Golf Tips Vol. 188

視覚化を強力な武器とせよ

 

"swing key"(スウィングの鍵)とか"swing thought"とか呼ばれるプロたちの「留意事項」を集大成した本より。今回はJim Simons(ジム・サイモンズ、1950〜2005)の巻。彼はPGAツァーで三勝を挙げています。

'Swing Thoughts'
edited by Don Wade (Contemporary Books, 1993, $12.95)

「私はアマチュアとしての結構な経歴を持ち、そしてツァーで三勝もしていたのに、Jimmy Ballard(ジミィ・バラード)に教えを乞うまで、スウィングの何たるかを真に理解していなかった。彼はスウィングの最初から最後までコネクションを保つべきだと強調した。私にとってコネクションを保ち続けるベストの方法は、スウィングの鍵となる二つの位置(バックスウィングのトップとフィニッシュ)で、自分がどのように見え、感じるべきかを視覚化することだと悟った。

【編註】Jimmy Ballardが説く「コネクション」は、「ゴルファーは先ずがっちりと"connected"(結合された)アドレスで、身体各部の"connection"(結合、連結)を作り出さねばならない。そうするため、重量挙げのスタンスを模範としてほぼ肩幅の広さで、左足を僅かにオープン、右足は飛行線に直角、両膝を曲げる。この際、両肩・両腕・両手は"connected"(結合され)、三角形を形成する。バックスウィングで右脚に対して適切に"brace"(踏ん張る)するセットアップとなる。左上腕を身体に密着させ(結合)、身体の大きな筋肉(脚、上体、肩など)を使って手・腕をコントロールする」とまとめられます。

1978年のMemorial(メモリアル)トーナメントの最終ホールで、その二つの位置のイメージはとても役に立った。開催地であるMuirfield Village(ミュアフィールド・ヴィレッジ)は、とても注文の多いコースであり、優勝争いに参加するプレッシャーは激烈で、我を忘れてコントロールを失いかねない恐れがあった。私は、上の二つの鍵となる位置でどうあるべきかメンタルなイメージを得ること(そして、その位置で感じるべき感覚を実際に感じようと努力すること)が、プレッシャーの幾分かを軽減し、最終段階でいいスウィングを遂行する助けとなってくれた。

視覚化は非常に重要かつ有効な武器である。同じトーナメントの最終ホール。私が一打差で優勝するためにはパーが必要だった。ティー・ショットは良かったのだが、二打目をグリーンの左に外してしまい、それは死んだも同然だった。カップはグリーン左の中程に切られており、私には旗の天辺しか見えず、それがなおさらショットを難しくしていた。

 

こんなのは練習出来る代物ではないショットだったから、ますます困難であった。寄せる希望は唯一、どの程度高い軌道で、どこへ着地させ、どれだけブレイクし、着地後どれくらい早く転がるか…を完璧に視覚化することしかなかった。

視覚化し終え、どんなタイプのスウィングをどの程度の強さで遂行するか、そのフィーリングを得ようとした。私は六回かもっと多くの素振りをし、そのスウィングがどうあるべきか模索した。いったんそのフィーリングが得られたら、私はそれを直ちに実行に移した。

私は自分に可能なベストのショットを放ったのだが、ボールはカップを6メートル以上オーヴァーした。私はそのパットを沈め、ツァーで二度目の優勝を果たした」

【参考】
・「Jimmy Ballard(ジミィ・バラード)メソッド」①〜⑩(tips_151.html)
・「Jimmy Ballard(ジミィ・バラード)はなぜ有名でないのか?」(tips_152.html)
・「二つの視覚化」(tips_5.html)
・「視覚化技術向上法」(tips_26.html)
・「視覚化を超えて」(tips_95.html)
・「スウィング・キイ大全集・前篇、後篇」(tips_46.html)

(November 05, 2017)

目の疲れが緊張を生む

 

「体型別スウィング」の共著者(三人)のうち二人が執筆したシニアのための教本から、ゴルフに重要な視覚に関する注意事項。

'Play Better Golf for Seniors'
by Mike Adams & T.J. Tomasi with Kathryn Maloney (Henry Holt & Company, Inc., 1998, $29.95)

「『スポーツ視覚』の著者Dr. Leon Revienは『視覚は学ばれ、改善出来るものである』と述べている。目は、他の身体構造同様、筋肉によってコントロールされる。筋肉が強靭であればあるほど、よい視覚が得られる。『もし筋肉がちゃんと機能し、われわれの目が正しく位置していれば、それぞれの目からの神経インパルスは正確に脳の視覚神経に送られる。その刺激は、融合として知られているプロセスによって単一の三次元イメージに混ぜ合わされる。融合作用が弱い場合、それは視覚のための筋肉がコーディネートされないことを意味し、間違った身体動作の決定を下すことに繋がる』強靭な目の筋肉は疲れを防ぎ、視覚的能力を向上させる。

等距離にある二つの目標を選んでほしい。例えば250ヤードぐらい離れたフェアウェイ両側の何かを。それらに近づきつつ、どちらが実際には自分に近いかを決定出来るか、一心にみつめて研究する。この過程を、異なる距離(150ヤードとか80ヤードなど)で繰り返す。あなたの脳は、この視覚的実践によって、どう目標を位置づけるかを学ぶことが出来る。それはまた、鋭敏な知覚を学び、旗竿のような物体をもっと鮮明かつ明確に認識出来るようになる。視覚を鋭敏に研ぎすますには、車のナンバープレートや道路標識の文字を読み取るような、精密な観察力を養う。ゴルフ・コースでは、認識出来る距離になったら旗竿に書かれている文字を読み取るような練習をする。

 

最もよい目の筋肉の強化法は、頭を動かさずに目をぐりぐり廻すことだ。これは目の全ての筋肉の鍛錬となる。両方の目は同じ速度で一緒に回転すべきである。先ず反時計廻りで十回、次に時計廻りで十回。

当然ながら、ゴルフの重要な部分はターゲットを正確に位置づけることだが、疲労による貧弱な視覚は視覚情報の処理を難しくする。あなたのベストのプレイをするには、アスレティックな目が必要である。あなたは他の筋肉同様、目の筋肉を強化することが可能であり、その筋肉が疲労した時、それを活気づけることも可能である。

目を閉じ、掌で覆う。掌で目に非常にソフトな圧を掛け、その圧を維持しながら優しく掌をぐりぐり廻す。深呼吸し、身体をリラックスさせる。数分間休止し、もう二回ほどマッサージを繰り返す。目が痒い時のように擦ってはいけない。目をめり込ませるように掌を押さないこと。コンタクト・レンズを着用しているなら、この体操をしないこと。

目の疲れはあなたの顔の筋肉を緊張させ、その緊張は身体の他の部分に浸透する。それは自分で気づかないほど低レヴェルの緊張だが、その影響はラウンド後半での極度の疲労に結びつく恐れがある。これを防ぐには、折りに触れ顔の筋肉を意識的にほぐすべきである。特に顎の筋肉は30秒ほど口を開け、口で呼吸し、空気を腹腔の奥へと送り込む。リラックスした顔面の筋肉と深呼吸のコンビネーションは、身体全体の緊張を減少させ、最終ホールまでエネルギーを温存させてくれる」

(November 05, 2017)

眼鏡を掛けたゴルファーの頭

 

Arnold Palmer(アーノルド・パーマー)の遺産シリーズ。

当市の図書館は、ドネーションされた本で不要とみなしたものを年に数回廉価で特売します。そこで見つけた本の一冊がこれで、Arnold Palmer(アーノルド・パーマー、1929〜2016)が新聞のコラムとして連載した記事(イラスト付き)を、「スウィング」、「戦略」、「トラブル・ショット」、「ショートゲーム」、「パッティング」、「バンカー・ショット」などの分野別に編集し、一巻としたもの。tipsは、なんと計495もあります。毎日連載したとして、一年半分(ま、似通ったtipも多いのですが)。「どうせ、ゴースト・ライターが書いたんだろ」と眉に唾して読みましたが、なかなかどうして、当人でないと書けない文章が沢山散りばめられています。当時、40代となりPGAツァーでの盛りが過ぎていた彼は、時間の余裕もあり、懸命に自分で執筆したんでしょう。今後、その中の選り抜きをいくつかを御紹介しようと思います。

