Golf Tips Vol. 165

ワンピース・テイクアウェイへの鎮魂歌

インストラクターMitchell Spearman(ミッチェル・スピアマン)が述べる、ワンピース・テイクアウェイへの弔辞。

'Say goodbye to a one-piece takeaway'
by Mitchell Spearman ('Golf Magazine,' June 2006)

[Scott] [Annika]

「あなたは腕・肩・腰を全部一緒に動かすワンピース・テイクアウェイをしようと努力しているが、それは間違った考えである。クラブは、腕・肩・腰よりも遥かに長い距離を移動せねばならない。ところが、多くのゴルファーは肩を大幅に動かし、クラブヘッドをあまりにも小幅に動かす。

正しく行うには"CASH"(キャッシュ)と呼ばれる順序でテイクアウェイを考えることだ(それは動く速度の順でもある)。
1) Clubhead(クラブヘッド、これは最も早く動く)
2) Arms(アームズ、腕)
3) Shoulders(ショルダーズ、肩)
4) Hips(ヒップス,腰)

私(Mitchell Spearman)の場合、アドレスからテイクアウェイ終了(図のようにクラブが水平になる時点)までにクラブヘッドは約1.2メートル動き、両手は約30センチ、肩は数センチ動くだけであり、腰はほとんど動かない。

あなたがCASHの順序で動作すれば、バックスウィングのトップでパワーを得るための最適の位置を得ることが可能になる」

[icon]

図の左はAdam Scott(アダム・スコット)のドライヴァーのテイクアウェイ。黒色がアドレス、青色がこの記事の筆者Mitchell Spearmanと同じく、クラブがターゲットライン後方で水平になる時点。Adam Scottの場合、両手はこの記事の筆者より大幅に動き(推定34センチ)、肩もこの記事の筆者より大きく動いている(推定18センチ)。腰がほとんど動いていないのは、記事の説明通り。全盛期のTiger Woods(タイガー・ウッズ)も手が動く距離、ほとんど動かない腰などは、Adam Scottと共通だが、肩の動く距離はAdam Scottより短い。図の右は全盛期のAnnika Sorenstam(アニカ・ソレンスタム)の6番アイアンのテイクアウェイ。彼女もこの記事の筆者より両手を長く(推定40センチ)動かし、肩も推定20センチ近く動かしている。腰はほとんど動いていない。

「テコ型体型」の私にはワンピース・テイクアウェイは向いていないと説かれていて半信半疑だったのですが、この記事によって疑念は一掃されました。

[Annika]

クラブが上図のように右横で水平になる場合、ワンピース・テイクアウェイなら左肩は身体の正面(スタンス中央)に来なくてはいけない理屈です。有名ツァー・プロたちの連続写真を点検してみましたが、そんなプロは一人もいません。左肩がスタンス中央に来るのは、もっと後、両腕が地面と平行になる時点です。

Annika Sorenstamは自著'Golf Annika's Way'(2004)において「私は手・腕・肩・腰が一体となったワンピースの動きでクラブを後方に引く」と述べていますが、それは「腕だけではない」、「肩だけではない」…という意味で全部一緒には動くものの、ワンピース・テイクアウェイという言葉が暗示する「全ての部品が揃って同じ距離を動く」のではなく、実際は(今回のこの記事の筆者の主張のように)身体各部の動く幅は異なるのです。右図はAnnika Sorenstamの上と同じ段階をターゲットライン後方から見たところ。明らかに手・腕・肩・腰は別々の距離を動いています。「ワンピース・テイクアウェイ」という言葉は大いなる誤解を広めてしまったと云って過言ではないでしょう。

インストラクターJimmy Ballard(ジミィ・バラード)は'How to Perfect Your Golf Swing'(1981)で、Jack Nicklausのワンピース・テイクアウェイに賛辞を呈しつつも、次のように述べています。「ゴルファーたちは長い間『手・腕・肩をワンピースにしてテイクアウェイせよ』と教えられ、その実行に困難を感じて来た。その具体的結果は、クラブが手・腕・肩関節によって後方に押されるというもので、その時点からクラブを上方に持ち上げる唯一の方法は、いきなり不自然な手首のコックをし、胸を横切るように腕を持ち上げ、肩関節による動作を継続することでしかない。それはコネクションとも身体のセンター【註】とも無縁であり、限定され機能しない感覚を与える」

【註】「Jimmy Ballard(ジミィ・バラード)メソッド」(tips_151.html)の①と⑤を参照。

'Play Golf for Juniors'(Firefly Books、2000)というジュニア向けの教本で、共著者である二人のインストラクターMike Adams(マイク・アダムズ)とT.J. Tomasi(T.J.トマシ)は、ワンピース・テイクアウェイについて次のように警告を発しています。「あなたが強靭な身体の持ち主でない限りワンピース・テイクアウェイはしない方がよい。クラブ・手・腕・肩・胸を全部一緒にボールから遠ざけるこのテイクアウェイは、気をつけないと手とクラブをトゥ・ライン(爪先を結んだ線)の内側に急速に引っ張り込んで、捻転を台無しにし、スウィング・プレーンを妨害してしまう。それが、私たちが左腕でスタートする身体各部の一続きの(一体ではない)動きによるテイクアウェイと、(左腕が地面と平行になった後)単純に胸の回転によるワンピースの動きでトップへクラブを持ち上げること…等を推奨する理由である。左腕によるテイクアウェイの方が安全で、より多くの捻転を生む」

ところで、Adam ScottもAnnika Sorenstamも、上図のように両腕の間に「窓」(赤色の部分)を開けていることに注目したいと思います。「体型別スウィング」の著者たちはテコ型プレイヤーに対し、もっと大きい窓を開けることを推奨していますが、そのためには右手・腕をもっと伸ばす必要があります。右腕を伸ばすという意味でも、腰の回転を控え目にして捻転を生み出すという意味でも、この記事の筆者が主張する"CASH"理論は妥当と思われます。

【参考】
・「ワンピース・テイクアウェイの問題点」(tips_163.html)
・「右手を伸ばしてスウィングせよ【ガッテン篇】」(tips_163.html)

(September 02, 2015)


早めに体重移動せよ

インストラクターBill Madonna(ビル・マドンナ)によるバックスウィング始動のコツ。

'Early shift'
by Bill Madonna with Dave Allen ('Golf Magazine,' January 2003)

「どうバックスウィングを始めるべきか?あなたが予期したような、手でも腕でも肩でもなく、後方の足への僅かな体重移動である。その通り。ターゲットから体重を遠ざけることは、クラブを正しい軌道でクラブを引くだけでなく、あなたの身体をソリッドにボールの後方に置き、それがインパクトへとパワフルな動きをセットする。

最初に、あなたの体重が両方の足に均等にかかっていることを確認する。そして、体重を後方の足に移すことでテイクアウェイを始め、それがクラブを動かし始める。クラブヘッドが45センチほど動いたら、およそ65%の体重が既に後方の足にかかっているべきだ。そうなったら、トップまで上体を後方の脚の上で回転させ始めることが出来る」

(September 02, 2015)


偏芯ボールの使い方 [Check-GO]

「ボール・テスト法」(tips_05.html)や「偏芯検査器」(tips_91.html)などで、精密なパットに適したボールを見つける方法を紹介しました。ショート・ゲーム専門インストラクターDave Pelz(デイヴ・ペルツ)は、「ボール・テスト法」で検査後のボールをどう使うかについて触れていませんでしたが、その続きを見つけました。

'Playing balance'
by Dave Pelz with James A. Frank ('Golf Magazine,' August 2002)

「偏芯したボールの影響はさほど大きいものではなく、3メートルのパットで1インチ(約2.5センチ)以下であろう。しかし、それはリップアウトあるいは完全なミスを生ずるに充分な影響と云える。

ボール・テストを三回繰り返し、マジックで描いた点が三回とも同一箇所だったら完全な偏芯であり、ボールの重い側と軽い側は歴然である。そのように完璧ではないとしても、マジックの点が近くに集まっている場合も、そちら側が軽い方である。点が三方向に遠くばらけていれば、それは完璧なバランスのボールと云える。

パットする際、常にマジックでつけた点(それが軽い方である)を上にしてラインに揃えること。こうすれば偏芯による右や左への曲がりを排除することが出来、重い側→軽い側→重い側→軽い側…と転がり、まるで完璧なバランスのボールのように真っ直ぐターゲットに向かう」

なお、'Check-GO'という偏芯検査器(写真)について、Dave Pelzは「便利ではあるが、塩水による検査ほど信頼性は高くない」と云っています。

(September 06, 2015)


ショート・パットのミスを防ぐ

Dr. T.J. Tomasi(T.J.トマシ博士)はPGA of Amaricaのインストラクターであり、Keiser(カイザー)大学の教授兼ディレクターでもあります。

'Round savers'
by T.J. Tomasi with Greg Midland ('Golf Magazine,' February 2002)

「ショート・パットはバスケットボールのフリースローみたいなもので、どちらかと云えば単純な繰り返し可能なものだが、プレッシャーが高まると困難になる。その原因の一つは過剰な視覚的刺激である。目は1秒につき100万の情報を収集する。これが起ると、ゴルファーは情報過剰で心神喪失状態となり、ギクシャクしたストロークに繋がってパットをミスする。これに抗するには、メンタルな雑音を可能な限り排除し、一つのことに集中すべきだ。それはパットを成功させること。

