Golf Tips Vol. 201

Byron Nelson(バイロン・ネルスン)の叡智

 

'The Match'という本を再読して、Byron Nelson(バイロン・ネルスン)の偉大さに改めて驚かされました。で、当家にある以下の本をもう一度読んでみました。自然に私の目は、目下のテーマである「左膝がリードするダウンスウィング」について書かれているところへ吸い寄せられました。【この箇所について以前に紹介した全文は「ダウンスウィングの正しい連鎖反応」(tips_173.html)を御覧下さい】

[Byron]

'Shape Your Swing The Modern Way'
by Byron Nelson with Larry Dennis (Golf Digest, 1976)

「ダウンスウィングを正しくスタートさせる鍵は左膝である。左膝は、バックスウィングの間に右へ横移動する。ダウンスウィングは、いまだ柔軟さを保っている左膝を左方向に水平に戻すことで始めるべきだ。この動きは左踵を固定し、脚と下半身を左にスライドさせ、左サイド全体と、一組となった腕・手とを引っ張るパターンを確立する。

腰が左へ動くにつれ、右膝はボール方向に動き、右肩を正しく下方に動かす。体重は右踵の内側から左踵の外側へと動く(そこは体重のフィニッシュ地点でもある)」

図でお判りのように、彼のダウン・スウィングの最初の一歩も「左膝をターゲットに向けて動かす」ことで、それに連れて右膝も左に動き、腕・手を引っ張り下ろすわけです。左膝の動きに連動して、右肘が下りて来ているのが分かります。

最近、ラウンド中にこの「左膝がリードするダウンスウィング」を予習するいい方法を発見しました。通常のスタンスではなく、両足をくっつけて素振りするのです。両足がくっついていると、ダウンスウィングのスタートは左膝を左に動かすしかありません。否応なく左膝が牽引車になります。この素振りを数回繰り返してから本番に移ると、ピュアなショットが生まれます。

次に私の関心はByron Nelsonのパッティング・メソッドに向かいました。

パッティングの秘訣は、絶対に左手首を折らないことだ。絶対にパターヘッドに両手を追い越させてはいけない。もしこれに反すると、パターフェースはオープンになったりクローズになったりし、プッシュやプルを招くことになる。【参照:「パットでもFLW(固定した左手首)(tips_159.html)】

もう一つの秘訣。それはパットではバックストロークでもフォワードストロークでも、パターヘッドを上げてはいけないということだ。特にショートパットではラインに沿って低くパターを動かすべきであり、それによってしっかりボールを打つことが出来る。フル・スィングでもそうだが、クラブは低い軌道で動かすべきなのだ。【参考:「続・ストックトンの技法」(tips_10.html)】

ロングパットではパターを低く動かしてはいけない。そんなことをすると、身体を引っ張ってしまうことになる。自然にパターが上がるに任せるように。

リズミカルにパットすること。これはあなたがパッティング・ストロークに組み入れることが出来る最も重要な要素だ。

『ネヴァー・アップ、ネヴァー・イン』は悪しき格言だ。カップで息絶えるように打たれたボールなら、カップの上下左右あらゆる角度から転がり落ちる可能性がある。落ちなかったとしても、膝がガクガクするような距離が残ることはない。カップを通り過ぎるように強く打たれたボールは、カップから上の難しいラインを残し、プッシュやらプルやらを生じ易い。もっとも、4フィート(約1.2m)までの短いパットは、しっかりカップの向こうの壁に当たるように打つことが望ましい。これはラインを易しくする。

距離感を養うための長いパット練習ははいいが、それを入れようとする練習は、失敗の連続によって自信の喪失に繋がるだけだ。練習は1〜2メートルの範囲から成功させることを主眼とすべきだ。難しいラインを選んではならない。それも自信を喪失させるだけだからだ」

Byron Nelsonの「長いパットではなく、1メートル前後の練習をせよ」は中部銀次郎のパット練習に関する考え方と共通しています。【参照:「中部銀次郎のゴルフ・パット篇」(tips_118.html)】

【参考】
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)の長いコースの攻略(tips_64.html)
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)の牧場が買えるゴルフ(tips_66.html)
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)の左の壁は忘れよ(tips_66.html)
・モダン・ゴルフの祖Byron Nelson(バイロン・ネルスン)(tips_88.html)
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)のスコアをよくする効率的練習法(tips_168.html)
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)の 曲がってもいい、常に一定のスウィングをせよ(tips_168.html)
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)のモダン・ゴルフを生んだ妻(tips_168.html)
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)のバイロン卿の垂訓(tips_169.html)
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)のバンカー・ショット(tips_169.html)
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)の Hit(ヒット)でなく、打ち抜くべし(tips_169.html)
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)の パワーを生むのは、よいテンポである(tips_171.html)
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)の 現実的ゴルファーであれ(tips_172.html)
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)の ダウンスウィングの正しい連鎖反応(tips_173.html)
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)の 伸び上がらず、低く留まれ(tips_173.html)
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)の スウィングの鍵は少ないほどよい(tips_178.html)
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)の勝利の秘訣(tips_186.html)
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)のプレイ速度に注意せよ(tips_192.html)
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)の 上手い人はオープン・フェースでフックを打つ(tips_195.html)

(February 02, 2021)

Butch Harmon(ブッチ・ハーモン)のチッピング

 

[Butch]

'Chipping 101'
by Butch Harmon ('Golf Digest,' Issue 7, 2020)

「グリーン近くからのチッピングにアマチュアが自信を持てないのは、以下の二つの理由からだと考える。その二つを解消しようではないか。

1) ボール位置
チップ・ショットをする多くのゴルファーのボール位置はあまりにもターゲット側に寄り過ぎている。チップ・ショットはヒット・ダウンすべきなのだから、ボールはスタンス後方であるべきだ。私は右爪先の前のボール位置を推奨する。それを定めてから、左足を開く。体重は左足に乗せる。

2) ボールとの距離
一般的ミスは、フル・スウィングのように長くクラブを握り、腕を伸ばすことだ。そういうアドレスでは、バックスウィングはインサイドに引かれ、クラブフェースがオープンになってしまう。インパクトでこの辻褄を合わせるのは容易なことではない。クラブを数センチ短く持ち、ボールに近く立ってクラブシャフトをもっと立てるべきだ。こうすれば、ストレートに引き、ストレートに打ち抜くスウィングが可能になる。クラブフェースは終始ターゲットに向いているから、望んだ通りの結果が得られる」

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Butch Harmon(ブッチ・ハーモン)はどのクラブを使ってのチッピングしているのか明らかにしていません。写真で見る限り8番アイアンぐらいのロフトのクラブを使っているようで、ボール軌道も低く出ています。

試してみましたが、私がボールを右爪先前におくと60°ウェッジでさえ低く出てランが多く、私にとっては飛び過ぎました。これからチッピングを学ぼうというゴルファー、あるいは低い軌道のランニング・アプローチの習得にはいいかも知れませんが、そうでなければ一考すべきです。

(March 15, 2021)

Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)のチッピング

 

'Bobby Jones: How I Play Golf'
performed by Bobby Jones (DVD compilation (c)2012 TCM, distributed by Warner Home Video, 2012)

Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)のヴィデオを見ると、一本のクラブで色んな距離を処理するのでなく、先ず宙を飛んでグリーンに届かせ、そこからカップまで転がす度合いに応じて4番アイアンから9番アイアンのどれかを選択します。グリーンに近く、カップが遠ければ4番アイアンでピッチ・アンド・ランをします。

短い距離ではあるが、屈んだ姿勢でなく、ロング・パットする時のように楽に伸び上がったポスチャー。ボール位置は右爪先の前方(これはブッチ・ハーモンと同じです)。

グリーンまで12メートルなら5番アイアンを選びます。

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私は50ヤード以内は60°ウェッジ一本槍なので、Bobby Jonesから叱られそうです。グリーンまでの距離+ランの距離でクラブを変えるというメソッドは理解出来るのですが、砲台グリーンが多い私のコースではそう簡単に計算出来ません。バンカーに守られたグリーンも九つもあるので、転がしは使えません。ボールを上げるとなると、どうしてもウェッジです。

(Mach 15, 2021)

Byron Nelson(バイロン・ネルスン)の3(スリー)パット

 

[Byron]

'The Little Black Book'
by Byron Nelson(The Summit Publishing, 1995, $20.00)

「私が参加した1935年メトロポリタン・オープンで、私のパットはお粗末だった。私は3パットを15回、4パットを一回した【編註:4ラウンドの合計だと思われます(当然ですが^^)】。この頃はコース毎に芝が異なっていたのだが、私のパッティングに関してはそれは問題ではなかった。問題は私だった。

たまさかの3パットは避けられない。しかし、3パットをしょっちゅう繰り返すようなら、あなたは二つの分野で研鑽を積む必要がある。1) 短いパットの練習、2) ラグ・パット(寄せるパット)の練習。後者はボールを打つ強さに関連する。

あなたがどんなブレイク(切れる度合い)に直面したか、どれだけ上手くラインを読めたか…などはどうでもよいことだ。正しい強さで打たれなければ、パットの成功は望めない。ブレイクするパットでは、ボールがカップに近づくとき転がりを遅くさせねばならない」

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Byron Nelson(バイロン・ネルスン)は「カップで息絶える」ようなパットを推奨します。正しい強さで打つことを強調するのはそのためです。

【おことわり】写真はhttps://i.pinimg.comにリンクして表示させて頂いています。

(March 21, 2021)

●<Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)のパッティング・2

 

この本は、Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)が新聞・雑誌に寄稿した8年間分の記事を網羅したものです。彼自身は、「これはインストラクション・マニュアルではなく、自分が半世紀にわたるゴルフ人生で学んだ到達点である」と云っています。

[Bobby]

'Bobby Jones on Golf'
by Bobby Jones (Broadway Books, 1966, $18.95)

「スタンスやポスチャーをあまりにも注意深くセットすると、スムーズにボールを打つための動作の自由度が失われかねない。だが、次のようないくつかのセッティングは正しく行われるべきである。

1) 屈み込むことなく、かなり直立気味に立つ方がいいのだが、だからといってあまりにもボールの近くに立つのはよくない。ボールの真上に目を置くというセオリーに異を唱えるわけではないが、それよりもっと大切なのはスムーズでコントロールされたストロークを達成することだ。ボールに接近し過ぎると手と腕を自由に前後出来なくなり、スムーズなストロークを妨げてしまう。想定したラインの外にパターヘッドが出ないよう、充分ボールから離れて立つべきである。

2) アドレスでボール位置をスタンス前方(ターゲット方向)にすることも重要である。そうすれば、ボールをターゲットライン上で払うようなストロークが出来る。ボールを右足近くに位置させると、ストロークは“払う"というより叩いたり突いたりになり、気楽さと有効性とを共に失ってしまう。左爪先の前あたりにボールを置いた時にのみ、カップに向かってボールを打ち抜くことが可能になる。パターヘッドはバックストローク、フォワードストロークのどちらでも地面に近く保たれるべきだ。繰り返すが、正しいパッティング・ストロークは突いたり鋭く叩いたりするのではなく、払う動作なのである。

3) 意識的に身体を動かすのは危険であるが、身体を不動にしようと努力すべきでもない。ストローク動作中、筋肉の完全な弛緩状態が望ましい。パットの距離が長くなれば、手と腕だけではなく身体の助けが必要なのは明らかだ。他のショット同様、右足に体重を乗せ続けてはならない。身体の一部だけ使うのではなく、身体全部を一緒に用いるべきだ。

覚えておきなさい。先ずどこへボールを転がすかラインを決定したら、そのラインにボールを乗せる以外のことを考えてはいけない。

頼りになるパッティング・ストロークを身につける最良の練習法は、カップを狙わないでボールを転がすことだ。グリーンや絨毯の上にいくつかのボールを落とし、それを打ちながら行ったり来たりする。カップを狙わないことでラインを見つける必要もなく、パターの動かし方に注意を集中することが出来る。

ボールを叩いたり、突いたりしようという考えを捨てよ。実際のところ、ボールがそこにあるということを忘れるべきだ。あなたの目的はパターヘッドを振ることであり、それを伸びやかに遂行することだ。

アッパーに打つとかオーヴァースピンをかけるとかいった馬鹿げた考えも忘れよ。通常の打ち方で打てばスピンはかからない」

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[Bobby]

'The Greatest of Them All: The Legend of Bobby Jones'
by Martin Davis (The American Golfer, 1996, $60.00)

この本はBobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)の写真を集めて目一杯掲載した豪華本です。グランドスラムを頂点としたBobby Jonesの一生を振り返る内容なので、技術的なことは最後の最後に僅かしか触れられていません。テクニックに関してはBen Crenshaw(ベン・クレンショー)が解説しているのですが、新旧の写真と共にとても示唆に富んだ解説です。以下はBen Crenshawの文を要約したもの。

「Bobby Jonesがグランド・スラムを達成した頃のパッティング・スタイルは、図のようにほとんど両足の踵をくっつけたスタンスで、足をややオープン気味にし、屈まず伸びやかに立っている。

しかし、彼のもっと若い頃はこうではなかった。両足の間隔はやはり狭かったものの、握り拳一つ分ぐらい離れていたし、爪先もオープンではなかった。大きな違いは彼が屈み込んでいたことだった。Bobby Jonesは生まれながらのパット名人ではなかったことが判る。彼は研鑽によってパット名人となったのだ」

私も両足をくっつけてパットしてみましたが、別に目新しい効果はありませんでした。私のパットは右へ出るミスが多いので、クローズ・スタンスを試してみました。悪くはないのですが、凄くよいわけでもありません。長く特訓しないと、本当の効果は判らないでしょうが。

【参考】「Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)のパッティング」(tips_173.html)

【おことわり】写真はhttp://www.myusualgame.com/にリンクして表示させて頂いています。

(Mach 21, 2021)

アイアンをヒット・ダウンすべき理由

 

'The facts of attack'
by Ron Kaspriske ('Golf Digest,' issue 3, 2020)

「『あなたが以前8番アイアンで届いたグリーンに、6番アイアンを抜くようになったら“攻撃角度"を再考すべきだ』と、ゴルフ・クラブ研究所々長のGene Parente(ジーン・ペアレント)は云う。『いいアイアン・ショットを打つにはヒット・ダウンすべきである』

[Byron]

彼はロボットが打つスウィング速度を80 mph (36 m/sec)と92 mph(41 m/sec)に設定し、ボールに対し三つの攻撃角度でテストを行った。その結果、一般的ツァー・プロがボールを打つマイナス7度の角度(下降軌道)だと7番アイアンで10〜23ヤードキャリーが増し、ラン込み合計26ヤード増であった。他の攻撃角度は、アマチュアに一般的なマイナス1度とプラス2度だった。

ジーン・ペアレントは云う、『7番アイアンを36 m/secで、しかもマイナス7度(下降軌道)で打てば、プラス2度(上昇軌道)で打つよりもキャリーで10ヤード増す」その10ヤードは低く飛び、スピン率が低いので正確度も増す。

インストラクターBobby Clampet(ボビィ・クランペット)は昔から生徒にアイアンではヒット・ダウンし、ボール前方(ターゲット方向)10センチの地面を打つべきであると教えている。それこそツァー・プロがやっていることであり、彼らが7番アイアンで200ヤード超打つ理由なのだ。『彼らの7番アイアンは、アマチュアの4番アイアンみたいなものだ』とボビィ・クランペットは云う。

ジーン・ペアレントは次のような事実も発見した。プラス2度とマイナス1度の攻撃角度は、ターゲットに対し約5度の範囲内でアウトサイド→インサイドのスウィング軌道で打つことになる(=軌道がばらつく)。それに反し、マイナス7度だと3度の範囲内でインサイド→アウトサイドの軌道となる(=軌道はより正確)。

ボビィ・クランペットは云う、『腕で打つのでなく、身体の回転によってインサイド→アウトサイドで打とうとすれば、かなりの程度ヒット・ダウン出来る』」

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ある日のラウンドのNo.2(パー4)の二打目で、ヒット・ダウンすることに努力してみました。6番アイアンによる打感は良かったのですが、弾道がかなり低く出たため「あ、こりゃグリーン・オーヴァーしたな」とガックリ。ところが行って見たらピンの先1.5メートルについていました。ヒットダウンすると方向性がいいというのは本当です。残念ながらバーディ・パットには失敗してしまいましたが…。

No.5(パー4)の二打目でもヒット・ダウン。7番アイアンで打ったボールは、グリーン手前のバンカーに入ったように見えました。ところが、グリーンから転げ出てピンまで20ヤードの芝の上に届いていました。低めの弾道のお蔭です。難なくパー。

その次のラウンドのNo.3(227ヤード、パー4)の第二打、ピンまでの距離は70ヤード。私のデータベースによってピッチングウェッジを選び、ボビィ・クランペットが云うように(手・腕でなく)身体の回転で打つことに努力しました。あわやチップインのイーグルかと思われたほど正確に飛んだボールは、カップの20センチ先につき、イーズィ・バーディ。

【参考】
・「インパクトの研究」(tips_112.html)
・「インパクトの研究(練習篇)」(tips_131.html)
・「インパクトの研究(ドリル篇)」(tips_176.html)
・「なぜディヴォットが取れないのか?」(tips_131.html)

【おことわり】図はhttps://www.golfdigest.com/にリンクして表示させて頂いています。

(April 01, 2021)

Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)の 切り返しの極意

 

Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)が新聞などへのコラム用に1927〜1935にわたって執筆した記事に、イラストレーターAnthony Ravielli(アンソニィ・ラヴィエリ)の挿画をつけて出版する企画が持ち上がりました。Anthony Ravielliはゴルファーだっただけでなく、解剖学など科学的な知識もあり、絵画のユニークな技法と正確無比な描写でも知られていました。彼の出世作はBen Hogan(ベン・ホーガン)と組んだ'Ben Hogan's Five Lessons' (1957)(邦訳:『モダン・ゴルフ』)でした。

