Golf Tips Vol. 183

オープンフェースは飛距離を30ヤード減らす

市営ゴルフ場のNo.3(270ヤード)パー4と、No.14(440ヤード)パー5の二つは、比較的距離が短く、パーオンさせられればバーディ・チャンスに恵まれます。しかし、どちらもバンカー越えで、グリーン奥からは崖下へ下り特急で転げ出てしまう設計。バンカーをぎりぎり越えた地点に着地させ、ごく少ないランでないとグリーン中央には乗せられません。それにはフェースをオープンにしてバックスピンを掛けることが必須です。

ある日、私のNo.14の二打目はグリーンまで残り70ヤード地点へ。70ヤードは、私の場合、ロブウェッジのフル・スウィングの距離なのですが、フェースをオープンにしてランを殺したいので、2クラブ上のギャップウェッジで打つことにしました。オープンフェースと云っても、実効ロフトをたかが5°か7°増やすだけで、10°までは開いていません。私のギャップウェッジのフルスウィングは90ヤードなので、 充分過ぎるくらいだろうという腹づもり。結果は、哀れショートしてバンカーへ。

その次のラウンド前の早朝。前回の失敗が忘れられなかった私は、前後に人気が無いのを確かめてNo.14の70ヤード地点に直行。再度、ギャップウェッジでトライ。やはりボールはバンカーへ。スウィングが悪いわけではなかったようです。で、「えーい!持ってけドロボー!」と3クラブ上げて、ピッチングウェッジで打ってみました。ピンハイにオン!オープンフェースだと、3クラブ上げる必要があったのでした!

私は続いて80ヤード、90ヤード、100ヤードから、オープンフェースで打ってみました。その結果次のような驚くべき法則が見つかりました。(実際には私はウェッジのフルスウィングは滅多にせず、左腕が胸の高さのバックスウィングに留めています。その場合、飛距離はフルスウィングより10ヤードほど減りますが、方向性も距離も乱れず安定するのが長所です)

ピンまでの距離 通常のロフトで
フルスウィング
フェースを5°開いて
打つ場合
70ヤード
LW(60°)
PW(47°)
80ヤード
SW(56°)
9番(43°)
90ヤード
GW(52°)
8番(39°)
100ヤード
PW(47°)
7番(35°)

 

【註】私の平均飛距離は9番アイアンで110ヤード、8番で120ヤード、7番で130ヤードです。もちろん、これらは全てフラットな地形が前提で、上りや下り勾配の場合は調整が必要です。

上の表で判るように、5°オープンフェースの場合、それぞれ距離に応じて通常打つクラブより3つ上のクラブでないと届かないのです。たかが5〜7°フェースを開くだけで、こんなにも飛距離が減るとは想像していませんでした。

ある日のラウンドで、このホールでの私の二打目は残り105ヤードのところへ。「5ヤードぐらい強めに打てばいいだろ」と思いましたが、7番アイアンで打ったショットは5ヤードほどショートしてバンカーへ。誤摩化せませんでした。6番アイアンを1.25センチ短く持って打つべきでした。

110ヤードも試してみましたが、上の法則を適用して選んだ6番アイアンでは届かず、5番アイアンを1.25センチ短く持つ必要がありました。距離が長くなるにつれ、私レヴェルの実力では正確に打てないというボロが出て来るようです。

たった5〜7°のオープンフェースとはいえ、ボールは空中で見事に右へカーヴします。ですから、スタンスと両肩を結ぶラインは、ピンの5〜10ヤード(飛ばす距離に応じて増減)左を狙わないといけません。

(April 02, 2017)

ピッチングのライによるボール位置の調整

 

インストラクターMike LaBauve(マイク・ラボウヴ)は、ライによってピッチングのボール位置を変えるべきだと示唆します。''Golf Magazine'誌編纂のショートゲーム大全より。

'Golf Magazine: The Best Short Game Instruction Book Ever!'
edited by David DeNunzio (Time Inc. Home Entertainment, 2009, $32.00)

「ボールがどんなライにあるかを無視しては、グリーンにうまく乗せるのは難しい。ライによってスウィングを変える必要はないが、草の影響を減らすためにボール位置を変えるべきだ。

・ボールのほとんどが草の上に出ている場合

 この場合は草の影響を受けない。あなたがスウィング弧の最低点を知らないのなら、素振りをして草を擦った地点を調べる。擦った場所の真ん中が、あなたの自然なスウィング弧の最低点だ。  

・ボールが草の中に3/4埋まっている場合

 ボールをスタンス後方(右足の内側)にし、両手をズボンのファスナーのターゲット方向に傾げる。これはボールを先に打ち、次いで地面を打つことを促進する。もし、地面を先に打つと、あなたが望んだ距離は得られない筈だ。

・ボールの半分が草に埋まっている場合

 ボール位置を左足踵に移すが、両手はズボンのファスナーのターゲット方向に置き、シャフトを微かにターゲットから遠ざける。これはクラブのロフトを活かし(長い草はクラブフェースを伏せ目にしがちである)、クラブフェースの面積の大部分でボールとの接触を可能にする」

 

(April 02, 2017)

2/3、1/2、1/3などで振るウェッジを多用せよ

 

インストラクターJim McLean(ジム・マクレイン)は、ハーフ・ウェッジを含め、2/3、1/3などで振るスウィングを"part-shot"(部分ショット)と呼んでいるのですが、これらはまだ日本語になっていないようです。《左足体重でボールを押し潰すショット》である「ワン・バウンドして急停止するピッチング」(tips_177.html)とは異なり、こちらは《左右均等の体重で掃くようなスウィング》でボールを高く上げて停止させる…という、ごく普通のピッチング。

'The 3 Scoring Clubs'
by Jim McLean (Gotham Books, $30.00, 2005)

「『パー5では、短いスウィングのウェッジ・ショットは難しいから、フル・スウィングの距離を残すべきだ』…などと考えるゴルファーが多い。ピンがバンカーや池に近いところに切ってなければ、グリーンに近ければ近いほどいいアプローチ・ショットを打てるチャンスが増大するのに。

PGAツァー・プロや上級アマを教えた経験から云って、40〜50ヤード付近から多量のバックスピンがかかったハーフ・ショットを打てない人はまず存在しない。だから、グリーンへ100ヤード(あるいはそれ以上)を残すべきだというのは、その距離の半分以内に寄せられるチャンスを無視した悪しきアドヴァイスである。全てのショート・ゲーム名人は短いショットの方が易しく、ピンを攻撃し易いという意見に同意する筈だ。以下の手順によって、サンドウェッジかロブ・ウェッジを用いた部分ショットを習得されたい。

1) ボール位置は狭いオープン・スタンスの中央。
2) 体重は左右の足に均等(多くのウェッジ・ショットでは左足体重が普通なのだが)。
3) ややフラット目のプレーンで掃くようにスウィングし、地面を擦る程度の浅いディヴォットを取る。

この掃くようなアクションは(ダウンブローで打たれるフル・ウェッジの反対だが),ショットに即座のボール高度と停止するパワーを与える。打つ前にターゲットにハードに集中すること。なぜなら、どれだけの長さのバックスウィングをすべきかは、目からの情報が距離感を身体に伝達するからだ。

 

このショットを練習する際は、40ヤード、50ヤード、60ヤードを注意深く歩測するように。その距離に応じて、どれだけ長くバックスウィングをするか練習によって知る。これらの距離にフル・スウィングは必要ないし、短過ぎるスウィングも不要である。

[Lob Wedge]

ダウンスウィングでは、インパクトにかけて右膝とクラブをきびきび動かすことに集中する。振り抜きながら、右肩が顎を擦るようにすると、いい加速を推進出来るだろう」

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私の「ピッチングとチッピングの距離調節・完全版」(tips_169.html)は、ロブ・ウェッジ一本で10、15、20、30、35、40、45、50ヤードを打ち分け、サンドウェッジで55ヤード、60ヤード、ギャップウェッジで65、70、75、80ヤード、ピッチング・ウェッジで85ヤードと90ヤード等を打ち分けられます。ですから、私にはこのtipは必要ありません。

上のtipを試される時のヒント。私の経験から云って、手・腕が胸の前で地面と平行になる位置(右図の4)が最も曖昧でないバックスウィングのトップなので、各ウェッジのこの位置で何ヤード打てるかを確認されるといいと思います。この一つのスウィングだけで、ロブ・ウェッジ、サンドウェッジ、ギャップ・ウェッジ、ピッチング・ウェッジによる四つの異なる確実な飛距離を獲得出来るのですから、スコアメーキングに役立つこと請け合いです。


(April 02, 2017)

バンカー・ショットの盲点

最近のゴルフ雑誌のtipには目新しいものがなくなり、仕方なく私のゴルフ蔵書を読み直して、落ち穂拾いをしています。最近、ふと手に取った本で「ん?」と思わされた箇所がありました。そして、それは私のバンカー・ショットの盲点でした。ひょっとすると、世界中でそれを知らなかったのは私だけで、私個人のお恥ずかしい盲点なのかも知れませんが。

著者Steve Elkington(スティーヴ・エルキントン、1902〜、豪)は、PGA選手権(メイジャー)を初め、各種ツァーで17勝しているプロ。

'Five Fundamentals'
by Steve Elkington with Curt Sampson (Ballantine Books, 1998, $27.00)

「私は『ボールのどれだけ後ろの砂にクラブを打ち込むのか?』としょっちゅう問われる。距離が長ければボールの近くの砂に打ち込むべきだし、距離が短ければボールから離れた地点に打ち込む。どれだけボール後方の砂にクラブを突入させるか最も簡単でベストの方法は、飛距離とボール後方にあるクラブを持つ手の距離を合致させるることだ。言葉を替えれば、もし両手がボール後方10インチ(約25センチ)であれば、クラブはボール後方10インチの地点で砂に突入するということである。当然のことだが、長いバンカー・ショットではボールからかなり離れた地点で両手を構えたりしない」

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すぐに理解出来なかった私は、上の文章を何度も読み返しました。そして愕然としました。Steve Elkingtonは「クラブヘッド」ではなく、「両手の位置」について言及しているのです。私は、これまでバンカー・ショットでの両手の位置について深く考えたことがありませんでした。もっぱら、フェースの開き方とクラブの突入地点を凝視することで万全を期したつもりになっていました。

しかし、私は自分のバンカー・ショットが、たまにプロ裸足の妙技になるかと思うと、初心者のようにお粗末になったりするのが不思議で、常にジグソー・パズルの一片が失われている気にさせられていました。今回上の記事を読んで、「原因はこれだっ!」と直感しました。なぜ、こんなことに今まで気づかなかったのか?

私は当サイトの「バンカー・ショット」のtipを総点検してみました。バンカーtipは合計123本もあるのですが、「手の位置」について触れたものは、たった二つしかありませんでした。

・「Butch Harmon(ブッチ・ハーモン)のバンカー・ショットのアドレス」(tips_149.html)

 ボールを左足内側前方にすると、それは両手をボールの手前に位置させ、シャフトを少しターゲットの反対方向に傾ける。【編註:ハンドファーストの構えでなく、ヘッドファーストの意】 多くのゴルファーがボール位置をスタンス中央にし、シャフトをターゲット方向に傾けてバンカー・ショットをする。この構えでボール手前の砂を打とうとすると、多くの場合、あまりにも手前を打つことになり、チョロするかクラブヘッドが砂で跳ね返ってホームランになる。

 

 

Butch Harmonの父親でクラブ・プロだったClaude Harmon Sr.(クロード・ハーモン一世)は、1948年のthe Masters(マスターズ)にも優勝し、特にバンカー・ショットの名人と云われた人でした。彼が息子に教えたtipだとすれば信頼出来ます。

・「グリーンサイド・バンカー・ショットの秘訣」(tips_157.html)

Ernie Els(アーニィ・エルス)のtip「両手はややボールの後方で構える」。

これだけでした。念のため'Scrambling Golf'という本のバンカー・ショットの部分を読むと、著者George Peper(ジョージ・ペパー)は、エクスプロージョン型では両手について何も触れていないのに、スプラッシュ型では「両手を後方に置いているので、エクスプロージョン型のような急角度の下降スウィングにはならない」と云っていました。両手の位置は,特にスプラッシュ型で重要なのかも知れません。

両手をボールの後方に位置させるのは、滅多に言及されず軽視されている秘訣なのかも知れません。私はボール後方10センチぐらいにクラブヘッドを構えてアドレスしていたものの、Butch Harmonが喝破しているように、シャフトをターゲット方向に傾げるゴルファーの一人でした。

ボール位置を「左足内側前方」とか「スタンス中央」に定めてアドレスした後で、その10センチ後方とか(人によって異なる)にクラブヘッドを構えてはいけないのです。これではハンドファーストになってしまい、普通のピッチングのようにボールのターゲット側でディヴォットを取るスウィングになってしまいます。バンカーではボールの後方(ターゲットの反対側)でディヴォットを取り始めなくてはなりません。ハンドファーストの構えは皇室御用達のホームラン製造法なのです。

私のピッチングのボール位置はスタンス中央です。それに準じてバンカーでは「ボールの10センチ後方」をスタンスの中央とすべく、両足を右に10センチ移動してアドレスします。こうすると、結果的にボールは左足内側前方へ移ります。しかし、これでもまだハンドファースト気味になるので、両手を僅かにターゲットの反対側に引く必要があります。これでやっとボール後方10センチがスウィング弧の最低点となり、クラブの突入地点となりました。

これにて一件落着…とはいきませんでした。かなり改善されたものの、まだ結果にムラがあるのです。絶望しかけた時に思い出したのが、「Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)の バンカー・ショットへの助言」(tips_175.html)でした。彼は次のように云っています。

 あなたに必要なのは、今後どんなバンカー・ショットも『スローモーション』でプレイしようと決意することだ。メンタルにも身体的にも、スウィングの最初から最後までスローモーションのテンポを維持出来れば、あなたのバンカー・ショットの進歩は間違いないと保証する。

