般ゴルファーにとっては両立するのである。

多くのゴルファーがダウンスウィングの動きを良くしようと非常に熱心に努力するが、問題はそこにあるのではない。アドレス、グリップ、バックスウィング、切り返し、あるいはお粗末なトップなどが、ダウンスウィングを効果の無いものにしているのだ。

バックスウィングで体重は右足に乗る。

ダウンスウィングで腰を急速にターゲット側に廻す。この時のターゲットにオープンになった腰と、まだターゲットに背を向けている背中との組み合わせは、正確なショットを打つという観点において極めて重要である。

[Jin_Young Ko]

肩が回転する前に、クラブ軌道をフラットにする(=低くする)。右肘を身体の右側に近づける(左のアニメ参照)。クラブは振り上げたバックスィングとは異なる軌道で動く。クラブ軌道をフラットにするのは全てのトップクラスのゴルファーに共通する要素であり、自動的にインサイドからのインパクトへの道筋と、スクウェアなクラブフェースとを生み出す。これは正しく切り返しを行えば、結果として起ることである。

右足を蹴って(浮かして)体重を完全に左足に移す。両腕がインサイドからボールに向かうのを助けるため、腰をターゲットに向かって追いやる必要がある(=両手の邪魔をしないように道を空ける)。そうしないと両腕とクラブは腰に行く手を阻まれて立ち往生してしまう。【編註:チキン・ウィングになり易い】

身体の右脇を擦るように近づけられた右肘は、まだ折られたままである。そのため、左手との間に“窓(空間)”が開いている。これはインパクトまでパワーが蓄えられている証拠である。

《ダウンスウィング軌道の諸問題》

・上図ののようにクラブをダウンスウィングで落下させないと(フラットな軌道にしないと)、アウトサイドからの軌道でボールと接触するため、プルかスライスを生む。
・急激なアウトサイド・インのスウィングだと、最も有害なプル・スライスを生む。
・ローハンデのゴルファーによくあることだが、アウトサイドから急激にインサイドの軌道でスウィングするとフックを生ずる。
・フラットな軌道にしたのはいいが、それがあまりにもフラットだとインサイド過ぎる角度からのインパクトとなるため、右へ出て左にカーヴするボールを生む。

[Brooke Henderson]

【右手一本でのドリル】
5番アイアンを右手一本で、しかもシャフトに近い部分を握る。左手は背中に廻しておく。イーズィなフル・スウィングの素振りをし、インパクトで停止し、以下の諸点をチェックする。
・右手はボールに先行してターゲット寄りに位置していなければならない。
・右踵は地面から浮いていて、右脚は膝の柔軟性を保ち、左脚は伸ばされていなければならない。
腰はターゲット方向に45°の角度でオープンになっていて、肩はターゲットラインに平行でなければならない。
・体重の90%は左サイドにかかっていなくてはならない。
チェックポイントの全てを満足させることが出来たら、実際にボールを打つ。正しく遂行されれば、両手で打つのとほぼ同じ距離を打てる筈だ。

【クラブ軌道をフラットにするドリル】
クラブシャフトをフラットにするのは、原因ではなく結果である。切り返しが正しく行われ下半身が正しく用いられていれば、結果としてシャフトはフラットになるものだ。
・どのクラブでもいいので、そのハンドルの末端に空いている穴にティーを刺す。正面から見てシャフトが垂直になるまでバックスウィングして一時停止。ティーは両爪先を結ぶ線とボールの間の一点を指しているべきだ。
・スウィングを継続しダウンスウィングとなってまたクラブシャフトが垂直になった時点で一時停止。シャフトが正しくフラットになっていれば、ティーはボールの遥か向こうの正面を指している筈だ。
・実際にボールを打ってみる。この際も、ダウスウィングでティーがボールの遥か向こうを指していることを心に描くこと」

[icon]

小柄な身体なので意図的にオーヴァー・スウィングをするBrooke Henderson(ブルック・ヘンダースン、カナダ、写真右上)のトップからの手の落差は凄い。右肘を身体の右脇にがくんとくっつけるように下降させています。下半身は僅かにターゲット方向に廻っていますが、頭の位置は変わらず、左肩もまだ大きく右には廻っていません。

[Lydia Ko]

