Golf Tips Vol. 182

アドレナリンをコントロールする

コーチPia Nilsson(ピア・ニルソン)と女性インストラクターLynn Marriott(リン・マリオット)の三冊目の共著「今すぐ、あなたのベストのゲームをせよ」より。

'Play Your Best Golf Now'
by Pia Nilsson and Lynn Marriott with Ron Sirak (Avery, 2011, $23.00)

「あなたはアドレナリン・レヴェルが高いとベストのプレイが出来るタイプだろうか?Tiger Woods(タイガー・ウッズ)や、Suzann Pettersen(スザン・ペターセン、右の写真)、Sergio Garcia(セルジオ・ガルシア)らのように。これらのプロはベストのプレイをするために、多量のアドレナリンを必要とする。

【編註】アドレナリンは副腎髄質から分泌されるホルモン。血糖量を高める作用を持ち,インシュリンと拮抗(きっこう)的に働いて血糖量の調節を行う。また,心臓の働きを強めて血圧を上げ,気管を拡張させる。

それとも、あなたは少なめのアドレナリンでよいプレイをするタイプだろうか?Annika Sorrenstam(アニカ・ソレンスタム)、Ernie Els(アーニィ・エルス)、Retief Goosen(ラティーフ・グーサン)らのように。

どちらに属するのかよく分らなかったら、よくプレイ出来た時のことを思い返し、分析するといい。その時、興奮していたか、落ち着いていたか?また、アドレナリン・レヴェルを高めたり弱めたりして、どんな風になるか実験し、記録することも出来る。

ある種のプレイヤーは怒っている時に充分なアドレナリンが得られ、いいプレイが出来ると云う。しかし、《怒りはわれらを愚か者にする》のであって、これはいい方法ではない。どうやったら、陰性ホルモンであるコルチゾールの影響を受けずにアドレナリンを得ることが出来るか?

アドレナリンのレヴェルは、数秒の呼吸や他の身体部分の運動によって変えられるのだ。 ・長く深い呼吸(三つ数えながら呼気し、六つ数えながら排気)をする。これは即座にアドレナリン・レヴェルを下げ、神経組織を穏やかにする。 ・あなたのプレイが無気力となり、もっと元気づけが必要だとしたら、急速な呼吸をすればアドレナリン・レヴェルを増すことが出来る。

また、ジャンピング・ジャック(挙手跳躍運動)をしたり、全力疾走をしてもアドレナリン・レヴェルを高めることが可能だ。これをラウンド前に行うプレイヤーも存在する。これを実行すると、人はあなたの気が狂ったと思うだろうが、これは実際役立つのだ」

 

【参考】
・「怒りはわれらを愚か者にする」(tips_178.html)
・「情動をコントロールしてプレイせよ」(tips_180.html)

(April 09, 2017)

一つのスウィッチ(脳と身体の使い分け)

「二つのボックス」(tips_101.html)で提唱された「思考ボックス」、「決断ライン」、「実行ボックス」という概念は素晴らしいと思います。【註】

【編註】本質的なことではないのですが、「二つのボックス」という概念は、実はPia Nilson(ピア・ニルソン)とLynn Marriott(リン・マリオット)のオリジナル・アイデアではないようです。「ゴルファーの三つのタイプ」(tips_180.html)の筆者Ken Blanchard(ケン・ブランシャード)が'Golf University'(ゴルフ大学)を設立したのは1988年で、その前に彼はインストラクターChuck Hogan(チャック・ホーガン)から「"thinking"(思考)から"doing"(行動)への決断ラインを越える」という理念について教わったそうです。その事実は1992年に出版された本’The One Minute Golfer'に書かれています。「二つのボックス」が収録されたPia NilsonとLynn Marriottの本'Every Shot Must Have a Purpose'はその17年後の2005年に刊行されています。私の推測は、Chuck HoganからKen Blanchardが学んだという「決断ライン」の概念を、'Golf University'で働いていたLynn Marriottが主宰者Ken Blanchardから教わり、それを後にLynn Marriottに伝えた…という筋書きです。

私は「心を無にしてストローク」(tips_179.html)の練習をしていて、次のようなことを考えました。

ゴルフの動作は、スウィングにしてもパッティング・ストロークにしても非常に短い時間で遂行されるため、動作中にあれこれ考えながら実行出来るものではない。それを無理矢理考えながら実行しようとするから、脳と身体を結ぶ回路がショートし燃え尽きてしまう。

