Golf Tips Vol. 186

シャフトについて知っておくべき二、三の事柄

 

アメリカの各ツァーのクラブ・フィッターとして活躍するChris Demsey(クリス・デンプスィ)とインストラクターKevin Walker(ケヴィン・ウォーカー)両名による、クラブシャフトの分析用語解説。

'Golf Magzine: The Best Driving Instruction Book Ever!'
edited by David DeNunzio (Time Inc. Home Entertainment, 2012, $32.95)

「クラブヘッドの選択に満足したら、その機能を最高に発揮させるのはシャフトである。ドライヴァーに付いて来たシャフトで満足してはいけない。適切なクラブ・フィッターはヘッドとシャフトの組み合わせをウン千も持っているのだ。【編註:これはクラブ・フィッターが書いている記事なので、多少我田引水の嫌いがあります(^-^)】

1) シャフトの重さ

最近のドライヴァーのシャフトの重さは30〜125gの範囲である。シャフト・メーカーの中には、40gシャフトを80gのように機能させる技術を用いたものもある。シャフトが軽いとスピンが増えるからである(逆も真)。

 

2) シャフト特性

シャフト特性はフィッターに様々な可能性をもたらしてくれる。これを微調整することによって、クラブフェースをよりスクウェアに安定させたり、ボール軌道を高くしたり、スピンを減らしたり、スウィングを早くしたりも出来る。シャフト・メーカーが"tip-stiff"(ティップ・スティッフ、先端が硬い)と称していても、何と比較して硬いのか?自社の製品の全てと比較して?市場にある全ての製品と比較して?経験豊富なフィッターなら、シャフトに関しての黒い霧を晴らしてくれる。

3) シャフト・フレックス

シャフトの硬さはCPM(cycles per minute、分当りサイクル)で計測される。これはシャフトの実際の硬さの率なのだが、驚くべきことに業界標準というものが存在しない。あるメーカーのXフレックスは他のメーカーのRフレックスかも知れない。どうやって知ればいいか?それは不可能だ。これはフィッティングが欠かせないもう一つの理由である。

4) シャフト・トルク

トルクとは、シャフトの軸を中心とする捩れに抗する能力の尺度である。簡単に云えば、硬くて重いシャフトであればあるほど、トルクは低い(軽く柔らかいクラブはトルクが多い)。クラブヘッドが大きくなって以後、460ccのクラブヘッドの過度な回転を止め、クラブフェースをスクウェアにするため、トルクは低くなった。最近のゴルフ用品製造技術の進歩の一つは、シャフトの重量を低くしつつトルクを低くする能力である。

5) フープ強度

これは極めて新しい用語で、長期に亘るグラファイト技術の大きな進歩の一つである。シャフト・メーカーは、スウィングが早くなればなるほどシャフトが丸みを失い、ボールに伝達しようとするエネルギーを損なうことに気づいた。メーカーは製造工程で(軽く強い素材の使用とともに)グラファイトの層を異なるようにし始め、シャフトがその丸みを長く保ち、ボールに伝えるエネルギーの量を増やしたのだ」

 

(August 02, 2017)

なぜ好調は二度続かないのか?

実は私がこの症状の典型なのです。二度好調が続いた試しがない。いいラウンドの後は必ず不調。次の記事はスポーツ心理学者Tom Dorsel, Ph.D.(トム・ドーセル博士)によるプロの好・不調に関するものですが、何らか参考になるのではないかと期待して読みました。

'The Complete Golfer'
by Tom Dorsel, Ph.D. (Allyn and Bacon, 1996, $19.00)

「私がよく受ける質問の一つに、トーナメント初日に目の覚めるようなスコアを出した者が、しばしば二日目でお粗末なラウンドをするのは何故か…というものがある。これはアマチュアにも共通する傾向だが、U.S.オープンのような大トーナメントでも、無名のプレイヤーが素晴らしい第一ラウンドをしながら、二日目にずるずると後退して行くのは稀ではない。

そういう現象が何故起るのか、いくつか可能な説明はあり得る。第一に、ゴルフは難しいゲームであり、いいラウンドを一回だけでなく、二回連続させるというのは大変なことなのだ。安定したスコアで廻っている場合でも、実は内容が異なる傾向がある。ある日はパーオン率がよくて、次の日はパッティングがよく、別の日はラッキーが積み重なるとか。だから、いいスコアを繰り返せないのは、ツイてなかっただけとも云える。

二つ目は、いいスコアを連続させる可能性は、プレイヤーの能力にもよるのだ。初日に生涯ベストのラウンドをした経験不足のプレイヤーは、経験豊富なプロに較べて二日目で後退し易い。

三つ目は、初日は有名・無名に関わらず誰もがゼロからスタートするので、(観客やマスコミのお気に入りを別として)誰一人大きな期待を寄せられたりしない。しかし、一旦リーダーボードのトップに位置すれば匿名のヴェールは剥がされ、突如スポットライトが当てられる。これはプレイヤーが抱いていた最適のやる気の度合いを超えるプレッシャーを生み出し、パフォーマンスを阻害し始めてしまう。

四つ目は、初日のいいスコアに有頂天になったプレイヤーが、自分に期待し過ぎ、もっといいスコアを出そうとするから…という解釈だ。プレイヤーはいい成果を収めた初日の作戦に固執すべきなのに。

いいスコアをリピートしたければ、大それた目標ではなく小さな目標を達成しようとすることから始めるとよい」【編註:Al Geiberger(アル・ガイバーガー)がPGAツァー初の59を達成出来たのも、八ホール連続アンダー・パーのタイ記録を作ろうという、比較的小さな目標に挑戦したからでした】

 

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私の場合、よいラウンドの後、「自分は上達したんだ」と思い込み、次のラウンドでも同じレヴェルの成果を期待してしまう傾向があります。それは、よかった時の緊張と真剣さを欠き、「どうせうまく行く」という生ぬるい態度に繋がります。最初の子供は真剣に育てるが、二度目の子育ては野放し。初めてのレシピは計量カップや計量スプーンを用いて正確に作るが、リピする時は目分量で作っちゃう。二番目の子供は伸び伸びと育ち、二回目の料理もそう大怪我にはならない。しかし、ゴルフはフェースの角度が1〜2°変わってもカップから逸れてしまう。手抜きは結果に大きく影響します。

私の場合、「自分は上達した」という幻想、自信過剰が次のラウンドを駄目にする原因だと思っています。あるいは、よいスコアで廻れた時は、たまたま一度も林やバンカーに入れなかったとか、多くのホールで偶然易しいラインが残るように寄せられた等々、幸運な要素に恵まれたのであって、自分の腕前とは無関係だったということに気づかないのかも知れません。

必ずとは云い切れないものの、絶不調なラウンドの後には良いラウンドが続くことが比較的多い。悪いラウンドはお粗末な戦略・お粗末なショットの集積であり、そのひどさが骨身に滲みているので、必死に正道に立ち返ろうとするからです。やってはいけないこと、忘れていたポイントを思い出す。まこと、われわれのゴルフは忘却との闘いと云ってよく、次から次へと重要なことを忘れ去ります。良いラウンドが続かない原因の一つは、良いラウンドの出来に慢心し、野方図になって基本を失念するせいと云えるでしょう。

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以下はスポーツ心理学者Patrick Cohn, Ph.D.(パトリック・コーン博士)の解説。

'Going Low'
by Patrick Cohn, Ph.D. (Contemporary Books (2001, $22.95)

「60を切るような勢いを見せたツァー・プロが、翌日お粗末な、あるいは凡庸なラウンドをする例を毎週目にする筈だ。プロでさえ、膨らんだ期待に免疫ではないのだ。Notah Begay(ノタ・ビゲイ)【註】は、1998年にニュー・メキシコ州で開催されたNike Dominion Open(ナイキ・ドミニオン・オープン)の二日目に59を達成したが、三日目74、最終日も74で、六位に終わった。彼は学生時代1994年のNCAAトーナメントで62という記録を作ったが、その後やはり73、73という成績で六位に終わっている。

【編註】Notah Begay III(ノタ・ビゲイ三世、1972年生まれ、写真)は、ニュー・メキシコ州生まれのアメリカン・インディアン。Stanford(スタンフォード)大学時代にはTiger Woods(タイガー・ウッズ)と同じチームで活躍。Nike(ナイキ)ツァーを経て、PGAツァーに参加し、四勝を挙げた。現在the Golf Channel(ゴルフ・チャネル)の解説者の一人。

彼は三日目と最終日の74、74について、彼のプレイが日々安定していないせいだと結論づけている。彼にとっていいプレイが出来るのは、心構え、リズム感、パットの成功、幸運なブレイク【編註:この場合の「ブレイク」は、ボールが地面で撥ねたり木に当たったりして方向転換すること】に恵まれること…等に左右される。これらの不確定要素は日々変化する。

生涯ベストのラウンドに続いて、それを続けるのがなぜ難しいかというと、常に現在のラウンドを生涯ベストのラウンドと比較してしまうせいだ。ベスト・スコアは、良いパッティング、適切な思考と情念、良いショットの連続、そして、何度かの幸運なブレイク等によって生じる。その後のラウンドでは、毎回ベストのラウンドと比較してしまうため、ゴルフは気楽なゲームでなくなってしまう。以前はエフォートレスなプレイだったのに、苛々し易くなる。何故なら、前のようにパットが沈まなくなるからだ。ベストのラウンドのように幸運なブレイクにも恵まれない。かてて加えて、あなたの高められた期待は、インスタントな結果が出ないため欲求不満の原因となる。

 

生涯ベストのラウンドを基準にして、それと比較しながらプレイしてはいけない。コース・コンディションも、天候、運、あなたの思考法、感覚、行動など全て、日々同じではないのだ。ゲームの各分野の向上を図り、弱点を見極めてそれらを克服し、強みを伸ばす。ゴルフ・コースでは、何が可能で何が不可能かなどの予断を排除し、一打一打にベストを尽くすことに焦点を合わせる。次回、あなたがゾーンに突入したり、リズムを感じ取れたら、その感覚を受け入れ、ラウンド終了まで波に乗ることだ」

(August 06, 2017)

パットの教え魔に御用心

「80を切る・虎の巻」(tips_60.html)のPatrick J. Cohn, Ph.D.(パトリック・コーン博士)に、PGAツァーのプロ・テストまで受けたことがあるというスポーツ心理学者Robert K. Winters, Ph.D(ロバート・K・ウィンタース博士)が加わって出版されたパッティングの心理学。

'The Mental Art of Putting'
by Patrick J. Cohn, Ph.D. & Robert K. Winters, Ph.D., Taylor Trade Publishing, 1995, $16.95)

「誰もが友人に教えたがる。パット巧者がカップの左にミスすると、同伴競技者が『プルしたね。振り子の動作を確実にするため、肩の位置を変えたら?』などと助言する。多くのプレイヤーは、何がミスの原因だったのか考えもしないで、次のパットで変更を試みる。それに対し、賢いプレイヤーはストローク法を変えたりすることなく、過去数回のパットを仔細に検討する。この場合、他人の助言にもかかわらず自信が揺らぐことはない。

LPGAスターのHelen Alfredsson(ヘレン・アルフレドソン、スウェーデン)は、『あなたが得意とするものを信頼する必要があると思う。パットが思うように行かない時、色んなことを探し求めたりヒントを得ようとしがちになるが、それは心が消化不良を起こし、症状を悪化させることが多い』と云う。

こういう状況に、あなたならどう対処するだろう?あなたは、同伴競技者のあなたのパットに関する技術的意見に何でも耳を傾けるタイプだろうか?あるいは自助努力で修正するにはどうすればよいか、ベストの方法を知っているだろうか?パートナーたちの助言は善意からだとしても、彼らはあまりにも即断的に情報を提供するため、あなたのパッティングに害をなすことがあり得る。誰の言葉を聞くか、心すべきである」

