Golf Tips Vol. 169

ハードに打つのと、早く振るのとの違い

PGAインストラクターだった祖父、PGAツァー・プロだった父、上級アマである母、インストラクターの夫、インストラクターの義父を持つという凄い家系の女性インストラクターKellie Stenzel Garvin(ケリィ・ステンツェル・ガーヴィン)による、早いスウィングの勧め。

'The Women's Guide To Golf'
by Kellie Stenzel Garvin (Thomas Dunne Books, 2000, $24.95)

「ゴルフ・クラブの重量のほとんど全てはクラブヘッドにある。そのクラブヘッドは、スウィングの間じゅうフリーに振られるべきものだ。クラブヘッドを振ることは、身体の動作へのリアクションとしてバックスウィングで手首をコックさせ、ダウンスウィングでそれをアンコックさせる。これを行うには、クラブヘッドの重さを正しく感じ取るための柔軟性が求められる。

[Lexi]

もし私が身体の堅さやクラブを握る強さがきつ過ぎると感じたら、クラブヘッドの自然なスウィングを感じ取れるよう、リラックスするための素振りを数回する。緊張したままクラブヘッドを過剰にコントロールしようとしても、リラックスしている時のようにはうまく打てないからだ。

クラブヘッドのスウィングの感覚を得るには、両足をくっつけて立ち、クラブの末端の重さを感じ取る。その重さが感じられない場合は、クラブを逆さまにし、ヘッドの方を握ってスウィングする。その後、普通の状態に戻せば、両者の違いを感じることが可能になる。どちらの場合でもダウンスウィングで『ヒューッ!』という音を出すこと。

自分の飛距離が長い短いに関わらず。誰しももっと遠くに飛ばしたいと思っている筈で、それは人間の本性である。ストレートに打てる人は、もっと遠くへ飛ばしたいと思うし、飛ぶ人は真っ直ぐ打ちたいと願う。ムラなく打てるようになるには、いくつかの基本を押さえておく必要がある。先ず、ソリッドに打つ基本を構築し、それから距離を増す努力をする。

遠くへ飛ばす努力をする際に理解しておかなければならないのは、クラブヘッドによって生み出されるスピードが飛距離をもたらすということだ。さらなる『ヒューッ!』という音がボールを遠くへ飛ばす。その音はあなたがクラブヘッドを加速している証拠である。早いスウィングとハードに打つことの間には大きな違いがある。早いのは良いが、ハードは良くない。私がよりハードに打とうとすると、緊張を生み出してスピードを失い、身体のバランスを崩してしまう。クラブヘッド側を持って素振りをし、『ヒューッ!』という音を出す練習をすること。その練習によって、早い(良い)スウィングと、飛距離を失うハードな(良くない)スウィングとの違いを覚えるように」

【参考】「簡単にパワーを生む三つの鍵」(tips_167.html)

(January 06, 2016)

ボールをぶっ壊すパワーで打て

2014年Re/Max世界ロング・ドライヴ選手権優勝者Jeff Flagg(ジェフ・フラッグ、30歳)による飛ばし方の秘訣。この選手権は単に飛べばいいという競技ではなく、横幅55メートル以内に収まる正確さを伴わなくてはなりません。そのためJeff Flaggはバランスよくスウィングすることを強調します。

'How to tear the cover off the ball'
by Jeff Flagg with Ron Kaspriske ('Golf Digest,' January 2016)

「あなたのティー・ショットの飛距離は?え、210ヤード?じゃ、270ヤード打てるとしたら、どうかな?一遍も300ヤードを越えたことがないの?追い風で、下り坂で、しかもカラカラに乾いたフェアウェイでも?ケッ!そんなの、つまんないじゃん。世界ロング・ドライヴ・チャンピオンとしていくつか学んだ秘訣を教えるから、これで生涯最高のロング・ドライヴを放って頂戴よ。

・衛星軌道に届かせるように立て

ホームランを打つように立つ。バントを打つような体勢じゃ駄目。若干後方の脚に多めの体重を掛ければ、左肩が上がり、背骨がターゲットから遠ざかるように傾いで発射台が形成される。この体勢はボールを掃くように打つことを推進し、少ないバックスピンによってボールは高く打ち上げられる。高く上げない限りボールが遠くへ飛ばないのは、赤ん坊にだって解る理屈だ。

[Daly]

・右肘は浮かせるべし

身体を捩らずに大きなバックスウィングをする。ストレッチするのだ。ボクシング・ジムにあるパンチング・バッグを目一杯の力でぶっ叩く時のように。その瞬間のあなたの右肘を見て欲しい。身体から大きく離れている筈だ。でしょ?

多くのインストラターが、バックスウィングで肘を身体から離すなと説いているのは先刻承知。あなたが200ヤードの奥様ゴルフで満足してるのなら、肘を身体にくっつけたままで結構だ。だが、真剣に飛距離を増そうと思うなら、あなたが生み出せるエネルギー要素を総動員すべきだ。だから、フライイング・エルボー(右図)によってノックアウト・パンチをかます気にならなきゃ駄目なのよ。【註】

【編註】「体型別スウィング」の共著者たちによれば、フライイング・エルボーは強靭な幅広型ゴルファーのスウィングには有益ではあるが、他の体型には害があるそうなので御注意。John Daly(ジョン・デイリィ)は幅広型です。

・水切りのインパクトに学べ

池のあるところで小石を投げて水切りをしてみてほしい。その時、あなたは腰の回転とか、体重移動、レイト・アンコックなどについて考えているだろうか?賭けてもいいが、あなたは水を切ることに集中していて、身体はその目的に自然に反応しているだけだろう。それこそがロング・ドライヴの秘訣だ。支配的な腕にスウィングを支配させよ。水切りのようにダウンスウィングをすれば、身体はその動きに同期して動く。

・スピードの限界を追求せよ

あなたが今やっているスウィングのままで飛距離増が望めるなどと夢想してはならない。腕を可能な限り早く振る必要がある。ただし、バランス(あるいはコントロール)を失う一歩手前に制限すること。

あなたの腕の最高のスピードをテストするには、後方の足の爪先を上げ、その足をボールの15センチ後方に位置させて立ち、出来るだけ早くスウィングする。出来るだけ早くといっても、バランスを崩してはならない。スウェイしたりよろめいたりするのはやり過ぎである。スピードはロング・ドライヴ世界の王様ではあるが、クラブフェースの真ん中で打てないのでは無意味だからだ」

【参考】
「Lexi Thompson(レキシィ・トンプスン)のバックスウィング」(tips_167.html)[←フライイング・エルボーについて]
「ロング・ドライヴ・チャンプの秘密」(tips_49.html)
「続・ロング・ドライヴ・チャンプの秘密」(tips_100.html)
「75歳で300ヤード打つ秘訣」(tips_130.html)
「RE/MAX女性チャンピオンのロング・ドライヴ」(tips_163.html)

(January 06, 2016)

ピンを狙うにゃ十年早い

'Knock down the pin!'
edited by David Denunzio ('Golf Magazine,' January 2016)

「パーオン率を上げる近道は、ピンを忘れてグリーンの真ん中を狙うことだ。これはことをシンプルにするし、役にも立つ。次の2015年のPGAツァーのデータを見て欲しい。

アプローチ・ショット
(ボールからピンまでの距離)
達成度
(乗せた後のピンまでの距離)
100〜120ヤード
6メートル
160〜175ヤード
8.4メートル
200〜225ヤード
12.5メートル

世界レヴェルの切れ味のいいプレイヤーたちでさえ、御覧のようにかなりの距離を残している。そして、あなたの場合は上の数字よりもっと大きい筈だから、アプローチ・ショットに失敗した場合のための広い許容範囲を設定することが重要だ。グリーンの最も広い部分を狙えば、スコアカードに醜悪な数字を記さずに済む」

【参考】
・「グリーン中央を狙え」(tips_104.html)
・「ピンを狙うな」(tips_108.html)

(January 10, 2016)

飛距離とパーオン率で優っても、ショート・ゲームで負けるという実話

LPGAツァー創始者の一人Louise Suggs(ルイーズ・サグズ、1923〜2015)は、メイジャー11勝を含め、生涯で全58勝を挙げたプロ。

'Letter from Louise Suggs'
from 'Golf Magazine's Pro Pointers and Stroke Savers'
edited by Charles Price (Harper & Brothers, 1960)

「ストローク・プレイにおけるショート・ゲームは、ティーからグリーンまでのお粗末なプレイを完全に帳消しに出来るし、マッチプレイでは対戦相手の士気を完璧に挫くことが出来る。

そのいい例が、20年ほど前にジョージア州の私のホームタウンで行われたローカル・トーナメントでのマッチ・プレイだ。私は一日中相手の女の子を圧倒していた。14のホールにパーオンさせ、スコアは76だった。私の対戦相手はたった三つのグリーンにパーオン出来ただけ。しかし、彼女は残る15のホールを1パットで凌ぎ、途方もないと云ってもよい75で上がったのだ。

後に、私はそのマッチ・プレイを一打毎に振り返ってみて、最初のホールがマッチ・プレイ全体を占う手掛かりを示していたことに気づいた。No.1は長いパー4で、私はウッドによる二回の快打でグリーンを捉え、カップから6メートルに寄せていた。私の相手はドライヴァーによるてんぷらでボールを150ヤードほどフェアウェイに運び、二打目もダフって150ヤード進めただけ。彼女は三打目に100数ヤードのピッチ・ショットの距離を残していた。彼女の次のショットは素晴らしかった。ボールはピンの手前4.6メートルのところに着地し、急停止した。私の最初のパットはカップに90センチほどショート。彼女はパットを沈め、私は返しのパットに失敗し、勝って当然のように見えたホールで負けてしまった。

その第一ホールの成り行きは、全体のマッチ・プレイの流れを決定づけた。私はティーからグリーンまで素晴らしいプレイを展開したが、パットを沈めることが出来なかった。一方、彼女はラフやバンカーその他の障害物大全集からグリーンに寄せ、しかも1パットで上がった。彼女のミッション・インポッシブルな状況からのリカヴァリーは、私の意気を挫き、私がリードするチャンスであるバーディ・パットを失敗させた。しばらくして私は考え始めた。『私の全てのいいショットの取り柄は何なの?彼女は毎回トラブルの一つから脱出して来て、長いパットを沈めて引き分けか、あるいはホールの勝ちをせしめている』

出来ることなら、私は普通にいいゲームをする相手とプレイしたかった。トラブルだらけのひどいプレイをしながら、見事なショート・ゲームと素晴らしいパットをする相手なんぞでなく…。何故なら、長いショットでどんなトラブルに見舞われようとも、パターの一振りが全てを帳消しにしてしまうのである。あなただってチッピングとパッティングが良ければ、スコアが悪くなりようはないのだ」

(January 10, 2016)

ゴルフを楽しくするゲーム(ショート・ゲーム練習篇)

'Shave 10 Strokes in 12 Days'
by Sandy LaBauve and George Kehoe (Berkley Publishing, 1994, $9.95)

[shave]

「以下のゲームは、単に楽しいだけでなく、熱中している間に知らず知らずのうちにゴルフに上達する優れものである。一つはパートナーが必要だが、他は一人ででも複数でも楽しめる。

Hoot and Scoot(フート&スクート、野次と突撃)【必要人数:制限なし】

 参加者は銘々ボールに自分のだと分るようにマークする。最初のターゲットを決め、一人が全員のボールを一斉にグリーンの外に抛り投げる。各々、自分のボールをピンに寄せ、ホールアウトする。打数の少ない者が勝つ。タイの場合は、カップに最も近かった者の勝ち。その勝者が次のターゲットを選び、全員のボールを抛り投げる。五回戦行う。

Pick a Club(ピック・ア・クラブ、クラブを選べ)【必要人数:制限なし】

 一人が狙うべきターゲットと、全員が使うべきクラブを指定する。全員が同じクラブを用いる。『これはサンド・ウェッジのショットである」と指定されたら、全員がそれで寄せ、ピンに最も近く寄せた者が勝ち、次のターゲットと使用クラブを指定する。最初に10回勝った者が勝者となる。これは創造力を刺激するゲームである。

Up and Down(アップ&ダウン、寄せワン)【必要人数:特になし】

 グリーンの周りに九つのボールを九つの異なるライに配置する。爪先上がり(下がり)、左足上がり(下がり)とか、濃いラフ、フェアウェイ、ふわふわ浮いているライ…その他。それら全てを寄せ、ホールアウトする。スコアを記録し、いくつ寄せワンのパーに出来たか数える。

High/Low(ハイ/ロウ、高い弾道、低い弾道)【必要人数:二人】

 サンドウェッジを使って友人と競い合う。一人がターゲットに向かって打ち、それより高いボールか低いボールを指示する。彼が指示通りに成功すれば1点。彼がミスしたら最初の一人が1点。10点になるまで続ける。どうすればボールの軌道を変えられるか知らねばならない」

【おことわり】画像はhttps://books.google.com/にリンクして表示させて頂いています。

(January 10, 2016)

素振りは三回せよ

「体型別スウィング」の共著者の一人で、元ツァー・プロでもあるインストラクターMike Adams(マイク・アダムズ)による、よいテンポでスウィングするコツ。

[Jordan]

【編註】筆者Mike Adamsはリズムとテンポをごっちゃにしているのですが、「メトロノームのように」というこの記事の趣旨からいって「テンポ」に統一すべきだと判断しました。リズム・パターンを刻める電子式メトロノームも存在するものの、この記事で触れられている振り子を使う機械式メトロノームの機能は、テンポを刻むことに限定されているからです。補足すると、ワルツの「リズム」と云う時、それは「ズンチャッチャ」という三拍子を指し、そのワルツはスローにもクイックにも演奏出来ますが、その速度が「テンポ」です。

'Get your timing right'
by Mike Adams ('Golf Magazine,' January 2016)

「あなたは生来の自然なテンポを持っているわけで、遅めのバックスウィングは動作のテンポのズレによってミス・ヒットに繋がるかも知れない。あなたの理想的なテンポを見つけるには、メトロノームの振り子のように三回連続の素振りを目一杯の速度で行う。

遅過ぎるとか早過ぎるとかの心配は無用。三回目のバックスウィングに注目。それがあなたのベストのテンポだろうからだ。何故?連続した動きは、クラブをコントロールするのとオン・プレーンに保つために必要な適切な勢いを作り出す。それを静止した状態から一回のスウィングで作り出すのは困難である。これは単に有益なドリルというものではなく、あなたのプレショット・ルーティーンとすべきものだ。より早いバックスウィングがあなたに相応しいテンポかどうか、感じ取ってほしい」


[icon]

Jordan Spieth(ジョーダン・スピース、上図)も、切れ目無しに連続した数回の素振りをします。ただし、3/4〜1/2スウィングであって、本番のようなフル・スウィングではありませんが…。回数も二回だったり三回だったり(四回の時もある)、まちまちです。テンポと勢いを確立しているのでしょう。確かに「静止した状態から一回のスウィングでテンポを確立するのは困難」なので、このJordan Spieth方式は良いプレショット・ルーティーンに思えます。

私はパッティングの際、カップを凝視しながら連続した素振りをします。目から入る情報(距離)と、それに相応しいストロークの強さ(距離感)を筋肉に覚え込ませるためで、回数は決めずガッテン出来るまで繰り返します。

【参考】「自分固有のテンポでパットせよ」(tips_163.html)

(January 13, 2016)