'495 Golf Lessons'
by Arnold Palmer edited by Earl Puckett (PGA), (Digest Books, Inc., 1973, $4.95)

「理想的なゴルフ・スウィングでは、肩がフル・ターンする間、(禁止されるべきものではないとしても)頭は完全に静止し続けるものだ。肩と共に若干(あくまでも若干)頭も回るのは助けとなるだろうが、なお不動の頭が理想である。

眼鏡を掛けているゴルファーが頭を動かすのを避けるべきなのは不可欠である。眼鏡の縁の動きがゴルファーの邪魔になるだけでなく、激しい頭の回転が視野をレンズの中から外(焦点の合った視野からぼやけた視野)へと切り替わるからだ。

あなたが眼鏡を着用するゴルファーなら、レンズの中央でボールを見ながらアドレスする。頭を傾げてはならない。そして、レンズの中央でボールを見ながら、最後までスウィングする。これが唯一安定したゴルフをする方法である」

 

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Arnold Palmerは40代で近眼になって遠くが見えなくなり、眼鏡を掛けていましたから、これは自分の苦い経験で得たtipでしょう。大きいレンズの針金のような縁の眼鏡を掛けたり、コンタクトにしたりしたそうですが、いずれも落ち着かない思いをしたそうです。

(November 05, 2017)

パー3の考え方:《ゴロだっていいんだ》

 

私のコースの四つのパー3のうち、No.4 (175ヤード)、No.7 (160ヤード)、No.13 (210ヤード)は、池もバンカーも絡みません。

私はこれら三つのホールで、仲間がちゃんと打とうとしたにも関わらずゴロを放ち、それがどんどこ転がってピンハイに届いたミス・ショットを何度となく目撃しています。しかし、そういうラッキーな目に遭った人も、それを目撃した人も(私を含む)、誰一人ゴロで攻めようとしません。第一に、周囲からこすからくいじけた戦法と思われる、地面でのバウンドが悪ければ思い通りに転がるとは限らない、失敗すると「ほれ見ろ」と仲間から馬鹿にされる(?)…等々の理由が考えられます。

私は、これらのホールでスティンガーを何度か用いましたが、方向が良いと距離感が合わず、距離感が合うと方向が合わないという経験ばかりでした。

ここ数ラウンドで、私は次のように考えてみました。「ゴロでだって結果的に成功するんだから、何もしゃかりきになる必要はない。懸命になると、手や手首が強ばって方向性が悪くなる。《低いボールは曲がらない》という説に準じて低くティーアップし、ゴロでもいいや…という気持ちで打とう」 もちろん、いつもこんな風に長くぐじゅぐじゅ考えているわけではなく、「よっしゃ、ゴロでいいんだ、ゴロで!」という感じですが。

一昨日、No.7では狙った通りに打て、ボールはころころカップへと向かって転がり、あわやホールインワン。カップの下15センチにつきました。文句無しのバーディ。この日のキャプテンのRichard(リチャード)が「凄いショットだ!」と手放しで賞賛してくれました。私は「お金を節約したんだ」と応じました。入っていれば、少なくとも50ドル分のビールを振る舞うことになるからです。ま、まだ一度もホールインワンを達成していない私としては、入ってくれてもよかったのですが(^^;;。

No. 13。ここでも「ゴロでいいんだ…」と打ったショットは、見事1オン。ただし、10メートル以上あって3パットしてしまいました(;へ;)。

もちろん、これらはいずれも《右ポケットを追い越そうとする右肘から逃れるように腰を動かす》メソッドでスウィングした結果です。

 

「ゴロでいいんだ」という考え方は正しいと思います。何より、気が楽で、緊張しませんしね。

(November 08, 2017)

コースと球筋の相性を考慮せよ

 

数名のU.S.オープン優勝者を助けたインストラクターChuck Cook(チャック・クック)による、ゴルフ・コースの地形やレイアウトによって球筋を変える戦略の必要性。

'Perfectly Balanced Golf'
by Chuck Cook with Roger Schiffman (Doubleday, 1997, $25.00)

「もし高いボールを打つJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)が、フェアウェイが固く強い風が吹くテキサス州西部で育ったとしたら(そこでは高いボールではなく低いボールが望ましい)、彼は無名のままだったろう。同様に、もし低いボールを打つLee Trevino(リー・トレヴィノ)がJack Nicklausのホームグラウンドであるオハイオ州あるいはオーガスタでゴルフをしていたとしたら、彼もまた無名のゴルファーだったと思われる。

だから、あなたが先ず直視しなければならないのは、あなたがプレイするコースである。フェアウェイが固く早いか、遅いのかを見極める。コースが早いのなら、低いボールで遠くに転がしたい筈だ。フェアウェイが遅いのなら、高いボールで最大のキャリーを得たいに違いない。

次いで、グリーンの特徴を見極める。高低差があるだろうか?もし、岡の上のグリーンや、ティーからキャリーで越えなくてはならないマウンドが多いコースなら、あなたは高いボールを打つ必要がある。隆起が少ないコースであれば、低いボールが必要だ。フロリダ州やテキサス州は、低いボールを打つべき完璧な例である。ニューヨーク州のWestchester(ウェストチェスター) C.C.やニュー・イングランドの大部分は高い軌道のボールが望ましい。高いボールが必要な地域としてはカリフォーニア州San Diego(サンディエゴ)も入る。そこは通年完璧な気候で、太陽がいっぱいであり、さして風も吹かない。

 

さらに、ゴルフコースに最適なショットを考えること。例えばthe Masters(マスターズ)開催地であるオーガスタ・ナショナルは、ドローを沢山打たねばならない。テキサス州のColonial(コロニアル)C.C.はその反対。そこには右ドッグレッグが多い。フェードを打つBen Hogan(ベン・ホーガン)は、そこで成功を収めた。トラブル(ハザード)の大多数はどっちか?右か左か?もしあなたが一つのコースでプレイするのであれば、そのコースに適したプレイを身につけるべきだ。

あなたがツァー・プロのように国内の異なるコースでプレイするのであれば、成功するためにはニュートラルなスウィングが必要だ。フックだけ、スライスだけ、高いボールだけ、低いボールだけでは駄目だ。あなたがお手上げになる状況が沢山訪れるだろうからだ。

最後に、あなたのライフスタイルを検討せよ。どれだけ練習に時間を割けるだろうか?練習場に赴く時間がさほど無いのであれば、自分の通常のボール軌道に甘んじ、それを有効活用出来る戦略を学ぶべきだ」

(November 12, 2017)

功名心がスコアを壊す

 

私の場合、自信過剰と共にラウンド(=スコア)を損なうものの一つは功名心です。

功名心、あるいは「やったぜ症候群」は誰にでもあるようです。ドライヴァーの飛距離、アプローチの寄り方、ロング・パットの成功…等々。私の周囲では、同じチームのチームメイトに敵愾心を燃やす輩さえいます。「おれの方が飛んだぜ。どんなもんだい」「おれの方が寄ったぞ。ざまあ見ろ」こういう、ただの瞬間風速の結果に一喜一憂するのは愚かです。

競争相手を凌ごうとする姿勢がいい結果をもたらすなら、それはチームにとって有益ですが、チームメイトの誰かより飛ばそうとして力んで大振りしてダフったのでは馬鹿みたいです。

私のはそこまで愚かではないのですが、「おれの腕前を見せてやろう」という態度が出ることがあります。それは、このホールのこの距離からの攻撃は研究し尽くしてあり、○番のクラブを使えばバッチリだというような局面です。私の脳裏には、既にピン傍30センチに寄ったボールが見えています。これはプロセスより結果を重視する(ヘッドアップと同じような)ミスを犯す危険性を多分に孕んでいます。任務を達成すべくプロセスに集中したとしても、自己顕示という邪(よこしま)な態度に根ざしたスウィングは、どこか歯車が狂うことが多い。虚心なスウィング、あるいは必死のリカヴァリー・ショット等に較べると、心に夾雑物が混じり過ぎている。

こういう時、役に立つのはHarvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)の「贅沢を云ってられない場合のように打て」(tips_154,html)というtipです。裸地から打つ時のように、飛距離や方向などよりも、先ずボールとの完璧なコンタクトを最優先しなくてはならない局面だと考えろ…という趣旨。

