Golf Tips Vol. 166

上達への三つの鍵

CBS-TVゴルフ中継のスウィング解説者であり、ゴルフ・スクール共同経営者の一人でもあるインストラクターPeter Kostis(ピーター・コスティス)のハンデを減らす作戦。

'How to be a triple threat'
by Peter Kostis ('Golf Magazine,' September 2015)

「われわれは皆いいゴルファーたらんとしているが、それをコーチ無しで成し遂げるのはちと厳しいだろう。効率よく上達するには、ツァー・プロのように練習し、スコアリングに大きなインパクトを与える次の三つの分野をマスターすることだ。

1. 頼りになるティー・ショットを発見せよ

多くの週一ゴルファーは、パー3を除く全てのホールのティー・グラウンドでドライヴァーを用い、自分自身に損害を与える。ティー・グラウンドで考えるべきことは、どれだけ遠くへ飛ばせるかではなく、フェアウェイ内でどれだけ遠くへ飛ばせるかであり、その可能性を与えてくれるクラブはどれか?ということだ。それは3番ウッドかも知れないし、5番ウッド、あるいはハイブリッドかも知れない。フェアウェイに第一打を放つことが、スコアを減らす最初の鍵である。

2. ウェッジ・ショットをマスターせよ

15〜40メートルのアプローチ・ショットを自家薬籠中のものとすべきだ。距離のコントロールはこの範囲の重要なスコアリング・ショットにとって最重要であり、インパクト・ゾーンで加速するソリッドな打撃を確かなものとしなければならない。ウェッジに悩む多くのアマチュア同様、あなたもフルにバックスウィングし、インパクトに近づくと減速していないだろうか。ヒッティング・ゾーンで充分加速するには、最もロフトの多いクラブから練習を始める。練習場で、1/2バックスウィングでフル・フォロースルーをする。その後、3/4のバックスウィング、次いで完全なバックスウィングへと進んで行き、どの場合にもフル・フォロースルーを遂行する。

[3 clubs]

あなたの飛距離を書きとめておくこと。15〜40メートルの距離から思うように打てるようになれば、あなたはスコアリングのための二番目の鍵を見つけたことになる。

3. 1メートルと10メートルのパットに習熟せよ

PGAツァーの10メートルのパッティング・スタッツを見てみよう。なぜ10メートルか?プロは10メートルからだと2パットが88%で、3パットと1パットがそれぞれ6%となっている。【編註:合計100%】 だから、10メートル以上のパットに直面したら、プロでも1パット成功よりも3パットし易いということだ。教訓:10メートルからの距離コントロールに上達すべきで、それ以上遠い距離の練習などするのは時間の無駄である。

また、1メートルのパットの練習に時間をかけよ。あなたが10メートルからのパットを安定して2パットに収め、ほとんどの1メートルのパットを沈めることが出来れば、いいスコアを記録するための第三の鍵を身につけたことになる。

『でもそんなに長く練習時間とれないよ!』とおっしゃる?一週間にたった45分だって助けとなる。それを15分ずつに分け、ティー・ショット、ウェッジ、パッティングに費やす。それによって少なくなって行くスコアが、あなたをハッピーにすることだろう」

[icon]

インストラクターJim McLean(ジム・マクレイン)の本'The 3 Scoring Clubs'(2005)はスコア・メーキングにとって重要なクラブとして、ドライヴァー、ウェッジ、パターを選び、その使い方のコツを初級、中級、上級と対象別に説明しています。彼はその三本のクラブの選択理由として、Ben Hogan(ベン・ホーガン)とHarvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)の二人が揃って“最も重要なクラブ”としてその三つを選んでいたことを挙げています。

上のPeter Kostisの記事も全く同じコンセプトです。グリーンに近づけ、ピンに寄せ、カップに入れる…というゴルフ・ゲームの骨組みが、これら三本のクラブに象徴されています。三つの鍵=三つのクラブ。そのどれか一つではなく、それら全てに均等に時間をかけ、どれも漏れなくレヴェルアップすることがスコア・メーキングの秘訣…というわけです。


【おことわり】図版はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。


(September 23, 2015)


上達の鍵・実例篇

最近、私の仲間のJimmy Crane(ジミィ・クレイン)とDon J.(ドン・ジェイ)のプレイが目覚ましい変化を見せています。これまでBランクかCランクのプレイヤーだった二人なのに、Don J.はA−(マイナス)、JimmyはBの域に到達しています。彼らは75歳を越えているので、赤ティー(レディースとジュニア用)から打てるようになったのが有利とは云えますが、それだけではない筈です。全員が赤ティーから打てる競技に私が出た時、私のスコアに大きな変化は見られませんでした。第一打を50〜80ヤード短く出来るのは有利ですが、ゴルフというのは距離だけが問題ではないという良い証拠です。

Jimmy Crane(C&Wのフィドル奏者)はゴルフ場の密集地帯であるミシシッピ・アラバマ両州にまたがるメキシコ湾岸地帯に旅した時、一時間だけのレッスンを受けたのだそうです。授業料は75ドル。注意されたのは主にアライメントとポスチャーなどだそうで、スウィングに関しては単に両肘を身体に近づけ続けろと云われただけとか。彼はレッスンから戻ったすぐのラウンドで二つのバーディを達成して自分でも驚き、75ドルは値打ちがあったと思ったそうです。その後のラウンドでも一日に一つか二つのバーディを射止めていますが、もう驚かず当然と考えています。一時間のレッスンだけで、そんなにもゴルフが変わるというのは驚き。

俗に「習うより慣れろ」と云われ、グリーン・フィーの安いアメリカでは、練習場へ行かないで初手からラウンドする若者や中年男性が多い。誰にも教わらずゴルフ雑誌や書物も読まず、ひたすらボールを引っぱたいて覚えるのです。そんな自己流でもJimmy Craneのようにバーディの二つや三つが出るようになった人は珍しくありません。しかし、やはりレッスン・プロに見て貰うとそれなりの格段の進歩はあるようです。一時間のレッスンで上達するのなら、三ヶ月あるいは半年教わったら一体どうなるのでしょう。

[Don J.]

Don J.(写真、セールスマン)は、昔はいいプレイヤーだったそうですが、ここ数年Bランクのプレイヤーでしかありませんでした。トップしたりダフったり、ホームランを出したり…という、典型的な中級ダッファーでした。しかし、昨年終わり頃から衆目が認める堅実なゴルファーに生まれ変わりました。Don J.はレッスンを受けたわけでも、何か秘密のtipを得たわけでもなく、単に短い練習を重ねた結果だそうです。彼は、以前からゲームの一時間も前にゴルフ場に現われるのですが、以前はクラブハウス近辺とかわれわれシニア・グループの集合地点にカートを停め、誰かとお喋りしたり、他人のパット練習を眺めているのが常でした。最近そういう態度を改め、ゲーム開始直前に数ホールを8番アイアンだけで廻る練習をするようになったのだとか(この市営ゴルフ場ではそれが可能なのです)。アイアンはコース攻略の鍵であり、方向と距離の正確さが求められます。グリーンを正確に捉えるには、ボールをヒットダウンしなければなりません。多分、彼は8番アイアンで10数ショットを重ねながら、掬い打ちをするような悪い癖を排除し、クリーンにスクウェアに打てる状態に持って行ってラウンド本番を迎えるのでしょう。「8番アイアンは短過ぎず、長過ぎず、丁度いいクラブなんだ」とDon J.は云っています。

先日、Don J.とJim Goodman(ジム・グッドマン、元電気技師)と三人でラウンドした時のことです。Don J.は何度も「またタップイン・パーだ」という台詞を繰り返し、やっとこさパーかボギーのJim Goodmanを「まったく、もーっ!」とくさらせました。タップイン・パーということは、それだけバーディ・チャンスに恵まれたということです。繰り返しバーディを逃したとネガティヴに考えることも出来ますが、イーズィ・パーでリラックスしたゴルフを展開していたとポジティヴに考えることも出来ます。羨ましい限りです。

Bob(ボブ、元クリーニング会社マネージャー)も赤ティーから打てる年齢ですが、身体も大きく、野球のようなスウィングをする飛ばし屋なので、赤ティーからだとどのホールもバーディ・チャンスが得られます。事実、一度だけですが1ラウンドで5バーディを達成したことがあります。彼とはゴルフ雑誌の貸し借りをしているので、たまに彼の家を訪れるのですが、TVの前に手・腕鍛錬用のダンベルが二個置いてあるのを目撃しました。生来の飛ばし屋ではなく、ちゃんとトレーニングをしているわけです。

そのBobをくさらせるのは、やはり赤ティーから打つRandel(ランデル、元農業経営)。彼のは3/4風のコンパクト・スウィングなのに、Bobより飛ぶのです。聞くと、彼もTVの前に5ポンドぐらいのダンベルを置いておいて腕の鍛錬をしており、手・腕のスナップ(素早く弾く動き)で飛ばしてるんだそうです。

サウスポーでビア樽のような体型の飛ばし屋Roy(ロイ、元大型トラック運転手)も赤ティー・プレイヤーですが、ここ一年でダッファーからバーディ・メーカーに生まれ変わった一人。彼は1ラウンドで2〜5個のバーディを記録することが珍しくありません。可笑しいのは、Royも私と同じTaylorMade(テイラーメイド)のR11を使っているのですが、彼の二つの可動式錘の穴は空っぽなのです。「錘を失くしたの?」と聞いたら、「うんにゃ。色々試した結果、入れない方がおれのスウィングに合ってることが分ったんだ」とのこと。彼に上達の秘訣を聞いてみましたが、ゴルフの本は読まず、雑誌もとうの昔に購読を止め、レッスンを受けたことも皆無。the Golf Channel(ゴルフ・チャネル)でMichael Breed(マイケル・ブリード)とMartin Hall(マーティン・ホール)の番組を見ているだけだそうです。Royの最近の強みは、穴空きR11で飛ばすだけでなく、二打目が正確になったこと。思い返せば、パー3のホールで練習している彼の姿を頻繁に見掛けます。パー3はターゲットを狙うショットの極致ですから、これが彼の躍進を助けている要因なのでしょう。

