Golf Tips Vol. 184

僕たちの失敗

スポーツ心理学者Dr. Deborah Graham(デボラ・グレアム博士)と夫のJon Stabler(ジョン・ステイブラー)共著より。

'The 8 Traits of Champion Golfers'
by Dr. Deborah Graham and Jon Stabler (Simon & Schuster, 1999, $25.00)

「あなたが感情的になるゴルファーであるなら(特に完璧主義者の場合)、自分のミスと距離を置くことを学ぶべきだ。あなたがショットやパットのミスにしばしば怒り狂ったり落ち込んだりするタイプであれば、われわれが"margins for error"『失敗の許容範囲』と呼ぶものを学ぶことを強く勧める。

手始めに、PGAツァーの最良のプレイヤーたちの現実を認識すべきだ。
・彼らはみな、少なくとも20%はフェアウェイをミスする。
・彼らはみな、少なくとも25%はパーオンに失敗する。
・彼らの平均パット数は(最高で)1.7パットである。

世界のトップレヴェルのゴルファーたち(才能あるスポーツマンで、トーナメントで競い合って生きている連中)でさえこんな数字になるのだが、あなたの現実的なミスの発生率を胸に手を当てて推測してみてほしい。あなたがいかに完璧主義者でも、この際は現実的に考えること。そしてパーセンテージ(数字)を出してほしい。例えば、あなたが25%もミスを犯したら、それは理想的なラウンドではない…とか。

 

 

あなたが必ずフェアウェイをキープし、全てのグリーンにパーオンし、その全てを1パットで上がったとしたら、あなたの『ミスの許容範囲』はゼロである。ツァーのベストの連中と素直に比較すれば、あなたの『失敗の許容範囲』は20〜25%であるべきだ。さらに、他の要素も勘案しなくてはならない。

あなたが推計した『失敗の許容範囲』は、完璧なラウンドの筈だ。完璧なコースであなたの最良のプレイをし、何の破滅的要因もない。現実的に、次のような要素も考慮してみてほしい。
・コースおよびコンディションの難度。
・コースに馴染みがあるか否か。
・現在の心と身体の平安の状態。
・あなたのメンタルおよび身体的強靭さ。
・天候。
・心を乱しそうな要因、期待、予期出来るプレッシャー。

これら全てを勘案して、あなたが算出したパーセンテージを調整されたい。

 

コンペなどに参加する場合、素晴らしいラウンドを期待しながらも、前もって予定したお粗末なショットやパット・ミスが生じるパーセンテージを受け入れる用意をしておくべきだ。それらお粗末なショットやパットを入れる仮想の篭を作っておく。その篭にはパーセンテージの札を貼っておく。その篭をコンペに持ち込み、ラウンドの間じゅう傍に置いておき、お粗末なプレイをしたら2秒以内に直ぐ篭に放り込む。それらお粗末なショットはラウンド終了後まで篭に入れたままにし、それらについて考えたり、腹を立てたり苛ついたりしない。あなたはそういうショットが出ることを充分予期しており、それらの発生に動じることはない。それらについて考えるのはラウンド終了後にする」

[icon]

…と、上の記事を紹介しておきながら今さら云うのもナンですが、この記事は当サイトにそぐわないのです。パーセントという言葉に騙されてしまいますが、ホール数に直してみると「パーオン失敗25%」は4.5ホールで、プロたちは少なくとも13ホールではパーオンしている。「パーオン率がゴルフを決める」(tips_89.html)によれば《80を切るには八つのホールでパーオンしなければならない》ので、逆に云えばわれわれは10のホールでパーオンに失敗してもいい理屈になります(約55%)。

現在の私のパーオン率は極めて低く、最近ハーフを4オーヴァーで廻ったケースを例にとってみても、パーオンはたったの二ホール。四つのホールを寄せワンでしのいでいるので、八つのパーオンなんて夢のまた夢。ですから、パーオンのパーセンテージなどではなく、現実的数字で勝負しなきゃなりません。

私の望みは「常に80を切る!」なので、何とか7オーヴァーで廻らなくてはならない。『失敗の許容範囲』はたった7打(ストローク)しかないのです。単純に云えばアウトで4打、インで3打のミスしか許されない。ま、アウトで7打ミスしても、インでパー・プレイすれば帳尻は合うとはいうものの、パー・プレイなんて僥倖であって、われわれクラスが期待すべきものではないでしょう(私のハーフ・パープレイは、長いゴルフ歴で数えるほどしかありません)。