ピッチングとチッピングの距離調節・完全版

これほど簡単な距離調節法は他に存在しないであろうと自慢出来るほど、簡単至極な寄せ方です。私の場合、ピッチングでピンの左右にズレることはあっても、距離だけはほぼ完璧です。もちろん、ダフったりトップしたりすれば距離は乱れますが、ボールをちゃんと打ちさえすれば概ね正確な距離が得られます。【注意】私が60ヤード以内のピッチングとチッピングに使用している60°ウェッジはフェアウェイ用で、バウンス角は7°です。バンカー用のバウンスの多いウェッジだと、地面で弾かれる恐れがあります。(このウェッジは雨で固くなったバンカーでも役立ちます)なお、私は60°ウェッジをチッピングにも使っているものの、ボールを上げるのではなく低く転がします(ボール位置はスタンス中央か少し後方)。わざわざロフトの多いクラブを使って転がすというのは奇妙かも知れませんが、私はこの方法が気に入っています。読者もお好みのクラブを選べばいいと考えます。

以下のアイデアは《クラブを1インチ(2.5cm)短く持つと1クラブ短いものに相当する》という事実に基づいています。私の場合、1クラブは丁度10ヤード刻みなので、1.25センチ短く持つと飛距離を5ヤード減らせることになります。私は先ずアイアンやハイブリッドに1.25センチずつのマークを三つずつ付けました。例えば、5番アイアンであれば、普通に持って打つと私の場合150ヤードですが、これを正確に145ヤード、140ヤード、135ヤード打つクラブにも変えられるわけです。21°ハイブリッドを普通に握って打てば190ヤードですが、それをぴったり185ヤード、180ヤード、175ヤード飛ばすクラブにも出来るのです。

グリーン近くになればなるほど距離感が重要になって来ます。52°のギャップ・ウェッジも上と同じように、普通に持てば90ヤードですが、これを85ヤード、80ヤード、75ヤードにも打てますし、56°のサンドウェッジも普通なら80ヤードですが、それを75ヤード、70ヤード、65ヤードとして打ちたい際にも重宝します。グリップ位置を変えるだけで、通常のフル・スウィングをすればいいので余計な工夫は無用です。

そして私は、伝家の宝刀である60ウェッジでの距離調節に乗り出しました。先ず、バックスウィングでクラブが地面と平行(90°)になるトップ(下図の2)だと15ヤードのチップ・アンド・ランになることを発見し、その少し手前(地面から約45°上、下図の1)の手の位置だと10ヤード、そして平行位置の少し上(約135°上方、下図の3)では20ヤードに届かせられることも発見。そして一年余の研究の結果、私の60°ウェッジのヤーデージは以下の表のようになりました。

[Lob_wedge] [marks]   
バックスウィングの手の高さ
1.
右膝の上
[シャフトは約45°]
2.
腰の下
[シャフトは地面に平行]
3.
腰の上
[シャフトは約135°]
4.

[左手は地面に平行]
5.
右肩
  
6.
フル・
スウィング
a. 110 10 15 20 30                   
b. 10 15 20 25 35
c. 15 20 25 30 40
d. 20 25 30 35 45
e. *25 30 35 40 50 60

【註】「グリップ・マーク」の最後の欄の[e. *]は、通常グリップする位置を指しています。また、6のフル・スウィングの項がほとんど空白なのは、このウェッジで大振りしたくないという個人的理由からです。

上の表で、なぜ「2. 腰の下」と「4. 胸」が色彩的に特別扱いされているのか?その理由は、どちらも他に較べて位置が明確で扱い易いからです。2.の「腰の下」ではクラブシャフトが地面と平行になり、4.の「胸」では左手が地面と平行になる位置なので、狂いようがありません。1や3はちょっとズレることがあり得ます。

【註】ここで「胸」とは男性の乳首の位置(足元からの高さ)を指しています。年齢によって乳首がかなり低くなったりする女性の乳首はサポートしておりません(^^;; 悪しからず。

読者がこのアイデアを利用しようとする場合、先ず2の [シャフトが地面と平行] の位置でボールがどれだけ転がるかを調べることをお薦めします。私のヤーデージと違っても全く構いません。自分に合った目印(手の位置)と、そこでスウィングした時に得られる距離の組み合わせを得ればいいのです。

「胸」と「右肩」の中間に何か手の高さの指標となるものがあれば、この表はもっと完璧になるのですが、残念ながらそういうものは存在しないので、「胸」から上は5ヤード刻みになっていません。しかし、他の選択肢があるので問題ないのですが。

私はこの表を、季節・天候・勾配などを勘案して次のように利用しています。

例えば、ヤーデージはピンまで15ヤードであっても、グリーンが急な上りだったり湿っている日であれば20ヤードとして考えるし、下りだったり乾燥して転がりの早い日なら10ヤードとしてプレイします。その際、10ヤードは選択肢が二つ、20ヤードは選択肢が四つありますが、前に「腰の下」と「胸」が明確で扱い易いと述べた理由により、私は目安が明瞭な方を選びます。

難しいのは同じ15ヤードでも、ピンがグリーン・エッジに近くて転がす余裕がない状況です。私の上の方式は、低く転がすチップ・アンド・ランなので、着地後少なくとも5〜7ヤードは転がります。グリーン・エッジからピンまで5〜7ヤードもない砲台グリーンですと、ボールは上り坂のエッジに着地し、ぽんと跳ね上がって急停止するか、手前に転げ戻って来てしまいます。【参照:「入射角・反射角」(tips_23.html)】 こういう場合は、ボール位置をスタンス前方にし、ボールを上げるために(低い軌道ではなく)円弧を描く軌道のスウィングで、60°のロフトを活かして着地後なるべく早く停止するショットに切り替えます。

【参照】「ピッチングとチッピングの距離調節・簡略版」(tips_195.html)【←こちらを御覧下さい】

【参考】
・「中間クラブ対策」(tips_87.html)
・「グリップのマーク」(tips_99.html)
・「ピッチングとチッピングの距離調節」(tips_155.html)
・「ロブ・ウェッジでチップ」(tips_96.html)

(January 17, 2016、増補April 06, 2020)

上り坂の60°ウェッジは80°に等しい

インストラクターRick Smith(リック・スミス)によるロブ・ウェッジ愛用者への警告。

'Why'd I do that?'
by Rick Smith ('Golf Digest,' October 2015)

「あなたのアプローチ・ショットは砲台グリーンの土手の中途で止まってしまった。グリーンにボールを打ち上げる左足上がりのショットに、あなたは自信のある60°ウェッジを選んだ。完璧なスウィング。ところが、ボールは垂直に飛び上がり、かろうじてグリーンの端に届いただけ。なぜ、こんな失敗が?

あなたがアドレスする時、体重のほとんどを右足にかけるように感じたら、それは実質的にあなたのクラブのロフトを増すことになる。その結果、60°ウェッジを70°か80°に変貌させてしまいかねない。だから、あなたがボールの軌道を操作出来るような名人でない限り、こういう場面ではもっとロフトの少ないクラブ(ピッチング・ウェッジとか)を選ぶべきだ。

上り坂でのピッチ・ショットでは、体重が坂の上の方にかかる傾向があり、それはインパクトでクラブを地面に突き刺してしまう原因となる。それを防ぐには、肩を傾け、地面の傾斜と平行にする。クラブヘッドを草と同じ高さに浮かし、“V”の字になるように両腕を伸ばしてアドレスする。ライ次第で、クラブを短く持ったり長く持ったりする。これはよいコンタクトの確実さを倍増させる。

その後、スムーズなバックスウィング、ダウンスウィングを遂行する。手首を返さぬよう、左手とクラブシャフトを一緒に動かし続ける。掬い打ちは厳禁である。こうすれば、簡単にショットに成功し、必要な距離を得ることが出来る」

(January 17, 2016)

クラブヘッド・スピードを増す三つの方法

「あなたのフェアウェイ・キープ率が高いのはいいとして、グループの中で第二打を最初に打つのがいつもあなたであるなら絶対面白くない筈だ。仲間を驚嘆させるようなドライヴを放つには、アクセル・ペダルを踏み込み、次の三つの方法でクラブヘッド・スピードを増す必要がある。

'Three easy ways to boost clubhead speed'
by editors of 'Golf Magazine' ('Golf Magazine,' July 2015)

[coil]

1) 背中をターゲットに向けよ

バックスウィングで、背中を完全にターゲットに向けること。これはクラブヘッド・スピードを生むために不可欠の要素である。

【編者補足】原文では「左肩を顎の下まで廻せ」となっているのですが、「偽のターン」(肩を廻さず、腕を右に引くだけの見せかけのターン)でも左肩を顎の下につけることは可能なので、その部分は割愛しました。「偽のターン」にはダウンスウィングの原動力である捻転が欠けているため(下半身から始まる逆転が出来ず、身体は手打ちをするしかなくなる)、パワーには何ら貢献しません。私の場合、あらかじめJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)風に首を右に捩っておいて完全な捻転をすると、鼻梁が邪魔してボールがぼけて見えます。私にとっては、これが「フル・ターンの証明」となっています。

2) 手首をリラックスさせよ

スピードとパワーを生むのは(胸とか肩の大きな筋肉ではなく)手首と前腕の小さな筋肉である。その小さな筋肉を正しく働かすには、アドレスで腕と手首をソフトにすることだ。言葉を替えれば、(ワグルのような動作で)緊張を緩めるのだ。そして、ダウンスウィングで手首をしなやかに保つ。ダウンスウィングで、クラブヘッドが手の遥か後方に遅れてついてくるように引き離す。それはクラブヘッドが解放されヒッティング・ゾーンでクラブシャフトが真っ直ぐになる時に、スピードの追加の爆発を作り出す。

[fire]

【編者補足】アドレスで臍下丹田に力を篭めると、手・腕の緊張が消え、軽く急速にスウィング出来るようになります。スポーツ心理学者Dr. Joe Parent(ジョー・ペアレント博士)は「東洋武術では身体の重心が動作とエネルギーの流れの源だが、それは臍下丹田に他ならない。心の状態は重心を変えてしまうので、頭であれこれ考えていると重心は頭に移ってしまう。重心を臍下丹田に保つには、先ずボール後方で安定した深呼吸をする。アドレス位置に歩み寄る前に、空気を全て吐き出す。息を吐きながら重心が臍下丹田に落ち着くことを感じ取る」と述べています。

3) 腰のスピードを上げよ

インパクトに近づく時、腰で火を吹き、身体の左サイドへ回転させる。これが左腕の背後にクラブヘッドを置き去りにし、ヒッティング・ゾーンで鞭の一閃のようにスピードを高める。クラブヘッドが左腕を通過するや否やクラブはスピードを失い始めるので、急速に動く手首と腰を、クラブが可能な限り長く追い続けることが極めて重要なのである」

【参考】
・「簡単にパワーを生む三つの鍵」(tips_167.html)
・「臍下丹田に力を篭めよ」(tips_121.html)
・「偽のターンをやめよ」(tips_165.html)


(January 20, 2016)

ボール位置を左肩外側にして15ヤード増

'Look to your lead shoulder for more power'
by editors of 'Golf Magazine' ('Golf Magazine,' February 2016)

「ドライヴァーを打つ時、左足甲の内側をボール位置とするのが一般的である。だが、下降気味の攻撃角度と飛距離減に繋がるバックスピンを生じるため、その位置はあまりにもスタンス後方かも知れない。

ドライヴァーで飛ばすためには、ボール位置を足との関連ではなく、左肩の外側とすべきだ。何故か?いくつかの重要な力学がスウィング軌道に収束するのだが、それはスウィング弧の低点であり、そこはクラブヘッドが最高のスピードに達する地点なのだ。そこはまた、左腕、左手甲、クラブシャフトなどが合体して一直線を形成し、ボールに最高のエネルギーを伝える場所でもある。

だから、ボール位置を左肩の外側にし、より安定したスウィートスポットによるコンタクトによって、ドライヴァーで10〜15ヤード増を得るべきだ」

[icon]

「体型別スウィング」を信奉する私としては、「テコ型」(中肉中背)の私の体型に適したボール位置から外れたくありません。確認すると、「体型別スウィング」もボール位置を足との関連で考えておらず、上の記事の趣旨と同じですが、テコ型のドライヴァーのボール位置としては「左脇の下」が推奨されています。肩の外側は、私にはフックを生む恐れがある位置となりそうです。

『篤姫のゴルフ』(tips_166.html)でNHK大河ドラマの篤姫の母親の言葉を紹介しました。「一方聞いて沙汰するな」(片方の意見だけ聞いて物事を判断してはいけない)という助言です。これはゴルフtipにも当てはまりますね。自分と体型の異なるゴルファーのためのtipを鵜呑みにして実行すると、思わぬ陥穽にはまり、自分のゴルフを見失う恐れがあります。要注意です。

なお、「体型別スウィング」によれば、「幅広型」(胸幅の厚い中背の人)のドライヴァーを打つ時のボール位置は「左半身の真ん中」が推奨されており、「円弧型」(背が高く腕の長い痩せ型の人)のドライヴァーのボール位置は「左肩の突端」となっています。ということは、上のtipは長身の痩せ型の人に最適と云っていいようです。

(January 20, 2016)

Justin Thomas(ジャスティン・トーマス)の飛距離の秘密

Justin Thomas(23歳)は2013年にプロ入りし、Web.comツァーでの好成績により2015年のPGAツァー参加資格を獲得。2015年11月、マレーシアにおけるPGAツァー・トーナメントでAdam Scott(アダム・スコット)に一打差をつけて優勝しました。

'Justin Time'
interview by Sean Zak ('Golf Magazine,' February 2016)

Q: Justin(ジャスティン)、あなたは身長178センチ、体重66キロという軽量級だが、ドライヴァーを300ヤードも飛ばす。そのパワーはどこから来るのか?

   【編註】Wikipediaによれば、アメリカ人男性の20歳以上の平均身長は176.3センチ、平均体重は88.3キロだそうですから、Justin Thomasは長身痩躯という感じ。

A: 僕は地面をうまく利用するんだ。ボールを上昇軌道で打つために、地面からのパワーを使う。それがほとんどを占めている。バカに単純に聞こえるだろうが、地面を有効に利用することは本当に助けになるんだ」

[icon]

英国のインストラクターPercy Boomer(パーシィ・ブーマー、1885〜1949)は「しっかりと地面を踏ん張る足と脚によるスウィングがゴルフの基本。パワーは足、脚、そして腰から来るものである」と云っています。インストラクターJimmy Ballard(ジミィ・バラード)も「エネルギーの放出は地面から順に上へと行われるべきである」と述べています。

「ボールをぶっ壊すパワーで打て」(1/06)で2014年Re/Max世界ロング・ドライヴ選手権優勝者のJeff Flagg(ジェフ・フラッグ)は、「後方の脚に多めの体重を掛けて左肩を上げ、背骨をターゲットから遠ざけるように傾げて、ボールを高い軌道で打つ」と云っています。このポスチャーに、Justin Thomasの足の踏ん張りを加えれば鬼に金棒でしょう。

 

【参考】「Percy Boomer(パーシィ・ブーマー)の逆説的ゴルフ」(tips_12.html)

(January 20, 2016)

サンドウェッジ発明家本人によるサンドウェッジの使い方

Gene Sarazen(ジーン・サラゼン、1902〜1999)は、生涯にメイジャー七勝を含む計48勝を挙げた名人。1935年のthe Masters(マスターズ) No.15でのアルバトロス(ダブル・イーグル)達成、サンドウェッジを発明した人としても有名。

[Sarazen]

'Thirty Years of Championship Golf'
by Gene Sarazen with Herbert Warren Wind {Prentice-Hall, Inc.,1950)

「スコアリングにとって最も重要なクラブは何か?と問われたら、私はピッチング’に役立つ7番、8番、9番、そしてサンドウェッジと云うだろう。

これらのクラブは、グリーンでの1パット ホール・アウトをお膳立てする兵器である。最近のトップ・プレイヤーたちは、サンドウェッジをバンカーだけでなくラフや、100ヤード以内のフェアウェイからも使用する。平均的ゴルファーがそれを真似て悪い理由はない。クラブ・メーカーはラフやフェアウェイから打てるように改造したサンドウェッジも揃えているからだ。ソールを狭めたこれらの改造型は、1930年代に一般的となった広いソールの先祖より、バンカーでは効果的ではない。