 

(August 06, 2017)

映画'Tommy's Honour'(トミィズ・オナー)

 

21歳までに全英オープンに四回優勝したYoung Tom Morris(ヤング・トム・モリス、1851〜1875、息子の方)の伝記映画(2016年、製作国:イギリス、112分)。監督はJason Connery(ジェイスン・コネリィ、映画俳優Sean Connery[ショーン・コネリィ]の息子)。

[poster]

Young Tom Morrisの生涯がドラマティックであることは知っていましたが、映画にするほどだろうか…と半信半疑でした。それは杞憂で、美しく撮影されたスコットランドの風景とゴルフ草創期を彷彿とさせるプレイ場面と共に、ストーリィも楽しめます。

Old Tom Morris(オールド・トム・モリス、1821〜1908、父親)が、貴族らしきメンバーのキャディを務めるシーン。メンバーがチョロすると、「方向的には完璧でした」と褒めるのが可笑しい。

ゴルフをほとんど知らないカミさんも楽しんで最後まで見ていましたから、一般の映画ファン向けに配慮されていると云っていいのでしょう。反面、熱心なゴルフ・ファンにはいささかゲームのスリルが不足気味です。

当然とは云え、俳優たちがみな昔のスウィングを上手にマスターしているのに感心しました。しかし、現在のゴルフ・コースと較べると段違いに凸凹した雑なグリーンで、いくら撮影のために練習したからといって、パットが見事に成功するのは信じられない思いでした。コンピュータ・グラフィックスで処理したのなら話は別ですが。

二点ほど疑問があります。1868年当時にYoung Tom Morrisがバックスピンを発明したように描かれていますが、私は以下のWalter Hagen(ウォルター・ヘイゲン)の記事を読んでいました。

「(1920年にWalter Hagenが初めて渡英し、Jim Barnes(ジム・バーンズ、英国生まれのアメリカ人)と二人の英国のプロとエクシビション・マッチを行った時)英国人観衆はアメリカ人が多用するバックスピンのかかったショットを初めて見た。ピンの向こうに着地し、ころころと戻って来るボールを見たゴルフ・ライターの一人は『全くの偶然か、魔術に違いない』とコメントした」('The Walter Hagen Story' by The Haig, Himself [Simon and Schuster, 1956])

…ですから、その50年以上も前、1868年頃のYoung Tom Morrisがバックスピンをかけたというのは、眉唾に思えます。

もう一点、Young Tom Morrisの時代に、観客整理のためのロープが導入されたように描かれています。同じWalter Hagenの本に、次のような部分があります。

(1920年にWalter Hagenが全米各地でエクシビション・マッチを行った際)「クラブ役員たちはティー・グラウンドとフェアウェイにギャラリーを規制するロープの必要性を認めた。この時が、アメリカのゴルフの歴史において、ギャラリー規制のためのロープが使われた最初であった」

…1920年と云えば、Young Tom Morrisが没した45年後です。1870年代に英国のコースでロープが使用されていて、それが45年後までアメリカに伝わって来なかったというのは信じられません。英国のゴルフ・プロ多数がアメリカのコースに雇われてゴルフを教えており、英国のコース設計家たちも陸続とやって来ていたというのに。

私の推測は、あまりネタが無いのでバックスピンもロープもYoung Tom Morrisの功績にしようとした原作者と脚本家の勇み足だろうというものです。

【参考】
・「Hagen(ヘイゲン)、Jones(ジョーンズ)、Sarazen(サラゼン)時代のゴルフ事情」(tips_170.html)
・「ティー・ペグの発明と普及」(tips_172.html)

【おことわり】映画のポスターはhttps://upload.wikimedia.org/にリンクして表示させて頂いています。

(August 06, 2017)

集中を妨げるものと、その対策

スポーツ心理学者Dr. Dick Coop(ディック・クープ博士)がリストアップした、ゴルフの妨害物リストと処方。

'Mind Over Golf'
by Dr. Richard Coop with Bill Fields(Macmillan, 1993, $12.95)

「・プレッシャー

競技会の熱気の下のゴルファーは、統制のとれた準備に必要なディテールの全てを遂行するのが困難になる。その手抜かりは、お粗末な作戦やクラブ選択のミスに繋がる。意識的な思考は停止してしまう。プレッシャーはまた、集中を阻害する。集中のためにはある程度のリラクセーション(息抜き)が必要だからだ。その意味では、コース外で実践したリラクセーション・テクニックが役立つ。

・切望

自分の能力を証明しようという切望は、集中状態を途切れ途切れにし、あまりにもスコア至上主義にすることによってゴルファーを蝕む。スコアにこだわるあまり、プロセスに集中することを忘れてしまうのだ。結果でなく、プロセスを大事にすることが重要。

・快適領域

これは全てのゴルファーの集中を脅かすものだが、特にアマチュアが100、90、80を初めて切ろうとする際に最も脅威的となる。No.18をパーで上がることが自分のベスト・スコアになる…という場合、多くのプレイヤーが集中心を失う。快適領域【註】と闘うには、ゴルファーは切望とプレッシャーの強烈な組み合わせを克服せねばならない。

【編註】新記録達成の使命の重圧から逃れて、いつもの駄目ゴルフ(ぬるま湯)に戻ろうとする臆病風。

 

こうした快適領域に回帰しようという誘惑に抗する戦略の一つは、これは全てのゴルファーが必ず一度や二度経験している突破口なのだという事実を想起すことだ。また、この難関を段階的に突破することも助けとなる。スコアが突如飛躍的に良くなると期待しないこと。例えば、あなたが初めて80を切ろうとしているなら、その目的達成前に80、81、82などを数回期待すべきである。

・未知のコース

大概のアマチュアが、夢に見た新しい(特に有名な)コースでわくわくしながらプレイすると、日頃の修練や集中心が働かなくなる。彼らは神経過敏とアドレナリンに屈してしまう。ツァー・プロが有名コースを訪れると逆である。素晴らしいレイアウトに触発された彼らは、どこにであるコースでプレイするより集中するようになる。

・未知の同伴競技者

特に自分より上手いプレイヤーと組み合わされると、プロもアマも集中心が減退する【編註:上級者の目に自分がどう映り、どう評価されるか気を揉むため】。だが、あなたは彼らから分析・検討されているなどと思わないことだ。上級者は己のゲームに集中していて、他人のプレイのことなど考えないから上級者になれたのである。

・倦怠感

あなたが頻繁にゴルフするなら、そうでない人に較べ倦怠は敵である。頻繁にプレイする引退者とツァー・プロがこの症状に罹る。大抵のゴルファーは、厭きるほどプレイするチャンスは無いが、六週連続でトーナメントに参加するようなプロは“脳死状態”になる。訓練した集中法は消え失せてしまう。倦怠感はまた、フィーリングや創造力、そして集中に必要なメンタルなイメージ無しのプレイに繋がる。こういう症状に陥ったら、真っ直ぐ打てる場面でもドローやフェードを打つことを試みるとよい。

 

・外部の妨害者

コースの隣りの建築現場で大工がガンガン金槌を叩いていても気にならない時もあれば、鳥の囀りでさえ集中心を乱す日もある。こうした外部の妨害を無視することは出来ないのだが、自分を妨害させる許可を与えない努力をすることは可能である。偉大なゴルファーたちは(少数の例外を除いて)TVのクルーや場内整理係の動きなどを見て見ぬ振りする術に長けている。

・自信の欠如

ツァー・プロたちと話していると、彼らのほぼ全てが自信の無さが集中技術を蝕む…と云うのに驚かされる。お粗末なプレイを始めると集中が不足し、集中心が抜け落ちるとプレイはさらに悪くなる…という悪循環。もちろん、常にベストのプレイが出来る者なぞ一人として存在しない。だが、正しい準備はどんな場合でもあなたの自信を鼓舞し、集中心の衰弱から救ってくれる」

(August 09, 2017)

自家製ロックスターその後

ロックスターはロック・バンドのことではなく、エナジー・ドリンクのRockstar(ロックスター)のことです。私はゴルフにRockstarが効き目があることに気づいたのですが、Rockstarそのものは私の頻度でゴルフする者には高くつくので「自家製Rockstar(ロックスター)製造法」(tips_172.html)に書いたように、Rockstarの主成分【註】をカプセルで購入し、それをCrystal Light(クリスタル・ライト)というカフェイン入りドリンクの粉末と一緒に混ぜて、スポーツ・ドリンクの空き瓶に入れて飲んでいました。

[bottles]

【註】タウリン、ガラナ種子エキス、朝鮮人参エキス。それぞれ500mg、100カプセルで4ドル前後。

この自家製Rockstarの欠点は、2カップ(591 ml)の湯冷ましにあまりにも多くの粉末を混ぜるため、少しジャリジャリ感が残ることでした。Crystal Lightだけなら綺麗に溶けるのですが、それに三つのカプセルから抜き出した粉末を足すのはちと無理があるようでした。(湯が温かいうちに混ぜても溶け切らない)

もう一つの欠点は、ワン・ラウンドで一本の自家製Rockstarを飲み切れず、大体半分か1/3を次回に残してしまうこと。これでは三つの主成分(朝鮮人参エキス、ガラナ種子エキス、タウリン)も半分しか摂取していないことになります。

で、次のように方法を改めました。《カフェインはプレイ開始の一時間前に摂取しておくこと》という指示【註】に従い、シニアのゲーム開始一時間前にカフェイン(ガラナ種子エキス)を含む三つのカプセルを一緒に服む。Crystal Lightはドリンクとして数ホール毎に飲む。

【註】「カフェインの助けでスコア・アップ」(tipa_170.html)

この方式で数週間経ちますが、全く問題ありません。…どころか、毎ラウンドで1〜2バーディ、たまにイーグルや3バーディを達成したりしています。単に幸運の賜物なのか、三つのカプセル同時服用の効果なのか判然としませんが、どっちみち悪くはないので今後もこの方式を継続することにします。

なお、いずれのカプセルもドーピングの禁止物質には該当しません。カフェインは「監視プログラム」の一つですが、検査はされるものの検出されてもドーピング違反にはならない物質です。

【おことわり】画像はhttps://media.swansonvitamins.com/にリンクして表示させていただいています。

(August 09, 2017)

タウリン、ガラナ、朝鮮人参の効能

 

あるサイトが、この三つに特化した解説をしているのを見つけました。筆者は登録栄養士。以下はその要旨です。

'Taurine, Guarana & Ginseng Effects'
by Janet Renee, MS, RD, (Oct 14, 2015) http://www.livestrong.com/article/197248-taurine-guarana-ginseng-effects/

「この三つはエナージィ・ドリンクやスポーツ・ドリンクに一般的に含まれている物質である。これら三つを一緒に摂取した場合の影響を突き止めるのは、リサーチ不足で困難である。しかし、僅かなデータとはいえ、それら個々の影響について浮き彫りにしてくれる点はある。

[Ginseng] [Guarana] [Taurine]

タウリン【写真左】

これは最もアミノ酸豊富なものの一つ。科学者たちは未だにタウリンの効果を解明中であるが、リサーチャーたちはタウリンが心拍と神経伝達物質と呼ばれる脳内化学物質の影響とを制御するのを助けてくれると考えている。ある研究においては、カフェイン入りタウリン・ドリンクがスポーツ・パフォーマンスに失敗している。ただし、カフェインが影響したのかどうか、リサーチャーたちは確信を持っていない。