・どっかで二打目をバンカーに入れ、寄せワン出来なければボギーで、7オーヴァーで廻るための残りは6打(ストローク)。
・どっかでグリーン・オーヴァーして、寄せワン出来なければボギーで、残りは5打。
・どっかでシャンクして、寄せワン出来なければボギーで、残りは4打。
・どっかで二打目をショートして、寄せワン出来なければボギーで、残りは3打。

 

つまり、OBだの池ポチャだの3パットだのでうろうろしてる暇なんかないのです。きわどい綱渡り。80を切るということが結構な偉業に思えて来ます。富士山の天辺に立って下界をを眺めながら、「よくまあ登って来たなあ!」と信じられない思いをするのと同じ感じですね。(経験者の言葉)

どの時点で7打(ストローク)の貯金を使い切ってしまうか、最近のスコアカードをチェックしてみました。大体において、前半のラウンドで使い切っています。トホホ。これじゃ、後半を必ずパープレイしなければならない。てんで見込み薄orz

(june 11, 2017)

ラウンドの勢いを取り戻す

スポーツ心理学者Patrick Cohn, Ph.D.(パトリック・コーン博士)による、"momentum"(勢い、気運、推進力)に関する考察。

'Going Low'
by Patrick Cohn, Ph.D. (Contemporary Books (2001, $22.95)

「勢いの波に乗るベストの方法は自信を持ってラウンドをスタートすることである。勢いに乗ってプレイする時、ゴルフは容易(たやす)いように思える。手堅い連続パー、普段沈められないパットの成功、パー・セーヴなどが可能になり、自信があなたを支える。だが、ラウンド初期にあなたを支えてくれる勢いが得られない場合、ゴルフは難しくなる。多くの上級ゴルファーたちが、様々な理由で序盤に悪戦苦闘する。中盤にさしかかるまで集中出来ない時もある。いいショットが出るまで、自信を持てないかも知れない。

勢いが得られない場合、どうしたらよいか?No.2でのダブル・ボギーがあなたを挫折させている。その挫折感を引っくり返し、勢いを作り出すことをどこかの時点で始めなくてはならない。そのダボは過去のものであるが、それを引き摺っていると次のショットに影響を与える。重荷を背負っていてはゴルフにならない。どのショット、どのホールも、あなたのラウンドを好転させる新たな好機である。運命論者であり続けるなら、あなたは決して最初のパーを得られないに違いない。1ラウンドを、18のバラバラのゲームに分解せよ。一つのホールを終えたら、次のゲームにフレッシュな態度で臨み、新たなホールへの挑戦に備えるのだ。

不運なブレイク【ボールが予想外の方向に撥ねること】は偶然であり、悪いお告げではないことを弁えるべきだ。それは今日一日不運に見舞われることを示す前兆ではない。『今日はツイてないぞ…』と自分に語りかけたりしてはならない。そういう考え方は、勢いを捉えるチャンスを台無しにしてしまう。なぜなら、あなたは次なる不運なブレイクを探し求め始めてしまうからだ。運はゴルフの一部であり、それはツァー・プロも認めるところだ。あなたは幸運・不運をコントロール出来ないのだが、不運に見舞われた際にどう反応すべきかはコントロール出来る。不運を記憶から抹消し、次なるショットへと進むべきだ。

勢いは情緒的なものである。もしあなたが序盤でネガティヴな情念を抱いたら、あなたはネガティヴな勢いを生み出すことになる。パーに見放され、落ち込んでいる時、あなたは自分を責めるだろうか?悲観と絶望は、ネガティヴな勢いを加速するだけである。あなたが過去のボギーやお粗末なパットに焦点を合わせていると、絶望は絶大となる。ネガティヴな情緒をネガティヴな勢いにしてはならない。

 

90を切ろうとする場合であっても、ツァーで60台を出そうという場合でも、勢いと自信は強力な武器である。多くのゴルファーは生涯ベストのスコア達成のチャンスを、No.1ティーに立つ前に既に逸している。自信はいいゴルフを先導し、いいゴルフはさらに自信を膨張させる。自分の能力を疑ったり、いくつで廻れるかとか、仲間があなたのプレイをどう思っているか…などで、あなた自身をメンタルに不利にしないように。あなたがミスした時、他者がどう思うかなど考えてはいけない。自分の心とベストのショットを打つこと、そして心の目でショットを見ることに焦点を合わせ、どのホールでもパーを得る最高のゲーム・プランを懸案事項とする。こうすれば、あなたは自分自身にいい結果を生む好機を与え、19番ホールへと向かう勢いの波に乗ることが出来る。