 

この記事を紹介はしたものの、私はスローモーションのバンカー・ショットに専念したりしませんでした。しかし、今回藁にもすがる思いでスローモーションのスウィングを試しました。15ヤードのバンカー・ショットが、五個連続でワン・ピン以内の距離へ。驚きました。Jack Nicklausの言葉は決して誇大表現ではなかったのです。

 

もっとも、スローモーションな動作だけでなく、私は左肘を伸ばし、左肩をボール位置まで廻し、トップで右肘を身体に近づけ、左手首をフラットにするインパクトを心掛けたので、これら全ての相乗効果であろうと思われます。左肘を伸ばし左手首をフラットにすることは砂を取る量を適切にしてくれます。左肩を廻すことおよび右肘を身体に近づけることは、砂に負けないパワーを生成します。

さあ、これで私のバンカー・ショットが常に成功と行くでしょうか?楽観は出来ません。しかし、かなり安定するであろうとは想像しています。

(April 05, 2017)

湿った砂から寄せる

 

筆者Ken Venturi(ケン・ヴェンチュリ、1931〜2013)は1964年のU.S.オープンを含むPGAツァー14勝を挙げ、後年はCBS-TVのメインの解説者を長く勤めました。湿った砂でのバンカー・ショットの技法は既にいくつか掲載していますが、このKen Venturiの記事には他と異なる点が多々あるので、参考までに取り上げました。

'Ken Venturi's Stroke Savers'
by Ken Venturi with Don Wade (Contemporary Books, 1995, $14.95)

「湿った砂は重く、しかも締まっているので通常とは異なるショットが必要になる。短いが力強いスウィングで、しかもコントロールを失わないようにする。

1) クラブフェースをボールに対しスクウェアにし、砂に鋭く突入し打ち抜けるようにする。

2) バランス良く立つためスタンスを若干広めにし、スタンスをターゲットラインにスクウェアにする。  

3) 膝を柔軟にし、それを最後まで保つこと。

4) 短くフラットなバックスウィング。

5) クラブヘッドをボールの背後に打ち込み、砂をグリーンに投げ出す。

ボールは急速に飛び出し、乾いた砂より遠くに転がる。そのランを見込んでおくこと。

もし距離が40ヤード以上なら、サンドウェッジよりもピッチングウェッジを勧める。スウィングは上と同じだが、少ないロフトによってオーヴァー・スウィングをすることなく距離が稼げる」

【参考】
「湿ったバンカー、固いバンカー」(tips_76.html)
「湿ったバンカーではUスウィング」(tips_96.html)
「湿ったバンカーからの脱出」(tips_118.html)【編者推奨】
「湿った砂、二つのライ」(tips_135.html)

 

(April 05, 2017)

パットを難しくするな

スポーツ心理学者Dr. Bee Epstein-Shepherd(ビー・エプスタイン=シェパード博士)が、自分自身の体験と七歳の少女を教えた経験を語ります。

'Mental Management for Great Golf'
by Dr. Bee Epstein-Shepherd (Lowell House, 1997, $24.00)

「私は、どうパットするかの方法を知る前の方が上手だった。最初のあるレッスンの一つは、カップに向かって狙いを定めることだった。私のレッスン・プロは、まだブレイクとかグリーンの早さ、芝目などについて触れていなかった。私は単にラインに身体を揃え、ボールがカップに転げ込むところを視覚化した。多くの場合、ボールはカップに転げ込んだ。

その後、私はパッティングの上級テクニックを教わった。グリーンの読み方を学び、速度と方向とブレイクに関するドリルを実行した。興味深く思えたのは、私が情報を多く仕入れ意識的に処理しようとすればするほど、身体がぎごちなくなって自意識過剰になることだった。『パットを成功させよう』と思えば思うほど、私はしばしばミスした。

ボールにアドレスしながら意識的に情報を処理しようとすると、筋肉へ指令を下す役目である潜在意識を混乱させる。だから、アドレス前に情報処理を済ませておき、潜在意識に業務を完全に引き継がせてから、パットを沈めるのだ。

Lillian(リリアン、七歳)という少女の父親はハンデ4で、彼の幼い娘にゴルフを教えた。Lillianはジュニア・クリニックで何回かレッスンを受けたことがあった、父親は『娘はいいスウィングをするんだが、パットがあっちゃこっちゃへ行っちゃうんです』と云った。私は、上級ポイントを全く知らない七歳の子供に、私のメンタル・テクニックを試すのは興味深いことだろうと考えた。私たちがグリーンに行くと、彼女の父親が練習グリーンにボールを数個転がした。私は『お父さんから教わった通りにパットして見せて?』と云った。父親の言葉は正しく、パットはあっちゃこっちゃへ向かった。

 

私とLillianは、彼女の父親を遠ざけて、二人でハドルを組んだ。五分後、私は彼女の前に数個のボールを置き、『パットしてみて?』と頼んだ。驚嘆した父親が『以前とこのパッティングの変化を、ヴィデオカメラで撮っておけばよかった。こんな劇的な変化は見たことない!』と云った。

私はLillianに二、三分かけて視覚化することを教えただけだ。子供たちは素晴らしい想像力を持っており、実在しないものを“見る”ことが出来る。だから、私は彼女が多分活き活きと視覚化出来ることを知っていた。私は彼女に、お父さんが教えてくれたように狙いを定めた後、ボールがカップに転げ込むところを見、それからパターに『ボールをカップに入れなさい』と命じるよう伝えたのだ。その直後、七歳のちいちゃなLillianは、彼女の最初のトーナメントに11歳の子供たちを打ち負かして優勝した」

【参考】「童心でパットせよ」(tips_179.html)

(April 12, 2017)

三音節でパットせよ

若手インストラクターChris Mayson(クリス・メイスン)によるスムーズなストロークのコツ。

'Putt with "per-fect pace"'
by Chris Mayson ('Golf Digest,' February, 2017)

「あなたがパッティング不調に陥った時、最初に改善しようとする基本は何か?いいリズムを取り戻すのが一番である。

パットする時、"per-fect pace"(完璧なペース)と三音節で考えてほしい。これは振り子のカッチカッチ云う2拍子のようなものだ。バックストロークで"per-fect"、フォワードストロークで"pace"と念じる。ストロークが長くても短くてもリズムは同じであるべきだ。

【編註】リズムではなくテンポの話ですが、ツァー・プロのバックストロークからインパクトまでの所要時間を計測したデータによれば、距離の長短に関係なく、彼らの所要時間は常に一定だそうです。彼らの平均バックストロークは .67 sec、平均フォワードストロークは .27 sec。【参照】「パットの距離とストローク時間」(tips_76.html)

このリズムを使えば、ボールをソリッドに、そしてスムーズに打てる。これは、ボールの速度やインパクトでパターフェースの方向に影響を与えるギクシャクしたぎごちない動きを消滅させる。ボールをカップに届かせるための余計な努力は不要だと思えるだろう。

目前のパットの重要性を考えてコチコチになってはいけない。想念を、結果でなくプロセスに集中すること」

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日本語の文句を考えてみました。「優雅 に ストローク」。「に」を一拍とすれば三音節と同じです。試してみましたが、これ悪くないです。私個人にとっては「F--L--W(エフ・エル・ダブリュー)」と唱えるのも良さそうです。完璧な三音節。これは、以前の「日記」に記した「パッティングのグリップ圧とFLW」(tips_179.html)のストローク法に相応しいものです。

「超流動体的ストローク」(tips_157.html)に出て来た"super--fluid"(スーパー・フルイド)と唱える方法もあります。"super-flu-id"なので、これも三音節です。これは「スーパー古井戸」と発音すればいいので、難しくありません。ねっとりした超流動体を思い描きながらストロークします。

(April 12, 2017)

われ泣き濡れて木々と戯(たわむ)る

 

筆者Ray Floyd(レイ・フロイド)はThe Masters(マスターズ)とU.S.オープンに各一回、PGA選手権に二回優勝し、世界中で66回の優勝を遂げたプロ。

'The Elements of Scoring'
by Raymond Floyd with Jamie Diaz (Simon & Schuster, 1998, $20.00)

「木々は他のどのショットにも増して、想像力に富んだショットメーキングの機会を提供する。プロたちは木々の間から驚くようなショットを見せるが、プロはボールを低く、あるいは高く、そして劇的にカーヴさせるようなとてつもない能力を持っている。そういう能力を有していないアマチュアはプロの真似をすべきではない。

木の下でプレイヤーに何が可能かは、ライ次第である。クリーンなライであるか裸地であれば、ボールを操ることは(特に低いショットを打つ時には)比較的容易だ。だがボールがラフにあるとすれば、低く打とうとしても、カーヴさせようとしても、遠くに打とうとしても、いずれも困難である。木の下の濃いラフからは、フェアウェイにチップで出すしかない。

木の下の地面が木の葉や松葉に覆われている場合は、判断を迫られることになる。もしボールがそれらの上に座っているなら、フェアウェイバンカーと同じようにボールを摘まみ上げるのが一番だ。(警告:葉や松葉の上にクラブを下ろさないように。不安定な地面の上のボールは動き易く、ペナルティを受ける結果となる。同様に、ボールの周りの葉を取り除くのも、ボールが動く原因となる)。もしボールが部分的にか完全に落ち葉で覆われていたら、ショート・アイアンかウェッジで単純にフェアウェイに戻すのが最善である。

 

木がバックスウィングかフォロースルーを妨げる場合は、動きが身につくまでリハーサルを行い、尻込みせずに遂行するように。こんな風に制約がある時は、安全な途を取るのがベストである。

木を通り抜けるとか、迂回する、木の上を越えたり、下を潜り抜ける時にはいくつかの鍵がある。第一に、木の間を縫って飛ぶボールの飛行を視覚化することだ。この場面ではメンタルな能力が最重要であり、先ずショットを視覚化し、次いでそのショットを実現する動作を感じ取らねばならない。

【編註】自分が選んだクラブが木を直撃しないかどうか知る方法があります。写真のMichelle Wie(ミシェル・ウィ)のようにシャフトを木に向け、クラブフェースを踏みつけるのです。シャフトが弾道を教えてくれます。ただし、これを用いる場合の重要な注意事項がありますので、詳細は「ボールの発射角度を知る」(tips_115.html)」の追記をお読み下さい。

一般的に、木の間からのリカヴァリー・ショットは、正確さ本位で実行される。脚のアクションを少なくし、ルラブを短く持ち、スムーズにスウィングする。精密なアライメントのために、ターゲットラインの地面の上1メートル以内に中間目標を設定するのはいいアイデアだ。ソリッドなコンタクトと高さのコントロールが最も重要である。

木の下を潜り抜けるつもりであれば、間違いなく低く打てるクラブを選ぶ。ソリッドなショットをしても、木の枝に触れれば更なるトラブルに跳ね返るだけとなる。

木の上を越そうとするなら、課題は異なる。高度を達成するフル・スウィングが必要だ。その意味するところは、ボール位置をスタンス前方とし、クラブフェースをややオープンにし、スピーディにスウィングするということだ。望むべくんば、ボールの下に幾分か草があること。裸地から高いショットを打とうとするのは、上級者にとってさえリスキーである。

時折、アンプレイアブルの罰打を免れるべく、強硬手段を選択せねばならない時がある。ボールが木の幹にくっついている場合は、左手によるショットで安全に出せば充分だろう。このショットでは、クラブのトゥを引っくり返すか、パターの後ろ側を使う。何度か素振りをし、確実に左サイドでリリースする感覚を得ること。覚えておくべきことは、左手によるショットは単にフェアウェイに戻すことであって、50ヤード以上飛ばそうなどと試みないように。

 

この状況でのもう一つの選択肢は、ターゲットに背を向け、ボールのすぐ傍に立って右手一本でターゲットに向かってスウィングすることだ。もう一度注意しておくが、これh出口が開いている非常の際の手段である。

覚えておくべきこと。木は英雄的ショットの場でもあるが、先ず失敗した場合の対策も考えておくこと。『木々は90%空気だ』などと考えてはいけない。

一年に一回でいいから、林の中で上に述べたショットを練習してほしい。そんな状況に陥らないことを望むだろうが、いったんその状況に身を置いたら、『ああ、練習しておいてよかった』と思う筈だ」

【参考】
・「木越えはやめて転がすべし」(tips_86.html)
・「木の下からの脱出」(tips_116.html)
・「木の下をかい潜る低いショット」(tips_159.html)

(April 16, 2017)

高い木を越すショット

古い「日めくりtips」から選んだ秀作の一つ。

'Bill Kroen's Golf Tip-A-Day 2003'
by Bill Kroen (Andrews McMeel Publishing, 2002)

「高い木を越してグリーンに乗せたい場合のコツ。

・ボール位置は右踵の前方。
・急角度のバックスウィング。
・ボールをクリーンに捉える。
・高いフォロースルー。

ボールを上げようと掬い打ちしてはいけない。ディヴォットも取らないように。ボールは高く上がりソフトに着地する」

 

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市営ゴルフ場のNo.17(280ヤード)パー4では、150ヤード付近から急な上りで、ティー・ショットを右側に打ってしまうとグリーンへ65ヤードのところの大木に遮られてスタイミーになってしまいます。私の平均飛距離はグリーンまで140〜150ヤード前後ですが、スクランブル競技などで赤ティーから打てる場合は、残り120ヤードになります。平地での120ヤードなら私のクラブ選択は8番アイアンですが、左足上がりのライと木を越すために高いボールを打たねばならないので、7番で打ってみました。木を遥か20ヤードも高く越えて(=高過ぎ)、ボールは15ヤードほどグリーンをショート。6番で打ってみると、木の上10ヤードほどに高く上がり(=適切)、ぴったりピン傍に乗りました。

上の記事のコツに漏れている重要なポイントは、体重を終始右に保ち続けること。これがロフトを減らさず、ボールを高く上げるための基本です。

【参考】
・「木を越える高あ〜いショット」(tips_159.html)
・「高い木を越える」(tips_82.html)←ウェッジの場合
・「木越えのショット」(tips_124.html)