サンドウェッジのスウィングは、フェアウェイにおいてもバンカーと変わることはない。クラブは振り上げるというより、垂直に持ち上げられる。それも、通常よりターゲット・ラインの外側へ。ダウンスウィングのクラブヘッドは、バックスウィングと同じ軌道を辿る。普通のエクスプロージョン・ショットであれば、オープン・フェースでボールの5センチほどの砂にカットする軌道で打ち込む。距離が長い場合は、当然打ち込む位置をボールに近づける。

お粗末なバンカー・プレイヤーの一般的な過ちは、クラブをインサイドに引くバックスウィングをすることだ。そんなスウィングで脱出出来る可能性は次の二つのうちどちらかだ、1) 見込み薄、2) 見込みゼロ。

サンドウェッジは何時間もの練習を必要とするクラブだ。しかし、いったんマスター出来たら打数を節約する立役者となる。私はこのクラブを発明したことを誇りに思う」

(January 31, 2016)

サンドウェッジでロブ・ショット

この本はプロ・ゴルファーたちが、自分が育った宗教(キリスト教)的環境、信仰がゴルフを支えてくれた瞬間、および彼らから読者に贈るゴルフtipsという三部構成で、43人の男女が執筆した原稿をまとめた珍しい本。今回はPGAツァー・プロRick Fehr(リック・フィア)のtip。

'The Way of an Eagle'
edited by Robert Darden and P.J. Richardson (Thomas Nelson Publishers, 1996, $19.99)

「グリーン近くからボールを高く上げ、ソフトに着地させるショットがうまく出来ないのは、週一ゴルファーだけでなくヴェテランにも共通する短所である。人々はロブと呼ばれるショットを恐れるが、それはサンドウェッジによる練習を敬遠するからだ。【註】彼らはそのクラブをバンカー専用だと考えるが、実際には多くのプロはグリーン周りの大抵の状況でこのクラブを用いる。サンドウェッジは多分他のクラブよりずっと多く打たれ、パターやドライヴァーを助けている。

【編註】この本が出版された1996年頃には、Tom Kite(トム・カイト)によってもうロブウェッジが一般化されていたと思うのですがねえ。ここで説かれるロブ・ショットにはバウンスの少ないサンドウェッジか60°ウェッジが理想的です。バウンス角が大きいウェッジはバンカー・ショットには最適ですが、フェアウェイからのピッチやチップには(地面で弾かれるので)向いておらず要注意です。

どのクラブであれ、フェースをオープンにして実効ロフトを増し、それによってボールを急速に高く上げる(これは遠くへは飛ばない)。スタンスと肩のラインをオープンにし、ターゲットの左を狙う。バンカー・ショットでフェースをオープンにするのと同じように、草の上でオープンにするのだが、バンカーの場合よりももっと寝せることをお薦めする。手をリラックスさせ、身体と手が前方へスライドしないように注意。ソフトでリラックスした手を抑制させ、クラブに仕事をさせること。どのtipでも同じだが、練習が必要である。

あなたがもっと技法を高め派手にしたければ手首を多用してもいいが、私が思うに大方のゴルファーにその必要はない。鍵はクラブヘッドがボールと接触する時、手がクラブのずっと先へ出てはならないということだ。でないと、ロフトを減らしてしまう。あなたの使命は手をアドレスした時のままオープンにボールに戻すことだ。もし手と身体が先行すると、ホームランを打つことになる。だから、身体はボールの後方に留め、手とクラブをほぼ同時にボールに到着させること。

フォロースルーは必要だが、シャフトを前方に傾けてはいけない。全てを穏やかに行い、気持ちとしてはオープンフェースのままクラブを投げ下ろす感じ。

このショットにはいいライが不可欠である。草であれ土の上であれ、ボールが何かの上にちょこんと乗っていなければ試さない方がよい。猛練習し、このショットに熟達した人なら別だが」

(January 31, 2016)

バックスピンで停める

数日間、あるホールでギャップウェッジをグリーンまで届かせ、同時にバックスピンをかける試みを行いました。この練習の舞台であるNo.14は砲台グリーンなので、グリーン中央に着地したボールはトップスピンによって外へこぼれ落ちてしまいます。どうしてもバックスピンがほしいところです。

「バックスピンをかける」(tips_52.html)を読み返し、必要事項をメモしてコースへ出向きました。バックスピンに必須とされているオープンなクラブフェースで構えると、飛距離が15ヤードも減ってしまい、多くはガード・バンカーに消え、甚だしい場合はバンカーにさえ届かない始末。「長いクラブを使えばいいじゃないか」と云われそうですが、15ヤード増やすとしたら、私の場合ピッチングウェッジを短く持つことになり、このクラブだと失敗した場合グリーンを遥かにオーヴァーしてしまいます。それよりは、バンカーに落ちる方がずっとマシなので、クラブは変えたくないのです。

[backspin]

左肘を伸ばすことによってグリーンを捉えることが出来るようになったものの、グリーン奥まで転がってしまってこぼれたり、かろうじて留まったり…と不安定。バックスピンでランを少なくするしかありません。私のスウィングがいけないのか、ほとんど草のない地面のせいなのか、「バックスピンをかける」技法はうまく行きません。

自棄のやん八。ハンドファーストで構え、伸ばした左腕で強めにコックを加え、「グワシッ!」という感じでヒットダウンしボールを押し潰すと、高く舞い上がったボールはグリーン中央に落下し、グリーン上に留まるようになりました。ものは試し、ハンドルを0.5インチ(1.27センチ)短く持って同じように「グワシッ!」とヒットダウン。ボールはグリーン前部に着地し、二回小さくバウンドした後グリーン中央のピン傍で停止しました。ギャップウェッジによっても、クラブフェースをオープンにすることなくバックスピンをかけることに成功したわけです。

この場合、「グワシッ!」が決め手です。充分にスピンをかけるには、穏やかなスウィングでは駄目です。急速なインパクトの打撃を増幅するため、コックも不可欠。そして、クラブとロフトとグルーヴ(フェースの溝)を信じてボールを地面にめり込ませます。こんな風にしないとバックスピンはかかりません。ま、バックスピンたって、私の場合コロコロこっちへ戻って来るようなボールではありませんが…。ああいうのは、ふかふかのフェアウェイで、ProV1のようなウレタン・カヴァー+多層構造のボールを使わない限り無理だそうです。

ゴルフ仲間の一人Mike Reekie(マイク・リーキィ)は、「おれとしては最高のショットをしたのにこぼれてしまった。このゴルフ場のグリーンは意地悪だ」とこぼすのが常ですが、彼に必要なのもバックスピンでしょう。グリーンの設計が意地悪なのではなく、グリーンの構造に合わせた攻め口を考えない方が怠惰なのだと思われます。

【参考】
・「スピンの完全理解」(tips_156.html)
・「Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)のバックスピン」(tips_151.html)
・「バックスピンは簡単」(tips_155.html)

【おことわり】画像はhttp://3.bp.blogspot.com/にリンクして表示させて頂いています。

(January 31, 2016)

左踵を上げてスウィング

これは来る三月に刊行される予定の本の骨子を'Golf Magazine'誌が(多分、タイアップ宣伝を兼ねて)独占紹介した記事です。著者Brandel Chamblee(ブランデル・シャンブリー)は元PGAツァー・プロで、現在はThe Golf Channel(ザ・ゴルフ・チャネル)のメインの解説者となっています。

[Flying elbow]

'The Anatomy of Greatness: Lessons from the Best Swing in History'
by Brandel Chamblee (Simon & Schuster, 2016, $30.00)

「私は何百冊もの本、数え切れぬほどのヴィデオ、幾千もの写真から、偉大なゴルファーたちの共通点を研究した。そして驚くべきことに気づいた。偉大なゴルファーたちのほとんど(99%)が、現在はまず教えられることのない極めて重要な動作をしていたのだ。彼らはバックスウィングにおいて地面から左踵を上げて腰を廻し、パワフルな肩の回転を助けていた。この自由な動きが理想的タイミング、リズム、スピードを作り出し、彼らをゴルフの伝説的巨人としたのだ。

[left heel]

名人たちがやっていなかったこと、それは、1980年代以降教えられている『下半身の抵抗』である。あなたが多くのゴルファーと同じなら、左踵を上げずに捻転を抑制し、クラブヘッド・スピードを犠牲にしている筈だ。この研究を始めるまで気づかなかったのだが、偉大なゴルファーたちの特徴は明白だった。彼らのスウィングはそれぞれ独特であり、Sam Snead(サム・スニード)のスウィングはJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)とは似ても似つかぬものだし、Jack NicklausはTom Watson(トム・ワトスン)に似たスウィングはしていない。しかし、彼らはみな左踵を上げて腰と肩を目一杯廻している。【右図はJack Nicklausの足】

五回以上メイジャー優勝を飾った19人の男子のうち、17人が左踵を上げている。17回以上PGAツァーで優勝した50人のうち、46人が左踵を上げている。the Masters(マスターズ)に複数回優勝した19人のうち、17人が左踵を上げている。女子では最多メイジャー優勝者のPatty Berg(パティ・バーグ、15回優勝)、次点Mickey Wright(ミッキィ・ライト、13回優勝)、最多LPGAツァー優勝者Kathy Whitworth(キャスィ・ウィットワース、88勝)らも、みな左踵を上げている。

私は今日のトップ・プロたちのスウィングが間違っていると云っているのではない。彼らは下半身の回転不足をとてつもない上半身の動きでカヴァーしようと、身体に不必要な仕事を強制している。脚、腰、腰背部の筋肉は限界までストレスを強いられ、腰背部と腰の障害(ギックリ腰)の原因を作り出す。1980年代に始まったこの流行は、バネを巻くように下半身の抵抗によってトルク(捩りモーメント)とスピードを構築せよ…というものだった。この前提は全く間違っており、その悪影響は30年間続いて、PGAツァーとLPGAツァーのプレイヤーたちから、前世代の遺産(よきメソッド)を受け継ぐことを妨害し、同時に彼らの健康を損なわせている。

身体は巻かれるべきバネではない。抵抗によってトルクを生み出したと思っても、回転不足では解き放つべきエネルギーは充分ではない。『下半身で抵抗せよ』という極刑に値する理論は、アマとプロ双方にこれ見よがしに提供されたのだが、それは作り話に過ぎず、全く無益なものである。

私の助言は以下のようになる。

・バックスウィング開始

 ドライヴァーの場合、肩幅よりやや広めのスタンス。ストロング・グリップ。ボール位置は左足踵の前方。ゆっくり、僅かにクラブヘッドを引き摺るような、身体の部品全てが同期したテイクアウェイ。

・回転

 左膝はボール後方を指し、左踵は地面から上がる。ベルト・バックルはターゲットの反対方向を向く。私の左肩は90°でなく120°回転する」

[icon]

「Lexi Thompson(レキシィ・トンプスン)のバックスウィング」(tips_167.html)で紹介したように、20歳の彼女は肩を110°回転させているのですが、 54歳のBrandel Chambleeが何と驚異の120°。しかし、左踵を上げる助けがあればそれも可能でしょう。そして、腰を痛めることも予防出来ます。

ここで思い出されるのがBen Crenshaw(ベン・クレンショー)とTom Kite(トム・カイト)の二人です。両人とも伝説的インストラクターHarvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)の門下生なのに、Ben Crenshawは左踵を上げ、Tom Kiteはベタ足です。Harvey Penickがどう云っているのか、気になりました。

'Harvey Penick's Little Red Book'
by Harvey Penick with Bud Shrake (Simon & Schuster, 1992, $10.00)

「左踵は紛れもなく別々の流派のテーマである。当世の多くのインストラクターたちは、スウィングの間じゅう左踵を地面から上げるなと指導する。Percy Boomer(パーシィ・ブーマー)など旧派に属するインストラクターたちとスコットランド系のレッスン・プロたちは、バックスウィングで左踵を上げ、ダウンスウィングでそれを地面に戻せと説く。

私は旧派だが、それが単に古典的なスウィングを作り出すというだけでなく、左踵を上げることがよい結果を生むベストの方法だからだ。最も重要なのは、意識的に左踵を上げるなということだ。あなたは左踵を地面につけ続けるのだが、後方への捻転に伴って自然に上がるに任せるのだ。

私は、Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)のトップでのコントロールの良さは、彼が左踵を上がるに任せ、フル・ターンを可能にするからだと考える。Ben Hogan(ベン・ホーガン)は、左踵についてあれこれ考えなかった。スウィングによって上がったり上がらなかったりした。

私個人の意見だが、スウィングの間じゅう左踵を地面につけ続けるのは、プレイヤーの最盛期を短くするものだと思う」

[icon2]

「体型別スウィング」で確認すると、「テコ型」(中肉中背)と「幅広型」(胸幅の厚い中背の人)は「左踵を地面から上げてはいけない」とされており、唯一「円弧型」(背が高く腕の長い痩せ型の人)だけが「地面から上げる」となっています。Ben CrenshawもTom Kiteも身長は同じ175センチで、体重はTom Kiteが5キロ多いだけですが、Ben Crenshawは痩せた円弧型で、Tom Kiteは中肉中背の「テコ型」およびやや胸幅の厚い「幅広型」との混合型。これが、二人の左踵の動きの違いとなった理由でしょう。なお、この記事の筆者Brandel Chambleeは痩身で身長178センチとBen Crenshawよりも背が高いので、正真正銘の円弧型と云えます。ついでですが、Brandel Chambleeが挙げたLPGAプロのうち、Mickey WrightとKathy Whitworthの二人の身長は175センチで、Ben Crenshawと同じです。

『篤姫のゴルフ』(tips_166.html)でNHK大河ドラマの篤姫の母親の言葉を紹介しました。「一方聞いて沙汰するな」(片方の意見だけ聞いて物事を判断してはいけない)というものです。これはゴルフtipにも当てはまります。自分と体型の異なるインストラクターやプロのtipを鵜呑みにして実行すると、思わぬ陥穽にはまり、悪あがきの末自分のゴルフを見失う恐れがあります。要注意です。

「体型別スウィング」の「テコ型」ゴルファーが「左踵を地面から上げてはいけない」という理由は、バックスウィングで左膝を右膝に近づけると(なよなよした姿勢になり)捻転度とパワーを失うからだそうです。ただ、「体型別スウィング」におけるテコ型の推奨スタンスは肩幅なので、Brandel Chambleeの云うように「肩幅より広め」にすれば条件は変わるかも知れません(未確認)。

「体型別スウィング」の著者たちによれば、全盛期のJack Nicklausは円弧型と幅広型の混合型のようにプレイしていたそうです。肉体的には幅広型だったものの、少年時代から身につけたフライイング・エルボーが円弧型のスウィングをさせたのだとのこと。

(February 03, 2016)

左踵を上げるのは最少限にせよ

「左踵を上げる」派の横綱Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)による戒め。

'Golf My Way'
by Jack Nicklaus with Ken Bowden (Fireside, 1974, $14.00)

「意図的に左踵を上げるべきだなどと誤解してはならない。フル・ショットにおいて、捻転とスウィングが左踵を地面から浮かすままに任せるだけなのだ。

わざと左踵を高く上げると、アドレス時よりも身体の全ての部品を知らぬ間に持ち上げる危険を犯すことになり、スウィング弧を歪めてしまうのは必定だ。

また、バックスウィングで左踵が高くなればなるほど、ダウンスウィングで左足をアドレスと同じ状態に戻すのが難しくなる。なんといっても、左足はダウンスウィングの際の足腰の突進に耐えなければならないのだから、相撲の仕切り【註】のようにどっしり安定した状態に戻るべきなのだ」

【編註】原文では"workmanlike position"(職人風姿勢)となっていてちと曖昧なので、日本人に解り易い表現に変えました。

(February 03, 2016)