カップの周りの異なる位置に四つのボールを配置し、先ず三つのボールを連続してカップインさせる。その後、ターゲット側の目(右利きなら左目)を閉じ、最後のボールをパットする。ボールがカップに転げ込む音を聞き、『この音大好き』と呟く。

コースに出たら、利き目でない方の目を閉じれば知覚情報のインプットを減らし、上の練習で得たソリッドなストロークに身を委ねることが出来る。ストロークする直前、『この音大好き』を思い出し、落ち着いてボールをカップへと叩き込む」

【参考】「あるときは片目のプロ・ゴルファー」(tips_122.html)

(September 06, 2015)


ショート・パット練習法のベスト1

PGAツァー・プロたちが愛好する三つの練習道具を実地検証し、どれが最も効果があったかを探った珍しくも参考になるリポート。

'Sink more knee-knockers'
by Eric Alpenfels with Lorin Anderson ('Golf Magazine,' September 2003)

「あなたは、入れ頃のパットを全て成功させた満足感に浸りながら最終ホールを離れたことがあるだろうか?まさかね。だが、300ヤード飛ばすとかフル・スウィングのロブ・ウェッジを打つよりも、パットを沈めることの方がずっと現実的な目標である。当誌は12フィート(約4メートル)のパットを成功させるのに役立つようにデザインされた三つの練習法を審査してみた。

《テスト》

1) ストリング(紐)ドリル:パッティング・ラインのボールの15センチ上に紐を伸ばし、その紐の下でパットする方法。【右の写真】
2) チョーク・ドリル:大工が直線を引くのに使う墨壷でグリーンに線を引き、それに沿ってパットする。欧米の道具は墨ではなく、チョークの白い粉で白線を描く。
3) 材木ドリル:二枚の2バイ4の板でパターヘッドが通り抜けられるトラック(走路)を作り、その間でパットする。

45人のゴルファーを三つのグループに分け、ランダムに一つのドリルが割り当てられた。それぞれのグループは年齢、男女、ハンデなどのバランスがとれるように配慮された。準備テストで、被験者たちは3、5、7、9、11フィート(約1〜3.4メートル)のパットをランダムに練習した。その後、トレーニング・サイクルを開始し、各人は2、4、6、8、10フィートのパットを行った。どのサイクルもドリルを用いた練習ストローク、それからドリルを用いたパット、そしてその結果としての本番のパットを含んでいる。六つのサイクルの後、被験者たちは三分休憩。各人は計18のサイクルを終える。その後、追加のテストが準備テストと同じように実施された。その結果やいかに。

《判決》

『ストリング(紐)ドリル』が標準的なエラー(距離のショート)を減らすことでベスト1に選ばれた。このドリルは、練習前9.30インチ(約24センチ)ショートしていたものを5.53インチ(14センチ)に改善した(40%)。『チョーク・ドリル』はたった1.04インチ(2.6センチ)の改善、『材木ドリル』は0.35インチ(約0.9センチ)距離を増やした結果(改悪)となった。

《判決理由》

 

『ストリング(紐)ドリル』は強力な視覚的アライメント補助具であると同時に、パターヘッドの持ち上げを物理的に抑止する効果もある。パターヘッドが上下に動けば動くほど、ラインに沿ってボールを転がすのは難しくなる。パターはインパクトで水平に動く時に正しい転がりを伝えるようにデザインされているからだ。

『チョーク・ドリル』も視覚的アライメント補助具として役立つものの、物理的なフィードバックは与えてくれない。『材木ドリル』は練習の間はよいストロークを強制してくれるのだが、材木が取り払われるや否や悪い習慣が戻って来てしまう」

(September 06, 2015、増補・改訂February 25, 2017)


体型別セットアップ法 [cover]

これは「体型別スウィング」(tips_54.html)のオリジナルの共同執筆者たちが再結集して新たに書き起こした実践篇。「セットアップ法」と「腰のアクション・ドリル篇」(別項)の二部に分かれています。自分がどの体型に属するかは、「体型別スウィング」所載の簡単なテストで確認出来ます。

'Your body knows best'
by Mike Adams, Dr. Jim Suttie and T.J. Tomasi, Ph.D. ('Golf Magazine,' August 1998)

「両手がインパクトに遅れて到着すると、大体においてショットは弱々しく右へ出て行く。身体が遅れて両手が早期に到着すると、概ねパワーレスな左に向かうショットとなる。だから、ソリッドでパワフルなボールとのコンタクトには、定められたインパクト位置に腰と手それぞれがきっかり定時に到着する必要がある。しかし、どこまで腕を上げられるかは体型によって様々である。

スウィングのトップで、円弧型(右図の青い色、長身・スリム体型)のゴルファーの手が時計の短針の11時半を指すとすれば、テコ型(図の赤い色、平均的体型)ゴルファーの手は10時半、幅広型(図の緑色、短躯・がっしり体型)ゴルファーは10時見当になる。これら異なるトップからインパクトに達するまでの時間は当然異なる筈である。彼らはどうやって正しくタイミングを合わせるのか?正しい腰のアクションによってだ。だが、腰は横に動くべきなのか、さらなる回転であろうか?早めに回転すべきか、ゆっくりか?それはトップでのあなたの手の位置(=体型)によって決まる。

ツァー・プロたちは毎日のようにスウィングしており、たとえ幅広型(短躯・がっしり体型)であっても柔軟性に富んでいる。週一や月一のゴルファーとは段違いなのだ。アマチュアは体型によって手と腰のアクションの適切な組み合わせを選択せねばならない。体型別セットアップは、ボール位置、爪先の角度、スタンス幅の調整によって構成されており、これらが正しい腰のアクションを自動的に設定する。

【テコ型のセットアップ】

・ボール位置

 ミドル・アイアン〜ショート・アイアンまでは左頬の前方、ロング・アイアン〜フェアウェイ・ウッドまではシャツのロゴの位置の前方、ドライヴァーでは左脇の下の前方。

・爪先の開き加減

 左右どちらの足も20°に開くことが(腰の横移動ではなく)回転を助け、腰のアクションと円を描くスウィングを促進する。

・スタンス幅

 ミドル・アイアン〜ショート・アイアンでは両踵が肩幅の内側、もっと長いクラブではややワイドにする。中程度にワイドなスタンスがテコ型プレイヤーのバランスを保ち、腰の回転を助けてくれる。ワイド過ぎるスタンスは、過度な腰の横移動に繋がる。テコ型のプレイヤーはまた、過度に狭いスタンスを警戒すべきである。それは回転時のバランスを阻害する。


【円弧型のセットアップ】

・ボール位置

 ミドル・アイアン〜ショート・アイアンまではシャツのロゴの位置の前方、ロング・アイアン〜フェアウェイ・ウッドまでは左脇の下の前方、ドライヴァーでは左肩の先端。

・爪先の開き加減

 右足はスクウェア、左足は約20°に開く。これがダウンスウィングの開始で右踵から左爪先への斜めの腰の動きを促す。この腰の横移動が、腰が逆回転を始める前にトップからクラブを落下させる時間を与えてくれる。スクウェアな右足は、柔軟性に富む円弧型プレイヤーのバックスウィングでの過剰な腰の回転を制限する。

・スタンス幅

 ややワイドなスタンスが、円弧型プレイヤーの手足と高い手の位置に安定した基盤を提供する。ワイドな基盤はまた、ダウンスウィング開始で円弧型プレイヤーが必要とする腰の横移動を促す。円弧型プレイヤーは過度に狭いスタンスを警戒すべきである。


【幅広型のセットアップ】

・ボール位置

 ミドル・アイアン〜ショート・アイアンまでは顎の前方、ロング・アイアン〜フェアウェイ・ウッドまでは左頬の前方、ドライヴァーではシャツのロゴの位置の前方。

・爪先の開き加減

 身体の回転を最大にし、可能な限り腰を回転させるため、両足とも最低約20°は開く。右足をターゲットラインから下げた僅かにクローズなスタンス。これが回転の度合いを増し、ダウンスウィングの開始で微かな手打ち気味の動きを許す。

・スタンス幅

 ミドル・アイアン〜ショート・アイアンまでは両踵が肩幅、長いクラブではそれよりワイドなスタンス。ワイドなスタンスは、バックスウィングで僅かな横移動を促す。あまりにも狭いスタンスは必要な横移動を妨害し、バランスを悪くする」

「腰のアクション・ドリル」に続く。

(September 09, 2015)


体型別・腰のアクション・ドリル

これは「体型別スウィング」(tips_54.html)のオリジナルの共同執筆者たちが再結集して新たに書き起こした実践篇。「セットアップ法」(上の記事)と「腰のアクション・ドリル」の二部に分かれています。自分がどの体型に属するかは、「体型別スウィング」にある簡単なテストで確認出来ます。

'Your body knows best'
by Mike Adams, Dr. Jim Suttie and T.J. Tomasi, Ph.D. ('Golf Magazine,' August 1998)

「【テコ型】

[hip-action]

1. アイアンを右手で持つ。パターを左手で持ち、パターヘッドを左腰に押しつけ【編註:図では赤線で長く表示していますが、本当はパター・シャフトの半分は前腕部に隠れて見えません】、そのシャフトを地面と平行にしてハンドルをボール方向に突き出す。

2. 右手だけでトップまでクラブを振り上げる。腰がフルに回転すると、パターシャフトはボールの後方45°を指す筈だ。【右図の状態】

3. ゆっくりダウンスウィングをし、体重を左サイドに移すが、右腰をターゲットライン方向に動かさないこと。これは、左脚がターゲット方向に動いても、右膝は動かぬままの感じを与える筈だ。同時に、クラブは落下する。