Anthony RavielliはBobby Jonesと何度も打ち合わせをし、下絵も見せました。Bobby Jonesはイラストにいくつか細部の修正を示唆し、正確な記述を期してテキストの書き直しもしました。Anthony Ravielliは章別けから各ページのレイアウトまで担当し、全力を投入しました。Bobby Jonesは前書きで「これは絵本である。この本はAnthony Ravielliの本と云え、この本が成功するとすれば、それはひとえに彼の説得力のあるアートワークの賜物である」と述べています。

[transition]

'The Basic Golf Swing'
by Bobby Jones, illustrated by Anthony Ravielli (Doubleday & Company, Inc., 1969)

「バックスウィングがトップに達して、スウィングは方向転換をする。だが、バックスウィングとダウンスウィングの間に一時停止という動作はない。可能な限り、バックスウィングとダウンスウィングは一つの動作として溶け合わさるべきものだ。

だから、この方向転換の一瞬は非常に重要なポイントである。この時点で全ての悪いショットが生まれる。ゴルファーの手が数センチ前方に動いたり、彼の頭の角度が数度ターゲットに向かうだけで、手の施しようがないほどショットは台無しになる。プロにとってさえこの時点は危険な一瞬なのだ。

いかにバックスウィングが完璧でも、もし両手、両腕、あるいは肩が下降を開始してしまったら、クラブは即座に身体の動きによる道案内を失い、腰と背中の捻転によって蓄えられた筋肉のパワーをも失ってしまう。

全てのフル・スウィングに共通だが、両手とクラブがまだ後方に向かっている間に胴体が逆転を始めるべきだ。この動作の順序は二つの重要な結果を達成する効果を及ぼす。先ず、腰の回転がダウンスウィングをリードし、胴体の逆転によって生成されるパワーをクラブヘッドに伝えられることだ。

等しく重要なのは、手首のコックを完了させる効果である。これはクラブヘッドがまだ上昇中に腰の逆転によって手首が引っ張られることで成し遂げられる。ダウンスウィングが開始する際、ゴルファーはクラブヘッドをトップで置き去りにする感覚を得るべきである

(April 01, 2021)

「トップで置き去り」の快感

 

Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)の本を読んでいて、「トップでクラブを置き去りにする」というレイト・ヒットの秘訣に再会しました。この「トップで置き去り」という手法は、もう十数年前から知っていたのですが、最近の私は忘れていました。

このところ、その実行に励んでいます。実行出来ると、ボールは恍惚となるほど真っ直ぐターゲットに向かって飛んで行きます。「こういうことだったのか!」今になってやっと「置き去り」の真意が理解出来ました。ゴルフは奥深く、簡単には会得出来ないものですね。

過去数ヶ月、トップに達したら左膝の逆転でダウンスウィングを始める…ということに執着していたのですが、その方法でも手とクラブが早期に下降し始めてしまってはレイト・ヒットになりません。レイト・ヒットはトップで形成した手首のコックを保ち、同時にボールに対してスクウェアな角度も保ちます。そして、最後の最後にインパクトでコックを解放することによって、ボールをヒットダウンします。それら全てがボールの方向性を正確にする助けとなります。これがレイト・ヒットの御利益です。

最初はワン・ラウンドで一回か二回、「置き去り」が実行出来た程度でした。その回数が徐々に増えつつあります。「置き去り」の快感を知ると、「もっと、もっと!」と思いますが、今のところ全てのショットで実現出来るまでには至っていません。

「置き去り」に固執するあまり手・腕の動きを硬直させてしまうと、オープン・フェースでインパクトを迎えてプッシュしたりシャンクしたりしてしまいます。「置き去り」技法にこだわり過ぎて、ボールを凝視するのを忘れるとトップしたりします。きつ過ぎないグリップ、リラックスし自分に固有の《遅過ぎず速過ぎない》テンポでスウィングする必要があります。

ある日の練習ラウンド、No.1の出来がお粗末だったので、No.2(275ヤード、パー4)では心を引き締めてプレイすることにしました。その甲斐あって第一打はフェアウェイ中央へ。急な上りの残り130ヤードは、私には24°ハイブリッドを7センチほど短く持って打つ距離。ライは左足下がりなので、打ち上げるのは楽ではありません。

 

左へ飛ぶのなら問題ないのですが、右へ逸れると急な崖下となります。私はBobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)が云う「レイト・アンコック」を試してみました。彼はボールをヒット・ダウンすることが精確なショットには不可欠だと説いています。それを実現するには、トップで手・腕を置き去りにする感じで下半身主導のダウンスウィングを行う必要があります(=レイト・ヒット)。私にとってバックスウィング完了前に下半身がダウンスウィングを始めるというのは、ちと慌ただし過ぎて実行不可能なので、バックスウィングのトップで一呼吸置くことにしました。

トップで手・腕を置き去りにした感じで下半身からダウンスウィングすると、打った当人が信じられないぐらいボールはストレートに飛びました。驚くべき効果です。

実際には、ボールはピンから6メートルぐらい下についていて、バーディは無理でした。しかし、イーズィ・パーが得られました。クラブ選択とそれを持つ長さを調節する必要があります。

同じことがNo.8(260ヤード、パー4)でも起りました。第一打があまり飛ばなかったので、第二打の残り130ヤードは21°ハイブリッドを2.5センチ短く持って打つ距離。私の目にはピンが遠くに見えたので、クラブをやや長めに持ちました。ここでもトップで手・腕を置き去りにすることを主眼にしてスウィング。これまた驚くほど真っ直ぐ飛びました。しかし、クラブをやや長めに持ったのが災いし、ピンを8メートルもオーヴァーしていました。レイト・ヒットを心掛けると飛び過ぎるようです。

(April 01, 2021)

Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)の 正しいタイミング

 

'Secret of the Master'
edited by Sidney L. Matthew (Sleeping Bear Press, 1996, $22.00)

これは'The Best of Bobby Jones'(ベスト・オヴ・ボビィ・ジョーンズ)と銘打たれた、ボビィ・ジョーンズのいくつかの著書から抽出したtipsをまとめた本です。

「ゴルフの最も重要な特色ある部分について説明したり理解することが非常に難しいのは、大変不幸なことである。われわれはよいタイミング、まずいタイミング、タイミングの重要性などについて話すけれども、タイミングとは何なのかその意味をハッキリさせられる人は一人もいない。初心者は『タイミングが悪いからショットが台無しになっている』とは指摘されるが、どうすれば正しいタイミングになるのかは説明されない。

[timing]

私が確信していることは、まずいタイミングが引き起こすエラーは、ダウンスウィングであまりにも早期に打とうとする傾向だ。これは全てのゴルファーに一般的に見られる過ちで、うっかりすると熟練者にも起る慢性病である。しかし、初心者の場合には常習的習慣と云える。スコアが90台以上の人は100回のスウィングのうち99回まで早めに打つ。

あまりにも早期に打つことはタイミングそのものの問題である。それはクラブがボールに達する以前に、パワーの大部分を消費してしまうという結果を招く。全てのパワーをボールに伝える前に、空中で雲散霧消させてしまうのは非常に愚かなことだ。誰もが、自分は正しいテンポで打てないのではないかと恐れているように見える。実際、レイト・ヒットすることを習慣にしている人など、一人も見たことがない。たまにインパクトまでにクラブフェースをクローズに出来ない人がいるが、これはレイト・ヒットからかけ離れた問題である。

このトラブルの第一の原因は右手とその手首の動きにある。左手がしっかりしたグリップで、その左手がコントロールし続ける限り時期尚早のヒットというのはあり得ない。左サイドは左肩に引かれてバックハンドで打つものであり、手首のアンコックによる一撃ではない。

しかし、右手はパワフルで、テニスのフォアハンドと呼ばれるものだ。それはフォローしやすい方向へ最もイーズィに動く。しかし、右手のパワーはインパクトの瞬間まで手綱を引き締められておくべきものだ。

私は、誰もがヴィデオ映像によって正しい右サイドの動き、特に右手首の連続した動きを注意深く見てほしいと思う。熟達者の場合、コックは少なくともダウンスウィングの半ばまでトップで形成されたままの形で維持される。対照的にダッファーはダウンスウィングに移るや否や手首でクラブを鞭のように使おうとする。彼は性急に身体の全ての捩れ(コイル)を解(ほど)いてしまい、手首は完全に真っ直ぐとなって、残ったエネルギーは腕と肩だけとなり、ボールを打つには身体を捩るしかない。

プレイヤーが何かを使い果たしてしまうと、待つことが困難になる。だから、レイト・ヒットという感覚を磨くのが賢い選択だ。最初は優しくボールに向かう。私は、二流のゴルファーたちが多少抑制することを練習して素晴らしい結果を得たケースをいくつも知っている。いったんその感覚を身につけると、ドライヴァーはシャープに当たるようになり、プレイヤーの能力の限界まで速度とパワーが次第に増して行く」

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Bobby Joneの写真、左外側の線がバックスウィング、その右の線がダウンスウィングです。テイクアウェイではまだコックされていないので半径が長いですが、ダウンスウィングになるとレイト・アンコックの作用で半径が短くなっています。

(April 09, 2021)

精確に狙ったところへ打つ秘訣

 

これは、我ながら凄い発見です。パー3に乗せるために苦闘した成果ですが、当然パー4やパー5でピンを狙って打つ際にも使えます。

発端はあるパー3におけるトリプルでした。スランプだった一月、二月の練習ラウンドで、私が何度もトリプルを出したホールがありました。それはNo.4(134ヤード、上りのパー3)で、私の場合、18°ハイブリッドを短く持って打つと乗るホールです。

ところが、乗るどころか大きく左に逸れ、距離も10ヤードも長過ぎるという症状が出ました。この砲台グリーンは縦に長く横に狭いデザインなので、両脇から攻めるのは非常に難しい。グリーンに着地させると、ごろごろ転がってオーヴァーし、そこからの寄せもまた反対側へオーヴァーして、行ったり来たり。これがトリプルの構造です。練習ラウンドでは性懲りもなく18°ハイブリッドでワンオンを狙い、三回もトリプルを記録しました。

[face]

私は作戦を変えました。乗らないクラブにしがみつくのは馬鹿である。グリーン手前に短く打てば、ピンまでの距離は長いので(しかも上り)、上手く寄せてパー、悪くてもボギーで上がれる。トリプルには絶対にならない。で、以後このホールではショート覚悟で21°ハイブリッドで攻めることに宗旨替えしました。

No. 12(102ヤード、パー3)は上り勾配のホールで、これも砲台グリーン(このコースは全て砲台)。私の場合、ここでは6番アイアンを7.5センチ短く持って打つか、7番アイアンのフル・スウィングかどちらかです。6番だと乗っても危うくこぼれそうなグリーン左の奥へ行ってしまいます。7番だとうまくいけばぴったりなのですが、中々うまくいかず、最悪は手前のバンカーに入ってしまいます。

で、贅沢を云わず、ピンから遠くても乗ればいい…と6番を選ぶのですが、これも最近乗らなくなりました。何が原因か考えました。6番アイアンでグリーン左へ行くことを避けるために、私はピンの右を狙うようにしています。ところがボールを真っ直ぐグリーン右横へ打ってしまうことが多い。何故か?大事を取ってスウィング速度を遅くし過ぎるので、フェースがオープンのままインパクトを迎えてしまうのだろう…というのが、私の推測でした。スウィングが早過ぎると、今度はフェースがクローズになった時点でインパクトを迎えるのでプルしてしまう。私本来の適切なテンポが必要なわけです。

ある日、私の推測が正しかったことが証明されました。この日、パー3では《早くも遅くもなく、強くも弱くもない中庸の速度でスウィングする》を目標にしました。21°ハイブリッドで打ったNo.4では皆がやんやと誉めてくれたほどピンに向かって真っ直ぐ飛んだのですが、10ヤードもグリーンをオーヴァーしてしまいました。

No.12、短く持った6番アイアンを《早くも遅くも、強くも弱くもない中庸の速度でスウィング》をしたら真っ直ぐ飛びました。誰かが「ホールインワンだ!」と叫んだほど、ピンにまっしぐらでした。しかし、行ってみるとグリーンを10ヤードもオーヴァーしていました。

No.13(184ヤード、上りのパー3)では、いつもパー4と同じようにドライヴァーをやや短く持って打ちます。ここでも《早くも遅くもなく強くも弱くもない、中庸のスウィング》をしたら、真っ直ぐピンに向かいましたが、ピンを15ヤードもオーヴァー。

以上のことから判るのは《早くも遅くも、強くも弱くもない、自分本来のテンポでスウィングする》が正しいことで、これを遂行すればクラブ本来の飛距離で真っ直ぐ飛ぶボールが得られるということです。方向は心配せずによくなり、適切なクラブ選択だけが重要になります。

「Nick Faldo(ニック・ファルド)のテンポ」(tips_70.html)で、彼は「3番ウッドであろうが、5番アイアンであろうが、私のスローなテンポは同じである」と云っています。普通、長いクラブはゆっくりのスウィング、短いクラブは速いスウィング…と思われますが、彼は自分に最適なテンポを発見したので、どのクラブでもそれを変えないことにしたわけです。今になってその正しさがよく解ります。

次のラウンドのNo.12。6番ではなく、7番を2.5センチ短く持って打ったショットは、又もやみんなが「ホールインワンだ!」と叫ぶようなショットでしたが、ショートしてグリーン・エッジでした。

その次のラウンド。中庸の速度によるスウィングは四つのパー3で、全て真っ直ぐ飛びました。No.4はピンから30ヤード下のエッジ(ボギー)、No.7もピンまで25ヤードほどショートしてエッジ(ボギー)、No.12はピンから15ヤード下のエッジ(パー)、No.13はワンオンしたもののピンまで30ヤードほどショート(パー)。以上、まだまだクラブ選択と握る長さによる距離調節が必要ですが、方向を心配しなくていいことは確実になりました。

 

(April 09, 2021)

「トップで置き去り」その後

 

数日前のラウンド、前半は6オーヴァーと不出来でしたが、後半は2バーディに助けられてハーフ・パープレイ、合計6オーヴァーでした。

[okizari]

No.17(271ヤード、パー4)での私の二打目はピンまで90ヤード。私のデータベースでは9番アイアンを7センチ短く持って打つ距離。この後半は「置き去り」スウィングがずっと功を奏していましたので、もちろんそれを最優先でスウィング。ボールはピン目掛けてまっしぐらに飛び、カップの横で停止しました。行ってみると、カップの5センチ横でした。「もう少しでイーグルだった…」と私が呟くと、グリーンに上がって行って私のボールを拾い上げてくれた男が、「入っちまえばよかったのに…」と口惜しがりました。

次のNo.18で私がボギーを出したため、他のチームとタイとなって勝利を逃しました。ほんと、入ってくれていれば勝てたのに…。いずれにせよ、「トップで置き去り」スウィングがいかに正確なショットを生むか…その威力を見せつけた実例と云えましょう。

写真は「置き去り」スウィングの元祖Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)です。彼のトップは最近の理論からするとやや深め(オーヴァー気味)ですが、ダウンスウィングを下半身から始めていることは左膝と腰の動きで明瞭です。このダウンの開始でクラブは依然として水平の状態に留まっています。これが「置き去り」の神髄です。オーヴァースウィングでなければ、クラブは約20〜30°ぐらいに立っていることでしょう。いずれにしても、膝の動きに釣られず手とクラブがこのように遥か後方に留まるのが「置き去り」ダウンスウィングで、正真正銘狙ったところに真っ直ぐ飛びます。熱心なゴルファーなら絶対マスターすべき技です。

私の場合、ここ数ヶ月《下半身(特に左膝)がリードするダウンスウィング》に苦心して来たのですが、それは無駄ではありませんでした。それなくして「トップで手とクラブを置き去り」にすることは出来ないからです。Bobby Jonesやプロたちは手とクラブがトップに達する以前に左膝と腰の逆転を同時に開始するのですが、その真似が出来ない私は1) トップで手とクラブを一時停止→2) 左膝と腰がリードするダウンスウィング→3) 下半身につられて手とクラブがダウンスウィングに参加する…という順序で実行しています。アマチュア版「置き去り」とも云えますが、効果のほどは同じです。

(April 09, 2021)

中庸の速度を見つける

 

「早くも遅くも、強くも弱くもない中庸の速度」の発見は素晴らしかったのですが、常にそのテンポで打てるかというと、それはまた別問題です。身体が考える中庸の速度というものは曖昧で尺度がないからです。

No.12(上りの102ヤード、パー3)は7番ではショートし、6番をギリギリに短く持ってもグリーン奥へこぼれそうになる…というホールなので手を焼いていました。真っ直ぐ飛ぶいいショットをしてもこぼれてしまうのでは、折角の努力が報われません。

ある日の練習で、7番をスウィングのトップでちゃんとコックしさえすれば、グリーンに届くことが判りました。ただし、中庸の速度でないと右や左にぶれてしまいます。'Metronome'(メトロノーム)というAppで私の中庸の速度を測ってみました。色んなテンポを試してみましたが、♩=44が私のテンポのようです。これより早過ぎると、トップでコックする間がなく、遅過ぎると間が持てません。この方法は曖昧さがなくいい尺度だと思います。ゴルフ場に着くまでメトロノームの♩=44の音を聞き続ければ、自分なりの中庸の速度で打てるようになることが期待出来ます。なお、♩=44というテンポはゴルファー個々によって異なる筈なので、各々が確認する必要があるでしょう。

練習では二個に一個は乗るようになりましたが、次の日の本番ではプッシュしてしまい、乗せられませんでした。まだ♩=44が身についていないようです。

(April 16, 2021)