ある日のNo.14(440ヤード)パー5。私はいいティー・ショットを放ったものの、二打目の5番アイアンをプッシュして右の軽いラフへ。残り90ヤードは、私の場合普通なら9番アイアンを20センチ短く持つ距離ですが、【註】このグリーンは砲台なので、それに1.25センチ増やしてハンドルを握ることに。贅沢を云ってられない場合のように打ったボールは、ピン傍90センチへ。

【註】私の9番アイアンのハンドルには白、緑、赤の三つのマークがつけてあり、「20センチ短く持つ」は赤いマークで握ること、「1.25センチ増やす」は緑のマークで握ることを意味します。いちいち計ったりはしません。【参照】「グリップのマーク」(tips_99.html)

 

この時チームのキャプテンだった男が「エイジ、おれはまだ(あんたのショットを)"Good shot!"とは云わないぜ!」と声を掛けて来ました。彼は、ピンまで50ヤードから三打目を打つ直前で、私よりもピン傍に寄せようと自信満々だったのです。これぞ功名心に毒されたゴルファーの権化。彼のランニング・アプローチは欲張り過ぎたせいで遥かにピンを越え、グリーンをすたこら駆け下りて崖下5ヤードへ。彼は寄せた後のパットにも失敗してボギー。私は90センチのパットを難なく沈めて、バーディ。謙虚に打ったリカヴァリー・ショットがくれた幸運でした。

(November 12, 2017)

虎の飼育法

 

Tiger Woods(タイガー・ウッズ)の父親Earl(アール)執筆による、子供をゴルフの傑物に育てる方法。親馬鹿の自慢話じゃないかと思って長く敬遠していたのですが、今回只同然で手に入ったので読んでみました。一般の父兄を対象に、どのように子供の好奇心を伸ばし、どう援護していくべきかを説きつつ、興味深いTiger育成秘話が散りばめられています。

[Woods]

私にとってはTiger Woods“は天才的ゴルファー”などという範疇ではなく、Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)をも圧倒するような“化け物”でした。それはEarl Woodsは、子供だったTigerが「お父ちゃん、練習に連れてって」と云えば、毎日でも応じられたような恵まれた境遇でTigerを育てられたからです。一般の親は、そうはいかないでしょう。ですから、われわれには“化け物”を育てることは不可能でしょうが、“化け物”はどう育てられたのかを知る意味ではとても興味深い本です。

'Training A Tiger'
by Earl Woods with Pete McDaniel (HarperPaperbacks, 1997, $5.99)

Earl Woods(アール・ウッズ、1932〜2006)はカンザス州の下層労働者であり野球ファンだった父と、黒人とヨーロッパ人混血で短大卒の母との間に生まれた。彼は野球選手たるべく奨学金を得て、カンザス州大で学んだ。彼は最初の結婚で三人の子供をもうけたが離婚。グリーン・ベレーの中佐として二度ヴィエトナム戦争に派遣されてタイに駐屯中、彼はタイ人女性Kultida(クルティダ)と知り合い、アメリカに帰国後二人は結婚した。1975年、彼らの息子Eldrick(エルドリック)が生まれた。Earl Woodsは、親しかった勇敢なヴィエトナム軍パイロットの愛称にあやかって、息子を"Tiger"(タイガー)と呼んだ。

「ニューヨークの基地で勤務していた時、ある黒人の同僚が一緒にゴルフしようと誘った。彼は、当時珍しく黒人のプロ・ゴルファーを父に持ち、そのキャディを勤めたこともあると云う。私はそれまで一度もゴルフ・クラブを握ったことがなかった。私の最初の一打は、ボールはほとんど動かず、地球の反対側の中国を脅かす地響きを立てただけだった。私の同僚は、三ホール向こうまで聞こえるような高笑いをした。彼は誰彼構わず、私のヘボ・ゴルフについて話して廻った。私は、この新しいゲームの虜になっただけでなく、この同僚に一矢報いる決意をした。

問題は、彼が六週間後には除隊してしまうことだった。私は熱心に、だが秘かに練習した。彼の除隊予定日の三日前、私は彼に挑戦状を突きつけた。公式スコアラーとして別の同僚を迎えて、われわれはマッチ・プレイを行い、私が勝った。彼は唖然とした。

Tigerが生まれる頃、私はほぼスクラッチ・プレイヤーになっていた。

子供に何本ものクラブを購入する必要はない。最初は一本のアイアンとパターで充分である。Tigerの最初のクラブは7番アイアンだった。小さい子供のクラブは正しい長さにするだけでなく、ヘッドも削って重さも変え、さらに子供の手に合う太さのハンドルを装着せねばならない。これらは専門家に任せることを勧める。

Tigerは六歳になるまで十本指で握るベースボール・グリップをしていた。

【編註】本には20歳前後のTigerによるグリップの写真が掲載されていますが、この本出版当時の彼の左手は親指の下の膨らみでハンドルを押さえています(Ben Hogan型)。Tigerが後年に出版した'How I Play Golf' (2001) の写真では、生命線の下の膨らみでハンドルを押さえています。多分、Butch Harmon(ブッチ・ハーモン)の指導による変化でしょう。

・第一段階 パッティング

私は、最もシンプルなスウィングであるパッティングからゴルフ習得を始めるべきだと信ずる。ゴルフはグリーンからティー・グラウンドへと逆に教えられるべきである。

【編註】Tiger自身が出版した'How I Play Golf' (2001) も、同じようにパッティングからフル・スウィングへと編集されています。

子供のパッティングに重要なのは、子供の背の高さに合ったパターの長さと、手にフィットするグリップのサイズだ。それが調整が出来たら、パッティングを教えることが出来る。

最初は3メートル位の距離から、下手投げでボールを抛らせる。これは簡単で自然な動きによって子供の距離感を開発する。これを三回か四回連続で行わせ、次に何度か目を閉じて投げさせる。この練習は、ターゲットを見ずにパットする動作に自信を与えてくれる。この練習を親子で競争すると、楽しさが増す。

下手投げに慣れたら、いよいよパターを持つ時である。様々なグリップを試させ、子供が一番快適に握れるスタイルを選ばせる。

最初のパッティングは30センチか、60センチのパットをさせる。この距離だと成功率が高いので、子供にやる気を起こさせる。子供が目をカップとボールに往復させた時、『カップのイメージを目に焼き付けたか?』と問いかけること。答えがノーであれば、再度狙いを付けさせる。テクニックが上達したら、距離を伸ばす。

・第二段階 ショートゲーム

 

20ヤード離れたところからチップさせる。

20〜100ヤード離れたところからピッチングさせる

・第三段階 フル・スウィング

ゴルフはパッティング→チッピング→ピッチングと教えるべきだと述べたが、Tigerの場合は別な道筋だった。Tigerは、車庫に張ったネットに向かってボールを打つ私を、幼児用の高い椅子に座って見ながらフル・スウィングを理解し学んだ。それはエンドレスの映画のように、何度も何度も繰り返されたので、Tigerはチッピングやピッチングの前に、フル・スウィングを覚えてしまったのだ。

Tigerが満十ヶ月の頃。私が休憩する時、Tigerの椅子のベルトを外してやった。彼は自分のパターを手によちよちと私の打席に向かい、ボールを選び、セットアップし、ボールをネットに打ち始めた。私はびっくり仰天し、椅子から転げ落ちそうになった。急いで妻を呼びに行った。Tigerは彼のお父ちゃんのようにボールを打っていた。

唯一お父ちゃんと違っていたのは、Tigerは左利きのように打っていたことだった。彼が、お父ちゃんの打つ方向は逆であるということに気づくのに二週間かかった。ある日、スウィングの途中で、彼は突如スウィングを中断し、ボールの反対側に移り、グリップも右利きに変え、何ごともなかったかのようにボールを打った。私はグリップを左利きから右利きに変えろなどと、一言も口にしなかったので、非常に特別なことが目の前で起ったと感じていた。それはスポーツマンとしての本能がさせた行動だった。

【編註】Phil Mickelson(フィル・ミケルスン)の父親も息子に同じことをしました。父親は裏庭でチッピング練習する際、息子を正面に座らせたのです。息子はミラー・イメージによって左利きのスウィングを頭に刷り込んでしまいました。Tigerは自分でスウィングの方向をチェンジしたのですが、Phil Mickelsonはそうではなかった。大きな差です。