勢いが味方してくれている時、当初のゲーム・プランを捨て、もっと攻撃的に(時として愚かな)プレイをしようという傾向が存在する。その際の選択は偉大なプレイヤーとそうでない者とを隔てる別れ目である。Ernie Els(アーニィ・エルス)はどのラウンドでも一つのゲーム・プランを用い、それに固執し、エラーを犯して勢いを失うことを防止する。ハンデ15のプレイヤーは、ラウンドの最中に20オーヴァーであろうが5オーヴァーであろうが、ゲーム・プランを変更すべきではない」

(June 11, 2017)

ライ角が方向性を悪くする

 

ライ角が体型に合わないとボールは右に出たり左に出たりします。また、クラブのライ角は使用頻度に応じて変化するので、数ヶ月おきにチェックする必要があります。この記事の筆者はGolfTec(ゴルフテック)のクラブ・フィッティング部門責任者のDough Rikkers(ダグ・リッカーズ)。

'Fine-tune your gear for scoring' by Dough Rikkers
a part of 'Golf Magazine's The Par Plan'
powered by GolfTec edited by David DeNunzio (Time Home Entertainment Inc., 2013, $29.95)

「あなたがムラなくターゲットに向かってボールを打ちたいと願うなら、シャフトとクラブヘッド間の角度であるライ角があなたの体型とスウィングに合っているかどうかは、ショットの方向に重要な影響を与える要素である。残念ながら、あなたがゴルフ用品店の店頭でクラブ・セットを購入したのなら、あなたにぴったり合ったライ角ではない恐れ大である。だが、ライ角のチェックはそう難しいものではない。

ライ角はアイアンとウェッジに非常に大きな影響を与える。複雑な物理学の迷路に入り込みたくなければ、単純に《ロフトが多ければ多いほど、正しくないライ角はショットの方向に悪影響を与える》と覚えて欲しい。

プロに頼むのではなく自分でライ角をチェックしたいなら、平らなプラスティックの板とマスキング・テープ(ペイント時のはみ出し防止用粘着テープ)を用意する。テープをアイアンとウェッジのソールに貼り付け、固く平らなプラスティックの板の上でボールを打つ。

【編註】本物のボールを打つ必要はありません。私がライ角調整を受けた時、クラブフィッターは私に紙を丸めたものをボール代わりに打たせました。

 

[lie-angle]

打った後、毎回テープに残された痕跡を点検する。もし、トゥ寄りに擦れ痕があるなら【写真のC】、ライ角は過度にフラットである。これによるエラーは一般ゴルファーにとって最悪であろう。何故ならフラットなライ角はスライスを生むからだ。あなたが特にアイアンで左から右へのボール軌道に悩んでいるなら、このライ角の問題が原因である可能性が高い。

反対にヒール寄りに擦れ痕があるなら【写真のA】、あなたのクラブは過度にアップライトである。アップライトなライはフックやドローを生むが、もしあなたにスライスする傾向があるならこれはあながち悪いことではない」


次も同書からで、ディヴォットによるライ角チェック法。

'Demand the truth from your lie angles' by Matt Carrothers
a part of 'Golf Magazine's The Par Plan'
powered by GolfTec edited by David DeNunzio (Time Home Entertainment Inc., 2013, $29.95)

「ディヴォットをとった後、そのサイズ、形、深さでライ角が正しいかどうか調べることが出来る。

1) 突入地点のディヴォットは直線でなければならない(ターゲットラインに直角であることを確認せよ)。ディヴォットの深さは全体の幅で平均した深さであるべきだ。もしそうなっていれば、あなたのクラブのライ角は正しいか、それに近い。

2) ライ角が正しくない場合、ディヴォットの一方が他方より深い。トゥ側がヒール側より深ければ、それはクラブが過度にフラットであることを示し、ヒール側がトゥ側より深ければ、過度にアップライトであることを示している。

もし上のような問題があるなら、プロにライ角修正を依頼すべきだ。正しくないライ角のクラブを振るのは、スコアに深刻な被害をもたらす。大抵の場合、正確さが犠牲となる。9番アイアンで2°のライ角エラーは、平均12.3°オフラインに飛ぶ原因となる」