【編註】三つのうちタウリンだけは「空腹時に服用」となっているのですが、朝食前に服用するとラウンドには早過ぎるで、私はラウンド一時間前に三つ一緒に服んでいます。

ガラナ【写真中】

これに含まれるカフェインは、中枢神経系を刺激して注意深さを強め、エネルギーを増大することがある。これはまた苦痛を弱め、頭痛を軽減する。

朝鮮人参【写真右】

朝鮮人参と呼ばれるものには三種類あるが、エナージィ・ドリンク等に用いられるのは"panax ginseng"(パナックス・ギンセン)である。これは、記憶力、集中力、スポーツ・パフォーマンス、スタミナなどを増強し、ストレスを弱める効果もある。朝鮮人参は抽象的思考や反応時間、中年以上の人間の計算能力等を増強する。

■ 安全性

アメリカ薬剤師会報によれば、エナージィ・ドリンクやスポーツ・ドリンクに含まれている程度の量のタウリン、ガラナ、朝鮮人参の摂取において危険性は認められない。大方のエナージィ・ドリンクに見られるこれら三つの組み合わせの量は副作用の影響を生ずるに充分でないため、否定的な報告は皆無である…と、このリポートは述べている。

しかしながら、これらを摂取する前に医師に相談することが望ましい」

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私が服用しているのはSwansonvitamins.comの製品ですが、その服用法は以下のようになっています。
・タウリン  1カプセルを一日一回
・ガラナ     1カプセルを一日2〜6回
・朝鮮人参  1カプセルを一日1〜2カプセル

つまり、ガラナと朝鮮人参は一日複数回摂取が推奨されている訳です。ラウンド開始一時間前に三つを服用し、九ホールを終えたところで(約90分〜二時間後)に、ガラナと朝鮮人参だけを1カプセルずつ服用するのがベストなのかも知れないと思いました。実際にやってみました(まるで人体実験)。さしたる変化はなし(良くもなく悪くもない)。追加の服用は無駄のようでした。

【おことわり】タウリンの画像はhttp://www.vigorous-tech.com/、ガラナの画像はhttp://supplementsinreview.com/、朝鮮人参の画像はhttp://www.searchhomeremedy.com/に、それぞれリンクして表示させて頂いています。

(August 09, 2017)

ゴルフ戦士たるべし

スポーツ・ライターMichael Clarkson(マイケル・クラークスン)による戦闘的ゴルフの勧め。

'Pressure Golf'
by Michael Clarkson (Raincoast Books, 2003, $16.95)

「あなたが真剣な競技者であるか、あるいはそうなりたいと願望しているのであれば、自信を持つとか対応策を講じておくなどの生易しい段階を超えるべきだ。

ゴルファーがあたかも戦士のように感じ、対戦者やコースを支配する感覚を抱く時、人間の数百万年に及ぶ戦争と生存との産物であるパワフルな緊急警戒態勢が作動し、ドーパミン(アドレナリンの前駆体で攻撃精神を生む)やテストステロン(筋肉の増加作用を持つ)などのホルモンが体内で噴出する。これらのホルモンはしばしば扱いにくくゴルファーを苛つかせたり怒らせたりする。だから、一般的に穏やかなゲームであるゴルフのテーマとして取り上げるには、これはいささか取扱注意の嫌いがないではない。

偉大なゴルファーたちが自分たちを戦場に赴く戦士と看做す好例は、ヨーロッパ・チーム対アメリカ合衆国・チームによるマッチプレイ対決Ryder Cup(ライダー・カップ)であろう。日頃落ち着いたプレイをするTom Lehman(トム・レーマン)でさえフィスト・パンプしたり、Justin Leonard(ジャスティン・レナード)が宙に跳び上がったりする。ヨーロッパ勢も、しばしば期待以上のプレイを見せる。1999年にマサチューセッツ州Brookline(ブルックライン)で開催されたRyder Cupについて、Tiger Woods(タイガー・ウッズ)は次のように云った、『自国でRyder Cupに勝てるなんて凄いことだ。勇気と度胸の賜物だ』 それはアメリカ・チームが4ポイントの差を引っくり返した一寸した奇跡であった。最終日前夜のミーティングで、アメリカ・チーム全員がスポーツマンたちからの鼓舞のメッセージを受けたが、その締めくくりは当時大統領候補であったGeorge W. Bush(ジョージ・W・ブッシュ)が朗読したWilliam B. Travis(ウィリアム・B・トラヴィス)が書き遺した『死の勝利』と題された手紙であった。William B. Travisは、メキシコ軍に包囲されたアラモの砦を死守せんとして戦死した指揮官で、手紙には『私は降参も退却もしない。可能な限り留まり、一兵士として国と名誉のために死ぬ覚悟である』と記されていた。

 

PGAツァーで二勝を挙げたNotah Begay III(ノタ・ビゲイ三世、アメリカ・インディアンの末裔)は、アマチュア時代の重要なマッチ・プレイ対戦に、インディアンが戦闘に赴く際に用いたメークアップを顔に施した。

Tiger Woodsはトーナメント最終日に赤いシャツを身に着ける。それは闘牛の色であり、大胆さの色である。

LPGAツァー・プロのKarrie Webb(カリー・ウェブ)は戦闘を好む。彼女は云う、『もちろん、胸はどっきんどっきんするし、身体中をアドレナリンが駆け巡るわよ。でも、わたしはその感覚が好き。その状況を怖がったりしない』

自信だけでなく、ゴルフには勇気も必要だ。真の勇気は恐れを感じつつも、それを乗り越えて戦闘へと突き進むことである。恐怖が緊張やビビりの原因となるのではなく、失敗したら人々があなたをこき下ろすようなタフなショットに立ち向かうのが本当の勇気だ。Annika Sorenstam(アニカ・ソレンスタム)は、いくつものメイジャー・トーナメントのプレッシャーで動揺したものだ。2001年のNabisco(ナビスコ)選手権で、彼女はヴァイザーのツバの裏に自分だけに見えるように『恐れるな。突撃せよ』とスウェーデン語で書いた。私はこれがスーパー・ゴルファーの心境だと思う。

一部の人々の目に愚かに見える結果を招いたとしても、彼らはプレッシャー下で一か八か挑戦することを恐れない。私の見解であるが、Sorrenstam(ソレンスタム)、Woods(ウッズ)、Nicklaus(ニクラス)らはなにものをも恐れない。問題は博奕を打つ時にあまりにも弱虫に見えるかどうかだ。彼らが成功するかどうかはどうでもよいことだ。挑戦を決意した時、彼らは既に恐怖を打ち負かしたのだから。

 

あなたが戦士の勇気を見せるのがthe Masters(マスターズ)のグリーン・ジャケットのためか,クラチャンのためかは問題ではない。あなた自身の恐怖(あなたの弱点と必要性)に直面することが、最大の試練なのだ」

(August 16, 2017)


Byron Nelson(バイロン・ネルスン)の勝利の秘訣

“モダン・ゴルフの祖”Byron Nelson(バイロン・ネルスン、1912〜2006)は、1945年にPGAツァー11連勝、年間計18勝を挙げるという記録を樹立した後、「念願だった牧場購入資金が貯まったから」…と突如競技生活から引退し、世界を驚かせました。彼が明かす勝利の秘密。

[Byron]

'Shape Your Swing The Modern Way'
by Byron Nelson with Larry Dennis (Golf Digest, 1976)

「トーナメントが始まってもいないのに、妻に『次のトーナメントは頂きだ』と語ったことが何度もある。妻が『どうしてそう云えるの?』と聞いた時、私は答えたものだ、『なぜって、何度打っても正確に同じ距離に打てるからさ』と。

それはあまり知られていない重要なポイントなのだ。キャディ目掛けてボールを打つ時【註】や、キャディがいなければボールの着地点を選んで見守るべきだ。ボールは少し右や左に逸れるかも知れないが、もし毎回同じ距離に着地するなら、それはあなたがいいスウィングをし、ソリッドにボールを打っていることを意味している。その時、あなたは自分のスウィングを信頼し始めることが出来る。

【編註】当時、Ben Hogan(ベン・ホーガン)やGen Littler(ジーン・リトラー)などの名人たちは、練習場やゴルフ・コースでボールの着地点にキャディを立たせてキャディ目掛けてボールを打ちました。キャディは左右どちらかに一歩動くだけでボールをキャッチ出来たそうです。

多くの人々は練習場だけがゴルフを学ぶ場所だと考えるが、私はそうではない。私はそれ以上のことをしていたし、他のトップ・プレイヤーたちに聞いても私と同じように感じていた。

夜、ベッドに横になって心の中で自分のスウィングを思い描くのだ。こういう時、なぜか物事がより鮮明に見え、自分が犯していたミスや遂行したい正しいスウィングなどの全体像がよりよく得られる。私が生涯で得たベストのレッスンのいくつかは、夜ベッドの中で自分のゲームについて考えている時のものだと考えている。

あなたには、結構なプレイヤーが夜横になって自分のゲームのことを案じている姿が奇妙に思えるかも知れない。実は、それこそが彼がいいプレイヤーである理由なのだ。彼は彼の仲間よりも時間と努力を傾け、それによって仲間たちの一歩前を行くのである。

あまり議論されたことがない真の勝利者の特徴の一つは、彼が絶対に不注意なショットをしないということだ。例えば、Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)やGary Player(ゲアリ・プレイヤー)らが不注意なショットをしたのを見たことがない。これは誰にとっても勧められることだが、特にチャンピオンはこの態度を身についていなければならない。一打や二打の浪費が勝利と敗北を隔てるというだけでなく、不注意はさらなる不注意を生み、じきにそんな風にプレイするのがあなたの性癖となってしまう恐れがあるからだ」

(August 16, 2017)

Gene Sarazen(ジーン・サラゼン)の叡智

 

Gene Sarazen(ジーン・サラゼン、1902〜1999)は、生涯にメイジャー七勝を含む計48勝を挙げた名人。1935年のthe Masters(マスターズ) No.15でのダブル・イーグル(アルバトロス)達成、サンドウェッジを発明した人としても有名。

'Thirty Years of Championship Golf'
by Gene Sarazen with Herbert Warren Wind {Prentice-Hall, Inc.,1950)

「大方のゴルファーは、パッティングの練習を10メートルぐらいから始め、それから短い距離へと移っていく。私が思うに、それは逆だ。30センチ前後から始めて、次第に5メートル前後に後退するのが賢明である。その方がスムーズなストロークを構築出来る。ゴルファーたちは練習でもパットを捩じ込もうと考え過ぎる。Horton Smith(ホートン・スミス、1908〜1963、メイジャー二勝を含む36回のツァー優勝)のようなパット名人たちは、練習の際はストロークだけに集中する。彼らはボールを正しくストロークさえすれば良い結果が得られると知っているのだ。

[Sarazen]

私が常に苛つくのは、ロッカー・ルームで『だが、パットがいけなかったんだ』と嘆く輩に遭遇する時だ。誰だってボールは打てる。全てのショットが合算される際、1メートルのパットも250ヤードのドライヴも同等である。パターは杓子であり、ミルクとクリームとを峻別する道具だ。偉大なチャンピオンたちは、素晴らしいパット名人でもあった。Walter Hagen(ウォルター・ヘイゲン)、Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)、Byron Nelson(バイロン・ネルスン)、Ben Hogan(ベン・ホーガン)等々。Harry Vardon(ハリィ・ヴァードン)はこの定義の例外であるが、彼が優勝する時はパットも好調であった。パットが低調では、チャンピオンはチャンピオンとして留まれない。1946年のU.S.オープンで、Byron Nelsonはティーからグリーンまでは完璧なゴルフをして参加者中のベストであったが、彼が優勝出来なかったのは、71ホール目の3パットや72ホール目の救いようのないパットのせいではなかった。四日間全体のパットの出来が、彼の他のショットの素晴らしい水準と肩を並べていなかったからだ。