子供には監督し過ぎはいけない。遊ばせるべきだ。

Tigerが18ヶ月で、五以上数えられなかったのに、直観的にパー5、パー4、パー3を知っており、自分のスコアだけでなく、私のスコアまで数えていて『ダディはダブル・ボギーだね』などと云った。

Tigerが四歳の時、私は彼の才能にとってはプロの指導が必要だと実感し、TigerをPGAインストラクターの手に委ねた。

Tigerが私よりいいスコアで廻ったのは、彼が11歳の時だった。

Tigerが13歳の時、Pro-Amで廻ることになった相手は、当時まだ無名だったJohn Daly(ジョン・デイリィ)であった。TigerはJohn Dalyの飛距離に魅せられた。この当時、プロもアマも同一ティーから打ったのだが、No.14までTigerが二打リードしていた。John Dalyはギャラリーに向かって『おれが13歳に負けるなんて許せないね』と云い、その通りにした。彼は残り四ホールで三つのバーディをものにし、Tigerを破ったのだ」

 

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この本の副題は「ゴルフと人生の勝者を育てる」となっています。著者Earl Woodsは幸せ者です。彼は登り竜だった頃のTigerだけしか知らず、ゴルフと人生の勝者を育てたと確信して亡くなったのですから。もし、彼がTigerの醜聞と肉体的凋落を知ったら、この副題は修正したことでしょう。ま、財政的にはTigerは未だに成功者でしょうけど。

【参考】「Butch Harmon(ブッチ・ハーモン)とTiger Woods(タイガー・ウッズ)」(tips_136.html)

【おことわり】Tiger親子の画像はhttp://www.historicgolfphotos.com/にリンクして表示させて頂いています。

(November 15, 2017)

日替わりスウィート・スポット

クラブ・フィッターにアイアンのライ角を修正して貰ったのに、私はそのほとんどをクラブフェースの中央で打てません。このクラブ・フィッターはアイアン以外のライ角は直せないので、ウッドとハイブリッドに関にしては自分でそれぞれのクラブの中心で打てるアドレス法(ボールへの添え方)を見つけなくてはなりません。

数週間前、ハイブリッドでアドレスすべき位置を見つけた後、クラブの上端にマジック・マーカーで印を付けました。どちらもフェースの真ん中から1センチほどトゥ寄りでした。最近になってまたテストしたところ、何とその位置は大きく変わっていました。どちらもフェースの真ん中になっていました。

[sweetspot]

これは厄介です。「本日のスウィート・スポット」てなもんで、こう毎日ころころ変わるんでは、ラウンドする前に必ずチェックしなくてはなりません。何がいけないんだろう?インパクトで体重が爪先にかかるようなスウィングをしてるんだろうか?この場合、僅かでも手が伸びることになり、結果的にフェースのヒール側で打つことになります。しかし、全てのクラブをヒール側で打っているわけではありません。【写真は左から5、6、7、8、9、PW】御覧のように、5番と8番はトゥ側で、ピッチング・ウェッジ(右端)だけがヒール寄りです。

先週末、またもやNo.9(270ヤード)パー4で、私は二打目の9番アイアンをピン傍10センチにつけて、バーディ。よく見ると、8番アイアンの“私のスウィート・スポット”は、フェースのほぼ真ん中です。これが、このクラブを上手く打てる理由かも知れません。

Sam Snead(サム・スニード)は「打撃のための大きな筋肉は脚の裏側、肩、背の中程など背面に位置しており、それが体重を、爪先や拇指球(ぼしきゅう、親指の下の丸い膨らみ)などでなく、踵方向に掛けるべき理由の一つなのだ」と云っていました。私はAnnika Sorenstam(アニカ・ソレンスタム)推奨の拇指球体重をしていました。これがいけなかったという可能性はあります。

次のラウンド前、踵体重で打ってみました。僅かにボールを打つ位置は変化しますが、やはりフェースの真ん中にはなりませんでした。体重の掛け方よりも、アドレス時にどちらかというとゆったり構えた両手・腕が、インパクトでそのままならちゃんと打て、伸びたりするとヒール寄りで打つ原因のように思われました。

私はドライヴァーを打つ時、両手をすんなりと伸ばすようにしています(突っ張るのではなく)。これだとほぼ毎回スウィート・スポットを外さずに打つことが出来ます。アイアンでも同じようにすべきではないか?と思われました。

【参考】
・「スニードの 飛ばしたきゃケツを突き出せ」(tips_159.html)
・「拇指球に体重を乗せよ」(tips_153.html)

(November 15, 2017)

ワークアウトの勧め

 

[arms]

「体型別スウィング」の共著者(三人)のうち二人が執筆したシニアのための教本から、ゴルフに特化したワークアウト(トレーニング)の必要性。

'Play Better Golf for Seniors'
by Mike Adams & T.J. Tomasi with Kathryn Maloney (Henry Holt & Company, Inc., 1998, $29.95)

「フロリダ大の運動生理学教授Dr. Michael Pollock(マイケル・ポロック博士)は、『年齢による筋肉の弱体化は避けられない。ランニングは心臓と脚には効果があるが、他の部分は弱ってしまう』と云う。博士は50〜82歳の人々を20年間追跡調査した。その研究によれば、10年前と同じようにトレーニングを続けた人は有酸素容量(好気的代謝によってヘモグロビンを得るため長時間継続可能な軽・中度の負荷の運動)を失わなかったが、トレーニングを継続しなかった人々は10%喪失した。次の10年で彼らはもう少し有酸素容量を減少させたが、心臓と糖尿病の危険性をも減少させた。不整脈を患う人がトレーニングを続けても、症状が悪化することはなかった。

理学療法士のRon Peyton(ロン・ペイトン)は、ゴルフ・スウィングは腰と肩の回転と同じくらい背骨の前傾とねじれの量が大きい。これは腰痛と首の障害を招き易い。身体が柔軟性を欠く場合、これらの場所にストレスが加えられると、ゆくゆくは死ぬまで治らぬ損傷になりかねない。

・ゴルフはバックスウィングとダウンスウィングの二方向の動きなので、身体の筋肉も両サイド均等に強化すべきである。

・ダウンスウィングでの主なパワー源は腰なので、太腿と腰の筋肉の開発に集中すべきである。

[Triceps_1]

・ゴルフに必要なのは単に筋肉のパワーだけではない。ゴルフ・スウィングの質,腕の長さ、筋肉の状態、身体の柔軟性、筋肉繊維の弾力性、クラブ・フィットされているか否か、あなたの総合的体力、そしてメンタルなアプローチ…などの組み合わせによるものだ。

・飛距離を最大にするには、あなたのゴルフに特化したトレーニング・プログラムにウェイト・トレーニングは欠かせない。だが、重過ぎるウェイトや疲れるほどの運動で長時間ジムにいたりするのはお薦め出来ない。【編註】右上の図は腕と手首の鍛錬法。説明は「飛距離を伸ばすトレーニング」(tips_13.html)をお読み下さい。

・リサーチの結果、あなたがワークアウトをやめると、二〜三週間で目立つほどの機能低下が現れる。

・先ず一週に三回ワークアウトすることから始め、一定の成果が見られたらその後週二回に減らすとよい。

・全てのワークアウト項目は12回を1セットとし、1セット毎に一分か一分半休み、2〜4セット行う。

・もし、辛いようなら12回1セットは変えずに、ウェイトを軽くして行うこと。

・ゴルフに重要なのは二頭筋より三頭筋である。【註】三頭筋を強化する鍛錬をするように」

【編註】力瘤を作るのが二頭筋、それを伸ばすのが三頭筋。上の写真は両腕を伸縮させて身体を上下させる運動。以下の二つの写真の腕を伸ばす運動も、三頭筋を鍛えます。

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遅ればせながら、ジムに通うことにしました。お笑いめさるな、その動機は何ともケチな話なのであります。カミさんと私が入っている健康保険に、当市の大病院のフィットネス施設を無料で利用出来る特典があることは前から知っていました。一年も前からカミさんが一緒にやろうやろうと云っていたのですが、肥満体型でもない私は面倒なのでぬらりくらりとはぐらかして来ました。しかし、このサイトで身体トレーニングの記事を紹介するにつれ、私の考えが少しずつ変化し始めました。そして、ある日…