 

(April 16, 2017)

Mr. X(ミスターX)のポスチャー

 

Mr. X(ミスターX)の本は、徹底的に週一(あるいは月一)ゴルファーのために書かれていることです。ゴルフ名人たちのテクニックも紹介されるものの、「アマチュアはこうする方が妥当」…と、著者Mr. X自身の経験と仲間たちにテストさせた上でのアイデアが加えられているのが特徴です。【Mr. Xの正体については「『Mr. Xのゴルフ』のボール位置」(tips_181.html)を御覧下さい】

'Golf Lessons with Mr. X'は日本では『ミスターXのゴルフ』として翻訳・出版され、ゴルフ入門者だった私は熟読したものでした。最近、その続編が出版されていることを知り、古書を廉価で購入。期待に違わず、色々いいことが書かれていて満足しました。こうなると最初の本も読み返したくなり、古書を探したのですが、手頃なものが見つかりません。駄目元で当市の公立図書館にリクエストを提出してみました。図書館同士のネットワークで貸し借りしてくれるのです。ほぼ諦めかけていた頃、図書館から「御希望の本を借り受けることが出来ました」との連絡。懐かしいイラストや写真と再会して感激しました。

'Golf Lessons with Mr. X'
by Mr. X and 'Golf Monthly' (Pelham Books, 1968, $4.95)

「ゴルファーたちはゴルフの秘訣を探し求めて来たが、間違った場所を探していた。ポスチャーが基本となる秘訣であり、それが確立されれば、あなたがプロから受けるレッスンが初めて実を結ぶのだ。

背骨の形は、ゴルファーのアクションに深刻な影響を与える。もし、背骨の下端が湾曲していると、尻の大部分は背骨の軸から外れてしまい、軸の回転に対し大鎌のようなカーヴで動くことになる。この大鎌のようなアクションは肩、腕、そして最後にクラブヘッドへと伝えられ、そのスウィング・プレーンを皿のようにしてしまう。

 

Gary Player(ゲアリ・プレイヤー、写真の左の人物)を見よ。直立している時、彼の背骨の下部は真っ直ぐで、骨盤は前部で上向いており、臀部と腹部は出っ張っていない。これが彼の自然なポスチャーだ。このポスチャーを取れる者が名人級になれる。

幾人かはこのポスチャーを持ってこの世に生まれて来るが、大多数はそうではなく、子供時代には正しいポスチャーが取れても、大人になる迄にそれを失ってしまう。その理由の多くは文明の影響である。車の椅子やふかふかの肘掛け椅子等の柔らかい物に囲まれての生活が、コルセット筋(腹横筋=腹部を引き締める筋肉)を弱め、腹を落下させ、背骨を底部に引っ張る。われわれの骨格構造は四つ足で歩くように作られていて、それを矯正する運動無しでは、背骨が"S"の字のように湾曲してしまう。【編註:背骨がウエストのところで内側にカーヴし、臀部で外側にカーヴしている脊椎】この"S"の字のポスチャーで良いゴルフをすることは肉体的には不可能である。

"C"の字のように全体に丸く湾曲した背骨【編註:猫背】は、座りっ放しで前傾して作業する人に見られるものだが、これもポスチャーに問題を生じる。背骨の外側の筋肉は過度にストレッチされ、内側の筋肉は縮んでいる。この体形のポスチャーでまずまずのゴルフをすることは不可能だ。

 

背骨の下端が真っ直ぐであること【編註:右の写真のAdam Scott(アダム・スコット)の背のように】は、いいゴルフをするために必要不可欠なものだ。このポスチャーはゴルフのアクションを単純化する。これだと、腰はスウィング・プレーンに沿って正しく回転する。

50年前、私はポスチャーの重要性を悟り、ゴルフを始めてから六年後の49歳の時、二時間の運動を八週間続けて、その数週間後にはボギー・ゴルフが可能になった。健康に問題がなく、肥満体でもなければ、私のような運動をすることによってよいポスチャーを確立し、かなり上達出来る筈だ」

【参考】
・「Mr. X(ミスターX)のゴルフ」(tips_167.html)
・「Mr. X(ミスターX)の脊椎矯正体操」(次項)

 

(April 19, 2017)

Mr. X(ミスターX)の脊椎矯正体操

Mr. X(ミスターX)推奨の、"S"の字に湾曲した背骨を真っ直ぐにする体操。

[spine]

'Golf Lessons with Mr. X'
by Mr. X and 'Golf Monthly' (Pelham Books, 1968, $4.95)

「ゴルフに上達するには正しいポスチャーが取れないと無理である。現代人の多くは、コルセット筋(腹横筋=腹部を引き締める筋肉)、棘筋(きょくきん、脊椎筋)、そして脚の筋肉などの張りを失っている。人々の背骨は上端と下端がカーヴし、"S"の字のように変形している。その背骨を真っ直ぐにする体操を紹介しよう。

あなたを勇気づけるために、私の経験を書いておく。私はゴルフを始めてから六年後の49歳の時に以下に述べる体操を毎日二時間行い、八週間続けた。一ヶ月目の終わりにはボギー・ゴルフが出来るようになった。74歳の現在、この体操抜きで6オーヴァー以下でプレイしている。だから、これは大方のゴルファーに役立つものと信ずる。最初の週は、弱った筋肉のせいで多少辛いかも知れないが、筋肉が強化されるにつれ、筋肉が活性化するのに気づく筈だ。

猫背の矯正—背骨の内部の筋肉を収縮させ、背骨の外側の筋肉をストレッチする

 全身を伸ばしてうつ伏せになり、両腕は横に沿わす。 初期には、毎日八回頭と肩を上げる。毎週回数を増やし、30回まで行う。30回になったら、両手を頭の下にし、両肘を肩の横に真っ直ぐ突き出す。頭と肩の持ち上げを、最初は12回から始め、次第に増やして負担にならない程度に30回まで行う。

【編註:Mr. Xはどれだけ長く頭と肩を上げていればいいかに触れていませんが、「腰痛体操」では10秒となっていますので、これを参考にしましょう(以下の体操も同じ)】

コルセット筋の強化

 伸び伸びと仰向けに寝て、両腕は横に沿わす。両脚を伸ばしたまま、両足を床から30センチ上げる。これが弱った腹筋の負担となるようなら、一回に一本の脚だけ上げる。後には二本一緒に上げるように。先ずは一日八回から始め、後には30回まで増やす。

腹筋の強化 (これは上の(1)と(2)を開始後、一ヶ月したら始める)

 伸び伸びと仰向けに寝て、両腕は横に沿わす。ウエスト(胴のくびれ)から上体を起こし、直角にする。次いで、ゆっくり戻す。第一週目は毎日八回行い、次第に30回まで増やす。

横隔膜筋肉の強化

 直立し、深呼吸して数秒間待ち、その後息を吐く。

両脚の筋肉の強化

 直立し、両手を胸の前に水平に上げ、しゃがんだり立ったりを繰り返す(右の写真)。

 

 

[icon]

 

70歳代となったMr. Xはスクラッチ・プレイヤーとなり、全ゴルファーのたった1%だけが達成出来る偉業であるエイジ・シュートで廻るのが日常茶飯になったそうです。余談ですが、この体操は腰痛体操に近似しています。

【「腰痛体操」より】
「背骨は骨盤の上に載っていますが、その骨盤は、前後を腹筋と背筋によって吊り上げられています。中年太りになると、お腹がたるんで腹筋が十分に働かなくなります。このため、背筋に負担がかかるようになり、しかも、腹筋が弱った分、背筋による骨盤の後方を引っ張り上げる力が勝るために、骨盤が前傾を強めて行きます。この状態では、その上に乗っている背骨(腰椎)も前方に強く弓なりに反る形になります。中年太りでお腹が突き出た人の腰では、内部でこのような変化が起きており、それが腰痛の原因となるのです」

つまり、「Mr. X(ミスターX)の脊椎矯正体操」、「腰痛体操」どちらを実行してもお腹が凹んで腰痛の予防が出来、その上ゴルフにも上達するという一粒で三度美味しい(^-^)成果が期待出来るわけです。

【参考】
・「Mr. X(ミスターX)のゴルフ」(tips_167.html)
・「腰痛体操」(tips_22.html)

(April 19, 2017)

Runyan(ラニャン)グリップ応用篇

 

[Runyan]

私のパッティングが低迷していました。「3(スリー)ジョイント・ストローク」(tips_169.html)は理論的には正しく、長い間いい成果を挙げていたのですが、ここのところ読みが悪いのか、何が悪いのか不明ですが、ちょっと錆び付いてしまいました。で、グリップだのポスチャーだのを色々試しているうちに、たまたま手が勝手にRunyan(ラニャン)グリップになり、しかも正確にストローク出来るようになったので、つい浮気することになりました(^^;;。

「手首封じのRunyan(ラニャン)グリップ」(tips_143.html)で紹介したPaul Runyan(ポール・ラニャン、1908〜2002)のパッティング・グリップは、彼の説明通りにグリップしようとすると、45°とか90°とか角度をチェックするのが面倒でした。で、自動的にそうなる方法を考案し、さらに正確度を増す独自アイデアも付け加えました。

[Runyan grip] [Revised_Runyan]

《Runyanグリップのおさらい》

左側の写真Aが、両掌を身体の正面を向けるのが特徴のRunyanグリップ。Paul Runyanは右手が下になる普通のグリップですが、この写真では編者愛用のレフトハンド・ローに変えています。Paul Runyanは次のように云っています:「グリップした手を開いた時、写真Bのように掌はどちらも45°の角度で斜めに交差する。この角度は 、両手をシャフトと45°にするために極めて重要である(両方の前腕部が形成する角度は右の写真のように90°)。このようにグリップすれば、ストロークの際に両方の手が過度にクローズになったり、オープンになったりすることを防げる」

《Runyanグリップのグレードアップ》

右側の写真の掌の緑色の線は、Paul Runyanの本のイラストに出て来るパターの中心線です。どちらかと云うと、フィンガーで握る感じ。

同じ写真の赤色の線は生命線です。私はフィンガーではなく生命線で握るのが妥当だと考えます。《生命線でグリップせよ》は、最近のインストラクターたち、特にTodd Sones(トッド・ソーンズ)、Dave Pelz(デイヴ・ペルツ)、Stan Utley(スタン・アトリィ)などのインストラクターたちが一様に説くパッティング・グリップの重要な要素です。ただし、生命線でパターのどこを握るかは二通りに分かれます。どちらも両前腕は自動的に90°になりますが、正確度が異なります。

a) 右端の写真の黄色点Aはパター・ハンドルの左上角。ここに左掌の生命線を当てる方法。【右手の生命線は右上角に当てる】

 この方法は自然にパター・シャフトと両前腕が一直線に揃うものの、結果は左右の掌が向かい合う普通のグリップと変わらず、両掌が身体の正面を向くRunyanグリップとはかけ離れたものになってしまいます。

b) 同じ写真の黄色点Bはパター・ハンドルの左下角で、ここに左掌の生命線を当てる。【右手の生命線は右下角に当てる】(厳密に云えば、パター・ハンドルの底部は丸まっているのが普通で「角」はないのですが…)

 写真のように左手の生命線を黄色点B(左下角)に合わせ、右手も同じようにグリップします。こうすると自然に左右の掌が45°で交差しますので、角度を気にする必要はなくなります。Paul Runyanの時代には生命線という概念は多分一般的でなかったのでしょうが、いまPaul Runyanが生きていれば、私と同じことを示唆するのではないでしょうか。左手の生命線がパター・ハンドル左下角、右手の生命線がパター・ハンドル右下角に当たるようにして握ると、手首の動きを殺し、方向性が完璧になります。

オリジナルのRunyanグリップはパター・シャフトの延長線と両前腕が重なるようにしますが、それを文字通り実行するとグリップエンドをかなり下に押さえつけないといけません。《手首を弓なりにすると手首の角度がロックされる》という法則を利用すれば、もっと手首を殺すことが出来ると思い、私はRunyanの指示に逆らい、手を高く構えてみました。しかし、これはうっかりすると肩を強ばらせ、パットをショートさせたりプルしたりする弊害を生みます。で、肩を怒らせない程度に手を上げることにしています。

室内練習では驚くほど正確にストローク出来ました。ストローク法は完璧なので、後は読みと距離感次第ということになります。本番のラウンドでこのグリップを使ってみました。慣れないせいで最初の9ホールでは鳴かず飛ばずでしたが、No.10になって4メートルのバーディ・パットを沈めることが出来ました。また、短いパットには驚くほど威力を発揮しました。

その次のラウンドのNo.14で、3メートルのバーディ・パットに成功。

その後のラウンドで、距離はぴったりなのに数センチ左へ逸れるミスを連発しました。帰宅して鏡の前でストローク動作をチェック。このグリップをすると、自然に肘が身体に近づきます。そのままだとインパクト以後フォロースルーにかけて、左肘を基点としてパターを廻してインサイドに引く軌道になり易いことが判明。Paul Runyanは円弧型のストロークをしていたのでそれで良かったのでしょうが、ストレート・ストロークの私には大問題。「3(スリー)ジョイント・ストローク」同様、左肘をターゲット方向にチキン・ウィングのように突き出したいところですが、これは体勢的に苦しい。しかし、解決策を見出しました。

普通に上のグリップをします。前腕と肩が緊張しちと苦しい感じ。そのまま上体を屈めて、グリップエンドが胸にほぼ接するくらいの姿勢にすると、あら不思議、両肘が自然にリラックスします。その両肘をターゲットラインに沿うように広げると、両前腕の角度は自ずとPaul Runyanが理想とする90°になります。写真のMichelle Wie(ミシェル・ウィ)は、上体をほぼ90°に折っていますが、私の場合、鏡で確認すると45°程度に折る感じ。これで前腕と肩の緊張はゼロになり、両肘もストレート・ストロークに最適の体勢となります。

しかし、この体勢でも手主導のストロークをしたのでは正確無比と云うには今一歩です。左肘でターゲットラインと平行に後方に押すバックストローク、同じように左肘で前方に引くフォワード・ストロークが望ましい。これが「Runyanグリップ応用篇」を完璧にしてくれます。

ある日のラウンド、私が1パットでホールアウト出来たのはたった五つのホールだけでしたが、チームのみんなにはとても印象的だったようで、口々に褒めそやされました。それらは4メートル、2メートルが二つ、1.5メートル、1メートルでした。読みも良かったのですが、読んだ通りストローク出来たのはこのグリップのお蔭です。このように、短いパットには抜群の威力を発揮します。また、長いパットを寄せる時の方向性にも目覚ましいものがあります。最近のラウンドではNo.7(160ヤード)パー3の8メートルの上りスライス・ラインのバーディ・パットの成功を助けてくれ、その数日後、No.3(270ヤード)パー4のフックラインの6メートルのバーディ・パットを沈めることも出来ました。

その後、このグリップでハーフだけですがスコアは4オーヴァー、パット総数11で廻れました。チップインは無しで、計7ホールを1パットでしのぐことが出来たのです。このラウンド終了後、同じチームでこの日のキャプテンを務めた男が、「エイジ、あんたのパッティング・グリップはどっから仕入れたんだ?」と聞き、私が説明すると、実際にグリーン上で試しました。"Old dog who can't learn new tricks"(年老いた犬に新しい芸を覚えさせることは出来ない)と云われるほどで、シニア・ゴルファーが他人のスタイルに興味を持つことは非常に稀ですし、なおかつ試そうなどとは滅多にしません。風変わりなグリップというだけでなく、実績を挙げたからこそ気になったんだと思われます。

 

【参考】
・「Paul Runyan(ポール・ラニャン)のパッティング」(tips_96.html)
・「手首封じのRunyan(ラニャン)グリップ」(tips_143.html)

(April 23, 2017)

最適のパットの強さは?