Lydia Ko(リディア・コゥ、ニュージーランド、写真右)のアニメを御覧下さい。ダウンスウィングの最初は腰が逆転したあと肩や両手を逆転させるのではなく、クラブを下降させているだけです。ダウンの最初は右肘が身体の右脇に向かって引き下ろされるだけで、左肩はボールを向いておりまだターゲット方向には回転していません。しかし、腰は早くもターゲットラインと平行からオープンへと推移しつつあります。ダウンスウィングの最初は手・腕を廻すのではなく、下降させるだけである…というのが、今回学ぶべき骨子です。

[icon]

このtipは即効性があります。これを習い立ての頃、以前と同じように打っていたためドライヴァーもアイアンも方向がバラけていました。「ダウンで右肘を身体につける」を思い出して実行した途端、ボールは狙ったところへ真っ直ぐ飛ぶようになりました。

【シリーズ目次】
'Swing Like a Pro'(プロのようにスウィングせよ)[本の紹介]
・ニュートラル・グリップはなぜいけないのか?(tips_203.html)
・アップライトにアドレスすべき理由(tips_203.html)
・アドレスで決まるショットの成否(tips_203.html)
・正しいバックスウィングの手順(tips_203.html)
・スウィングのトップで為すべきこと(tips_203.html)
・プロ的切り返しをすべし(tips_203.html)


(June 04, 2022)

パターの種類と構え方の相性

 

パターにはバランスをとった時に、図のように1) フェースが水平になるもの("face-balanced putter")と、2) 斜めになるもの("toe-weighted putter")とがあります。

[putters]

'The right putter for you' by Mike Adams
from 'The Best Instruction Book Ever!--Expanded Edition'
edited by David DeNunzio (Time Home Entertainment Inc., 2012, $29.95)

「あなたのパッティング・スタイルがボール位置やパッティング軌道を決定するのではない。逆に、パターのデザインがパッティング・スタイルを決定するのだ。

Aタイプ(シャフトがヘッドの真ん中に埋め込まれているか、二重に曲げられている型)のパターはストレート・バック、ストレート・スルーのパッティングをするように設計されている。Bタイプのパターはオープン・バック、クローズのフォローをするように設計されている。だから、パターに合ったストロークをするか、あなたのストロークに合ったパターを選ぶか、どちらかである。

《Aタイプ》のストローク
・両腕は肩から直接ぶら下がるように
・両目がターゲットラインの真上になるように腰を屈める
・ボール位置はスタンス中央のややターゲット寄りで、パターヘッドは鼻の真下
・肩をシーソーのように動かしてストレート・バック、ストレート・スルーのパッティングをする。この動きを身につけるには、クラブを一本両脇の下に挟んでターゲットラインと平行にし、そのクラブと両腕で構成される三角形を崩さないようにストロークする

《Bタイプ》のストローク
・ボール位置は左脇の真下
・目はターゲットラインの内側(身体近く)にし、腰を伸ばして立つ
・両手は両肩を結ぶラインの前に出す
・両手は両腕より前に出ているので、パターを自然にインサイドに引くことになる。流れるように弧を描く動きを妨害しないことが鍵である。そのためには、左腕一本でスウィングする練習を行う。スウィング・ドア(前後に開き、手を離すと自然に閉まるドア)の動きを模倣するのがよい

(June 04, 2022)

飛距離に必要な角度は45°である

 

[Jamie Sadlowski]

下記の本は17年もかけて100人以上の男女ツァー・プロのスウィングを高速度カメラで撮影・分析して最大公約数を求めた結果を上梓したものです。協力したプロとしては、Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)、Arnold Palmer(アーノルド・パーマー)、Greg Norman(グレッグ・ノーマン)、Davis Love III(デイヴィス・ラヴ三世)、Tom Kite(トム・カイト)、Bobby Clampet(ボビィ・クランペット)、Brandel Chamblee(ブランデル・シャンブリー)など百数十名。この本のエッセンスを紹介するシリーズのパート8。

'Swing Like a Pro'
by Dr. Ralph Mann and Fred Griffin (Broadway, 1998)

「ゴルフ界で良く知られている用語に"retaining the release angle"(リリース角を保つ) というのがある。その意味は、「左腕とクラブシャフトによって形成された角度を保て」というものだ。【編註:同じことを“レイト・ヒット”と云ったり"lag"(ラグ)と云ったりする】これはクラブヘッド・スピードと飛距離を生む能力に決定的な役割りを果たす。

[Minjee Lee]