私たちの身体は、「考える」か「動作する」かどっちか一つしか出来ないと考えるべきなのです。両方一緒は無理。もちろん、単純なことを考えながら単純な動作をするのは可能です。例えば、道を探しながら車をスローで運転するとか。しかし、ゴルフ・スウィングは1.5〜2秒ほどで完結してしまうものなので、脳が指令して身体を動かす時間はなく、潜在意識に委ねるしかないのです。極超短時間の動作中に考えながら動作を変更出来るなんて、『江夏の21球』の19球目のスクイズ外しの“神業”ぐらいしか考えられません。

 

ゴルフはボールが静止しているため、どう料理すべきか…とか、成功したらこう、失敗したらこう…と、あれこれ考える時間があり過ぎます。成功への欲や失敗への恐れは筋肉運動に影響を与えます。それらの雑念を断ち切るには、ON・OFFスウィッチを押し下げて思考回路を遮断すべきなのです。このスウィッチには中間(ニュートラル)のポジションがありません。ON(思考する)かOFF(思考しない)か、どっちか。「パチン!」とスウィッチを切り替えたら無念無想にならねばならない。

突き詰めれば、ゴルフにはあまりあれこれ深く考えない(思考スウィッチが常にOFFの)人間が有利なようです。私のようにパチンパチン切り替え過ぎて、今どっちなのか判らなくなるような人間はゴルフに向いてないみたいです(;_;)。

(April 09, 2017)

スウィングをコントロールするのは誰か?

スポーツ心理学者Dr. Joseph Parent(ジョゼフ・ペアレント博士)の、潜在意識にスウィングを委ねよという卓見。

'Golf: The Art of the Mental Game — 100 Classic Golf Tips'
by Dr. Joseph Parent (Universe Publishing, 2008, $24.95)

「こういうことがかつてなかったろうか?どう打とうかなどと考えず、ことさら特別な方法を生み出そうなどとも努力しなかった…ってことは?そんな時の結果は驚くほど良かったりする。

そういう時、あなたはショットをコントロールしていないように感じるかも知れないが、それはつまり、日頃自分のスウィングを自分の考える心でコントロールすることに慣れているからだ。実際にはあなたは支配力を失っておらず、単に支配権を潜在意識に権限委譲したに過ぎない。潜在意識はあなたの深奥に備わったやり方を引っ張り出し、それはあなたにベストのゴルフを実現させてくれる。

あなたの潜在意識に意図的に権限委譲するテクニックはこうだ。毎回スウィングする前に自分の身体にこう云うのだ、『あんたが主役だ』、あるいは『OK、後は任せたぜ』など。それは思考する心にバイバイする合図として働き、意識の邪魔なしに潜在意識に身体をコントロールすることを許可する。こうすれば、身体が記憶しているベストのスウィングを繰り返し呼び起こすことが出来る。あなたのゲームを最大限良くするには、ショットを頭で計画はしても、スウィングは心ですべきなのだ」

【参考】「潜在意識に打たせよ」(tips_164.html)

 

(April 09, 2017)

長いパット練習の必要性

中部銀次郎氏は「ロング・パットが入る確率は18ホールのうちほんの数パーセントで、ほとんどゼロに近い。それを練習しても意味がない。だから1メートルのパットをどんなラインからでも入れられるという自信がつくまで練習せよ」と云いました。最近私はこれはシングル・クラスに当てはまる言葉であって、初級、中級クラスがこれを信じてはいけないと思うようになりました。

中部銀次郎クラスだと長いパットを必ず1メートル以内に寄せられるので、だからこそ1メートルの距離の練習が重要なのです。私などは1メートル以上ショートすることも、1メートル以上オーヴァーすることも珍しくありません。これはロング・パットに慣れていないせいに他なりません。

100メートル走の練習しかしていない者に、突然42.195キロ走れと云っても無理なのと同じです。10メートル、15メートル、20メートル等の練習をして、1メートル以内、あわよくばギミー(OK)の距離につけるのに慣れておくべきです。これが出来ないのに1メートルのパットだけ練習するのは、詰め碁、詰め将棋ばかり研究して、肝心の碁・将棋の戦法を知らないようなものです。