Johnny Miller(ジョニィ・ミラー)によるパッティンの距離コントロール。

'Defining perfect putting pace'
by Johnny Miller ('Golf Digest,' une 2002)

「パッティングに科学的側面を導入したエクスパートであるDave Pelz(デイヴ・ペルツ)は、(もしカップがなければ)ボールがカップを17インチ(約43センチ)通過する強さが完璧な強さである【編註:入る確率が高い】と云っている。一般ゴルファーはそのDave Pelzの助言が役立つだろう。もしボールがカップの広い部分にかかれば沈むだろうし、ショートすることを防いでくれるからだ。

しかし、パッティングの名人たち—とりわけJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)、Ben Crenshaw(ベン・クレンショー)、Bobby Locke(ボビィ・ロック、1917〜1987、南ア)などは、カップを【編註:失敗しても】たった10センチ通過する強さでパットする。これだと、ボールがカップの僅かな端っこを捉えても、ボールはカップに入る。この強さを実現するにはとてつもないタッチが必要だが」

(April 23, 2017)

力まずに余分の飛距離を得る

 

'Don't be afraid to break the rules'
by editors of 'Golf Magazine' ('Golf Magazine,' June 2001)

「あなたがストレートなボールを打てるゴルファーなら、数ヤードのエクストラの飛距離を得るために、ちとまともでない手段に訴えても問題はない。

・右を狙ってプル・フックを打つ

 プル・フックは他のどのショットよりも長い距離が得られる。その右から左へのコースと低めの軌道が、余分な数ヤードを生み出す。

 プル・フックを打つには、かなり右(多分、ラフの部分)を狙い、僅かにクラブフェースをクローズにし、フェアウェイにプルする。やや手打ち風のスウィングをするため、上方へのフィニッシュでなく、両手が左肩の横(上ではない)に来るようにフィニッシュする。このショットを完璧に実行するには練習が必要だ。

 これはコントロールが難しいショットだから、あなたが普通に打つショットとすべきではない。しかし、覚えておくと、必要な時に役立つショットである。

・3番ウッドでシャットダウン・ショット

 ドライヴァーが不安定で3番ウッドでティー・ショットしている人でも、飛距離を犠牲にすることはない。次の方法を試されたい。

 ボール位置は通常の左足踵の前方ではなく、スタンス後方に数センチ移動し、ハンド・ファーストの構えをとる。この体勢は3番ウッドのロフトを減らし、ドライヴァーのロフトに近づける。スタンス後方のボール位置は切れ味のいいコンタクトを助けてくれる。インパクトで両手がボールに先行しているイメージを抱く。通常の3番ウッドのティー・ショットよりもフラット目でパワフルな軌道は、ドライヴァーに匹敵する飛距離をもたらす」

 

(April 30, 2017)

ドライヴァーのカンニング打法

 

インストラクターJon Tattersall(ジョン・タターソル)によるtip。

'Add some "zip" to your drives'
by Jon Tattersall ('Golf Magazine,' January 2015)

「『ドライヴァーで上向きに打てば高い発射角度を生み、スピンが減り、飛距離増を達成出来る。だから、上に向かって打てばよい。超簡単』

おーっと、お説ごもっともだが、それは万人に通用するものではない。上昇軌道で打つために身体の体勢を整えるには、目に映る以上の運動能力を必要とするのだ。それが、Rickie Fowler(リッキィ・ファウラー)に出来て、あなたに出来ない理由である。

最も難しい動きは、ダウンスウィングの初めでターゲットに向かって腰を横に動かすことだ。この動きは下半身を上半身に僅かに先行させて上方への打撃をセットする。それを簡単に行うためのカンニング・ペーパーをお見せしよう。

通常のアドレス体勢を取り、それから左腰をターゲット方向に動かす。誇張気味に云えば、ズボンのファスナーがシャツのボタンより明らかに先行している感じ。これは、本来必要なスウィングのトップからの腰の水平移動抜きで上方への強打を身体にプリセットする。

単純に、アドレスからインパクトまで、ズボンのファスナーをシャツのボタンに先行させながら、バックスウィングで後方へ、ダウンスウィングで前方へと回転すればよい。そうすれば、自動的にボールを上昇角度で打つことが出来る。インスタントの飛距離増。『ずるい人は勝てない』というのは正論だが、公然とカンニングして数ヤードを手に入れるのは合法である」

 

[icon]

何のことはない、これは「下半身主導のダウンスウィング」に他なりません。これはゴルファー誰しもが実行すべきことと思われます。

【参考】「腰の動きで飛距離を伸ばす」(tips_116.html)

(April 30, 2017)

円盤投げに学べ

筆者Jerry Mowlds(ジェリィ・モウルズ)はオレゴン州の某有名コースのインストラクター。

'Load and Fire'
by Jerry Mowlds ('Golf Magazine,' May 2000)

「あなたのウッドとアイアンにもう少しバキューン!という要素を加えたかったら、スウィングする時に円盤投げを模倣すればよい。捻転と振り解(ほど)く動きは円盤投げの特徴だが、それはまたゴルフ・スウィングでパワーを生む要素でもある。

プレイヤーがターゲットへと体重移動しつつ、上半身の捻転を振り解く動きがスピードとパワーを与える。実際、ゴルファーは円盤投げの選手のフォロースルーの右手の動きを真似すべきだ。掌を地面に向けて回転させながら、インパクト・ゾーンで上方へとスウィングする。この、右前腕が左前腕を覆いながらアップ・アンド・ダウンする動きが、パワフルなドローを生み出す」

【参考】YouTube video「実戦で飛ばす!円盤投げのすべて!」https://www.youtube.com/watch?v=taONtp9nKv0

 

(April 30, 2017)

リラックスして打つ方法

'One Move'(ワン・ムーヴ)という著作で有名なインストラクターCarl Lohren(カール・ローレン)の、力まずにラウンドするコツ。「左肩からバックスウィングをスタートせよ」というのは、彼の持論です。

'One Move to Better Golf'
by Carl Lohren with Larry Dennis (Golf Digest, Inc., 1975)

「私は本番のラウンドでは、短いショットとパットを除き、素振りすることを推奨しない。

先ず第一に、フル・スウィングの素振りは、即座の疲労と、蓄積されてラウンド後半の疲労へと繋がるからだ。筋肉は活動から回復するのに数秒必要とする。あなたがハードな素振りの後、すぐさまボールに向かうと、いつもより劣った能力の筋肉でスウィングすることになる。また、あなたがフルスウィングの度に一回か二回の素振りをすれば、素振りをしないプレイヤーに較べ二倍か三倍スウィングする勘定になる。終盤の数ホールに達するまでにはあなたは疲れ切っており、よいスウィングをするのに困難を感じる筈だ。過度の素振りは正しくリラックスすることを妨げてしまう。

"Play within yourself"【註】という表現を聞いたことがある筈だ。それは毎ショットを渾身の力でぶっ叩いたりしてはいけないという意味であり、誰から誰に対してでも与えられる最良の助言である。

【編註】このフレーズは「自分の能力の限界内でプレイせよ」、「背伸びするな」、「自分に出来ないことをしようなどと考えるな」の意。

私がよく経験していることだが、初級・中級そして時々はロー・ハンデの者でさえ、彼のバッグに手を伸ばし、グリーンに届かせるには完璧なショットをしなければならないクラブを抜き出す。あなた自身に重荷を負わせなくとも、このゲームは充分難しいのである。どうして、しゃかりきにならずともよく、多少ミス・ヒットしても大過ないクラブを選ばないのか。

多少オーヴァー目のクラブを手にすれば、フル回転のスウィングをしなくて済むし、即効の利益を生む。力まずともよいと知って上体はリラックスし、左肩からの効果的なバックスウィングのスタートを準備する。それは同時にリズムとタイミングを向上させるので、これまでになくボールを遠くに打つことになっても不思議ではない。私が長い歳月目撃して来たことだが、ゴルファーが彼の生涯最長のドライヴを放つのは、イーズィにスウィングした時であるのは、上のような理由からである。

 

リラックスした態度はまた、エネルギーを温存する。もし、野球のピッチャーが毎回ハードに全力投球したら、彼はじきに疲れてしまい、コントロール不能になってしまう。バッターが毎回ホームランを狙うのも同じことだ。彼はいくつかホームランを打てるかも知れないが、三振の数の方が多いに決まっている。毎回ホームランを打とうとすることが、ラウンド後半にさしかかって、あなたがミス・ショットの犠牲者となる原因だ。優れたゴルファーや、ゴルフで生計を立てている者は、3/4の努力でスウィングすることを学んでいる。そうしないで、常にフル・ショットをしていると、いずれ彼は右サイドで開始するスウィングをし始め、コントロール不能になってしまう。

イーズィに打てと云っても、スウィングを遅くしたりソフトにすべきだと云っているのではない。クラブを数インチ短く持って、短めのスウィングをして貰いたい。これがベストのメカニカルな過程である。

ボールをイーズィに打つには、それぞれのクラブで何ヤード打てるのか知っておくのが重要だ。通常のコンディションで、結果を知ることの出来る場所を選び、一本のクラブで25〜30発打ち、最長と最短を除き、平均のヤーデージを得る。ショート・アイアンを目一杯の力で打ち、他のクラブとの飛距離の釣り合いが取れなくなるようなミスを犯さないように。

私の場合、7番アイアンで145〜155の飛距離だが、常にイーズィに打てる選択肢を求める。だから、残り155ヤードなら6番でイーズィに打つ。お判りだろうが、人が7番アイアンを打ってる時に8番で打ったからといって褒美が出るわけではないのだ。長いクラブでリラックスして打てることこそ、価値ある御褒美である」

【参考】
・「'One Move'(ワン・ムーヴ)」(tips_4.html)
・「Carl Lohrenの'One Move'(ワン・ムーヴ)修士課程」(tips_65.html)
・「Carl Lohrenの'Next Move'(ネクスト・ムーヴ)」(tips_10.html)
・「ゴルファーよ、気楽にプレイせよ」(tips_154.html)

(May 03, 2017)

Johnny Miller(ジョニィ・ミラー)のプレショット・ルーティーン

Johnny Miller(ジョニィ・ミラー)はU.S.オープン(1973)と全英オープン(1976)に優勝、Mastersで三度(1971, 1975, 1981)二位タイ、PGAツァーにおいて計25勝を挙げ、現在はNBC-TVのゴルフ中継解説者。

'Pure Golf'
by Johnny Miller with Dale Shankland (Doubleday & Company, 1976)

私は素振りというものを信じない。どのショットを打つ前も私は心の中でスウィングする。それによってエネルギーも節約出来る。そもそも、ゴルフ・スウィングはマスル・メモリで構築されるものだ。だから、あなたがひどい素振りをすれば(行き当たりばったりにスウィングする傾向があるため、それはしばしば起りがちなことだ)、本番で同じようにひどいスウィングでボールを打ったりしかねない。私の場合、せいぜい腰の高さのハーフ・スウィングが素振りに近いものだ。それは、これから打とうとするショットのフィーリングを得、手首や手の緊張を和らげるためのものだ。なお、素振りをしないツァー・プロの数は非常に少ない。

私はワグルもしない。その代わり、"lift and look"(持ち上げて、見る)というタイプの動作をする。クラブをほんの一寸の間ボールの上に持ち上げ、同時にターゲットを見る。目をターゲットからボールに戻しつつ、クラブをボールの後ろの地面に落とす。私はこれを四回繰り返す。この間、私は常に動き続ける。私は《銅像のように突っ立っていてはいけない》と教えられていたのだ。パンチを繰り出そうとするボクサーのように活発でなくてはならない。さもないと、あなたにチャンスはない。これが、私が体重を左右に動かし続ける理由である。私はほぼスウィングの助走を始めており、それが静的な位置からスウィングへの推移を容易にしてくれる。