ゴルフ道具全てに思慮深くあるべきだ。クラブがどれもあなたにとって余所者でなくなるよう、親密な仲にならねばならない。多分、あなたはあまりに多過ぎる数のクラブを担いでいるのかも知れない。私の現役時代の初期に、なぜ数多くのソリッドなショット・メーカーが輩出したかという理由は、ゴルファーたちがたった八本か九本のクラブだけでプレイしていたため、それら全てを熟知していたせいだ。私が三度目のPGA選手権に優勝した時は、五本か六本のアイアンしかバッグに入れていなかった。私は、私の自信を喪失させるクラブは村八分にした。トーナメントの間にクラブをバッグから抜き出す時、私は旧友と共同作業をする心地だった。『わが竹馬の友よ、…』私は(例えばの話)マッシー【編註:5番アイアンに相当】を握りながら感じる、『こいつには随分世話になったもんだ。こいつは頼りになる相棒なんだ』

今日のプレイヤーたちが犯す重要な過ちは、どのショットも完璧なライで練習することだ。ボールを打つのでなく掃くようでは、正しいスウィングを身につけることは出来ない。あなたはいいライ、貧弱なライ、完全に劣悪なライなどから打つ練習をすべきだ。

一般ゴルファーの最も大きな障害は、一足飛びに上達しようとする性急さである。基礎も理解しないうちから、いいスコアで廻ろうとする。もちろんその不可避的結果は、いいスコアになどにならないということだ。

いいゴルフをするには知性が必要だ。意欲的なゴルファーは練習の仕方と道具について、明確な考えを持つべきである。そういう人はコースにおいて自分の限界を知り、18ホール全部で完璧なティー・ショットを打てるなどと期待しない。Cary Middlecoff(ケアリ・ミドルコフ、1928〜1998、メイジャー四勝を含む41回のツァー優勝)やLloyd Mangrum(ロイド・マングラム、U.S.オープンを含む36回のツァー優勝)でさえ、そんな期待はしていない。意欲的な人はまた、打つ前に36もの人体部品が手筈通り機能するかどうか考えたりして、集中心を打ち砕いたりしない。彼が理解出来ないような失敗を犯したとしたら、それは彼がプロとしての能力がある徴候(しるし)である。

意欲的ゴルファーは、グリップがゴルフ・スウィングの基礎であることを忘れない。基礎工事が適切なら、家は何年でも堅固なままだが、基礎が悪ければいくら部屋を綺麗に飾り立てても、いつの日か家は倒壊する。私は、平均的ゴルファーが分別を持ってゴルフ・ゲームに接するなら、彼は早晩間違いなく平均を遥かに上回る成長を見せると確信している。

1922年にイリノイ州のSkokie C.C(スコーキィC.C.)で開催されたU.S.オープン。私はグリーンでの練習に時間をかけた。練習グリーンではなく、コースのグリーンである。夕暮れ前、私は難しいグリーンの一つに歩いて行き、一時間ほど芝目とブレイクとに慣れ、その傾向を記憶したと思えるようになったら、次のホールに移動した。これはトーナメント前の準備として私が発見した方法であり、真剣なゴルファー全てに勧めたいものだ。練習グリーンの多くは助けになるよりは、妨害するものと云ってよい。本グリーンにそっくりな速度、芝の質、勾配を備えた練習グリーンを用意しているのは、Oakmont(オークモント)とAugusta National(オーガスタ・ナショナル)ぐらいしか思いつかない。【註】最初の三〜四ホールのグリーンを熟知していれば、スタート直後の不安を解消してくれる。

【編註】この本が出版されたのは1950年なので、その後U.S.オープン開催コースの練習グリーンは、USGAの示唆・指導によって改善されたであろうと推測されます。しかし、私がプレイしているようなパブリック・コースの練習グリーンは、昔も今も変わらず貧弱なものかと思われます。

ゴルフの最も危険な風潮の一つは、このゲームを実際のもの以上に謎めいた、とても難しいもののように思わせることだ。色んな技術的ナンセンスを読まされる読者は、途方に暮れ、やる気を失くし、びくびくして暮らすことになってしまう。私は何度もインストラクション本の出版をオファーされたが、いつも固辞して来た。その理由はゴルフ・インストラクションに一冊の本全部を埋め尽くす必要はなく、一章だけで事足りると思うからだ」

(August 16, 2017)

複数ボールを連続で打ってリズムを作る

 

[Flick]

インストラクターSimon Hotham(サイモン・ホーサム)による、ゴルファー固有のリズムを確立する方法。

'The Best Golf Tips Ever'
edited by Nick Wright (Contemporary Books, 2003, $24.95)

「あなたにとっての理想的なリズムを見つける方法は、五個のボールを縦一列にティーアップすることだ。最初のボールをあなたの全力の40%で打つ。すぐさま次のボールに進み、それを全力の1/2の速度で打つ。同じように間を置かず少しずつスウィング速度を増しながら打ち続け、最後のボールを全力で打つ。

多分あなたは三番目か四番目のショットがベストの結果を生んだことに気づいただろう。あなたに必要なのは、そのショットのスウィング速度をコースで再現することである」


【おことわり】インストラクターJim Flick(ジム・フリック)の画像はhttps://s-media-cache-ak0.pinimg.comにリンクして表示させて頂いています。

(August 23, 2017)

情報の洪水の中で

スポーツ心理学者Patrick Cohn, Ph.D.(パトリック・コーン博士)による、ゴルフ版自己防衛。

'Going Low'
by Patrick Cohn, Ph.D. (Contemporary Books (2001, $22.95)

「われわれは、ゴルフ・テクニックに関して過剰な情報に身を曝している。さらに悪いことには、用品メーカーがクラブからボールから練習道具まで、あり余るほどの選択肢を供給し続ける。クラブ・メーカーが新しいパターやハイテク・クラブを登場させる度に、われわれは買い替えなければ競争に負けるような気にさせられる。

年々ゴルフの習得は複雑化する一方だ。数年前までは、クラブ・プロか練習場のプロがゴルフの全ての局面を教えていた。だが、いまやゴルフは細分化された様々な分野の専門家が教えるようになっている。細分化はゴルフの進歩とプレイヤーの選択肢としては結構だが、個々のプレイヤーを混乱させもする。以下はその一例である。
・クラブ、ボールなどのフィッティング。
・インストラクターたちの異なる理論(学び方、練習法、プレイ法など)。
・ロング・ゲーム、ショート・ゲーム、パッティングの専門家たち。
・スポーツ心理学者たち。
・生体力学専門家たちの運動生理学に基づくスウィング理論。
・理学療法士たちの障害防止法およびリハビリ法。
・フィットネス専門家たちのゴルフへの応用。
・栄養士たちのゴルフ・パフォーマンスを向上させるダイエット法。

 

これら全ての情報を摂取する側として、読むもの、聞くものにどれだけ上手にフィルターをかけているだろうか?ゴルフは元々即座にプレイ出来たり習得出来たりするような簡単なものではない。ボールを上手く打つに必要な身体能力だけでも気が遠くなるようなものである。ボールを打つ技能以外に、ゴルファーは異なるインストラクターたちの助言、ゴルフ本、TV番組、ゴルフ雑誌等の集中砲火を潜り抜けなくてはならない。【編者独白:ゴルフ関連ウェブ・サイト、Youtubeなども含められるべきでしょう】ゴルファーは見、聞き、読むもの全てを吸収し試そうとする。彼らのほとんどは、自分のスウィングを最終的に信頼出来るまで充分練習しないからだ。

ゴルフはまた、あなたのメンタルな能力を試そうとする。多くの場合、あなたが懸命になればなるほど、遂行能力は悪化する。あなたの知性は一生懸命努力すべきだと告げる。失敗するともっともっと懸命になるべきだという衝動が湧くのだが、それはスコアを減らす助けとはならない。うまくプレイするには、努力を減らすべきなのだ。これはアマチュアには理解するのが困難な要素なのだが」

[icon]

ゴルフは画一的に教えられるべきものではない…ということを実感します。早い話が、左右の脚の長さが違う私が、いくら普通のパッティングの練習をしても現在のような安定したパットは出来なかったでしょうし、痩せ型・中肉中背の私が背の高いDustin Johnson(ダスティン・ジョンスン)や、がっちり型のPatrick Reed(パトリック・リード)のスウィングを模倣しても現在の安定したプレイは望めなかったことでしょう。

現在の私は、このサイトを開設して20年近くにわたるゴルフ研究が遂に実り始め、シニア・グループの中ではドライヴァーの飛距離はトップ5、ショートゲームではトップ3に入る成長ぶり(?)を見せています。私独自の試行錯誤の成果でもありますが、「体型別スウィング」で紹介した'The LAWs of the Golf Swing'という本(1998年刊)に負うところ大です。ゴルファーの体型に準じたスウィングの勧めを論じた本は、私の知る限り今のところこれ一冊しかありません。

既製服ではなく、注文服を着るのが上達の早道です。レッスンを受けるなら、ちゃんとゴルファーの体型に相応しいスウィングを教えてくれるプロを探すべきです。それ抜きで、いくら高いクラブやボールを購入しても無駄です。レッスン・プロがゴルファーの体型に合わせて教えてくれているかどうか、「体型別スウィング」(tips_54.html)を一読しておくことをお薦めします。

(August 30, 2017)

体型別フィットネス運動で飛ばす

「体型別スウィング」の共著者たちによるゴルフに特化したトレーニング法。「Mr. X(ミスターX)の脊椎矯正体操」(tips_183.html)は正しいポスチャーを取るために毎日二時間行う体操(上達保証付き)でしたが、こちらは筋肉を強化し、身体の柔軟性とバランスを保つために一日40分、週三日自宅で出来るフィットネス・プログラムです。真剣にゴルフに上達しようと思うなら、是非とも試してみるべきでしょう。

体型別スウィングの執筆者たちは、以下の三つをゴルファーの典型的体型としました。
「テコ型」:中肉中背の平均体型(大方の女性を含む)。例:Jordan Spieth(ジョーダン・スピース)。【写真左】
「円弧型」:長身・腕の長いスリム体型。例:Dustin Johnson(ダスティン・ジョンスン)。【写真中】
「幅広型」:中背だが胸が厚く短めの腕と脚のがっしり体型。例:Patrick Reed(パトリック・リード)。【写真右】

'The LAWs of the Golf Swing'
by M. Adams, T.J. Tomasi and J. Suttie (HarperCollins, 1998, $25.00)

基本的な事柄:スピードを上げるには、ヘッド無しのシャフトを出来るだけ早く振る。強靭さを増すには重量のあるもの(ダンベル等)を使う。自分の強み・弱みを正直に分析し、それに応じてトレーニング内容を配分する。多くは常識の範囲であって、あなたが強靭ではあるが柔軟性に欠けているなら、柔軟性を増すトレーニングをする。あなたが案山子のように細いなら、ウェイト・リフティングをする。あなたが強靭で柔軟性もあるなら、それを維持し、心臓血管系のフィットネスをする。あなたが弱々しく柔軟性にも欠けるなら全てが必要である。

・テコ型

この型のあなたは、「左右60秒ストレッチ」(下記の⑧)を含む軽いストレッチングを毎日行うべきである。あなたは筋肉増強を必要としないので、重いダンベルなどを用いないこと。ゴム・ボールによる指のトレーニングを行い、時間があれば心臓血管系の運動を行う。

 

・円弧型

あなたは上半身の筋肉を増強するための体操に時間を使うべきである。

・幅広型

あなたには柔軟性が必要だ。一般的柔軟体操を他の体型の人の二倍か三倍行うこと。筋肉増強プログラムでは軽い重さを用い、回数を増やす。手首の柔軟性に焦点を当て、指でボールを転がし、指をさらに柔軟にすること。