いったん体重が左に移ったら、即刻腰はスウィングの邪魔をしないよう道を空ける。パターシャフトは急速にターゲット方向に回転する。

4. 右手が落下し、腰はインパクト体勢まで回転する。パターシャフトはインパクトでかなりボールの前方を指す。これを感じるには、パターヘッドを腰に押し付ける。すると、パターヘッドは左腰を後方に押す筈だ。


【円弧型】

1. アイアンを右手で持つ。パターを左手で持ち、パターヘッドを左腰に押しつけ【編註:図では赤線で長く表示していますが、本当はパター・シャフトの半分は前腕部に隠れて見えません】、そのシャフトを地面と平行にしてハンドルをボール方向に突き出す。

2. 右手だけでトップまでクラブを振り上げる。腰がフルに回転すると、パターシャフトはボールのかなり後方を指す筈だ。

3. ゆっくりクラブを落下させ、腰は捻転されたままで体重を水平に右踵から左爪先へと移す。これは、腰が不動の頭の下から動き出すような感じを与え、円弧型スウィングにループを描くような印象を与える動きとなる。手は、腰にインパクトへとパワフルに回転させる位置につく。

4. 他の型と同じように、パターシャフトはインパクトでかなりボールの前方を指し、(円弧型プレイヤーにとって危険な水平移動の継続ではなく)腰がインパクト位置へと回転したことを示す。これを感じるには、パターヘッドを腰に押し付ける。すると、パターヘッドは左腰を後方に押す筈だ。


【幅広型】

1. アイアンを右手で持つ。パターを左手で持ち、パターヘッドを左腰に押しつけ【編註:図では赤線で長く表示していますが、本当はパター・シャフトの半分は前腕部に隠れて見えません】、そのシャフトを地面と平行にしてハンドルをボール方向に突き出す。

2. 右手だけでトップまでクラブを振り上げる。上体が僅かにボールから外れるのを許す。腰がフルに回転すると、パターシャフトはボールの少し後方を指す筈だ。

3. スタンスがクローズ目なので、幅広型プレイヤーはダウンスウィングの開始で、クラブをターゲットライン方向に位置を戻す。この動きは、身体の水平の動きと結びついて、クラブがインサイドからやや手打ち気味の軌道を生む。幅広型プレイヤーは、クローズスタンスによって、クラブを正しくスクウェアに出来る余裕があるため、こういうことが可能なのだ。

4. クラブが落下し、腰はインパクト体勢まで回転する。パターシャフトはインパクトでかなりボールの前方を指す。これを感じるには、パターヘッドを腰に押し付ける。すると、パターヘッドは左腰を後方に押す筈だ」

(September 13, 2015)


どちらの手にクラブを持ってターゲットを見るか?(正しい狙い方)

左右どちらの手にクラブを持って立つかが、エイミングに重要な影響を与えるという、バランスの専門家David Wright, Ph. D.(デイヴィッド・ライト博士)のユニークな理論(彼のセオリーは常にユニークですが)。

'How to hit more fairways'
by David Wright, Ph. D. ('Golf Magazine,' April 2008)

「今度TVのゴルフ中継を見る時、プロたちがどのようにショットを準備するかに注目されたい。ボールに近づきながら、彼らの全てが一方の手にクラブを持つ(両方の手ではない)。その理由:片方の手でクラブを持つことは、自然に身体をターゲットにスクウェアにするのだ。あなたも同じようにすべきだが、その前にどちらの手でクラブを持つかを知らねばならない。

大方のゴルファーは、右手でクラブを持つと肩がオープンになり、左手で持つとスクウェアになる。その他のゴルファーでは、それが反対になる。どちらの手で持つのが正しいかを知るには、部屋の隅の角に面して立ち、クラブを左手で持ち、次いで右手で持つ。部屋の角という視覚的助けによって、どちらの手で持った時に目が部屋の角からズレるかズレないか、一目瞭然である。

本番では、正しい方の手でクラブを持ち、ボールの後ろに立ってボールの前方のターゲットライン上に中間目標を選び、クラブを同じ手に持ったまま中間目標に目を据えつつボールに歩み寄る。通常の二本の手によるグリップをする前に、先ずターゲットラインにスクウェアかどうかを確認する。

この原理はパッティングにも共通する。ラインアップする際、正しい方の手でパターを持つべきである」

(September 09, 2015)


われわれにも可能なレイト・ヒット

この記事の原題は'How to create lag power'というものです。"lag"(ラグ)は「遅延、時間のずれ」なので、いわゆるレイト・ヒット(=レイト・アンコック)の同義語であり、手打ちの反意語です。現在のレイト・ヒットの代表はSergio Garcia(セルジオ・ガルシア、下図)でしょう。われわれに彼の真似をするのは困難ですが、今回の記事は彼の真似をするのは危険であるという警告と、われわれにも可能なこと…の二つを教えてくれます。

[Sergio]

'How to create lag power'
by Kevin Walker and T.J. Tomasi ('Golf Magazine,' November 2006)

「レイト・ヒットのためによく聞く助言として、鐘楼の鐘を鳴らすロープを引くようにトップから右肘を引き下ろせというものがある。実はそれはうまくいかない。ロープを引く動きはクラブフェースをかなりオープンにしてしまうのだが、かといってフェースをクローズにしようとすると、その手の動きはラグを台無しにする。この場合、得られるのは弱々しく擦(かす)るような一撃となり、ナイス・ショットでなくナイス・チョットとしか云い様のないお粗末な結果となる。

ダウンスウィングでは手首の角度のことなど忘れ、右腕を伸ばすべきである。国道で車の一台を止めようとする交通係の警官のように、腕を突き出す。右肘をピストンのように動かすことは、右肘がインパクトまでコックを保持するのを助けてくれる。

《ドリル》

以下は右手の角度を維持し、右腕を伸ばす練習法である。

1) ティーアップしたボールに7番アイアンを持ってアドレスする。バックスウィングのトップまで行ってストップ。

2) ダウンスウィングし、左腕が地面と平行になる時点で再びストップ。右腕はなおも90°の角度で曲げられているべきである。単純にハンドルを引き下ろす動きをしてはならない。この重要な最初の動きは、体重移動の結果として起るべきである。

3) ここで右腕のピストンを爆発させる。両腕が共に伸びるのは唯一インパクト後である。

オーヴァー・スウィングしないように。目的はラグであり、距離ではないのだ」

[icon]

「なあんだ、距離じゃないのか!」とがっかりしてはいけません。手打ちを防ぎ、スウィートスポットで打てることによって距離も増える筈です。

(September 13, 2015)


パットのFLW(固定した左手首)

パットが不調になったので、練習グリーンで二時間ほど過ごしました。しばらくして解ったのは、ボールの北半球を打った時に成功率が高いということでした。で、北半球を打つことに専念したのですが、これがうまく行きません。

[FLW]

以前やっていたランガー・グリップ(右手で左前腕とパター・ハンドルを一緒に握る)なら左手首が折れる心配はないのですが、他のグリップだとどれを採用しようが左手首が折れる危険があります。2Thumbパター・ハンドルを購入した際、パットのFLW(Fixed Left Wrist、固定した左手首)というイメージ(左の写真)によって、赤線の角度を維持しながらストロークする決意をしました。しかし、充分注意してFLWを実行しているつもりでも、そうならない時がある。北半球が打てるのはFLWを完全実行した時、北半球を打てないのはFLWに失敗した時という感じでした。

[FLW animation]

そこでFLWの完全遂行を主眼に練習したところ、極めて重要なことを発見しました。左手首を固定したままのインパクトはパターヘッドでボールをしゃくり上げているような感じがするのです。右のアニメのフィニッシュの上向きになる「く」の字がその元凶です。「く」の字のフック(鉤)でボールを引っ掛けているという気もします。もちろん、これは錯覚であって、手首の角度を固定し続けている限りインパクトでシャフトがさらに折れることはないのに、フィニッシュの手首が凹型であるせいで、何やら、パターヘッドでボールを引っ掛けている錯覚を生むのです。長いことランガー・グリップで左手首を伸ばして来た私は、本能的にその掬い上げる感覚に抵抗を覚え、知らず知らず手首の角度を緩めてしまっていたのだと思われます。

アイアン・ショットの秘訣は左手首を平らにしてボールを圧し潰すFLW(Flat Left Wrist、平らな左手首)なので、掬い上げる感覚は正反対であり、おぞましく思えます。しかし、FLWパッティングではそれが正しく、逆にスムーズに流れるようなストロークをした気になった場合は、左手首の角度を変えてFLWを崩壊させているのです。

「FLWなら掬い上げ感覚OK」と悟ってからは、2〜3メートルのパットがぽんぽん入り出し、8メートルぐらいの距離もOKの範囲に寄るようになりました(練習グリーンの話ですけど)。ボールの北半球を打てるようになったのだと思います。練習に精出した甲斐がありました。犬も歩けば棒に当たる、ダッファーも練習すれば悟りが開ける…ということでしょうか。


(September 16, 2015)


パットでショートしないグリップはどれか?