原則:角度が鋭角であればあるほどダウンスウィングの間にリリース角を長く保て、ボールを遠くに飛ばせる。多くの人々が、急な角度とそれを最後まで保つには強い力が必要だと考える。詰まるところ、プロの長距離打者たちが400ヤードかそれ以上を打てるのはそのせいだ。しかし、一般ゴルファーに飛距離が欠ける主な理由はパワーの欠如ではない。どちらかと云えば、彼らが持っているパワーの使い方およびセッティングのお粗末さと、彼らが生み出すことが可能な角度の不適切さによるものだ。

【右上の写真は2008年と2009年の世界ロング・ドライヴ・チャンピオンJamie Sadlowski(ジェイミィ・サドロウスキ、1988〜 )のダウンスウィング。彼の角度は驚異的です】

多くのゴルファーの最も一般的なパワー喪失の原因は、ダウンスウィングにおいてあまりにも早くリリース角度を失ってしまうことだ。彼らのクラブヘッド・スピードは時期尚早に無駄に消費され、インパクト時にはほとんど残っていない。さらに悪いことには、リリース角を失なうその傾向はクラブヘッド・スピードを遅くするだけでなく、ボールにクラブヘッドが不適切な角度で到達する原因を作り、擦るような打撃によって飛距離を損なう結果となる。

ボールを遠くに打つには、Ben Hogan(ベン・ホーガン)やTiger Woods(タイガー・ウッズ)のようにリリース角度を維持する必要はない。われわれが全てのゴルファーに処方する角度は、並の強靭さと筋肉運動の作用を備えた人なら誰にでも達成出来るものだ。それは《ダウンスウィングで左前腕が地面と平行になる瞬間に、シャフトと左前腕が少なくとも45°でなければならない》というものだ。スウィングのこの時点において、この角度は特筆すべきポイントである。この角度は、主に下半身がターゲット方向に動くことによって狭まるのだ」


[icon]

[Bobby Jones]

この本はスウィングを各段階に別けて、プロたちのスウィングの最大公約数を解説し、アマチュアにもそれを実現出来るドリルを掲載しているのですが、なぜかこの《45°を形成せよ》にはドリルがありません。“誰でも達成出来る”と大見得を切った以上、ドリルも添えて欲しかった…。怨めしや。

鏡の前で練習してみました。トップまでに充分コックし、(トップで手・腕は置き去りにし)下半身主導で切り返しを行えば左前腕が地面と平行になった時、クラブシャフトはほぼ45〜50°ぐらいの角度になります。中級者の私としてはこれで満足すべきではないかと思っています。【右の写真はBobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)】

「レイトヒットでスコアを減らす」(tips_203.html)で紹介したインストラクターPaul Wilson(ポール・ウィルスン)の「左肘を曲げてもいいから、トップで地面と水平にしたクラブシャフトで首を叩け」というメソッドがかなりの飛距離を生むのも、最大限コックされて45°(あるいはそれ以下)の角度になるからでしょう。

【シリーズ目次】
'Swing Like a Pro'(プロのようにスウィングせよ)[本の紹介]
・ニュートラル・グリップはなぜいけないのか?(tips_203.html)
・アップライトにアドレスすべき理由(tips_203.html)
・アドレスで決まるショットの成否(tips_203.html)
・正しいバックスウィングの手順(tips_203.html)
・スウィングのトップで為すべきこと(tips_203.html)
・プロ的切り返しをすべし(tips_203.html)
・ダウンの開始で右肘を引き下ろせ(06/04)


(June 12, 2022)

パットの秘訣・再発見

 

ここのところ、パッティングが低迷していました。グリップ、ボール位置、目の位置、呼吸法…などを変えてみましたが、いずれも効果なし。

[Robin and Pooh]

試みに、昔考えた「重力まかせのストローク」(tips_155.html)をやってみたところ、これが大成功。説明しますと、バック・ストロークのトップで重力の作用でパターヘッドが自然に元の場所に戻ろうとする動きを待つ、その動きが感じられたらそれに合わせるようにフォワード・ストロークを行う…というもの。

重力の動きに合わせるので、重力との二人三脚のストロークと考えます。この方法の良さは人間の手・腕が主役ではなく重力との共同作業なので、手首が捩じれたりせず、人間が発作的に強く打ったり弱く打ったりすることも防げます。方向性は抜群、距離感もぴったりになります。