以上、手をこまねいていて、パチンコや競馬のようにその日の幸運を祈るだけでは上達しないという実例でした。

(September 23, 2015)


ドライヴィング戦略

インストラクターMike McGetrick(マイク・マゲトリック)執筆による、ドライヴァーを打つ前に考えるべきこと。

'The Scrambler's Dozen'
by Mike McGetrick with Tom Ferrell (HarperCollins, 2000, $25.00)

[Phil Mickelsoni]

「あまりにも多くのゴルファーのドライヴァーを手にした時の作戦が一面的である。最大飛距離、それだけ。グリーンに向かってアイアンを打つ時、あなたは絶対にそんな思考法をしない筈だし、ティー・グラウンドにおいても同じであるべきだ。

あなたは自分の傾向を熟知している筈だ。不調の時、あなたがフックしがちなら、左にトラブルが待っているホールで余分の距離を得ようなどとすべきではない。あなたがボールをソリッドに打てている時に距離を増幅するようなスウィングは、ミスの影響をも増幅するものなのだ。決断する際、このことを忘れないように。

TV中継の解説者が『ティー・ショットが、彼のアプローチ・ショットに理想的な角度を残した』と語るのを聞くことがある筈だ。これはあなたがドライヴァーを打つ時の考え方の偉大な出発点である。多くのホールで、グリーンへのアプローチは、フェアウェイの一方からは他方より易しいものだからだ。

ドライヴァーを打つのに上達する最重要なことは、フェアウェイに明確なターゲット・エリアを定めることだ。そのターゲット・エリアはグリーンかピンを狙うのに妨げのない開けた場所でなくてはならない。また、自分の実力に合わせてプレイすべきである。言葉を替えれば、もしあなたが110ヤードのショットに自信がないなら、短いパー4におけるあなたのターゲット・エリアは、あなたが自信を持てる距離を残すべきだ。アイアンによるティー・ショットを『刻む』方便としてだけ考えないこと。あなたのクラブ選択はターゲット・エリアに基づいてなされるべきである。あなたがティー・グラウンドから200ヤードの地点をターゲット・エリアに選んだのなら、そしてそれがフェアウェイ・バンカーの心配なしに望ましい130ヤードという距離を残してくれるなら、アイアンを打ったとしてもそれは刻んだことにはならない。あなたは賢くドライヴしていることになる。

あなたはまたTV解説者たちが、ツァー・プロたちがいかにティー・ボックスをフルに使っているか指摘するのを聞いたことがある筈だ。これはもう一つの上級者の印である。多くの週一ゴルファーは、単純にティー・ボックスの真ん中にティーアップする。そうではなく、あなたのターゲット・エリアにベストの角度を与えてくれる側を選ぶべきだ。ティー・ボックスは、ゴルフコースの中で次打へのラインを選ぶことが出来る唯一の場所である。これはラウンドの中で遭遇する他のショットに較べ、メンタル的にも肉体的にも大きな利点である。この利点を活かすべきだ。あなたのターゲット・エリアがフェアウェイの左側で、あなたがドローを打ちたいのなら、ティーボックスの左側にティーアップすればボールを右方向に打ってそれをターゲット・エリアに戻すことが出来る。もしあなたがストレートに打つタイプで、ティーボックスの右サイドを選んで打てば同じターゲット・エリアに到達出来る。この場合、右サイドはエラーに対する許容範囲を与えてくれる。

覚えておきなさい。いいドライヴィングの鍵はそれをドラコンのチャンスとしてではなく、次打へのお膳立てのチャンスとして考えることだ。そうすれば、遠からずティーショットの感覚が発達し、どんな時に安全にエクストラの飛距離を狙えるか判るようになる」

(October 07, 2015)


自宅での練習

インストラクターJim Flick(ジム・フリック、1930〜2012)は、Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)の二人目のコーチとなり、Nicklaus-Flick Golf School(ニクラス=フリック・ゴルフ・スクール)の共同経営者ともなった人。

'On Golf'
by Jim Flick with Glen Waggoner (Villard Books, 1997, $24.00)

「私の知る夥しい数の人々は、どれほどゴルフを愛しているかにかかわらず、上達のための練習に割く時間が限定されている。しかし、私の推定によれば、幸運にもミス・ショットの75%はクラブをスウィングする前の怠慢と過失に由来している。『幸運にも』と云ったのは、これらはあなたの家の裏庭を一歩も出ずに治せる疾患だからだ。

以下のようなことはゴルフ場に行かなくても練習出来る。すなわち、グリップ圧、クラブヘッドを感じる、セットアップとポスチャー、狙う、そしてプレショット・ルーティーン。

寝室の鏡の前で、セットアップ、ポスチャーなどを練習出来るし、オフィスでグリップ圧の鍛錬も出来る。

あなたの家の裏庭はとてもよい練習場である。20分あったら裏庭へ行くべきだ。二つのティーを10センチ離して地面に刺し、その間の芝を掃く。ティーに触れることなく20回スウィング出来たら、ティー間の距離を9センチにする。一度もティーに触れることなく20回スウィング出来るようになれば、クラブヘッドを正確にボールに送り届ける能力を向上させることが可能になる。

私は、多くの人々と同じように仕事(私の場合はインストラクション)に年がら年中忙殺され、愛するゲームをプレイする時間がほとんどない。何とか時間をやりくりしてラウンド出来ることになっても、自分の知識に追いつくようなプレイが出来ずに辛い思いをする。しかし、ゴルフクラブは知識でスウィングするものではない。ゴルフクラブは、習慣によって身についた"feel"(フィール、感覚)と"awareness"(意識、認識力)によってスウィングすべきものだ。あなたも、私もだ。

両手は身体とクラブヘッドの間の感覚の通路である。全ては手を通過せねばならない。両手は、心の中で作られ身体によってクラブヘッドが遂行すべきイメージの発信器であり、それがメッセージをボールに伝える。だから、両手をクラブに添えるのだ。クラブヘッドの重みを感じよ。たとえ裏庭であっても、一個のボールを打つこともなくても。クラブに触れる時、筋肉の全てはリラックスしてしなやかさを保ち続ける。

皆が皆、週に三回もボールを打てるわけではない。しかし、毎日小さなことをすれば、誰もが感覚、感性、そして知識を増すことが出来る。そして、それがより多くの楽しさと、より少ないスコアに繋がるのである」

[icon]

[arms]

私はTVの前に二個のダンベルを置いておき、図のようなトレーニングをします。詳細は「飛距離を伸ばすトレーニング」(tips_13.html)を御覧下さい。図では一本の腕になっていますが、時間短縮のため、私は二つのダンベルで左右同時に行います。


(October 07, 2015、増補September 02, 2018)


結果でなく経過を重視せよ

スポーツ心理学者Dr. Joseph Parent(ジョゼフ・ペアレント博士)が、屈指のゴルフ・イラストレーターAnthony Ravielli(アンソニィ・ラヴィエリ)【註】の生前の作品群とコラボしたメンタルtipsの美麗な本より。

【註】'Ben Hogan's Five Lessons'『モダン・ゴルフ』のイラストで有名。

[Ravielli]

'Process over result'
from 'Golf: The Art of the Mental Game'
by Dr. Joseph Parent (Universe Publishing, 2008, $24.95)

「ショットの結果について考え過ぎることは、正しくショットを遂行することを妨げる。それは緊張で心身を強ばらせたり、期待で興奮したりしがちになる。どっちの場合も、あなたのルーティーンとスウィングの流れを邪魔することになる。より良い姿勢は、次の四つのプロセスに完全に集中することだ。

1. トラブルから離れた望ましい着地点をターゲットに選ぶ。

2. そのターゲットに向かう望ましいショットを視覚化する。

3. 視覚化したイメージを具体化するスウィングを感じ取る。

4. そのスウィングの遂行に傾注する。プレショット・ルーティーン、アドレス、そしてスウィングへのスムーズな流れと、スウィングの間の良いテンポとを維持する。

途中のプロセスを上のように大事にすれば、結果は自然について来る」

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先日のシニアのベスト・ボールのゲーム。幹事によるチーム分けは不手際にもAランクの三人を1チームにまとめてしまい、残る2チームをBランクばかりにしてしまいました。私はそのBランクの一つでプレイすることに。

「これじゃ、DOAだね」私が一緒にプレイするDon(ドン)に云いました。"DOA"は"Dead On Arrival"の略で、「病院到着時、既に死亡」という意味。Aランク三人が揃った"dream team"(オールスター・チーム)相手では歯が立たず、われわれは"dead team"(デッド・チーム)に思えたからです。
「そんなことはない」とDon。「あんたも俺もKen(ケン、もう一人のチーム仲間)もバーディの一つや二つはとれる。やってみなきゃ分らんよ」

Donの楽観的予測は当たりました。No.3(パー4)で私が先ずバーディ。続くNo.4(パー3)でKenが長いパットを捩じ込んでバーディ。驚いたことにNo.5(パー4)でDonが三打目をチップインさせてバーディ。"underdog"(勝ち目のない人/チーム)としては凄い勢いです。