【フィットネス概論】

昔はGary Player(ゲアリ・プレイヤー)など数えるほどのプロしかフィットネス運動をしなかった。今や、状況は一変し、プロたちはフィットネス・トレーラー(車両)に通い詰め、腹筋運動をし、煙草も吸わない。

理想的には、ジムに毎日通い、トレーナーの指導の下でゴルフに特化したプログラムでトレーニングすべきだし、スポーツ心理学者や栄養学者、クラブ・フィッターの助けも必要である。しかし、そんなのは大方のゴルファーには絵に描いた餅であろう。そこで、われわれはブルーカラー・ゴルファーのために、一回40分で完了するプログラムを組んだ。最初の六週間はこれを週三回実行し、その後は週二回に減らしてもよい。

 

[wall sit]

【強靭さを増すトレーニング】

腰と太腿

腰と太腿は、安定性と回転するスピードを与えてくれる。それらを強化するには、Greg Norman(グレッグ・ノーマン)推奨の"wall sit"(見えない椅子)を使う。

背中を壁につけ、見えない腰掛けに座るように両方の太腿を床と平行にする。15秒静止して、やり直す。これを少なくとも10回行う。【右の写真】

(肩の)回旋筋

四つの腱が肩の回旋腱板を構成しており、これらは肩甲骨から上腕骨にかけての大きな筋肉である。

軽めのダンベルを持った手を、肩よりやや低い角度で真っ直ぐ横に上げる。12回を1セットとし、2セット(時間があれば3セット)行う。

二頭筋と三頭筋

三頭筋は腕を持ち上げ、二頭筋は腕を曲げる。この組み合わせは『拮抗筋』と呼ばれるものを構成する。右の二頭筋がバックスウィングでクラブを折り畳み、三頭筋がボールに向かってクラブを叩き付ける。バランスを保つため、常に二頭筋と三頭筋の双方を鍛錬すること。

『カール&エクステンション』(ダンベルを持った両手を脇にぶら下げ、胸に向かって持ち上げる)を、12回を1セットとし、2セット行う。

胸筋と広背筋

どちらもゴルフスウィングに大きな役割をする筋肉である。これらの大きな筋肉を鍛えるには、ジムにあるベンチ・プレスと“lat mashine”(ラット・トレーニング・マシン)が望ましい。【右の写真】

ジムに行けない人は、胸筋鍛錬として腕立て伏せをする。広背筋の鍛錬には、立った姿勢から床と平行になるまで前傾し、頭をテーブルにつけ、両手に持った1ガロン(約3.8リットル)の水が入った容器を肩甲骨に接するまで持ち上げる。20回から30回を1セットとし、2セット行う。

手と前腕

40分トレーニングの時間を節約するため、掌サイズのゴム・ボールを机の近く、自動車の中、TVの傍に置き、それを指で転がし、掌で握り締める。頻繁に左右の手を交代させること。

 

[bending]

数週間で、あなたのグリップは万力(まんりき)のようになることだろう。

 

【柔軟性を増すストレッチング】

ゴルフにとって、柔軟性を伴わない強靭さは、大男を魔法のランプに閉じ込めたままのアラジンのようなものである。柔軟な関節はエネルギーを必要とせず、効率的に働き、障害を予防する。研究の結果、加齢が原因の柔軟性の衰え(10年毎に10%衰退)は、規則正しいストレッチング・プログラムによって劇的に進行を遅らせることが出来ることが判っている。

重要:他のフィットネス同様、これらを始める前に医師の同意を得ておくこと。

両足を肩幅に開き、膝はやや緩めにし、腰から上体を下方に折り、ゆっくりもう折れないという限度まで続ける。その状態を30秒保つ。

両手を揃えて頭の上に精一杯伸ばしてストレッチする。上体を腰から背中の方へ可能な限り折る。10秒静止する。身体を真っ直ぐにし、身体を前傾し、くるぶしを掴んで10秒。両手を床に伸ばし10秒。猫が伸びをする時のように、腹を床につけ、尻を突き出し、頭を後方にして反り返る。背を丸めたり反らしたり…を交互に行う(10回)。くるぶしを掴む運動に戻って、10秒。最初の伸び上がるストレッチに戻る。(これを時間の許す限り行う)【右上の写真】

左右60秒ストレッチ

背中に左右の肩を横切るようにクラブを渡して保持し(左の写真)、頭をドアの側柱か壁の角に当てる。ボールを打つようなゴルフのポスチャーを取る。バックスウィングの捻転の限度に達したら30秒静止。インパクト体勢で30秒静止。この両面のストレッチは身体の両サイドに役立つ」

【参考】
・「ストレッチングの原則」(tips_130.html)
・「Butch Harmon(ブッチ・ハーモン)推奨の筋肉鍛錬法」(tips_178.html)
・「Harvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)のヨガで上達せよ」(tips_178.html)
・「Mr. X(ミスターX)の脊椎矯正体操」(tips_183.html)
・「腰痛体操」(tips_22.html)
・「頸椎症性神経根症・治療体操」(tips_170.html)

 

【おことわり】出典のない画像は、https://fitnesswithjlee.files.wordpress.com/とhttps://i.pinimg.com/にリンクして表示させて頂いています。

(September 10, 2017)

深呼吸ではなく全呼吸をせよ

 

[breathing]

"Deep breath"(深呼吸)の方法は誰でも知っている(ラウンド中に実行しているかどうかは別として)。では、血管を通して全身の筋肉と脳に新鮮な酸素を送る"full breath"(全呼吸)は?スポーツ心理学者Joe Parent(ジョー・ペアレント博士)が推奨するゴルフに役立つ呼吸法。

'Zen Golf'
by Dr. Joseph Parent (Doubleday, 2002, $17.95)

「不安を感じる状況に陥ると、多くのゴルファーが充分な呼吸をしなくなる。たとえ呼吸したとしても、か細く、とても浅い呼吸になってしまう。

大方のゴルファーは急速に息を吸い、両肩を上げる。これはハードな呼吸だが、全呼吸ではない。単に肺の上部にだけ酸素が満たされ、上げられた両肩は実際には緊張状態にある。深呼吸は、上体で深く呼気し肺の下部まで酸素を満たすため、浅い呼吸よりはベターだが、全呼吸には及ばない。

・全呼吸の方法

椅子に座ってでも立ってでもよいが、良い姿勢で、目を閉じて行う。穏やかに、ゆっくり鼻から息を吸う。息が喉の奥を下りて行くのを感じ取る。次の数回の呼吸で、息が背中へ下りて行き、先ず背中の両サイドを満たしながら、尾てい骨まで下りて行くのを感じる。この際、あなたは背中があたかもキャンピング用エアーマットであり、息によって背中全体を厚く膨らませると想像する。こういう風に穏やかに呼吸すると、肩甲骨が少し広がり、胸郭の後部が伸びて広がるのを感じる。最後に、息が尾てい骨に達する頃、背中が長く伸びたように思える。

このフィーリングは、ゴルフのスタンスに最適で、広がった背中が両腕をさらにフリーな状態で垂らし、伸びた感じが背中を真っ直ぐにする。どんな状況であれ、この呼吸法を練習してほしい。程なく、この呼吸法があなたの自然な呼吸法となることだろう。肺全体を使うことはとてつもない利益がある。あなたが血液に供給する最大量の酸素は、血液を通して筋肉と脳に送られる。フルに呼吸するだけでなく、賢く呼吸することになる。

・全呼吸をプレショット・ルーティーンに

私は、あなたのどのショットにおいても、プレショット・ルーティーンの一部としてこの全呼吸を含めることを勧める。ルーティーンの最初で、ボールに後方から歩み寄る際の理想的な『引き金』とするのだ。

ターゲットラインを真っ直ぐ見通しながらボール後方2〜3メートルに立ち、計画したショットを心に定着させながら、全呼吸を遂行する。鼻から穏やかに息を吸い、鼻(あるいは口)から吐く。排気終了と同時にボールに歩み寄る。この排気と同時に歩み寄る推移は非常に重要である。あなたのスウィングのテンポは、バックスウィングを始めるずっと前、この段階で確立されるのだ。

ゴルファーが排気完了を待たずにボールに歩み寄ると、その慌ただしさはテイクアウェイと切り返し双方にも出現する。プレイヤーは『あまりにも急いでスウィングしてしまった』と、お粗末なショットの原因がスウィングの間に起ったこととして説明するが、それはスウィング以前に始まっていたのだ。

だから、No.1ティーに立った時、あるいは池越えのショット、あるいは何であれ不安を醸し出すショットの前に、呼吸することを忘れてはいけない」

【参考】
・「呼吸の使い分け」(tips_53.html)
・「呼吸法・メンタル篇」(tips_64.html)
・「呼吸法一つでプロ裸足のショット」(tips_180.html)

 

【おことわり】画像はhttps://media.mnn.com/にリンクして表示させて頂いています。

(September 10, 2017)

Bernhard Langer(ベルンハード・ランガー)の少年時代

Bernhard Langerの自伝を読みました。今から14年前に英国で出版されたもので、ヨーロピアン・ツァーで圧倒的な強さを見せ、この後彼がアメリカに移住しPGAツァーに本格参戦しようという時期に書かれています。現在のChampions Tour(チャンピオンズ・ツァー)でもトップ・クラスなのですから、彼の息長い活躍ぶりは驚嘆すべきものがあります。

知らなかったので驚いたのですが、Francis Ouimet(フランシス・ウィメット)やGene Sarazen(ジーン・サラゼン)などと同じように、彼も貧しい家に生まれ、幼少の頃からキャディとして働いた一人なのです。

[Langer]

'Bernhard Langer: My Autobiography'
Bernhard Langer with Stuart Weir (Hodder & Stoughton, 2003, £7.99)

1945年、Bernhard Langer(ベルンハード・ランガー)の父Erwin(エルヴィン)は、徴兵されドイツ軍の下働きだったため、戦争犯罪人として他の囚人たち大勢と共に、ロシア軍が警備するシベリア行きの列車に乗せられていた。列車がドイツとチェコの国境近くで一時停止した時、Erwinと数人の囚人たちは命懸けでの脱走を決意し、再び発車し始めた列車から飛び降りた。運良く兵士の銃撃を免れたErwinは、その地域の農家で働いて生き延びた。

100年続いた農家のErwinの両親は、ロシア軍によって農地を没収され、南ドイツのAnhausen(アンハウゼン)に移住した。それを伝え聞いたErwinは両親の元に戻った。Erwinは煉瓦積み職人となり、結婚して長男と長女を得た。1957年、次男としてBernhard Langerが生まれた。

お小遣いなど貰えず、常に兄のお下がりを着せられる貧しい生活だった。彼の兄と姉は小遣い稼ぎにゴルフ場のキャディを始めた。八歳半になった時、Bernhard Langerもキャディとなった。

「私の最初の雇い主(ゴルファー)は後で知ったのだが、クラブ・チャンピオンだった。彼は忍耐強く、私のいくつかのヘマにもかかわらず、私の仕事に満足してくれた。彼がくれた2.5 DM(ドイツ・マルク)は、その後私が得たどの優勝賞金よりも意味深いものだった。私は雇い主のボールを必ず見つける“鷲の目を持つキャディ”として人気を得た。兄にとっては小遣い稼ぎのキャディだったが、私は次第にゴルフにハマって行った。

私の同級生たちは、私の『ゴルファーになりたい』という夢を嘲笑(あざわら)った。ゴルフは金持ちの遊びだったし、当時のドイツで煉瓦積み職人の子が、学校を出てすぐゴルファーになどなれるものではなかったからだ。