「置き去り」小史

 

このサイトを始めたのは1998年ですが、調べると翌1999年に私は「腕は後ろに置き去りにして、下半身で打つように」と書いてるんです。なんと22年前です。すっかり忘れていました。

しかもです。それは当時プレイしていた海軍航空訓練基地付属のゴルフ練習場における、以下のような出来事でした。

私の後ろで若い兵隊が二人練習していました。一人は迷彩服着用なので自明ですが、私服の一人もGIカット。そのうちのどっちかのボールが頻繁に私の目の前を横切って右のフェンスに飛んで行きます。「危ねえなあ」と思いましたが、こちらのスウィングに集中していました。

"Sir! Excuse me, sir!"という声に振り向くと、私服の方の男。軍人は一般市民には「サー」を使います。別に、私がジジイだからではありません:-)。彼は「一寸、お聞きしていいですか?スライスを直す方法を教えて貰えませんか?」と云います。長年ゴルフやってますが、こうまで素直に聞かれたのは初めてです。で、彼のスウィングを見せて貰ったら、スライスじゃなく、ただのプッシュなんです。左肱を折って、早めにコックして、凄いインサイド・アウトの軌道です。私の目の前を飛んでいたボールは、彼のだったんですね。「こうクラブを地面に置いて」と、私は一本のクラブを地面に置き、「このクラブに沿ってバック・スウィング、トップの高さは左肩が終点。腕は後ろに置き去りにして、下半身で打つように」と云ったら、二発目から真っ直ぐ飛ぶようになり、当人は信じられない顔つきをしていました。

 

他人への説明として「置き去り」を使ってるんです。この「日記」創世記からの原稿を読み直してみましたが、いつどこでどうして「置き去り」というコツを見つけたのか判りません。そして、他人に教えたテクニックを当人がすっかり忘れて低迷していた長年月。開いた口が塞がりません。

かなり「置き去り」に近いのは次の記事でした。1999年2月の「逆説的ゴルフ」(tips_12.html#paradox)で、筆者はイギリスのインストラクターPercy Boomer(パーシイ・ブーマー)。 「ヘッド・スピードを最大限に上げる秘訣は、クラブヘッドを他の全ての動きよりも遅らすことである。これを実行するには、手首を緩やかなフリーの状態にしておかねばならない。(中略)トップでは戻りのパワーを待たねばならない。右腕で意図的に引っ張るのではなく、身体が引っ張るのを待つ。足と脚の始動を待つ。動きの中で待つ。

ゴルフのリズムはクラブヘッドをぐずぐずと引き摺る感覚である。これは脚のパワーから得られるもので、脚のパワーは左方向への回転に備えている腰によってコントロールされている。これらが自由で何ら束縛されない状態で、腕を左半身の外側および周辺へと解き放つ」

もう一つ、アメリカのインストラクターが書いた「コーチが書いた教師用書」(tips_27.html#coach)に「ダウン・スウィングの開始では両腕を後ろに残すように努める。心配しなくても、両腕はちゃんと必要な時に到着する。腕、手、肩そしてクラブのことを忘れるのが良い」という一節がありました。これも1999年の記事です。

2000年に入って、やっと「置き去り」という表現を私自身の言葉として使っていますが、この頃はまだその重要性を深く認識していなかったようです。

(April 16, 2021)

「置き去り」成功への条件

 

私にしても毎ショットで置き去りに成功しているわけではありません。手打ちになって「いけね!」ということも少なからずあります。どうかしてその回数を減らせないかと悩んだ末、以下のような結論に達しました。

[Okizari]

バックスウィングのトップに達したら、先ず《左膝の逆転(ターゲット方向への移動)を確認する》のです。左膝が動いたのを確認出来た後、普通にダウンスウィングします。左膝の逆転を確認しているその瞬間、両手と手首はトップで(左膝の動きに連動せず)置き去りになっています。これで充分なのです。

確認したかしないか分らないうちに手とクラブが動いてはいけません。つまり、左膝の逆転と同時に手が動くのはフライング・スタートです。プロや上級アマは手とクラブがトップに達する前に下半身を逆転させ始めます。云い替えると、彼らは上半身のバックスウィングが終わらないうちに下半身でダウンスウィングを始めます。彼らは練習量、ラウンド数がわれわれと桁違いなのでそれが出来ます。そんな名人芸が不可能な私などは、バックスウィングの完了→左膝の逆転→上体によるダウンスウィングの開始…という順序で遂行する方が間違いありません。これは「Tommy Armour(トミィ・アーマー)のトップの間(ま)」(tips_4.html)で、彼が「バックスウィングをきちんと終わらせろ」と云っているのに呼応することであり、別に悪いことではありません。

ごく僅かな瞬間であっても、手とクラブが左膝と腰の逆転に遅れることが大事です。これで手打ちが防げ、手とクラブは下半身に引っ張られながら"passive"(受け身)になります。そうなると、アドレス時の手とクラブフェースの角度は保たれたままインパクトを迎えることが出来(方向性が良い)、おまけにコックも長く保たれますし下半身の大きなパワーで打つことになるので距離も出る可能性大です。良いこと尽くめです。

《左膝の逆転を確認する》を、ダウンスウィング開始前に行うことが必須だと考えます。

私はこの方法で「置き去り」達成率を上昇させました。【御注意】これを実行する際、慌ててはいけません。「手とクラブが、先行する下半身に追いつかなきゃ!」などと思っては駄目です。手とクラブの動きを遅らすのが「置き去り」の目的なのですから、手とクラブは遅れなければいけません。


(May 01, 2021)

「置き去り」練習法

 

[left_leg]

トップでクラブと両手を置き去りにし、右膝の方に寄っていた左膝をターゲット方向に逆転させると、手首の角度が保たれているせいで方向性が格段に良くなります。レイト・アンコックが加われば飛距離増もあり得ます。

ジムでは、私は写真のように抵抗のあるワイヤーを引っ張る器具を用いて、左膝を逆転させてから両手を引っ張る運動をしていました。しかし、ジムへ行かなくてもこの運動は出来ます。
1) 右手にやや重めのダンベルを持って、トップの位置まで上げる。
2) ダンベルを上げたまま、左膝を逆転させる。
3) ダンベルをインパクト位置まで下ろす。【コックを長く保ち、右手の甲は地面を向いていること】

これによって「置き去り」の練習と右手・腕の鍛錬が一緒に出来ます。ダンベルを用いて左腕の鍛錬をするには、インパクト位置からフォロースルーまで上げるのがいいでしょう。

ついでですが、「置き去り」スウィングを志向する場合、手首を柔らかくすることが大事です。固い手首だとフェースがオープンのままインパクトを迎え、プッシュする恐れがあります。


(May 10, 2021)

パッティング・テンポとリズムの構築

 

新進のインストラクター集団'GolfTech'(ゴルフテック)によるパッティング上達の方法。

[Alison]

'The Par Plan'
powered by GolfTec edited by David DeNunzio (Time Home Entertainment Inc., 2013, $29.95)

「本気でパッティングに上達したいなら、スマートフォン用のメトロノームappをダウンロードし、様々なテンポを試してみるべきだ。75拍から始めて速度を上げ下げする。そのどれかは他のテンポより快適に思える筈だ。

65拍以下は遅めであり、スウィングするというよりパターを意図的に誘導している感じである。85拍以上だとボールを引っ叩くのに近い。

メトロノームでの研究と同時に、以下の練習であなた固有のストロークのリズムを身につけることが出来る。ボールの進行方向と後方30センチのターゲットラインの外側に一個ずつティーを刺す。後方のティーがバックストロークの終点(A)、前方のティーがフォワードストロークの終点(B)。パターをAに向かわせながら頭の中で「ワン」と数え、Bに向かわせながら「トゥー」と数える。

「ワン、トゥー」でなく、ストロークの長さと自分の早さに合った快適な文句を見つけられればもっといい。Payne Stewart(ペイン・スチュアート)は"Coca-Cola"という文句だったし、"Let it-go"と唱える人もいる。

パッティングの他の基本同様、万人に正しいテンポ、リズムというものはない。あなたにとって正しいかどうかだ。だからといって、完璧なテンポとリズムの探究をやめてはならない。快適なテンポとリズムが完璧さなストロークに近づく道である。ストロークの総合的なタイミングが、ムラのないパッティングの鍵なのだ」

[icon]

以下のリンクを御覧頂ければ分りますが、距離の長短にかかわらずストロークに要する時間は一定にしなければならないそうです。距離が長いから時間をかける(82拍)、距離が短いから早いストローク(60拍)…ではなく、ストロークの所要時間は常に一定であるべきだとのこと。

私は「打つ強さ」でなく「ストロークの幅」で距離をコントロールしています。10メートル級のロング・パットは最大の振幅ですが、それと50センチのショートパットの距離を同じ所要時間で打てるものだろうかと疑問に思いました。メトロノームの音を聞きながら様々な距離を試してみたのですが、出来ます。長い距離は早く、短い距離はゆっくり打つことは可能です。

一説に、ツァー・プロのテンポは72〜82拍の間のどれかだそうですが、現在の私は♩=50が快適です。

【参考】
・「パットの距離とストローク時間」(tips_76.html)
・「ストロークのテンポ」(tips_147.html)
・「自分固有のテンポでパットせよ」(tips_163.html)
・「メトロノームでパット」(tips_188.html)

(May 20, 2021)

左肘でパットする

 

私はボールの真ん中をパターヘッドの真ん中で打ちたいと思い、左手・腕を一杯に伸ばしてパットします。手首と掌の角度を変えないためには左肘をガチンとロックするのが望ましいのですが、そうすると手と腕が木のようになってしまい、伸びやかなストロークになりません。

で、手でストロークするという意識を捨て、左肘でストロークするという風に変えたらどうかと思いました。これだと左肘以下の手首や左手は勝手に動かず(捩じれない)、左肘にぶら下がっているだけです。手・腕の硬直した感じも出ません。「これはいいかも!」と思わされました。

「完璧なストロークの探究」(tips_193.html)の練習法で試すと、方向のぶれが激減します。左肩と左上腕だけによるストロークなので、可動部品が少ないのがいいのだと思われます。あとはコースへ出てどうかです。

やってみました。いまのところ成功:不成功は50:50です。手・手首は動かさないので、アドレスでの狙い方を正確にしておかないといけません。大袈裟に云えばミリ単位の正確さが必要です。その狙いと距離感が正しければ、成功します。

肘でパットするからといってショートするわけではありません。距離感は以前と変わりません。

(May 20, 2021)

「置き去り」速習法

 

バックスウィングが完了したら、ダウンスウィングの前に左膝をターゲット方向に逆転させる。その間、両腕とクラブをトップに「置き去り」にする…というのはBobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)のセオリーです。これを実行すると、方向性がもの凄く良くなります。

[Bobby]

私も毎ショット「置き去り」を遂行しようと努力しているのですが、成功率は50%というところでしょうか。緊張したり、力んだり、振り急いだりすると「置き去り」にならないのです。

しかし、必ず「置き去り」を実現出来る方法を見つけました。Bobby Jonesのセオリーなのですから、彼のスウィングを模倣すればいいのです。彼はバックスウィングで左踵を高く上げます。そして、ダウンスウィングの最初に行うことは、その左踵を地面に戻すこと。左膝がどうのこうのではなく、左踵を下げるのです。この動作は明快そのものです。左踵が地面についたら上体がダウンスウィングを始める。

私は、左踵を全く上げないスウィングをするTiger Woods(タイガー・ウッズ)に感化されて、ずっと左足を地面から離さないスウィングをして来ました。私にとっては、バックスウィングで左踵を上げるのは慣れないことで違和感があるのですが、現在その方法を試行しています。私の場合、左膝をBobby Jonesのように右膝に寄せるようにするとスウェイしダフってしまうので、左膝をボール方向(前方)に少し出し、踵はほんの僅か(約1センチ)浮かす程度に留めています。徐々に慣れつつあります。

Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)は彼の著書'Golf My Way'(1974)の中で「故意に左踵を上げてはならない。バックスウィングの身体の捻転につれて上がるにまかせるべきだ。もし意図的に左踵を上げると、無意識にアドレス時より全てが高くならざるを得ず、スウィング弧が歪んでしまう。また、高く上げ過ぎると、ダウンスウィングで元の場所に戻すのが難しくなる」と云っています。これは正しいと思います。

最近のツアー・プロで左踵を上げる人はそう多くありません。ジャック・ニクラス、ベン・クレンショー、ジョン・デイリィらシニアの世代でしょう。ですから、この方法はやや古めかしく思えます。しかし、古めかしいのが嫌であれば、左踵の上げ下げによる「置き去り」をマスターした後、両足を地面につけたままのスウィングに戻せばいいのです。両足をべったり地面につけたままなら、ダウンスウィングの最初にすることは左膝の逆転に他なりません。要するにダウンスウィング開始時に両腕の動きを遅らせられれば、どんな手段でもいいわけです。

(May 20, 2021)

ドライヴァーの研究

 

[spots]

パー3(スリー)のいくつかをドライヴァーで攻めていましたが、必ず乗るというわけでもないので手を焼いていました。距離はドライヴァーを持つ長さで調節出来るのですが、方向が定まらないのです。同じ打ち方をしているつもりなのに、今度はプッシュ、次はプル…という具合で滅茶苦茶なのです。

一体どういう現象が起きているのか?それを調べるために、スーパーや薬局で売っているAthlete's foot spray(水虫用スプレー、粉末タイプ)をドライヴァーのフェースに噴霧し、私のインパクトの状態を見てみました。すると、大袈裟に云えばほぼ一発ごとに異なる部分で打ったりしていることが判明しました。

私はボールの真ん中をクラブフェースの真ん中で打つべく、カナダの異才Moe Norman(モゥ・ノーマン)のスタイルで、左手を一杯に伸ばしてアドレスします。それが功を奏すれば常に図の(A)で打てる筈なのですが、実際にはそうはならず、フェースの(B)や(C)で打ったりもしているのです。

ドライヴァーのフェースは真っ平らではなく真ん中がやや膨らみを帯びており、左右に湾曲しています。その湾曲が曲者で、真っ直ぐ飛ばないどころか、狙った場所から20ヤードも横に逸れることがあります。パー4やパー5のティー・ショットが10〜20ヤード横に逸れるのはさほど気になりませんが、パー3となると大問題です。

(A) ここで打つと、スウィート・スポット特有のふにゃっとした手応えの無い手応え(?)を残して、ボールは真っ直ぐ飛んで行きます。
(B) ここで打つのはインパクトで手・腕を縮ませてしまったか、身体が後傾してクラブフェースのトゥ寄りで打ったせいです。ボールはフェース先端の右向きのカーヴによって右に出て行きます。手にカツンという嫌なショックが残ります。
(C) これは、手・腕を精一杯伸ばしていたと思い込んでいたものの、実は左肘にたるみがありインパクトで手・腕がさらに伸びたか、身体が前傾したためボールをヒール近くで打ってしまって、フェース末端の左向きのカーヴによってボールが左に出てしまうケース。手にガツンという嫌な感触が残ります。

[bands]

(B)と(C)を防ぐため、私は手・腕をたるみなく目一杯伸ばし、両足の踵に体重を乗せて安定させ、きっちりフェースの真ん中で打つ努力をしていました。(A)と(B)、(A)と(C)の間隔は約2センチもあるのに、どうして2センチも前後に外してしまうのか不思議でした。目一杯伸ばしている腕・手はもうそれ以上伸びないのですから、身体が前後に揺れてしまうのに違いないと思われました。

そこで、写真のようにドライヴァーのトゥ付近とヒール付近に輪ゴムを装着してボールを打ってみることにしました。この方法は、普通はパター・フェースの左右両端に輪ゴムを嵌めて、フェースの真ん中で打つことを強制する練習法で、ドライヴァーでこんなテストをする人はまずいないでしょう。何を隠そう、私のドライヴァー・ショットは常に狙ったところより常に5〜10ヤード右に飛ぶので、その原因も解明出来るかも知れないと思われました。

[foot]

テストの結果解ったのは、私が過度に踵体重であったということです。安定したスウィングをするため、どっしり構えた方がいいだろうと考えて選んだ方法だったのですが、それが裏目に出て腕と手を手前に引っ張るインパクトに繋がっていたようです。インパクトでさらに踵体重が増すため身体がやや後傾しボールをトゥ側で打ってしまい、ボールが右に出る…という結果だったのです。

大地を踏みしめるには、踵だけではなく足裏三点に平均に体重をかけるべきでした。体重を足の裏三点にかけながらスウィングすると、狙ったところへ真っ直ぐ飛ぶようになりました。これはパー3だけでなく、パー4やパー5のティー・ショットにも利用出来ます。それだけでなくハイブリッドやアイアン・ショットの際にも役立ちます。ここ数年間の謎が解け、展望が開けた発見でした。

上の練習の後のラウンド、私のドライヴァーが快音を発する回数が増えました。フェースの真ん中(写真のA)で打てる確率が高くなったからです。


【おことわり】足の図はhttps://golfsapuri.com/にリンクして表示させて頂いています。

(June 01, 2021)

Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)の 左腕を伸ばせ

 

'Secret of the Master'
edited by Sidney L. Matthew (Sleeping Bear Press, 1996, $22.00)

[Jones]

「カメラで撮影された映像は、疑いもなくインパクトで伸ばされた左手・腕が絶対に必要なものであることを示している。スウィングのトップでは、多くのトップクラスのゴルファーがやっているように、僅かな折れは許されるものの、ことインパクトの瞬間には左腕は真っ直ぐ伸ばされていなければならない。それがコントロールされた正確でムラのないヒッティングをもたらす。私自身は、ダウンスウィングで再び左手・腕を伸ばすなどという当てにならないことをするのでなく、スウィングの間じゅう左手・腕を伸ばし続けるのがベターであると思っている。