しかし、Bランクの悲しさ、ボギーも避けられず、No.16(パー4)に到達した時には1アンダーになっていました。赤ティーから打てるDonとKenは何とか三打目を乗せましたが、黄色ティーから打つ(若い?)私は、この日手こずってしまい三打目をピンから15ヤードのグリーン横につけただけ。私はDonかKenがパーをキープしてくれることを信じ、傍観者として眺めていました。ところが、両名ともパー・パットをミス。Donが「エイジ、あんたがチップインさせれば、われわれは1アンダーのままだ。やれ!」と云いました。

DonもKenも、私すらもチップイン出来るなんて信じていません。しかし、挑戦もしないでみすみす一打を失うのは負け犬の姿勢です。私は愛用の60°ウェッジを引き抜き、アドレスに入りました。15ヤードですが、地面が乾いていて早いので10ヤードと計算。転がりを確実にし、ショートを防ぐため、ボール位置をスタンスのやや後方に。運を天に任せ、私に出来るベストの10ヤード・チップをすると…、ボールは着地後ころころとピンに向かい、ころりんとカップに転げ込みました。

Donが、"That's what I was talking about!"(俺が云ってたのはこういうことだよっ!)と怒鳴り、見守っていたKenも「ウワーハッハッ!」と高笑いしました。私は呆れて言葉も出ませんでした。チップインなんてものは狙って出来るものではなく、ほとんどまぐれです。それを「チップインさせろ」と云われて成功させるなんて。

この場合、プレイヤーである私自身もチップイン出来るなどと考えていなかった。仲間二人も私がチップインを達成するなどと(実は)期待していなかった。私は正しく手順を踏んで、ベストを尽くそうとしただけだった。後から考えれば、私は上の記事でペアレント博士が述べているように結果に期待せず、プロセス重視に徹したことが奇跡を生んだと云えるのです。

われわれは他のチームに三打差をつけて圧勝しました。われわれ三人組は実力以上に健闘し、奇跡も目にし、"underdog"が勝利するという破天荒で愉快なラウンドを楽しんだのでした。

【おことわり】画像はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。

(October 21, 2015)


続々・娘をLPGAスターにする方法

 

1) 幼い頃にお嬢さんを李、朴、金、高などの名の韓国人家庭へ養女に出し、韓国系の名をつけて貰う。
2) 韓国人コーチについてゴルフを学ばせる。
3) 成長したら、アメリカかニュージーランドに移住させ、中学・高校に進学させる。ゴルフはLeadbetter Golf Academy(レッドベター・ゴルフ・アカデミー)で訓練させる。
4) 以上で英語はぺらぺら、ゴルフは世界レヴェルの腕前となる。

これでお嬢さんは完全にLPGAスターとなる条件を備えました。後は天分と努力次第。え?それじゃ自分の娘じゃなくなっちゃうじゃないかって?仕方ないじゃないですか。韓国系じゃないと、LPGAのメイジャー・トーナメントに優勝出来ないんですから(:_;)。【註】

【註】現在賞金獲得額世界No. 1のLydia Ko(リディア・コゥ、18歳、右)も韓国生まれで、幼い頃に家族と共にニュージーランドに移住し、12歳の時にニュージーランド国籍を取得。コーチはDavid Leadbetter(デイヴィッド・レッドベター)。本年のLPGAの五つのメイジャーのうち、四つまでの優勝者が韓国系のプロで占められている。

【参照】
・「娘をLPGAスターにする方法」(tips_93.html)
・「続・娘をLPGAスターにする方法」(tips_95.html)

 

(November 01, 2015)


なぜかくも多くのグリーンをミスするのか?

スウェーデン出身のメンタル・コーチPia Nilsson(ピア・ニルソン、写真)は、Annika Sorenstam(アニカ・ソレンスタム)や宮里 藍に「全てのホールをバーディで廻る」という'Vision54'を説いた女性。

[Pia]

'Why do I miss so many greens?'
by Pia Nilsson ('Golf Magazine,' February 2001)

「なぜグリーンをミスするか?届くクラブを使わないからだ。初・中級プレイヤーのショットは安定しておらず、それぞれのクラブが実際にどれだけ飛ぶのか知るのを難しくする。で、彼らがクラブを選ぶ時、エゴ(自負心)に過去に完璧に打ったクラブを選ばせ、多くの場合ショートしてしまう。

以上はリサーチの結果が証明している。Golf Research Associatesという組織が17,000ラウンド以上の300,000のアプローチ・ショットを分析した結果、ほぼ1/3のアプローチ・ショットがグリーンをショートしている。この調査の対象はハンデ30〜スクラッチまで、全てのレヴェルを含んでいる。だから、練習場に赴き、各クラブの平均飛距離を知る練習をすべきだ。一本ずつ、確実な数字が得られるまで充分なボールを打つこと。コースに出たら、自分に正直に、充分なクラブを取り出す。今まで以上にグリーンを捉えることが出来るようになる。

・ターゲットはどこだ?

多くのプレイヤーはスウィングに集中し、ターゲットを忘れてしまう。あるいは、トラブル(グリーン周りの障害物)だけ見て、グリーンそのものを見ない。彼らは打ってはいけない場所に集中してしまう。もし、あなたもそうなら、焦点を狭めることだ。ターゲット(ピンかグリーンの安全な場所)を選び、そこをデッドに狙う。

・ルーティーンを作れ

あなたがプレショット・ルーティーンを持っていないなら、作るべきだ。どのクラブを用い、どんなショットを打つか、そしてどこを狙うかについて明確な計画がまとまるまで、アドレスに入ってはいけない。

・全てを経験済みにしておけ

コースでは、アプローチする際、様々なライ(アップヒル、ダウンヒル、サイドヒル、裸地等々)に遭遇する筈だ。あなたはそういうライで練習したことがあるだろうか?あるいは、多くのゴルファーがそうであるように、完璧なライから同じクラブを繰り返し繰り返し打つタイプだろうか?ターゲットを変えたりするだろうか?プレショット・ルーティーンを実行しているだろうか?練習場であっても、変則的なライを見つけて練習すべきだ。そうしておけば、コースで似たようなライに出くわしても、どうしていいか途方に暮れることはなくなる筈だ」

【おことわり】画像はhttps://images-na.ssl-images-amazon.com/にリンクして表示させて頂いています。

(November 04, 2015)


インストラクターの善し悪し

Gardner Dickinson(ガードナー・ディッキンスン、写真、1927〜1998)はBen Hogan(ベン・ホーガン)に可愛がられた存在で、PGAツァーその他で11勝を挙げたプロ。Ryder CupではArnold Palmer(アーノルド・パーマー)と組んで負け知らずの成績を残しています。Senior Tour(シニア・ツァー、現Champions Tour)創立者の一人でもあります。彼は、若い時から、いくつかのゴルフ場所属のインストラクターも勤めていました。この記事は、図らずも「体型別スウィングの勧め」となっています。

'Let 'er Rip'
by Gardner Dickinson (Longstreet Press, 1994)

「ツァー・プロといえど、特効薬と治療を必要とすることでは週一ゴルファーとさして変わらない。インストラクターの指示と助言を求めて、遠距離を旅し、多額の謝礼を払うが、そのインストラクターたちは、歯に衣(きぬ)着せずに云えば、単なるツァーの落ちこぼれに過ぎないのに。

【編註】「落ちこぼれ」はきつい表現かも知れませんが、それは事実です。
・Butch Harmon(ブッチ・ハーモン)は一年間だけPGAツァーに挑戦し、小さなトーナメントで僅か一勝を挙げただけで、父と同業であるコーチに転身。
・David Leadbetter(デイヴィッド・レッドベター)は英国生まれで、ヨーロピアン・ツァーと南ア・ツァーに挑戦するも失敗し、コーチに転身。
・Dave Pelz(デイヴ・ペルツ)はArnold Palmer(アーノルド・パーマー)のようなプロになりたかったが、学生時代のトーナメントでJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)にこてんぱんに叩きのめされ、パッティングの練習道具の製造・販売業に転身。
Hank Haney(ハンク・ヘイニィ)とJim Mclean(ジム・マクレイン)はツァーにトライせず、最初からインストラクターを目指したようです。

 

現在人気のあるインストラクターの一人David Leadbetterは『なぜトップ・プロになれなかったのか?』と問われて、『うまくプレイするには、私はあまりにも完璧主義者だったせいだ』と答えた。私は、過去現在のツァーの完璧主義者たち大勢の顔を思い起こしながら、くすくす笑いを禁じ得なかった。

あなたが私に教えを乞いに来れば、私がゴルフについてあなたの知らないことをいくつも知っていることに気づくだろう。いいゴルフはフィーリングでプレイされるものであり、勝利の感覚はプレッシャーの下で機能する良い動作の知識から生まれるものだということを私は知っている。もっと経験豊かな人々は、トーナメント・プレッシャー下での良い動作と勝利の感覚でプレイする。それは他の誰かに伝えることが可能である。そうでなければ、私は何かで読んだこと、どこかで聞いたことの二番煎じ、あるいは勝利の感覚とは多分こんなものだろうという想像を生徒に伝えることしか出来ない。もっと悪い場合は、生徒を実験材料にするだけかも知れない。

そういう“教材”は平均的ゴルファーにはいいかも知れないが、ツァー・レヴェルの生徒に効きはしない。ツァー・プロを教えるのはByron Nelson(バイロン・ネルスン)やCary Middlecoff(ケアリ・ミドルコフ)のような勝利の記録を蓄積した人であるべきだ。勝利の感覚を味わったことのない者が、一体どうやってそれを伝えられるのか。絶頂感を味わったことがなければ、それを説明出来ないではないか。