'How to get every putt to the hole'
by Tom F. Stickney II ('Golf Magazine,' September 2008)

「ショートするのは、インパクトでパターのロフトを増やすようなストロークをするため、ボールをぴょんと撥ね上げ、次いで滑走させるせいだ。

インパクトで左の手首を堅く("firm"に)し続けるべきである。左手首が凹型に折れると、パターヘッドをシャフトの前方に押しやり、ロフトを増してしまう。SAM PuttLab(パッティング・ストローク分析装置、http://jp.scienceandmotion.com/)と3D Motion Analysis Systemを用いた研究によれば、左手首を折って生じる3°の角度は、パット成功とショートして失敗に大きく影響する。

【編註】私はアイアン・ショットには"FLW”(Flat Left Wrist=フラット・レフト・リスト、平らな左手首)という用語を用いており、パッティング・ストロークには"FLW"(Fixed Left Wrist=フィックスト・レフト・リスト、固定した左手首)という言葉を提唱しています。この記事の筆者Tom F. Stickney II (トム・F・スティックニィ二世)は"firm"(ファーム、堅い)と表現しています。奇しくも、これも"F"で始まる形容詞。いずれにしても、ゴルフの秘訣は"FLW”に帰着するようです。

左手首を"firm"にし続けるには、肩主導で前後にストロークするのが一番だが、これで成功しない場合はレフト・ハンド・ローかクロー・グリップがお勧めだ。

以下は中級のゴルファー20名がSAM PuttLabでテストした結果である。

パッティング・グリップ シャフトの傾斜角度
クロー・グリップ 0.7°ターゲット側(凸型)
レフト・ハンド・ロー 0.4°ターゲットの反対側
リヴァース・オーヴァラップ 0.5°ターゲットの反対側
インターロック 0.9°ターゲットの反対側
ランガー・グリップ 0.9°ターゲットの反対側
ストロングな右手 0.9°ターゲットの反対側
オーヴァラップ 1.0°ターゲットの反対側
ベースボール 1.2°ターゲットの反対側
スプリット・ハンズ 1.7°ターゲットの反対側

[icon]

ランガー・グリップがトップでないと云うのは驚き(がっかり)です。ま、素人20人だけのテストをどこまで信用するかにも関係しますが…。クロー・グリップはほとんど左手主導のストロークなので、左手首が凸型に折れるのでしょう。他は全部凹型になってロフトを増やし、FLWでなくなっています。なお、このテスト当時'Two-Thumb'パター・ハンドルは出現していませんでした。

(September 16, 2015)


1時にこだわれ

'Find your swing's "happy hour"'
by editors of 'Golf Magazine' ('Golf Magazine,' November 2011)

「ゴルファーは常に時計の文字盤の1時にこだわるべきだ。スウィングの最初から最後まで、あなたの上体は約30°(時計の文字盤の前に立っているとすれば、ほぼ1時)の角度で前方に傾けるべきである。スウィングの間じゅう、このポスチャーを維持出来れば、クラブは自ずと正しい軌道(背骨に対してほぼ90°)でバックスウィングのトップまで動き、ダウンスウィングでインパクトを経由してフォロスルーまで正しく動く。これはゴルフクラブを振る最速で最も効率的な方法である。あなたが過度にアップライトに立てば(それは12時だ)、スウィングの間にクラブを正しいプレーンに戻すために、何らか強引な帳尻合わせをしなければならなくなる。

[one_o'clock]

・関節のバランスをとれ

 正しい1時のポスチャーは、股関節から(胴のくびれからではない)前方に約30°に傾斜させることで確立される。飛行線後方から見れば、あなたの上体は1時を指していて、あなたの体重を支える全ての関節(足の拇指球、膝小僧、肘、背骨の先端など)は一直線に積み重なっている。このフィーリングがどういうものか解らなければ、平均台の上でスタンスをとっている状態を想像する。ふらふらせずに足で立つには、上に述べた関節群のバランスをとらねばならない。爪先の方や踵の方に寄りかかったら、あなたは平均台から落下してしまう。

【編註】上図は史上最年少の女子メイジャー優勝者となったLydia Ko(リディア・コウ)で、彼女のポスチャーは1時で終始一貫していますが、各関節はこの記事のように一線に揃ってはいません。

・昼寝をせよ

 ソリッドなコンタクトを望むなら、この1時のポスチャーをスウィングの間じゅう維持することが重要である。もしスウィングの間に背骨の角度を(上や下に)変えたりすると、クラブがプレーンから逸れるだけでなく、スピードも落ちてしまう。スウィングする間1時に留まるには、スウィング完結時点に頭が枕に乗っているところを想像することだ。【註】体重を左脚に乗せ、ベルト・バックルはターゲットを向いてバランスのよいフィニッシュを迎えるべきである」

【編註】インパクト直後すぐ直立姿勢になってしまうのではなく、頭の右に枕があって、それに頭を傾ける姿勢を継続すれば、1時の角度を維持した(プロ風の)フォロースルーとなる…という意味。上図のLydia Koもちゃんと“昼寝”しています。

(September 20, 2015)


Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)の 頭に関する考察 [Lesson Tee]

Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)が'Golf Digest'誌に四年間連載したアメコミ風カラー・イラスト満載のインストラクション'Jack Nicklaus' Lesson Tee'(ジャック・ニクラスのレッスン・ティー)総集編より。

'Jack Nicklaus' Lesson Tee'
by Jack Nicklaus with Ken Bowden (Golf Digest/Tennis Inc., 1977)

「頭はゴルフ・スウィングの支点である。支点なのだから、バックスウィングの開始からフォロースルーまで頭を(完全な静止でないまでも)ぐらつかせないでおかなくてはならない。ゴルフの全ての悪は頭の動きから生じる。それらの最悪のものは次の三つである。
a) スウィングの途中のスウィング弧とプレーンを変化させてしまう。これは考えられる限りのミス・ヒットと方向ミスの原因となる。
b) 目のアライメントの変動。これはターゲットラインに対する視覚を不正確にする。
c) バランスの喪失。これが起ると、インパクト前にクラブヘッド・スピードを減少させてしまう。

頭を安定させることと、スウィングする時に拘束衣を着て位置を固定することとの間には違いがある。多くのプロ(私を含む)はバックスウィングで頭をターゲットと反対方向に廻し、【註参照】多くの良いゴルファーはフォロースルーの勢いで頭がターゲット方向に廻す。高速度カメラが明らかにしたことだが、多くの素晴らしいゴルファーが、フォワード・スウィングで頭が僅かに後方(ターゲットの逆方向)および下方に動かしている。それが僅かである限り、その動きは差し支えないし、身体の硬直や緊張を排除する助けとなるだろう。スウェイと伸び上がりが避けるべき大敵である。

【編註】頭を右に廻す動作は、Jack Nicklausが16歳の時にSam Snead(サム・スニード)とラウンドし、Sam Sneadの癖を真似したのが最初で、それを生涯続けているのだそうです。

頭が動く問題を抱えているなら、5番アイアンなどで左右の足を地面につけたスウィング練習されたい。このアクションの鍵は足首の回転である。バックスウィングで左足首は内側へ動き、ダウンスウィングで右足首が内側に動く。

昔の格言に『ボールから目を離すな』というのがあるが、ボールを見ているからと云って頭が動かないという保証はない。私は左右に60センチ頭をスウェイさせ、しかもボールから目を離さないでいられる。

頭が動くか動かないかは、お天気のいい日なら自分の影を見ながらスウィングして確認出来る。頭の影の端に目安の草が来るように立ち、影を見ながらティーか雑草を打つ。

もし、腕とクラブによる加速が不足気味だと感じたら、ターゲット方向に身体を(頭ごと)動かしている傾向がある。オーヴァー・スウィングがダウンスウィングを中絶させる主犯である。ショットの距離に対するバックスウィングの大きさを測り、肩が安定した頭の下を通過すると共に腕でクラブヘッドを加速する」

(September 20, 2015)


両方の鼻孔で呼吸して飛距離を伸ばす

この奇想天外な(しかし実用的な)tipは、PGA of AmaricaのインストラクターでありKeiser(カイザー)大学の教授兼ディレクターでもあるDr. T.J. Tomasi(T.J.トマシ博士)によるテスト結果リポート。

’'Air' it out with your driver'
by Dr. T.J. Tomasi ('Golf Magazine,' October 2015)

[nose]

「呼吸する時、あなたはどちらか一方の鼻孔だけ用いていることを知ってましたか?そう、一回につき右か左の鼻孔だけが身体に空気を送るのだ。二つの鼻孔は毎二時間の呼吸につき単に二分間だけの交代制で働く。この交互の空気の流れは重要である。なぜなら、各鼻孔は反対側の脳に空気を送るからだ。あなたの通常の呼吸パターンは、どちらの鼻孔が働いているかによってあなたの心と、細胞の新陳代謝とに影響を与える。このユニークなサイクルはあなたの身体のバランスをとり、仕事、プレイ、そして休息に最適に機能する一般的なホメオスタシスを作り出す。【註】

【編註】「ホメオスタシス:恒常性。生体がさまざまな環境の変化に対応して,内部状態を一定に保って生存を維持する現象。また,その状態。血液の性状の一定性や体温調節などがその例。動物では主に神経やホルモンによって行われる。(『スーパー大辞林』より)

その交代制呼吸サイクルを乱したらどうなるか?ここ数十年の研究によれば、主として働く鼻孔をブロックして呼吸パターンを調節し、他方の脳に空気の流れを変えると、ストレスを除去出来ることが判った。特に、それは人が立っている時の心拍数と、前腕部と手首の緊張のレヴェルとを減少させ、打つ動作を必要とするあらゆるスポーツ(ゴルフ、ホッケー、野球等)の動きを早くかつ効率的にする。