私はゴルファーたちのスウィングを見守り、それを練習場で模倣した。キャディはメンバーがくれたクラブを共同で使うことが出来た。それらは2番ウッド、3番アイアン、7番アイアン、そしてシャフトが曲がったパターであった。そのパターで練習したのが、私の長年にわたるパッティング・トラブルの原因だったかも知れない(^^;;。キャディが使えるクラブは7番アイアンまでだったから、ピッチング、チッピングやバンカー・ショットの練習をするのに適切とは云えなかった。

キャディがコースでプレイするには、一つの手続きが必要だった。クラブ・プロの目の前でボールを打ち、認可を得るのである。私がゴルフ場に足を踏み入れて三ヶ月後(九歳の誕生日の一ヶ月前)、私は勇気を出してクラブ・プロに審査を申し入れ、コースでのプレイを許された。それ以後、私はキャディ・トーナメントに出るようになった。14歳の時、73で廻って優勝のチャンスがあったのだが、一打差で逃してしまった。

私はレッスンを受けたことなどなく、キャディの控え室に貼られていたJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)の六駒の連続写真だけがお手本であった。それを記憶し、練習場とコースとで再現しようと努めた。キャディを始めて四年後、貯めておいたお金で最初のクラブ・セットを購入した。私はそれが自慢で、まるで黄金とダイアモンドで作られているかのように磨き上げた。

両親は私を兄と姉同様別の町にある高校に通わせる決意をした。だが、ゴルフにハマっていた私は英語と数学の試験にわざと失敗し、元の町の学校に戻されるように図った。それによって、相変わらず毎日午後ゴルフ場に行けることになった。

14歳で、学校生活が終了間もない頃、私は今後の進路を決めねばならなくなった。私はずっとゴルフを続けたかったが、この町で並の安月給の職に就いたら、ゴルフ場のメンバーになどなれっこない。ゴルフを継続出来る唯一の途はゴルフを職業にするほかないように思えた。それを両親に話すと気違いではないかという顔をされ、妥当な職に就けと予想通り意見された。職業相談所に行ったが、『プロフェッショナル・ゴルファーという職は見当たらない』と云われた。

ゴルフ場のメンバーの一人が、ミュンヘンのゴルフ場でレッスンを受けていた。彼がそこのクラブ・プロのHeinz Fehring(ハインツ・フェーリング)がアシスタントを探していると教えてくれた。ミュンヘンに電話すると会いに来いと云ってくれた。私は両親を説得し、一緒にミュンヘンに赴いた。クラブ・プロとクラブの理事長が会ってくれ、私はアシスタントの職をオファーされた。信仰心篤い母は近くにカソリックの教会があるので安心したようだった。両親は私が夢を追い求めることを認めてくれた。私は三年契約の書類にサインした。私は15歳になる一ヶ月前の少年に過ぎず、家を出て大人の世界に船出するにはまだ早く、何度もホームシックになった。

私の主な仕事はショップで働くことで、週に一度ビジネス・スクールに通うことも義務づけられていた。しかしクラブ・プロHeinz Fehringは、私に数ホールのプレイや練習ボールを打つ時間を与えてくれ、私のグリップや脚の動きを直してくれた。六ヶ月後には、私はメンバーへのレッスンやプレーイング・レッスンを始めた。Heinz Fehringは仕事だけでなく、人生についても色々教えてくれ、私の第二の父のような存在となった。彼はまた私の26年にわたるコーチとなるWilli Hoffman(ウィリ・ホフマン)を引き合わせてくれた。

私の17歳の誕生日が近づき、同時に三年契約の終わりが近づいた時、クラブ・プロHeinz Fehringが非常に重要な質問を私に投げ掛けた。彼は『クラブ・プロになりたいのか、トーナメント・プロになりたいのか、どっちだ?』と聞いたのだ。私は身の程も弁えず、トーナメント・プロになりたいと本心を漏らした。私はコースでのパフォーマンスによって生計を立てたいと考えていたのだ。Heinz Fehringは励ましてくれ、私の練習時間を増やしてくれた。

しばらくして、ドイツの四つのクラブによる対抗戦があり、各クラブを代表するクラブ・プロとトップ・アマ26人が二日間競い合った。たった16歳の私が優勝し、500 DMを得た。1975年、ドイツ・ナショナル・オープンが開催され、三名のプレイ・オフの末、私がこの催しの最年少の優勝者となった。このトーナメントを見ていた観衆の一人が、後にドイツ・ゴルフ連盟の会長となるJan Brügelman(ヤン・ブリューゲルマン)だった。

クラブ・プロHeinz Fehringから、私がヨーロピアン・ツァーに参戦したがっていると聞いたJan Brügelmanが、私に援助を申し出た。彼は毎月私に定額(1,700 DM)の生活費を払ってくれ、私が賞金を得たらその半分を彼に支払うという取引であった。私はとても感謝し、興奮した。

こうして私はアマチュア・ゴルファーになることなく、一足飛びにツァー・プロとなった。それまでツァーで成功したドイツ人は皆無だったから、自分がどこまでやれるか見当もつかなかった」

 

[icon]

当時のヨーロピアン・ツァーには二日目のカットと三日目のカットがあったそうで、Bernhard Langerもすぐに順風満帆というわけにはいきませんでした。飛行機代節約のため車でヨーロッパ中を駆け回り、カット責めと闘う日々が始まったのです。

(September 17, 2017)

シニア・ゴルフを成功させる方法

スポーツ心理学者Dr. Dick Coop(ディック・クープ博士)のシニア・ゴルファーへの助言。

'Mind Over Golf'
by Dr. Richard Coop with Bill Fields(Macmillan, 1993, $12.95)

「シニア・ゴルファーたちと接していると、彼らの人生哲学とゴルフの成功に密接な関係があることに気づかされる。多くの人々は、人生のある時期に到達したという単純な理由で自分に限界を設け始める。彼らは自分自身をシニアと分類し、人生とゴルフとに自分自身で御託宣を授ける。『新しいショットを覚えるには、歳を取り過ぎてる』とか。彼らは本当の原因より、年齢のせいにしたがる。『昨年からパットがおかしくなってる。歳のせいに違いない』など。

加齢とともに肉体的限界が訪れるのは否定出来ない。それを無視するのは馬鹿げている。スポーツ医学において、20代半ば以降一年毎に体重の約1%を失うことは、一般的に認知されていることだ。これは筋肉の強さを失うことを直接的に意味している。しかし、それは一年の間に急激に起るものではなく、数年にわたって徐々に累積するものだ。しかし、あなたは己の強靭さの喪失を座視していてはいけない。

熟考された筋肉の緊張と柔軟性の体操プログラムは、こうした強靭さの喪失を緩和出来る。体操をするには老い過ぎていると感じるゴルファーは、これまた自分で自分に御託宣を授ける例である。体操を毛嫌いすると、適切にプログラムされた体操を実行する人より、早く老け込んでしまう。体操をするには老い過ぎているのではなく、体操をしないから老いてしまうのだ。

ただ、シニア・ゴルファーが調整すべきことはある。多くのシニアがグリーン周りで問題を抱える。若い時に見えたグリーン上での転がりが見えないとか、神経がすり減ったとか、パットする際痙攣したり、yips(イップス)を病んだりしているとか。この痙攣は、チッピングやピッチングする時にも起る。こういう症状が出たら、ロング・パターを採用すると、大きな筋肉でストロークが可能だ。【編註:ロング・パターやベリィ・パターの使用自体は違法ではありません。身体を支点とするアンカーリングが禁止されているだけです。2017年現在、Bernhard Langer(ベルンハード・ランガー)は、いまだにロング・パターで勝利し続けています】

あなたのスウィングに合った適切なクラブ・シャフトを見つけることも重要。距離を望むなら、2ピース・ボールも考慮すべきだ。高い軌道で打ちたければ、そういう性能のボールも購入可能である。

 

加齢はマイナスばかりでなく、利点もある。歳を取ると、人間として成熟し、自己受容【註】するようになる。これはゴルフ・コースで大きな助けとなる。また、多くのシニアにとって若いゴルファーより限界内でプレイするのは容易である。あなたが若く強かった頃、飛ばないけれど真っ直ぐ打て、グリーン周りでこすからくプレイし、いつもあなたの金を巻き上げたシニアのことを覚えているだろう。敗北に呻きながらも、あなたは秘かにこの老人のようにプレイしたいと願った筈だ。その強みを活かさねばならないのは、今この時である」

【編註】自分の能力、素質、欠点、犯したミスなどを素直に受け容れること。

【参考】「体型別フィットネス運動で飛ばす」(09/10)

(September 17, 2017)

バイフォーカルは駄目よ

 

「体型別スウィング」の共著者(三人)のうち二人が執筆したシニアのための教本から、遠近両用眼鏡の害について。

'Play Better Golf for Seniors'
by Mike Adams & T.J. Tomasi with Kathryn Maloney (Henry Holt & Company, Inc., 1998, $29.95)

「ゴルフする時、バイフォーカル(遠近両用眼鏡)は避け、単一レンズの眼鏡を掛けるべきだ。バイフォーカル・レンズの上方の遠距離用レンズでボールを見ようとすると、アドレスで首を胸に埋めて頭を下げなくてはならない。

そんなことをすると、捻転を制限してしまい、バックスウィングでクラブを上げるのに無理をせねばならなくなる。これはあなたのポスチャーを損ない、パワーに必要なコイル(捻転)の能力を大幅に減じてしまう」

(September 17, 2017)

緊張をほぐすにはソフトなグリップ

 

"swing key"(スウィングの鍵)とか"swing thought"とか呼ばれるプロたちの「留意事項」を集大成した本より。今回はPGAツァーで活躍し、TV解説者でもあるPeter Jacobsen(ピーター・ジェイコブセン、1954〜)の巻。彼はPGAツァー他で18勝しています。

'Swing Thoughts'
edited by Don Wade (Contemporary Books, 1993, $12.95)

「多くのプレイヤー同様、私は緊張とプレッシャーに折り合いをつける方法を見い出さねばならなかった。特に、私が優勝争いに絡んでいる際に。緊張すると、私のスウィングは早くなりがちで、コントロール不能になってしまう。私はアドレスで両腕をソフトにし続けることに専念すれば、私のスウィングを台無しにする緊張を防げることに気づいた。

これを実行する唯一の途は、非常に緩くグリップし、ボールの後ろでクラブヘッドが地面に着くか着かないかすれすれにする。こうすると、腕主体ではなく、身体の大きな筋肉でスウィングをコントロール出来るようになる。腕でスウィングをコントロールすると、テンポがいい加減になり易い。

1990年のBob Hope Chrysler(ボブ・ホープ・クライスラー)クラシックの最終日、私は二打差でトップに立っていた。あるプロが追い上げて来て、私とタイになった。No.18で彼がバーディをミスした時、No.18のティーに立った私は『勝とうが負けようが、このトーナメントの主役はおれだ』と思った。

No.18は良く出来た最終ホールだ。520ヤード、パー5で、左側を池がガードしている。私はグリーンに二打で乗せるため、ドライヴァーで快打しなければならなかったが、同時にトラブルへ向かうフックを防がねばならなかった。私のティーショットは290ヤード飛び、グリーン前部に225ヤード、カップまで250ヤード残すのみとなった。横風が吹いていて、ダウンヒル・ライだったので3番アイアンを打たねばならなかった。ということは、ボールが右へ逸れるのを避けるべきだということだ。