左足を上げ過ぎるな

Sam Snead(サム・スニード)による、野方図に左足を上げる月一ゴルファーへの警告。

'The Best Advice Ever for Golfers'
edited by Robert McCord (Andrews McMeal, 2001, $12.95)

「頻繁にラウンド出来ないゴルファーに見られる主な過ちは、バックスウィングで左踵をあまりにも高く上げ過ぎることだ。踵を12センチとか15センチも上げる人がいるが、そんなことをすればバックスウィングのトップで頭も引っ張り上げてしまうことになる。プロのスウィングを見ていれば、4〜5センチ以上左踵を地面から上げる者はいない筈だし、6番アイアンからウェッジまでは地面から全く踵を上げないのが普通である」

(February 03, 2016)

突然のダック・フックの原因解明

数十年間、ダック・フックは私のスコアを壊す元凶でした。懸命に肩を廻そうとか、もっとコックしよう、左腕を伸ばそうなどと努力すると決まってダック・フックに見舞われるので、それが恐くてあまり捻転やコックをしないようにしていました。ダック・フックの直接の原因は、トップで手首を掌側へ折ることだとまでは突き止めていたのですが、それを誘発する間接原因が判りませんでした。

昨年からワイドなスウィング弧を目指すようになり、肩の回転を増やし、コックの度も増し始めて、やっとダック・フックの引き金が判明しました。

肩を廻す廻し方が間違っていたのです。私は精一杯肩を廻そうと、手の力で肩を引っ張っていたのです。これだと手先に力が入り、限界点を越えてもなお引っ張ろうとするものだから、手首が掌側に折れてしまうのです。

肩だけに意識を集中して回転すれば、腕・手・手首は綿よりも軽い感じで身体の右側へ廻り、手先に力は入りませんが、手先で引っ張ろうとすると肩から先の腕全体が強ばり、重さも増える感じになります。この重い棒のような腕では、ボールを遠くへ飛ばすことなど不可能であり、手で引っ張る副作用で手首を折り、ダック・フックも生じるのですから、いいことは何もありません。

ゴルフを始めてウン十年、遅ればせながらやっと持病の原因が解明出来たことになります。同病の方がおられましたら参考にして下さい。

(February 07, 2016)

松山英樹のアイアン・ショット

松山英樹が優勝した2016年2月のPhoenix Open(フィーニックス・オープン)のTV中継を見ました。観客のほとんどがRickie Fowler(リッキィ・ファウラー)を応援しているような状況下で、Rickie Fowlerのいくつかのミスに助けられたとは云え、松山英樹の終始沈着冷静な態度、肝っ玉の太さで勝利へと驀進したプレイに感銘を受けました。

[Hideki & Zach] [FLW]

左図は「パットのFLW」(tips_165.html)に掲載したアニメです。私は以前このアニメの動きが正しいにもかかわらず、「最初、パターヘッドがボールを引っ掛けるような感じに抵抗があった」と書きました。御覧のように、手首の角度が変化しないこのストロークは、完璧この上ないものなのです。これと同じことを松山英樹はスウィングでやっていることに気づきました。

松山英樹(右図の左)のアイアンでのハーフ・スウィングでの素振りを見ると一目瞭然なのですが、手・腕は独立した動きをせず、身体に追随しているだけのように見えます。手・腕で意図的にインパクトを迎えるのでなく、身体がインパクト・ゾーンを通過する時にインパクトが自然発生する感じ。インパクト後、手・腕はなおも独立した動きをせず、非常に抑制された動きでターゲットに向かって振り抜かれます。それゆえ、フィニッシュは短い。まるでパンチ・ショットのようなフィニッシュですが、ボールは高く上がっているのでパンチ・ショットではありません。正確さ最優先の際のショットのようです。

似たような動作をZach Johnson(ザック・ジョンスン、右図の右)もやっていて、彼のステディなショットに感心していた私は、一時そのスウィング(特にフィニッシュ)を真似てみようかと思ったことがありました。当時は、上に述べたような《身体主体、手・腕の追随》というメカニズムに気づかなかったので、模倣は成就しませんでした。

松山英樹とZach Johnsonのフィニッシュを並べてみて、その相似の理由が解りました。二人とも左腕を折らずに伸ばしたままフォロースルーをしているのです。大多数のゴルファーはこの時点で左肘を折り、クラブヘッドは頭の遥か後方へ廻っています。この二人は肘を折らず、可能な限り両腕を伸ばし切ったフィニッシュをしようとしているようです。両人とも、ダウンスウィングで両手が腰の高さになった時の手首の角度を、断固として変えまいと努力しているように見えます。(毎回こういうスウィングをしているというわけではありませんが)

私が松山英樹のアイアン・ショットに「パットのFLW」との類似を見たのは、その手首の角度を変えまいとする強い意志が感じられたからです。それは、パッティング同様ボールをクラブヘッドで引っ掛けるインパクトを想像させます。

松山英樹のアイアンのスウィングはFLWのいい見本だと思います。身体で腕・手・クラブを引っ張れば「レイト・ヒットをしよう」などと努力しなくても自然にレイト・ヒットが実現するでしょうし、ボールの5〜8センチほどターゲット側(スウィング弧の最低点)に目を据えてスウィングすれば、浅くターフを取る理想的なダウンブローが実現すると思われます。

(February 10, 2016)

ターゲットと握手してパワフル・リリース

「テイクアウェイでターゲットライン後方にいる人と握手するように手・腕を伸ばす」のがスウィング弧を広げ、パワーを生むコツ…というtipをいくつか紹介しましたが、インパクト後はターゲットと握手するように手・腕を伸ばせ…と示唆するのはAnnika Sorenstam(アニカ・ソレンスタム)。

[release]

'Power shake'
by Annika Sorenstam with Dave Allen ('Golf Magazine,' May 2005)

「右利きのゴルファーは、ダウンスウィングでパワーを生み出すために右サイドの役割を必要とする。インパクト・ゾーンで火を吹くために右サイドに道を空けながら、腰と肩は左へ回転する。そうすることによって、クラブフェースをスクウェアにし、かなりのクラブヘッド・スピードが生み出せる。もし、インパクトで右サイドが尻込みしていると、ボールとのコンタクトは弱々しいものになってしまう。

フォロースルーでターゲットと握手するドリルを紹介する。

左手にクラブを持ち、トゥを空に向けながらシャフトを地面と平行にターゲット方向に伸ばす。次に、右手を反対方向に地面と平行に伸ばす。右手を、あたかも左手と握手するかのように差し出す。握手は自動的に体重をターゲット方向に移す(でないと握手は不可能)。これは私のフォロースルーの半ばの体勢である。

あなたの右肩は下向きに、しかし極めて水平に回転する(身体の外へ離れるのではない。それではパワーを弱めてしまう)。クラブヘッドのトゥが空を向くのは,私がクラブを正しくリリースした徴候であり、腰と肩がターゲットの左を指すのは、右サイドが正しく火を吹いた確かなサインである。最大のパワーでソリッドにボールを打つスウィングをする間、右サイドが上のようにうまく働くように感じてほしい」

上のAnnika Sorenstam風リリースを習得するドリルを、インストラクターJimmy Ballard(ジミィ・バラード)が教えてくれます。

'Ground fire'
by Jimmy Ballard with Kathryn Maloney ('Golf Magazine,' November 2000)

「グリップエンドがよく見えるように、数センチ短く持つ。模擬スウィングをし、インパクトの後と、シャフトが地面と平行になる二ヶ所でストップモーション。どちらの時点においても、剥き出しのグリップエンドは身体の中心を指していなければならない。

もし、腰が回転するのでなくスライドしていれば、グリップエンドは身体の前方を指している筈だ。もし、あなたが右サイドに寄りかかっていれば、右腕は左腕の上に交差し、グリップエンドはターゲットの遥か後方を指すことだろう」

(February 10, 2016)

フォロースルーを念頭においてスウィングせよ

レッスン・プロNeil Martin(ニール・マーティン)による、スウィングを始めてから「大きなフォローをとろう」と考えても遅いというtip。

''Golf Magazine's Pro Pointers and Stroke Savers'
edited by Charles Price (Harper & Publishers, 1959)

「ボールを打ち、直ちに宙に浮かべようという不安は、一般ゴルファーによく見られる急に中絶するようなスウィングをする原因である。

彼らの多くが、ダウンスウィングでボールを打つことを考えてフォロースルーを台無しにしてしまう。ダウンスウィングの筋肉活動を実行中に何かを考えるなどということは不可能だ。思考が即座に筋肉を動かすということはない。熱いコンロに触れたら、とっさに引く前に指を焦がしてしまう。だから、ダウンスウィングの最中にフォロースルーのことを考えてもフォロースルーの時点には間に合わない。遅過ぎる。

筋肉には、最初の指令を実行中に別の新たな指令を発するのではなく、前もって次の動作の準備指令を与えておくべきだ。ボールに向かっているクラブヘッドの動きを新たな指令で妨害するのではなく、バックスウィングを開始する前にフル・フォロースルーでフィニッシュしたいということを考えておく。クラブヘッドはボールを打って、それが宙に浮いた後もスピードを増すという風に考えなくてはならない。もちろん、クラブヘッドは実際には加速しないが、こういう風に考えることによって、身体的にもメンタルにも減速しないスウィングが可能になる」

(February 10, 2016)

Hit(ヒット)でなく、打ち抜くべし

『モダン・ゴルフの祖』Byron Nelson(バイロン・ネルスン、1912〜2006)による、ゴルフ・スウィングの秘訣。

[Byron]

'Shape Your Swing The Modern Way'
by Byron Nelson with Larry Dennis (Golf Digest, 1976)

「次のような文句に類したものを頻繁に聞く筈だ。『ボールに向かって加速せよ』、『両手でショットになだれ込め』、『インパクトでボールを地獄に送れ』これらはみな良さそうに聞こえるが、実際には役に立たない。

あなたがダウンスウィングで意識的にボールを"hit"しようとし、インパクト・エリアでパワーを注ぎ込もうとすると、それを過度に早期に行うことが避けられない。あなたはスウィングのトップから両手でクラブを投げ出すか、肩で突くような動きをする結果に陥る。それはタイミングを破壊し、クラブヘッド・スピードを減らし、クラブヘッドをラインから逸らしてしまう。

ボールに向かってのゆったりとしたクラブヘッドの加速は、短いショットやパットでは望ましく、しかも実行可能である。しかし、フル・ショットにおいてボールに向かってクラブヘッドをゆっくり加速するなどということは、人間には不可能だ。ドライヴァーのショットを例に取ろう。クラブヘッドの移動幅は長く、スウィングも長く、インパクトへと向かうクラブヘッドの遠心力は大き過ぎて、われわれに出来ることは成り行きに任せることでしかない。

私には、何故ゴルファーたちが(上級者の幾分かも含む)インパクトで"hit"しようとするか判っている。遠心力が増すにつれ手首をアンコックし、インパクト・エリアでクラブヘッドを“爆発”させる流れを作り、あたかも両手が加速し、"hit"する感じを与えるからだ。実際のところは、それは努力によってではなく、自然に起っているだけのことだ。

インパクトでクラブヘッドは実際には減速している。コンピュータ分析がそれを示している。私のスウィングは過去に何度も計測されたが、私のスウィングはどの場合でもボールに向かって加速したりしなかった。私の最大のスウィング・スピードは51 m/sと計測されたが、そのスピードに達したのはインパクト寸前であった。それは、私がその時点で両手によってパワーを注ぎ込んでいたのではないことを明白に意味している。長い距離を飛ばすゴルファーも、減速を最少限にするため同じようにしている筈だ。

それを実現するには、しっかりしたグリップ、伸ばした左腕、よいバランス等を維持しながら、バックスウィングで肩をフル・ターンさせる。そして、ダウンスウィングを両足と両脚でスタートさせる。それらをターゲットに向けて動かし、同時に両手を振り下ろす。これを、脚の動きにつられて頭を前方にスライドさせずに行えば、ボールを"hit"しようとしていた時より以上のクラブヘッド・スピード(と飛距離)を生み出すことが出来る」

【おことわり】画像はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。

(February 14, 2016)

胴体で逆転する

「松山英樹のアイアン・ショット」(このページ上)で、松山英樹とZack Johnson(ザック・ジョンスン)のスウィングの類似について触れ、その共通点は《身体で腕・手・クラブを引っ張り、左肘を折らずに伸ばしたままフォロースルーをしている》ことだという印象を記しました。言葉を替えれば、二人とも手・腕の独立した"hit"(打つ)という動きを排除し、胴体の逆転に全てを委ね、腕・手・クラブは追随するだけというスウィングに見受けられたのです。

[Hideki]

上の記事を公開した直後のラウンド、練習場で8番アイアンで数十発、胴体の逆転によるスウィングを試みました。手応えがありました。いつもより距離も出て(いつもが短過ぎたとも云えるけど)、目標付近にボールが集まったのです。アイアンのショットにとって、いい徴候です。

本番、ドライヴァーも安定して打てましたが、ウッドやアイアンの方向性の良さは打った当人も驚くほど抜群でした。久し振りに3バーディを達成出来たのがその証明です。

胴体によるスウィングを何かに喩えるとしたら何だろう?とラウンド中考えていました。浮かんだのは「でんでん太鼓」でした。太鼓の柄を捻ると、太鼓の左右の鈴がついた紐が振られ、太鼓に当たってでんでんと鳴る赤ちゃん用玩具。しかし、帰宅してググると、もうこの比喩をゴルフ・スウィングに使っている人がいたので、仕方なく没。次に思いついたのが「竹とんぼ」でした。これも心棒を捻って両翼を回転させるおもちゃ。左肘を折らずに両手・両腕を伸ばしたままフォロースルーをする松山英樹とZack Johnsonのスウィングは、まこと竹とんぼになぞらえられます。しかし、これも比喩というよりスウィング原理として様々な人によって既に使われていましたので、やむなく没。興味のある方は「ゴルフ 竹とんぼ」というキーワードで検索してみて下さい。いい比喩は売り切れなので、私は比喩を用いるのは諦めました(;_;)。

私はずっと「下半身主導のダウンスウィング」を志向して来たのですが、これはタイミングがズレて上半身がインパクトに遅れるとプッシュが出る危険があります。そこへ行くと、上半身・下半身を分けず一体化して「胴体で逆転」とすればプッシュの心配はなくなります。手・腕が独立愚連隊となっての暴発を封じることが出来るため、方向性の良さが倍増します。胴体で腕・手・クラブを引っ張ることによってレイト・ヒットが自ずと実現し、飛距離も伸びます。いいこと尽くめ。

一度この胴体逆転スウィングで味を占めると、もう手・腕によるスウィングなど「姑息で、汚らわしい」という気になります。それほどピュアなショットが実現します。お試しを。

(February 14, 2016)

パー3ではスクウェアに打とう

全てのショットでそうなのですが、特にパー3のティー・ショットではとりわけスクウェアなスウィングをすべきだと思います。

[Gary]

乗るかどうか気掛かりなわれわれの頭は、パットする際にボールを追いかけようとするのと同じように、インパクト・エリアでグリーン方向に向きがちです。頭が左へ廻れば、それにつられて肩も廻る、手先も廻る。その時のスウィング軌道とクラブフェースの角度によって、プッシュやプルが発生し易い。「ゴルフ・スウィングは円運動である」という主張があります。「クラブヘッドはメリー・ゴーラウンドのように背骨の周りで円を描くべきだ」という論ですが、これは上のようにスライスやフックを奨励する理論に思われます。

私は図のようなGary Player(ゲアリ・プレイヤー)のイメージを抱いてスウィングし始めました。Gary Playerのスウィング全体を真似るのではなく、彼のフォロースルーのこの瞬間の体勢(特に上半身)です。腕はターゲットを指していますが、右肩はまだ左へ廻っておらず、ボールがあった場所の背後に留まっています。われわれだと(少なくともこれまでの私のスウィングでは)この段階で全てが左へ廻っています。それがムラのある方向性の原因だったのだと思われます。