われわれKeiser(カイザー)大学ゴルフ研究室はテストを行った。19歳〜35歳のゴルファー15人にANB呼吸法【後述】を教え、呼吸法実施前と後の6番アイアンによるショットを分析した。呼吸法は助けとなったか?イエス!想像出来る限り全ての面で。

心拍数:10.8%遅くなった
ボール速度:5.4%増
飛距離:5.8ヤード増
強打要因:1.32から1.36へ上昇(ツァー・プロの6番アイアンの強打要因は1.37)

心拍数が遅くなれば緊張が和らぎ、早いスウィングに繋がる。これは週一ゴルファーにとっての三冠王である。かてて加えて筋肉の緊張の減少は、パワフルにボールのセンターとコンタクトする強打要因で明らかなように、ゴルファーのスウィートスポットで打つ能力を増加させるようだ。しかもこれはたった10分間のANB呼吸法トレーニングによる変化なのだ。

[nose2]

呼吸のコントロールがパフォーマンスを後押しすることは、武道の達人やヨガ行者たちが3,000年前から知っていたことだ。われわれの調査はそれがゴルフにも役立つことを証明した。私の助言は、あなたがボールの後ろに立ち、ショットを視覚化する間にANB呼吸法を左右1サイクル実施し、それからボールを打つというものだ。ANB呼吸からヒッティングまでの間(ま)が長いと筋肉の緊張が忍び寄って来る。だから、深呼吸し、長い飛距離による成功の甘き香りを吸い込みたまえ。

【ANB呼吸法】(Alternate Nasal Breathing=交代制鼻呼吸)

1. 右手の人差し指で右の小鼻を圧し潰す。
2. お腹が膨らむほど深呼吸する。
3. 胸も膨らんだら、一つ数える間呼吸を止め、四つ数えながらゆっくり息を吐く。
4. 指と鼻孔を交代し、2と3を繰り返す。
5. 五分間交代制鼻呼吸を続ける。コースではプレショット・ルーティーンとして、1サイクル(左鼻呼吸一回、右鼻呼吸一回)を行う」

[icon]

プレショット・ルーティーンを行う際には左手にクラブを握っているのが普通で、それを持ち替えたりしたくはありません。で、右手だけで行う1サイクルを考えました。先ず、右手の親指で右の小鼻を押し左の鼻孔だけで深呼吸。それが済んだら、そのまま右手の人差し指で左の小鼻を押し右の鼻孔だけで深呼吸。これだと右手だけで済むのでクラブを持ち替える必要もなく、同伴競技者にも目立たないのでベターだと思います。

私の鼻は左の鼻孔がつまり気味になることが多い(それが私の右脳が弱い原因かも知れません)。化学物質が含まれている点鼻薬は、鼻孔内の粘膜を変質させる恐れがあるため常用すべきではないようですが、生理食塩水鼻スプレーなら安心です。今後、ゴルフの日には生理食塩水鼻スプレーを噴霧して出掛けることにします。

(September 27, 2015)


パワー増強計画

若手インストラクターJason Birnbaum(ジェイスン・バーンバウム)による真のパワー生成法。

'Speed pocket'
by Jason Birnbaum ('Golf Digest,' September 2015)

「もし私が、もっとスウィング・スピードを作り出すのは簡単だと云ったら?それは既にあなたの中に備わっていて、あなたに必要なのはそれにどうやってアクセスするかだ…と云ったら?いい話じゃありません?問題は、ほとんどのゴルファーがパワーを生み出そうと懸命になり過ぎることだ。それも多くの場合、必要のない時点で。それらは実際には秘められたスピードを減衰させてしまう。

あなたに必要なのは、クラブヘッドをまさにインパクトの瞬間に最速で動かすことだ。私の推測は、あなたは別のスウィング位置に焦点を当てており、それは飛距離には全く結びつかない…というものだ。

警戒すべき三つの速度阻害要因がある。1) クラブを引ったくるように急激にテイクアウェイする。これは非効率的だし、打撃に何らパワーを与えるものではない。2) あまりにも完璧なバックスウィングをしようと考えるため、インパクトでの盛り上げ方をおろそかにする。繰り返すが、これもまたエネルギー生成とは無関係。3) ボールに到着した時点でクラブを返す。よく考えてほしい。これのどこにテコの作用(=パワー)が存在すると云うのか?

飛距離というものは"speed pocket"(スピード・ポケット)において、可能な限りの加速を作り出すということに尽きる。スラックスの右のポケットから左のポケットの範囲を、私はスピード・ポケットと呼んでいる。

多くのゴルファーにとって、セットアップにおける最悪の緊張点は左肩である。強ばった左肩は緊張を左腕に伝送するが、これはスピードにとっての大敵である。左肩を左耳方向に上げないで低くして構え、リラックスする。そしてスウィングしながら手・腕がソフトなままであるように感じること。これはクラブを抛り出す動きと、スウィングの底辺でのスピード生成とを約束してくれる。

ドリルとして、ドライヴァーを左腰の高さで止める短いフィニッシュをする。この急停止はボールとの位置関係でどこでクラブヘッドが最速かを教えてくれる。加えて、クラブフェースをスクウェアにすることも容易になる」

(September 27, 2015)


Jordan Spieth(ジョーダン・スピース)の トップの作り方

「終わりよければ全てよし」はShakespeare(シェイクスピア)劇の題名の一つですが、ゴルフ・スウィングにはこれは当てはまらないようです。トップが悪くてフィニッシュがいいとしたら、それは途中で相当無理な帳尻合わせをしている筈です。やはり適切なトップを作っておくのが簡単かつ安全でしょう。今年一年間に二つのメイジャー優勝その他計五勝、そして2015シーズン獲得賞金総額で世界ナンバー・ワンとなったJordan Spieth(ジョーダン・スピース)による正しいトップへの工夫。

[top]

'Take it to the top'
by Jordan Spieth with Ron Kaspriske ('Golf Digest,' August 2015)

「バックスウィングの間にすることは、上手く打てるかどうかに大きな影響を与える。だから、私はスウィングのその部分を向上させるためにかなりの時間を費やす。トップでいい位置にクラブをセット出来れば、効果的なダウンスウィングが可能になり、望むところへボールを打つことが出来るようになる。

安定性はバックスウィングにとって実に重要なものだ。私はコーチと一緒に『ネクタイ』というドリルを用い、バックスウィングにおける安定性の改善に役立てている。左手で持ったクラブを、アドレスした時の背骨に合わせてぶら下げる。上体を捻転させ(腰と肩は一緒に後方へ回転する)、クラブヘッドはスタンス中央から動いて右足を指す。上体が捻転された時の右足が支持梁(しじりょう、横材)のように感じるように。これは、バックスウィングの間の身体の捻転(スライドではなく)がどういうものかを教えてくれる良いアイデアである。

もしあなたが腕主体のバックスウィングをしているか、クラブをトップへと縦方向に振っているなら、ソリッドに打つことも、最近のドライヴァーの利点である高い弾道を充分に得る可能性をも減らしてしまう。そういう急激な後方への動きは深刻なパワーの喪失に繋がる。

ボールを高く、しかも少ないスピンで打ち出せれば、あなたはより遠くへ飛ばすことが出来る。私の目標はクラブを身体の上へでなく、もっと身体の周りで振ることだ。理想的には、私の左腕は私の肩の角度にマッチさせること。よい身体の捻転と連携して腕を後方に動かす時だけ、クラブをボールに向かって浅いインサイド・アウトの軌道でスウィングする位置を得ることが出来る。インサイドからのダウンスウィングはパワーを生むことを助けてくれ、ボールを宙に浮かべる。これこそボールを打つ方法である」

[icon]

Jordan Spiethが世界ナンバー・ワンとなった'Tour Championship'(ツァー選手権)のTV中継で、何度か飛行線後方からの彼のショットを見ることが出来ました。上の雑誌記事の写真では、彼の左腕は右肩の高さになっているのですが、トーナメントの実際のスウィングでは上のイラストのように左手を右肩の上まで上げています。「体型別スウィング」の分類だと彼は「テコ型」体型に見えるので、それなら左手を右肩の高さに揃えるのが妥当の筈です。ひょっとすると、彼の前腕は二の腕より長いのでしょうか(それなら、彼はテコ型と円弧型との混合型なので右肩の上で正しい)。そうでないのなら、彼がごくたまにミス・ショットをするのは左手の高さに由来するのかも知れません。

(September 30, 2015)


Patrick Reed(パトリック・リード)の ロブウェッジ一刀流

PGAツァー入り四年目にして四勝を挙げ、2014年のRyder Cup(ライダー・カップ)においてアメリカ勢の中で一人気を吐いて一躍人気者となった新鋭Patrick Reed(パトリック・リード、25歳。表紙の人)。彼は、61°ウェッジ一本を高い軌道、中庸の軌道、転がし…と三つに使い分けるという、アメリカ南部の某ダッファーがやっているのに似た技法をバーディ・メーキングのコツとして紹介しています。ちょっと細部は違いますけど…。

'I've got the secret to more birdies'
by Patrick Reed with Michael Chwasky ('Golf Magazine,' October 2015)

「あなたが私の今年のスタッツ(統計値)を見れば、私が他のトップ・プレイヤーたちのようにティー・グラウンドから真っ直ぐ打てるわけではなく(私は15位に過ぎない)、多分あなたの方がフェアウェイ・ヒット率はいいかも知れない。私のパーオン率もさほどよくない。それでもツァー四年目で四勝し、Ryder Cupでもプレイ出来た。私の秘密は、グリーン上とその周囲からボールを捩じ込む道を見つける才能だ。私にウェッジかパターを握らせたら、私は危険人物となるのだ。