[Triceps_3]

私のゴルフ仲間の一人が私に云いました。彼と彼の奥さんは上記のフィットネス施設に通っているのだそうですが、何と入会金一人80ドル、毎月一人50ドル払っているのだそうです。私はそれらが全てタダなのに、まる一年無駄にしていたのです。「どうせタダなら、やらなきゃ損々」と阿波踊りの唄の文句のような勢いで直ちにフィットネス施設に入会。

私の目的は痩せることではなく(これ以上痩せたらガラになってしまう)、あくまでもゴルフに役立つトレーニングです。ゴルフの飛距離に役立つのは、引っ張る力なので三頭筋を鍛えねばなりません。トレーナーを雇うと別途料金が必要ですが、機器の使用法の説明はタダです。聞くと、三頭筋の鍛錬には二つの機器がありました。いずれも抵抗(重さ)の設定を変えることで難度が変化します。私は三頭筋の鍛錬と共に、太腿の筋肉を増強する運動を交えることで、厭きずに続けられるというアイデアを得ました。太腿を強化するとスウィングの土台が安定し、老人にありがちな転倒を防止出来ます。転倒は私の周りでよく聞く話で、腰骨を折ったりして手術が必要になる恐いアクシデントです。私のジム滞在時間は40分前後で、疲れが残らないようにしています。

同時に、TVを見ながら家で出来る「飛距離を伸ばすトレーニング」も隔日で続けるようにしています。これの最後のものは三頭筋のトレーニングに他なりません。私は怠け者なので、一時期熱心にトレーニングを続け、数週間後に人も驚く飛距離が出るようになるとトレーニングをさぼってしまい、いつの間にか皆と変わらない飛距離に戻ってしまいます。筋肉というのは鍛錬し続けないと、すぐだらんとしてしまうようです。「継続は力なり」という文句は、文字通り「力(パワー)」に結びつきます。

【おことわり】画像は上から順にhttps://www.womenfitness.net/、https://www.womenshealthmag.com/、http://bodybuilding-wizard.com/にリンクして表示させて頂いています。

(December 06, 2017)

糖分の摂取がダボを招ぶ

 

糖分を甘いものと考えるのは甘い。糖分を甘く見るのも禁物。それはダボ、トリプルへの近道だという科学的解説。

'Golf in the fog'
by Bob Kaspriske ('Golf Digest,' November 2017)

[Gatorade]

「疲れた。心理状態が不安定である。集中出来ない。ラウンドが楽しいゴルフでなく鬱陶しい庭掃除のように思えて来る。ここで質問。スタート前、あなたはGatorade(ゲイターレイド)を飲まなかっただろうか?朝食にベーグルを焼いて食べなかったか?

あなたがげんなりするのは、不思議なことではない。科学で説明出来ることだ。あなたの身体は、あなたが血液中に糖分の爆弾を投下した後、必死で制御を回復しようとしているのだ。先ず、ブドウ糖の度合いが急上昇する。多分それはラウンド開始の30分前に起ったかも知れない。その後、血液中の糖分の量を低下させるため、身体がインシュリンを放出したのだ。多量のインシュリン放出による身体の反応は、あなたをダボへと導く。

スポーツ医学専門家でPGAツァー・プロのコンサルタントでもあるDr. Ara Suppiah(アラ・サパイア博士)は、次のように云う、『かなりのインシュリン放出であなたが機能停止状態になる時、あなたの身体は同時にコルチゾールをも放出する。【註】コルチゾールは《闘うか逃げるか反応》の引き金となる。身体がこの危機に直面したサヴァイヴァル装置を作動させると、重要なパットに集中することなどはもちろん、ゴルフ・スウィングの複雑な動作をすることも困難になる。

【編註】コルチゾールは人間がストレス状態に置かれると、ストレスに対抗しようと血糖値を上げるために分泌されるホルモン。

食物や飲み物のパフォーマンスへの影響はちゃんと理解されていない。『プロたちは、多量のインシュリン放出の結果として、疲労、動きの鈍さ、集中することの困難を訴え、そして食べた直後だというのに空腹を覚える。これらはパフォーマンスを阻害する』と博士。

ラウンド中に飲み食いすることをやめるか、食べ物・飲み物についてより深く考えるべきである。カロリーの摂取を避けよと云っているのではない。反対に、疲れを感じる前に何か身体に入れるべきである。糖の量が多い物を食べたり飲んだりしてはいけないということだ。

驚くかも知れないが、淡白な白い小麦粉を原料とする製品(ベーグル、プレッツェル、サンドイッチ用パン)は容易に引き金となるものだ。健康食品に思えるレーズンやぶどうなども避けるべきである。ゲイターレイドの血糖インデックス(指標)は89で、砂糖(100)とさほど変わらない。西瓜の血糖インデックスは72だが、血液中のブドウ糖を急上昇させるには血糖摂取量も関係する。血糖摂取量が20を越えると血液中の糖分が急上昇し、その後身体が機能停止状態となる。血糖摂取量が11〜19の食品も警戒すべきだ。西瓜は3.6である。

高血糖食品に抗する方法の一つは、脂肪の多い食品を一緒に摂取することだ。これはインシュリンの反応を緩和する。もし白いパンのツナ・サンドを食べているとしても、それにマヨネーズ【=脂肪分が多い】が含まれていれば、インシュリンの影響は和らぐ。コーラを飲まねばならないのなら、バーガーを食べながら飲む。覚えておくべきは、プロテイン・脂肪・繊維質の合計量(グラム)が、炭水化物の合計量(グラム)より多ければ、あなたは安全圏にいられるということだ。

もし、糖分の多い食品によってラウンド中に機能停止状態を感じ始めたとしたら、エナジー・バーとかトレイル・ミックス(種子を主な材料とした高栄養食品)、バナナなどを食べるとよい。

・グラノーラ・バーではなく、グルテン(小麦粉などに含まれる各種タンパク質)の入っていない食事代用バーがよい。
・プレッツェルではなく、加工していない種子を食べる。
・ホットドッグはパンを食べないか、レタスで包む。
・フライド・ポテトではなく、ポップコーンにする。
・ゲイターレイドを水で薄めて飲む。
・ビールを飲むなら、脂肪の多い物を食べながら飲む。
・ソーダ飲料よりは、砂糖小さじ一杯を入れた新鮮な紅茶を飲む。
・オレンジ・ジュースではなく、アップル・ジュースにする。

[icon]

高脂肪の食品を摂取すると、身体は消化に専念することになるので、やはり機能停止状態になるという説もあります。糖分摂取を高脂肪食品で相殺するなどという姑息な手段より、最初から糖分を摂らない方が賢明です。

【参照】
・「情動をコントロールしてプレイせよ」(tips_180.html)
・「アドレナリンをコントロールする」(tips_182.html)

 

【おことわり】Gatoradeの画像はhttps://www.gatorade.com/にリンクして表示させて頂いています。

(December 06, 2017)

浮き島グリーンの攻略

 

TPC at Sawgrass(TPCアト・ソーグラス、フロリダ州)No.17がその典型である浮き島グリーンは、プロでさえ手こずるホール。以下は浮き島グリーンをパーで上がる戦略。

[island]

'How to survive an island green'
by Fred Griffin ('Golf Magazine,' August 2006)

「浮き島グリーンでの目標は常にパーである。世界のベスト・プレイヤーたちでさえ、こうしたホールではバーディを狙ったりしない。危険が大き過ぎるからだ。グリーンを研究し、あなたが完璧なショットを打てなかった場合、安全にどこへミスすればよいか決定せよ。

フロリダ州Grand Cypress Golf Club(グランド・サイプレスG.C)のNo.5(右の写真)の前部と左サイドは、池に突き出された舌のようなものであり、あなたのターゲットとすべきところではない。代わりに、バンカーで防御されている右側とグリーン奥は、あなたの脱出口足り得る。

ピンが左に切られていれば、グリーンの右半分を狙う。いいショットは2パットで上がれるチャンスを与えてくれ、左へのミスはカップに近く、右へのミスはバンカーに入る。

前部にピンが切られていれば、グリーン中央を狙い、グリーンの2/3に当たる奥の部分に充分届くクラブを選ぶ。Grand Cypressのこの部分は、前部より15ヤードも広い。