古い諺に、『うまく出来る者はプレイし、そうでない者は教える』というのがある。これは常に正しいとは云えないが、あまりにも多くのインストラクター志望の連中が、『ゴルフ教えます』の看板を掲げていて、全てのゴルフ・スウィングはこうあるべきだという先入観を生徒に押し付けている。連中がどこでそんなものを仕入れて来たかは、神のみぞ知るだ。だが、作り話は実話よりも売りやすい。

【編註】アメリカのインストラクターの最も歴史ある団体はPGA of Americaですが、USGTF(United States Golf Teachers Federation)とかGolf Academy of Americaなどの新興組織が、インストラクターを量産しています。われわれと変わらないようなゴルファーでも、授業料さえ払えばコーチになれるようなTV-CMを流しています。これはいささか呆れますね。

一般的に云って、あなたのインストラクターが“唯一”のゴルフ・スウィング("the" golf swing)について語り続けるなら、彼とは即刻おさらばした方がよい。反対に、彼が“ある”ゴルフ・スウィング("a" golf swing)について語るのであれば、彼の言葉に耳を傾けるべきだ。私は、ゴルフ・クラブを振る唯一の方法を説く輩には、眉に唾することにしている。何故なら、それは真実ではないからだ。私の見解を疑うなら、週末にTVを点けてみるがいい。世界的ベスト・プレイヤーで、そっくりなスウィングをする者など居はしない。

誰もがスポーツの天才ではないし、誰もが似たような考えをするわけではないのだから、生徒をゴルフ・スウィングの一定の鋳型にはめようとしたり、硬直したシステムに従わせようとするのは、私の考えでは失敗への招待状である。将来、クローン人間を作れるようになれば、話は別だが。

『基本』について語られることも多く、全ての名人たちはそっくり同じことをしているなどと法螺を吹く。例えば、グリップはある一つの方法で決まりである…とかだ。われわれは左手のグリップはナックルが一つ半見えるのが理想だと意見の一致をみるかも知れない。だが、それは強制さるべきものではない。もしそんなことを強制されたら、三つのナックルが見えるストロング・グリップのGene Sarazen(ジーン・サラゼン)、Paul Azinger(ポール・エイジンガー)、Bernhard Langer(ベルンハード・ランガー)、Lee Trevino(リー・トレヴィノ)、Fred Couples(フレッド・カプルズ)、Judy Rankin(ジュディ・ランキン、LPGA)らは、選手権レヴェルのゴルフなんか出来なかったに違いない」

(November 15, 2015)


コースに着くまで聴く音楽の重要性

スポーツ心理学者Dr. Richard Coop(ディック・クープ博士)による、リラックスし、いいリズムを構築する方法。

[waltz]

'Mind Over Golf'
by Dr. Richard Coop with Bill Fields (Macmillan, 1993, $12.95)

「週一ゴルファーは、忙しない仕事と日常生活からゴルフへとスウィッチを切り替える必要がある。

コースに向かう車中で心を和らげる、スムーズで心地よい音楽を聴くことによって、ゴルフに必要なくつろぎとリズムとを得ることが出来る。それは日常生活の緊張をほぐし、ゴルフ・スウィングに不可欠なリズミカルなテンポを身体に浸透させる。音楽はまたあなたの脳の直観的部分を刺激し、左脳を使う仕事からゴルフへの移行を容易にする」

[icon]

私はゴルフ場に向かう車中で、ワルツのCDを聴いています。Sam Snead(サム・スニード)が'The Game I Love'(邦題『ゴルフは音楽だ』)という本で、三拍子のワルツがゴルフのリズムとして相応しいと云っていたからです。それぞれ何度も聴いていると各曲のオーケストレーションの工夫や善し悪しが判って来ます。私はヨハン・シュトラウス二世の作品の『春の声』を愛聴しています。音楽の悦びに満ち溢れていて、これを演奏する指揮者も演奏家たちもとてもハッピーであろうなあ…と思わされます。その気分がこちらにも乗り移って来ます。これこそ、上のRichard Coop博士が望んでいることかと思われます。

しょっちゅう聴いていると、いつの間にか睡眠中の脳にワルツが蘇るらしく、目覚めた時に頭の中でワルツが演奏されていることがあります。願わくば、ゴルフ場でスウィングする時まで鳴り続けていて貰いたいものです。

(December 09, 2015)

[Parmer] あるシングルの競技前の準備行動

ゴルフ雑誌編集者Ron Reimer(ロン・ライマー)は、20年間ハンデが5か6で、60過ぎのシニアとなった今でもシングル・ハンデを保っているとか。彼は大学で心理学を専攻し、インストラクターChuck Hogan(チャック・ホーガン)とスポーツ心理学者Deborah Graham(デボラ・グラハム)博士と個人的に親しくなり、彼らの示唆もあって競技ゴルフをメンタルに準備して成功しているそうです。

'Be the Ball'
edited by Charlie Jones and Kim Doren (Andrews McMeal Publishing, 2000, $14.95)

「ラウンド前夜、精神力について書かれているArnold Palmer(アーノルド・パーマー)の本'My Game and Yours'『わたしのゴルフあなたのゴルフ』(1963年刊)の数章を読む。その後早めにベッドに入り、充分な睡眠をとる。ゆっくり行動出来るように、いつもより早めに起床する。全てについてテンポとスピード、および冷静さを構築し始める。ゴルフコースに、いつもよりゆっくりのドライヴで向かう。

時々、私は指先だけで車を運転する。時速64キロで走る重さ907キロの車を指先でコントロール出来ることを証明し、大事なパットの時にパターをきつく握り締める必要などないことを自分に悟らせる。ゴルフ場に着く前に、私は勝負顔をつけ始め、競争力を獲得しようとする」

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指先での運転は、前後に車のない高速道路でだけお試し下さい。他の車を巻き添えにした事故など起こさないようにお願いします。

なお、前夜の行動で避けるべきなのはTV視聴やコンピュータ作業、工芸・手芸など。目を疲らせるとラウンドでの"Eye-hand coordination"(目と腕の協調作業)の妨げとなりますし、細かい作業は肩こりなどの障害の原因となる恐れがあります。

ラウンド前夜になかなか寝つけない場合、頭の中で翌日のコースをラウンドするのがいいようです。コース戦略に基づき、一打一打、理想的なショットとパットで廻ります。Sam Snead(サム・スニード)の甥でPGAツァー・プロだったJ.C. Snead(J.C. スニード)は、あるトーナメント最終日前夜、ベッドの中で素晴らしいラウンドを展開。夜明けに目覚めた彼は、現実にはまだ優勝していなかったことに気づいてがっかりしたそうです。しかし、その日、彼は実際に優勝を果たしました。前夜の頭の中のラウンドを繰り返せばよかったわけで、不安など微塵もないプレイが出来たからでしょう。

J.C. Sneadは最終的には寝入ることが出来たのでいいのですが、もし眠れなくなったら大問題です。そういう場合の特効薬を御存知ですか?薬ではありません。《100から1まで逆に数える》のです。これは効きます。何回か繰り返すうちに、いつの間にか熟睡してしまいます。無害で無料、とても効果的な睡眠薬です。手強い場合には一つ置きに数えるという手もあります。100、98、96、94…という具合。

【参考】(上に出て来た本'My Game and Yours'の一部の紹介です)
・「Arnold Palmerの最初の三ホールの重要性」(tips_148.html)
・「Arnold Palmerの最後の三ホールの重要性」(tips_148.html)

(December 09, 2015)

スクランブル競技におけるB・C級プレイヤーの任務

スクランブル競技は団体によるトーナメントとしてアメリカで最も一般的な形式で、多くの場合二人組か四人組で他のチームとスコアを競います。チーム全員がティー・ショットを打ち、そのうちどれか最もよいボールを選び、そこからまた全員が打つ。この方式でホールアウトまで続ける。四人組の場合、12アンダーとか14アンダーもあり得ます。

'Real Golf'
by David Gould (Andrews McMeel, 2002, $10.95)

「インディアナ州のあるクラブの所属プロTravis Guisinger(トラヴィス・ガイジンガー)の助けを借りてまとめると、スクランブルで成功するコツは以下のようになる。

1. 低スコアで勝つためにバーディは不可欠であるが、『当たって砕けろ』的態度はチームの助けとならない。特にあなたが実力から云ってチーム内のB・C級プレイヤーであるなら、あなたの役割はまずまずのソリッドなショットでチームを助けることだ。とりわけ、ボギーを防ぐことが最重要課題の最初の数ホールにおいて。

2. キャプテンの判断に従うこと。キャプテンがあなたに『先にパットしろ』とか、あなたのボールが四人の中で最高のショットだったと感じているのに、キャプテンが別のボールを次打候補として選んだとしてもごちゃごちゃ文句を云ったりしないこと。

【編註】A級のプレイヤーにはB・C級には窺い知れない戦略として、どの角度からグリーンを攻めるのが最良かの判断があります。パットの順番もメンバーの能力とその日の発揮度によって、どの順番がベストかの作戦があるわけで、兵卒は将軍の命に従うべきなのです。

3. 攻撃的なのはいいが、自分の能力以上のことをしようとすべきではない。チーム・メンバーがあなたの飛距離以上のティー・ショットをフェアウェイに放ったら、それ以上に飛ばそうとしたりしないこと。