この方法を採用した後半のハーフは13パット、3(スリー)オーヴァーでした。

その次のラウンド。No.1で5メートルが難なく入り、寄せワンのパー。No.7(パー3)ではティー・ショットが1.5メートル左横についたのを沈めてバーディ。後半はパット数13、ワン・ラウンドの合計パット総数は28。アウトでトリプルがあったため惜しくも8オーヴァーで、目標の7オーヴァーは達成出来ませんでした(;へ;)。さらにその次のラウンドでは、前半パット数12、後半15の総数27でしたが、ダボが二つもあったため9オーヴァーでした。

(June 12, 2022)

2秒でスウィングせよ

 

17年もかけて100人以上の男女ツァー・プロのスウィングを撮影・分析し、それらの最大公約数をまとめた本のエッセンスを紹介するシリーズのパート9。

'Swing Like a Pro'
by Dr. Ralph Mann and Fred Griffin (Broadway, 1998)

われわれの研究で発見された驚くべき新事実の一つは、スウィング全体がいかに急速なものかということである。長い間、スウィングというものは長く、ゆったり、そして慎重なものであるべきだと云われて来た。しかし、プロたちのスウィングは平均するとアドレスからインパクトまではたったの1秒なのだ。フォロースルーにプラス1秒。全体で計2秒しかかからない。

プロたちのスウィングを分析すると、インパクトに達するまでの時間は、最も遅い人の場合でも最も速い人よりたった1/2秒長いだけだった。

[Lydia]

一般ゴルファーの問題点は、生まれつき身に備わったテンポを見つけられないことだ。彼らはスローモーションでクラブを動かしてコントロールしようとする。この範疇のゴルファーには、プロがスウィング全体を完了しても、まだバックスウィングの1/3にも達していないという現象が珍しくない。

【形態模写ドリル】

模範としたいプロのヴィデオをテープ(あるいはDVD)に録画する。いくつか異なるアングルからのショットが得られればベスト。【編註:あなたの体型に似たプロが望ましい。YouTubeにも沢山ヴィデオが溢れています】
・そのヴィデオを五回繰り返し見る。
・目を閉じ、そのプロのスウィングを心の中で再生する。プロの身体の動きというより、全体的なフィーリング(滑らかさ、タイミング、テンポ、リズム)に集中する。
・そのプロになり切って、プロのテンポとリズムを模倣しながら同じように素振りする。
・何度も繰り返し、潜在意識にその素晴らしいスウィングを刷り込む。
・心の中で同じテンポを再現しながら、五個のボールを打つ。
・机に向かっている時もソファに座っている時も、心の中でいいテンポのスウィングを再生する。繰り返すプロセスが大切。

【メトロノーム・ドリル】

メトロノームを2秒にセットする。練習場で9番アイアンを手に、通常のアドレスをする。目を閉じ、2秒のビートに耳を澄ます。最初のビートでスウィングを開始し、二拍目でフィニッシュ。もし、そのビートがあなたの自然な感覚とズレていれば、調節する。だが、1.5秒より速くしたり、2.5秒より遅くしないこと。

【編註】https://www.youtube.com/watch?v=gSmf7W3DUjs このサイトは1秒に一回音と光を出します。一拍目でトップ、二拍目でダウンスウィングで、「2秒でスウィング」を練習出来ます。iPhone用には'Smart Metronome & Tuner'というのがあり、60にセットすると1秒ごとに音を出します。練習場で使うのにもってこいです。

快適なテンポを見つけたら、目を開けてボール無しでスウィングする。そのテンポを飲み込むまでに時間がかかるかも知れない。だが最終的にはそのテンポに慣れるだろう。

そのテンポに慣れたらボールを打つ。最初はメトロノームの音を聞きながら、次はメトロノーム無しで。何回か練習したら、そのテンポが自然に感じられるようになる筈だ。

9番アイアンで快適に打てるようになったら、長いクラブに移る。だが、何も変えてはいけない。どのクラブでも同じテンポで打つこと。

[Crane]

常に2秒で練習を開始するが、その日の気分でインターヴァルを調節してみる。もし、同じ成果が得られたら、あなたは自分のテンポを発見したのだ。われわれの経験から云って、あなたのスウィングが向上したら、テンポも早まっている筈だ。