向かい風であれば、少なくとも1クラブ上を選択する。追い風であれば、距離に応じて選んだクラブを変えないこと。左から右への風なら、ターゲットの数ヤード左を狙い、右から左への風なら反対にするが、絶対に水の上を狙ったりしないこと。

どこを狙い、どこへならミスしてもよいか決定したら、そのショットに全力を傾注する。安全な部分に焦点を狭めることによって、起り得る危険に心が圧倒されるのを防ぐことが出来る。実質的に、浮き島の中に浮き島を作り出したことになるのだ」

【おことわり】画像はhttp://www.grandcypress.com/にリンクして表示させていただいています。

(December 24, 2017)

Ryder Cup(ライダー・カップ)の舞台裏

 

Ryder Cupは米欧対抗のマッチプレイ戦(賞金なし)で、日本やアジアのプロ、南ア、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどのプロは参加出来ません。ですから、日本での関心度はちょっと低いかと思われます。Ryder CupはアメリカのPGA of America(全米プロゴルフ協会、インストラクターの組織)とヨーロピアン・ツァーの共催で、一年おきに米欧どちらかのコースで開催されます。熱狂的なRyder Cupの人気と成功にあやかろうと、PGAツァーが二匹目のどぜうを狙って始めたのがPresident's Cup(プレジデンツ・カップ)です。日本では、こちらの方に関心が集まっているのではないでしょうか。

【編註】あるTV解説者はPresident's Cupについて、「アメリカ人のプロたちと、ほとんどがアメリカのフロリダ州に住んでいる諸外国のプロたちが、わざわざオーストラリアまで出掛けて行ってプレイする理由が判らんね」と云った。(^-^)

Ryder Cupの前身は1860年に開始された全英オープン前の全英選抜 vs. 全米選抜による親善試合でした。1926年に英国の種苗会社社長Samuel Ryder(サミュエル・ライダー)が優勝カップを寄贈し、Ryder Cupという名称が定着。1983年まではほぼ米国勢の圧勝続きで(現在のPresident's Cupそっくり)、プロたちのテンションは下がる一方でした。それを憂えたJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)の提案により、全英でなく全欧とし、先ずスペインのSeve Ballesteros(セヴィ・バレステロス)、そしてドイツのBernhard Langer(ベルンハード・ランガー)など、ヨーロッパ大陸全域のプロが選ばれるようになりました。驚くべきことに、1985年から全欧はアメリカに拮抗するどころか、アメリカをしのぎ始めました。この頃から、一般のゴルフ・ファンが注目するようになり、ついにはTV中継が始まり、現在の人気を獲得し始めます。以下の本は2016年のRyder Cupをクライマックスとし、ここ十年ほど苦杯を嘗め続けたアメリカ勢の苦悩と勝利を、数々の裏話を散りばめながらルポしたもの。

'The First Major—The inside Story of the 2016 Ryder Cup'
by John Feinstein (Doubleday, 2017, $28.95)

 

著者John Feinstein(ジョン・ファインスタイン)は、ゴルフだけでなく多くのスポーツに関する本を出版しています。いずれも関係者の話をじっくり聞き、それをドラマティックにまとめあげる手法で成功しています。ゴルフの本としては、
・'A Good Walk Spoiled: Days and Nights on the PGA Tour' (1995)『苦悩の散歩道—PGAツァー・トッププロたちの実像』
・'The Majors—In Pursuit of Golf's Holy Grail' (1999)1998年の四つのメイジャーを詳述 [Mark O'Meara(マーク・オメラ)がマスターズと全英に優勝した年]
・'Open: Inside the Ropes at Bethpage Black'(2003)USGAを主役に据え、2002年のU.S.オープンの会場選びから開催までのドキュメント。
・'Tales from Q School: Inside Golf's fifth Major' (2007)メイジャーに匹敵する難関プロ・テストの熾烈な闘いをルポ。
…他があります。

・PGA of Americaの会長の任期は二年。Ryder Cupのキャプテンを決定する権限は、その年の会長にある。つまり、どの会長もたった一度だけキャプテンを決定し、退任することになる。

・2014年のRyder Cupは、アメリカにとって“敵地”であるスコットランドのGlenragles(グレンイーグルズ)で開催予定であった。二回(四年)連続で負け続けていたPGA of Americaは、1993年にやはり英国で開催されたにも関わらず勝利した時のキャプテンTom Watson(トム・ワトスン)に再度キャプテンを依頼した。

Phil Mickelson(フィル・ミケルスン)は1995年以来連続出場を果たしているヴェテランで、最近のRyder Cupのチーム内では"papa bear"(親父熊)として、その発言が無視出来ない存在となっている。彼は、2008年に勝利した時のキャプテンPaul Azinger(ポウル・エイズィンガー)の"pod system"(ポッド・システム)【註】が気に入っており、以後全てのキャプテンにそれを採用するよう進言して来たが、常に無視された。

【編註】"pod system"は、Navy Seals(米海軍特殊部隊)がトレーニングのためにとっているメソッドで、隊の中に数名で構成される"pod"(豆のさや)と呼ばれる小班を多く作り、その小班内で築き上げられる人間関係、親密さ、共同体意識を基盤に隊員のやる気を引き出そうというもの。Paul Azingerはこれを模倣して、彼のチーム内にいくかの"pod"を作って成功した。

 

・Phil Mickelsonは前もって自分の出番を知らされることを好む。だが、歴代キャプテンの多くは、彼の希望を無視し、ほんの数時間前に出番を宣告した。2014年のキャプテンTom Watsonもその一人で、敗戦後の記者会見でPhil Mickelsonは過去の名キャプテンを誉め称えるスピーチを行い、暗にTom Watsonのリーダーシップを批判した。この発言は世界的反響を呼んだ。

・2014年にTom Watsonをキャプテンに指名したPGA of Americaの会長は、その反省から急遽今後のRyder Cupのために現役プロや過去のキャプテン数名を含む"task force"(特別対策本部)を設置した。これにはTom Watsonは含まれていなかった。

・その"task force"は、2012年にキャプテンを勤めて敗れたDavis Love III(デイヴィス・ラヴ三世)を、2016年のキャプテンとして再指名した。

・"task force"の一員Tiger Woods(タイガー・ウッズ)はDavis Love IIIに協力的で、メンバーの人選やシングルス・マッチの順番について頻繁に電話を掛けて来た。

・アメリカ・チームは二年間の賞金獲得額によってRyder Cupポイントを計算し、開催年の夏の時点の上位八名を当確とし、残る四名をキャプテンが選ぶという方式をとっている。Davis Love IIIはJ.B. Holme(J.B.ホームズ)、Ricky Fowler(リッキィ・ファウラー)、Matt Kuchar(マット・クチャー)を最初の選択として決定し、最後の一人はRyder Cup開催ギリギリまで粘って決定することにした。

Bubba Watson(ババ・ワトスン)は2016年のシーズン初めは好調だったが、夏以降低迷。Ryder Cup出場決定のポイント数は得られなかったものの、Davis Love IIIによるキャプテン指名の候補の範疇ではあった。しかし、Davis Love IIIはシーズン最終戦のFedex Cup(フェデックス・カップ)の優勝争いに絡んだRyan Moor(ライアン・ムーア)を選んだ。Davis Love IIIが「申し訳ない」と電話して来た時、Bubba Watsonは外された理由を聞いた後、「了解。だけど、おれは是非その場にいたい。何でもやるから、その場にいさせてくれ」と頼み、Davis Love IIIは丁度空いていたアシスタント・キャプテンの空席にBubba Watsonを据えることにした。他のアシスタント・キャプテンはJim Furyk(ジム・フューリク)とStrve Stricker(スティーヴ・ストリッカー)、そしてTiger Woodsであった。

 

・第41回Ryder Cupは、ミネソタ州Hazeltine(ヘイズルティン)G.C.で開催予定だった。

・Davis Love IIIは開催コースHazeltineの管理者と綿密な打ち合わせを開始した。アメリカ・チームが勝つにはアメリカのプロに向いたコース・コンディションにしなければならない。一般にアメリカのプロは飛ばし屋が多いが、曲がるとラフに捉まって難渋する。だから、フェアウェイを広げ、ラフを少なくする。また、アメリカのプロは早いグリーンを好みパットが上手い。だから、ピン配置を(バンカーの近くとかではなく)センターにするなど容易にし、グリーンも早く転がるように刈る。