次のは「80を切る・虎の巻」(tips_60.html)のPatrick J. Cohn, Ph.D.(パトリック・コーン博士)に、PGAツァーのプロ・テストまで受けたことがあるというスポーツ心理学者Robert K. Winters, Ph.D(ロバート・K・ウィンターズ博士)が加わって出版された本のパッティング練習法の一つ。

'The Mental Art of Putting'
by Patrick J. Cohn, Ph.D. & Robert K. Winters, Ph.D., Taylor Trade Publishing, 1995, $16.95)

「異なる距離のパットを練習せよ。3メートル、6メートル、9メートル、12メートル等。そして、その中間も。あなたが毎日3メートルのパットばかり練習していたら、9メートルのパットを沈められるだろうか?しょっちゅう距離を変えるべきだ。もし50パット練習するとしたら、3メートルの距離ばかりに専念してはいけない。コースで遭遇するであろう異なる距離のパットも沢山練習しておくこと。そうすれば、「げっ、こんな距離のパットしたこと無い!」という悲劇はなくなる。

同様に、異なるブレイクのパットも練習しておくこと。左から右や、右から左へ。大きなブレイク、小さなブレイク、そしてダブル・ブレイク。上りでブレイクのあるライン、下りでブレイクのあるライン。それらを異なる距離で練習しておく。

異なるブレイクのパットを練習すると、視覚化を助けてくれ、それはタッチを向上させる。ブレイクのあるパットには、タッチと想像力が不可欠である。あなたがブレイクをクリアに見られるか、感じられるなら、より自信を持ってストローク出来る。自分の得意なブレイクばかり練習してはいけない。左から右へのブレイクが苦手なら、そのブレイクにもっと時間をかけるべきだ。

 

多くのゴルファーは、練習グリーンの同じ場所から何発も何発もパットする。二回目か三回目にはどうブレイクするか飲み込めるので、そのラインに乗せればいいだけになってしまう。これはストローク法の練習にはいいかも知れないが、実戦に備える練習としては効果的でない。コースでは、どのパットも未知のラインである。毎回、白紙からラインを読んで、ラインに合わせたセットアップとタッチが必要になる。どのパットでも、コースでパットするのと同じ手順を用いるべし。毎回、ラインを読み、プレショット・ルーティーンを実施し、カップに向かってセットアップし身体の向きを揃え、そのホールにおける最後のパットのようにストロークする。これが通常のプレイなのだから、それと同じように練習すべきである」

[Srixon] [icon]

私はSrixonのputting disks(パッティング・ディスクス)という、カップ大の軟性プラスティック製円盤(二個一組袋入り)を持っています。これがあれば、既設のカップ位置に関係なく、どこにでもターゲットを設定出来て便利です。私はピンから横10メートルの地点Aに一つのディスクを置き、そこから上り5メートルでしかもピンまで10メートルの地点Bにもう一つのディスクを置きます(三角形)。ピン→A→B→ピンという風に10メートル、5メートル、10メートルの距離を練習し、時々順番を引っくり返してピン→B→A→ピンとすると、上りだったラインが下りになったりして変化がつきます。ブレイクも変わります。

ラウンド前にこの練習をすると、距離感が蘇り、忘れていた重要な留意事項を思い出すことが出来ます。10メートルの距離だと、ミスの誤差が拡大されるので、短いパットでは許容範囲のように思えるセットアップやストロークの不備が発見出来たりします。

本日、No.7(160ヤード)パー3で、私はワンオン出来たもののピンまで上り8メートル。これは、普通ならわれわれシニア・グループでは上級クラスにしか成功を期待出来ない距離です(あるいは、まぐれか)。私が他のチーム・メンバーのパット(失敗)でブレイクの読みを助けられたとはいえ、上りの8メートルを10メートルとして打って成功させることが出来たのは、日頃の長めのパット練習の賜物だと思っています。ボールはカップの縁でコンマ1秒ほど静止し、ぽとんと落下しました。完璧な強さでした。

【おことわり】putting disksの写真はhttps://s-media-cache-ak0.pinimg.comにリンクして表示させて頂いています。

(April 12, 2017)