左手・腕を伸ばし、ボール位置を過ぎた地点を打つという発想は、「打ち抜く」という昔からの考えをもっと明確な表現にしたものだ。これはどう打ち抜くべきかを理解させてくれ、どうすべきかを教えてくれる。実際にはボールの1インチ(2.5センチ)先を打てば充分だが、その長さを伸ばせば伸ばすほど安全度が高まる。安定したゴルフというものは、十分な許容範囲の有無に左右されるものだ。

ゴルフ・スウィングが、その開始から終了まで左腕主導で実行されるものだということに疑問の余地はないと考える。この左腕は水先案内人であると同時に、身体の残りの部分から生成されたパワーを伝える媒体でもある。一般ゴルファーにとって、右腕で遂行されるように見えるゲームを主に左腕でプレイすべきだという理論は理解困難かも知れないが、多少なりとも左腕主導のスウィングを学ぶまで、彼はいつまでも初級・中級の域を脱することは出来ないであろう。

常に左腕に注意せよ。特に短いピッチ・ショットで。ソフトに打とうとする時、左肘が緩くなるという大きな危険が待ち受けている。私は左手のヒール(手首に近い部分の掌の膨らみ)が、ボールへと向かいながらクラブを押し下げるように感じるのを好む」

[icon]

1) ボールの前方(ターゲット方向)10センチのところの地面を打とうとするのは、かなり難しいのですが、Bobby Jonesが云う「ボールの1インチ(2.5センチ)先を打てば充分」なら、すぐにでも実行可能です。

2) 「左手の膨らみでクラブを押し下げる」はやってみるまで何のことかよく解りませんでした。試みに、私がよく用いる『草を抉(えぐ)る』(tips_168.html)の練習法を実行してみて、驚きました。なんと、非常に正確に雑草を弾き飛ばすことが出来ます。ヒットダウンがうまく出来ず、フェースを伏せ目にして打ってシャンクしたり、様々な失敗を経験して来ましたが、この「左手の膨らみでクラブを押し下げる」が最高の手法に思えます。

(June 01, 2021)

スウィートスポットで打つ練習法

 

[gate]

'The Scoring Zone'
by Steve Hosid (The PGA Tour Partners Club, 2000)

The Golf Channelのインストラクション番組でお馴染みのMartin Hall(マーティン・ホール)による練習法。写真のようにクラブがかろうじて通り抜けられる間隔の門をセットし、その真ん中にもう一本ティーを刺し(写真ではボール)、それをボールに見立ててスウィングする。写真の左の白いティーを叩いてしまうとトゥで打ったことになり、赤いティーを打つとそれはクラブのヒールで打ったことになる。

ボールでなくティーを打つのなら裏庭で練習出来るというのがマーティン・ホールの自慢ですが、練習場へ行かなくてもいいという点で、これはとてもいい練習法と云えるでしょう。


(June 01, 2021)

Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)の 正しくスウィングすればヘッドアップしない

 

'Bobby Jones on Golf'
by Bobby Jones (Broadway Books, 1966, $18.95)

[Jones]

「『"Look up"(ヘッドアップ)するな』という助言を厳密に実行すると、ボールを凝視し、頭を不動のまま保持することになるが、それでは身動き出来なくなるほどの緊張をもたらしてしまう。

ボールの一点を見つめると良いと云う人がいるが、プロも上級アマも、意識的にボールの一点やボールそのものを凝視したりしないと語るのが常である。彼らはボールが存在するところを感じるだけだ。もちろん彼らはスウィングの間ボールを見ているのだが、ボールを睨みつけたりはしない。

私はパットする時とショート・アプローチ以外では、『ヘッドアップするな』という助言は百害あって一利無しと考える。あまりにもボールから目を離すまいと努力すると、スウィングが小さくなってしまう。

グリーン上では、ボールから目を逸らすというより注意力を逸らしてしまう危険がある。パター・ヘッドを目で追ったり、周辺視野に見えるカップに意識が惹き付けられてしまうのがそれだ。必要なのはラインよりいいストロークをすることなのだが。

ドライヴァーを打つ場合は、周辺視野に意識を妨げるものは何も見えないから、ボールに意識を集中することは可能である。だが、熟練者が頭を動かさないのは正しいスウィングをするからであって、目をボールに釘付けにしているからではない。正しいスウィングが頭を不動にしているのだ。

ある人は、『頭はスウィングの錨である』と云ったが、これは正しい着想である。重要なのはスウィングする最中肩の動きにつれて顎が廻ってはならないということだ。しかし、多くの人の顎はバックスウィングの進行中に後方に廻ってしまう。バックスウィングの動作は身体の右サイドと右腕によって、頭を無理に引っ張り上げるように動かす。これに気づいた者はさらに後方に動かし、ダウンスウィングであまりも早く手首のコックを解いてしまう。クラブヘッドは正しい軌道よりも下方を辿り、ボールを上げるために引っ張り上げる動きが必要となる。

コックを保持し、右サイドの正しい動きとピンと伸ばした左腕によってスウィング・ダウンし続けようとするゴルファーは、ヘッドアップを心配する必要はない。彼にとってはボールの側面を引っ叩くこと以外に興味深いことはないであろう」


【おことわり】足の図はhttps://golfsapuri.com/にリンクして表示させて頂いています。

(June 13, 2021)

ティーアップとスウィング軌道の関係

 

'The perfect tee height'
by Luke Kerr-Dineen ('Golf Magazine,' September-Ocotber 2020)

「ドライヴァーを的確な軌道に乗せるには、ボール軌道やあなたの能力など、様々な要素がある。あなたは想像もしないだろうが、最も重要なものの一つはボールを乗せるティーの高さである。

大体の目安としては、ティーが高ければスウィングは浅くなる(フラット目になる)。何故かと云うと、ティーが高い場合あなたはボールをヒット・アップしようと(打ち上げようと)自分に強制することになるからだ。ティーを低くすると逆のことが起こる。ティーが低いと、本能的にヒット・ダウンしようと(打ち下ろそうと)するからだ。

では、正しい高さはどうなるのか?当誌のトップ100インストラクターたちへのアンケートでは、ドライヴァーの理想的なティーの高さは1.5インチ(約3.8センチ)である。チェック・ポイントは、アドレスでクラブを地面につけた時、クラウンの上にボールの半分が出ている高さだ」【写真】

[icon]


私は現在約7センチのティーを使っていて、地面に刺した後の高さは約6センチです。ただし、ボールから約25センチほど後方でアドレスして、アッパーに打ちます。以前は8.3センチのティーを使っていたのですが、たまに天ぷらが出るので、現在の低めのティーに変えました。まだ高いティーアップで飛ばすことに未練はあります。しかし、天ぷらが恐いので泣く泣く低くしています。

 

(June 13, 2021)

バンカー・ショット再履修

 

[bunker]

ここのところずっと私のバンカー・ショットが低迷していました。脱出出来てもかなりショートしたり、ホームランもちらほら。全く誉められません。

オープン・フェース、早期コック、ボールの5〜10センチ後方。全部やっています。しかし、結果にムラがあり過ぎました。何か基本が欠けている気がしていくつかの文献を漁りました。この自分のサイトのバンカー・ショットの主な記事も読み返しました。

・「バンカー・ショットの鍵」(tips_153.html)でButch Harmon(ブッチ・ハーモン)は「通常のフルショットと同じように、下半身のリードでダウンスウィングをスタートする」と云っています。

・「バンカー・ショットの智慧」(同上)では坂田信弘氏が「どんなに短き距離であっても、バンカーは手打ちじゃ出ません。ボディターンが必要です。手先のクラブ操作では、ヘッドを打ち込んで終わり。これをザックリという」と述べています。

最近の私のバンカー・ショットに欠けていた一番の要素はこれでした。下半身のリード、そして腰のターン。私はいつの間にか昔聞いて脳に刷り込まれていた「バンカー・ショットは手打ちでいい」という文句に戻ってしまい、下半身によるスウィングを忘れていたのです。しかし、下半身主導のバンカー・ショットだけでは問題は解決しませんでした。

私は再履修の開始にあたって、先ず「Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)のバンカー・ショット」(下の記事)にトライしました。

(June 21, 2021)

Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)のバンカー・ショット

 

'Golf My Way'
by Jack Nicklaus (Fireside Book, 1974)

Jack Nicklausのバンカー・ショットをまとめると以下のようになります。

・ボール位置は左爪先の前。
・両手がクラブヘッドの真上か、ヘッドの後ろになるようにセットする。これが(砂を叩くのでなく)灰汁を掬うような動作の遂行を助けてくれる。長い距離では両手をボールの前に出す。
・手打ちの感じでトップから右手で打ちに行き、右手を早めにリリースする(コックを解く)。これもインパクトでのスウィング軌道をフラットにし、灰汁を掬う感じの動作を助けてくれる。
・ボールが長さ15センチ×幅8センチ、厚み1.2センチの砂の枕に載っていると想像し、その枕を弾き飛ばす。【編註:ドル紙幣(長さ15.5×幅8.5センチ)サイズの砂を取ると表現する人もいる】
・インパクトで身体を左に横移動させず、左に壁があると想定して頭をボール後方に留める。
・短い距離でボールを高く上げ着地後すぐ停止させたいバンカー・ショットでは、クラブフェースをかなりオープンにし、ソフトにスウィングする。
・長いバンカー・ショットでは、フェースをオープンにする度合いを減らし、スウィングを大きくきっぱりと実行する。

 

(June 21, 2021)

Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)の サンドウェッジ選択

 

[flange]

'Golf My Way'
by Jack Nicklaus (Fireside Book, 1974)

「サンドウェッジを選ぶ際、フランジ(バウンスとも呼ばれるリーディング・エッジの下に膨らんでいる突縁、図の点線から下の部分)の度合いに注意すべきだ。私にとってフランジの多いクラブは危険である。何故なら、ライが完璧でない場合や砂が湿っている場合、フランジが多いと(ボールの下を打ち抜くのでなく)砂の表面で跳ね返ってしまいがちだからだ。結果:トップ【編註:ホームラン)】。

その理由のほかに、私は芝の上でのピッチングやチッピングにサンドウェッジを使うのが好きなので、私のサンドウェッジのフランジは(多くも少なくもない)中程度のものを使っている」

[icon]

私は図の3のタイプのサンドウェッジを常用しているのですが、どうもバンカー・ショットが安定しませんでした。上の記事を読んで、その原因はフランジの度合いと私のコースのバンカー(特に砂の層と硬さ)との相性が悪いせいかも知れないと思いました。フランジが固い砂で弾かれている気がしていたのです。手持ちの古いサンドウェッジ二本を調べてみると、図のどれとも合致しないタイプ(どちらかと云えば、図の4に近いタイプ)で、両方ともフランジは少なく、ソールの幅がやや異なるデザインでした。で、これら三本で結果にどんな違いが出るか比較テストしてみることにしました。

テストした日は雨が降った翌日で砂は湿っていました。しかし、雨がなくても私のコースの砂はさらさらではなく、粒子がくっ付き合って重いのです。テストの結果、私が常用しているフランジの多いウェッジは最も失敗が多いことが判りました。固い砂で撥ね返され、ボールを直接打ってホームランが出易い。

ひょっとすると、私にはフランジがない方がいいのではないかと思われました。私の現在のギャップウェッジ(52°)は、ソールはほぼ真っ平らでフランジの幅は他のアイアンとほぼ同じ、バウンスは9°です。フェアウェイでのピッチングやチッピング用に購入したものなので、フランジが少ない方が良かったのです。以前、30ヤードのバンカー・ショットにこれを使ってピン傍に寄せたことが何回かあります。ただ、サンドウェッジ(56°)より4°もロフトが少ないので、短い距離だとどうなるか心配でした。


(June 21, 2021)

GolfTech(ゴルフテック)のバンカー・ショット

 

Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)メソッドのバンカー・ショットを試しても目覚ましい進歩がなかったので、次に試したのがこれです。

これはインストラクター集団GolfTech(ゴルフテック)が'Golf Magazine'誌と提携して出版した本。バンカー・ショットの段取りについてはかなりオーソドックスに思えたので、これまで詳細を紹介するのを控えていましたが、読み直してみるとスプラッシュ型のバンカー・ショットとして、他の本や雑誌では見られない秘訣がいくつもありました。

[bunker_shot]

Golf Magazine's The Par Plan'
powered by GolfTec edited by David Denunzio (Time Home Entertainment Inc., 2013, $29.95)

・ボール位置は左踵の前方
・クラブ・フェースをオープン
・ターゲットの左30度に両足を揃えたオープン・スタンス
・クラブの砂への突入地点はボール後方約5センチ
頭・臍・両手・クラブヘッド等が一線となって突入地点の真上になるようにアドレス
・突入地点に目を据えたまま、両爪先を結ぶスウィング・ライン(赤線)に沿ってバックスウィング
・左手首が甲側に折れて凹んだコック(図のB)を最後までほどかないようにする【ロフトの維持】
・フェアウェイでの40〜50ヤードのウェッジ・ショットをするパワーでスウィング
・スウィング・ライン(赤線)に沿ってダウンスウィング
・クラブのリーディング・エッジではなく、ソールを砂に突入させる
・クラブヘッドを砂の表面から約2センチ下で滑らせる
・クラブヘッドの浮上地点はボール前方約7〜10センチ
バックスウィングより長いフォロースルー【加速させるため】

[wrists]

GolfTechのメソッドに欠けていて重要と思われる諸点は以下のいくつかです。私はこれらを補うことにしました。
・広めのスタンス(スウィングを安定させスウェイを防ぐため)
・左足に体重の多くをかける
両足だけでなく肩も左30度に開く
・ウィーク・グリップで握る
・早期にコックを始める
下半身のリードで切り返し
・急がないがパワフルなダウンスウィング

ここで肝要なのは、「凹ませたコック(図のB)を最後までほどかない」という項目です。これがオープンフェースによって増えたロフトを維持し、ボールを高く挙げる役目をします。難しいのは「クラブを計15センチも水平に砂の表面の2センチ下で滑らす」ことです。

現在このGolfTech方式を修得中で、それにButch Harmonと坂田信弘の「下半身のリード」を付け加えています。使用クラブはギャップウェッジ(52°)。他のクラブも試しましたが、サンド・ウェッジは私のコースの砂の質と層(固く薄い)に合っていないようです。

私が住んでいるアメリカ南部はまだ六月だというのに、午前七時には24〜25℃になり汗だくになってしまいます。で、午前4:30に起きて軽い朝食をとってからすぐゴルフ場へ行くことにしました。5時半ではクラブハウスは閉まっていますし、グリーンズキーパーもまだ来ていないのですが、もう夜は明けています。道路から最も近いNo.18のバンカーで練習。ここは顎が高いので、このバンカーで成功すれば他のバンカーは軽いものです。

[gap wedge]

陽が上り、背中に日射しの熱を感じるようになったら練習を終え、帰宅します。まだ七時前です。これを連日続けています^^。

ギャップウェッジでも最初は15ヤードぐらいしか飛ばなかったのですが、「バックスウィングより長いフォロースルー」を心掛けるようになってから20〜25ヤード飛ぶようになりました。

図のBのコックを最後まで貫き通す決意が必要です。

顎の低い10数ヤードのバンカーでも試しました。ギャップウェッジを2.5センチ短く持って同じスウィングで打つと、ぴったりの距離に打てるようになりました。

【参考】「バンカー・ショットの核心」(tips_175.html)


(June 21, 2021)

バンカー・ショット再履修・part 2

 

珍しい練習ラウンドをしました。意図的にアプローチ・ショットをグリーンサイド・バンカーに飛ばし、どれだけバンカー・ショットでピンに寄せられるかを実戦風に試したのです。ボールを何個も砂の上に転がして練習した場合は「次がある」と全然緊張しませんが、一発本番だと「次」はないので最低で脱出、欲を云えばピン傍…とプレッシャーとテンションが高まります。

[No.18]

市営ゴルフ場には10のグリーンサイド・バンカーがありますが(昔は12あったのですが、経費と手間がかかるせいか潰してしまいました)、その一つは顎が低いので普通はパットで出します。ですから、バンカー・ショットが必要なのは計九つ。結果として、一つのホールだけ、15ヤードのバンカー・ショットをピン傍50センチにつけられましたが、2〜5メートルを残したのがいくつか、15〜25ヤードの距離で10メートル残したホールが三つもありました。まだまだ道遠し。

特訓を継続し、顎の高いバンカーの20ヤード先のピンに挑戦。距離も合わないし、方向も全てピンの遥か左へ出ます。試みにクラブ・フェースをオープンにするのをやめ、クラブのリーディング・エッジをピンにスクウェアにしました。次第に方向が定まり始めました。《バンカー・ショットにはオープン・フェース》は定石らしいのですが、私のスウィングには合っていないようです。

私には《高いフィニッシュ》が足りないことを実感しました。どうしてもフィニッシュが左肩の上まで届かず、手・腕が左腰の辺りで止まってしまいます。これを克服すればもっとピンに寄るだろうと思われました。

次の練習日、高いフィニッシュを心掛けたところ、写真のようになりました(日の出前なので薄暗い)。バンカーから20ヤードですが顎が高く砲台なので25ヤードとして考えています。比較的長めのバンカー・ショットとしては悪くありません。いま一息。

練習していて気づいたのですが、肩を廻し過ぎるとホームランが出ます。バンカーではテイクアウェイの時点から始めるコックが重要なのであって、身体の捻転は必要ないようです(これが「手打ちでいい」と云われた所以かも知れません)。両手は右肩の高さを限界とすべきです。以下は私の今後の課題:

・左手首を凹型にするコックをテイクアウェイと同時に速やかに開始する
・下半身のリードでダウンスウィング
・切り返しの時点で力むのではなく、次第に《加速させる》こと
・左肩の高さのフィニッシュ