・ヨーロッパの面々はHazeltineのフェアウェイの広さと、連日のピン配置の安易さに呆れた。彼らは2018年のパリにおけるRyder Cupでは、もっとプレイを難しくするぞと語り合った。

・集まったアメリカ・チームにDavis Love IIIが告げた作戦とは、過半数の14.5ポイントでヨーロッパ勢に勝つことではなく、全てのポイントを得て完璧に圧勝することであった。【註】

【編註】Ryder Cupは三日間行われる。初日と二日目は二人組対二人組で、最終日は一対一のシングルス。全て、勝った側に1ポイントが与えられ、引き分けだと0.5ポイント。同点であれば、前回優勝のチームがカップを持ち続けることになる。なお、二人組対二人組のマッチには二つの種類がある。一つは"four ball"(フォー・ボール)と呼ばれ、二チーム四名が普通にプレイし、各チームのベストのスコアで各ホールの勝敗を決めるというもの、もう一つは"foursome"(フォーサム)と呼ばれ、各チームは一個のボールを交互に打ち継いでホールアウトする。後者は、パートナーの使用ボールを無理矢理使わされることになるため、プロにとって距離感が合わず実力を発揮するのが難しい。2004年にTiger Woods(タイガー・ウッズ)と組み合わされたPhil Mickelsonは、Tiger使用のNikeボールに慣れることが出来ず、10ヤードも少ない飛距離に難渋したと吐露している。

・アメリカ勢の中の初出場はたった二人だったが、ヨーロッパ勢は六人が初出場であった(これはかなり不利)。

・ヨーロピアン・ツァーの初出場の一人で、この年のthe Masters(マスターズ)優勝者Danny Willet(ダニィ・ウィレット)に思いがけぬ試練が訪れた。彼の兄Peter(ピーター)がアメリカのプレイヤーたちと観衆を揶揄する言葉をTwitterに書き続けたのだ。それは弟を鼓舞するレヴェルを逸脱して、アメリカ人全体を愚弄していたため、全てのアメリカ人の反感を買った。Danny Willetは記者団の前で兄の言動を詫びたが、ヨーロッパ側のキャプテンDarren Clarke(ダレン・クラーク)は、アメリカ人観衆の盛大な野次で初出場のDanny Willetが萎縮することを恐れ、初日午前中の彼の出場を諦めベンチ入りさせた。【結果的に、この年彼は一勝も出来なかった】

Jordan Spieth(ジョーダン・スピース)は、Patrick Reed(パトリック・リード)のスタッツを研究し、自分と組み合わされると最高の結果が得られると確信し、彼とのペアをDavis Love IIIに願い出た。事実、そのペアは素晴らしい成果を収めることになる。

・マッチ開始前夜、アメリカ・チームのミーティングの最後にJordan Spiethが立ち上がった。彼はいつの時点かでチーム・メイトに告げるべきことを考えていた。今がその時だ…と彼は感じた。「僕らは勝てる。全てのマッチに勝利出来る。先ずPatrickと僕が勝つから、それに続いて欲しい。勝ち続けるんだ。それが出来ない理由は無い」彼が語り終えると、チーム・メイト全員が彼の言葉に感謝した。Davis Love IIIは、ヴェテランではなく若手が、自発的に全員に語りかけてくれたことに感動し、満足した。後にPhil Mickelsonは、『この夜のJordan Spiethのスピーチが、この週で経験した最高のものであった』と語った。

 

・Jordan Spiethの予言は実現した。初日午前のfoursome"はアメリカ勢が圧勝し、4対0となった。しかし、午後はヨーロッパ勢が奮起し、三勝を挙げて5対3となった。二日目はアメリカが四勝、ヨーロッパが三勝、一つが引き分けで9.5対6.5となった。

・ヨーロピアン・チームの精神的リーダーはRory McIlroy(ロリィ・マカロイ)だった。彼より年長のプロも存在したが、Ryder Cupの経験と勝利の実績、発言力において、彼が最も相応しかった。彼は、最終日のシングルス・マッチ前夜のミーティングで、ヨーロッパ勢一人一人についてアメリカ勢に勝利すべき理由を、ユーモアを交えて熱っぽく語った。

・Rory McIlroyはシングルスでPatrick Reedとの対決を願っていた。「キャプテン・アメリカ」をぶちのめしたかったのだ。その願いは偶然叶うことになった。【註】

【編註】二人組対二人組のマッチもシングルスも、双方のキャプテンが前もって選手のプレイの順番を決めて主催者側に提出する。先取点を上げたい側は、乗りに乗っているプロを前半に配置し、前半の結果次第で挽回を迫られる場合に備えてヴェテランを後半に配置する。お互いに相手がどう出るか、相手の作戦を読みながら順番を決めなくてはならない。2016年、Davis Love IIIはPatrick Reedを先頭にし、ヨーロッパ側のキャプテンDarren ClarkeはRory McIlroyを先頭に選び、両者とも歴史に残る名勝負を展開することとなった。

・最終日のトップバッターPatrick Reedが練習場でボールを打っているのを、アシスタント・キャプテンの一人Tiger Woodsが見守っていた。「Patrick、ちょっと来い」とTiger Woodsが云った。Patrick Reedは多分スウィングのヒントか、リラックスしろとか激励の言葉をくれるんだろうと思いながら近寄って云った。Tiger Woodsは帽子を目深にかぶり、サングラスをかけ、真剣な面持ちだった。Patrick Reedは言葉を待ち受けた。何と、Tiger Woodsが話したのは彼お得意のお下劣な冗談だった。Patrick Reedは吹き出した。練習に戻った時、緊張は解け、最高の状態となっていた。

 

・互いに闘志を剥き出しにしたPatrick ReedとRory McIlroyの死闘が続いた。Rory McIlroyはNo.5〜No.8まで連続バーディを得たが、Patrick ReedはNo.5でイーグル。続くNo.6とNo.7は両者ともバーディ。オール・スクウェアで迎えたNo.8(パー3)。Rory McIlroyはオンはしたものの、上りの12メートル。奇跡的に彼はこれを沈め、フィスト・パンプし身体を震わせ、右手を耳に当てて「もっと大声で褒めてくれ!」というジェスチャーをした。Patrick Reedのボールは、ピンの左横7.6メートル。彼は淡々とそれを沈め、Rory McIlroyに向かって突き出した人差し指を左右に動かし(No, noの意)、「喜ぶのは早いぜ」というジェスチャーをした。両者ともこのホールでの大歓声は、それまでの生涯で一度も聞いたことのない音量だったと云う。

・Patrick Reedが僅差でRory McIlroyに勝利し、スコアボードの先頭に赤いマーク(アメリカの印)が付いた。それは後続のアメリカ勢を奮起させた。12のシングルスのうち、7つにアメリカが勝ち、17対11でアメリカが圧勝した。

・勝利チームの祝賀パーティに、敗者が「おめでとう」を云いに行くのはRyder Cupの慣例である。しかし、二年前に敗れた時のアメリカ・チームは、ヨーロッパ勢が声をかけても「今回は失礼する」と返事した(それほど敗北に打ちのめされていたのだ)。只一人、アシスタント・キャプテンだったDavis Love IIIだけがヨーロッパ勢のパーティ会場に出向き、祝いの言葉を述べた。今回はヨーロッパのキャプテンDarren ClarkeとRory McIlroyの二人が祝いの言葉を述べにやって来た。

 

・そのパーティの席上、Tiger Woodsが、Jordan Spieth、Patrick Reed、Matt Kucharらを別室に呼んだ。この週、Tiger Woodsは"pod system"の班長のように、これらの若手を見守って来た。部屋の隅に立って彼は云った、「きみたちに今宵を楽しんで欲しい。何度Ryder Cupに出ようと、こんな晩は滅多にない。この同じ面子(メンツ)が揃うこともないだろう。1999年のBrookline(ブルックライン)で勝った後、おれは憔悴して10時半頃早めにベッドに入っていた。真夜中、ドアがドンドン叩かれ、Payne Stewart(ペイン・スチュアート)の声がした。『出て来てパーティに戻れ。こんな晩は二度とないぞ』と彼は云った。彼の姿勢に気圧され、おれはパーティに戻った。そうして良かったと思っている』彼は最後まで云わなかったが、その一ヶ月後にPayne Stewartは亡くなったのだ。