プロとアマの池越え

Annika Sorenstam(アニカ・ソレンスタム)による池越えの考え方。

'Be the Ball'
edited by Charlie Jones and Kim Doren (Andrews McMeal Publishing, 2000, $14.95)

「目の前に池があっても、われわれプロは池のことなど考えない。もちろん、池がそこにあることは承知しているが、どこを狙ってどのクラブで打つか決断を下す時、目の前に何があるかなど考えない。単にショットを遂行するだけの問題なのだ。多くのアマチュアは、スウィングの最中に池のことを考えてしまう」

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最近のことです。No.12(180ヤード)パー4。チームのうち赤ティーから打つ75歳以上の二人と別れ、私ともう一人は池越えになる黄色ティーへ。私は3番ウッドを短く持ったにも関わらず、まっしぐらにピンに向かったボールはグリーンをオーヴァー。がっかりしながら、相棒の素振りを見ていた私は、彼がどんなショットをするか内心で占ってみました。私の予見は「彼は池に打つ」というものでした。(まさかね…)と思いつつ見守っていると、本当に池ポチャでした。彼に、「池のことを考えなかった?」と聞くと、「考えたよ。だから古いボールを使ったんだ」とのこと。私には、彼の姿に漂う池ポチャのオーラが見えたのです。もちろん、彼にそんな話はしませんでしたが。

 

《悪い予感は必ず実現する》という法則があります(拙作ですけど(^^;;)。「木に当たるかも知れない」、「バンカーに入るかも知れない」、「OBに打っちゃうかも知れない」…これらは十中八九実現します。重い花瓶を抱いて運んでいる時、「落とすかも知れない」と考えたら必ず落とします。「落とすかも知れない」という思考は、落とすこともあり得る、落としても仕方がない…と、心の中で落とすことを許容しているわけです。これじゃ落としますわね。

(April 16, 2017)

Runyan(ラニャン)式パット練習法

これは、今は亡きインストラクターJim Flick(ジム・フリック)が紹介した、絶頂期のPaul Runyan(ポール・ラニャン、1908〜2002、写真)のパッティング・ドリル。かなり高度なので、われわれ80を切るレヴェルでは無理かも知れません。

[Runyan]

'On Golf'
by Jim Flick with Glen Waggoner (Villard Books, 1997, $24.00)

「ゴルフ始って以来最高のショート・ゲーム名人の一人Paul Ranyanによる、パッティング・ドリルの傑作の一つである。

練習グリーンの平らでストレートな1メートルのラインを選び、ボールを三個、次のように打ち分ける。
1) 最初のボールは、カップの前から最後の一転がりで落ちるような強さで打つ。
2) 二番目は、カップの向こうの壁まで充分に届く強さで打つ。
3) 最後は、カップの向こうの壁に当たってぴょん!と飛び上がってからカップに落下するように打つ。

簡単に思えるだろう(1メートル前後なら確かに簡単である)。しかし、このプロセスはとても意味深いものなのだ。このドリルであなたがやることは、イメージに反応してストロークすることであり、あなたがそのイメージを描き出すのだ。

『私は“こんな風に”このパットを遂行する』と云う際、あなたは自分自身に具体的な何かを義務づけるので、態度としてとても重要なのである。それは一般的な『私はこのパットを沈めるぞ』と云うのとは違い、『私は“こんな風に”このパットを沈めるぞ』と云っているのだから。

次に、1.5メートルに後退して同じことをしよう。今度はちょっと難しい。だが、それは重要なことを教えてくれる。あなたはパッティング動作を練習しているのではなく、どうすればボールに最適な転がりを与えられるかを模索しているのだ。

ブレイクのある部分でこのドリルを行うと、ますます楽しくなる。様々な方向から、強さと狙いを調整しながらパットする。

このドリルのポイントは、イメージが明瞭であればあるほど、そのイメージにマッチするストロークを決定し易くなり、パットの成功に突き進むことが出来るということにある。

このドリルはパッティングに関する基本的事実:《強さがラインを決定する》という法則を理解させてくれる。繰り返す、《強さがラインを決定する》のだ。あなたがストロークの強さを考えずに、グリーンの傾斜だけ考えてグリーン上で突っ立っているなら、パットの助けになるイメージを描くことなど無理であろう。