最後であり、かつ私のルーティーンにとって欠くべからざる動作は、スウィング開始の引き金となるものだ。絶え間ない動きの終わりで私の右足が地面に戻った瞬間、私は体重の僅かな量を先ず左に移動させ、その後右に戻す。これは膝で遂行され、単純に右膝を内側に押し込み、左へ反転させる。それは両手の前方への(ほとんど誰にもそれと判らない程度の量の)動きと一体化した動きであり、膝のアクションに誘発されるものだ。これを技術的には『フォワードプレス』と呼ぶ。私はそれを意識的にやっているわけではないのだが、下半身からスウィングへのスムーズな推移は、膝の左右への揺れによって作り出される。上半身のスムーズさは両手の、微かな左右への動きによって作られる。繰り返す:膝の動きがスウィングの引き金となれば、両手のフォワードプレスは自動的に行われる。

 

私のアドレス・ルーティーンに書き添えておきたいポイント。それは膝を左右に揺らすことによる始動のアクションについてだ。これは私個人の性癖というものではない。もしあなたが体重を両足に平均に乗せた状態から、すぐさまバックスウィングに突入するとしたら、とてもぎごちない筈だ。あるいは、右膝を少し内側に押し込んだ状態で立っているとすると、それは体重を右よりも左に多めに掛けているわけで、そこからバックスウィングを始めるのはもっとぎごちないだろう。どちらの場合にもぎごちないフィーリングを生じる立派な理由がある。バックスウィングを遂行するには、体重は右足に(左ではない)掛かっていなくてはならない。右足に体重を乗せる最も簡単な方法は、左足に乗せた体重を右に戻すことだ。右膝は左方向へ押し込む引き金となり、右膝が戻り始める時、それが左サイド全体をバックスウィング動作に引きずり込むのだ」

(May 03, 2017)

Andy North(アンディ・ノース)のグリップ

「またグリップか!」と云わず、まあ読んでみるだけ読んでみて下さい。何せ、著者Andy North(アンディ・ノース、1950〜)は「グリップが悪ければ上達はあり得ない」と断言しているほどですので。

1978年と1985年の二回U.S. Openに優勝しているにもかかわらず、Andy Northの名はあまり知られていません。彼は現在、CATVのスポーツ・チャネルESPNのゴルフ中継の解説者として活躍しています。紳士的な顔立ち、穏やかな声音、真摯なコメントが特徴です。これは、彼が推奨するグリップの方法。

'Long and the Short of It'
by Andy North with Burton Rocks (Thomas Dunne Books, 2002, $24.95)

「ロング・ゲームに上達する秘訣の一つは、よい基礎を構築することだ。余りにも多くの人々が、本や雑誌で読んだゲームを向上させる150もの異なるtipに囚われている。もし、人々が正しいグリップからスタートすれば、彼らのゴルフ全体が良くなるのに…。

私の成功の秘密は自分にとっての自然なグリップの発見だった。それは、私の高校時代、インストラクターManuel de la Torre(マヌエル・デラ・トーレ)【註】と出会って起った。

【編註】Manuel de la Torreはスペインのゴルフ・インストラクターの息子として生まれた。彼はMilwaukee C.C.のクラブ・プロとして働くかたわら、PGAツァーに参加して数々の優勝を遂げ、なおかつコーチとしてプロやアマを教え、マスターズ優勝者、U.S.女子オープン優勝者、全英女子オープン優勝者などを輩出し、世界ゴルフの名誉の殿堂入りを果たしている。彼は、スウィングに要する2.5秒の間のクラブの動きに焦点を当てるインストラクションで知られている。

私は、一般ゴルファーのほとんどが正しくグリップしておらず、正しいグリップを見つけることすら不可能にしていると固く信じている。正しくないグリップをしている大方のゴルファーは、彼らがグリップを変えるまで、どんなに努力しようが絶対にスコアを減らすことは出来ない。私の意見に耳を傾けるか、そうでなければ上達しないことを愚痴ってはならない。

右利きのゴルファーは、クラブを左手の最後の三本指(中・薬・小)で握ってそこで圧を加え、左掌の小さな膨らみ(ヒールパッド)に当てるべきだ。左手の親指と人差し指の間に出来る"V"は頭の右側を差す。右掌の谷間【編註:生命線と思われる】は左手の親指をぴったり覆う。そして、右手の"V"は左手の"V"と同じ方向を差す。グリップ圧は左手にあり、右手は実のところクラブを軽く握るに過ぎない。

 

もし誰もがよいグリップをし、誰もが正しい位置に置かれたボールに向かって良いセットアップをし、正しい方向を狙えば、誰もがゴルフ・スウィングの研究などしなくても、劇的に上達することだろう。良いグリップは良いプレイに続く一本道である」

【参考】「グリップの研究」(tips_181.html)

(May 07, 2017)

Mr. X(ミスターX)の左手親指考

Mr. X(ミスターX)による最初の著作から。

[Left thumb]

'Golf Lessons with Mr. X'
by Mr. X and 'Golf Monthly' (Pelham Books, 1968, $4.95)

「手の親指、特に左手の親指はゴルファーにとって非常に重要である。Sam Snead(サム・スニード)、Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)その他の名人級は、親指が先端の関節から逆“く”の字に反り返るくらい曲がる。一般ゴルファーはせいぜい70°ほど曲がるだけである。

【編註】右の写真は、編者の左手親指を精一杯曲げたところ。原著のイラストでは、名人級の親指先端が緑色のように曲げられています。

なぜ、親指の曲がり具合が必要なのか説明しよう。ヴァードンのオーヴァラッピング・グリップを前提に話を進める。

名人たちのスウィングのトップの写真を研究すると、左腕とシャフトとの間に鋭い角度が見られ、また彼らの左手首は左前腕部とおよそ一線になっていることに気づく。一般ゴルファーのように、シャフトの上や下で曲がってはいない。名人たちの左手首が、トップでこの理想的な位置に達する事実は、彼らの左親指が異常なほど曲がる証拠である。そしてそれは楔(くさび)のように働くのでも、シャフトに跳ね返るバネのように動作するのでもない。

あなたの親指の曲がり具合が充分でないなら(その角度は変えられない)、そのハンディキャップを克服する手段を見つけなくてはならない。あなたには二つの選択肢がある。
1) バックスウィングを短くし、左手親指がシャフトの内側および下側で左手首を曲げるのを妨ぐようにする。
2) ヴァードン・グリップではなくインターロッキング・グリップにする」

【参考】
・「Mr. X(ミスターX)のゴルフ」(tips_167.html)
・「Mr. X(ミスターX)のポスチャー」(tips_183.html)

(May 07, 2017)

Mr. X(ミスターX)のグリップ

Mr. X(ミスターX)の最初の本に書かれたグリップの方法。

'Golf Lessons with Mr. X'
by Mr. X and 'Golf Monthly' (Pelham Books, 1968, $4.95)

「グリップと腰のアクションには相関関係がある。全ての偉大なゴルファーたちは素早い腰のアクションをする。一般ゴルファーは遅く、しかも正しくないアクションをする。【腰のアクションについては別項「Mr. X(ミスターX)の スウィング」(近日公開)で触れる】

名人たちは腰のアクションに、フィーリングによってグリップを合わせる。彼らはその事実に気がついていないと私は考える。なぜなら、彼らは試行錯誤によって最終的に最適のグリップを見つけるからだ。

名人の素早い腰の動きはダウンスウィングで活発であって、彼は左手の三つのナックル、右手の二つのナックルが見えるグリップをする。彼の臀部総体は、インパクト時に両手に遥かに先行する。

一般ゴルファーの多くは背骨から分岐した【編註:真っ直ぐでない】臀部の持ち主であり、その臀部は背骨の軸の背後で大鎌のような動きをし易いのだが、その動きはかなり遅過ぎ、方向性も悪い。この欠陥を相殺するには、ゴルファーは多くて左手の二つのナックル、右手の三つのナックルが見えるグリップを用いるべきだ。これは名人たちのグリップに較べウィークなグリップと看做されるだろうが、大体において貧弱な腰のアクション、左手のコントロールの欠如、ダウンスウィングでの早過ぎる肩の回転の可能性などを相殺してくれる。

一般ゴルファーがスライス、フック、ゴロなどを打つと、もっとストロング・グリップにしろなどと助言されるのが常だが、それは改善策とはならない。そういうプレイヤーの悩みへの解答は、もっと直立し、ダウンスウィングでターゲットラインのインサイドへ(斜めの)左腰の素早いアクションを生み出すことだ。そして、バックスウィングでは右肩を極端に高くしておく。

 

多くの一般ゴルファーは、ダウンスウィングで腰を左へ移動せよと云われると、ターゲット方向へ腰を移すアクションをする。これは間違いだ。左腰はターゲット方向へではなく、ターゲットラインから斜めに(インサイドに)遠ざかるように動くべきである。私が提唱する、とても素早い腰のアクションを実行する時のみ、グリップをストロングにすべきだ。

両手がシャフトの上で双方とも正しく調整されたら、右親指の膨れた筋肉は左人差し指のナックルから1/2インチ(1.27センチ)しか離れていない筈だ」

《クラブの持ち方》

一般ゴルファーの大多数は、クラブの握り方に無頓着である。以下が正しい持ち方の練習法。

1) クラブを選んだら左手で持ち、左脚外側の前方に持って来て、シャフトを肩との正しい角度のプレーンにし、ヘッドを地面につける。
2) クラブを身体の中央に持って来る。右手を次の要領で添える。
3) 右手の谷間(人差し指の根元から手首の真ん中にかけて)は左親指の真上に置かれ、右親指の筋肉の膨らみは左人差し指のナックルから1/2インチ(1.27センチ)以内であること(これ以上離してはならない)。
4) 右手の小指は左人差し指の真ん中の関節の真上に置かれ、右親指はシャフトに斜めに置かれる。
5) 右手の指を閉じ、右人差し指の真ん中の関節をしっかり(鉤のように)シャフトに押し付ける。
以上で、ヴァードンのオーヴァラッピング・グリップが完成した。

さらに、私のお薦めの調整法がある。左手の位置が確定した時、左手とクラブを一緒に持ち上げて垂直にし、シャフトが左の指の根元に沿って一線になるようにする(斜めではなく)。この調整はアドレス時の左手をしっかりさせるだけでなく、ダウンスウィングでのレイトヒットの角度の確立をも助けてくれる。斜めのグリップは余りにも早くレイトヒットの角度を広げがちだ【編註:コックが解け易いの意】。特に左手親指の曲がりが少ない人の場合には」

【参考】
・「Mr. X(ミスターX)のゴルフ」(tips_167.html)
・「Mr. X(ミスターX)のポスチャー」(tips_183.html)

 

(May 07, 2017)

スプラッシュ型バンカー・ショットのコツ

一日二時間、計10日で20時間のバンカー・ショット練習を充分長いと云えるかどうか知りませんが、これまでに体得したコツを記しておこうと思います。以下は全てグリーンサイド・バンカーについてのものです。

スプラッシュ型は爆発ではなく、1センチぐらいの深さの砂を水平に浅く掻くメソッドです。レーキで右から左へ砂を均(なら)す動作に似て長めのディヴォットを取ります。Byron Nelson(バイロン・ネルスン)は「リンゴの皮のように、浅く剥く」と云っています。云い得て妙です。

さて、今のところ私が発見したコツは次のようなものです。

左腕を伸ばす

 ゴルフ入門時から抱いている砂の恐怖と《バンカーでは砂に触れてはいけない》というルールのせいか、インパクトでチキン・ウィング(左肘を折ってしまう)になることがあるような気がします。肘を折ってスウィング半径を縮めれば、当然クラブヘッドは砂に突入せず、ボールを直接打ってしまい、特大ホームラン。私がプレイしているコースの赤土のように、雨や散水の後は足をもぞもぞさせても砂に潜らないバンカーでは、意識的に左腕を伸ばさないと砂でなくボールを打ってしまいます。

 この対策ですが、アドレスで左前腕を僅かに弓なりにし、左肘をロックしてしまうという方法を用います。これはフェードを打つ時にフェースを返すのを防ぐためや、手首の自由度を制限してスクウェアにパットするために効果的な手段ですが、チキンウィング防止法としても役立っています。

バンカーでもFLW

 "FLW"は"Flat Left Wrist"(真っ直ぐな左手首)の略です。これは方向の正確さを求めて手首の自由度を制限したいパッティングやチッピングで推奨されることが多いのですが、私はバンカー・ショットでも必要だと考えます。

 

 バンカーからボールを上げる時は、絶対に右手を返さないのが基本。でないと、ボールを宙に浮かべるに必要なロフトを減らしてしまいます。これはエクスプロージョン型でもスプラッシュ型でも同じ。ストロング・グリップは厳禁で、ウィーク・グリップでないといけません。右手を返さないためには、FLWを念頭に置く必要があります。特にスプラッシュ型バンカー・ショットでは、左手甲で砂を水平に掻き取る意識がコツだと思います。

(1)と(2)を合わせると、左腕を伸ばし硬直させることがスプラッシュ型バンカー・ショットの秘訣と云えそうです。

クラブが砂に突入する地点をスタンス中央とする

 私はボールの後方10センチをスタンス中央にしています。これ以上長いと、いったん砂を打ったクラブヘッドがバウンドして直接ボールを打ち、ホームランを製造します。ボール後方10センチがスウィング弧の最低点となり、硬直させ伸ばした左腕がスウィングの不変の半径を形成するため、リンゴの皮を薄く剥くようなバンカー・ショットが達成出来ます。

両手をボール後方でアドレス

 エクスプロージョン型のバンカー・ショットでは、クラブフェースをオープンにし、ターゲットのかなり左を身体とスウィングラインで狙いますが、スプラッシュ型ではフェースはスクウェアで、フェースも身体もターゲットを狙います。しかし、ハンドファーストではなく、ハンドルを臍の下辺りまで戻して構えます。これもロフトの温存に役立ちます。

左肩をボール位置まで廻し、右肘を身体に近づける(コックする)