100ヤード以内となったら、フィーリングと問題解決能力がものを云うことは御存知の通り。だが、ショート・ゲーム習得の真の道は攻撃精神だ。攻撃と云っても、障害物に近い危険なピンに寄せるとか、大きな池を飛び越せというのではない。週一ゴルファーが恐怖を覚えるウェッジやパターで、のるかそるかの博奕をせよということだ。

多くのインストラクター(私のコーチも含む)は、グリーン周りで何本ものウェッジを使い分けろと指導するが、Phil Mickelson(フィル・ミケルスン)の魔法のようなショート・ゲームを見て育った私は、いかなるショート・ゲームのショットであれ愛用の61°ロブウェッジを用いることを学んだ。あらゆるショットを一本のウェッジでこなすには練習が必要なのは確かだが、あなたのレヴェルがどうであれ、それはものごとを単純にし、好結果を生むのは間違いない。

・ロブ(高い軌道)

高くソフトなショットは、3/4のバックスウィングでクラブシャフトが垂直になったら止める。トップへ行くまでにクラブフェースを僅かにオープンにすると、インパクトでおまけのロフトを与えることが出来る。クラブヘッドを充分にリリースし、ヒッティング・ゾーンでクラブヘッドが手を追い越すようにする。これは右手を左手の上に返すことを意味する。これはクラブを早期にリリースする稀なショットだ(リリースは早ければ早いほどよい)。ロブを打つ最も重要な目標は、インパクトで手よりもクラブが先行していることだ。こうすれば、あっと云う間にロブに上達出来る。

 

・スタンダード

中くらいの高さの軌道で中庸のスピンをかけるには、バックスウィングを腰の高さ(あるいはクラブシャフトが地面と平行)の時点で止める。ロブとは異なるので、クラブフェースを意図的にオープンにはしない。トップでスウィングを停止して右を向いた時、クラブのトゥが真っ直ぐ天を指しているべきだ。ダウンスウィングはスローなリリースをし、クラブヘッドと手がボールに同時に到達するように。右手は、ボールが遠く離れるまで左手の上に返さないこと。

・転がし

ターゲットに向かってボールを上げる必要がなく、グリーンを横切って低く転がすべき状況だったら、その方がコントロールし易い。クラブフェースをスクウェアにし、クラブが地面に対し45°の角度になるまで上げる。ダウンスウィングでは手でクラブをリードし、インパクトではクラブシャフトが若干ターゲット方向に傾ぐように。この、地面に対してボールを押さえつける動きは、コントロールをよくするためだ。右手の返しは最少限に。ボールはぴょんと上がって素早く地面に着地し、残りの距離をカップまで転がる。イーズィなタップインが待っている」

【参考】「ピッチングとチッピングの距離調節」(tips_155.html)

(September 30, 2015)


体型別スウィング【微調整ポイント一覧】

'The LAWs of the Golf Swing'
by M. Adams, T.J. Tomasi and J. Suttie (HarperCollins, 1998, $25.00)

[Body types] [book] [cover]

スウィングの各局面において体型別に遵守すべきポイントが網羅された一覧表です。自分が今やっていることと反対のことが推奨されていて「ぎょっ!」となったり、考えてもいなかった要素が見つかったりするかと思われます。自分がどの体型かは「体型別スウィング」(tips_54.html)で紹介した、ごく簡単なテストで判ります。この本の著者たちも、人間の身体が整然と三つだけに分類出来るものではないことを認識しており、テコ型に近い幅広型もあり、円弧型に近いテコ型その他もあると考えています。そういう混合型の場合、下記の一覧表を縦に読むだけでなく、横の別の体型の要素もチェックすべきです。混迷を打開出来る妙策を発見出来るかも知れません。飛行機を滑走路に向かわせる前に、副操縦士がチェック・リストを読み上げ、機長が計器やスウィッチの状態を一つ一つ確認しますが、あのチェック・リストのようにこの一覧表を役立てることをお薦めします。

体型と「微調整ポイント」の相性、どの組み合わせがどの体型に「妙薬」となり「毒薬」となるか…等については、近々別項の記事で紹介します。

「テコ型」 は中肉中背の平均体型(大方の女性を含む)。図の一番左のSteve Elkington(スティーヴ・エルキントン)がこれ。

「円弧型」 は長身・腕の長いスリム体型。図の左から二番目のDavis Love III(デイヴィス・ラヴ三世)がこの代表。

この一覧表では「幅広型」(中背・がっしり体型)が、以下のように二つに別れています。

「幅広型1」 は胸が厚く短めの腕と脚で丸っこい輪郭の人。例:Craig Stadler(クレイグ・スタッドラー、図の左から三番目)、Duffy Waldorf(ダフィ・ウォルドーフ)、Craig Perry(クレイグ・ペリィ)、Peter Jacobsen(ピーター・ジェイコブセン)、Tom Lehman(トム・レーマン)、Laura Davies(ローラ・デイヴィス、図の右から二番目)など。
「幅広型2」 は柔軟性を欠く人。このタイプの人は柔軟性の不足によってクラブを上げるのが困難。また、無理なく身体の周りでクラブを振ることも出来ない。幅広型2の人はクラブを身体から離す必要がある。シニアの多くと、胸が大きく筋肉質でない女性がこれに該当する。

一覧表中の(*)印の項目は、原著の詳細説明から編者が独自に拾い上げて追加したポイントです。


・セットアップ

テコ型 円弧型 幅広型1 幅広型2
左爪先 僅かにオープン (*)【いったん少しクローズにしてから】トゥをスクウェアにする【註】 オープン オープン
右爪先 僅かにオープン ターゲットラインに直角 オープン オープン
スタンス スクウェア
(*)ドライヴァー=肩幅、
(*)ショートアイアン=腰の幅
スクウェア
(*)幅は腕の長さによって増減
クローズ
(*)フィニッシュで両膝が触れる幅
クローズ
(*)フィニッシュで両膝が触れる幅
グリップ ニュートラル、左手の親指は中ロング
シャフトは掌に45°
ウィーク、左手の親指は短く
シャフトは掌に斜めに
ストロング、左手の親指は長く
シャフトは掌に90°(フィンガー)
かなりストロング、左手の親指は長く
シャフトは掌に90°(フィンガー)
(*)グリップ圧 きつ過ぎず緩過ぎず (不明) (不明) (不明)
トゥ側のくるぶしの上 内側に締める トゥの方向に合わせる トゥの方向に合わせる
お尻 突き出す 上に 下に・突き出す 下に・突き出す
背骨の傾斜 通常 アップライト 屈む 屈む
左腕 胸上部の上に 脇に 上に かなり上に
右腕 トゥ・ラインに肘を揃える 腰に肘を揃える ターゲットラインに肘を揃える かなり上に
狙い ターゲット ターゲットの右 ターゲットの右 ターゲットの右
ボール位置【編註参照】 通常 スタンス前方 スタンス後方 スタンス後方

(*)【註】ほぼ全ての円弧型プレイヤーが左足親指を基準にターゲットラインに直角にしたつもりになるが、それは見掛けだけに過ぎず、足の外側を見れば実際にはオープンになっている。だから、左爪先を若干内側(クローズ)にしてから爪先をスクウェアに揃えるべきである。

【編註】ドライヴァーのみに限った「ボール位置」は、以下の通り。
・テコ型 「左腋の下」の前方
・円弧型 「左肩先端」の前方
・幅広型 「左半身の真ん中」の前方


・バックスウィング

テコ型 円弧型 幅広型1 幅広型2
テイクアウェイ 連続動作で ワンピースで ワンピースで 連続動作で
左腕の進行 水平な両肘と両前腕で三角形を作りながら【註1】 水平な両肘と両前腕で三角形を作りながら【註1】 左肩で 左肩で
コック開始 腰の高さで ずっと後 腰の高さで 初期に
右手首 凹型 真っ直ぐ 真っ直ぐ 凹型
左手首 真っ直ぐ 凹型 凹型 凹型
回転軸 右腰、背骨(肩の回転軸) 背骨の頂点 右腰 右腰
肘の折れ 後方へ 上方へ 外側へ 外側へ
トップでの腰 水平 右を高く 水平 水平
トップでの左腕 右肩に斜めに【註2】 右肩の上 右肩の下 右肩の上
トップでの右肘 オンプレーン プレーンの真上 プレーンの真上 オンプレーン
トップでの右脚 柔軟に 真っ直ぐ 柔軟に やや柔軟に
(*)トップでの左踵 地面から上げない 地面から上げる 地面から上げない 地面から上げない
トップでの左膝 ボールの方向へ ボールの後方へ ボールの前方へ ボールの後方へ
トップのシャフト オン・プレーン プレーンより上 プレーンより上 プレーンより上

【編註1】両肘と両前腕で形成される三角形については「あなたのトップは正しいか?(鏡で三角テストをしよう)」(tips_157.html)を御覧下さい。

【編註2】この『体型別スウィング』では「テコ型は右肩の高さのトップが適切」となっているのですが、著者の一人Mike Adams(マイク・アダムズ)が14年後の'Golf Magazine'『ゴルフ・マガジン』2012年2月号に執筆した特集記事'Find your perfect swing'(完全なスウィングを見つけよ)では、「中プレーン(=テコ型)は右肩の下」と下方修正されています。詳しくは「体型別スウィング(プレーン篇)」(tips_137.html)を参照下さい。