以上は家でも練習出来るので、庭で練習マットを使って身につけることを始めました。特に、私の不得意な高いフィニッシュを習慣にするためには、マットでの練習でも充分です。

(Juiy 01, 2021)

達人たちのバンカー・ショットの智恵

 

・Tiger Woods(タイガー・ウッズ)
'How I Play Golf' by Tiger Woods (Warner Bros., 2001)

「バンカー・ショットでは力む必要はないので、軽いグリップ圧でクラブを握る。 ショートしないために、ピンの天辺を狙う

・Corey Pavin(コリィ・ペイヴン)1995年U.S.オープン優勝者
'Corey Pavin's Shotmaking' by Corey Pavin (NYT Special Services Inc., 1996)

「足を砂に1インチ(約2.5センチ)潜らせたら、クラブも1インチ短く持たなくてはならない」

・Colin Montgomerie(コリン・モンガメリ)
'The Thinking Man's Guide to Golf' (Orion, 2003) by Colin Montgomerie (Orion, 2003)

 

「最も多い過ちの一つはボールに向かって減速してしまうことだ。その原因は長過ぎるバックスィングにある」

・Annika Sorenstam(アニカ・ソレンスタム)
'Golf Annika's Way' by Annika Sorenstam (Gotham Books, 2004)

「高く、ソフトなショットを打つためには、インパクト・ゾーンでクラブフェースが空を向き続けていなくてはならない。私は単純にフィニッシュまで肩を廻す。上体を、胸がターゲットを向くまで回転させるのだ。両手はクラブフェースをオープンにしたまま、フォロースルーまで身体の前に留まる」

達人ではありませんが、インストラクター共著の本で普通云われていないtipを読みました。 'Total Golf' by Mike Adams & T.J. Tomasi (Triumph, 2000)

「足を砂に潜らすとクラブのホーゼルがボールに近くなってしまう【編註:ボールがホーゼルに当たるのはシャンクの原因】。だから、足を1インチ(約2.5センチ)砂に埋めたら、1インチだけボールから遠くに立つこと」

足を砂に埋めたら、クラブを短く持つか、ボールから遠ざかるかどちらかを選択しなければならないようです。

(July 09, 2021)

バンカーのコツは「バックワード・プレス」

 

Johnny Miller(ジョニィ・ミラー)の本の「バンカー・ショット」の章は、右のイラストと共に次のように説明されています。

[square]

'Pure Golf'
by Johnny Miller with Dale Shankland (Doubleday & Company, 1976)

「カットするアクションを効果的にするため、両足はオープンにすべきだ。あなたが得るべき感覚は、クラブヘッドを両足と平行にスウィングするというものだ。しかしながら、クラブヘッドは終始ターゲットにスクウェアに留まるように」

右図は、上の説明に付属しているイラストを出来るだけ正確に模写したものです。イラスト内のクラブフェースはターゲットにスクウェアではなく、オープン気味です。

PGAツァー・プロCorey Pavin(コリィ・ペイヴン)も自著で同じように述べています。

'Corey Pavin's Shotmaking'
Corey Pavin with Guy Yocom (NYT Special Services, Inc., 1996, $14.00)

「実質的にどのバンカー・ショットも、アドレスとインパクトでクラブフェースをオープンにしてプレイされる。リーディングエッジはスタンスラインの遥か右を向く。しかしターゲットにはスクウェアに狙うべきだ」

これらの記事と図解によって、私の頭は混乱させられました。ウェッジ底部のバウンスを露出させるほどフェースをオープンにしたら、当然リーディングエッジは上図のようにターゲットの右を向きます。それなのに「しかもターゲットにスクウェアであるべきだ」とは?

LPGAプロJenny Shin(ジェニィ・シン、韓国)の2016年のLPGAツァー優勝は一勝だけでしたが、サンド・セーヴ率63%という画期的なスタッツを達成したため、'Golf Digest'誌が見開き二ページで彼女のバンカー・ショット技法を紹介しました。彼女は次のように述べています。

'Bunker basics'
by Jenny Shin ('Golf Digest,' October 2016)

「ボール位置はスタンスの前方でクラブフェースを右に廻すことによってオープンにする。次いで、両手を僅かにターゲットから遠ざける。両手を後方に動かすと、(右を向いていたオープンな)フェースは再びターゲットにスクウェアになる

「両手を後方に動かすとスクウェアになる」だって? 立ち籠めていた霧が俄に晴れて来ました。

上のJohnny MillerやCorey Pavinの言葉は《フェースはオープンにするのだが、リーディングエッジがターゲットより右を向いていてはいけない》という意味だったのです。Johnny Millerの本のリーディングエッジがターゲットの右を向いているイラストはアドレスの最初の段階であり、両手を後方に動かす前だったのでしょう。このイラストのようにセットした後、Jenny Shinが云うように両手を後方に動かすと、リーディングエッジはターゲットにスクウェアになります。

 

アイアンを打つ際、両手をターゲット方向に少し動かす動作を「フォワード・プレス」と云います。上の場合は方向が逆ですから「バックワード・プレス」と云うべきです。

Johnny Millerは次のように付け加えています。「ボールには自然に左から右へのスピンがかかるので、クラブフェースは僅かにピンの左を狙うべきだ」…と。つまり、上図のサンドウェッジのフェースはスクウェアでも不可で、ごく僅かにクローズ(左向き)であるべきなのです。

ついでなので、Jenny Shinの技法をもう少し。

「腕による大きなスウィングをするが、アドレスで形成した手首の角度を維持すること。下半身も捻転させることを忘れてはいけない。あなたの目標は、バックスウィングの間じゅう手首の角度をそっくりそのまま維持して、クラブフェースをオープンにし続けることだ。

ダウンスウィングではよく云われるようなボールの後ろ5センチなどを考えてはいけない。それは砂の取り過ぎであり、ボールの飛距離が予測出来ない。そうではなく、クラブ底部のバウンスを砂の中でスライドさせることに集中せよ。クラブヘッドがボールの後ろではなく、ボールの真下に達することを考えるべきだ。

砂を打ち抜き続けること。多くの人々がフォロースルーを忘れて、脱出に失敗する。必ず、フル・フィニッシュをするように

 

[icon]

現在の私の場合、必ず右スピンがかかるわけではなく、ピンの左にボールが集まります。もっとカットするスウィング軌道が必要のようです。一度だけですがピン傍5センチに寄ったことがありました。展望は明るいと云えます。

(July 09, 2021)

バンカー・ショット再履修・part 3

 

当家の書棚からバンカー・ショットに関する記述があるものを順に読み漁っていて、Mike Mecgetrick(マイク・マゲトリック)というインストラクターの本'The Scrambler's Dozen'にぶち当たりました。これのスプラッシュ型ショットの説明として次のように書かれていました。

「普通のライでは"V"の字スウィング、目玉など劣悪なライでは"U"の字スウィングをする」

「ウッソーっ!」と思いましたね。「逆でしょうが!」普通の(申し分のない)ライでは、クラブヘッドを砂の表面で15センチほど滑らす必要があるので、比較的フラットな"U"の字スウィングが必要で、目玉ではボールの近くにグサッとヘッドを突き刺し、その反動でボールを弾き出すので鋭角的な"V"の字スウィングが必要です。

翌日コースのバンカーで実際に"U"の字と"V"の字の比較テストをしてみました。ソフトな砂のバンカーで、56°と52°のウェッジで試しました。明らかに"U"の字の圧勝でした。私のコースの砂質には52°が合っています。プロやインストラクターたちは、あくまでも自分に役立っている方法を教えようとてんでんばらばらのことを書いている気がします。

で、全てに疑心暗鬼となった私は、巷間云われている「ボール位置は左踵の前方」も怪しいと思い、試しにスタンス中央近くをボール位置にしてみました。真っ直ぐピンに向かうじゃないですか!なあんだ!「左踵の前方」も私には向いていなかったのです。

で、現在の私は次のようにしています。
・ボール位置はスタンス中央の僅かにターゲット寄り
・ややボールから離れて立つ
・オープン・スタンス
・超ウィーク・グリップ(右手の""V"が左肩を指す)【手首が返ってクローズになることの予防】
・クラブフェースをほんの僅かオープンにする
・「バックワード・プレス」で、リーディングエッジをピン方向にスクウェアにする
・テイクアウェイ直後から左手首を凹型にコック
・フラットなバックスウィング
・ボールの直下でクラブヘッドを滑らす
・高いフォロースルー

この方法で堅実にピン方向に寄せられるようになって来ました。

(July 09, 2021)

Butch Harmon (ブッチ・ハーモン)の 親譲りのバンカー・ショット

 

実際にはこれは、彼の父で1948年のMasters(マスターズ)優勝者だったインストラクターClaude Harmon(クロード・ハーモン)のテクニックです。

'The Four Cornerstones of Winning Golf'
by Claude "Butch" Harmon with John andrisani (Fireside, 1996)

「バンカー・ショットには三つの鍵となる要素がある。
1) 右利きのゴルファーにとっては、ショットのほぼ全てを右手を使ってボールの後方を引っ叩くか、強打すべきものだ。
2) そのボール後方とは、多くのゴルファーが考えるよりももっと遠く、少なくとも3インチ(7〜8センチ)である。【編註:彼の教え子であるTiger Woods(タイガー・ウッズ)も3インチと云っています】
3) ソフトな砂にはバウンスの多いサンドウェッジを用いるべし。

以下は基本のバンカー・ショットの手順。

・左手は親指が(ハンドルの下の)シャフトにかかり、右手も通常より下方でグリップする。(これはスタンスを安定させるため両足を砂に潜らせると、事実上クラブが長くなるのを相殺するためである)
・クラブのリーディング・エッジがピンのかなり右を向くくらいオープンにする。【編註:クラブフェースは空を向く】
・スタンスをピンの遥か左向きになるほどオープンにする。こうすると、クラブのリーディング・エッジはピンにほぼスクウェアになることを理解せよ。(しかし、まだピンのやや右である)
・体重の大部分を左サイドにかける。
・ボール位置は左踵の前方。(前から見ると、左爪先前方に見えるくらい)
・リーディング・エッジをボール後方3インチ(7〜8センチ)の位置で構える。

・右手でシャープに振り上げ、左手首が凹型になるようにコックする。

・下半身でダウンスウィングを始めるが、右手の急速な動きでボール後方3インチ(7〜8センチ)に集中して砂を薄く削ぎ取る。(ウェッジのバウンスが飛行機の昇降舵の役割を果たして、クラブヘッドが砂にめり込むのを防いでくれる。あまりにボール近くの砂を打つと、トップしてホームランになるが、バウンスを上手く使えばその危険を回避出来る)

 

(July 17, 2021)

バンカー・ショットの基本

 

[Brook]

左の写真のように、バンカー・ショットの初期、ボールより先に砂が飛び出します。ボールを打つのではなく砂を打つのですから、これは当然です。しかし、これは見過ごしてはいけない重要な現象だと思います。

《砂を打って飛ばすのがバンカー・ショットである。ボールはその巻き添えで飛ぶに過ぎない》私はこの事実を心から実感していませんでした。砂が飛べばボールも飛ぶ。砂が飛ばなければボールも飛ばない(ホームランを除く^^)。これがバンカー・ショットの基本原理です。

[No.14]

私にはバンカーでボールを打つよりも、砂を飛ばす練習が必要だと感じました。砂の上に線を引き、それをボールに見立て、その数センチ後方にクラブヘッドを突入させ、草鞋(わらじ)大の浅い砂の層を剥ぎ取る。その砂を大きなフォローでピンの左に向かってスプラッシュする(撥ね散らす)。この練習に精出す必要があると思いました。

The Masters(マスターズ)とPGA選手権に優勝し、ゴルフ名誉の殿堂入りもしているJackie Burke, Jr.(ジャッキィ・バーク二世、1923〜)も次のように云っています。

'It's Only a Game'
by Jackie Burke, Jr. with Guy Yocom (Gotham Books, 2006)

「グリーンサイド・バンカーでは、出来るだけ高く砂を抛り上げるように。これは約4インチ(約10センチ)ボール後方の砂を正しい量取ることを助けてくれる。これがボールをピンに近づける鍵である」

紛れもなく砂だけ打つ練習は効果的でした。この練習を約一時間ずつ二日間行った後、三日目にいくつかのバンカーでボールを七個ずつ打ってみましたが、結果は良好でした。苦手だったNo.14での12ヤードのバンカー・ショットにロフト52°、バウンス9°のギャップ・ウェッジを用い、右の写真のような結果でした。

昨夜半に雨が降ったため砂がやや湿っていたので、私はフェースをほんの僅かオープンにしただけで、スクウェアにピンを狙いました。早めのコックはいつも通りで、砂が重いことを念頭にしっかり砂を運ぶスウィングをしました。二つはピン傍でした。


【おことわり】Brook Hendersonの画像はhttps://ca-times.brightspotcdn.com/にリンクして表示させていただいています。

(July 17, 2021)

バンカー・ショット総括

 

バンカー・ショットは《許容誤差が多いショットである》と云われます。ボール後方何センチにクラブを突入させるかもツァー・プロやインストラクターによって千差万別で、2センチ〜10センチまでまちまちです。

どの本で読んだのか忘れてしまいましたが、もしボールに近いところにクラブを突入させたらボールは低く出てランが多い。ボールから遠くに突入させたら、飛ぶ距離は長いがランが少ない。かくして、どっちのボールも同じ距離に到達する…というセオリーがあるのです。

つまり、その日の砂のコンディションに合わせてプレイする必要はあるが、極度に精密にプレイする必要はないのであまり神経質になる理由はない…ということです。

われわれは砂の抵抗を過小評価して、「こんな短い距離に、なんで強く大きなスウィングをしなきゃならんわけ?」という疑心暗鬼から(実はホームランが恐い)、ついつい短いフィニッシュをしてチョロに堕してしまうことが多いと思われます。この偏見を改め、ボールの下をしっかり振り抜いてピン方向に砂を撒き散らすことに専念すればいいのです。

(July 17, 2021)

Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)の 完璧なアイアン・ショット

 

[Bobby]

'Secret of the Master'
edited by Sidney L. Matthew (Sleeping Bear Press, 1996, $22.00)

「アイアン・ショットは、ウッドと較べると一つの重要なポイントによって異なる。どのアイアンであれ、正確度の必要性が高い。ボールをピンに限りなく近くまで飛ばし、(バックスピンをかける時を除けば)ピンを飛び越してはいけない。

私の若い頃に問題だったのはドライヴァーをヒットダウンし、アイアンを打ち上げようとする傾向だった。注意すべきは二種類のクラブの目的である。ドライヴァーによるショットは多くの転がりを求め、アイアンによるショットは着地後すぐ止まって欲しい。

人がマッシー【訳注:現在の5番アイアンに相当】を手にし、大きく口を開けているグリーンサイド・バンカーを越えてピッチ・ショットを打とうとする時、彼の最初の衝動はボールを空中に浮かべようとすることである。私は数限りないこういう人々がバックスピンを掛けようと試みるのを見て来た。彼らは、わざわざ苦労しなくてもロフトの多いクラブが必要な高度を与えてくれるのだと考えない。

バックスピンは着地後すぐボールを止めるのに役立つだけではない。それは空中でのボールの飛行を安定させる作用があり、旗竿に向かうラインから逸れないようにしてくれる。ボールに向かってスウィングするのが困難な手強いラフからピッチ・ショットをしようとする者は誰でも、コントロールを容易にしてくれるスピンに感謝する筈だ。ヘヴィなラフからだとボールはしばしば右や左に飛び出し、数ヤードも狙ったラインを逸れ、どの方向に向かうかは誰にも予測出来ない。

ピッチングに使うクラブを含めてどのアイアンでも、ヒットダウンすることが不可欠だ。それはボールを打つ際、身体の左サイドが上に突っ張らないということである。左肩、左手、クラブヘッドなどは全て低く留まり、体重は、全てが左足に掛かるまで、スウィングする間に右から左へ移動する。

完璧なアイアン・ショットにおいては、クラブヘッドはボールに向かって下降し、ボールを越えてもなお下降し、芝生からディヴォットを抉(えぐ)りとる。以上を遂行するには、左手のグリップをしっかりさせ、インパクトで左腕がストレートに伸びていることが必須である。また、私は左掌によって下方に押し続ける感覚を好む【編註参照】」

【註】ここでは"left palm"(左掌)となっているのですが、別の箇所でBobby Jonesは「左手のヒール(手首に近い部分の掌の膨らみ)でクラブを押す」と書いています。実際に試してみましたが、左手のヒールという表現が正しいと思います。

(August 01, 2021)

私の距離調節法

 

[handle]

私が頻繁に「クラブを2.5センチ短く持つ」とか「5センチ短く持つ」などと書いているので、「定規で測ってるんだろうか?」と不思議に思われている方もおられるかも知れません。これはずっと以前に紹介した方法なのですが、再度説明しておきたいと思います。

ゴルフクラブは、普通10ヤード刻みでボールが飛びます。人によって飛距離は違いますが、仮に5番アイアンで平均150ヤード飛ばす人であれば、4番アイアンだと160ヤード、6番アイアンなら140ヤード飛ぶはずです。私の場合はそうなっています。

さらにゴルフクラブには《1インチ(2.5cm)短く持つと飛距離が10ヤード減る》という法則があります。これを利用すると、上の例のゴルファーの場合5番アイアンを2.5センチ短く持つと140ヤード打てます。「クラブを替えれば済むことじゃない?」とおっしゃる?いや、6番の高い軌道でなく、5番アイアンのロフトで低めに140ヤード打ちたい場合もあるのです。