パットする前に、上の三つの強さをイメージして、最適の選択をする。あなたが描き出したイメージに基づいて方針を決め、あなたのイメージに反応したストロークを遂行すべきなのだ」

【参考】「ショート・ゲームのパイオニアPaul Runyan(ポール・ラニャン)」(tips_148.html)

【おことわり】画像はhttp://bflowriter.comにリンクして表示させて頂いています。

(April 23, 2017)

快適領域を出(いで)よ

「85ぐらいで廻れれば、ま、いっか…」というようなゴルファーの心理状態があります。例えば、ハンデ15のゴルファーにとっては87が“パー・プレイ”なので、彼にとって85は“2アンダー”です。彼の目標設定(この場合85)をターゲット・スコアと云います。以下はスポーツ心理学者Patrick Cohn, Ph.D.(パトリック・コーン博士)の指摘。

'Going Low'
by Patrick Cohn, Ph.D. (Contemporary Books (2001, $22.95)

「このぐらいで廻れれば…という予測は、偽装されてはいるが快適領域でプレイすることと同根である。これはゴルファーの間にかなり蔓延している自滅的想念だ。プレイヤーの期待に基づいたこの症候群は、その日の現実的スコアと仮想するものに根ざしている。常に期待の範囲内のスコアで廻ろうとしたのでは、生涯初のスコアなど生まれることはあり得ない。期待したよりいいスコアになるのは幸運に恵まれた時だけだ。あなたは、自分の能力はこの程度だ…と考える域を脱することが出来ない。この場合、あなたは単にあなたにとって可能であると思われるスコアの範囲内に甘んじるほかはない。

予断から逃れる第一歩は、ターゲット・スコアを設定したり、特定の日に達成したいスコアに焦点を合わせたりしないことだ。ターゲット・スコアは偽装された期待以外の何ものでもない。

あなたがハンデ20で、ボギー・ゴルフをすることでハッピーなら、どのホールもボギーで廻ろうとするに違いない。そういう心構えは、ダブルボギーの量産に続くのがオチである。それは、ツァー・プロが予選を通過しようと必死になることに類似している。『予選カットを免れなくちゃ』という態度は、あまりにカットに焦点を合わせ過ぎ、カットラインすれすれを行ったり来たりし、一打差で予選を通過かカットの憂き目かという結果に陥る。Tiger Woods(タイガー・ウッズ)の目標は、参加するどのトーナメントでも優勝することであった。彼は自信満々であり、その態度は自分に過大な要求を強いるものであったが、彼は自分自身を卓越した高みに押し上げたのだ。彼は優勝出来なくても、トップ10に納まることが出来た。

 

多くのツァー・プレイヤーはターゲット・スコアを設定することを避ける。PGAツァー・プロScott Verplank(スコット・ヴァープランク、現Championsツァー・プロ)は、その姿勢で生涯初の62を達成したプロである。彼は、ラウンド開始前にどれだけのスコアを達成すべきか…などと考えるべきではないと確信している。彼はターゲット・スコアに焦点を合わせない時にベストのゴルフをする。彼は云う、『スコアについて考えず、単にゲームをプレイする時、どんなスコアになるかの限界はない。スコアに注目しなければ、いいスコアを達成する能力は増大する』」

【参考】「80を切る・虎の巻」(tips_60.html)

(April 26, 2017)

上達への期待は危険である

 

筆者Ray Floyd(レイ・フロイド)はThe MastersとU.S.オープンに各一回、PGA選手権に二回優勝し、世界中で66回の優勝を遂げたプロ。

'The Elements of Scoring'
by Raymond Floyd with Jamie Diaz (Simon & Schuster, 1998, $20.00)

「ゴルフにおいて期待するということは、とても危険なことだ。上達しようと懸命になっている時、何らかの報奨を期待するのは自然である。だが、ゴルフでは何も保証されない。そして、期待するとプレッシャーを作り出し、失望の可能性を増大させるだけだ。

私は期待するのでなく、希望を抱くことにしている。私は成功する能力を持っているという自信はあるが、最良のことを望みながらベストを尽くしつつも、最悪の結果をも覚悟している。私がティーオフする時、私は只二つのことを期待する----フェアウェイを歩くのを楽しむこと、そしてどのショットにも全力で当たることだ。これは私が発見した最も役立つ考え方である」

(April 26, 2017)