(june 14, 2017)

お手軽ライ角チェック法

筆者Ken Venturi(ケン・ヴェンチュリ、1931〜2013)は1964年のU.S.オープンを始めPGAツァーで14勝、後年はCBS-TVのメインの解説者を長く勤めました。

[lie-angle]

'Ken Venturi's Stroke Savers'
by Ken Venturi with Don Wade (Contemporary Books, 1995, $14.95)

「ポスト・イットの糊が付いた方を細く切り、二つの細長い紙片にする。大抵のアイアンのクラブフェースには、水平のグルーヴ(溝)の両脇に垂直の線が刻まれているので、その垂直の線に沿って左右それぞれにポスト・イットを貼る(縦線が無ければ横線の端に揃える)。【写真参照】

通常のアドレスをする。ポスト・イットがターゲットラインに平行であれば、ライ角は正しい。もし、ポスト・イットがターゲットラインの内側(あなたの方)に傾いでいれば、ライ角はあまりにもフラットである。ポスト・イットがターゲットラインの外側(あなたから遠ざかる方)に傾いでいれば、ライ角は過度にアップライトである。

私の助言。あなたに適切なライ角を見つけたら、クラブ・セット全部をクラブ・フィッターに見せてチェックして貰うべきだ。現在のクラブ・メーカーの品質管理は以前より向上しているとは云え、完璧なセットを提供しているメーカーは少ないのだ(特にショート・アイアンで)」

[icon]

これはお手軽なだけあって、あまり精確とは云えません。これでライ角の異常が見つかったら、相当ひどい状態かも知れません。

(June 14, 2017)

Ben Hogan(ベン・ホーガン)の全英オープン余談 [Timmy]

「Ben Hogan(ベン・ホーガン)の全英オープン」(tips_172.html)で、Ben Hoganのキャディを勤めたTimmy(ティミィ)について触れましたが、彼が「一度だけBen Hoganを助けたことがある」という隠れた逸話を見つけました。

【註】図のHoganの後方でバッグに手を置いているのがTimmy。

Ben Hoganは常に"Timmy"と呼んでいましたが、彼の本名はCecil Timms(セシル・ティムズ)。彼がBen Hoganに雇われたのは、彼が以前仕事をしたことのある二人のアメリカのトップ・アマHarvie Ward(ハーヴィ・ウォード)とDick Chapman(ディック・チャップマン)の推薦があったからでした。

'Who could forget Paris or Hogan's Triple?'
by Dan Jenkins ('Golf Digest,' July 2003)

「1953年の全英オープンはスコットランドのCarnoustie(カーヌスティ)で開催された。キャディのTimmyは、全72ホールの中で一度だけBen Hoganを助けたと断言する。それは最終ラウンドのNo.10で起った。Ben Hoganは寒気と霧、小雨の中で4アンダーの68で廻って四打差で優勝する途中であった。

CarnoustieのNo.10は起伏の激しい450ヤード(パー4)で二打目はやや打ち上げとなるホールである。グリーンは、左は大口を開けているバンカー、右は大きな木と小川でガードされている。Ben Hoganは午前中の第三ラウンドのこのホールを、ドライヴァーと4番アイアンによってパーで上がっていたが、この時点で得るパーはもっと重要だった。この当時、スコアリング・システム【編註:リーダー・ボードなど】は完備していなかったが、ギャラリーの中のファンの口から、彼はRoberto De Vicenzo(ロベルト・デ・ヴィセンゾ、アルゼンチン)とタイ、多分Dai Rees(ダイ・リース、英国)とAntonio Cerdá(アントニオ・セルダ、アルゼンチン)より一打マイナスであると聞いた。この三人が、残り九ホールの対抗者であった。

いいドライヴを放った後、Ben Hoganは二打目でまた午前と同じ4番アイアンに手を伸ばした。キャディのTimmyが人生を彼の手に篭めたのはその時であった。彼は、4番アイアンを掴んでいるBen Hoganの手の上に自分の手を重ねた。そして『風が変わったっす。2番アイアンでさ』と云った。Ben Hoganは彼を睨みつけて考え込み、2番アイアンを引き抜いた。アドレスしたものの、動きを止め、再度Timmyを睨みつけて云った、『もしこれがグリーン・オーヴァーしたら、おれはこのクラブをあんたの額に埋め込むからな』