凄いのはここからです。中間の1.25センチに親指を当てれば145ヤード打つことが出来ます。スウィングの長さや強さで飛距離を調整するよりずっと楽だし正確です。特にショート・アイアンやウェッジでピン目掛けて打ちたい場合、5ヤードの差は重要です。スウィングを変えずに5ヤード刻みで打てるのですから、最高の中間クラブ対策と申せましょう。

これは非常に便利なので、私のアイアンには全て2.5センチ毎にマークがつけてあります。そのマークに左手親指を合わせてグリップします。触って判るようなマークをつけるとルール違反ですが、修正液で目盛りをつけるだけなら触感は得られませんのでセーフです。修正液の上からマジックで色をつけて、一目で何センチか判るようにしています。

というわけで、「クラブを2.5センチ短く持つ」というのはとても簡単に実行出来ることなのです。


(August 01, 2021)

ストローク練習法・上級篇

 

[stroke]

右図のように、何か直線の物体の真上でストロークがスクウェアかどうかチェックするのが私の練習法ですが、直線が見えていれば、アイ=ハンド・コーディネーションによって身体は無意識に調整するでしょうから、正しいストロークが出来るのは当然です。この練習法で自分のストロークは完璧だと自信をつけても、コースのグリーン上に物差しを置くわけにはいかないので、本番でその完璧さが再現出来るかどうかは神のみぞ知るです。

で、一歩進めて、直線上でアドレスしたら目をつぶってストロークしたらどうかと思いました。ストローク終了後に目を開けてパター・ヘッドが依然として線上に留まっているかどうかを点検するのです。もし、終点でパター・ヘッドがクローズだったりオープンだったりしたら、ポスチャーやアドレス法(特に腕の伸ばし加減)、往復運動…のどれかがまずかったので、それを改善する必要があります。

私がこのアイデアを試したところ、最初の数回の結果がかなり上下に乱れていたので慌てました。その後、両手とも生命線がパターのハンドルの角に当たるようにグリップし、肩がターゲット・ラインと平行になるように左膝の角度を調整、最後に左肘を軽く伸ばすよう務めたらスクウェアなフィニッシュが得られるようになりました。

目をつぶってストロークするのですから、目からの情報による微調整はなく、身体の自然な動きでストロークするわけです。ちょっとした改良ですが、結果は大違いです。

(August 01, 2021)

Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)の ショートゲーム

 

'Bobby Jones on Golf'
by Bobby Jones (Broadway Books, 1966, $18.95)

[Bobby]

「どんなに短い距離でも、ピッチ・ショットを手と手首だけ、あるいは手と腕だけで打ったりしてはならない。他のショット同様、距離に応じて身体と肩を廻し、脚の動きで打つべきである。スウィングはゆったりと、しかも充分な長いバックスウィングによってビシッと打たねばならない。

短い距離のショットに直面した時の一般的過ちは、ボールに屈み込むことだ。繊細さが求められる状況に対する注意深さは良いのだが、短いパットのように処理しようとしてはいけない。一流の達人による短いピッチ・ショットのポスチャーは、ほとんど5番アイアンのフル・ショットを打つ時の体勢に近く直立している【編註:屈み込まない】。短い距離でゆるやかに打つ際であっても、左腕は真っ直ぐ伸ばされているべきだ。短いクラブなら多少腰を折る必要はあるとはいうものの、ロング・アイアンを打つ場合よりボールに近く立てばその必要性は帳消しになる。

短いピッチ・ショットで奨励したいことは、ゆったりしたスウィング、芝に横たわっているボールの底部をシャープに摘まむよう努力することだ。

私は長いこと短いシャフトのcleek【編註:クリーク。日本では5番ウッドをこう呼ぶが、Bobby Jonesの時代は1番アイアンか2番アイアンのヘッドを持つクラブを指した】をロフトのあるパターとして、全てのチッピングにもランニングにも、まさしくパターと同じように用いていた。しかし、時が経つにつれチップショットはパットの延長ではないことに気づいた。

先ず第一に、ほとんどの大切なパットはカップから半径12メートル以内であり、しかも難しいグリーンであれば繊細で念入りな精度が求められる。そのためには軽く敏感なグリップを身につけなくてはならない。パッティング・グリップは半径12メートル以内では有効だが、それを越えるグリーンエッジからのショットには向いていない。

チッピングには時によってバックスピンという要素も重要である。ランを制限するためにバックスピンが必要な時もある。その場合は、パターのように優しい掃くような打ち方ではなく、長く歯切れのよい打撃が必須である。

短いショットの失敗は、充分長いバックスウィングをしないことだ。われわれはグリーンに近づけば近づくほど、バックスウィングをあまりにも短くしかも急速に行おうとする誘惑に駆られる。その結果、リズムとコントロールを失ってしまう。ショットの距離感はバックスウィングの長さで調節すべきものだ。

達人が100ヤードのピッチ・ショットをする時と60ヤードの距離を打つ時でスウィングに大きな違いがあるわけではない。主な違いは、短いショットでは目一杯のエネルギーを使わないことだ。ボールとの接触は歯切れがよくクリーンだが、加速を段階的で緩やかにする。充分なバックスウィングで急がないことが肝要だ」

(August 18, 2021)

Greg Norman(グレッグ・ノーマン)の四つのバンカー・ショット

 

Greg Norman(グレッグ・ノーマン)の本'Shark Attack'(鮫の攻撃)は、スプラッシュ型の物理的説明から始まってとても解り易く書かれています。

'Shark Attack'
by Greg Norman with George Peper (Fireside Books, 1988)

以下はさーっと読むのではなく、御自分のコースの苦手なバンカーに当てはめながら読むと役立つことでしょう。

1) The Runner(ランナー)ピンまで長く転がすショット

・ボール位置はスタンス中央とし、オープン・スタンス
・クラブフェースが空を向くほどオープンにし、ピンの右数フィート(1メートル以内)を狙う
・早めにコックしてクラブを急速に肩の高さまで縦に上げる【バックスウィングは短く、ほとんどコックするだけ】
・ボール後方1インチ(約2.5センチ)にアンコックして、大きいフォローをする
・私の場合、1/3を空中に浮かべ、残りを転がす

2) The One Bouncer(ワン・バウンサー)顎の高いバンカーでピンまで宙を飛ばすショット

ボールは高く上がり、カップから数フィート(1メートル以内)に届く。ゆっくりスウィングするのがコツ

・ボール位置は左踵の前方でオープン・スタンス
・クラブフェースが空を向くほどオープンに構える
・早めにコックしてクラブを急速に縦に上げる
・ゆっくりスウィングし、高く大きなフォロースルーをとる

3) The Stab(スタッブ)ボールがやや砂に埋まっている場合

これはバンカーからピンまであまり距離がない場合に、ゆっくり舞い上がらせるショット。

・ボール位置はスタンス中央
・ボールが砂に埋まっているとしてもクラブフェースを数度オープンにする
・早めにコックし、右肩の高さのバックスウィング
・攻撃的な力でクラブを振り下ろし、そこで止める。
*距離を長くしたければ、オープン・フェースの度合いを減らす

 

4) The Softee (ソフティー)良好なライから急速にボールを上げ、すぐに止めるショット。【上のヴィデオ参照】これはSeve Ballesteros(セヴェ・バレステロス)から教わった手法。

・ボール位置はスタンス前方でオープン・スタンス
・クラブフェースはオープン
・コックしながら縦に振り上げる
・ダウンスウィングで左グリップの三本指(中・薬・小指)を緩める(緩めるだけであって、離してはならない)
左の指を緩めることで右手主導のアンダースローのスウィングとなる
充分加速しないと、砂に負けて振り抜けないので注意
このショットは良好なライでなければやってはいけない

(August 18, 2021)

チップショットの狙い方

 

私はパットのアドレスをする時、左膝をグッと右に押し込みます。何年か前に鏡の前で練習していて、両足をターゲット・ラインに平行に揃えると、肩は自然にオープン(ターゲットの左を指す)になってしまうことに気づきました。様々に工夫しているうち、左膝を内側に押し込むと自動的に肩がスクウェアになることを発見し、この裏技によって随分パッティングが向上しました。ただし、これは私の身体的特徴に根ざすものでしょうから、どなたにでも役に立つかどうかは不明です。

ある日、パットの練習をしていて、ふっと「パットも方向性が大事。チップも方向性が大事。だったら、チップする時も左膝を右に押し込んで、肩をスクウェアにすべきじゃないか?」という想念が浮かびました。

チッピングの練習に切り替えてみると、上のアイデアはこれまでのチッピングの方向性を抜群に良くするものであることが判りました。なぜ、今までこのアイデアに気づかなかったのだろう?パットのアドレスとチップのアドレスを完全に別けて考えていたのが不覚でした。どちらも近距離でカップを狙うアクションですから、狙いをつける工夫も同一で当然だったのに…。

練習ラウンドのNo.6(396ヤード、パー5)で、私は三打目を右の崖下へこぼしてしまいました。ピンまでの飛行距離は25ヤードですが、ライが左足上がりの10°。【参照:「砲台グリーンの斜面からのチップ」(tips_197.html)】単純計算では35ヤードとして打つべきところですが、グリーンが早いので5ヤード減らして全体を30ヤードと見積もりました。斜面に平行に立ち、左膝を右に押し込み、「ピッチングとチッピングの距離調節」(tips_195.html)の要領で60°ウェッジでチップ。ボールはピンから30センチにつきました。してやったり\(^o^)/。

「鹿も四つ脚、馬も四つ脚」じゃありませんが、「パットもチップも同じアドレスをする」というのは遅ればせながらも“大発見"でした。

ある日、シニア・グループのゲーム開始前にチッピングの練習をしました。その時、気づいたのは左膝を内側に押し込むだけでなく、インサイド・アウト気味にスウィンングすると真っ直ぐ飛ぶということでした。その日のベスト・ボールのNo.16(上りの200ヤード、パー4)で私の二打目は残り30ヤード。この日のグリーンは湿っていたのでランを考慮せず、そのまま30ヤードとして打つことに…。左膝を内側に押し込んで、60°ウェッジをインサイド・アウトに一閃。ピンの手前1メートルに着地したボールは、ワンバウンドしてからぴたりとピンの横30センチにつき、文句無しのバーディ。“大発見"にスウィング軌道の発見が加わり、さらに磨きがかかりました。

 

(August 18, 2021)

Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)の 短いショットこそ長くスウィングせよ

 

'Secret of the Master'
edited by Sidney L. Matthew (Sleeping Bear Press, 1996, $22.00)

[Bobby]

「私のホームコース(East Lake Golf Club)のNo.13の寄せは、バンカー越えである上に、グリーンが早い。友人たちと廻っていたその日は追い風だったので、なおのこと難しかった。私はニブリック【編註:現在の9番アイアン】で、長めのバックスウィングをし、正しくボールを打った。上出来だった。バックスピンが思ったよりもボールを急停止させ、ピンから15ヤード(4.6メートル)についた。

一緒に廻っていた一人は私よりも5ヤードほどグリーンに近かった。私が打ち終えるとすぐ、彼は『こんな近くから打つのに、あれほど長いバックスウィングを見たのは初めてだ』と云った。私は『慌てふためくようなヒッティングを避けるためと、スムーズさとリズム感覚を増進するため、ここのところ何年もバックスウィングを長くすることを特に重視してるんだ』と答えた。『分った。見ててくれ』と彼は云って、楽な感じで急がずに打ち、ピンまで1.2メートルにつけ、彼はそのパットを成功させた。

次のホールへ向かいながら、彼は云った、『ああいうショットを、私はもっと短い幅でスウィングし、いつもチョロしたりトップしたりしてた。長いバックスウィングをしたら、打つまでに時間はたっぷりあるという気がするので急ぐ必要がなかった。クラブヘッドが仕事をしていると感じて、クラブヘッドに任せたんだ』

ここには、ドライヴァーから短いパットまでを含めた全てのショットに関連する、最も重要な教訓がある。それはまた、それを考えようともしないゴルファーをぎょっとさせるものでもある。ダッファーが連続でギクシャク、びくびくしたアプローチ・ショットをするのを見る時、空手チョップのようなスウィングでなかったら、どれほど彼はハッピーであろうか。彼が短いバックスウィングをする時、本能的にそれが充分でないと感じ、トップに達する前にクラブを引っ張り下ろしてしまう。その慌てふためいた動作は、身体のバランスを崩し、スウィングのリズムをも壊してしまう。

ほぼ全ての一般ゴルファーがオーヴァー・スウィングを恐れる。彼らはコンパクト・スウィングという美辞麗句に影響されている。程度の差はあれ、あまりにも短いバックスウィングは一般的過ちである。バックスウィングに数センチ加えることによるスウィング幅の余裕と時間は、引き攣ったような動きを排除し、全体のプロセスをスムーズにする」

[icon]

「バックスウィングに数センチを加える」という考え方は、パッティングにも使えます。方向はいいが必ず10センチほどショートする…というような事態が続いたら、バックストロークを数センチ長くするのです。ショートするのは、その日のメンタルな距離感が正しくないか、「オーヴァーすると大変」という恐怖感が筋肉にブレーキをかけているのでしょう。バックストロークの余分な数センチがそれを解決してくれます。何しろ、《届かなければ入らない》のは科学的事実なのですから。

(September 06, 2021)

加速してパットせよ

 

私のいつものパット練習法は、四つのボールをカップから8メートルぐらいの距離に転がし、それを寄せる(出来れば沈める)ように努力します。カップから最も遠い距離のボールに合わせて、東西南北にボールを配置し、それらを沈めようとします。

先日その練習をしていて、ボールがカップに易々と沈む場合と、そうでない場合があることに気づきました。1メートル以内ですから読みの問題ではなく、ストロークの問題に間違いありません。

しばらく練習するうちに成功と失敗を別ける要素に気づきました。成功するパットはボールに勢いがあるのです。「勢い」と云っても強く打たれたボールという意味ではありません。強く打たれたボールは弾むように転がりますが、勢いがあるボールは伸びやかに、止まりそうで止まらずにどんどん進むという感じ。こんな風に「ああ、ショートか?」と思ったボールが思いがけずカップに到達し、ころんと転げ込む…という経験は誰もが何度か経験している筈です。それが勢いのあるボールです。

[pendulum]

どうやったら勢いのあるボールを生めるか?色々考えました。先ず浮かんだのは、同一速度でストロークしてはいけない、それでは加速出来ず勢いも生じない…ということでした。時計の振り子も、両端で静止するかのように速度を緩め、最低点へと向かいながら加速します。Wikipedia日本語版には「振り子は、重りが左右いずれかの位置にあるとき位置エネルギーを持つ。重力により下に引かれると加速し運動エネルギーとなり、一番下で最高速になる」と書かれています。

人間の場合、われわれの多くは重力など無視してストローク全体を人間の腕・手でコントロールしようとします。重力を無視して、全行程を同一速度でストロークするのでは振り子の自然な動作を模倣出来ず、「弧の一番下(ボール位置)で最高速になる」という勢いも生まれないのです。

どうやったらバックストロークのトップから徐々にボールに向かって速度を上げられるか?人間がストロークをコントロールするのではなく、振り子運動のように重力に任せるべきではないのか?そのためには時計の振り子に倣って、トップでパター・ヘッドをナノセカンド静止させるべきではないか?これが私の結論でした。

やってみました。5メートル以内なら、これはいいです。カップを見て距離感を合わせながら充分に素振りを実行して、バックストロークの幅を決定しなければいけませんが…。読みさえ良ければ、成功の確率は高いです。1メートル前後なら失敗する方がおかしい…という感じ。

しかし、8メートル、10メートルとなるとパワー不足でショートします。重力だけでなく、手・腕のパワーも必要になるので、もはや「時計の振り子」を逸脱してしまいます。「トップで一時停止」が有効なのは5メートル以内と考えるのが妥当です。

(October 03, 2021)

Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)の ボール位置

 

[Bobby]

'Secret of the Master'
edited by Sidney L. Matthew (Sleeping Bear Press, 1996, $22.00)

「スタンスを取った時の足を基準にしてどこにボールを置くべきかというのは、熟達者たちの間でも合意に達することが難しい問題だ。だが、熟達者と中級者を観察していて一般論として云えることは、あまりにも右足近くにボールを置くべきではないということだ。

フル・ショットでフックもスライスもしないボール位置は、およそ左踵の前方であり、そこから左右どちらにも5〜8センチも外すべきではない。一流のゴルファーでなくても、どのホールでもボール位置は一定にすべきである。しかし、ボール位置が少しずつ右足に忍び寄って来る傾向は誰にも避けられない。それは100人中99人に起る症状で、誰かが指摘してくれるか、失敗続きによる自暴自棄からボール位置を変更するまで続く病気である。

"Stay behind the ball"(身体をボールの後方に留めたよ)という助言がある。これはスウィングの間じゅう、身体をボール後方に留めれば、ボールを正しく打ち抜くことが出来るという意味だ。もし、ダウンスウィングで体重を早期にターゲット方向に移してしまうと、醜悪な引っ掛けフックを得る結果となる。これを防ぐには体重を右足に留めるかもっと後方にするしかないが、それはスライスやトップの病の始まりである。【編註:私は右膝の上でダウンスウィングを行うように努力しています。この方法だとフックやプルを防ぎ、真っ直ぐボールを打ち抜けます】

整理すると、もしボールを右足側に置いた場合は、急激に下降する一撃で打たねばならなくなる。だが、ボールがターゲット方向にあるなら、スウィングのトップで"Stay behind the ball"(身体を後方に留めたまま)の体勢が得られ、スムーズに打ち抜きながら体重移動を達成出来る。

ボールは、クラブで叩き切るようなスウィングを強制するスタンス後方ではなく、振り抜ける位置に置くことを薦める」

(November 01, 2021)

60センチに精魂を込める

 