【編註】私の周囲では、チーム内の飛ばし屋が素晴らしいショットをしたら、エネルギー節約のために他の者はティー・ショットを省略します(^^;;。

4. 自分自身のクラブ選択、ショット選択をすること。A級のプレイヤーが前面は開けているがグリーンの右と背後にウォーター・ハザードがあるホールで7番アイアンを選んで高いショットでアプローチ・ショットをしたとしても、あなたは5番アイアンでランニングを打ち、転がし上げようとしても一向に構わない。四人それぞれがバーディをチームにもたらそうと努力しているわけだが、皆が皆同じやり方でなければいけないという理由はない。

【編註】私が参加したあるスクランブル・トーナメントのあるホール。わがチームのグリーン近くに届いた最良のボールの前には大木が立ち塞がっていました。チームの他の三人は皆、木を越えようと高いショットに挑戦しましたが、私は木の枝の下を転がす作戦を選び、これが最もいいショットとなりました。

5. グリーンでは、あなたのパットを必ずカップに届かせること。グリーン上は、あなたのプレイ・スタイルをチームのために合わせなくてはならない部分だ。スクランブルにおける全てのパットはカップに届くか、数10センチオーヴァーすべきである。でないと、チームの他のメンバーの参考にならない。あなたのパットがカップに沈まなくても、カップまで届いたなら、次にパットするチーム・メンバーがラインやブレイクを変更する助けとなるのだから」

【編註】パットする前に、どこを狙うか(カップの右端とか、カップの右内側とか)をチーム・メンバーに告げておくことも助けとなります。カップの中央を狙って左に切れたのか、カップの右を狙って左へ切れたのかでブレイクの強さの判断が変わるからです。もし、手元が狂ってプルしたりプッシュした時は、正直に仲間に告げましょう。ブレイクの読みについて仲間と意見が異なることもあるわけですが、自分の読みだけが少数意見の場合は、他のメンバーに先にパットして貰うのがいいと思います。ラインに納得出来ずにパットしても益はありません。

(December 09, 2015)


Ben Hogan(ベン・ホーガン)の精密さ

下記の本の著者Wally Armstrong(ウォリィ・アームストロング)はPGAツァーに10年間参加し、the Masters(マスターズ)に五位タイに入ったりしましたが、その後インストラクターに転向。多くの著書やDVDを出しています。

'The Heart of a Golfer'
by Wally Armstrong with Frank Martin (Zondervan, 2002, $14.99)

「Los Angeles G.C.(ロサンジェルスG.C.、カリフォーニア州)の北コースのインに、長いパー4のホールがある。ティーからフェアウェイは見えないが、ほぼ480ヤード向こうのグリーンの背後に、壮麗な椰子(ヤシ)の木が三本、それぞれ約2 メートル間隔で立っている。

あるトーナメントでそのティーに立った私は、キャディにどこを狙ったらよいか聞いた。彼は『彼方に見える三本の木の右を狙えば、フェアウェイのド真ん中に打てます』と云った。私にはそれで充分だった。私はキャディの云った通りのところへボールを放ち、いいライを得ることが出来た。

そのティーを離れる前、キャディは故Ben Hogan(ベン・ホーガン)について伝わっている話を聞かせてくれた。何年も前、Ben Hoganも同じティーに立ち、彼のキャディに同じ質問をした、『どこを狙えばよい?』と。彼は誰もが得る同じ返事、『彼方に見える三本の木の右を狙いなさい』を得た。やおらBen Hoganはキャディを振り向いて尋ねた、『【三本のうちの】どの木?』…と。これぞ、どう集中すべきかを知っている男である!

私は、Ben Hoganの根城であるShady Oaks C.C.(シェイディ・オークスC.C.、テキサス州)で、彼の練習を見る光栄に浴したことがある。彼の精密なアイアン・ショットは、私を驚嘆させ続けた。彼は晩年でさえ毎日練習し、いくつもいくつもボールを打ち、その全てをピンポイントの正確さでターゲットに放った。それは素晴らしい見ものだった」

(December 13, 2015)

Ben Hogan(ベン・ホーガン)の煙草

Ben Hogan(ベン・ホーガン)の煙草好きは有名です。'Five Lessons'『モダン・ゴルフ』(1948)のイラストのために撮影された85枚の写真のうち六枚ほどで、Ben Hoganは紙巻き煙草をくわえて写っているほどです。

"'And Then Tiger Told the Shark..."'
by Don Wade (Contemporary Books, 1998, $18.95)

「'The Hogan Mystique'(ホーガンの神秘)という本に収録されている、Ben Hoganの素晴らしいスナップ写真の数々を撮ったカメラマンJules Alexander(ジュールス・アレグザンダー)は次のように云っている。

『Ben Hoganが練習する時、しばしば彼は煙草をくわえたままボールを打った。私が1964年U.S.オープン優勝者Ken Venturi(ケン・ヴェンチュリ)と一緒に写真を見ていた時、Ken Venturiが注目に値する観察力を発揮した。ホーガンは煙草を口から離さずに続けて三発打った。どのショットでも煙草の先端の灰はどんどん長くなっていたのに、全く落下しなかったのだ。いかに彼のスウィングがスムーズだったかということだ。それはほとんど不可能なことだ』」

(December 13, 2015)


篤姫のゴルフ

遅ればせながら、知人からNHK大河ドラマ『篤姫』を録画したテープを見せて貰いました。幕末ものとしては大ヒットだったそうですね。

[Atsuhime]

篤姫は日本で初めてミシンを踏んだ進歩的女性だったそうですが、もちろんゴルフなどはしていません。本稿のタイトルはドラマ『篤姫』から学んだゴルフのメンタルtipという意味合いです。

娘時代には於一(おかつ)と呼ばれていた篤姫が島津本家の養女になる前夜、母親から次のような話をされます。
母「これからそなたは多くの家来たちの上に立たねばなりません。昔から『一方聞いて沙汰するな』という言葉があります。どんな人の声にも万遍なく虚心に耳を傾け、その人その人の身になってよくよく考えるのです。それでも迷うたら…」
娘「迷うたら?」
母「考えるのをおやめなさい」
娘「考えるのをやめる?」
母「考えるのではなく感じるのです」
娘「感じる?」
母「自分を信じて感じるがままに任せるのです」

上のは人間関係についての教訓なのですが、私はゴルフに役立つメンタルtipとして記憶に留めました。

1) 先ず、ピッチングやチッピングの距離感で迷った時に役立ちます。「確かこのつつじの場所からはギャップ・ウェッジでぴったりだった」という記憶があっても、なぜかその日ピンを見やった時、ギャップ・ウェッジでは飛び過ぎると感じるような時があり、過去のデータと現在の感覚、どちらを優先すべきか迷ってしまいます。そんな時は篤姫のお母さんの教えに従い、「考えるのではなく感じる」、「感じるがままに任せる」べきなのです。

距離感というものは日によって変わるものです。スウィングのムラの有無、体調、天候、心理、状況などさまざまな条件が影響します。絶好調の体調だったり、入れ込んでいる場合などではいつもより飛ぶでしょうし、優勝がかかった一打などではアドレナリンの作用(火事場の馬鹿力)で飛び過ぎたりします。同じ場所から目を通して同じピンを見ても(データ)、脳はその日の体調、心理などのパラメーターを勘案してデータを分析するため、近く感じたり遠く感じたりします。その感覚に素直に従うべきなのです。物理的に同じヤーデージでも、近く見えればクラブを短く持つか、短いクラブに変更する。遠くに見えれば逆の選択をする。

2) 自分と同じラインで先にパットした人が「左に切れるぞ」などと云ったとします。その人が同じチームの一員であれば、親切な助言ということになります。それが自分の読みと同じであれば何も迷うことはありません。しかし、「え?右に切れるんじゃないの?」と正反対であったりしたら、どうでしょうか?キャディさんの云うことなら信じてもいいでしょうが、発言者が只の素人ゴルファーであれば要注意です。「上級者だから…」とか、「このコースでよくプレイしている人だから…」と全幅の信頼を置くのは考えものです。その人はプルしたのかも知れないし、フック・スピンがかかるストロークをしてしまったのかも知れないからです。

誰かの意見と自分の直観が異なる場合、あくまでも「自分を信じて感じるままに」パットすべきです。これなら失敗しても自分の読みが悪かったのだと納得出来ます。しかし、他人の言を信じてパットに失敗しても、その人を詰(なじ)ることも出来ず、その人を信じた自分が馬鹿だったのだと自分を責めることしか出来ません。

3) グリーン・エッジにボールがある場合、パットすべきかチップすべきか迷うことがあります。二本のクラブを持って迷っていると、「パットする方が安全だぜ」などと云われることがあります。多くのゴルフ本や雑誌記事も「転がせる時は転がせ」と説いており、確かにパットでチョロったりグリーンを縦断するようなミスは出難いので安全であるのは間違いありません。しかし、その日チップはうまくいっているがパットは今一などという場合にも安全であるとは限らないでしょう。グリーンの状態(勾配、傾斜、凸凹、遅い早い)にもよると思います。

こういう場合も「考えるのではなく感じる」べきでしょう。どっちが快適か、選んで失敗しても悔いのないのはどっちか?自分の感覚の命ずるままにプレイすべきだと思います。

【おことわり】画像はhttp://image.topicks.jpにリンクして表示させて頂いています。

(December 16, 2015)

無常観でプレイする

Dr. Richard Keefe(リチャード・キーフ博士)は、Dr. Richard Coop(ディック・クープ博士)に師事し、Duke University(デューク大学)のスポーツ心理学のディレクターとなり、多くのスポーツマン、コーチ、チームなどのコンサルタントとなっている人。

'On the Sweet Spot'
by Dr. Richard Keefe (Simon & Schuster, 2003, $25.00)