馘を賭けた決断〜Tiger Woods(タイガー・ウッズ)のチップイン映像秘話

2005年のthe Masters(マスターズ)最終日のNo.16(池越えのパー3)におけるTiger Woods(タイガー・ウッズ)の二打目のチップインは忘れられるものではありません。Tiger(タイガー)のピンの遥か左上に着地させたチップショットは、ころころと下ってカップに向かい、もう一転がりというところでストップし、Nike(ナイキ)のロゴを1秒ぐらい見せ(莫大な宣伝効果)、やおらぽとんとカップイン。Tigerがもの凄い右下へのブレイクを完全に読み切り、完璧な距離感で放ったショットでした。その一部始終を捉え切ったCBS-TVの映像も見事でしたが、ひょっとするとあの放送は大失敗になるところでした。その裏話をどうぞ。

 

1986年のthe Masters(マスターズ)は46歳で優勝したJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)のトーナメントとして知られていますが、彼がNo.17(パー4)での下り3.7メートルのパットを沈めた時、No.17の実況アナだったVerne Lundquist(ヴァーン・ランドクゥイスト)が発した"Yes, sir!"(お見事!)という言葉でも有名で、この場面がTVで引用される時は必ず彼の言葉付きで放送されます。2005年、Verne LundquistはNo.16を担当していて、Tiger Woodsのチップインを目撃することになりました。

'My shot'
by Verne Lundquist with Guy Yocom (Golf Digest, May 2017)

「われわれは皆、Tigerのボールがカップにつんのめる瞬間を捉えた驚くべき映像を目にしている。私の役目は『オー、ワオ!一生のうちでこんなものを見たことある?』と叫ぶことだった。だがもしNorm Patterson(ノーム・パタースン)という名の男がいなかったら、誰一人あの場面を見ることは叶わなかったろう。Tigerのボールがとろとろと傾斜を下り、カップの縁で停止したように見えた時、番組のディレクターSteve Milton(スティーヴ・ミルトン)はボールを捉えているカメラから、Tigerを捉えているカメラにスウィッチしようとした。彼は云った、『6カメ用意、…はい6カメ!』それはTD(テクニカル・ディレクター)であるNorm Pattersonに、Tigerの表情を捉えている6番カメラの映像への切り替えボタンを押せという指令であった。その指令はディレクターSteve Miltonがなすべき完全に正しい決定だったが、TDのNorm Pattersonはその指令を拒否した。彼はボールの映像から離れようとしなかった。

 

それは非常に反抗的な態度であった。大ネットワークにおいて、ディレクターの指令に服従しないのは、馘になっても仕方がない違反行為である。もし、ボールがカップの縁に留まり続けて、視聴者がTigerの悲痛な表情を見られなかったとしたら、Norm Pattersonは厳しい懲罰を受けたであろう(私は内心それを疑わない)。だが、ボールが転げ込んだ時、Norm Pattersonは社内の伝説的英雄となった。彼は、単にゴルフの歴史の中でTVの名場面の一つを生み出した男というだけでなく、彼が職業的生命を賭けた一世一代の博奕に対しても畏敬の対象となったのだ。

翌年の一月、45歳のNorm Pattersonは出張先でのジョギング中の心臓麻痺で亡くなった。彼が反抗した相手であるディレクターSteve Miltonは、葬儀の際Norm Pattersonの直感と本能への信頼の証しとしてこの逸話を人々に語ったのだった」

(April 26, 2017)

安全に打とうとする時の陥穽

パー3で「オンしなくてもいいから、とにかく真っ直ぐグリーンの方向へ飛ばそう」とか、ドライヴァーが乱れた後のホールで「飛距離は落ちてもいいから、とにかく無難に真っ直ぐ飛ばそう」と決意して打ったのに、決意に反して、ボールはやはり明後日(あさって)の方向へ。

無難に真っ直ぐ飛ばそうという時、先ず考えるのは大振りしないこと。そして力まずゆっくりのテンポ…などでしょうか。

[No hands]