Ben Hoganは、他のショットと同じく精一杯のスウィングをした。一見、グリーンをオーヴァーさせてキャディの間違いを証明しようとするかのように。しかし、ボールはグリーンに乗りピンを3メートル越えて停止し、Ben Hoganは楽々2パットでパーを得た。

『彼は私に感謝しなかった』とTimmy。『私も彼の感謝を期待しなかった。彼は私が仕事としてすべきことをしただけだと考えたんだろうし、私の考えも同じだった』」

[icon]

初挑戦で全英オープンに優勝したBen Hoganの道程は「Ben Hogan(ベン・ホーガン)の全英オープン」(tips_172.html)を御覧下さい。

(july 19, 2017)

Ben Hogan(ベン・ホーガン)のクラブ選択

この記事の筆者Jimmy Demaret(ジミィ・デマレ、1910〜1983)はthe Masters(マスターズ)三回優勝を含め、全36勝を挙げ、後にTV番組'Shell's Wonderful World of Golf'(シェル提供・素晴らしきゴルフの世界)の司会も務めた人気プロ。Ben Hogan(ベン・ホーガン、1912〜1997)と同郷のテキサス生まれで、二人でペアを組んでチーム・プレイで何度も成功を収めました。以下の記事にはクローヴァーのライの対処法が含まれています。

[Hogan]

'My Partner, Ben Hogan'
by Jimmy Demaret (1954)

「Ben Hoganがクラブを選択するのを見守るのは、偉大なクラブ選択を見守ることだった。彼はバッグの中のどのクラブもそれがどんな働きをするか正確に知っていた。クラブ選択は、彼が完璧さを追求する多くのうちの一つの要素に過ぎなかったが、それはとりわけ私に感銘を与えるものであった。

天候と風はクラブ選択に大きな影響を与える。他にも、草の質や空気と地面の湿り気の具合も重要視しなければならない。クローヴァーを例に取ってみよう。Ben Hoganがクローヴァーに覆われた一画でプレイする際、彼が通常より二本分短めのクラブを選ぶのに気づく筈だ。その理由は、クローヴァーのライではボールは滑走(あるいはスライド)するからである。クラブがボールと接触する時、小さな葉のねっとりした性質がクラブフェースに油を塗ったように変化させ、バックスピンをかけることを不可能にする。ボールは輪を描くように宙に浮かび、ほぼコントロール不可能となる。こんな要素がクラブ選択とコース・マネジメントの要素として存在するということだ。

Ben Hoganには、彼に『慎重派』というレッテルを貼ってもいいクラブ選択法がある。アプローチ・ショットで、彼はグリーンをオーヴァーするのでなく、確実にショート目に打とうとする。彼が全英オープンに優勝したスコットランドのCarnoustie(カーヌスティ)で、全てのトラブルはグリーンの背後に待ち受けていた(アメリカでは90%のコースがそうだ)。全英オープンの間に何度もBen Hoganのキャディは4番アイアンを抜き出そうとしたが、Ben Hoganは5番アイアンを選び、僅かにショートではあるが安全な場所にボールを運んだ。そのキャディはそんなプレイをするのは間違いだと感じていたが、そう感じたのは彼が最初ではなかった。

私がBon Hoganとテキサス州のColonial C.C.(コロニアルC.C.)とプレイした時のことだ。彼のキャディは『おれはHoganよりこのコースをよく知ってるぜ』と他の連中に云った。ラウンドの最初から最後まで、そのキャディはBen Hoganに一本分長いクラブを押し付けようとしたが、Ben Hoganは常に一本分短いクラブを選んだ。
『4番ならベタピンですぜ?』と、あるホールでそのキャディが云った。
『5番でいい』Ben Hoganが答え、彼はグリーン・エッジにボールをつけた。

『別なクラブならベタピンだったのに…』とキャディが私にぶつくさ云った。『あの人はチャンピオンで、ここはあの人のホームコースだってのに、あの人は間違ったクラブ選択をしてる』
私は大笑いした。Ben Hoganは、グリーンの背後にトラブルが待っていることを熟知していた。彼は短いクラブでグリーン手前に届かせ、2パットでホールアウトしようとしていたのだ。その慎重さを間違ってるなんて誰が云えるだろう?無論、私は云わない」

(July 19, 2017)

前頁 ← | → 次頁



 Copyright © 1998−2022   Eiji Takano    高野英二
[Mail]
 Address: Eiji Takano, 421 Willow Ridge Drive #26, Meridian, MS 39301, U.S.A.