ロングパットは別として、われわれが是非とも沈めたい、そして沈められるチャンス大なのは2メートル以下のパットでしょう。その場合のストローク幅はたったの60センチ前後でしかありません。バックストローク30センチ+インパクトまで30センチ。ところが、われわれは往々にしてその60センチの作業をおろそかにして、大事なパットに失敗します。

結果見たさのルックアップ(=ヘッドアップ)や、緊張のあまり上の空でボールも見ずにパット。機械的動作の遂行にがんじがらめになった、ぎくしゃくしたストローク。これらのミスはたった60センチの業務遂行に集中していない結果です。結果やストローク手順など他のことに集中していて、パターのスウィートスポットでボールをしっかり打とうという気持ちが消え失せているのです。これは私自分のミスから導き出した結論です。

[FLW]

私は《60センチの作業に精魂を込める》という心構えでパットしたいと思います。「集中する」というレヴェルでなく「精魂を込める」という気持ちになりたい。これはスウィートスポットで、精密に真っ直ぐ打ち抜くために必死の努力をするという姿勢です。パットの距離全体について精密作業を行うなどということは到底不可能ですが、目の前のたった60センチのパターヘッドの往復だったら可能です。

読みが悪ければいくら60センチに精魂を込めても無駄です。しかし、読みが良くてもストロークが悪ければボールはやはりカップに沈みません。そういうミスを防げれば、1ラウンドで2〜4ストロークは節約出来るでしょう。それがイーグル・チャンスやバーディ・チャンスであれば、更にストローク数が減ることになります。

400メートルリレー走を考えてみましょう。あなたの使命は400メートル全体を走ることではない【=パット全体の距離ではない】。その一部の100メートルを全力で走り、次走者に正確にバトンを渡すことだけが使命である。【=60センチの作業を精確に遂行することだけが自己責任である】あなたは400メートル走全体の出来映えには関与したくとも出来ないので、勝ち負け【=パットの成功/不成功】を心配しても意味がない。自分の責任を完璧に果たすことだけが求められている。つまり、全体を考えるのではなく、その一部【=60センチの作業】の完全遂行に精魂を込める…ということです。

目の前の60センチの作業が正しく行われれば、心配しなくてもいい結果が生じるものです。"One step at a time."(一歩ずつ前進)の、その一歩が目の前の60センチだと思うようにするのです。

(November 01, 2021)

Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)の 長いクラブを短く振るか、短いクラブを長く振るか

 

[Jones]

'Secret of the Master'
edited by Sidney L. Matthew (Sleeping Bear Press, 1996, $22.00)「ゴルフで興味深いことの一つは、グリーンに近づけば近づくほどショットが難しくなるというものだ。特にバンカー越えで、固いグリーンでボールを止められない場合にそれが云える。

覚えておくべきなのは、アイアンで歯切れ良く打たれたボールは止まりやすいということだ。7番アイアンのピッチングをする多くのプレイヤーが、上のような事実を考慮しない。彼らにとって短い距離でビシッと打つことは不可能なのだ。

グリーンでピタと止まるボールを打つには、長いクラブを控え目に打つより、短いクラブを精一杯打つのが上策である。私は長いクラブの穏やかなショットでなく、よく9番のフル・ショットをする。その方法だとボールを止めるために非常に精確に打つ必要がないからだ」


【おことわり】画像はhttps://www.gpb.org/にリンクして表示させて頂いています。

(November 09, 2021)

ティーアップの高さとドライヴァーのアドレス位置

 

現在、私は7センチのティーを用いてティーアップし、その遥か後方でドライヴァーをアドレス、上昇軌道でボールを打って距離を稼いでいます。

[teeup_15cm]

ほぼ四年前、私は8.3センチのティーを目一杯高くして地面に刺し、その後方15センチにドライヴァーのフェースを置いてアドレスして(右図)満足出来る飛距離を得ていました。ボールを見つめながらスウィングするのでなく、あくまでもドライヴァーの真ん前(図の青丸)の地点を見つめながらスウィングします。そこがスウィング弧の最低点となり、15センチ前方のボールを上昇軌道で打つ…という仕掛けです。超長い滞空時間によって飛距離も伸びます。当時、227ヤード(パー4)でのティー・ショットをグリーン横に放ったりして、“当社比"の飛距離は最高でした。

しかし、ワン・ラウンドに多くて二回ほどテンプラが出るのが玉に瑕でした。高ぁ〜〜く上がるだけ上がったボールが約50ヤード先にポトンと落ちるのを見るのは恥ずかしい限りです。これはティーアップの高さが悪いのではなく、「かっ飛ばそう!」という強い意識がインパクト・ゾーンで身体をターゲット方向にスライドさせるため、ドライヴァーのクラウンでボール下端を打ってしまうのが原因でした。

そう分っていてもたまさかのテンプラが恐い私は、その後7センチのティーに変えました。当然ボールとクラブヘッドの位置も変わりました。

[teeup_27cm]

ところが不思議なことに7センチのティーにしてから、ナイス・ショットが出るのはクラブヘッドをハンドル(=グリップ、約27センチ)の長さだけ後方にした時であることに気づきました。8.3センチのティーで打っていた時より12センチも後方です。ボールの27センチ後方を仮想のボール位置(図の青丸)として身体の中心に合わせると、実際のボール位置は自然に左爪先の前になります。実際のボールではなく、身体の中心の前にある仮想のボール位置を見つめながらスウィングするのは以前と同じです。

問題は正式のラウンドではハンドルを尺度としてアドレスしたり出来ないことでした(ルール違反)。

あれこれ脳味噌を働かせた末、妙案を得ました。立ったまま右腕を伸ばし、人差し指をボールに重ね、中指と薬指を折って小指が指す位置にドライヴァーのフェースを置けばハンドルの代わりになるのです【図では判らないでしょうが、身長164センチの私が伸ばした手とボールは上下に約94センチ離れています】。この際、人差し指と小指を突っ張らずに自然に広げます。でないと距離が2センチも増えてしまいます。

[teeup_27cm]

この方法でドライヴァーをアドレスするようにしたら、大袈裟に云えば快打の連続でほくほくさせられています。まこと「窮すれば通ず」で、ちゃんと名案が浮かぶものです。

なお、左肩の捻転も実際のボールではなく、仮想ボールの位置まで廻します。私の場合、それ以上でも以下でもボールは正確に飛ばないことが判っています(練習による結論)。また、ボールを上げようとせず、水平軌道でスウィングします。後方に配置したヘッドで自然に打ち上げるセッティングを既にしてあるわけですから、それ以上空中に上げる努力は不要なのです。

頻繁にラウンドしている時は、どれだけボール後方でドライヴァーをアドレスするか…など迷うことはなく、「近過ぎるか?」「遠過ぎないか?」…なんて思うこともありません。ボールとドライヴァー間の距離は本能的に適切に決められます。しかし、悪天候が続いたりしてラウンドが間遠になると、ボールとドライヴァーの距離が曖昧になったりします。あまりに近過ぎるとプッシュしますし、あまりに遠いとプルになります。どちらもスコアの大敵です。

ボールの後方にドライヴァーをセットし、「これでいい!」と思ったらそのまま打ちますが「待てよ?」といささか不安になった時だけ、右手を伸ばして幅をチェックします。


(November 09, 2021)

身体条件に合わせてスウィング

 

以下は私の身体の構造に特化した体験談ですが、似たような原因なのに気づかないまま伸び悩んでいる方もおられるでしょうから、多少は参考になるかと思います。

[posture]

若い頃デパートでズボンを買うと、裾上げして貰うのが常でした。店員は普通ズボンの片方の裾の寸法しか計りません。その店員が左脚だけ計って裾上げすると、私のズボンの右裾が異様にに擦り切れてしまうことに気づきました。それ以後、両方別々に計って裾上げするよう頼むことにしました。

その時点で私は自分の体型が左右均等でないことに気づくべきだったのですが、人間の身体は左右対称の筈だと思い込んでいたため、私は自分の姿勢や歩く癖が原因だろうとしか考えませんでした。

私のドライヴァーによるショットは、なぜか狙ったところより10ヤード程度右へ出る傾向がありました。仕方なく、私はその差を相殺すべく10ヤードほど左を狙って、フェアウェイ中央に打つという対症療法をとっていました。

50歳を越える頃このサイトを始め、いろいろなゴルフ本を読んで、脚の長さが違うゴルファーが注意すべきことを書いた記事にいくつも出会いました。ジャック・ニクラスやパット名人のデイヴ・ストックトン、カナダのプロ、ジョージ・ヌードスンなどが左右の脚の長さの違う代表です。

そして同じ町に住みクリーニング店の裁縫師として働いている日本婦人から、「寸法直しの注文の大半はズボンやスラックスの裾上げだけど、左右の脚が同じ長さの人っていないみたい」という話を聞きました。

「体型別スウィング【微調整ポイントの相性を知れ】」(tips_165.html )に、こうあります。 「もし、あなたの脚の一方が他方より長ければ、腰の一方が他より高くなる。ゴルフ・スウィングにはバランスが不可欠だから、どんなスウィングをするにしてもアドレスで双方の腰を水平にする必要がある。あなたの右脚が左より長いのであれば、左右の腰が水平になるまでスタンスをクローズにすることを基本にすると、あなたの基準の体型にマッチさせられる。逆に、左脚が長い場合は、両方の腰が水平になるまでスタンスをオープンにする

この記事は2015年の10月に紹介したものです。それ以後六年間、私はこのtipをドライヴァー・ショットに応用すべきことに気づかず、「なぜか狙ったところより10ヤード程度右へ出る」などと能天気だったのです。お粗末極まりない話(^^;;。

[length]

さらに私は「脚の長さの違いは、両手の向きに影響する」(http://www2.netdoor.com/~takano/golf/tips_169.html#difference)という記事によって、私の手も右が長く左が短いことに気づきました。よく考えれば私の目も右が大きく左がやや小さい。私の右サイドは上から下まで左より大きかったり長かったりするのです。

私は自分の体型が生み出すミスを防ぐべく、パッティング・ポスチャーを再点検しました。等身大の鏡を横に置いてパッティングのアドレスをすると、自然に肩がオープンになってしまうではありませんか。それをスクウェアに直すには左膝を内側に押し込むしかないことを発見しました。この動作一つで肩の線がターゲットにスクウェアになるのです。スタンスをクローズにするのは度合いが難しいですが、左膝を内側に押し込むのは簡単明瞭です。

私のドジさ加減は、2016年に発見した上の調整法をパッティングのみに限定していたことでした。ドライヴァーを打つのもアイアンを打つのも同じ体型のゴルファー(私)なのですから、全てのショットの前に左膝を内側に押し込むべきだったのです。ようやく、チッピングにもこの調整法を適用すべきだと悟ったのは今年(2021年)の8月でした。

そして、2021年も11月に入って、ようやく私は《全てのショット(ストローク)で左右の脚の長さの違いを相殺するアドレスをすべきだ》という結論に達しました。

ドライヴァーからパターまで、どのクラブを用いる時にも左膝を内側に押し込み始めてから、私の狙い方は非常にシンプルになり、ボールも狙ったところへ真っ直ぐ飛ぶようになりました。いやあ、気がつくのが遅かったですが、気がつかないよりはマシだと思うしかありません。前途は明るいです\(^o^)/。

【参考】
・パッティング・ポスチャー再発見 tips_120.html#posture
・右脚が左より長いゴルファーへの警告 tips_169.html#warning
・脚の長さの違いは、両手の向きに影響する tips_169.html#difference

トップの画像はhttp://www.golfsw.com/にリンクして表示させて頂いています。

(November 15, 2021)

Chuck Cook(チャック・クック)のバンカー・ショット

 

やってみると、これが一番理に叶っています。ボールの後ろ何センチなどという、われわれに不可能な技法とはおさらばすべきです。

インストラクターChuck Cook(チャック・クック)は、三人のU.S.オープン優勝者Tom Kite(トム・カイト)、Corey Pavin(コリィ・ペイヴン)、Payne Stewart(ペイン・スチュアート)らのコーチでした。

'Perfectly Balanced Golf'
by Chuck Cook with Roger Schiffman (Doubleday, 1997)

「スウィングの最底辺で砂を削るためには、ボール位置を左頬と左脇の下の間にすべきだ。

ボールの下を振り抜くためにはボール後方の砂を打つべきなのは明らかだが、私の生徒たちの多くがボールの遥か後ろを打つミスを犯してチョロってしまう。だから、私は(ボール後方ではなく)『ボールそのものを見て、そのボールの下を打ち抜け』と教える。

【編註】右のヴィデオはボールの下にティーを埋め込み、そのティーを弾き出すという練習法です。ボールの下にクラブを打ち込めば、ボールは何の苦もなく飛び出すということを教えてくれます。

悪いライや湿って固いライでは、クラブのフランジ(バウンス)ではなくリーディング・エッジを使うため、ハンド・ファースト(両手がボールの前になる構え)でアドレスする。

 

目玉ではフォロースルーなど考えず、クラブヘッドを砂に打ち込んで潜らせ、その弾みでボールを飛び出させる(この場合、ランが多いので注意)。

砂が非常にソフトでさらさらしていると、クラブは通常より砂にめり込み易いので、ボールの飛行距離が短くなる。それに抗するにはピッチング・ウェッジ、9番アイアン、極端な場合は8番アイアンなどを用い、あたかもサンドウェッジを使っているかのようにクラブフェースをオープンにしてスウィングする。これには練習と自信が必要だが、必ず役に立つ」

(November 15, 2021)

ボールを自在に曲げてスコアを減らす

 

初心者は曲がるボール軌道を真っ直ぐにしたいわけですが、中・上級ともなると普段真っ直ぐ飛ぶボールをたまに曲げなくてはなりません。目の前の木を迂回してグリーンに寄せたり乗せたり、池の端から迂回してグリーンに近づけたりする必要があるからです。これらは「インテンショナル(意図的)・スライス」、「インテンショナル・フック」と呼ばれます。

[curving]

ボールの軌道を曲げる方法はいろいろあります。

○ グリップ・プレッシャーで曲げる

きついグリップ圧だとフェード/スライスが出易い(註:必ず出るとは断言しません)。きついグリップでは手が返りにくいので、クラブフェースがオープンなまま保たれるからです。逆に、緩いグリップ圧だと手が返り易いのでクローズ目のクラブフェースによってドロー/フックが出易い。グリップ圧だけに頼った場合、ボールはカーヴせずに真っ直ぐ右へ行ったり(プッシュ)、真っ直ぐ左へ行く(プル)になり易いので注意。

○ ボール位置で曲げる

通常、ドライヴァーのボール位置は左足踵の前方、アイアンのボール位置はスタンス中央からやや左とされています。こうした位置で打ち慣れている人が、ボール位置をもっと右に寄せるとボールは右に出ます。クラブフェースがスクウェアに戻る以前のオープンな状態でボールと接触するからです。反対に、ボールをもっとターゲット寄りにすると、クラブフェースがクローズ目になりかけたところでボールを打つため、ボールは左へ出ます。どちらの方法の場合も、スウィング次第(速度やグリップ・プレッシャー加減)でボールは全くカーヴせず真っ直ぐ右へ行ったり(プッシュ)、真っ直ぐ左へ行ったり(プル)することがあるので要注意です。

○ クラブフェースの向きで曲げる

ターゲット・ラインにスクウェアにクラブフェースを揃えた後、僅かにオープンなフェースに調整してスウィングすると、ボールは右にカーヴします。オープンの度合いによってフェードになったりスライスになったりします(スウィング軌道によってはプッシュにもなる)。逆に、クラブフェースをクローズ目にすればドローやフックになります(スウィング軌道によってはプルにもなる)。この後者の場合に気をつけなければいけないのは、フェースが伏せ目になるためボールが上がり難くなり、ゴロが出易くなることです。フェースをオープンにするのは問題ありませんが、クローズにするのはあまりお勧め出来ません。

○ 肩の回転で曲げる

David Leadbetter(デイヴィッド・レッドベター)が“最も簡単な方法"と自賛するのは、インパクト・エリアでの肩の回転でボールをコントロールするアイデア。フェードは遊園地の大観覧車のように肩を垂直回転させ、ドローは肩の高さを変えずにメリーゴーラウンドにように水平回転させるというものです。

[Hook and Slice]

○ 意図的スライス/フック

中・上級者には、この方法が最も確実で効果的な方法です。ただし、充分に練習してからラウンドで用いるようにすべきです。

【注意】以下の方法を完全に実行したつもりでも、ごく僅かな手違いでスライスやフックがかからず、真っ直ぐ突き抜けてしまうことがあり得ます。右の木は避けたものの、遠くの左の林に打ち込んでしまう…などというミスです。それを避けるため、真っ直ぐ突き抜けたとしても遠くの林には届かないクラブを選ぶのが賢明です。目的は目の前の邪魔な木を避けることです。ウェッジでちょんと横に出すよりは、少しでも距離を稼げればいい…という風に考えましょう。木を迂回してグリーンに乗せ、拍手喝采を受けたいという野望は捨てるべきです。