これは「ヘッドアップするな」で解決する問題ではありません。最後までボールを見続けても、肩がターゲット方向に開けば、円運動と同じ結果になるからです。

これはまた、昔教わった「左の壁に向かって打て」でもありません。「左の壁」はヒッコリー・シャフト時代、しなるシャフトが追いつくのを待つ間(ま)を作るため左脚を固くしたのでした。金属シャフトになってからは「左の壁」は必要なくなり、死語として葬り去るべき格言です。【参照:「Byron Nelson(バイロン・ネルスン)の「左の壁は忘れよ」(tips_66.html)】 こんなことを未だに教えるような人がいたら、その人の頭はヒッコリー・シャフト時代から進化していないことになります(^-^)。

Gary Playerのように、アドレス時のまま完全に頭をボール後方に残し、左肩・左腕・左手をターゲットに向かって真っ直ぐに伸ばすようにすべきなのです。絶対にターゲットの左に肩と腕を向かわせず。

現在、この方式で私のパー3での方向性は抜群に良くなりました。最近のある日のラウンド、No.7(160ヤード)パー3を3番ウッドで1オン、No.12(170ヤード)パー3でも3番ウッドで1オン、続くNo.13(210ヤード)パー3をドライヴァーでピン・ハイにつけ、いずれもパーを得ることが出来ました。

これはパー3のティー・ショットだけでなく、どのショットでも行うべきことでしょうが、誰にでもパーやバーディのチャンスを与えてくれるパー3で、とりわけ重要だと思います。

(February 21, 2016)

インパクトで左腕を伸ばす

インストラクターRick Smith(リック・スミス)による、正しい腕の使い方の習得法。「松山英樹のアイアン・ショット」(02/10)で述べた、松山英樹とZach Johnson(ザック・ジョンスン)の両手を伸ばしたフォロースルーを学ぶのに最適。

'How to get down'
by Rick Smith with Ron Kaspriske ('Golf Digest,' August 2011)

「フォロースルーへは左腕がリードし続けるべきである。もし右腕がリードしようとすると、パワーと正確さを失ってしまう。鍵は両手にある。

左手がインパクト後も右手とクラブヘッドに先行し続ける訓練をすべきだ。

アドレスで、左手は普通にグリップし、右手は左手を上から覆うだけにする。通常のスウィングをするが、インパクト・ゾーンで右手を離す。左腕が見事にぴんと伸ばされる感覚が得られる筈だ」

(February 21, 2016)

手を廻すのではなく、肩を廻すバックスウィング

「松山英樹のアイアン・ショット」(このページ上)に始まり「胴体で逆転する」(同)へと進展したバックスウィングの研究。私にとって肩あるいは胴体でバックスウィングするということは、手・腕の自由度を抑制するということです。これこそアイアン・ショットの秘訣であるという確信が深まっています。しかし、毎回実行出来るわけではなく、「やった!」と思えるのは1ラウンドにつき数回しかないのが残念ですが、うまく出来た時は仲間から"Beutiful!"(ビューティフル)と云われるほどピンに絡むようなショットになります。

手・腕の動きを抑制したからと云って飛距離が減るわけではありません。FLW(フラット・レフト・リスト=平らな左手首)のインパクトをすれば、期待通りの距離が得られます。

LPGAのAustralian Open(オーストレイリアン・オープン)をTVで観ながら、各プロのアイアン・ショットのバックスウィングに注目しました。手・腕の自由度を抑制すれば"Beutiful!"(ビューティフル)なショットが生まれることは、プロたちのショットでも確認出来ました。手・腕の独立した動きが目立たないプロのショットは方向性が良いのです。地元のKarrie Webb(カリィ・ウェブ)は手・腕のスウィングへの参加度を40%程度認めている感じで、方向性にも距離にもかなりムラがありました。最終日の最終ホールでは(せめて有終の美を飾ろうとしたのか)手の動きを殺したスウィングをし、その時だけはピンに寄せていましたが。

優勝した野村敏京(Haru Nomura)のアイアン・ショットは、手・腕の参加度が10%程度に見えました。従って、方向性は抜群。この大会、Lydia Ko(リディア・コゥ)は何やらJim Furyk(ジム・フューリク)みたいにトップで8の字を描く(こねくり廻す)アイアンのスウィングをしており、そのせいだろうと思いますが方向も飛距離もムラが目立ちました。

さて、"Beutiful!"なショットを増やすにはどうしたらいいのか?練習によって、努力しなくても自然にスウィング出来るようにするしかありません。嬉しいことに、この練習のために打ちっ放しに行く必要はありません。裏庭での素振りで充分です。私は芝生にちらほら混じっている雑草を見つけては、それを掘り飛ばす練習法が気に入っています。FLWの練習と一緒に行うわけです。

(February 21, 2016)

ワイドなラインを見よ
[Love]

Davis Love III(デイヴィス・ラヴ三世)の父親Davis Love, Jr.(デイヴィス・ラヴ二世)は、Bob Toski(ボブ・トスキ)と共著の本も出しているほどで、ゴルフの世界ではコーチの第一人者として知られていました。しかし、惜しくも1988年に航空機事故で他界。この本はその父親が遺したノートを土台に、Davis Love IIIが自分の経験や思い出を加えて一冊の本にしたものです。

'Every Shot I Take'
by Davis Love III (Simon & Schuster, 1997, $21.00)

「ある人々は、鉛筆で書いた線のように凄く細いパットのラインを視覚化する。私の父は、誰にも指導しなかった突くようなストロークであるにもかかわらず、素晴らしいパットをした。彼はパッティング・ラインは、カップと同じ幅の高速道路のようなものだと信じていた。そういう風に考えればコトは簡単になる。パットを成功させるために完璧なストロークをする必要はないからだ。5センチの幅のラインを相手にすればよい。大雑把にライン上に乗せ、強さが正しければ、ボールが転げ込むチャンスはあるのだ」



[icon]

よく「リラックスしてストロークせよ」と云われますが、鉛筆で描かれた細いラインに乗せようとしたのではリラックスなんか出来ません。リラックスするには、太いラインを想定すべきなんですね。別な喩えをとりましょう。ビルとビルの屋上をロープで結んで綱渡りをする曲芸があります。プロといえど、これを緊張せずに渡るわけにはいかないでしょう。ビルの谷間の綱渡りはわれわれには無理ですが、山の谷間の吊り橋を渡ることは可能です。吊り橋を渡るにも膝がガクガクするような不安感は抱くものの、綱渡りのような恐怖ではなく、いわばスリルをエンジョイする感じ。パットも命懸けの綱渡りの緊張感ではなく、吊り橋程度の軽い緊張で臨むべきなのでしょう。

私のシニア・グループの仲間に、Wally(ウォリィ)という中の上クラスのプレイヤーがいます。彼はラインの読みに時間をかけることもなく、狙いをつけることもなく、無造作にアドレスして無造作にストロークします。で、これが結構いい結果を生むのです。いつも好調というわけではないのですが、長短のパットを無造作に放り込むことが珍しくありません。ある時、「Wally、今日はあんたのパットの真似をするつもりだ」とスタート前に云ったら、彼はいささか気を良くした面持ちで、「知ってるか?このコースのコツは、どのパットもストレートに打つことだ。上手い連中はみなそう云ってる。おれもブレイクは気にしないんだ」と云いました。

そうは云っても、明白なアンジュレーションを無視することは出来ないでしょう。慣れ親しんだコースだから、グリーンに立てば意識せずとも勾配を感じ取れるわけです。Wallyはその感覚に従っている筈で、完全にカップに向かってストレートに打っているのではないでしょう。しかし、私のように神経質に読んだり、正確を期して狙ったりはしない。私がビルの谷間で綱渡りをしているとすれば、Wallyは山の吊り橋でもなく、公園の小道を歩くように気軽にパットしているのです。競馬で云えば、彼は単勝馬券ではなく連複を買っている。ルーレットの場合なら一つの数字でなく、奇数か偶数か、赤か黒かという感じ。ウハウハする配当は得られないものの、外れる恐れも少ない。気分的にも楽。上の記事のように、「強さが正しければ、ボールが転げ込むチャンスはある」わけです。

【参考】「パッティング・ラインは広く想定せよ」(tips_153.html)

【おことわり】画像はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。

(February 24, 2016)

Jordan Spieth(ジョーダン・スピース)風 カップを見ながらパット

Jordan Spiethが時々(いつもではない)ボールを見つめず、カップを見ながらパットするのは有名です。これは実は別に目新しい方法ではなく、古くはBobby Locke(ボビィ・ロック、1917〜1987、南ア)が用い、1976年にパットのスランプに陥ったJohnny Miller(ジョニィ・ミラー)も採用し(その年の全英オープンに、カップを見ながらパットして優勝)、加えてRay Floyd(レイ・フロイド)、最近ではLouis Oosthuizen(ルイ・ウーストヘイゼン)までもが使っている手法だそうです。

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最近のゴルフ雑誌二誌がJordan Spiethのこの“奇妙な”手法を取り上げています。'Golf Magazine'誌は、「本誌2005年10月号の特集で、ボールではなくカップを見ながらストロークすれば24%もパットを改善出来るというリサーチ結果を発表し、その記事によって全米雑誌大賞を獲得した」と自慢し、当時12歳だったJordan Spiethがそれを読んでいたのではないか?と勝手に憶測を逞しくしています。'Golf Digest'誌のライターの一人は、その当時ライヴァル誌の記事を読んで触発されたらしく、2005年以来ずっとボールを見ないでカップを見てパットしていることをリポートしています。

ゴルフ雑誌の長期購読者として、私も当然'Golf Magazine'2005年10月号の特集は読んでいましたが、それがそれほど魅力的には思えませんでした。ボールを見ながらパットすればパットを沈める可能性が24%増える…というのなら最高ですが、8〜13メートルの距離の場合に、オーソドックスなメソッドだと平均1メートルもショートするところを、カップを見ながらだと平均71センチのショートで済み、それが約24%の改善に相当する…という程度のものだったのです。確かにそれは改善に違いありませんが、革命的なストローク法とは思えませんでした。

それでもJordan Spiethの成功にあやかりたいという方のために、「カップを見ながらパット」の練習法を紹介します。申し添えておきますが、Jordan Spiethがカップを見ながらストロークするのは主にショート・パットであって、6メートル以上ではやってないそうです。

'How to work looking at the hole into your game'
by David Dusek ('Golf Magazine,' October 2005)

「以下のプランの骨子は、カップを見てパットすることが、あなたをパット名人にすると信じ込ませることにある。いい結果ほど信念を鼓舞するものはないからだ。成功への二週間計画は次のようになる。

・初日〜五日目

今後数ラウンドの前に、練習グリーンで5〜10回ほどカップを見ながらパットしてみる。これは、あなたの脳に空振りの心配はないと納得させるプロセスである。

・六日目〜七日目

練習グリーンの異なる距離のカップに計50パットする(腰を痛めないように、ペースに充分注意すること)。しばらくすると、かなりカップに寄る率が高くなったことに気づく筈だ(特にロング・パットにおいて)。

・八日目〜13日目

ラウンドする前、カップを見ながらパットする三つのホールを決める。自信を持つこと。ちゃんと練習済みなら空振りすることはない。

・二週間目

全18ホールでカップを見ながらパットする」

【参考】https://www.youtube.com/watch?v=JXORZ99eLIo [2' 44"]

(February 24, 2016)

マスキング・テープでパットに上達

インストラクターJim McLean(ジム・マクレイン)が、先輩インストラクターCarl Welty(カール・ウェルティ)から教わったtip。

'The 3 Scoring Clubs'
by Jim McLean (Gotham Books, $30.00, 2005)

「目はパットの上達に重要な役割を務める。だが、かなり多くのゴルファーがこの事実を無視することに驚かされる。

4メートルほどのマスキング・テープ(ペイント時のはみ出し防止用粘着テープ)を練習グリーン、居間のカーペット、車庫のセメントなどの上に伸ばして止める。パターをそのラインの上に構えて立つ。

目をラインの内側、ライン上、ラインの外側などに置いてみる。また、頭を様々な角度に傾けて、ラインを見た時どのように影響するか調べる。

あなたはセットアップがいかに知覚に影響を与えるかを知ってショックを受けることだろう。私は、生徒が意図したラインを見るまで調節する。一部の人々にはオープン・スタンスが合っており、別の人々はクローズド・スタンスが合う。

私はこのメソッドをCarl Weltyから教わった。これはパッティングに関してこれまで聞いた中で最高のアイデアである。Tom Kite(トム・カイト)は1992年のU.S.オープンに優勝する前に、私からこのCarl Weltyの方法を聞き、実践した。これは私がSergio Garcia(セルジオ・ガルシア)に教えたことの一つでもある」

(February 24, 2016)

右脚が左より長いゴルファーへの警告

私の右脚は左より1センチほど長いのです。しかし、それは奇形というわけではなく、クリーニング屋さんで寸法直しをしていたことのある御婦人に云わせると、ほとんどの人間の身体は左右対称ではないそうです。よく見れば、映画俳優や歌手の目なども左右で大きさが違っていることが珍しくありません。ゴルフではJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)や Dave Stockton(デイヴ・ストックトン)、Cary Middlecoff(ケアリ・ミドルコフ)なども、左右の脚の長さが異なるそうです。以下は、女性インストラクターJane Horn(ジェイン・ホーン)の警告。

[Horn]

'Power Golf for Women'
by Jane Horn (Citadel Press, 1999, $16.95)

「左右の脚の長さが多少違うと、アドレスでの体重配分に問題が生じる。それは左右の尻の高さほど大きな問題ではない(多くの人の片方の尻は他方より低い)。最も問題になるのは、右脚が左より長い場合だ。その差は僅かだとしても、アドレスでの体重配分を妨害するに充分である。右脚が左脚より長いと、アドレスで左脚に寄りかかる原因となる。パワー・センター【註参照】が右に移る時、体重もそちらへ移ることになるが、右脚が左脚より僅かでも長いと、この体重移動が困難になる。パワー・センターが右に完全に回転出来ないと、パワーが損なわれる結果となる。解決策は、アドレスで右膝の柔軟性を増すことである。この修正により、パワー・センターの回転を身体に許す体勢が出来上がる。

【編註】筆者によれば、「鎖骨から下の胸の部分がゴルフ・スウィングの原動力であり、この部分をパワー・センターと呼ぶ」そうです。

この不均衡はスウェイの原因ともなる。アドレスで体重が左にある場合、ゴルファーの中には意識的に体重を右に移そうと試みる者もおり、それがスウェイである。解決法は簡単だ。アドレスでさらに多くの柔軟性を右膝に与え、体重配分を均等にするのだ」

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「体型別スウィング」(tips_54.html)の著者たちは「テコ型プレイヤーで右脚が左脚より長い人は、腰の高さの分だけスタンスをクローズにすべきである」と云っています。で、私はアドレスでターゲット・ラインに両足を平行にしてから、右足を僅かに後に下げていました。試してみると、右足を下げるよりも上の記事の示唆のように右膝を緩める芳が格段に素晴らしい。ショットの正確さが増します。

・右脚が左より長い有名プロ:
 Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)全116勝
 Dave Stockton(デイヴ・ストックトン)全25勝
 George Knudson(ジョージ・ヌードスン)全28勝

・どちらか不明だが片脚が長いプロ:
 Cary Middlecoff(ケアリ・ミドルコフ、1928〜1998)全41勝

【おことわり】画像はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。

(March 02, 2016、増補August 28, 2017)