どうすれば良いスウィング・テンポを構築出来るかは、次の四つの基本動作の遂行如何にかかっている。
1) テイクアウェイでの右への体重移動(Shift
2) クラブシャフトが地面と平行になった時点で右サイドへ回転(Turn
3) 切り返しで左への体重移動(Shift
4) 体重移動と共に左サイドへ回転(Turn
これらが正しく遂行出来れば、切れ目なく流れるようにスウィングすることが容易になる。"Shift"そして"Turn"と声を出して唱えながら練習するとよい。(1)に集中してボールを10個打ち、次いで(2)に集中してさらに10個打つ。全体では"Shift-Turn-Shift-Turn"となる。この練習によってタイミングが急速に改善されることだろう」

[icon]

この記事は目一杯の力で打つというよりも、速いテンポで打つことが飛距離を伸ばす秘訣であることを教えてくれます。私は長い間1-2-3(ワン・トゥー・スリー)というゆっくりの三拍子でスウィングしていたので、「2秒でスウィングする」というのは大変なチャレンジです。しかし、試みに1-2(ワン・トゥー)と早く振ってみたらベラボーに飛んだので(当社比)驚きました。常にその恩恵に与りたいと思い、只今スウィング・テンポを改造中です。

【シリーズ目次】
'Swing Like a Pro'(プロのようにスウィングせよ)[本の紹介]
・ニュートラル・グリップはなぜいけないのか?(tips_203.html)
・アップライトにアドレスすべき理由(tips_203.html)
・アドレスで決まるショットの成否(tips_203.html)
・正しいバックスウィングの手順(tips_203.html)
・スウィングのトップで為すべきこと(tips_203.html)
・プロ的切り返しをすべし(tips_203.html)
・ダウンの開始で右肘を引き下ろせ(06/04)
・ 飛距離に必要な角度は45°である(06/12)


(June 12, 2022)

長いショットはスコーンと、短いショットはバシッと打つ

 

ある日のラウンドで、上の見出しのような方針でプレイしてみました。

・長いショットはスコーンと打つ

ドライヴァーのように出来るだけ遠くへ打ちたいショットだと、われわれは力を振り絞ってバシーッと打とうとします。しかし、目一杯の力で打とうとすると、身体は強ばり、インパクトでボールを見ることすら忘れ、暴力的な勢いを得ようとします。これがうまく行くとしたら奇跡です。

強打・猛打ではなく、小気味のよいスコーンという快打を打とうとすると、スウィートスポットで打ったお蔭でボールは意外に飛ぶものです。より遠くへは飛ばないまでも、大きな失敗は生じません。

ドライヴァー・ショットはそれだけで完結するものではなく、次なる第二打への布石に過ぎません。どっちみち、われわれには400ヤードは打てないのです。距離が増してもせいぜい5ヤードか10ヤードでしょう。ドラコンでもない限り、5ヤードや10ヤードの差はどうでもいいことであって、第二打のクラブが短くなるか長くなるかだけの違いです。そうと分れば、フェアウェイの真ん中にスコーンと第一打を放つのが賢明というものでしょう。

・短いショットはバシッと打つ

短いショットだとトップやホームランを恐れ、われわれはつい穏やかで撫でるようなショットをしがちです。しかし、ピッチ・ショットやチップ・ショットを成功させるには、スピンをかけてボールを宙に浮かべねばなりません。スピンはヒットダウンして、クラブフェースのグルーヴ(溝)でボールの表層を噛みながら駆け上がらせる必要があります。撫でるようなスウィングだとグルーヴはボールを噛まずスピンがかかりませんし、ボールは期待した軌道を描いて飛ばず、必要な距離も得られません。

 

短いショットこそバシッと打つべきなのです。もちろん、ボールと地面の接点にクラブのリーディングエッジを打ち込むか、ボールを押し潰す努力が必要です。それなくしてはダフってチョロしたり、トップしてホームランになる恐れがあります。"eye-hand coordination"(アイ=ハンド・コーディネーション、目と腕の協調作業)をベースにした集中力による精緻なテクニックが必要です。

《長いショットはスコーンと、短いショットはバシッと打つ》というのは逆説的めいているかも知れませんが、これはゴルフをする上で非常に重要な心構えではないかと思います。

これを実践した初日、全てがうまく行ったわけではありませんが、ドライヴァー、ハイブリッドによるショット(長いショット)の多くはミスはなく、どちらかと云えば成功でした。短いショットをバシッとは打つとスピンがかかり過ぎてややショート気味になります。

(June 20, 2022)

前頁 ← | → 次頁


 Copyright © 1998−2022   Eiji Takano    高野英二
[Mail]
 Address: Eiji Takano, 421 Willow Ridge Drive #26, Meridian, MS 39301, U.S.A.