ボールに向かってセットアップしながら、スウィングから可能な限り緊張を取り除くため、私は意識的にクラブをソフトに握った。ボールはカップから18メートルに届いた。私はパットを沈めてイーグルを得ようなどとは考えなかった。格好良くプレイしようとせず、難しいバーディ・パットを残さないことだけを願った。私はタップイン・バーディの距離にパットし、優勝した」

 

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私の経験ですが、きついグリップでアイアンをヒットダウンしようとするとシャンクを招きます。ですから、私はアドレス時にアイアンをゆるゆるに握ります(バックスウィングでちゃんと自動的に締まるので心配ない)。シャンク防止の上からも、ソフトなグリップがベターだと思います。


(September 27, 2017)

プレッシャーへの処方箋

スポーツ心理学者Dr. Dick Coop(ディック・クープ博士)が処方するプレッシャー対処法。

'Mind Over Golf'
by Richard H. Coop with Bill Fields (Macmillan, 1993, $12.95)

「プレッシャーに立ち向かうには、以下の五つの作戦を試されたい。

1) 逃避せよ

プレッシャーを感じたら、目の前のショットから遠ざかること、肉体的・メンタル両面で。あなたはゴルフコースではなく、海辺とかあなたの家のお好みの部屋にいるところを視覚化する。あるいは、似たような状況であなたが上手く打てた場面を視覚化する。

2) 呼吸せよ

プレッシャー下では,多くのプレイヤーが正しく呼吸することを忘れてしまう。彼らはとても浅い呼吸か、意識せずに呼吸を止めてしまう。呼吸の仕方を学ぶことは、驚くほどプレッシャーを軽減してくれる。

3) 冷静になれ

成功させようとシャカリキになるべき重要なショットというのは、滅多にないものだ。Cary Middlecoff(ケアリ・ミドルコフ)がかつて云ったように、『もし、このショットに失敗したとしても、まだ貯金はあるし、妻はまだ私を愛してくれ、帰宅しても犬が私に噛み付くことはない筈だ』

4) のんびり猫のようにストレッチせよ

窓際で日向ぼっこしている猫が伸びをする様を想像せよ。その複雑でリズミカルなストレッチングは、筋肉をりリラックスさせるだけでなく、あなたの心をもリラックスさせる。その結果、あなたは長く解き放たれたように感じ、それはプレッシャー下のショットに必要な、流麗なテンポを強調する。

5) ハミングするか歌を口ずさめ

あなたの同伴競技者たちの許容度次第で、声を出さずに、あるいは声を出して唄う。Fuzzy Zoeller(ファズィ・ゼラー)はショットとショットの間に口笛を吹いてテンションを和らげる。別に音楽的である必要はない。あなたはリラックスしようと努めているのであって、同伴競技者たちを楽しませるために唄うのではないのから」

 

(September 27, 2017)

快打で練習を終えようと思うな

Arnold Palmer(アーノルド・パーマー、1929〜2016)の没後に出版された、彼の最後の回想集。ゴルフ、生活、ビジネスの三部に分かれています。

'A Life Well Played'
by Arnold Palmer (Arnold Palmer Enterprises, Inc., 2016, $22.99)

「練習に関して、私が最も価値ある助言を一つ出来るとしたら(これはツァー・プロとアマチュアとを問わず適用出来るのだが)、いつ練習を止めるべきかというタイミングだ。

あなたがその日必要と思えた練習を終えた時、そこで満足すべきである。もう一個完璧なショットで練習を締め括ろうと考えてはいけない。そういう心理はよく理解出来る。いい兆候を残して終わりたいという願望だ。

実際には、練習場を最高の一発で後にしようと試みるのは、あなたを泥沼に落とし込む最高の方法だ。あなたは望みもしなかったフックを打つかも知れない。で、あなたはもう一発打ちたいと考える。またまたフック。あるいは、フックを過度に相殺しようとしてスライスするかも。どちらもあなたが望んだものではないので、あなたは次のボールを打つ。次いで、あなたは何がいけないのか判らなくなり、練習ボールをもう一篭買うハメになる。そしてあなたはヘトヘトになり、スウィングの悪い癖を身につけてしまう。

私は最後の一発(あるいは数発)でまずいショットを打ったとしても、それ以前の練習が正しく遂行されていれば、最後がどうであれ気にしたことはない。最後の一発が悪かったら、私はそれは偶発事だと思うことにしている。その練習全体の質が問題なのだ。その質が量より大事である。建設的に練習せよ」

 

(September 27, 2017)

Chip Beck(チップ・ベック)の「60を切った、その日」

PGAツァー・プロChip Beck(チップ・ベック)は、1991年にネヴァダ州Sunrise(サンライズ)G.C.(パー72)で開催されたLas Vegas Invitational(ラスヴェガス招待)の最終日に、13バーディ(残りは全てパー)で59を達成しました。PGAツァー史上、Al Geiburger(アル・ガイバーガー)に次ぐ二人目の快挙でした。

【編註】Al Geiburgerの59は1977年、Chip Beckが1991年。八年後の1999年にDavid Duval(デイヴィッド・デュヴァル)。その後数人が達成し、PGAツァーで現在までに八人が60を切っています。

'Fucused for Golf'
by Wayne Glad, PhD and Chip Beck (Human Kinetics, 1999, $16.95)

「私は自慢するわけじゃないが(えっと、ま、一寸その気はあるけど)、この原稿を書いている1998年夏の時点までに、PGAツァーのトーナメントにおいて私以後に59を記録した者はゼロだ。

トーナメント前の夕方、私とキャディはコースに赴いた。数人のプレイヤーが練習グリーンの周りでチッピングやパッティングをしていた。そのうちの二人が、59を記録した者への賞金【編註:100万ドル】について話していた。『見てろ』と一人が行った。『今週誰かが59を出すぜ。このコースは他より難しくない。いくつもバーディを出せるし、パー5も二打で乗せられるんだ』 その週早々、私のキャディはコースを歩いて廻り、このコースならいいスコアで廻れると云っていた。私は、彼が見事な予言者だとは知らなかった。

しかし、私は賞金のことなど深く考えず、いいラウンドをし、トーナメントの勝敗に絡むことだけを願っていた。しかし、最終日の59は、私を優勝争いの位置につけてくれた。とどのつまりは三位に終わったが、59は私に素晴らしい週を恵んでくれた。

最終日、アウトからインに移った時、コース・マーシャル(場内整理係)の一人が『ワオ、あんたは誰よりも二打少なくて、しかもインはアウトより易しいんだぜ』と云った。私は『そうかね。最高だ』と応えたが、これはちょっぴり私にプレッシャーを与えた。インで、私はいくつかバーディを得始めた。私が唯一凄いトラブルに陥ったのは、パー3で動揺した時だ。私はグリーンエッジからチップして、カップを3メートルオーヴァーし、それを沈めるにはとても難しいパットを残したのだ。私はそれを成功させなければならないことを承知していた。幸運にも、私はプレショット・ルーティーンにしがみつき、そのパットを沈めることが出来た。これは素晴らしいパーだった。

No.15でパットを沈めた時、私のスコアは50丁度であった。59を達成するには、私は次の三つのホールでバーディを射止めなくてはならなかった。

 

スポーツ専門のCATVであるESPNが最後の数ホールを記録するためにやって来た。彼らがNo.17を撮影している時、私はそこで信じられないようなバーディを得た。風が右から左に吹き、ピンはグリーンの右に切られており、距離は私の中間クラブだった。私はグリーン・エッジにボールを着地させ、土手を転がし上げ、良質のパットをする必要があった。そのショットは狙った通りに飛び、カップ近くへと弾んだ。それでもなお、私は右から左へカーヴするタフなパットをしなければならなかった。それが沈んだ時、私は驚いた。どんな時であれ、3〜4.5メートルのバーディ・パットを沈めなければならないとしたら、それはほとんど奇跡と云ってよかったからだ。

結論は最終ホールに持ち越された。私は本気になった。単にボールをフェアウェイに打つだけなのに気違いみたいになった。凄く、凄く緊張した。幸運にも、プレショット・ルーティーンが支えてくれ、私はいいティーショットを打てた。次のショットに向かった時、次のグリーンは凸凹しているので、どんな距離であれ成功の保証はないことに気づいた。だから、フェアウェイから出来る限りカップの近くに寄せる決意をした。それはまたも中間クラブの距離だった。私の目算では、8番アイアンによるバンカー越えのボールは僅かに高く上がって、カップの近くで停止する可能性がありそうだった。そのショットはうまく行った。私の目には、ボールはカップのすぐ右横に着地し急停止したように見えたが、グリーンは上り勾配だったので、確かではなかった。グリーンに上がって行った私は『おー、ワーオ!』と云った。観衆が拍手しグリーンに詰めかけている様子から、そのパットはタップインの距離かと思っていたのだが、実際には約1メートルの左から右への下りという手強いラインで、しかもその途中にはいくつか踏み跡が残っていた。それは沈めるにはタフなパットだった。

状況を認識した同伴競技者のアマチュアたちは、『おれたちは、どうしたらいい?あんたの邪魔をしたくない』と云い、自分たちのボールを拾い上げてしまった。私はグリーンの端に向かい、体勢を立て直した。私は出来る限りチャンスを活かそうと思った。それが出来るようになるまで気持ちを落ち着かせた。私に出来たのはそれが全てだった。私はうまくパットした。それはどう転ぶか不明だったが、カップの端を捉え、底へと転げ込んだ。それは右へカーヴし、カップの右側に落ちたのだ。私はとてもいいパットだと感じた。なぜなら、それはどうにでもなったからだ。もっと右へ弾んだかも知れなかったのだが、私が適切な強さで打ったのでラインを逸れなかったのだ。

思い返すと、私はどのホールでもチャンスに挑み、結果が私に味方してくれたことに気づく。それが大事なのだ。事を起してチャンスを活かす。もちろん、なおかつショットを成功させなくてはならない。この時、私は全てを成功させ、素晴らしい気分を味わったのだ」

(October 04, 2017)

Phil Mickelson(フィル・ミケルスン)をめぐる黒い霧

 

家庭的スポーツマンとして有名なPhil Mickelsonの知られざる側面。大のギャンブル好きで、賭け屋に多大の借金を重ね、その返済のためにインサイダー取引にまで手を出し、あわや刑務所行き+ゴルフ界から追放?の危機に曝されていたというお粗末の一席。この記事の筆者はCNNの法律問題分析家です。

[Phil and Billy]

'A escape artist'
by Jeffrey Toobin ('Golf Digest,' August 2017)

【編註】"A escape"ではなく"An escape"となるべきところですが、「弘法も筆の誤り」というやつでしょうかね。

この件は、先ずBilly Walters(ビリィ・ウォルターズ、1946〜 、写真左)から始めなくてはならない。彼はLas Vegas(ラス・ヴェガス)で自動車販売が正業だったが、野球賭博で週に200万ドル賭けたり、スーパーボウルで3,500万ドル儲けたり…というギャンブラー。賭けゴルフでは1ホールで40万ドル儲けたり、18ホールで100万ドル儲けたりしたと豪語している。彼はハンデ10だった。

Billy Waltersは、スポーツ賭博が好きなPhil Mickelson(フィル・ミケルスン)と知り合いになった。Phil Mickelsonは、友人たちと2001年のスーパーボウルに2万ドル賭け、56万ドル儲けたと伝えられている。Billy WaltersはPhil Mickelsonの私的闕け屋のような存在となり、いくらでも金を貸した。2012年、Phil MickelsonはBilly Waltersにスポーツ賭博の借金195万ドルを返済。この額は途方もなく巨額に思えるだろうが、Phil Mickelsonの総収入(ツァーの賞金+宣伝契約)は4,800万ドルなので、それからすれば実際には一寸したホビーという範疇である。