・ダウンスウィング開始

テコ型 円弧型 幅広型1 幅広型2
左腕 落下・下方に 落下・後方に 落下・外側に 落下・外側に
右腕 伸ばす 折れたまま 折れたまま・傾げる 折れたまま・傾げる
左膝 左くるぶしの上で動く 外側へ動く 左くるぶしの上で動く 動かない
回転軸 左腰、背骨(肩の回転軸) 背骨の頂点 左腰 左腰
両膝 柔軟に 右膝を真っ直ぐに 柔軟に 柔軟に

・ダウンスウィングが半分過ぎた時点

テコ型 円弧型 幅広型1 幅広型2
シャフト オン・プレーン オン・プレーン オン・プレーン オン・プレーン
回転軸 左腰、背骨(肩の回転軸) 背骨の頂点 左腰 左腰
オープン気味 クローズ オープン オープン
両膝 柔軟に・スニード風ガニ股を形成 柔軟に・クローズ 柔軟に・追随する 柔軟に・追随する
インパクト (全て同じ)
フィニッシュ 飛行線後方から見た"C"の字の形 左右を逆にした"C"の字の形【註】 直立 直立

【編註】上図の左から二番目のDavis Love III(円弧型プレイヤー)のフィニッシュがこの形になっている。


【参照】
・「体型別スウィング(序章+テコ型篇)」(tips_54.html)
・「体型別スウィング(幅広型篇)」(tips_92.html)
・「体型別スウィング再履修(含・円弧型)」(tips_107.html)
・「体型別スウィング(プレーン篇)」(tips_137.html)
・「体型別スウィング(テコ型の補遺)パート1および2」(tips_157.html)
・「体型別セットアップ法」(このページ)
・「体型別・腰のアクション・ドリル」(このページ)
・「体型別スウィング【微調整ポイントの相性を知れ】」(このページ)

(October 04, 2015、増補December 08, 2015、追補January 30, 2016、再追補June 01, 2016)


体型別スウィングと私

私が体型別スウィングを採用している理由は、三人のインストラクターたちによる共著'The LAWs of the Golf Swing'『体型別スウィング』という本が、私がこれまでに読んだ百冊余のゴルフ・インストラクションおよびここ20年近いゴルフ雑誌購読において、他で全く触れられたことのない要素についての注意が指摘されているのに驚いたことがキッカケで、それは何かというと私のように左右の脚の長さが異なるゴルファーへの助言なのです。脚の長さが違えば腰は水平になりませんが、『体型別スウィング』によれば私の体型であるテコ型(および幅広型)プレイヤーの腰は、スウィングのトップに至るまで水平であるべきなのです。そして、それをアドレスで解決し、水平な腰を実現する方法を『体型別スウィング』は教えてくれます。ここまでゴルファーの体型を細かく観察・分析・研究し、その問題点への答えも提示してくれるというのは、まさに痒いところに手が届くサーヴィスと云えます。「この筆者たちは信用出来る!」と思わされたのでした。

前腕と二の腕の長さの比率(体型を分ける基準の一つ)によってスウィング・プレーンが異なる筈だという理論も納得出来るもので、彼らの示唆の多くが実践によって正しいと判明しました。

『体型別スウィング』の素晴らしいところは、各体型にとって必要な調整をアドレス時に済ませておけば、スウィングの途中で考えたり、無理に手・腕などをこねくり廻したりしなくて済むという点です。

『体型別スウィング』のユニークな点の一つを紹介しましょう。《テコ型ゴルファーはテイクアウェイの段階で右肘を身体から離し、右腕と脇の間に“窓”を開けなければいけない》と『体型別スウィング』は示唆するのですが(これは他のどんな本や雑誌でも読んだことも、TVで聞いたこともありません)、私がこれを真剣に実行し出してからめきめき飛距離が伸び出したのです。シニア・ゴルファーの飛距離が伸び出すって、非常に珍しいんじゃないでしょうか。

もう一つ、「ワンピース・テイクアウェイ」というのは優等生がやるべき必須の手順のように考えられていると思いますが、『体型別スウィング』によればテコ型プレイヤーにとって、これは命取りとなる毒薬なのです。テコ型は腕主体でバックスウィングを開始し、腰の高さでコックを始め、右腰を軸にして肩を捻転しなくてはなりません。ワンピースでなく、連続動作として行うべきなのです。

ダウンスウィングの重要な焦点は、ボールから遠く離れた遠距離通勤の手(+腕・クラブ)と、非常に近距離で自転車通勤のような腰をどうやって時間的に一緒にボール位置にゴールインさせるかですが、円弧型は腰の回転の前にターゲット方向に腰を若干スライドして時間稼ぎをしなければならない。幅広型は体型的な理由で腰を回転させてから体重移動をすべきである。ところが、テコ型はトップから手を落下させるのと体重移動を同時進行ですべきであり、これが唯一無二の選択肢なのだそうです。

テコ型にとって大事な調整ポイントはまだまだいくつもあるのですが、どれも他のインストラクターや有名プロが触れていないことばかり。

残念ながら、私の体型でない他の二つの型について語ることは出来ませんが、仲間の一人が幅広型体型なので、彼に『体型別スウィング』を勧めてみようと思っています。

(October 04, 2015)


Tの字を傾けて捻転せよ [T angle]

インストラクターRon Gring(ロン・グリング)は、スウィングの間じゅう傾いだ"T"の字を意識せよと云います。"T"の字の喩えは古くはマジック・コックで有名なJoe Dante(ジョー・ダンテ)が自著で述べていたことで、Ron Gringのオリジナルとは云えませんが、大事なポイントなので紹介することにします。

'A better turn in 10 seconds'
by Ron Gring ('Golf Magazine,' November 2011)

「次回ティー・グラウンドでセットアップする際、心の目で文字を描いてほしい。両肩を結ぶ横線、そしてその横線の真ん中から尾てい骨(びていこつ)へ垂直に伸びる線。これらの線は傾斜した“T”の文字を形作る。しっかりした回転をする秘訣は(そして、バックスウィングで潜在的エネルギーの多くを可能な限り生み出すためにも)、“T”をばらけさせず一体として回転させることだ。

多くのゴルファーは単純に肩を廻すが、背骨を廻さないで楽チンに廻したりする(それはインストラクターたちが“偽のターン”と呼んでいるものだ)。バックスウィングでもダウンスウィングでもフィニッシュへさえも、“T”全体を廻さなきゃいけない。“T”全体を廻すことは、上半身全体を廻す習慣をつけることになり(背骨を廻すことは、肩を廻すことよりも重要なことだ)、最大飛距離のために必要なコイル(捻れ)を生み出し、クラブをオンプレーンの状態に保ってくれる」

[icon]

図はAnnika Sorenstam(アニカ・ソレンスタム)ですが、アイアンなのでアドレスでの"T"の傾きは大きくありません。右肩を基点とした場合、左肩が7〜8°上という感じ。Tiger Woods(タイガー・ウッズ)全盛期のドライヴァーで10°見当です。

プロ・トーナメントのTV中継を見ていると、アドレスする前、ボールの後ろからターゲット・ラインを見定めている時から肩を傾斜させているプロが多いことに気づきます。右利きの場合、左肩が上がり、右肩が下がっているのです。確認した範囲ではAdam Scott(アダム・スコット)、Rory McIlroy(ロリィ・マカロイ)、Zack Johnson(ザック・ジョンスン)、J.B. Holmes(J.B.ホームズ)、Sergio Garcia(セルジオ・ガルシア)、Jason Day(ジェイスン・デイ)、Jordan Spieth(ジョーダン・スピース)、松山英樹など、左利きでは(右肩が上がり、左肩が下がりますが)Phil Mickelson(フィル・ミッケルスン)、Bubba Watson(ババ・ワトスン)など。習い性となったショット前の常の姿勢なのか、その段階からもうスウィングが始まっているということなのでしょうか。

(October 11, 2015)

偽のターンをやめよ

あなたが「左肩を顎の下に廻せ」という鉄則を守っているとしても、それは偽のターンかも知れないという、インストラクターMike Labouve(マイク・ラボウヴ)の警告。

'Supersize your tee shots'
by Mike Labauve ('Golf Magazine,' September 2015)

「ゴルファーの誰もが望む一つのことがあるとしたら、それは更なるパワーだろう。Adam Scott(アダム・スコット)だってBubba Watson(ババ・ワトスン)だって、もっと遠くへ飛ばすことを夢見ている。週一ゴルファーも必死に飛距離を伸ばそうと努力しているが、彼らはスピードとパワーの鍵がもっと回転することによる長いスウィングであることに気がつかない。

スウィングを正しく長くするには、ボールから遠ざかる真のターンをすべきであり、偽のターンをすべきでない。真のターンとは何か?それは痛みを感じる限度一歩手前まで、胸を時計回りに背骨の周りで回転させることだ。週一ゴルファーの一般的な過ちは、彼らが単に左肩を顎の下に動かすというものだ。この偽のターンは実際にはスウィングを長くするものではなく、実はスウィング速度に枷をはめてしまうものでしかない。

ドライヴァーを背に廻して抱え、シャフトがターゲットラインとほぼ直角になるまで上体を右へ回す。肩を胸と一緒に廻すこと。1セッションの練習で、これを25回繰り返す。御褒美?それは毎回得られる本物の飛距離である」

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数日前の練習で、あるホールのある距離から、これまでの経験から云って必ず乗る筈のクラブが、何回ボールを打っても10ヤードほどショートします。クラブを換えると飛び過ぎ。「ひょっとして左肘を折ってないだろうか?」意識的に左肘を伸ばすようにして打ってみました。距離が伸び始めました。「これが原因か!」と一件落着を期待したのですが、そう簡単には解決しませんでした。方向が定かでないのです。