 これは15〜20ヤードの場合で、10ヤード前後だと肩の動きはもっと短くします。

スローモーションでスウィングする

 距離が長くても短くても、スウィングを急ぐ必要はありません。バックスウィングもダウンスウィングもスローモーションで。

以上の(3)〜(6)についての詳細は「バンカー・ショットの盲点」(このページ上)を御覧下さい。

・私は、手持ちのサンドウェッジの中から最もバウンスの少ないものを使うことにしました。スプラッシュ型ではバウンスを必要としませんし、バウンスが少ない方が芝の上や裸地で用いる場合に好都合だからです。

・ロブ・ウェッジでは「ピッチングとチッピングの距離調節」(tips_169.html)に記した細かい設定でスウィングしていますが、サンドウェッジではハンドルの長さを単純に「短・中・長」の三つに分けています。10ヤード前後なら「短」で握り、20ヤード前後なら「長」で握ります。

暴力的パワーも慌てふためいたスピードも必要なく、スローモーションでスウィングするのがコツです。ただし、砂に負けてフォローが取れないようだと脱出に失敗します。「きっぱりとフォロースルーを取る」決意が必要です。左右対称のスウィングを心掛け、2時のバックスウィングなら10時のフォロー、3時のバックスウィングなら9時のフォロー。これはバンカー・ショットで最も失敗し易いポイントなので、ラウンド前に必ず長・短のバンカー・ショットを練習し、「きっぱりとしたフォロースルー」の重要性を確認すべきです。

上のようなコツを呑み込んで以来、多くのサンディ・パー(たまにサンディ・バーディ)を実現しています。

 

【参考】「スプラッシュ型バンカー・ショットの習得」(tips_153.html)

(May 10, 2017)

バンカー・ショットに必要なパワーを得る

 

LPGAツァーのJenny Shin(ジェニィ・シン、韓国、写真)の2016年のツァー優勝は一勝だけでしたが、サンド・セーヴ率63%という画期的な成果を収めたため、'Golf Digest'誌が見開き二ページで彼女のバンカー・ショット技法を紹介しています。彼女は次のように述べています。

'Bunker basics'
by Jenny Shin ('Golf Digest,' October 2016)

「腕による大きなスウィングをするが、アドレスで形成した手首の角度を維持すること。下半身も捻転させることを忘れてはいけない。あなたの目標は、バックスウィングの間じゅう手首の角度をそっくりそのまま維持し続けることだ。

砂を打ち抜き続けること。多くの人々がフォロースルーを忘れて、脱出に失敗する。必ず、フル・フィニッシュをするように

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Jenny Shinのメソッドはエクスプロージョン型ですが、スプラッシュ型でも両膝を使って「下半身を捻転させる」べきなのは同じだと思います。

 

バンカーでは、砂の抵抗に勝つため距離の三倍のパワーで振り抜く必要があると云われますが、うっかりするとそれを忘れてしまい、見た目の距離に影響され、フォロースルーを制限してしまいがちです。スプラッシュ型はエクスプロージョン型ほど力が要らないとはいえ、きっぱりしたパワーは必須です。以下はパワー不足を補う方法三種。

a) 左爪先をオープンにする

 これは非常に簡明ながら役に立つ方法です。左爪先をターゲットに向けておくと、努力せずともインパクトからフォーロースルーへスムーズに身体が廻り、自然な加速が得られます。これは'495 Golf Lessons' (Digest Books, Inc., 1973)というArnold Palmer(アーノルド・パーマー)の本で見つけたtip。

b) Walk-through(ウォーク・スルー)フィニッシュ

 

 Gary Player(ゲアリ・プレイヤー、写真中)で有名な、インパクト直後に打った方向に歩き出しちゃうフィニッシュ。これは止まっていられないエネルギーを内包している証拠で、充分なパワーによって砂を打つことが出来ます。

c) 左へ引っ張り抜くフォロースルー

 これはLPGAツァーの若手Lexi Thompson(レキシィ・トンプスン、写真下)が通常のショットで見せるスタイル。まるでスライスをパワーでねじ伏せようとしている素人のように、左へ誇張して引っ張るフォロー。

以上のどれもバンカーでのパワー生成に役立ちます。

 

(May 10, 2017)

Mr. X(ミスターX)の スウィングの土台

Mr. X(ミスターX)の最初の本に書かれた土台に関する考察。この本の特徴は、徹底的に週一(あるいは月一)ゴルファーのために書かれていることです。ゴルフ名人たちのテクニックも紹介されるものの、「アマチュアはこうする方が妥当」…と、著者Mr. X自身の経験と仲間たちにテストさせた上でのアイデアが加えられているのが特徴です。

[Anna]

'Golf Lessons with Mr. X'
by Mr. X and 'Golf Monthly' (Pelham Books, 1968, $4.95)

「ゴルフには良い二本の脚が必要で、それらはバランスを保つだけでなく、とてもパワフルで急速に変化し目にも止まらぬ動きで引っ張られるクラブヘッドをコントロールし、抵抗もしなくてはならない。

動くクラブがゴルファーにくっついていると、その引く力は1秒の3/5の間に85グラム〜27キログラムまでと様々だが、しっかりとした土台の上に立つことがどれほど必要かを認識すべきだ。その土台はしっかりしていると同時に、反対方向にクラブを引く体重移動をガイドする柔軟性を持っていなくてはならず、そのためにはゴルファーは脚の骨ではなく脚の筋肉で立たねばならない。

ほぼ全ての推進力が生成されるしっかりした土台を確立するには、バックスウィングでゴム紐のように巻き上げられる腰と身体をコントロールするためと、ダウンスウィングでインパクト、フォロースルーへとクラブを振り下ろす力を誘発するために、両脚をセットする必要がある。

脚のアクションには重要な二つのポイントがあることを私は発見した。一つは右脚(膝と足の間)で、それはバックスウィングの最中、門柱のように不動でなくてはならない。私はこの身体の部分を『右脛(すね)の柱』と呼ぶ。これを股の骨とか右腰を不変に保つことと考えてはいけない。もう一つは左足親指の爪先の内側の先端で地面をしっかり噛むことで、私はこれを『左爪先の杭(くい)』と呼んでいる。

もしこれらの礎石がバックスウィングの間に僅かでも動けば、バランスは崩れ、取り返しのつかないスウェイとなるだろう。ダウンスウィングの間に(切り返しのちょっと前から)両方の膝は左方へ、そしてターゲットラインと平行に折り返し運転を行う。そのため、両脚は同じように曲げられ、両膝は同じ高さであるべきだ。バックスウィングの間に右脚が伸ばされることがあってはならず、ダウンスウィングで時期尚早に左脚が伸ばされること(一般ゴルファーによくある過ち)もあってはならない。この膝の折り返し運転は『左爪先の杭』と『右脛の柱』とに助けられる。前者はドラッグ(引き摺る動作)を、後者はターゲットへ向かって突き出す動作をもたらす。

この膝の折り返しのアクションは重要な連鎖を誘発する。左腰は水平に左へ、そしてターゲットラインから斜めインサイドに突き出される(ターゲット方向へではない)。ターゲット方向への動きだと臀部総体があまりにも早く身体の中心を通過し、右腰と右肩がショットライン上にストレートに乗ることを妨げてしまう。

この左腰の斜めの動きは、インパクトでプレイヤーの体重を左踵に強く送り込み、ボールが飛び去るまで頭と肩を下げ続ける」

 

【おことわり】Anna Nordqvist(アナ・ノードクウィスト)の画像はhttps://www.australiangolfdigest.com.auにリンクして表示させて頂いています。

(May 14, 2017)

Mr. X(ミスターX)の バランスと体重移動

 

Mr. X(ミスターX)の測鉛線の秘密に関する考察。「測鉛線」とは右図のような錘(おもり)を付けた糸のことで、物体が垂直であるかどうかを測る道具。

'Golf Lessons with Mr. X'
by Mr. X and 'Golf Monthly' (Pelham Books, 1968, $4.95)

「頭を静止させよ…というのはよく聞かれる言葉だが、私は頭を静止させる名人を(特にインパクトで)見たことがない。もしわれわれが力学の法則を受け入れるなら、彼らがやっているのは重心を静止させるということとだ。彼らは静止した想像上の測鉛線を働かせているのだ。人間の重みのある頭部は、臀部総体の重さに対する『釣り合い錘』の役割を務める。もし左腰が正しく動けば【註】、頭は自動的に下方へ動きインパクトとフォロースルーにかけて後方に留まる。

【編註】「Mr. X(ミスターX)の スウィングの土台」(前項)で説明されたように、「左腰はダウンスウィングで水平に左へ、そしてターゲットラインから斜めインサイドにに突き出される。ターゲット方向へではない」

 

ことゴルフ・スウィングに関する限り、身体の最も重要な動作の中心は首の後ろの一点である。私はここを『頂点』【編註:仮想の測鉛線の付け根】と呼ぶ。ボールにアドレスする際、あなたの頂点から仮想の測鉛線の錘が、左右の爪先の間のどこかにぶら下がっていると視覚化する。クラブヘッドをスウィングする時、(頭を留めようとするのではなく)この仮想の測鉛線を完全に静止させるべく懸命に努力する。名人たちの誰一人頭を静止させないのだから、われわれがそうすべき理由はない。

説明しよう。頭の重さはスウィングが動作する頂点の遥か上であり、その重さは臀部の動きとクラブが身体を引っ張る力に抗して釣り合いを取るために用いられる。ボールを見る行為と頭を静止させようと試みることは、 誤った腰のアクションに繋がるだけでなく、脚のアクションをも台無しにする。その結果、(パワフルな脚の筋肉の代わりに)背部筋肉がインパクト・エリアでのクラブの引っ張りに対抗して身体と頭を持ち上げてしまう。これは推測ではなく、力学の法則なのだ。

測鉛線が静止していれば、両足は垂直の圧力を感じる。だがもし測鉛線の頂点が動けば、両足は横方向への圧力を感じる。これらの感覚は、目を閉じてスウィングしてみると顕著である。あなたの全集中力で仮想の測鉛線を完全に静止させ続けること。

大体においてゴルフスウィングのアクションは、完璧なバランス・コントロールの上で形成される。そのコントロールは、体重を骨ではなく筋肉で立って支え、両膝がやや前方に緩められているとより容易に調整出来る。バスの運行中に車掌が膝を曲げてバランスを保つのを御存知だろう。あのバランス感覚をゴルフで使うべきなのだ。

人により、ショットにより、アドレスでの測鉛線は両足の間のどこかであって一定してはいない。だが、それがいったん定められたらそこに留まるべきであり、測鉛線を動かさぬようスムーズにスィングしなければならない」

【参考】
・「Mr. X(ミスターX)のゴルフ」(tips_167.html)
・「Mr. X(ミスターX)のボール位置」(tips_181.html)
・「Mr. X(ミスターX)のポスチャー」(tips_183.html)
・「Mr. X(ミスターX)のグリップ」(このページ上)

 

(May 14, 2017)

完璧なストロークを望んではいけない

 

「80を切る・虎の巻」(tips_60.html)のPatrick J. Cohn, Ph.D.(パトリック・コーン博士)に、PGAツァーのプロ・テストまで受けたことがあるというスポーツ心理学者Robert K. Winters, Ph.D(ロバート・K・ウィンタース博士)が加わって出版されたパッティングの心理学。

'The Mental Art of Putting'
by Patrick J. Cohn, Ph.D. & Robert K. Winters, Ph.D. (Taylor Trade Publishing, 1995, $16.95)

「どんなスポーツでも、運動選手は目前の課題に真剣に集中し、状況に自動的に反応する時に最高のパフォーマンスを達成する。しかし、ゴルフのパッティングは、野球の打者やバレーボールのスパイクのように動的アクションに対するリアクションを必要としない。とはいえ、あなたがそうしようと思えば最高のパフォーマンスを生じさせることは可能だ。打者は投手がボールを投げた後、考えている暇などなく、ただひたすら反応しなければならない。ボールがホームプレートに達するのは、投手の手を離れてから約0.4秒後である。打者は投球の識別に0.2秒費やし、次の0.2秒で振る決定をし、ボールに合わせてバットを動かす。このように、打者は彼のボールを打つ経験と本能を頼りにしなければならない。彼がどうしようかなどと考えたりしたら、後の祭り、ボールは既に捕手のミットに納まっている。

あまりにも多くのゴルファーがグリーン上で、分析し過ぎたり、考え過ぎたりして麻痺状態に陥る。彼らはストローク法についてインストラクターが云ったことや、パットの成功・不成功などについて考え込み、自分自身を麻痺させてしまう。野球の打者のように外部(飛んで来るボール)と狭い範囲に焦点を合わせるのがベストだ。何故なら見るものに反応すればいいのだから。あなた自身の内部に焦点を合わせたのでは、あまりにも機械的になったり、自分自身を凝視するようになってしまう。テニスのプレイヤーが動くボールを見つめるように、自分の外部に狭めた焦点を合わせ続ける時、人は最高のプレイが出来る。

あなたのパッティングに対する姿勢も単純化すべきである。あなたが先ずしなければならないのは、自分に言葉による指示を与えるのを止めることだ。機械的動作について考えるのを止め、あなたの経験と本能に任せる。

パット名人たちの多くは、ボールを意図したラインに乗せる業務の遂行に集中する。彼らはそれがカップに入ることを知っているものの、成功させようとしゃかりきになったりしない。入るか入らないかという結果に焦点を合わせるのは優先事項ではないからだ。彼らが正しく業務を完遂すれば、ボールはカップに沈む。パット名人たちはラインの選定とそのラインにボールを乗せる業務に集中する。

 

あなたが正しいラインを選んでそれにボールを沿わせて転がしたら、あなたの仕事はそこで完了である。それ以後に起ることはあなたにはコントロール出来ない。仮にあなたがパットに失敗したとしても、自分が選んだラインにボールを転がせたのであれば、あなたはパットに成功したのだ。全てを完璧に遂行したとしても、それでもミスすることは珍しくないのである」