Billy WaltersにはPhil Mickelsonのような別途収入は無かったから、次第に金欠状態になった。1990年代半ば、Billy Waltersはゴルフとギャンブルが取り持つ縁で、Tom Davis(トム・デイヴィス)と知り合いになっていた。Tom Davisは大手食品会社Dean Foods(ディーン食品)の取締役の一人だった。彼は、ブラックジャックの賭けのためにBilly Waltersから100万ドル近くの借金をしていた。

2008年、Billy WaltersはTom Davisの助言で、ディーン食品の株を400万ドルで買い、しばらくしてそれを売却して利益を得た。2010年、Billy WaltersはTom Davisに、ゴルフ場でPhil Mickelsonを引き合わせた。当時、Tom DavisはBilly Waltersから借金を始めており、Phil MickelsonもBilly Waltersから借金をしていた。2011年、Billy WaltersとTom Davisは共に財政的ピンチに立たされていた。折しも、ディーン食品ではWhite Wave(ホワイト・ウェイヴ)という子会社を設ける計画があった。これが公になれば、ディーン食品の株が高騰する契機となる極秘ニュースであった。Billy WaltersとTom Davisは緊密に連絡を取り合った。

2012年、Phil Mickelsonはディーン食品の株を買ったことなど皆無だったのだが、Billy Waltersの強い勧めでディーン食品の株を購入した。一週間後、例の極秘ニュースが公になり、ディーン食品の株は40%も上昇した。Phil Mickelsonはディーン食品の株を直ちに売却し、931万ドル以上の利益を得、2012年9月にBilly Waltersからの賭けの借金を完済した。

2014年、ディーン食品の株の売買に関し不審を抱いたFBI捜査官たちが、ディーン食品の取締役Tom Davis宅を訪れ、Billy Waltersとの関係について問い質した。Tom Davisは彼を知っていること以外は全て嘘をついた。後に彼は、同じことを宣誓供述もした。しかし、2015年、彼は山ほどの証拠を突きつけられ、インサイダー取引関与と虚偽の証言の事実を認め、政府によるBilly Walters調査に協力することを約束した。彼は最長190年間の刑務所暮らしを科せられるところだったが、それを減免されるチャンスを得たのだ。

2017年三月、Tom Davisは証言台に立ち、Billy Waltersに極秘情報を提供したことを証言した。検察側はPhil MickelsonもBilly Waltersと同じやり口で巨額の利益を得たと確信していた。彼は妻や子供名義でもディーン食品の株を買い、100万近く儲け、それをそっくりBilly Waltersへの借金返済に充てていたのだ。

連邦裁の陪審員たちは、Billy Waltersに関し十項目の訴因で有罪を宣告した。Billy Waltersは、「人生最大の賭けに敗れた」と語った。Tom Davis同様、彼は100年間の懲役を科せられる恐れがあった。

Billy Waltersは政府側への協力を拒否し、Phil Mickelsonにディーン食品の極秘情報を漏らしたことを認めなかった。ゆえに、政府側はPhil Mickelsonが意図的にインサイダー取引禁止法違反をしたと立証することは出来なかった。

しかし、証券取引委員会は、Phil Mickelson自身が深く関わっていなくても、インサイダー取引によって利益を得たことを確信していた。そして、彼が得た93万1000ドルと、その利子10万5,291ドルを返済すれば、一切を不問に付すという民事的な取引を申し出た。

Phil Mickelsonはゴルフで窮地を脱出する名人であるが、この度も幸運に恵まれた。Billy Waltersの裁判が長引いていた間に、2014年に起きた類似のインサイダー取引に関する裁判の最高裁法廷で、《インサイダー取引であると知らずに利益を得た者は告発さるべきでない》という判決が下ったのである。つまり、Billy Waltersが「これはディーン食品の極秘情報だ」とPhil Mickelsonに告げていなければ、Phil Mickelsonはシロということになる。ディーン食品インサイダー取引の一件が2014年12月以前に起きていれば、彼は告発されていたところであった。【編註:当然刑務所行き】 Phil Mickelsonはオーガスタの二本の木の間から脱出したように、今回のトラブルからも鮮やかに脱出したのだ」

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Billy Waltersへの求刑は8〜10年でしたが、連邦裁は五年の刑期を言い渡しました。

【おことわり】画像はhttps://calvinayre.com/にリンクして表示させて頂いています。

(October 18, 2017)

綱渡り芸人のようにプレイせよ

 

Ken Venturi(ケン・ヴェンチュリ、1931〜2013)はU.S.オープン一回を含む計15勝を挙げ、長くCBS-TVの解説者も勤めたプロ。ここで「綱渡り」の比喩は、注意深くとか要心深くという意味ではなく、全く逆の意味で使われています。

[Wallenda]

'Be the Ball'
by Charlie Jones and Kim Doren (Andrew McMeel Publishing, 2000, $14.95)

「Ben Hogan(ベン・ホーガン)はよく云ったものだ、『このショットは何千回も打ったことがある。たとえ遊びのラウンドでも、クラチャンでも、ツァー・トーナメントでも、U.S.オープンであったとしても、このショットに変わりはないのだ』と。

Ben HoganはKarl Wallenda(カール・ウォレンダ、右の写真の人物)について言及した。"The Great Wallenda"(偉大なウォレンダ)は、恐らく世界一の宮中綱渡り芸人であり、ニューヨークの摩天楼の間を綱渡りしたこともある人物。彼が『ロープの高度が高くなればなるほど緊張しませんか?』と問われた時、彼は答えた、『なぜ緊張しなきゃならないんだ?ロープに変わりはないのに…』

同じことなのだ。Ben Hoganは『このショットは何千回も打ったことがある。なぜ緊張しなきゃならないんだ?ロープに変わりはないのに…』と云いたかったのだ。

これは歴史に残る偉大な陳述の一つであり、非常に核心を突いている。あなたがNo.18に達した時、それが最終ホールだからという理由で、これまでになく緊張するとしたら、こう考えるべきだ。『なぜ緊張しなきゃならないんだ?ロープに変わりはないのに』と。これは、私がかつて聞いたこともないゴルフに関する最良のステートメントである」

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1メートルのパットは、それがイーグル・パットであれ、ボギー・パットであれ、1メートルのパットであることに変わりはない…とも云えます。ボギー・パットをこともなげにぽこんと入れられるのなら、バーディ・パットだからと云って緊張するのはおかしいわけです。いい加減に打つのはいけませんが、慎重ではあっても緊張するのもいけません。

【おことわり】画像はhttps://media2.giphy.com/にリンクして表示させて頂いています。

(October 18, 2017)

プレッシャー下では果敢に攻めよ

 

"swing key"(スウィングの鍵)とか"swing thought"とか呼ばれるプロたちの「留意事項」を集大成した本より。今回はLPGAスターだったHollis Stacy(ホリス・ステイスィ、1954〜)の巻。彼女はメイジャー二勝を含め、計21勝しています。

'Swing Thoughts'
edited by Don Wade (Contemporary Books, 1993, $12.95)

「優勝争いに絡んだ最終盤に近づくと、私は安全第一でプレイしたり、ドライヴァーを遠ざけたり絶対しない。なぜなら、私が安全にプレイしようとしたりすると、ボールの舵を取るような、クラブヘッドをターゲットに向け続けてリリースしないような傾向が出てしまうからだ。その傾向が出ると、ボールを右へ逸らしてしまう。1981年のあるトーナメントで安全にプレイしてライヴァルに優勝を差し出した時、私は高い授業料を払ってそれを学んだ。

三年後の1984年のU.S.女子オープン。私は最終ホールでその学習の成果を試すことになった。

私は最終ラウンドをトップのAmy Alcott(エイミィ・オルコット)から三打差でスタートしたのだが、No.4でダボを叩き、首位と七打差に後退した。その時点で、私は何とか状況を打開せねば…と考えた。私はNo.5とNo.8でバーディ、No.13で7番アイアンのショットをチップインさせてイーグル。

最終ホールは難しいパー4である。ドライヴァーを打つには厳しいレイアウトなのだが、私はドライヴァーを打つ決断をし、そこをパーで上がって2オーヴァーのトータル290とした。それから私に出来ることは、No.18でAmy AlcottとRosie Jones(ロズィ・ジョーンズ)がどうするか見守ることでしかなかった。Rosie Jonesは二打目でグリーンをミスし、あまりにも攻撃的なチッピングでボギーとした。Amy Alcottはティーショットを林にプルし、木に遮られた。彼女に出来たのはフェアウェイに出すことだけで、三打目でグリーンをミスしてダボとなり、三位に転落した」

【参考】
・「プレッシャーを克服する」(tips_152.html)
・「プレッシャーに抗する」(tips_176.html)
・「スウィング・キイ大全集・前篇、後篇」(tips_46.html)

 

(October 29, 2017)

David Toms(デヴィッド・トムズ)の本番前の練習

 

2001年PGA選手権優勝者David Tomsのトーナメント前の準備の仕方。

'Golf Tips from the Pros'
edited by Tim Baker (David and Charles Limited, 2006, $14.99)

「プロにとってトーナメント前の練習は、どのコースでも実力を発揮し、生活の糧を得るために必須である。週一や月一ゴルファーにとってそれが優先事項でないのは明らかで、彼らに練習場や初めてのコースに慣れるために半日過ごせと説得するのは、非常に難しいことだ。だが、私がトーナメント前にどのように準備するかを知って貰うのも、あなたの練習に役立つと考える。

・建設的練習

アマとプロの練習の違いは、両者の時間の用い方だ。プロは毎日何時間もゲームのどの分野にも漏れの無いよう沢山の異なるショットを練習する。一方、アマは一週間働き週末にプレイする。しかし夕方の半端な時間を使うことでも、上達の助けになる。私のお薦めは、あなたの不得意な分野に練習時間を割くことだ。多くのゴルファーにとって、その分野とはショートゲームである。ありがたいことに、ショートゲームの多く(チッピングやパッティング)は、家のカーペットの上でも練習出来る。最も重要なのは、コンペ前にゲームのどの局面にも不安を感じないようにすることだ。仮に、あなたがパッティングに怖じ気づいているようだと、その不安は必ずあなたの足を引っ張ることになる。だから、練習しておくにしくはない。

・何を追い求めているのか知る

 

よく云われる『練習は完璧さを生むものではなく、定着させるだけだ』という言葉に賛成だ。正しく練習しなければ、向上はあり得ない。レッスン・プロについて練習するのは、プロの目があなたに悪癖がつかないよう監視してくれるのでとても大切だ。

コンペの準備をする最善の方法は、練習場でいくつかのドリルに挑むか、スウィングの鍵を実践することだ。私はスウィング動作にこだわるタイプではないので、ものごとをシンプルにし続け、オーヴァースウィングしないよう身体の捻転だけに集中する。安定したヒッティングの鍵であるタイミングの助けで、全てのプレイヤーがこれを実行出来る。

・本番の予行演習

コンペ前にその会場でプレイ出来るなんて滅多に無いことだろうが、もしそれが可能ならその練習ラウンドの機会を有効に使うことはとても重要だ。出来るだけ沢山の異なる場所(フェアウェイ、ラフ、バンカー等)からプレイし、一つのホールでいくつかのボールをプレイする。たった一個のボールを使うだけでは、コースに関し隈なく慣れ親しむことにならない。異なる場所から練習することは、準備オーケーの気分にさせてくれ、万一コンペの間にあなたのボールが扱いにくい場所に行ってしまったとしても、慌てふためかずに済むことになる。

コースの状況に特化した(特に、グリーンサイドの)練習をしておく。固いグリーンのコースならバンプ・アンド・ランの練習、濃いバミューダ・グラスならロフトの多いウェッジで高く上げるショット等を練習する」

(October 29, 2017)

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