「私は"sadness"(悲しみ)とゴルフの出来映えに関連するリサーチ結果を読んだことがないが、私がいいプレイをするのは悲しい気分の時である。それが何故なのか理由は分らない。僅かに気落ちしている人々が、彼ら自身についてよりリアリスティックな判断が出来るということを示唆するデータはごまんとある。鬱病の人々とそうでない人々のグループに何か作業(番号当てゲームのような)をさせ、彼らにどんな結果だったか尋ねてみよ。健全なグループの人々は、彼らの実際の成績よりよい結果だったと考えるが、僅かに鬱的状態の人々は彼らの出来映えを正確に評価する。彼らは自分自身を正確に見ることが出来るのだ。

自身の欠点を含めた限界を見抜くことが出来るからこそ鬱になるという理屈もある。だが、逆もまたあり得る。僅かに鬱的状態の人々は、彼らの悲哀から浮上するため、自分自身をよりハッキリと見、それによって彼らの置かれている状況を改善するプランを練ることが出来る。多分私が悲しい気分の時、私はあるがままの自分自身を受け入れ、私がこうあるべきだと思う尊大な考え方を作り出して自分自身から逃避することをしないのだ。私は、間違いを犯す弱い自分と同化する。

Phil Mickelson(フィル・ミケルスン)が2001年のBuick Invitational(ビュイック招待)で、かなり深刻な食中毒の後優勝した時、彼は『私は病気の際によいプレイをすることがあるが、それは希望が持てないほど弱々しいからだ』と語っていた。

その日、私も希望が持てないほど自分の弱さを感じていた。さらに、私をゴルフに駆り立てる様々なこと(ハンデを下げる、地元のトーナメントへの準備、毎週のゲームで友達をやっつける…など)に空しさを感じた。家と家族が恋しかった。それが、いつも抱く期待という重荷から解放してくれ、目前のショットに集中出来ることになった。その目前のショットの内に、私は胸中に渦巻く疑問の答えを見つけた。私の目前の任務の豊かさは、パワフルでそれ自身意味のあるものだった。私はそのショットを愛した。ほんとに」

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上の本の著者がこの「80を切る!日記」サイトを読めないのが残念です。既にこのサイトには、「離婚のススメ(70を切るコツ)」(tips_73.html)という記事があり、離婚の正式手続きを終えた男性が悲しみを紛らすためにゴルフをしたら、3アンダーで廻れたというケースが報告されています。また、「たかがゴルフじゃないか」(tips_111.html)には、ダイアナ妃の悲報を聞き自分の予選通過の心配の滑稽さを感じたLPGAプロが、翌日当時のLPGA18ホールのベスト・スコアのタイ記録を達成したという事例も掲載しています。

最も有名な事例はBen Crenshaw(ベン・クレンショー)の身に起ったことでしょう。彼の最初のthe Masters(マスターズ)優勝は1984年に最初の妻との離婚を決意した直後でしたし、二度目のthe Masters優勝(1995年)は、彼の青年時代からのゴルフと人生のコーチHarvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)を失い、葬儀を済ませた直後のことでした。

つまり、人は無常観を胸に抱いている時、よいプレイをするというのは旧知の事実と云えるのです。数字(スコア)を減らすことへのあからさまな欲望や、競争相手を打ち負かそうとする邪念などを抱いてはいけないのです。それらを超越し、淡々と目の前の一打に精魂を篭める境地に達しないといけません。

(December 16, 2015、改訂December 17, 2015)

自分自身のパートナーとなろう

Ryder Cup(ライダー・カップ)、Presidents Cup(プレジデンツ・カップ)、Solheim Cup(ソルハイム・カップ)など、国際的チーム競技で行われるゲームの一つに"alternate-shot"(オルタネト・ショット)と呼ばれる方式があります【註:この方式は"foursome"(フォーサム)と呼ばれることもあります。「四人組」を意味するフォーサムと言葉は同じですが、チーム・プレイの定義の場合は別な意味です】"alternate-shot"(オルタネト・ショット)はマッチプレーで、ボールがカップインするまで二名のプレイヤーが一個のボールを交互に打ち継いで行く方式です。

例えば、アメリカ・チームの一組がJordan Spieth(ジョーダン・スピース)とDustin Johnson(ダスティン・ジョンスン)のペアだとしましょう。No.1(450ヤード)パー4のティー・ショット担当はDustin Johnsonで、330ヤードのロング・ドライヴを放ちましたが、ボールはフェアウェイ・バンカーへ。Jordan Spiethは「飛べばいいってもんじゃないっしょ。バンカーに入れるなんて最低」とぶつぶつ云ったりせず、黙ってギャップ・ウェッジでグリーンを狙ってクラブを一閃。方向は正確でしたが、ボールはピンを越え、グリーンをオーヴァーしてラフに突入。相手チームは300ヤードのティー・ショットの後、アイアンをぴたりとピン傍3メートルへ。Dustin Johnsonはラフからの20ヤードの難しいアプローチ。彼は「けっ!フェアウェイ・バンカーからピン傍に寄せられもしないで、よくまあthe Masters(マスターズ)とU.S.オープンに連続優勝出来たもんだぜ」とパートナーを罵ったりせず、ラフからフロップ・ショット。ところが、力が入り過ぎたせいか、あるいはフライヤー・ライだったせいか、ピンを10ヤードもオーヴァー。相手チームより遠いので、まだアメリカ・チームが打つ番。Jordan Spiethは「なんだよ、やる気あんのか、あんた。ギミー(OK)の距離に寄せてくれんじゃなかったのかよ」とDustin Johnsonを詰(なじ)ったりせず、じっくりラインを読み、落ち着いてストローク。しかし、パーでこのホールを引き分けに持ち込もうとした強気のパットは2メートルもカップをオーヴァー。相手チームは3メートルを難なく沈めてバーディ。ボギーのアメリカはこのホールの負け。Dustin Johnsonは「やれやれ。世話の焼けるパートナーと組んじまって…」とぼやきもしないで、マークを拾い上げてNo.2へ。

なぜ、二人はパートナーを詰(なじ)ったり嫌みを云ったり、はたまた怒り狂ったりしないのか?次のNo.2に行くと、今度はJordan Spiethがティー・ショットし、二打目をDustin Johnson…という繰り返しでゲームは進行します。自分の一打が素晴らしいものならいいのですが、もしミスったらパートナーに難しいショットを強いることになります。ストローク・プレイのトーナメントでは、ミスを犯した自分が全ての責任を取るのであって、誰にも迷惑はかけません。しかし、この"alternate-shot"(オルタネト・ショット)ではパートナーに自分のミスの尻拭いを押し付けることになります。苦境に立つのは自分ではなくパートナーなのです。そして、ミスはいつ、どちらを見舞うか分りません。ミスを謝っても詮無いし、ミスを犯したパートナーを責めることも出来ません。お互い様なのですから。

なぜ、こんなことを書いているかというと、あるゴルフの本でアンガー・マネジメント(怒りの制御)について読んだのです。それには、よい一打、悪い一打の後にああせいこうせいと色々示唆が並べ立ててあるのですが、私はそれを馬鹿馬鹿しいと思いました。もっと簡単な考え方があるのです。

ストローク・プレイをしていても、一人二役で"alternate-shot"(オルタネト・ショット)のゲームをしていると思えばいいのです。あなたがミスを犯すと、窮地に陥るのはあなたのパートナーであるもう一人のあなたです。あなたはミスを犯したあなたを呪ったり責めたりしない。…お互い様だから。完璧なプレイなど出来るわけないので、互いに傷口を舐め合いながら助け合ってプレイするしかないのです。腹を立てたりパートナーに毒づいても仕方がないし、そんなことをしたらチームは分裂し、二人三脚の紐を解くことになってしまいます。そんな暇に、窮地を脱する善後策を考える方が賢明です。

 

どうせ一人二役をするのなら、一人がいいショットをしたら別の一人が「いいショットだ!サンキュ!」とパートナーを誉めそやし、感謝するのがいいと思います。お互いに励まし合い、祝福し合う。いいチームワークが生まれ、高揚したプレイが連続する。自分と自分で両手を合わせてハイファイヴ!