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Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)が「パットには成功した。ただ入らなかっただけだ」という有名な言葉を発したことがありますが、それは上のようなことだったんでしょうね。正しくラインを読んでそのラインにボールを転がしても、スパイクマーク(現行ルールでは修復出来ない)などに遭遇すれば、ボールはラインから逸れてしまいます。スパイクマークを迂回することは不可能なので、目をつぶって打つしかありません。Jack Nicklausは泣き言を云わない人ですから、「スパイクマークのせいで失敗した」とか「スパイクマークを残した奴を八つ裂きにしたい」などと云わず、単に「パットには成功した。ただ入らなかっただけだ」と述べたのでしょう。

私は、つい「入れたい」としゃかりきになり、機械的動作の完全遂行に集中するタイプなので、上の指摘は非常に耳が痛い。リオのオリンピックの女子の平均台を見ましたが、あれなどはまさに機械的動作の完全遂行の連続ですよね。しかし、それを機械的でなく優雅に美しく実行しなきゃならない。ロボットのような、あるいは操り人形のような動作ではなく。パッティングもガチガチに硬直した動作でなく、優雅にスムーズな動作が必要です。それには、パイロットがコックピットでチェクリストを読み上げつつスウィッチを切り替えるように(心の中でストローク手順を唱えながら)身体を動かしたのでは駄目なのです。手順は身体に滲み着いていなくてはならず、ボールに歩み寄ったら箸で御飯を食べるように、チェックリスト無しで自動的に腕・手が動かなくてはならないのです。

(May 21, 2017)

Fred Couples(フレッド・カプルズ)の気楽にパットせよ

 

'Total Shotmaking'
by Fred Couples with John Andrisani (HarperPerennial, 1994, $15.00)

「大抵のゴルファーは、そのレヴェルに関わらず、グリーン上で余分のプレッシャーを自分に与える。彼らは、それがU.S.オープンであれクラチャンであれ、2ドルのナッソーであれ、自分に語りかける、『このパットを沈めなきゃ』と。私は、この自分に負わせる重圧は、ゴルファーを助けるものでなく害するものだと考える。

目下のパットの重要性を考えることによっていいストロークが出来るとは思えない。あなたはただ、あなたに可能な最良の読みを遂行し、あなたに可能な最良のアライメントをし、次いで最高にリラックスし、とはいえあなたに可能な適切なストロークをする。その後は単純に結果を受け入れるのだ。ボールはカップに沈むか沈まないかどちらかである。あなたは完全に完璧な読みをしたかも知れないが、(あなたが気づかない間に)ボールは転がり始めてからスパイクマークを打ち、ラインを逸れてしまうことだってある。逆に、ミスして当然のパットがグリーン面の不完全な凸凹の上を転がってカップに転げ込んだりもする。大方のゴルファーは深く理解しないのだが、ブレイク(運・不運)は一方だけでなくどちらにも転ぶものだ。

心に止めておくべき最も重要なことは、どんなに完璧にストロークしようが、それがカップに入るという保証はないということだ。刈られたばかりで完璧に整備されたように見えるグリーンでさえ、ボールの転がりに影響する凸凹や虎刈り部分がある。そのどれもが微かにボールを動かし、ど真ん中からボールをカップに沈める代わりに、僅かに左に向かって転がりリップアウトさせてしまったりする。

グリーン上で気楽に取り組む態度を学べば、あなたは長期に渡ってはパッティング巧者になれると信ずる。ゴルフは楽しむべきものだ。ボールにあなたに可能なベストの転がりを与えよ。そして、それを何度も繰り返す。ミスしたら、なぜミスしたのか数秒間考えてもいいが、その後すっぱり忘れることだ。そのパットはもう過去のものと化した。だったら、次のティーに向かって、いいスウィングをしようと努力することだ。

 

どのストロークでも上のようにプレイすれば、外部からのプレッシャーによる干渉を受けることなく、本能にパットさせることを学ぶことになる。グリーンで幸運と不運をどちらも受け入れれば、常にいいスコアでラウンドを終了出来ることだろう」

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上の記事を読んだ数日後のラウンド。No.3(270ヤード)パー4の私の二打目は、ピン奥10メートルへ。10メートルと云えば、仲間も自分自身でさえも成功するなどと思えません。まして、不完全な凸凹や不運もあるわけです。私は、同じく2オンしている他の二人ののどちらかがバーディを仕留めるだろうという安心感で気楽にパット。やや下りで僅かに左へ切れるラインと読んだ通りに転がったボールは、ど真ん中からカップイン、バーディ! Fred Couples(フレッド・カプルズ)は正しい。ゴルフは生か死かという必死の形相でするものではなく、非の打ち所のない完璧なストロークをしようとすべきものでもないことが証明されました。

【参考】「Fred Couples(フレッド・カプルズ)の ゴルファーよ、気楽にプレイせよ」(tips_154.html)

(May 21, 2017)

楽観的にパットすべし

 

筆者Billy Casper(ビリィ・キャスパー、1931〜2015)はメイジャー三勝を含め全69勝を挙げ、ゴルフ名誉の殿堂入りしているプロ。

'Secrets of the Golfing Greats'
edited by Tom Scott (A.S. Barnes, 1965)

「パットに上手くなるにはテクニックだけでなく、楽観的であることが最も重要な必要条件だ。それは身体の筋肉のワンセットのように開発され訓練され得る心の状態である。上手にパット出来るようになるには、どうすればパットに成功出来るかを考えなくてはならない…どんな風にどこへミスするかという悲観的な考え方ではなく。どのパットも沈められるという態度を育てよ。その態度はパットに成功するという能力に至上の自信を作り出す。それは悲観的な想念を心から追い出し、あなたのメンタルな姿勢に楽観的な想念が優位に立つようにする」

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「P³(心と身体の統合)・パッティング篇」(tips_18.html)で紹介したスポーツ心理学者Dr. Nick Rosa(ニック・ローザ博士)の自己催眠オーディオ・テープは、まさにこのメンタルな自信構築を目指しています。博士の示唆で自分のベストのパッティングを思い出し、それを心のDVDに焼き付け、グリーン上で再生するという仕掛けです。

人間の脳には繰り返される運動とその結果が大きな影響を及ぼすようです。Arnold Palmer(アーノルド・パーマー)がパッティング・スランプに陥って自信を失った時、彼は練習グリーンで長時間30センチ(!)のパットばかり練習し、パットの成功を心に刻み、自信を回復させたそうです。たった30センチの距離なら子供にだって(猿にだって)パット出来るでしょう。それで自信がつくのなら、Arnold Palmerだけでなく、どんなゴルファーにも役立つ筈です。

 

(May 21, 2017)

Mr. X(ミスターX)の スウィング

アマチュア・ゴルファーMr. X(ミスターX)によるアマチュアのための、簡明なスウィング理論。アマとは云っても、全ゴルファーのたった1%が達成出来る偉業であるエイジ・シュートで廻るのが日常茶飯になった人ですから、馬鹿にしてはいけません。

[Mozo]

'Golf Lessons with Mr. X'
by Mr. X and 'Golf Monthly' (Pelham Books, 1968, $4.95)

「一般ゴルファーの多くは、打つ力は腕と手から来るという印象を持っているように見受けられる。本当は腕と手は、両足から上(特に両脚と腰)の推進力を伝達するだけなのだ。その力は肩の先端を通して働き、実際上バックスウィングで腕・手とクラブを後方にそして上方へと梃子(テコ)のように動かし(=一種のワンピースの動き)、ダウンスウィングで腕・手・クラブヘッドをボールに向かって引き摺り下ろす。

バックスウィングの際、腕による独立した持ち上げる動きはなく、腕は肩と両腕で形成される逆三角形の一部に過ぎない。腰と共に回転する背骨の軸がクラブヘッドを上げ、勢いがそれを完了させる。その三角形を変形させるのは、唯一両膝の左への折り返し運動と素早い腰のアクションがダウンスウィングを開始する際、クラブヘッドの慣性に反応する時である。左腕とシャフト間の角度はさらに狭められ、右肘はプレイヤーの腰へと向かう。

よく『ゆっくり振れ』と云われるが、私はこの助言に同意出来ない。私は、『スムーズに振れ』が適切だと考える。腕の力(特に左腕)次第では、早く振っても、スムーズであり得るからだ。実際には、ゴルファーは、トップへとクラブヘッドを後退させレイト・ヒットを実現するためクラブヘッドを引き摺るには、充分な慣性を生成するため早くスウィングすべきである。名人たちは、レイト・ヒットのためだけではなく、素早い腰の動きによって最大のクラブヘッド・スピードを得る切っ掛けとして慣性を利用するため、早いスウィングをする。

"Hit the ball"(ボールを打て)というのもよく聞かれる文句だが、私はこの"hit"という言葉に篭る意味を好まない。"sweep"(掃く)の方がベターだし、連続した前進が象徴されている。

バックスウィングのトップでの左手首と左前腕のアライメントは特別重要である。これを確実にするには、バックスウィングの長さと左親指の曲がり方が揃っていなければならない。これに関して、一般ゴルファーのうち太目の人に私が助言したいのは、彼がトップで崩壊する左手首を避けたいのであれば、3/4のバックスウィングをせよということだ。

私の信念だが、スウィングをスタートさせるのはクラブヘッドではなく、両脚と腰を上方に引き締める(あるいは誇らしいポスチャーというか、あるいは両脚と両腕の筋肉を延長する)ことである。これはフォワードプレスなどよりいい考えだと思う。

その直後、テイクアウェイが続く。引っ張る感覚が左手首と手の任務である。それが、クラブヘッドを推進する両足から上への筋肉のアクショのサイクルの引き金となる。スウィングは次第に勢いを増しながら進行する。

一般ゴルファーには、私は早期コックを勧める。これはクラブヘッドを手で早めに持ち上げろということではない。その真意は、バックスウィングで両手が腰の高さに達するまでに、クラブシャフトは左手首によって充分早期に角度をつけておくべきだということだ。早期コックのメリットは、トップで左手首を左前腕と一線に保つことが容易に出来ることだ。これは左腕に対するクラブの角度の感覚を確立し、ダウンスウィングでのレイト・ヒットを確実にする。これはそう多くのゴルファーが達成出来ない基本の一つである。

多くの一般ゴルファーにとって、ダウンスウィングを開始するのが何か…は謎である。一つだけ確かなのは、腕の筋肉や手の引っ張りによってクラブが引き下ろされるのではないということだ。ターゲットラインから遠ざかる左方への素早い左腰の動きが、ダウンスウィングを始める。その感覚は、ほぼ左腰で切る動きと云ってよい。これは主に左爪先内側の端から引き摺ることと、膝の左方への折り返すアクションが引き金となる。

クラブヘッドを可能な限り首の近くに保つことは(=レイト・ヒット)手や手首による肉体的努力の結果ではなく、右膝が押すことでサポートされた左腰による威勢のいい動きにクラブヘッドが抵抗する慣性によるものだ。ダウンスウィングで両脚と腰によって生成されたパワーとスピードは、肩の先端を通過して腕とクラブへ下りて行き、腕とクラブを引っ張る。左腕がトップからクラブを引っ張る印象を抱くかも知れないが、その感覚は錯覚である。推進力は腰と両脚の強靭な筋肉から来るものだ」

 

【おことわり】LPGAプロBelen Mozo(ベレン・モゾ)の画像はhttps://s-media-cache-ak0.pinimg.comにリンクして表示させて頂いています。

(May 24, 2017)

Mr. X(ミスターX)の スウィング・ドリル

 

Mr. X(ミスターX)のスウィング理論、その練習法。

'Golf Lessons with Mr. X'
by Mr. X and 'Golf Monthly' (Pelham Books, 1968, $4.95)

「一般ゴルファーがバックスウィングの最初の1/4で、大鎌で刈るように水平に内側へと手とクラブヘッドを上げるのは、至極もっともな成り行きである。以下に、この欠陥をストップさせ、正しくスウィングを遂行するための筋肉訓練法を記す。

[practice]

6番アイアンを手にスタンスを取る。もう一本のクラブを、クラブヘッドを左爪先前方に当て、シャフトがターゲットと両爪先に接するようにする。あなたのスタンスが正しければ、両手は地面のクラブヘッドに重なる筈だ。

ゆっくりバックスウィングする。最初は両手が40〜50センチ動くまで地面のクラブに重なり続けるようにし、その後はトップまで行く。この“離陸”の感覚が心に刻まれるまで次第にスピードアップし、ボールに目を据えて何発か打つ。

ドライヴァーやシャフトの長いクラブでは、当然ながら地面のクラブは爪先から遠く離れて置かれるべきである(10センチ前方など)。人間の手足の長さは異なるので、地面に置くクラブの爪先からの距離は適宜増減されたい。

最初、あなたは両手が右腰から離れてターゲットライン上を動く感覚を得るだろうが、あなたのその理解は錯覚である。それは、壁に面して立ち、クラブの先端をあなたが感じた通りにバックスウィングしてみれば証明出来る。

このドリルは正しいプレーンを身に定着させ、あなたの腰と肩を正しく動かせるようにするものだ。これはまた、右脚が伸び上がって『右脛(すね)の柱』【参照:「Mr. X(ミスターX)のスウィングの土台」(このページ上)】の堅固さを損なうことをも防いでくれる」

【参考】
・「Mr. X(ミスターX)のゴルフ」(tips_167.html)
・「Mr. X(ミスターX)のポスチャー」(このページ上)
・「Mr. X(ミスターX)のグリップ」(〃)
・「Mr. X(ミスターX)のスウィングの土台」(〃)
・「Mr. X(ミスターX)の バランスと体重移動」(〃)

【おことわり】画像はhttp://img-aws.ehowcdn.comにリンクして表示させて頂いています。

(May 24, 2017)

テキサス・ウェッジの基本

 

'The "Texas wedge"'
by editors of 'Golf Magazine' ('Golf Magazine,' September 2002)