脚の長さの違いは、両手の向きに影響する

パッティングが不調になっていた時期のこと。手順を全て正しく実行しているつもりなのに、方向にムラがあり、多くの場合プルします。この「日記」の過去・現在・未来の記事や原稿などを読み返しました。そして、次の二点を最近忠実に実行していなかったことに気づきました。
・スタンス幅を「スタンス幅の決め方・決定版」より狭くしていた。
・右脚が長いという自分の体型を補うポスチャーをとっていなかった。

[stance]

「スタンス幅の決め方・決定版」(tips_141.html)の前身である「正しいスタンス幅の決め方」(tips_126.html)に、写真左のように名刺を指に挟んでスタンス幅が正しいかどうかチェックする方法が紹介されています。これを等身大の鏡の前で再試行してみました。さほど悪い点は発見出来ませんでした。

[stance]

ついでに、鏡に横向きになって同じことを試しました。ショック! 両足はターゲット・ラインに平行に立っているのに、自然に垂らした両手は右の写真のように右手が左より前に出ていたのです。こんな風に両手が左方向を向くように揃っていては、プルしないのがおかしいほどです。鏡に正対していた時には全く気づかない落とし穴でした。

こうなるのは、私の脚の長さが異なるのが原因です。フル・スウィングの場合は、捻転と体重移動が関係するので上の記事「右脚が左より長いゴルファーへの警告」のように右膝を緩める方法が役立ちますが、パッティングでは右膝を緩めても両手は平行になりません。

両手のアライメント・ミスを修正するには以下のどれかを選びます。【以下は、私のように右脚が長い場合】

a) 右足体重にする。
b) 右足をラインから少し下げ、クローズ・スタンスにする。
c) 左膝を内側に押し込む。

もう一つ、左の靴底を高くするという方法もありますが、インナーソールで上げ底にした程度では両手の向きは変わりません(テスト済み)。片方が高いゴルフシューズを特注するしかなく、これには法外な値段を取られるでしょう。大富豪の方だけのオプションですね(;_;)。

上の(a)〜(c)を、鏡の前で横向きにやってみると、その程度に応じて面白いように両手が平行に揃ったりズレたりします。それほど脚の長さが微妙に手に影響するのです。フル・ショットの結果にはさしたる影響はないかも知れませんが、数ミリの差が成功・不成功を別けるパッティングには重大な影響を及ぼします。フルスウィングでは右膝を緩めている私ですが、パッティングでは三つの中で(c)を採用しています。理由は(a)と(b)には限界がなく程度がはっきりしない憾みがあるのに対し、(c)には限界があり明快だからです。

こうして不調の謎は解けました。しかし問題はわれわれが忘れっぽく、パッティングが好調になると、(a)、(b)、(c)のどれかによる調整などしなくても、ボールは真っ直ぐ狙った通り転がるわいと思い込んでしまうことです、成長し切った人間の体型は変わることはないので、私のような体型のゴルファーは死ぬまで脚の長さの差を自分の努力で補わなくてはならないのです。

【参考】
・「正しいスタンス幅の決め方」(tips_126.html)
・「スタンス幅の決め方・決定版」(tips_141.html)

(March 02, 2016)

芯でとらえるストローク

打つや否やボールを見送るのは大罪ですが、頭は残していてもヴァーチャル(実質的、心理的)にルックアップ(=ヘッドアップ)しているということは起こり得ます。その証拠はボールの中心をパターのスウィートスポットで打たず、トゥ寄りやヒール寄りで打ってボールに右回転や左回転を与えてしまい、転がる軌道を曲げたりリップアウトの原因を作ることです。日本アマの最高峰・中部銀次郎氏は「芯でとらえれば、全部入ります」と云っていました。ボールを凝視し、その背面に出ている釘を視覚化し(右図)、それをパターのスウィートスポットで打つように心掛ける必要があります。

[nail]

不思議なもので、パットに自信がつくに従って、ボールの背面の中心を凝視出来るようになります。不安がないので、完璧にパターのスウィートスポットでボールの中心を打てるようになるのです。当然得られるいい結果によって、ますます自信がつき、ますますいい結果が得られるようになります。これは元金に利息が足され、膨らんだ元金によって利息も増え、全体が雪だるまのようにどんどん膨れ上がる感じ。きっと大富豪の口座ではこういう現象が起きているのでしょう。

「パットの結果は音で聞け」なんて、われわれには絵に描いた餅のように難しい格言がありますが、「パットは必ず入る」と自信を持っている人達には容易いことなのでしょう。プロたちは長い距離を寄せるパットと絶対に入れるべきパットを峻別しているようです。入ることを期待しないパットの場合にパットの結果を盗み見しようという誘惑はなく、入れるべきパットは必ず入ると確信していれば、これまた結果を盗み見る必要はないわけです。

(March 02, 2016)

Byron Nelson(バイロン・ネルスン)のバンカー・ショット

Byron Nelson(バイロン・ネルスン、1912〜2006)は、ヒッコリー・シャフトの時代にキャディをしながらゴルフを覚えましたが、スティール・シャフト時代に突入した時、それを使いこなした最初の人となったことから『モダン・ゴルフの祖』と呼ばれています。彼は1945年にPGAツァー11連勝、年間計18勝を挙げるという記録を樹立し、この記録は今も破られていません。名人Byron Nelsonによる、バンカー・ショットの秘訣。

[Byron]

'Shape Your Swing The Modern Way'
by Byron Nelson with Larry Dennis (Golf Digest, 1976)

「バンカーから脱出するスウィングは、他の短いショットとあまり変わらないが、いくつかの変更を必要とする。

先ず初めに、スタンスを通常のピッチングやチッピングより広く(少なくとも肩幅に)する。もしあなたの両足があまりに近いと、回転し過ぎる傾向が出てしまう。広めのスタンスはスウィングの基盤をより強固にしてくれるが、それはバンカー・ショットで唯一無二の重要なポイントである。バンカー・ショットの名手Gary Player(ゲアリ・プレイヤー)の広いスタンスは、その好例である。

あなたは砂の中で足をしっかり落ち着かせる必要がある。でないと、滑るかも知れないという不安によって、スウィングを無意識に制限してしまう。また、通常の短いショットよりも、もっと膝を柔軟にすることに留意。これはバンカー・ショットに不可欠な、終始低く留まることを助けてくれる。上のようなポイントと共に、ややオープンなスタンス、体重は左サイド寄りで、しかも両方の踵に掛ける。

他のショット同様、脚の使い方は重要である。砂の中での下半身の動きに関する私のお気に入りの考え方は、ロッキン・チェア(揺り椅子)である。両足と両膝は左から右へ若干揺れ、また右から左に戻る。頭はもちろん動かしてはならない。上半身は前後にスウェイするのでなく、回転させること。

バンカー・ショットではクラブを(チッピングやピッチングのように)低く引き続けるのではなく、ラインの外側へシャープに引くべきである。かと云って、物理的にクラブを引っ張り上げてはいけない。通常の肩の回転と腕によるスウィングをすれば、外側への動きがスウィングに自然なアップライトで急な弧を作り出す。

覚えておいて欲しいのは、ボールを砂から爆発させるのが目的ではないということだ。多くのプレイヤーが犯す過ちは、バンカーであまりにもハードに打とうとすることだ。そうではなく、普通のライなら、リンゴの皮を浅く(深過ぎないように)剥くようにする。砂の質にもよるが、ボールの後ろ約5センチを狙う。スウィングは断固と、長過ぎず、ごくわずかのコックで。左手と手首はいつものようにしっかりとさせるが、バンカー・ショットのスウィングの大部分は右手でコントロールされる。アウトサイド・インの軌道によって、ボールの下でクラブフェースをカットするようにスライドさせながら打ち抜く。砂を空手チョップで打つような一般的なミスを犯すと、砂を取り過ぎ、脱出失敗を重ねることになる。

掬い打ちでボールを出そうとしてもいけない。ボール位置を左足の正面とすれば、砂を通過するクラブヘッドにより水平な軌道を辿らせることが出来る。必ず打ち抜くこと。砂に接触した途端にスウィングを中絶してはいけない。打ち抜けば、通常のライからだとボールは高くソフトに飛び出し、着地後少なめのランで停止する。

目はボールではなく、クラブを突入させたい砂の部分を見続けること。ボールを見てしまうと、本能的にボールの近くを打つことになり、トップしたりホームランになったりしがちになる。

私はボールの後ろに突入させる位置は常に一定とし、距離調節はスウィングの長さと早さで行う。距離に応じてどれだけ長くハードに打つかは練習で確認しなければならないが、これが安定してプレイ出来る方法であることが分る筈だ。

以上の基本技法に従い、それを信ずることが出来れば、バンカー・プレイの謎は解決することだろう。練習によって、自信たっぷりのバンカー・ショットを展開出来る筈だ」


【おことわり】画像はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。

(March 06, 2016)

Gary Player(ゲアリ・プレイヤー)の 湿った砂のバンカー・ショット

Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)いわく、「Gary Player(ゲアリ・プレイヤー)に対抗してプレイする場合、あなたは彼がグリーンを外すなら草の上であってほしいと願い始めるに違いない。草の上からだと彼はピン傍に寄せる程度だが、バンカーからだと彼はチップインさせてしまうからだ」

あるトーナメントで、Gary Playerが3メートルの難しいバンカー・ショットをチップインさせた時、観衆の一人が「凄い!幸運としか云い様がないね」と云った。Gary Playerは「その通り。練習すればするほど、どんどん幸運が巡って来るんだ!」と自分の練習量を自慢した。

'Astonishing but True Golf Facts' by Allan Zullo (Andrews McMeel Publishing, 2002)に次のような逸話が紹介されています。

「1960年のある日、南アのJohannesburg(ヨハネスバーグ)近郊のゴルフ場で練習ラウンドをしていたGary Playerは、ピンから7〜8メートル離れた練習バンカーから、五個連続でチップインさせ、六個目をリップアウトさせた」

'Play Golf with Player'
by Gary Player (Collins, 1962)

「バンカーに足を踏み入れた直後からバンカー・ショットの準備が始まる。砂が固いか、湿っているかによって、若干異なるテクニックを必要とするからだ。

私は通常のバンカー・ショットでは1インチ(約2.5センチ)ほどクラブを短く持つ。どんなライの場合もボール位置は左踵の前方。普通のライのグリーンサイド・バンカーでは、ボールの背後2インチ(5センチ)のところにクラブヘッドを入れる。グリーンから20ヤードも離れているバンカー・ショットでは、1インチ(約2.5センチ)ボール後方を打つ。

砂が湿っていたり固い場合、クラブヘッドは最初の瞬間にスキッド(横滑り)し、次の瞬間にバウンドする。こういう状況下だと過度に力強く打ちたくなるものだが、このショットは他のバンカー・ショットよりずっとソフトにプレイすべきだ。ピンが実際より3ヤード近くにあると考えるとよい。

この場合も、普通のライ同様、ボールの背後2インチ(約5センチ)にクラブを入れる。大きなフォロースルーをする。バンカーでは、フォローが長過ぎるということは絶対にない

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湿ったバンカーで練習してみました。私は乾いた砂の場合はボールの10センチ後方にサンドウェッジのリーディング・エッジを入れていますが、これだと湿った固い砂に弾かれてしまってホームランを多発。Gary Playerの云うように5センチにすべきでしょうが、ボールに近いのでかなりの厳密さが必要です。近過ぎると、これまたホームラン。バウンス角が9°のサンドウェッジでなく、7°のギャップウェッジだと弾かれずにスムーズに砂をスライド出来ることが判りました。ギャップウェッジなら10センチ後方でも問題ないので、この方が安全だと思います。

(March 06, 2016)

私のバンカー・ショット

Byron Nelson(バイロン・ネルスン)は「リンゴの皮を浅く(深過ぎないように)剥くように」と云っていますが、私は「鍋物の灰汁(あく)を取る」というイメージの方が似合っていると思います。

[Ochoa]

鍋物の後は煮汁で雑炊やうどんを作ったりしますので、灰汁は掬っても煮汁は極力掬わないようにします。そのためにはお玉杓子を煮汁に浅く入れ(深く沈めない)、お玉の下端を水面と平行に滑らして出来るだけ多くの灰汁を取るようにしますよね。バンカー・ショットも同じで、砂の表面に灰汁があると想像し、浅く灰汁を掻き取るのです。

鍋物の場合はいきなり灰汁の端にお玉を入れますが、バンカーの場合はボールの後方(ターゲットと反対方向)5〜10センチのところにお玉を…じゃない、クラブヘッドを入れます。また、灰汁は抵抗がないのでそーっと掬えばいいのですが、バンカーの砂はとんでもなく重いので、力強く掻き出さなくてはなくてはなりません。

「力強いスウィング」はイクォール「早いスウィング」ではありません。勢いさえあればいいのであって、早い必要はないのです。われわれは「爆発」という言葉に騙されて狂ったようなスピードでバンカーショットをしがちですが、冷静になるべきです。必要なのは砂に負けない(振り抜ける)力強さだけであって、早い遅いは関係ないのです。最近の経験から云えば、スウィング速度が遅い方が確実にボールを出せます。早いスウィングだと砂の取り方が浅過ぎたり深過ぎたり一定しない傾向があります。深いラフから出す場合、パワーは必要ですが速度を早くしたりしませんよね。バンカーでも同じ筈なのに、われわれは乱暴に、かつ早い速度で打とうとします。われわれがバンカーで急速にスウィングするのは、失敗を恐れる恐怖心からではないでしょうか?

右の写真は到底砂を爆発させているようには見えず、とても優雅です。これを模範にしたいと思います。

ついでですが「バンカー・ショットは手打ちでよい」などと云った人を怨みます。手打ちでは駄目です。ちゃんと肩を廻さないと力強いスウィングは出来ず、脱出に失敗します。手打ちというのが「手・腕だけによるスウィング」でなく、「スタンス・ラインに沿ったアウトサイド・インのスウィング」という意味なら正しいのですが。

Gary Player(ゲアリ・プレイヤー)は、バンカーからチップインさせられるまで練習を止めなかったそうです。私はとてもそこまではいきませんが、せめて常時ピンハイにつけられるように頻繁に練習しようと思い立ちました。

サンドウェッジと60°ウェッジによるバンカー・ショットの距離の違いを調べたり、顎の低いバンカーからパターで出す練習もしました。距離が20ヤードを越える場合はギャップウェッジの出番ですが、この場合ターゲット(ピンあるいは着地予定ポイント)をダイレクトに狙うべきであることを実感しました。バンカー練習のためだけにコースへ行ったり、シニアのベスト・ボールのゲームの前に必ずバンカー練習をするようにしました。以前「(ラウンドの前に)バンカーの練習を最後にするな」というtipを紹介しましたが、手打ちではなくちゃんと肩を廻したバンカー・ショットをするのであれば、ラウンド直前に練習しても大丈夫です。

備忘録として、私の現在の方法をメモしておきます。

・顎の低いバンカーでは、先ずパターで出せないかどうか検討する。パターで出せれば、超安全。

1) 距離が長い時(20ヤード以上)はギャップ・ウェッジ、そうでなければサンドウェッジ。砂が固ければバウンスの少ない60°ウェッジ(私の場合、これはサンドウェッジより5ヤード距離が減る)。
2) 足が砂に埋まる分、クラブをやや短く持つ。
3) ボール位置は左踵の前方。
4) 広めのオープンスタンスで構え、両爪先のラインに平行にスウィングする。【ギャップ・ウェッジではスクウェアに狙う】
5) ボールの背後10センチの砂を、目玉が飛び出すほど凝視する。【註】

【註】5センチだとホームランになり易いので、10センチにしています。上に書いたようにクラブヘッドを砂の中で平行に滑らすので、ボール後方何センチかは大雑把でいいのです。しかし、「目玉が飛び出すほど凝視する」努力をしないと、つい目(と意識)がボールに行ってしまい、ホームランをかっとばすことになります。