(December 16, 2015)


Jordan Spieth(ジョーダン・スピース)の栄光の蔭に

'Golf Magazine'は独自企画として、2016年1月号でJordan Spieth(ジョーダン・スピース)を"Player of the year"に選出し、6章に及ぶ大特集を組んでいます。以下はその一つに、インターネットから集めた情報を加味したもの。なお、この雑誌は最近誌名から'Magazine'という語を削ぎ落として'GOLF'と称していますが、これは世の中にとって紛らわしいし、図々しい改悪だと思います。当サイトでは今後も'Golf Magazine'という表記を継続します。

'The Spieth whisperer'
by Cameron Morfit ('Golf Magazine,' January 2016)

この記事のタイトル"Spieth whisperer"は、馬に優しく話しかける調教師を意味する"horse whisperer"(馬に囁く人)のもじりで、Jordan SpiethのキャディMichael Greller(マイケル・グレラー、38歳、左図)を指しています。彼は2015年のHSBC Caddie of the Yearに選ばれました。

[Michael Grelleri]

Michael Grellerはワシントン州シアトルのある中学校の数学教師で、アルバイトとしてキャディの仕事もしていた。2006年、彼がU.S.アマ・パブリック・リンクス選手権を見に行った時、Matt Savage(マット・サヴィッジ)というケンタッキー州出身のアマチュア(後にPGAツァー・プロ)が自分でバッグを担いで歩いているのを見掛け、「バッグを担いで上げてもいい」と声を掛けた。Matt Savageはお金を払うことを申し出たがMichael Grellerは辞退。その数年後、Matt Savageが同郷のアマチュアJustin Thomas(ジャスティン・トーマス、後にPGAツァー・プロ)にMichael Grellerを推薦し、さらにその一年後の2011年、シアトルで開催されたU.S.アマチュア選手権で、テキサス州出身のJordan Spieth(ジョーダン・スピース)というアマチュア【当時】がキャディを必要とした時、Justin ThomasがMichael Grellerを推薦した。そのU.S.アマに優勝し、翌2012年のU.S.オープンに歩を進めることになったJordan Spiethは、引き続きMichael Grellerにキャディを務めてくれと懇請。このU.S.オープンでJordan Spiethはトップ・アマとなった。

Michael Grellerは学校から一年の休暇を取って、パートタイムのキャディをしていた。妻もいたし、家も持っていたので、海のものとも山のものともつかぬ若いプロのキャディを務めるのはリスキーだったから、職を捨てるわけにはいかなかったのだ。しかし数ヶ月後、Jordan Spiethはテキサス大を中退してプロ入り、同時にMichael Grellerをフル・タイムのキャディとして雇いたいと申し出た。Michael Grellerは安定収入の教師の職を投げ打ち、兄が弟を支えるようにJordan Spiethに賭ける決意をした。

Michael Grellerは云う、「教師としての私の優先事項は、子供たちに自分自身の能力を信じ切らせることだった。その方法論は、そのままJordan Spiethに適用出来た。私の最大の役割は彼を励まし、彼自身の力を信じさせることだったのだ」

[Jordan Spieth]

Jordan Spiethが2014年に初めてthe Masters(マスターズ)に参加することになった時、Michael Grellerは開催地Augusta National(オーガスタ・ナショナル)の専属キャディCarl Jackson(カール・ジャクスン)【註】を訪れ、様々なアドヴァイスを受けた。

【編註】Carl Jacksonは大柄な黒人で、Ben Crenshaw(ベン・クレンショー)と通算39回コンビを組み、Ben Crenshawの二回のマスターズ優勝に貢献したキャディ。二回目の優勝の時は、Ben Crenshawの青年時代からのゴルフの恩師Harvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)の葬儀を済ませた直後のことで、No.18の最終パットを沈めて優勝を決めたBen Crenshawは、帽子を地面に落とし、腰を深く折って頭(こうべ)を垂れて泣き崩れた。Carl Jacksonは背後から案ずるようにBen Crenshawの背に手を置き、「大丈夫か?」と声を掛けた。この時の二人の姿を収めた写真は、マスターズとBen Crenshawを語る時に欠かせない一枚となっています。

Michael Grellerはオーガスタ随一のキャディであるCarl Jacksonと屋外のピクニック・テーブルに座り、ヤーデージ・ブックを見ながら、一ホールずつ一打毎のプレイについて質疑応答を繰り返し、数多の助言を得た。Carl Jacksonが云った重要なことは『自分の直感を信じろ』というものだった。トーナメントの間、Michael Grellerは常に"Carl says…"(カール・セッズ、「…について、カールはこう云っている」)とJordan Spiethに囁き続けた。たった三年目のキャディの言葉だと重みはないが、伝説的キャディであるカールの言葉には逆らえない。『本当はカールが云ってなかったことまで、私が固く信じたことは"Carl says…"を使った』とMichael Grellerは告白している。

彼は続けます、「マスターズの翌週のHilton Head(ヒルトン・ヘッド)でのトーナメントでも私が"Carl says…"を使ったら、Jordan Spiethが『ウッソーっ!』と云った(笑)」【編註】Carl Jacksonはオーガスタ専属キャディなので、他のゴルフ・コースのことは知らないわけです(^-^)。

Jordan SpiethのPGAツァーにおける2015年の公式獲得賞金額は$12,030,465ですが、FeDex Cupの優勝者に与えられるボーナス$10,000,000を合わせると計$22,030,465になります。若干22歳の若者の一年の稼ぎとしては想像を絶する額です。彼のキャディMichael Grellerの同年の稼ぎも、推定$2,140,000に達したそうです。【註】この額は2015年のPhil Mickelson(フィル・ミケルスン)の賞金獲得額にほぼ近いとか。シアトルの教師の年間給与の平均は$77,000だそうですから、Michael Grellerは(経済的には)非常に賢明な選択をしたことになります。

【編註】プロとキャディの契約では、予選を通過したら獲得額の5%、トップ10に入ったら7%、優勝したら獲得額の10%をキャディが得るというのが典型的なので(個々のケースで異なることもあり)、そのパーセンテージをJordan Spiethの獲得額に当てはめた推定額です。

Michael Grellerは、Jordan Spiethが優勝者インタヴューで常に"I"(私)でなく"we"(私たち)を多用することを、Jordan Spiethの人柄の特徴として挙げています。実は私も、Jordan Spiethの"we"の多用を不思議に思っていたところでした。その"we"にはキャディも、友人、家族(父母、弟、障害を持つ妹)、そしてエージェント(マネージャー)までも含まれるのだそうです。Jordan Spiethは「優勝はチームの勝利であり、家族の勝利だ」と云っています。自分一人の努力の結果ではないという、謙虚な姿勢です。

Michael GrellerとJordan Spiethの名を組み合わせるとMichael Jordan(マイケル・ジョーダン)になるとか。冗談(じょーだん)ですけどね(^-^)。

(December 23, 2015)

ゴルフと若禿げ

ツァー・プロたちがラウンド終了後、帽子を取って同伴プレーヤーたちと握手するのはとても好感が持てるいい作法です。ヨーロピアン・ツァーで始まった習慣のようですが、U.S.ツァーにも浸透しています。

TVを見ていて、帽子を取ったプロの禿げ頭にショックを受けることがあります。ずっと以前はJim Furyk(ジム・フューリク)、Stewart Cink(スチュアート・スィンク)などでしたが、最近ではBill Haas(ビル・ハース)がその筆頭で、Jordan Spieth(ジョーダン・スピース、21歳)の額でさえ後退し始めているではありませんか。

[Tiger]

常々ゴルフ雑誌が「ゴルフと若禿げ」というテーマで特集を組んで研究結果を発表してくれないか?と考えていました。やっとそれに類した記事が出現したものの、残念ながら何故プロ・ゴルファーに若禿げが多いか、その原因は解明されていません。

'The bald truth'
by Steve Rushin ('Golf Digest,' July 2015)

スポーツライターである筆者Steve Rushin(スティーヴ・ラッシン、1966〜、49歳 )は、禿げ始めた頭をつるつるに剃っています。この記事のタイトル'The bald truth'「ありのままの真実」は、内容に即して考えれば「禿げの真相」という洒落でもあります。

「・私はヴァイザーのよさを理解出来ない。ヴァイザーは豊かな髪を持ったFred Couples(フレッド・カプルズ)やBubba Watson(ババ・ワトスン)のような王族のための、ティアラ(宝石をあしらった王冠風髪飾り)を逆さにしたようなものだ。

・人工毛髪で天辺をカヴァーしたヴァイザーがあるが、あれは暑いし、いつか誰かに引っ剥がされるのではないかという恐怖がつきまとう。

・Sean O'Hair(ショーン・オヘア)からSean No'Hair(ショーン・ノーヘア)に至るまで誰もが帽子を被っているので競技の間は、誰が禿げで誰がそうでないか見分けるのは難しい。

・ラウンド終了後に帽子を取ると、同伴競技者の目は私の裸の頭に引き寄せられ、驚きを隠そうとしない。私は『よう!おれの目はもっと下だよ』と叫びたくなる。

・Stewart Cink(スチュアート・スィンク)は2014年のSony Open(ソニー・オープン)で帽子を脱いで、TVカメラに頭を曝け出した。彼はユーモア感覚でこの件を笑い飛ばしたが、これは禿げのゴルファーに不可欠の態度である。

・私がグリーン上で帽子をとって頭の空気を入れ換えたら、『目が眩んでパット出来ない』と非難されたことがある。

・Tiger Woods(タイガー・ウッズ)のヘアラインもじわじわと後退している。彼が去年の夏あるメディアに語ったところによると、彼の友人であるMichael Jordan(マイケル・ジョーダン)やCharles Barkley(チャールズ・バークリィ)のように、いつか頭を剃るかも知れないそうだ。私は初めてTiger Woodsに勝利したことになる(頭を剃る決断時期に限定しての話だが)」

【おことわり】画像はhttps://secure.i.telegraph.co.uk/にリンクして表示させて頂いています。

(December 23, 2015)

ヴァイザーのススメ

PGAツァー・プロBrandt Snedeker(ブラント・スネデカー)はヴァイザー愛用者です。

'Rock a visor'
by Brandt Snedeker ('Golf Magazine,' February 2015)

「野球帽スタイルの帽子をかぶるよりヴァイザーの方がいい理由が三つある。

1) 熱気が帽子内に篭らない。
2) 髪の量が多ければ、ヴァイザーの方がよくフィットする。
3) ヴァイザーはモダンでありクラシックでもある。

ヴァイザー選びのポイント:
・正面(ロゴがある部分)のサイズをあなたの額にマッチさせること。額が広ければ、正面も広くあるべきだ。
・鍔(ツバ)を眉の上まで押し下げ、鍔が水平であるかどうか確認する。もし、それが傾いでいたら、太陽光線をフルに防止出来ない」

(December 23, 2015)

ボールの善し悪し

'Don't gamble with your ball choice'
by Michael Chwasky ('Golf Magazine,' January 2016)