「Tom Watson(トム・ワトスン)がよく云ったように『最悪のチップより最悪のパットの方がまし』である。グリーン外からパターを使うテキサス・ウェッジは、裸地のようなライからウェッジでボールを摘まみ上げるよりずっと安全である。

どういう状況でテキサス・ウェッジを用いるか?アプローチ・ショットがグリーンを数メートル離れたところで止まったか、グリーン外でもしっかり刈り込まれたチッピング・エリアにある時だ。こうした状況はクラブのロフトでボールを上げるより、転がす方が簡単だ。唯一の必要条件は、ボールとフリンジの間の地面がかなりスムーズで、芝が固く乾いていること。

テキサス・ウェッジの美点は、テクニックに何の変更も要らないことだ。ロング・パットと同じセットアップ(肩から垂れた腕、肩・腕・指の軽い緊張)をする。長いフェアウェイの草を乗り越えるためいつもより多少強めに打つ必要があるが、手首の動作を加えて力づくでボールを打とうとするのは距離のコントロールを難しくする。手首は使わず、肩と両腕で形成される三角形にストロークの間完全に焦点を合わせ続けること。

あなたの目標はカップインさせることではなく、そこから二打でホールアウトすることだ。カップから1メートルで止まるようなボールを打つことに集中せよ」

次はインストラクターDr. Jim Suttie(ジム・サッティ博士)による、グリーン手前でチップするかパットするかの判断基準。

'Chip or Putt?'
by Dr. Jim Suttie with David Dusek ('Golf Magazine,' May 2004)

 

「《チップすべき状況》

・カップまでグリーンの半分以上の距離がある時。
・グリーンが遅いか、アップヒルの場合。
・ボールが沈んでいる時。
・フリンジが湿っていたり、凸凹している時。
・グリーンから四歩以上ある時。

《パットすべき状況》

・カップがエッジに近く切られている時。
・グリーンが早いか、カップ方向に下りになっている場合。
・ボールが草の上に具合よく乗っている時。
・フリンジが乾いてスムーズである時。
グリーンから四歩以内の時」

[icon]

 

私が一緒にプレイしているシニア・グループでは、テキサス・ウェッジを多用する者が多い。《ボールを上げるより転がす方が安全》とか《ロブ・ウェッジは難しい》という初心者向けのインストラクションを鵜呑みにしているせいでしょう。「ロブ・ウェッジは難しい」も何も、ロブ・ウェッジの練習をしている人間はほとんど見当たりません(練習しなければ難しくて当然)。中には30ヤードのバンカー越えでもパターで転がしたり、70ヤードからも転がそうとする輩さえいて、あまりにもパターを酷使するもんだから、パターヘッドがシャフトから外れちゃったりする始末。上の記事の「パットすべきなのはグリーンから四歩以内の時」という箇所を読ませたいくらいです。写真(下)のLPGAプロは30ヤード近く離れたピンに転がしてますが、われわれのコースはこんな絨毯のようなグリーン周りではありませんのでね。

(May 28, 2017)

テキサス・ウェッジの誤解

 

筆者Ken Venturi(ケン・ヴェンチュリ、1931〜2013)は1964年のU.S.オープンをはじめPGAツァーで14勝、後年はCBS-TVのメインの解説者を勤めました。

'Ken Venturi's Stroke Savers'
by Ken Venturi with Don Wade (Contemporary Books, 1995, $14.95)

「テキサス・ウェッジは最も安全なショットの一つであるが、最も誤解されているものの一つでもある。

問題は、人々がボールをスタンス後方に置き、ディセンディング・ブローで打ちがちなことだ。これは二つの悪しき結果をもたらす。
1) ボールはポンっ!と飛び上がり、ラインから逸れる方向に跳ねる。
2) ボールは芝に埋まり、速度を失ってかなりショートする。

これらを避けるには、ボール位置を左踵前方とし、右足を少し後方(ターゲットと反対方向)に引いてスタンスをワイドにする。これはストローク遂行のしっかりした基盤を構築する。両手を僅かにボールより後ろにし、パターのロフトを増す。通常のパッティング・ストロークを行う。

あなたは驚くだろう、そのスムーズなボールの転がりと、ラウンドで節約出来るストローク数の両方に」

 

(May 28, 2017)

テキサス・ウェッジをマスターせよ

 

これは上の二つと一寸異なるインストラクション。どれがいいかは試してみて判断して下さい。

'Master the "Texas wedge"'
by editors of 'Golf Magazine' ('Golf Magazine,' February 2015)

「2014年のPlayers Championship(プレイヤーズ選手権)とU.S.オープンで、Martin Kaymer(マーティン・カイマー、独)は、グリーンから5〜10歩の距離でピッチングやチッピングではなくパターを用いた。多くの場合寄せワンに成功し、彼は両方のトーナメントに優勝した。

草が伸びておらず、地面が平らで、ボールとホールの間に障害物がない状況なら、ウェッジよりパターを効果的に使うことが出来る。このテキサス・ウェッジと呼ばれるショットは簡単である。

・通常のパッティング・グリップとスタンスを取るが、身体を少し左に傾げ、パターのグリップエンドをターゲット方向に押す。

・右肘を身体の右脇近くに引きつけ、バックスウィングで右手首を僅かにコックする。これがボールにぽんと飛び出す勢いを与え、充分な速度でフリンジを越えて転がし、グリーンへと向かわせる」

 

(May 28, 2017)

Alison Lee(アリスン・リー)のコンパクト・スウィング

 

両親は韓国人ですが、Alison Lee(アリスン・リー、22歳)はアメリカ生まれのアメリカ人。LPGAツァー・プロでもあり、UCLAの学生でもあります(専攻:コミュニケーション、この6月に卒業予定)。まだツァーで優勝こそしていませんが、米欧女子対抗戦Solheim Cup(ソルハイム・カップ)のアメリカ・チームの一員になるなど、LPGA若手スターのトップ・クラスとなっています。

'Give it time'
by Alison Lee with Keely Levins ('Golf Digest,' May 2017)

「今年はLPGAツァーの三年目だけど、昨年はトップ10(テン)に三回入ることが出来た。私が自分のゲームで自慢出来る分野はいくつかあるが、ドライヴィングはちゃんと取り組んでいる課題の一つだ。私の平均飛距離は約260ヤードで、フェアウェイ・キープ率は80%。あなたにこの飛距離と方向性の組み合わせが好ましいと思えるのであれば、私のアドヴァイスを聞き、タイミングの研究をするといいと思う。

スウィングのテンポと身体の部品の動きを同期させるには、スウィングが長過ぎても早過ぎてもいけない。さもないと、インパクトでフェースをスクウェアにするのに苦労する。はっきり云えば、私にとってスウィング・スピードは二の次、三の次なのだ。スムーズであることが第一。

次回の練習で、ドライヴァーを数回最高のスピードで振ってみてほしい。その後、連続してボールをソリッドに打てる速度に戻す。それが半分の速度に思えたとしても、それで充分なのだ。長く真っ直ぐに打ちたいのなら、クラブフェースでスクウェアに打つことを過小評価してはいけない。

 

・セットアップ

私はティーアップしてから二回素振りをする。一回目はハーフ・スウィングで、長過ぎるスウィングをしないよう自分に釘を刺す。二回目はフル・スウィングだが、ゆっくり振ることを心掛ける。誰でもそうだが、緊張すると話すのもスウィングするのも早くなる。だから、二度目の素振りは数回の深呼吸を同時に行い、心を落ち着かせる。ターゲットを選んだ後、歩み寄ってクラブフェースを先に揃え、それから足を揃える。アドレスで両手が正しい位置にあるかどうかは、両手が左足を覆い隠しているかどうかを確かめる(これは父が教えてくれた方法だ)。もう一度、ターゲットを見、その後スウィングを開始する。こうした手順はあまりにも機械的に聞こえるかも知れないが、一貫したプレショット・ルーティーンが安定したタイミングをもたらしてくれるのだ。

・バックスウィング

クラブを後方に引く際、過剰な動きはしたくない。それがタイミングを損なう原因だからだ。私はコントロールし続けたいので、それにはコンパクト・スウィングをするしかない。ドライヴァーを手にすると興奮し易くなり、自分の能力以上のスウィングをしようとしがちになる。それを避けるための私のお気に入りのドリルがある。

ドライヴァーを手に、左腕が地面と平行になる時点までバックスウィングする。その位置で五個のボールを打つ。次いで、通常のバックスウィングで一個のボールを打つ。私はこの方式をコンパクトに、しかもドライヴァーと結合した感覚を滲み着かせるために続ける。これは実際に私の打法を改善してくれている。

・ダウンスウィング

私はバックスウィングのトップでは、体重が右足の甲に乗る感覚を得たい。ということは、腰を廻し過ぎないということだ。ソリッドにドライヴするために、大きな腰の回転は必要ではない。それどころか、腰の過剰な回転は、スウィングをあまりにも長くだらしなくさせる。体重がセットされた時、私はダウンスウィングの準備が出来たことを悟る。私が緊張する時はいつでも、上半身に較べ腰をあまりにも早くターゲット方向に回転させる(=スピンアウトする)傾向がある。これを防ぐため、私はグリップエンドが先行してボールに向かうように感じる。これが下半身と上半身の回転を揃えてくれる。私は急がずにボールに向かうが、充分加速させる。

・インパクト

 

タイミングがズレている徴候は、両手が過度にしゃしゃり出ることだ。私の両手は、腕によるスウィングと身体の回転の延長に過ぎない。大きなスウィングの一部として両手が動く時、私は左手がフラットでしっかりとし、左手甲がインパクトでターゲットに向いてほしいと願う。これが正確なドライヴを打つためのクラブフェースの向きである。それは私がアドレスする時の左手の向きでもある。とてもシンプルに聞こえるだろうが、私はシンプルにし続けたいのであり、あなたもそうすべきなのだ。短くイーズィなスウィングで、身体の部品全てをタイミング良く一緒に動かせば、フェアウェイど真ん中に打てるようになる」

【参考】https://www.youtube.com/watch?v=i4iRJ0faJJ8(フル・スウィング正面)

(May 31, 2017)

Sam Snead(サム・スニード)の救急箱

 

Sam Snead(サム・スニード)の初心者向けの小冊子に掲載されている、ミス・ショットへの対応策。当サイトには既に原因と対処法に関する個別の記事がいくつもありますが、これは一挙にミスの多くを網羅しているので便利かと…。

'How to Hit a Golf Ball'
by "Slammin' Sam" Snead (Doubleday & Company, Inc., 1950, $1.95)

「以下は、突然ミスが出始めた時にチェックすべき事項である。ミスの原因も含めてあるが、あなたのミスは全く異なる(あるいはミックスされた)原因によるものかも知れない。だから、ミスが消え去らない場合は、時間を無駄にせず、レッスン・プロに診て貰うべきだ。多分、彼はあっと云う間にミスを直してくれるだろう。

・シャンク

これは急いだバックスウィングおよびダウンスウィングが原因だ。また、エクストラの飛距離を得ようと無理した場合にも起る。これを避けるには、ゆっくりスウィングし、手首と腕をリラックスさせ、無理しないこと。両手を身体に近づけておく。

 

【編註】私の経験では、アイアンでヒットダウンしようとグリップや手首を固くしたり、打ち急いで下半身からのダウンスウィングを忘れ、手・腕でダウンスウィングした場合にシャンクします。

・プッシュ

これが起る主な理由は、スタンスの間違いだ。プッシュは真っ直ぐ飛ぶが、狙ったラインの右へ行ってしまう。スタンスをチェックせよ。多分、あまりにもクローズになっていないか?スクウェアにもどすべきだ。

・プル

これはプッシュの反対である。スタンスがあまりにもオープンなのだ。

・トップ

この難物はいくつかの原因が考えられる。ゴルファーがボールを宙に浮かべようと掬い打ちすると、身体あるいは手首にクラブヘッドをラインから逸らす動きを加えてしまう。従って、クラブはボールをアッパーに打ち、トップとなる。掬い打ちしてはならない。クラブフェースのロフトにボールを上げさせよ。

・空振り

完全にボールをミスするのは、多分頭をあまりにも早く上げてしまうせいだ。これはトップより最悪で、あなたはボールに触りもしない。スムーズなパターンでスウィングし、ボールを見ながら頭を動かさないようにせよ。

・ダフり

 

意識するとしないとに関わらず、これもボールを空中に上げようというゴルファーの試みが原因である。その結果、ボールの後ろの地面を最初に打ってしまい、それからボールを打つ。処方は、ダウンスウィングでボールを打ち、クラブフェースにボールを上げさせることだ。

・スライス

最も一般的なスライスの原因は、アウトサイド・インの軌道でクラブヘッドを引っ張ることだ。これは、あまりにもワイドなスタンスか、左手があまりにも弱いのが原因だ。アドレス時にスタンスを点検し、クラブヘッドがターゲットラインのインサイドに向かうようにする。バックスウィングで体重が右脚の上に移り、左サイドが回転を完了していることを確認せよ。左手・腕にバックスウィングとダウンスウィングの主導権を握らせ続けよ。グリップもチェックすべし。

・フック

これはクラブフェースが、ボールをインサイド・アウトの軌道で打った時に起る。グリップとスタンスをチェックせよ。意図的フックを打つような癖をつけていないことを確認せよ。スタンスを僅かにオープンにし、ダウンスウィングで左手がクラブを身体から投げ出すような動きをしないように。

・てんぷら

ティーアップがあまりにも高過ぎるのだ。あるいは、かなり浅いフェースのクラブを用いているせいだ」

【参考】
・「プッシュ回避策」(tips_147.html)
・「トップする原因」(tips_122.html)
・「ポップアップの原理」(tips_109.html)
・「ゴロの根絶」(tips_82.html)
・「それでもなおスライスで苦しんでいる方へ」(tips_167.html)
・「上級者のためのフック撃退索」(tips_103.html)
【「テクニック別索引」→「ミス・ショット防止策」にまだまだ沢山tipがあります】

 

(May 31, 2017)

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