6) 手打ちではなく肩を捻転してバックスウィング。【←これを忘れてはいけない】急がないこと。
7) ラージ・サイズの紙コップの量の砂を取る力強さでゆっくりダウンスウィング、高く振り抜く。

先日、上の方法でパー5の三打目をガード・バンカーからピン横1.5メートルにつけ、"sandy birdie"(サンディ・バーディ)を射止めました。以前はこのガード・バンカーを左右どちらかに避けようとしていたものですが、もう正面攻撃を厭う必要がなくなりました。

【参考】「それでもなおバンカーで苦しんでいる方へ」(tips_165.html)

【おことわり】画像はwikipedia.orgにリンクして表示させて頂いています。

(March 06, 2016、改訂July 13, 2016)

Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)の トップとダフりへの三行(くだ)り半

Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)が'Golf Digest'誌に四年間連載したアメコミ風カラー・イラスト満載のインストラクション'Jack Nicklaus' Lesson Tee'(ジャック・ニクラスのレッスン・ティー)の総集編より。

'Jack Nicklaus' Lesson Tee'
by Jack Nicklaus with Ken Bowden (Golf Digest/Tennis Inc., 1977)

「トップはボールの赤道の上のどこかしらを打つことだ。これを防ぐために理解しなければならないのは、二つの明瞭に異なる道筋があるということだ。多分、一般ゴルファーの間で最もありふれた原因は、あまりにも急角度にボールにスウィング・ダウンするため、クラブヘッドがボールに対し充分低くならないせいだ。慢性のスライス病患者とプル病患者は普通そんな風にトップする。もっとも上級者でも、特にボールを低く飛ばそうと手を遅らせる場合にたまさか起ることがある。

[Lesson Tee]

このテのトップを克服する確実な方法は、ダウンスウィングの弧を大きくし、クラブヘッドが地面と平行に移動しつつボールの後ろを打つようにすることだ。スウィング全体の改良が必要だが、一時的なバンドエイドとしては、アドレスでボールと頭を後方にし、インパクトにかけて頭を後方に残し続けようとすることだ。

もう一つのトップの形体は、全くの初心者かぎくしゃくしたスウィングをするゴルファーだけを悩ますものだ。目一杯の力でボールを打とうとして、バックスウィングのトップで、手と手首によってクラブを乱暴にぐいっと引くような投げるような引っくり返すような動きをして、ボールの遥か後方でスウィング弧の最低点に到達する。実際には、クラブヘッドがボールの上半分を捉える時には、上昇軌道にある。

もう一つ別なトップの原因は上級者と無頓着なゴルファーにままあるスウェイによるものだ。バックスウィングで、身体の回転ではなく水平移動をしてスウィング弧を後方に移してしまう。ダウンスウィングでその水平移動と同じ幅を戻さない限り、スウィング弧の最低点はボールの後方となり、結果は良くて"thin"(薄く叩く)、悪くて"topped"(トップ)かダフりである。これを克服する単純な方法は、スウィングの間じゅう頭を一ヶ所に留めることだ。頭を動かさずにスウェイするのは不可能だからだ。

トップ治療にはスウィング全体の改善が必要だが、初心者向けの付け焼き刃的即効薬として、スウィングの間じゅう体重を左にかけ続ければ治ることもある。中級以上のゴルファーはダウンスウィングを手と手首ではなく脚と腰のリードで行う練習をすべきだ。

ツァーでは(私を含めて)、ドライヴァーやロング・アイアンで"cold top"(コールド・トップ)【註1】を時たま打ってしまうことがある。その原因はほぼ例外無く強打しようとした場合で、それは脚と腰のアクションを加速し、手と手首によるクラブヘッドのリリースが過度に遅れるせいで起る。【註2】

【編註1】"cold top"とはクラブフェースの低端でボールの上半分を叩き、その結果地面を走らせることになるショット。
【編註2】2013年の'Golf Digest'誌の記事で、Jack Nicklausは「最近のデカ・ヘッドのドライヴァーでは、もはやトップは問題ではなくなっているが、地面から打つ場合のフェアウェイ・ウッドやアイアンではまだトップは起る。しかし、原因については昔と違う考え方である。トップするゴルファーは下半身からダウンスウィングを行わず、早期にクラブをリリースしてしまい、インパクトで手首を甲の側へ折って(凹ませて)しまう。つまり、手よりもクラブヘッドを先行させてしまうのが原因だ」と書いています。

ダフりはボール後方(ターゲットと反対側)の地面を打つことである。これは、多くのゴルファーがそれと意識せずにしょっちゅうやっていることで、バックスピンのせいで距離不足となり、着地時もボールは急停止しない。ダフりの原因はトップの原因に似通っていて、違いは単純にボールに到達する前に地面を打つかどうかである。だから、これもまたスウィング全体の改良が必要になる。

トップ同様、ルーズな頭の動きはダフりの原因となる。対策も同じで、スウィングの間じゅう頭を一ヶ所にキープすることだが、ダフりの場合は意識的に頭の下方と右方への動きを避けるべきである。多くのトップクラスのゴルファーがダウンスウィングで、ターゲット方向への下半身を突出させる反映として頭を少し下へ、そして右へと動かす。だが、その動きを強調すれば、彼らが(あなたもだ)ボールよりも前に地面を叩く結果となるのは間違いない」

(March 09, 2016)

スライスとチキン・ウィング防止の超簡単テクニック

'Clip your wing—and your slice'
by editors of 'Golf Magazine' ('Golf Magazine,' January 2016)

「スライサーの多くはクラブフェースの角度やスウィング軌道を直そうと生涯を無駄にするが、実は真犯人は左腕であることが多いのだ。左腕がインパクトにかけて折れ、肘が身体から離れるとおぞましいチキン・ウィングを形成する。

正しくクラブヘッドをリリースし、ドローを打つには、左肘は身体から離れず、身体と一体となって動くべきである。これを正しく行えば、インパクト後、肘は(外側へでなく)地面を指し、右前腕は左に回ってクラブフェースをスクウェアにする。

この動作を実行するには、アドレス時にシャツの左袖を脇の下にたくし込み、それを腕と身体の間に閉じ込めたまま数回のスローモーションでの素振りをする。その感覚を維持しながらプレイすれば、チキンウィングとバナナ・スライスとは永遠におさらば出来る」

(March 09, 2016)

Nicklaus(ニクラス)が恩師から叩き込まれた基本三ヶ条

Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)の育ての親であり、彼の唯一の師として折りに触れ彼のスウィングをチェックし続けたJack Grout(ジャック・グラウト、1910〜1989)。しかし、Jack Groutその人についてと彼の指導方針については、あまり語られたことがありません。

'The Greatest Game of All (My Life in Golf)'
by Jack Nicklaus with Herbert Warren Wind (Simon and Schuster, 1969)

[Grout]

オクラホマ州生まれ育ちのJack Grout(ジャック・グラウト)は、20歳の時に彼の兄Dick(ディック)がレッスン・プロを務めていたテキサス州フォートワースのGlen Garden C.C.(グレン・ガーデンC.C.)のアシスタント・プロとなった。そのゴルフ場へはキャディ上がりの二人の若者がやって来て、Jack Groutとラウンドした。その二人の若者とは、当時20歳になっていなかったByron Nelson(バイロン・ネルスン)とBen Hogan(ベン・ホーガン)であった。七年間兄の下で多くを学び、オクラホマ州オープンで優勝したJack Groutは、1937年にPGAツァーに加わった。

プロ入り後、Jack Groutはトップ・プロの一人Henry Picard(ヘンリィ・ピカード)と親しくなり、Henry Picardがレッスン・プロだったペンシルヴェイニア州のゴルフ場のアシスタントとなった。【編註:当時のツァーの賞金額は少なく、副業が必要であった】1940年以後、いくつかのゴルフ場を転々としたJack Groutは、1950年にオクラホマ州のScioto C.C.(シオトC.C.)にレッスン・プロとして雇われた。Jack Groutは当時40歳。背が高く、痩せ形で、黒光りする頭髪、眼鏡を掛けた風貌は何やらペルーの弁護士という感じだった。彼は優雅な長い弧、素晴らしい一定のテンポで、手を主体のスウィングをした。

Jack Groutはツァー・プロとして二勝していたが、それで満足していたとは思えない。今や彼の意欲は素晴らしい教師になることだった。その頃11歳でScioto C.C.でゴルフを学んでいたJack Nicklausが、彼の生徒になった。グッド・タイミング。

以下は教え子Jack Nicklausが綴る仰げば尊し。

「Jack Groutが基本とするものは先輩Henry Picardのスウィングを研究した末のもので、そのHenry PicardはインストラクターAlex Morrison(アレックス・モリスン)から学んでいた。ニューヨークで有名人相手に教えていたAlex Morrisonのメソッドは極端であり革命的でさえあると議論の的になっていたが、例えば足の動きについての教えは今日オーソドックスとみなされている。Jack Groutは五指に満たない厳選された基本を教えた。それを列挙してみるが、1950年代にはゴルフ・スウィングは現在のように理解されておらず、Jack Groutは時代に先行していたのだということを心に止めておいてほしい。

Jack Groutが指導する基本は以下のABCにまとめられる。

[Jack]

A. 頭はバックスウィングでもダウンスウィングでも静止していなければならない

これは別に新しいアイデアではない。数十年前にHarry Vardon(ハリィ・ヴァードン)が『頭を静止出来ないプレイヤーは、よいゴルフなど期待出来ず、これほど重要なものはない』と述べている。しかし、長い年月の間にこの教えは形骸化し、頭を静止し続けろではなく、ボールを見続けろに変わってしまった。これはゴルファーの心の重点も変えてしまったため、元の意味を再発見しなければならなくなったのだ。

頭はスウィングのバランスの中心である。それが動けばバランスと共に、スウィング弧、動作、タイミングなどを変えてしまう(当然である)。頭はアドレスした時の位置に、バックスウィングの間もダウンスウィングの間も静止(硬直ではない)しているべきである。これをマスターするには練習が必要で、そう簡単なことではない。

私が11歳ぐらいの時、生来とても穏やかなJack Groutがどちらかというと荒っぽい指導法に訴えた。アドレスした私の真正面に彼のアシスタントを立たせ、彼に私の髪を掴ませたのだ。スウィングの間に私が動けば、おお、その痛かったこと!その痛みは何度も私に涙を流させた。繰り返すが、Jack Groutはロンドン塔の拷問係のような人間ではなかった。だが、それが彼にとって私の上下に動く頭を停止させる唯一の方法であったし、やがて私はどれほどハードにボールを打とうが、頭を静止させることを学んだのだ。

B. よいバランスの鍵はフットワークである(足首の正しい回転)

偉大なプレイヤーたちは例外なく素晴らしいフットワークの持ち主である。ゴルファーのバランス感覚がすぐれていなければ、ダウンスウィングで自由かつ素早く動くことは不可能だ。バランス感覚が鍵であり、他のことは全てそれについて来る。長い間、足の正しい動きの要点については二、三のインストラクターからしか教えられなかった。当時、バックスウィングで体重を右足に移しながら左爪先で立ち、ダウンスウィングでそれを戻すと教えられるのが常であった。ここでの問題点は多くのゴルファーが間違った膝の折り方、間違った腰の回転によりバランスを崩すことだった。

よい足の動きは足首(くるぶし)の回転に基づくべきものである。左足首はバックスウィングで右足方向に水平に回転し、右足首はその動きに対して踏ん張る。ダウンスウィングでは左足首は左に逆回転し踏ん張る体勢を取り、右足首は左に回転する。これがゴルファーに正しい回転をもたらし、101個もの悪しき動作を回避させる。これは足の回転だけでなく、よいバランス感覚、よい腕のスウィング、肩のフル回転のしなやかさ…等々を作り出す。

Jack Groutが私に踵を上げるのを許してくれるまで三、四年かかったが、その後も時々両踵を地面につける練習を示唆した。あなたのスウィングが波に乗っている時、両方の足で地面を噛むようにして練習するのは、よいコンパクト・スウィングを再発見する素晴らしい方法である。

C. 若いゴルファーは、可能な限りストレッチしたスウィング弧を身につけるべきである

よい肩の回転は肩のフル回転である。Jack Groutの考えは、ストレッチ、ストレッチ、ストレッチであった。若いゴルファーはストレッチ出来るが、彼の筋肉が柔軟性を失うとそれはもう不可能になる。彼は初心者にもボールを出来るだけハードに、出来るだけ遠くに飛ばすことを奨励した。これは伝統的インストラクションの正反対であった。多くの若者たちは、飛距離ではなく先ず正確さが必要で、飛距離は成長とともに得られると教えられる。Jack Groutは『筋肉が柔軟な若い時にこそパワフルなスウィングを身につけるべきであり、それはその後も離れない。方向のコントロールは後から出来る』と主張する。

飛距離は私のトーナメント・ゴルフで大きな助けとなったが、それは私が他のプロたちより肉体的に強靭であるというのでなく、若い時からフルに筋肉をストレッチしてボールを打ち抜くことが第二の天性となっていたからだ。

Jack Groutの大事な教えは他にもあるが、以上の三点を特に強調しておきたい。

私は11歳の時に81で廻り、12歳で80を切り(74)、13歳で70を切った(69)。

Jack Groutは私の唯一の師である。私は幼い頃に彼と知り合えた幸運に感謝している」

【おことわり】Jack Groutの写真はwikimedia.orgにリンクして表示させて頂いています。

(March 13, 2016)

Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)の トップからはスムーズに

'Smooth from the top'
by Jack Nicklaus with Roger Schiffman ('Golf Digest,' Febrary 2013)

「トップからダウンスウィングへの最初の動きは、ゴルフ・スウィングの中で最も重要なものの一つだ。あなたがどんな風にバックスウィングしようが、ダウンスウィングへの切り返しはスムーズでなくてはならず、クラブはターゲット・ラインのインサイドからボールに向かう必要がある。そして、全体としてのダウンスウィングは土台(足元)からスタートすべきだ。

私は短距離走選手がスターティング・ブロックを離れる場面を考える(高校時代、私はランナーだった)。最良の短距離選手は早いスタートを切るが、最少の動きでスムーズに行う。私は肩と腰が確実に地面で支えられた右脚の上で充分に回転し、身体が巻き上げられたトップをしたい。そういう風であれば、ダイナミックだがしっかりした流儀でスタートを切ることが出来る。私はバックスウィングで右膝を絶対に伸ばしたりさせたくないし、右膝が身体の右側にスウェイしたりもさせたくない。

私がここウン十年で気付いたことだが、バックスウィングでアドレス時にセットした右膝を動かすゴルファーはショットが不安定になる傾向がある。右膝の位置は変えるべきではない。

バックスウィングのトップで、クラブは私が五時と呼ぶ状態であって欲しい。あなたが私のスウィングを飛行線後方から見れば、クラブフェースはイメージ上の時計の文字盤の五時を指している筈だ(それはオープンなフェースである)。それはクラブを、オープンな位置からスクウェアな位置へ、そしてフィニッシュでのクローズな位置へとスムーズにリリースすることを可能にする。それをスウィングの円運動の完結と考えよ。私は常にクラブのトゥがヒールよりも大きな弧で進むように務める。これは、あなたの精一杯の自然なパワーを用いた自由なスウィングを可能にしてくれる」

(March 13, 2016)

Harvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)の 刺(とげ)のある手打ち防止法

伝説的インストラクターHarvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)によるメンタルtip。

'The Game for a Lifetime'
by Harvey Penick with Bud Shrake (Fireside, 1996, $10.00)

「ボールの後ろからターゲットへと続く有刺鉄線を視覚化しなさい。その有刺鉄線は数センチ地面から浮いており、ボールの真上から真っ直ぐ目標へと伸びている。

あなたは有刺鉄線でクラブを打ったり引っ掻いたりしないでボールを打たねばならない。唯一あなたに可能なのは、インサイドからスクウェア、そしてインサイドへと向かう、インパクト前後で低くクラブを保つようにスウィングをすることだ。