・ヨーロッパ勢のミーティング・ルームに戻ったキャプテンDarren Clarkeを、チーム全員が待っていた。彼らはヨーロッピアン・チームのメンバーが肩を並べたポスターに全員が署名したものをキャプテンに贈呈した。Rory McIlroyがDarren Clarkeへの感謝のスピーチをした。感動で何も云えないDarren Clarkeをみんなが取り囲み、腕を組み肩を寄せ合い、ヨーロッパ勢の応援歌を唄った。「オレ、オレオレ、オレー、オーレーオーレー」彼らは敗れたキャプテンと共に精一杯声を張り上げ、泣いた。それは喜びの涙であった。

【参考】
・「Patrick Reed(パトリック・リード)の 攻撃的パッティング」(tips_177.html)
・「John Feinstein(ジョン・ファインスタイン)のゾクゾクする話」【『苦悩の散歩道』の紹介】(tips_34.html)
・「John Feinstein(ジョン・ファインスタイン)のThe Majors(ザ・メイジャーズ)」(tips_24.html)
・「John Feinstein(ジョン・ファインスタイン)のU.S. Open(U.S.オープン)」(tips_73.html)
・「John Feinstein(ジョン・ファインスタイン)のブルース・エドワーズ物語」(tips_79.html)
・「John Feinstein(ジョン・ファインスタイン)のPGA Tour Q School(Qスクール)」(tips_108.html)

(December 27, 2017)

グリーン中央を狙うのがスコアリングの鍵

 

[Iron Byron]

インストラクターJim McLean(ジム・マクレイン)の『パワーの学校』に具体例付きで説明されている戦略。

'Golf School'
by Jim McLean (Doubleday, 1999, $27.50)

「スウィング・マシーン(ロボット)が150ヤード、200ヤード等に打った時、どうなるか?機械でさえ、タオル一枚の範囲にボールを積み重ねるなんてことは出来ないのだ。機械も人間と同じ問題と格闘せねばならない。ボールは完璧でないし、シャフトも然り、風もあれば大気の要素も存在する。打たれたボールは、距離の8%に相当する円形にバラける…言葉を替えれば、100ヤード離れて打たれたボールは、約7メートルの円内に入るということだ。

われわれのゴルフ・スクールでは、ピンを狙うのではなく、円に向かって打てと教える。カップがグリーンエッジ近くに切られている場合、スウィング・マシーンもその地点をミスする。特定の距離において、機械でさえ打ったボールがショートし、池やバンカーに転げ込むことは珍しくない。そして、これはボールをティーに乗せて打ってのことなのだ。だから、われわれは生徒の能力に応じてだが、100ヤード、125ヤード、そして150ヤードからでも、すべてのショットをグリーン中央に打たせる。これは、ツァー・プレイヤーにさえ示唆する方法だ。御存知のように、Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)は、彼の全生涯でプレイしたメイジャー選手権で、多くをグリーン中央に打った。われわれはピンを狙うことでスコアを壊し、ゴルフの喜びをも台無しにしているのだ。

私のアシスタントのDave Collins(デイヴ・コリンズ)は、コースのメンバーとお決まりの賭けをしたものだ。それはあるゴルファーに一言も助言することなく、彼のスコアを五打減らせる…というものだった。彼はカートを飛ばして、前のグループに旗を刺さないで次のホールに向かってくれと頼んだ。賭けの対象であるゴルファーはどこにカップがあるのか判らないので、仕方なくグリーンに乗せることだけを考える。これは多くの場合、素晴らしいプレイの仕方である。Dave Collinsが毎回賭けに勝ったことは云うまでもない」

【参考】「ピンを狙うな」(tips_108.html)

(December 31, 2017)

Jordan Spieth(ジョーダン・スピース)の素振り

 

The Golf Channel(ゴルフ・チャネル)は年末の回顧特集の一つで、ゴルフ・ファンの人気投票による「2017年のお気に入りトーナメント・ベスト10」を放送しました。それを見ていて、いまさらながら、Jordan Spieth(ジョーダン・スピース)がアプローチ・ショットを打つ前の素振り回数の多さが印象的でした。これまでも、彼の頻繁に繰り返される素振りに気づいていましたが、ナーヴァスになっている時とか大事なショットの前だろうと軽く考えていました。しかし、ひょっとしたらそれは彼のプレショット・ルーティーンなのか?と思ってガビーン!となりました。

ここに引用したYouTubeヴィデオは'Jordan Spieth Pre-Shot Routine'(ジョーダンのプレショット・ルーティーン)と題されていて、「プレショット・ルーティーン」と決めつけています。このヴィデオで、彼の素振りは短い中断はありながらも、3ー3ー4と計七回も繰り返されます。

The Golf Channelの'School of Golf'(ゴルフの学校)の講師Msrtin Hall(マーティン・ホール)は、Jordan Spiethのプレショット・ルーティーンが好きだと云い、番組の中でJordan Spiethの素振りを真似して見せました。彼は計九回も素振りしました。

世界のトップクラスのJordan Spiethがアイアン・ショットの前に七回も素振りをするのに対し、世界の最下位クラスの私はせいぜい一回か二回、多くて三回。Jordan Spiethは私の数十倍、いや数百倍、数千倍もボールを打っている筈。その彼が入念な素振りをするのに、私がほぼ無造作にスウィングするのは考え直すべきかも知れない、それが失敗に繋がるのかも知れない…と思いました。

Jordan Spiethが頻繁にタオルで手を拭くことまで真似しようとは思いませんが(^-^)、私もスウィング軌道が安定するまで素振りを繰り返すことにしました。

【参考】「素振りは三回せよ」(tips_169.html)

(December 31, 2017)

メトロノームでパット

 

[Putting Metronome]

私は多数のウェブサイトを抱えているので、普通の電話契約を解約出来ません。世の多くの人々が携帯電話に鞍替えし、卓上電話器とおさらばするのを、ずっと指を咥えて見ていました。ところが、ゴルフ仲間の一人Jack Rushing(ジャック・ラッシング)が「iPhoneを上げよう」と云いました。失くしたと思って新しいiPhoneを買ったら、車の椅子の下から出て来たんだそうです。

私にはコンピュータがあるので、携帯電話はググったりウェブサイトを見るためではなく、非常の際の電話が主目的です。で、接続速度がやや遅いという定評(?)があるものの、アメリカで一番安いと思われるネットワークと月額30ドルで契約しました。

早速ダウンロードしたのがこのAppです。Putting Metronome(パッティング・メトロノーム、無料)。効果音は本物のメトロノームを録音したもののようですが、なにやら団扇太鼓のような(もっとガサツな)ものなのでがっかり。しかし、メトロノームとしては充分に機能します。【ヴァージョン・アップする時はもっといい音にしてくれと、作者にリクエストしてあります(^-^)】

インストラクターMike Adams(マイク・アダムズ)は、自分が歩く時のテンポでストロークするのが一番自然であると云っています。45秒の間に何歩歩けるかを五回実行して5で割ると平均が出ます。私はそれが85なのですが、これはとてつもなく早いように思えます。しかし、“パット・ドクター”Dr. Craig L. Farnsworth(クレイグ・L・ファーンズワース博士)によれば、Tiger Woods(タイガー・ウッズ)とSteve Stricker(スティーヴ・ストリッカー)は共に80〜85 bpmの間、Webb Simpson(ウェブ・シンプスン)とBrandt Snedeker(ブラント・スネデカー)は90〜100 bpmの間だそうです。彼らがプレイするグリーンは相当早いので、お粗末なグリーンでプレイする私が85の速度でストロークしていいものかどうかは疑問ですが。

【参照】
・「Mike Adams(マイク・アダムズ)自分固有のテンポでパットせよ」(tips_163,html)
・「Dr. Farnsworth(ファーンズワース博士)のストロークのテンポ」(tips_147.html)

(December 31, 2017)

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