それらは間違いなく正しい。しかし、われわれは(少なくとも私は)コンパクトなスウィングをしようとする時、大きな間違いを犯しがちです。それは肩を廻す努力を放棄してしまうこと。コンパクト・スウィングでも、程度の差こそあれ背はターゲットに向け、左肩は顎の下に来なければならない。身体を捩る…それはパワフルなスウィングでもコンパクト・スウィングでも共通の基本の筈です。小手先でなく、身体の大きな筋肉主体でスウィングすることが(パワーと共に)方向性を約束してくれるものです。それなのに、「飛距離は望まないのだから…」と身体の捻転をさぼり、単に手と腕でクラブを持ち上げてしまう。半分しか捻転しない。これは完全な手打ちであり、手と手首主体のバックスウィングのため方向性は滅茶苦茶になります。明後日(あさって)の方に飛んで当然です。

英語圏の子供が自転車を習い始め、初めて手放しで乗れた時に発する言葉は"Look, Ma! No hands!"(見て、ママ!手放しだよ!)というものですが、身体を廻さないゴルフ・スウィングは"Look, Ma! All hands!"(見て、ママ!手だけだよ!)ということになってしまいます(^-^)。

市営ゴルフ場のNo.7(160ヤード)パー3。距離は短いし、下りだからと甘く見ると、フェアウェイから右へ捩じれている勾配によって、ボールは右の池の方にどんどこ転がってしまいます。下りの160ヤードに3番ウッドを使うというのは馬鹿げて見えますが、私にとってはぴったりであることを経験上知っています。そして、グリーン手前左を狙うと、グリーン中央にボールが駆け上がってくれることも。しかし、ある日からその左を狙うというセコい作戦をやめ、グリーン中央を狙うことを始めました。それに何度か成功した最近のある日のこと。私は自分の最適の幅である90°の捻転をし、3番ウッドのヘッドの真ん中でボールを捉えるべく目を見開いて凝視しながらスウィング。その凝視はボール後方に頭を残してくれ、スクウェアに振り抜く完璧なスウィングに繋がり、グリーン正面のエッジに着地したボールは、するするとピン傍70センチへ(バーディ)。

上の例は、飛距離を望まず安全に打とうとする時でも、やはりゴルファーに最適の捻転は必要であり、短いショットでも頭を残してスクウェアに振り抜くことがいかに大事かを証明しています。いつもこういうショットが出来るといいのですが(^^;;。

【おことわり】画像はwww.westernclippings.comにリンクして表示させて頂いています。

(May 03, 2017)

クラブを依怙贔屓するべからず

 

長年ツァーの賞金王だったTom Kite(トム・カイト、写真)が説く、クラブ再点検の勧め。

'How to Play Consistent Golf'
by Tom Kite with Larry Dennis (Pocket Books, 1990, $14.00)

「コース・マネジメントの成功は、あなたのバッグの中の全てのクラブの使い方に長けると非常に簡単に実現出来る。それは練習場での技術的向上に始まり、全てのクラブへの信頼という結果に進む。誰かが私に『私の好きなクラブはどれか?』と聞いたら、『14本全部だ』と答えるだろう。遅かれ早かれ、14本のどれか一つが必要になる状況が訪れるからだ。もし、その時私がそのクラブを毛嫌いしていたら、その前後のクラブを使うしかないが、絶対にそんな風にはなりたくない。バッグから取り出したくないクラブなどあってはならない。

同様に、お気に入りのクラブも持つべきではない。何故なら、それでは他のクラブはあなたのお気に入りではなくなるからだ。だが、私がプレイした多くのアマチュアは、この指針に反している。彼らは8番アイアンを愛し、2番アイアンを嫌う。その理由の大半はスウィングの問題だろうが、往々にして心理的な問題でもある。もし8番アイアンが好きなら7番アイアンも好きであるべきで、7番アイアンが好きなら6番アイアンも好きであるべきだ。これは、クラブ・セットの最後まで続く。あなたは3番アイアンに至るまで全てのクラブが好きだと云うかも知れない。あなたは3番アイアンが打てないが、2番アイアンを愛する。だとしたら、あなたにスウィングの問題はなく、あなたの3番アイアンに問題があるのだ。それは大抵のアマチュアが自覚しないことだ。クラブ・セットは完璧にマッチしている筈なのだが、往々にしてそうではない。

だから3番アイアンを捨てるか、それを他のクラブと同じように感じられるまでに調整すべきだ。あなたが使いこなせないとか、打つのが恐いようなクラブを担いでいるのは、絶対に上手く打てないわけだから意味がないことだ。