これを(ラウンドではなく)練習場で試しなさい。ちゃんと練習すれば、本番で有刺鉄線のことなど考える必要はない。もしラウンドの最中に調子が悪くなったら、有刺鉄線を視覚化しながら数回の素振りをする。

有刺鉄線のイメージが強烈過ぎて神経過敏になるという人は、ボールからターゲットまでの地面に線が引かれていると思えばよい。その線のこちら側でクラブを振り上げ、振り下ろす感覚を抱きなさい」

(March 16, 2016)

Nick Faldo(ニック・ファルド)の 切れ味のいいアイアン・ショットの打ち方

Nick Faldo(ニック・ファルド)によるアイアンの打ち方のコツ。

'A Swing for Life'
by Nick Faldo with Richard Simmons (Penguin Books, 1995, $19.95)

「かなり多くの人が、どうすれば質の高い打ち方が出来るか?と私に尋ねる。以下が、それに対する私の返事だ。

9番アイアンを手に、3/4スウィングで切れ味よくボールを先に、次いで地面を打つように務める。バックスウィングでもフォワードスウィングでも、『親指を上に』と考えること。それが手首を正しくコックし、クラブをいいプレーンにセットすることを想起させてくれる。

その後、スピードを増すように努力する。インパクトにかけて膝を安定させ、身体をしっかり捻転させる。ボールに打撃を与える際、出来るだけ大きな音がするように打つ。私はクラブフェースに紙ヤスリが張り付いていて、ボールの皮が剥けるところをイメージする。クラブでボールを地面に押し付け、私がクラブヘッドをリリースすると、ボールが流れるように離れて行くような感じを抱く」

(March 16, 2016)

完璧なバックスウィングのための2ステップ

インストラクターMark Hackett (マーク・ハケット)によるシンプルかつ強力なtip。

[Irwin]

'Two steps to a perfect backswing'
by Mark Hackett ('Golf Magazine,' June 2014)

「優勝への道を驀進するプレイヤーは、スウィング・メカニックス(スウィング動作)などに心を奪われていない。遵守事項など考えず、全てを飛行機の自動操縦のように潜在意識に委ねている。これはツァー・プロにだけ限定された境地ではない。あなたにも可能なのだ。

スウィング直前の想念(遵守事項)は少なければ少ないほどよい。多くて二つである。私のお勧めのバックスウィングの二つの鍵を試されたい。

1) 左腕を快適に胸に押し当てながら、左肩を顎の下へと回転させる。

2) 左手親指が右肩を指すようにする。

両方合わさると、これまであなたが犯したバックスウィングのミスの90%を根絶することが出来、シャフトとクラブヘッドはトップの理想的な位置に納まる。それは正しいプレーンを作り、パワフルな強打をお膳立てする」

[icon]

(1)ですが、左肩を顎の下に持って来たからと云って正しいバックスウィングをしていることにはならないので、要注意です。上体を全く捻転させなくても(左腕を右に引っ張ることによって)左肩を顎の下に持って来ることは可能で、これは「偽のターン」と呼ばれます。これだと飛距離と方向どちらをも損なってしまいます。

(2)は、シャフトをターゲットラインに平行(スクウェア)にする素晴らしい方法です。

【参照】「偽のターンをやめよ」(tips_165.html)

(March 20, 2016)

3(スリー)ジョイント・ストローク™

これはストレート・ストロークのオリジナル・メソッドです。最近の私の7オーヴァーでパット総数25、8オーヴァーでパット総数23などに貢献してくれたストローク法ですので、現在パッティングが不調の方のお役に立てると確信します。

[parallel]

"Three-Joint Stroke"(三つの関節ストローク)という命名は、以下の三つの関節を調節しながらストロークすることに由来しています。

① 関節その壱:手首を弓形にする。【参照:「パットの方向性を手首の高さで制御する」(tips_167.html)】
② 関節その弐:左肘をラインと平行にする。
③ 関節その参:左肩でパターヘッドを押す。【参照:「左肩でパターヘッドを押す」(tips_165.html)】

これは二つの既出のテクニックに②を新たに加えて統合化したメソッドで、いずれも関節に注目すべきであるのが共通点です。これらを三位一体で実行すれば、正確この上ないストロークが可能になります。

実は開発者当人はもう一つ、「④ 関節その四:左膝を内側に押し込む」を必要としますので、私の場合は「4(フォー)ジョイント・ストローク」となりますが、これは個人的・体型的理由からなので、一般の方は「3ジョイント・ストローク」で充分かと思われます。

ストロークの手順は後ほど記すとして、先ずは新登場の②「左肘をラインと平行にする」を説明します。これは大分前に考案した「チキンウィング・ストローク法」(tips_120.html)を進化させたもので、「絶対にラインに平行に左手を引こう!」という意図であり、「絶対に左手首の角度を変えないぞ!」という意志の現れでもあります。手首を弓形にする際、軽いビビッという刺激を感じたところを目安にしましたが、左肘をラインと平行にする際にも、肘に軽くビッという刺激(こちらはかなり弱い)を感じるまでラインに平行にします。そこまでしないと、ボールをプルする恐れがあるからです。

「関節その壱」と「関節その弐」を実行すると上の写真のようになります。弓なりの手首、ラインと平行な左前腕(写真の赤矢印)を御確認下さい。もちろん、左前腕は両肩を結ぶ線とも平行です。

ここまでの要素だけを実行しても、不調だったパッティングが改善されるかも知れません。お試し下さい。うまく行かない場合は、以下の私の手順を参考にして下さい。


【基本の手順】

[bending wrist]

1) 「スタンス幅の決め方・決定版」(tips_141.html)で決めたスタンス幅を取る。私の場合、両足の内側を約33.5センチ離すのが最適。

2) パターヘッドをスタンス中央に置き、ボールはその前に位置するようにアドレス。

3)【この項は左右の脚の長さの異なる人だけの手順です】 私は右脚が若干長いので、普通に構えると右肩が前に出てプルします。それを相殺するため、左膝を内側に押し込みます。【参照】「脚の長さの違いは、両手の向きに影響する」(この頁の上の記事)

4) 「パットの方向性を手首の高さで制御する」(tips_167.html)にあるように、手首を弓形にし親指の付け根と手首との間(右写真の緑色の点)にビビッと刺激を感ずるまで曲げる

5) 左肘にビッと軽い刺激を感じるまで前に出し、左前腕をターゲットラインに平行にする。(最初の写真の赤矢印)

[shoulder push]

6) 【最重要】「左肩でパターヘッドを押す」(tips_165.html)にあるように、"FLW”("Fixed Left Wrist"、フィックスト・レフト・リスト、固定した左手首)の角度を維持するため、パターヘッドを引き摺るように左肩でパターヘッドを後方に押すバックストローク(右図)。バックストロークの際、左目の周辺視野に、身体の正面へしゃしゃり出て来る左肩が見えないように。【注意】肩を右にスライドするだけであって、どちらの肩も上下させないこと。

7) "FLW"を維持するため、(手ではなく)左肘をターゲット・ラインに平行に引くようにフォワードストローク。この時、絶対に肩をターゲット方向に開かないこと。ボールを見送って頭を廻すと肩が開き、パターフェースまで開いてしまい、ここまでの全ての苦労が水の泡になります。左サイドに多少窮屈な思いをしながらフォワードストロークします。【←これ、云うは易く…で結構難しいのですが、非常に重要なポイントです】 この窮屈な感じは不自然なような、ボールが右へ出て行くような錯覚を与えますが、実はそれがボールを真っ直ぐ転がす秘訣と云えます。もし自然な感じで楽にフォワードストローク出来たら、それは肩をオープンにしている証拠であり、間違いなくプルします。どうしてもボールを見送る悪癖から脱却出来ない場合は、左目を閉じてパットするという方法もあります。


【オプション】

以下は、必須というわけではありませんが、上の技法をさらに効果的に補強するアイデア集です。「基本の手順」だけではうまくいかない場合に順次試してみて下さい。

・ポスチャー

このストローク法には膝を折って屈み込み、首を地面と平行にしたポスチャーが合っているようです。理由は解明出来ていませんが、背を伸ばした姿勢で手首を弓形にするとパターのヒールが浮き過ぎます。「両手を高く構えると、フェースはオープンになる」と云われていますから、ヒールの浮かし過ぎもオープンなフェースをもたらすと思われます。

・体重

左右均等で、お尻を突き出し、爪先体重にします。拇指球(親指の下の膨らみ)ではなく、完全に爪先が望ましい。「スタンス幅の決め方・決定版」と同じDr. David Wright(デイヴィッド・ライト博士)の研究成果に「アドレスで決まるパットの方向」(tips_116.html)というのがあります。手首を弓形にする構えは両手が高くなるわけですが、博士の論文で手が高い場合にターゲットに真っ直ぐ転がそうとするなら、選択肢は「爪先体重」しかありません。私の実践によっても、これは正しいと確認出来ています。つまり、「弓形の手首」と「爪先体重」は切り離せないセットと考えるべきです。

・グリップ

最初の写真左のように、私は両手を揃えたグリップをしています。パター・ハンドルの上の両角は、両手の生命線に沿わせています。こうすると、パター・シャフトと前腕部は一直線になります。グリップの背後では左右の中指と薬指をインターロックさせ、右手の小指だけ直接パター・ハンドルを握っています。この方法だとグリップをぐらつかせず、両手とハンドルとの一体感が得られます。【注意】どんなグリップでもいいのですが、常に一定のグリップをすること。そういう基準がないと、手首を弓形にした時の刺激の感覚が正しく掴めないので。

[eyeline]

①と②の二つの関節には軽い刺激を感じるべきですが、グリップ全体は緊張させないように。グリップそのものはソフトであるべきです。

・目線

頭の位置によって目とボールとの間隔は変わるにしても、両目ともラインに対しては平行に揃えるべきです(右図のDやEは、ラインに対して斜めなので不可)。目線をオープンにしたりクローズにしたりすると、その目線通りにボールが進む恐れ大だからです。

・距離コントロール

距離の調節は、あくまでもバックストロークの長短で行い、インパクト時の力の強弱で加減してはいけません。本番前にターゲット(カップあるいは中間目標)を凝視しながら数回の素振りをし、「アイ=ハンド・コーディネーション(目と手の協調作業)」の基礎を作ります。この際、"FLW"(固定した左手首)の角度を保ちながら素振りすべきです。

[nail]

・呼吸

息を吸いながらバックストロークし、吐きながらフォワードストロークします。流れるような、スムーズなストロークが遂行出来ます。【参照】「排気でパット」(tips_155.html)

・集中

日本アマの最高峰・中部銀次郎氏は「芯でとらえれば、全部入ります」と云っていました。ボール後部の中央の一点を凝視し、そこにパターフェースのスウィートスポットを当てることに集中します。右図の釘を、パターヘッドで打ち込むイメージ。ボールの中央をパターフェースのトゥ寄りやヒール寄りで打つとリップアウトしがちになり、またスウィートスポットでボールの中心から外れたところを打ってもリップアウトする恐れがあります。【参照】「精密にストロークするイメージ」(tips_153.html)

・重力を使う

自分の手(力)でボールを打とうとするのでなく、長めのバックストロークをし、重力がヘッドを元の場所に戻そうとする力を利用すれば、方向性が良くなり、ボールの転がりも良くなってショート病を防ぐことが出来ます。【参照】「重力まかせのストローク」(tips_155.html)

・攻撃角度

ボールの北半球を打って、トップ・スピンを与えると、ボールに"true roll"(真の転がり)を与えられます。アドレスでパターヘッドを少し浮かしておけば、確実に北半球を打つことが出来ます。下降気味のインパクトはボールを地面に埋め込んだ後ジャンプさせ、方向も距離も台無しにします。【参照】「Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)のパットは上昇軌道で打て」(tips_126.html)

■ 私は1、2、3、4、5と心の中で数えながら、五段階でセットアップを進めます。(1) 両足を自分に合った広さに開く、(2) 左膝を内側に押し込む、(3) 手首を弓形にする、(4) 左肘をラインに平行にする、(5) 爪先に体重をかける…と順に実行するわけです。これなら、どれかを忘れる心配はありません。

[icon]

【練習のヒント】

・初級篇

先ずはカーペットの上でパットし、ボールが真っ直ぐターゲットに向かうことを確認します。可能なら、カーペット上のボール位置、左足、右足、ターゲットの四ヶ所にビニール・テープなどで目印をつけ、これをパット練習のステージとし、ストローク手順を習慣として身体に定着させます。【連続してボールを打たず、一回毎に仕切り直しすることをお薦めします】 このステージでパットする場合、狙いをつける必要はありませんから、純粋にストロークに専念することが出来ます。もし、この段階でボールが真っ直ぐ転がらなければ、上の手順のうちどれかが欠けています。

・上級篇

ボールにパターフェースを添えたら目をつぶります。目をつぶったままストローク。上の手順を守っていれば、ボールは真っ直ぐターゲットに向かいます。手順に慣れたら、信じること。この練習がうまく出来るようになったら、プレッシャーのかかった局面でも落ち着いてパット出来ます。何せ、目をつぶっても成功するんですから、目を開けてのパットなんか御茶の子さいさいです。

カーペットの上で真っ直ぐ転がっているのに、グリーンでのパットに失敗するとしたら、それは読みが狂っていたせいということになります。真剣に読んで正確に狙って下さい。「パターを照準器として精密にラインを狙う方法」(tips_161.html)もお薦めです。

Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)は、「充分スムーズで正確なストロークを身につけたなら、そういうストローク法を可能な限り忘れて、ボールを穴に入れることに集中すべきだ」と云っています。この技法も、手順が習い性となって忘れるぐらい練習が必要と云えます。

(March 27, 2016)

パットのプルは肩から来る

'Align your shoulders to stop pulling putts'
by editors of 'Golf Magazine' ('Golf Magazine,' May 2008)

「上手なプレイヤーがパットでプルすると、往々にして完全にフラットに出来なかった左手首に責めを負わせる。しかし、それが原因でない場合も多いのだ。手・手首・腕は疑いもなくスクウェアなのに、肩がそうでないということがある。

それは一般的なエラーである。標準的なグリップは右手を左手の下にする。これは右肩を左よりボールに近づけ、その結果肩をターゲットラインの左を向かせる。ストロークする際、肩を上下させると、その軌道はアウトサイド・インとなり、プルの原因となる。

肩をラインに揃える簡単な方法が二つある。
a) 出来るだけ両手を互いに押し付け合う。両手が近ければ近いほど、ボールに向かって右肩を落とす懸念はなくなると云ってよい。
b) アドレスする際、両肩を結ぶ線について考える。プルに悩んでいる場合は、肩を僅かに時計回りに廻し、ターゲットラインと平行にする。こうすれば腕と肩はターゲットラインに沿って前後に動くことになる」

(March 27, 2016)

「お先に」は要注意

私も連載記事を書かせて頂いた『週刊朝日百科 坂田信弘の最新100レッスン』(2003年刊)で坂田信弘氏は以下のような警告を発しています。

「『お先に』パットは打ち急ぐな」
坂田信弘(『週刊朝日百科 Golf Lesson No.25』、2003年、560円)

「『お先に』で、ベロンと外す。一打のロスより心に与える悪影響は多大なり。

お先のパットを外す理由、それは身体が動いている間に打ってしまうからです。そもそもパットを打ち、惜しくも外して、球に近寄りながらのパットですからね。パットはその距離の遠近にかかわらずアドレスをきちんと取ること。基本であります。

そしてもう一つの基本、それはたとえ50センチでも、いったん球の後方で腰を落とすこと。ラインが分っていても腰を落とす。これで心が落ち着きます。イージーパットのミス、これで防げます」

(March 27, 2016)

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