「Snell GolfのCEOであるDean Snell(ディーン・スネル)は、ボールのデザイナーとしてTaylormade(テイラーメイド)やTitleist(タイトリスト)の様々なボール(初代ProV1を含む)に携わった人。彼は云う、『最近のボールは全て飛距離のために最適化されているので、ドライヴァーで打つ限りにおいては、価格、ブランド、レイヤーの数やカヴァー素材は異なってもヤーデージの差はゼロだ』

Dean Snellのお薦めのボールの選び方はこうだ。ボール購入予算の上限を定め、その範囲内で購入出来る数種類のボールを試してみる。おっと、ドライヴァーは要らない。風の日のアプローチ・ショットでのボールの挙動、チッピングやピッチングで停止する能力、パッティングでのフィーリングなどを比較する。Dean Snellが云うには「たとえ週一ゴルファーであっても、これらの分野におけるボールの差異は感知出来る筈だ』

あなたが自分の価格帯での最も高価なボールが好きになったとしても、それは驚くべきことではない。『ツァー・モデルのボールは、安価な2ピース・ボールの飛距離にプラスして、究極的にショート・ゲームのパフォーマンスために作られていると云っていいからだ』とDean Snellは云う。並みのゴルファーがツァー・モデルのボールを使うんだって?『その通り。実際のところ、ツァー・プロより週一ゴルファーの方がグリーンをミスする率が高いのだから、(価格さえ無視出来れば)ツァー・モデルのボールの恩恵に与る率も高いということになる』」

(December 27, 2015)

Butch Harmon(ブッチ・ハーモン)のビジネス感覚

世界最高額のコーチ代を設定し、なおかつ大成功を収めているインストラクターButch Harmon(ブッチ・ハーモン)の経営理念。

[Butch]

'My shot'
by Butch Harmon with Guy Yocom ('Golf Digest,' May 2013)

「ラスヴェガスは、訪問者たちがお金を使おうと思ってやって来る土地だ。私が1997年にここにゴルフ・スクールをオープンした理由はそれである。私は生徒たちにアメリカのどこよりも多めのコーチ代を請求し、生徒対インストラクターの比率を高めたかった。ビジネス的観点では、ゴルフ・スクールは数の勝負である。ミッドウェスト【米国の五大湖西部からミシシッピ川北半分の地域】でゴルフスクールに通っている人は、シーザース・パレス【ラスヴェガスのホテル・カジノ・劇場の混成施設】に泊まっている人より、価格に敏感だろう。われわれがよりよい指導をする自由を確保する唯一の途は、少し多めの授業料を請求することしかない。で、地球上で少し多めの授業料を請求出来る場所があるとすれば、それはラスヴェガスなのだ。

私は、悪化したアメリカ経済が私のビジネスに痛手をもたらしていないとは云っていない。だが、私には保険がある。それは“ひどいスウィング”と呼ばれるものだ。ゴルファーたちが上手くなろうと藻掻く限り、私は食いっぱぐれないのである。

指導するためのテクノロジーは尊重するが、それを讃美する気はない。私はトーナメント会場にヴィデオ・カメラを持って行かない唯一のインストラクターだろうと思う。ローンチ・モニターにも芳しくない点があると考える。プレイヤーたちは彼らのスウィングを完璧にすることに夢中になっていて、プレイに集中していない。もちろんゴルフ・スウィングはとても重要だが、名誉の殿堂入りした面々の型破りなスウィングを見れば、いかに競い合うか、どうスコアを良くするか、ゴルフコースとの問題をどう処理するかということも重要だ。私は全てをひっくるめて教えようとしているのだ」

以下は「Butch Harmon(ブッチ・ハーモン)とTiger Woods(タイガー・ウッズ)」(tips_136.html)で紹介した記事の一部。

'The Pro'
by Claude "Butch" Harmon, Jr. with Steve Eubanks (Crown Publishers, 2006, $24.95)

Butch Harmonは次のように云う。
「現在、私はツァー・プレイヤーに対してはコーチ代を請求しない。私は、請われてトーナメント会場に赴いた時の旅費と練習に付き合った時間給だけを請求し、彼らにとって恵まれた年だったと思えたら、私の貢献度に相応しい額の小切手をくれと云っている。多くのインストラクターたちが『そんなことをされると、おれたちがコーチ代を設定しにくい』と、この方式に文句をつける。しかし、私はこの方式が気に入っている。これまでで最高の小切手を送って来たのは、最も若い生徒のAdam Scott(アダム・スコット)だった」

[icon]

「お布施の額に決まりはありません。お気持ちで結構です」と云う坊さんみたいな方式ですね(^-^)。 みみっちい額を出せなくなる仕掛けです。

【おことわり】Butch Harmonの写真はhttps://golfdigest.sports.sndimg.com/にリンクして表示させて頂いています。

(December 30, 2015)

Harvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)のレッスン代

伝説的インストラクターHarvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)に教えを受けたLPGAツァー・プロBetsy Rawles(ベッツィ・ロウルズ、1928〜)はメイジャー優勝八回、全58勝を挙げた逸材。

[Harvey]

'The Great Women Golfers'
edited by Herbert Warren Wind and Robert MacDonald (Classics of Golf, 1998)

「父からゴルフの手ほどきを受けた私は、テキサス大のカレッジの一つに在学中、Austin C.C.(オースティンC.C.)でHarvey Penickのレッスンを受け始めた。最初のレッスン代は3ドルだった。当時でさえその額は高くなかったが、Harvey Penickは多くを望まなかった。その時、私は約一時間半彼と一緒だった。その次に彼に会い、私が支払いをしようとすると、彼は『いや、先週云ったのと同じことを云っただけだ』と云って、その後二度と払わせようとしなかった。私の最初の3ドルは果てしなく有効だったことになる。私は彼から20年間レッスンを受けた。彼は私の唯一のコーチであり、Ben Crenshaw(ベン・クレンショー)やTom Kite(トム・カイト)その他の彼の生徒たち同様、私の成功の多くは彼のお蔭である」

'And Then Jack Said to Arnie...'
by Don Wade (Contemporary Books, 1991, $10.95)

「教え子の一人Tom Kite(トム・カイト)の談話。

Mr. Penick(ミスター・ピーニック)は彼の一時間のレッスンに5ドル請求するのが常で、人々はいつもその額を上げるべきだと主張した。Mr. Penickはそれに対し、『私は少ない言葉しか使わないのだから、大きな金額を請求することは出来ない』と反論した。ついに、Austin C.C.の理事会が彼のレッスン代の値上げを命じた。Mr. Penickはそれに従ったが、それに関して決してハッピーではなかった」

【おことわり】Harvey Penickの著書の画像はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。

(December 30, 2015)

回想のHarvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)

彼の教え子の一人Ben Crenshaw(ベン・クレンショー)の回想。

'A Feel for the Game'
by Ben Crenshaw with Melanie Hauser (Doubleday, 2001, $24.95)

「Harvey(ハーヴィ)の古いプロ・ショップを今でも心の中で思い描くことが出来る。それは暗く、湿っぽい、小さな部屋で、革とグリップ溶剤、古いヒッコリー・シャフトの臭いが漂っていた。床はゴルファーたちの金属スパイクのためにふかふかのゴム張りがしてあった。彼は大して商品を揃えていなかった。数枚のゴルフ・シャツ、何足かの靴の箱、並べられた数本のクラブ。大きなプロ・ショップは彼の望むものではなかったのだ。クラブ修理のためと練習ボールが入ったバケツを並べるためのスペース、そしてレッスン記録を書く机、それらがHarveyが必要とした全てだった。

私の少年時代、ゴルフ場で兄Charlie(チャーリィ)と遊んでいた私は、Harveyのプロ・ショップで練習ボールの山を見つけた。『見ろよ、ボールが一杯あるぞ。練習しようぜ』われわれはボールを持ち出して打ち、それが無くなると又持ち出した。丁度その時、われわれの父親がラウンドを終えてやって来た。
『何してるんだ?』父が云った。『お前ら、勝手にボールを持ち出してんのか。それは只じゃないんだ。わしがお金を払うことになるんだぞ』
Harveyは机の後ろに座って父を見ながら微笑んだ。『いいんですよ、Mr. Crenshaw(クレンショーさん)』と彼は云った。『彼らが打ちたいのなら、大歓迎です。打たせてやって下さい』
私の父はいつも云っていた、『Harvey爺さんは、鳩のように優しい心の持ち主だった』

私の知る限り、Harveyはお金には関心がなかった。それは彼の人生の一部ではなかったのだ。'Little Red Book'(1992)その他の本が刊行されてベストセラーになった時、彼の後半生でやっと彼の一家にお金が入るようになった。まるきりお金に縁のない生活をしていた彼にとって、それは初めてのことだった。事実、1990年代に入っても彼のレッスン代は15ドルだった。少なくとも、Michael Jordan(マイケル・ジョーダン、バスケット・ボールの世界的プロ)がレッスンを予約した時、Harveyが彼に告げた言葉によればその額だった。本の売り上げで入るお金によって、レストランに行った時、右側のメニュー【編註:低額メニューだと思われる】だけでなく、どれでも自由に選べるようになった…と彼は云っていた。

Harveyにとっては、三度の食事が出来、ゴルフを教える場所があればそれで満足だった。彼は、人々が自分にこう接して欲しいと思うように、人々に接した。彼はある時私にこう語った、『私が人々を助けられる限り、それが私をハッピーにしてくれるんだよ』 今の時代、この世の中にこんな人生観を持った人がいるなんて、想像出来ます?」

(December 30, 2015)

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