あなたが8番アイアンを愛するなら、私のお勧めはあなたの全てのクラブを8番アイアンのように感じられるように調整することだ。【註】どんな方法でもよいから、何かすべきだ。どれもが同一のバランス、適切なウェイト、正しいロフトとライ角を持つようチェックすること。あなたのインストラクターあるいはクラブ・フィッターに助けを求めるとよい。調整が終わったら、全てのクラブを8番アイアンのように振る。これは私が上げられるベストのアドヴァイスである」

 

【編註】PGAツァーの新人Bryson DeChambeau(ブライスン・デシャンボー)は、全てのアイアンのスペックを7番アイアンと同じに揃えているそうです。(tips_179.html)

(May 17, 2017)

クラブとゴルファーの脳の知られざる関係

 

仲間の誰かが新しいドライヴァーを仕入れ、毎ホール楽々と飛ばしているのを見ると、「ちょっと打たして」という気になりますよね。しかし、必ずといっていいほど、われわれの試しの一打はチョロになるか凄く曲がったりするものです。それは何故か、この記事はその謎を解いてくれます。

'Real Golf'
by David Gould (Andrews McMeel, 2002, $10.95)

「練習場で友達の3番ウッドを試させて貰った時、最初はお粗末なショットだったものの、二打目、三打目には必ずと云っていいほど良いショットが打てるのに気づいているでしょう。それはどのクラブも力学的特性(シャフトの固さ、重さ、ロフト等)を備えており、経験豊富なゴルファーの脳は、たとえ二、三回の試打でもその特性を把握し、うまく調整して対応するからだ。ワシントン州のクラブ・フィッターChris Aoki(クリス・アオキ)は、顧客のそういう現象を飽きるほど目撃している。

似たようなことがあなた自身のクラブ・セット内でも起り得る。特にあなたのセットがプロの手でカスタム・フィットされてない場合に…。そしてそれはトラブルに繋がる。Chris Aokiは次のように云う。

『あなたがNo.1のティー・ショットで打った3番ウッドは、オフセットのヘッドで、柔らかいシャフトだったと仮定しよう。その数分後、あなたは6番アイアンを打つことになったが、それはオフセットではなく、しかも固いシャフトだ。不幸にも、あなたの脳は先ほどの3番ウッドのスウィングと、それが狙った場所の左へ向かったことを覚えている。その左に逸れたショットは無意識に脳の微調整を促し、次のショットの準備をする。問題は、その微調整が異なるデザインのクラブに適用され、不適切な調整となってしまうことだ』

 

では、どうすればいいのか?バッグを厳しい目で点検し、あなたが真に嫌いなクラブを選び出すのだ。それらのクラブは実際にそれらを打つ時のトラブルの原因となるだけでなく、脳の微調整症候群によって、それらを使った後の次の別なクラブによるショットをもトラブルに巻き込んでしまう。

Chris Aokiは云う、『建設的に考え、あなたのお気に入りのクラブを二、三本選ぶことだ。それらをあなたが好むのは、それらがあなたにフィットしているからだ。その数本のクラブを信頼出来るクラブ・フィッターに見せ、それらの特徴に合致するクラブの購入を助けて貰えばよい。究極の目的は、バッグの中全部をお気に入りのクラブにすることだ』」

(May 17, 2017)

こんなクラブ・フィッターには頼むな

'How to avoid a bad clubfitting'
by Brittany Romano ('Golf Digest,' January 2017)

「あるゴルフ・ケア・センター責任者は、次のようなクラブ・フィッターを避けよと警戒信号を発する。

1. フィッティング・プロセスについて説明しないクラブ・フィッター。あなたはなぜフィッティングが必要なのか知るべきだ。

2. あなたのプレイやクラブについて質問しないクラブ・フィッター。基準点を知らなければ、いかに改善されたかを知ることは出来ない。

3. 最新の道具を使わないクラブ・フィッター。ローンチ・モニター、ヴィデオ・トラッキング、フィッティング・システム等は凄く進歩している。感覚は大事だが、技術的分析も重要である。

4. 選択肢が少ないクラブ・フィッター。あなたはあなたのゲームにベストなものを求めているのであって、クラブ・フィッターの財布が必要とするものを求めているのではない」

 

(May 17, 2017)

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