1) 先ず飛行線を定めます。よく見かけるのは、グリーンの旗竿を狙ってクラブフェースを揃えるという方法ですが、目の前の木や木の枝が旗竿を隠している場合、ボールは木を直撃しがちです(経験者は語る)。私は木の枝の先端5〜7ヤード外側を通る安全な軌道を想定し、それをターゲット・ライン(緑色の線)としてクラブフェースを直角に揃えます。
2) そのターゲット・ラインに平行に暫定的に両足・両肩を揃えます。
3) クラブフェースの角度を変えないように注意しながら、両足を(黒線のスタンス・ラインのように)、スライスをかけたい場合はオープンに、フックさせたい場合はクローズにします。【この間クラブフェースの角度は絶対に動かしてはいけません】そのオープン、クローズの度合いは、ボールを曲げたい度合いに比例します。
4) スライスをかけたい場合はきつめのグリップ、フックを打ちたければゆるめのグリップをします。
5) スタンス・ラインに平行な赤線のスウィング・ラインに沿ってスウィングします。両足がオープンであれば自然にアウトサイド・インのスウィング軌道になるためボールはスライス軌道で飛び、クローズだと自然にインサイド・アウトで振ることになるのでフック・ボールになります(4でセットしたグリップ圧も助けてくれます)。
6) スライスの場合は、手首を返さずターゲット方向に振り抜くアップライトなフォロースルーを行なうことが肝心。これ抜きでは「画竜点睛を欠く」ことになり、うまくスライスがかからない恐れがあります。フックの場合は手首を返しフラット目なフォロースルーをします。

【注意】図のスライスでは一見ボール位置が左足に近いように見え、フックでは右足に近いように見えますが、実際にはボールはスタンスの中央であり背骨の真ん前であることに注意。このアドレスにならない場合は調整が必要です。

○ 副作用

ボールを曲げることが出来るようになると、ごく普通のスウィングでごく普通の軌道で攻めることが出来る場面なのに、ボールを曲げてみたい誘惑に駆られることがあります(経験者は語る)。ボール位置から何の邪魔物にも遮られずに旗竿が見えるのなら、素直にストレートなボールを打つべきです。ボールを曲げるのは非常時のテクニックと考える方が無難であって、曲がらずに突き抜ける危険を冒すべきではありません。また、木の枝の下を転がしても充分な距離が得られるのであれば、その場合もボールを曲げるより転がすべきです。

【おことわり】トップの画像はhttps://scramble.golftec.com/にリンクして表示させて頂いています。

(November 23, 2021)

目測と歩測の乖離

 

私のピッチ・ショットは80ヤード=PW、70ヤード=GW、60ヤード=SWです(どれもフル・ショットではなく80%ぐらいのスウィングですが)。50ヤード以下はロブ(60°)・ウェッジです。ボールがカップから50ヤード以内に近づいた時、私はボール後方からのヤーデージではなく、側面からヤーデージを調べます。

[No.9]

ボール後方から見るだけだと、距離は望遠鏡(あるいは望遠レンズ)で見るように詰まって短く見えます。しかし、側面に廻ってみると意外に距離が長いことが判ったりするものです。

歩測は時間がかかりラウンドのペースを遅くし同伴競技者を苛々させるので、私は目測で処理することにしています。10ヤードを単位にして10、20、30…という風に目測します。その結果によって、一定のスウィングで60°ウェッジを短く持ったり長く持ったりして距離を調節します。【tips_195.html#simple_edition】 多くの場合、目測の結果とウェッジを持つ長さの選択は完璧で、ダフったりへろへろ球を打たない限り距離ぴったりに打てます。

ところがです。たまに目測した距離が正しいかどうか歩測してみると、これが大幅に違うのです。一例を挙げれば、写真のようにNo.9のグリーンをオーヴァーした場合を想定してチップしてみました。ボールからピンまでは目測で30ヤード。60°ウェッジを30ヤードとして握って打った三個のボールはピン傍数10センチに寄りました。ところがボールからピンまで歩測したところ18歩でしかありませんでした。私の一歩約80センチはヤードに換算すると0.87ヤード。ですから、0.87 × 18=15.67ヤードで目測の半分でしかなかったのです。

No.14のバンカー越え。GPSヤーデージ・ファインダーはグリーン中央まで38ヤードと表示しています。私の目測では40ヤード。三個のボールがピン傍に寄りました。しかし、バンカーも遠慮せずにずかずか突っ切って歩測してみると、何とたったの29歩。換算すると25ヤードという勘定でした。目測と歩測は15ヤードも差がありました。

No.17のグリーンにショートした場合を想定し、テストしてみました。目測で15ヤードとして打ったボールは四個のうち三個がピン傍に寄りました。歩測した結果は13歩で、11ヤードでした。

私の目による10ヤードの感覚は凄く短いようです。目測と歩測の差に一定の法則があれば、調整することも可能ですが、そういう法則は見当たりません。では、どうするか?どうもしないつもりです。全然寄らないのなら対策を講じますが、私の目測した距離で打ってピン傍につくのですから、それを信じてプレイするのが正しいと思っています。歩測や実際の距離などどうでもいいのです。

(November 23, 2021)

ほとんど芝がないグリーンでパットするコツ

 

高いグリーン・フィーを払う日本のコースでこんなことはないでしょうが、たまたま芝の種を追い蒔きする前後にこのような状況に遭遇するかも知れません。

これはプロやコーチの言ではなく、私の経験則に過ぎないことをお断りしておきます。

・芝が生えていない場合、転がるスピードは倍近くになる

ほとんどビリヤード台でボールを転がす感じです。特に下りのラインでカップをミスすると「あれよ、あれよ」と云う間にピン一本分ぐらいオーヴァーしてしまいます。3パットに繋がるので要注意です。

・読まずに真っ直ぐカップを狙う

芝がなくても勾配は厳然とあるわけですから、カップが左下がりの勾配に切られていたらカップの右を狙うのが普通でしょう。しかし、なぜかそうすると失敗します。禿げたグリーンでは気の利いた真似をせず、子供のように迷わずカップを直接狙って打つのが一番です。多分、転がるスピードが増すので、勾配の影響を相殺するのではないでしょうか。

・成功しなくて当然と考える

尋常でないグリーンには芝が生えているところ禿げているところが点在するため、イレギュラーなバウンスに見舞われて真っ直ぐ転がりません。悪態をついたり自分を責めてもグリーンがよくなるわけでもないので、パーが得られればラッキー、ボギーで当然、ダボでも仕方がないと考えるべきです。芝が生え揃うまではパット数で悩んだりせず、ティー・ショットとアプローチ・ショットの腕を磨くことに重きをおくという考え方がいいと思います。

(November 23, 2021)

斜面を克服してスコアを減らす

 

[slope]

ゴルフ場の地面というものは練習場のように平らではありません。爪先が上がったり・下がったり、左足が上がったり・下がったり、千変万化します。ゴルフに入門し、練習場で真っ直ぐ適切な距離を打てるようになった人も、斜面に正しく対処出来るようになるには数年の経験が必要でしょう。しかし、以下のような原理を知っていれば、数年もの時間を無駄にせずに済む筈です。

○ 斜面の公式

普通、斜面のショットは「爪先上がり」、「爪先下がり」、「左足上がり」、「左足下がり」と表現されます。「踵上がり・踵下がり」とか「右足上がり・右足下がり」などとは表現されません。

以上の前提に立てば、非常にシンプルな公式が成立します。《「上がり」というケースでは、ボールは常に左に出易い。「下がり」という場合にはボールは常に右に出易い》 …ですから、その分を相殺するだけ右か左を狙わなければなりません。

なぜ、斜面では右や左に出易いのか?それを説明してくれる雑誌記事や本にお目にかかったことはありません。説明がないのは当然で、斜面では自然にフェースがクローズになったりオープンになったりするのです。われわれはそのクラブフェースの角度を相殺してターゲットを設定する必要があるわけです。


[slope]

○ 斜面プレイの必須条件

斜面のショットで最も大切なのは、斜面に平行に立つことです。足・膝・腰・肩などを全て地面の傾斜に揃えます。こうしないと、打ち上げ/打ち下ろしのどちらの場合でもトップします。

次に重要なのは体重を移動させないこと。斜面で身体の中心を動かすと、重力の作用で往々にしてアドレスの体勢に戻れなくなり、ダフったりトップしたりしがちです。大振りも厳禁で、3/4スウィングが適切です。「体重を移動させないと充分な飛距離が得られない」、「フル・スウィングをしないと届かない」と感じたら、長いクラブを選ぶべきです。

私は経験上、次のような調節を行なっています。

○ 上り斜面

ピンの根元が見えない程度の左足上がりの場合、ヤーデージに10ヤード足す(地形のせいで自然にクラブのロフトが増え、距離が減ってしまうため)。ピン全体が見えない左足上がりの場合は20ヤード足す。

ピンの1メートルほど右をターゲットとする。斜面に平行に(右膝・右肩を下げて)立ち、ボールはスタンス後方【普段プルしない人はスタンス前方】。ターゲットに向けて足・腰・肩を揃える。

フル・スウィングを10としたら、7〜8のバックスウィング(大振りはしない)。プルが出易いので、インパクトで手首を返さないようにする(ターゲット・ラインに沿ったフォロースルー)。

[down hill]

○ 下り斜面

左足下がりの斜面ではクラブのロフトが減るためボールが低く出易い。低いボールだと飛距離が減ってしまうので、下り勾配であれば20〜25ヤード足して打つ。

ピンの1メートルほど左をターゲットとする。斜面に平行に(左膝・左肩を下げて)立ち、ボールはスタンスの後方。ターゲットに向けて足・腰・肩を揃える。

フル・スウィングを10としたら、7〜8のバックスウィング(大振りはしない)。プッシュになり易いので、両手を内側に引き込む(アウトサイド・インの)フォロースルー。

なお、ピンの右・左にどれだけの距離を見積もるかは、ピン迄の距離と勾配に左右されるので、上の数字は目安に過ぎません。上りでも下りでも距離が減るというのが面白い点だと思います。

○ 打ち上げ・打ち下ろしのラン

斜面の打ち方のおまけとして、次のような情報を付け加えておきます。

a) かなりの打ち上げになる場合、ボールはグリーンに落下した後かなり転がります。打ち出されたボールが一定の距離を前進する勢いを持っているので、飛行の途中で高いグリーンによって妨げられても、残っている勢いがランに転化するからです。

b) 逆に打ち下ろしの場合、一定の距離を飛行した後、着地点がかなり下方なのでボールは落下する一方となり、先へ進む勢いを失ってしまうため、ランは少なくなります。

・砲台グリーンの斜面からのチップ・ショットには、《左足上がりのライでは、10°毎に10ヤード足して打つ》という私が発見した公式があります。是非「砲台グリーンの斜面からのチップ【秘密の法則」をお読み下さい。

【参考】
・斜面の公式 (tips_57.html)
・爪先上がりのショット (tips_72.html)
・爪先下がりのショット (同上)
・左足下がりのライでは左足体重 (tips_124.html)
・砲台グリーンの斜面からのチップ【秘密の法則】 (tips_197.html)

【おことわり】左足上がりの画像はhttps://www.golfdistillery.com/にリンクして表示させて頂いています。

(December 01, 2021)

グリップ圧で軌道コントロール

 

「ボールを自在に曲げてスコアを減らす」(11/23)で「スライスをかけたい場合はきつめのグリップ、フックを打ちたければゆるめのグリップをすると、インテンショナル(意図的)・スライス/フックを打つ際の助けとなる」…と書きました。

上のtipは実は次のように応用出来ます。
a) 左にハザード(池やバンカー)がある場合は、きつめのグリップを維持する【絶対にプルさせない決意】
b) 右にハザード(池やバンカー)がある場合は、ゆるめのグリップを維持する【絶対にプッシュさせない決意】

このコツを“発見"したのは、ある日のラウンドでフェアウェイ左にある倒木を避けようとしたのに、ゆるめのグリップ圧によってプルしてしまい、見事に倒木の方向に打ってしまった時です。何がいけなかったのか瞬時に悟りました。左を避けたいのならきつめのグリップをすべきだったのです。

その数ホール後、グリーン正面のバンカーを避けてグリーンの右に打つことにしました。もちろん、きつめのグリップにしてプルを避ける決意。18°ハイブリッドによるショットは目論見通り真っ直ぐグリーンの右側に向かい、楽なチップ・ショットで寄せられるいい位置につきました。

 

私の頭は固くて融通が利かないんですね。グリップ圧の使い分けは、なにもインテンショナル(意図的)・スライスやフックを打つ時だけでなく、どんな場合にも利用出来るのに、今まで気づかなかったのです。何たる唐変木。

首うなだれていた時、なぜか突然最近のいいショットの記憶がいくつか蘇りました。どれもがハイブリッドをきっちり握って打ったショットです。「そうか!」思い出しました。ハイブリッドは初心者用にデザインされているためか、ボールが(右ではなく)左に向かう傾向があります。きつめのグリップはその傾向を相殺し、真っ直ぐのボールを生み出してくれるのです。

[angle]

きつめ、ゆるめというのは曖昧ですが、きついグリップ、ゆるいグリップ、そしてその中間…などの尺度はあります。図の右端のようにクラブを地面と平行にした時が最もきついグリップで、真ん中のようにクラブを垂直に立てた時が最もゆるいグリップになります。普通は左端のように45°にした時のグリップ圧が最適とされています。ですから、クラブを45°から身体の前方に少し倒せば「きつめ」、45°から身体の方に少し手前に引き寄せれば「ゆるめ」になります。

このグリップ圧コントロール法はごく小さな発見でしたが、実は非常に役立つテクニックです。真っ直ぐ打とうとしても曲がる危険は常につきまとうわけですから、安全な方角を約束してくれるグリップ圧を選ぶ策は有益です。そして私のじゃじゃ馬のようなハイブリッドを使いこなすアイデアも思い出させてくれました。これは今後の私のゴルフの質に間違いなくプラスとなってくれることでしょう。

【参考】
・適切なグリップ圧 (tips_52.html)
・スクウェアなグリップの秘訣(tips_199.html)
・ハイブリッドはフックするように出来ている(tips_177.html)

(December 01, 2021)

先行捻転セオリーの利用

 

「ティーアップの高さとドライヴァーのアドレス位置」(11/09)を確立した後、「では、約27センチ後方にしたドライヴァーのフェースは、ターゲットにスクウェアでいいのか、ややオープンにすべきなのか?」という疑問が湧きました。

すると、その疑問は即「先行捻転で飛ばす」という過去のtipを想起させました。先行捻転とは、本式にスウィングする前にテイクアウェイの部分を済ませておくという方式で、左膝・左腰・左肩を数10センチ後方に捩ったアドレスです。いわば合法的フライング・スタートというべきもの。かつて私はこの方法で自己最高の飛距離を得たことがあります。

[flying start]

7センチの高さにティー・アップし、その後方約27センチでアドレスするだけでも既にフライング・スタートしているわけですが、さらに先行捻転の技法で左膝・左腰・左肩を捩っておくのが理に叶っていると思われました。

先行捻転では、膝・腰・肩の後方への捻転に伴い、自然にクラブフェースが僅かにオープンになります。先行捻転を完全に実施するのではなく、単にボールの27センチ後方でアドレスする際にも、クラブフェースをややオープンにするのです。練習してみると、この若干のオープン・フェースがターゲットにスクウェアな弾道をもたらしてくれることが判りました。ボールから27センチ後方でターゲットにスクウェアなフェースで構えてしまうと、インパクトの瞬間にフェースがクローズ目になるらしく、ボールは左に真っ直ぐ飛んで行きます。先行捻転のセオリー通り、自然にフェースがオープンになるアドレスをするのがベストです。

また、先行捻転の技法を使う場合、バックスウィングでの左肩の終点は実際のボール位置ではなくクラブヘッドの前の仮想ボールの位置です。私の場合、これより浅くても深くても真っ直ぐ飛びません。

そして、テンプラを避けるために絶対に身体をターゲット方向にスライドさせない。また、インパクト・ゾーンでスウィング軌道を水平に保つ。これらが、高い軌道でボールを打つコツです。

ボール後方27センチでアドレスした場合と、そこからさらに先行捻転した場合の両方でテストしてみましたが、どちらの飛距離も変わりませんでした。現在の私にはボール後方27センチのアドレスだけで充分なようです。

【参考】
・先行捻転で飛ばす (tips_161.html)
・先行捻転・再履修 (tips_195.html)

(December 11, 2021)

裸地からの脱出

 

以下の二つの本の著者・編集者は同一人物で、記事の趣旨もほぼ似通っているので、二つをミックスして紹介します。

[bare ground]

'Scrambling Golf'
by George Peper (Prentice Hall, Inc. 1977)

'Golf Magazine's Complete Book of Golf Instruction'
edited by George Peper et al. (Harry N. Abrams, 1997)

「先ずスコアカードの裏側をチェックし、救済措置の有無を確認する。ローカル・ルールで、いいライにドロップ出来るかも知れないからだ。

・長いショット

ディヴォット・ホールからのショット同様、地面より先にボールを打たねばならない。地面を先に打つとクラブは固い土で弾かれてトップしてしまう。パンチ・ショットのようにボールを摘まみ取らねばならない。

スクウェア・スタンスで、ボール位置は通常より後ろにし、両手はボールよりかなり前方で構える。やや広めのどっしり安定したスタンス。必要なら数回の素振りでその安定度を確かめる。手首を固くしてスムーズな3/4スウィングをする。両手が先行するダウンスウィング

ボールの前半分(ターゲット方向)に目を据えてスウィングする。こうすればボール後方の地面を打つことを防げる

このショットは普通低く出て転がるショットなので、距離にとって必要なクラブより1クラブ短いものを選ぶ。また、このような草のないライはウッド向きではないので、使わないように。

・短いショット

【編註】バウンスの多いバンカー用ウェッジは、バウンスが固い地面で撥ね返されトップするので使わない方が安全。

インパクトでヒット・ダウンすることが肝要である。ボール位置はスタンス中央。ハーフ・スウィングで、通常よりスローなバックスウィングをする。ダウンスウィングは下半身で開始し、両手がクラブヘッドに先行するインパクト。攻撃的なスウィングでボールとの歯切れの良いコンタクトを目指す。

ボールは低く飛び、二、三度跳ねてから停止する。着地後のランを計算して着地点を定めること」

【参考】
・裸地から寄せる(tips_135.html)
・ハードパン(裸地)からのショット(tips_153.html)

(December 20, 2021)

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