私は上のtipを知っていましたので、偽のターンはしていないつもりでした。しかし、よくよく考えると完全な真のターンもしていなかったことを思い知らされました。このサイトを始めたごく初期に「Ernie Els(アーニィ・エルス)のショルダー・ターン」(tips_2.html)に書いたように、ターゲット(グリーンなど)に背を向けるターンをしていなかったのです。ということは、完全な捻転ではなく、幾分か(10〜20%?)の偽のターンが混じっていたということです。特に、バックスウィング後半において。

で、真のターンをすべく努力してラウンドしてみました。私の場合、距離が伸びるというよりも(もちろん、偽のターンよりも距離は伸びましたが)方向性が良くなったことが驚きでした(をいをい、何年ゴルフやってんだ!)。その後、アイアンの精度が上がり、バーディ・チャンスが増えました。ターゲットに完全に背を向けるバックスウィングは、パワーだけなく正確さをも増すのです。偽のターンで、まるっきり捻転しなくても左肩を顎の下に持って来ることは出来るので、それに騙されないようにしたいものです。真の捻転をすると、最初は左目の視野からボールの姿が消えそうになってパニック気味になりますが、飛距離も方向もいい結果が出るので、次第に「これでいいのだ」と思わされることになります。

【参考】「コイルとは何ぞや」(tips_149.html)

(October 11, 2015)


体型別スウィング【微調整ポイントの相性を知れ】

これは「体型別スウィング【微調整ポイント一覧】」の解説ともなっていますので、スウィング各局面の要素を網羅した別項「体型別スウィング【微調整ポイント一覧】」(このページ)を参照しながら読んで下さい。カスタマイズの項目はもっと数多くあるのですが、ここでは比較的重要なものだけに絞ってあります。このページ別項の「体型別スウィング【妙薬と毒薬を見分けよ】」も必読です。

[LAWs]

'The LAWs of the Golf Swing'
by M. Adams, T.J. Tomasi and J. Suttie (HarperCollins, 1998, $25.00)

体型別スウィングの共同執筆者たちは、以下の三つをゴルファーの典型的体型としています。
「テコ型」:中肉中背の平均体型(大方の女性を含む)。例:Steve Elkington(スティーヴ・エルキントン)。
「円弧型」:長身・腕の長いスリム体型。例:Davis Love III(デイヴィス・ラヴ三世)。
「幅広型」:中背だが胸が厚く短めの腕と脚のがっしり体型。例:Craig Stadler(クレイグ・スタッドラー)。

「・タイミングの重要性

『タイミング』は、あなたのスウィングの身体各部の動きを同期させる最も重要な要素である。安定した繰り返し可能なスウィングをするには、身体のどこを動かすかだけでなく、どこをいつ動かすかを認識しなければならない。これが欠けると、全てが台無しになる。もしあなたがボールを正しく打てていないとすれば、あなたのスウィングと微調整ポイントのどこかに何か不調和が潜んでいるので、それを見つけ出して解消すべきである。

【編註】体型別にスウィング動作の時間差が生じることについては「体型別セットアップ法」を参照のこと。

陸上競技のセパレート・コースでの競走のイメージは、タイミングを理解するのによい比喩である。外側のレーン(走路)はカーヴで距離が長くなるので、このレーンの走者はゴールに近いところからスタートする。内側のレーンの距離はゴールに近いので、走者は外側のレーンと公平になるよう遠くからスタートする。もし、スタート地点の距離差が正しく、走者たちのスピードが同じなら、彼らは一斉にゴールインする筈である。同様に、手と腰の動きのタイミングが正しければ、ゴール(ボール)に同時に到達し、パワフルで完全に同期したインパクトが生まれる筈だ。

両手が高く上げられ、身体の後方に廻されたトップを作ると、両手はインパクトまでの距離が長いため、腰と同時にインパクトを迎えるには、腰に回転を待って貰う必要がある(この場合、腰は最初にターゲット方向に水平移動し、その後回転を始める)。フラットなトップの場合は、腰が両手の到着を待つ必要はなく、早期に回転してよい。

遅い腰の動きと早い手(+腕・クラブ)の組み合わせは、(左方へ打つ場合はいいが、そうでない限り)相性が悪い。早い腰と遅い手(+腕・クラブ)の組み合わせも、クラブヘッドがインパクトに遅れて到着するため【オープン・フェースのせいで】ボールはターゲットの右へ飛ぶ。だから、腰も手(+腕・クラブ)も、双方とも遅いか早いかどちらかに統一すべきである。

腰と手(+腕・クラブ)の動きをマッチさせる最も良い方法は、ボール位置と爪先の開き方のようなセットアップで調整をしておくことだ。この調整によって、タイミングは自動制御されるので、スウィング動作をしている際にタイミングについて心配する必要はなくなる。

・スウィングのカスタマイズ

ゴルフにとって最も重要な身体的特性は柔軟性である。柔軟性を備えたテコ型プレイヤー、柔軟性を備えた幅広型プレイヤーというのも存在する。しかし、加齢や故障によって柔軟性が減少すると、タイミングが変化し、それに対応する微調整抜きでは正しくボールを打てなくなる。円弧型プレイヤーは自分の柔軟性の被害者となり得る。何故なら、腰と手(+腕・クラブ)の早さの調整に困難を感じるからだ。彼らが高レヴェルなタイミングを保とうとすると、かなり多くの練習が必要になる。

広いスタンスをとると、ダウンスウィングでターゲット方向への多めの腰の水平移動をし、それに続いて腰の回転をすることになる傾向がある。狭いスタンスだと、早めに腰が回転する。逆も真で、腰が過度に早期に回転する場合は、スタンスを広めにすればよい。腰の水平移動を減らし早期に回転させたければ、スタンスを狭めにする。

早期に腰の回転をする人は、ボール位置をスタンス後方に下げれば、手(+腕・クラブ)が遅れないでボールに到着させることが出来る。逆に、腰の回転が遅れ気味の人は、ボールをターゲット方向に移せば手(+腕・クラブ)が追いつくまでインパクトを遅らせられる。

爪先の開き方でもリリースのタイミングを変えることが出来る。左爪先を開けば、左脚が伸びるのを遅らせ、左サイドの壁の形成がリリースの引き金となる。左爪先を開かなければ、素早いリリースをする結果となる。右爪先を多めに開けばスウィングは円運動になり、逆の場合はアップライトなスウィングになる。

もし、あなたの脚の一方が他方より長ければ、腰の一方が他より高くなる。ゴルフ・スウィングにはバランスが不可欠だから、どんなスウィングをするにしてもアドレスで双方の腰を水平にする必要がある。あなたの右脚が左より長いのであれば、左右の腰が水平になるまでスタンスをクローズにすることを基本にすると、あなたの基準の体型にマッチさせられる。逆に、左脚が長い場合は、両方の腰が水平になるまでスタンスをオープンにする

腰の回転を始める前に腰を水平に動かせば、インパクトにクラブが到着する前にクラブフェースをクローズにする時間を稼ぐことが出来る」

【参考】原著には、自分がどの体型に属するかを知る詳細な自己診断テストが含まれています。以下のサイトに、それがそっくりそのまま復刻されています(英文)。
http://www.tomasigolf.com/whats-your-body-type.html

【参照】
・「体型別スウィング(序章+テコ型篇)」(tips_54.html)
・「体型別スウィング(幅広型篇)」(tips_92.html)
・「体型別スウィング再履修(含・円弧型)」(tips_107.html)
・「体型別スウィング(プレーン篇)」(tips_137.html)
・「体型別スウィング(テコ型の補遺)パート1および2」(tips_157.html)
・「体型別セットアップ法」(このページ)
・「体型別・腰のアクション・ドリル」(このページ)
・「体型別スウィング【微調整ポイント一覧】」(このページ)
・「体型別スウィング【妙薬と毒薬を見分けよ】」(このページ)

(October 14, 2015、増補December 08, 2015)

左肩でパターヘッドを押す

現在、仲間に誉められるパッティングをしています。ハーフのパット総数11が数回、13が数回という感じ。半分はFLW(Fixed Left Wrist、固定した左手首)の功績ですが、それをサポートするコツを考案したせいもあります。メンタルな要素が半分ではあるものの、それが実質的にストロークをコントロールします。

FLWで左手首は固定出来るのですが、ストレート・ストロークでは手をぶら下げている肩がラインと平行に動かなければ、ボールは肩の向きに沿って右や左に転がって行ってしまいます。私が「はみ出し禁止のストローク」と呼んでいるメソッドは、バックストロークの最中に《周辺視野に左肩が身体の前に出る動きが見えたら駄目》というものですが、これをさらに発展させる考え方を思いつきました。

[Push]

《バックストロークは左肩でパターヘッドを右へ押すつもりになる》のです。パターヘッドと肩は物理的には離れていますが、頭の中で連動させます。基本は「はみ出し禁止」ですから、左肩は横移動だけで、前に出るのは禁じられているという前提です(肩が身体の前方に出るとアーク[円弧型]ストロークになってしまい、パターフェースはターゲットに対してスクウェアでなくなります)。 図のように、パターとそれを持った手・腕は固定されており、左肩を右へ動かせば連動してパターヘッドも右へ動くと考えます。手でパターヘッドを先に動かすのは厳禁で、左肩→(腕+手+シャフト)→パターヘッドというオーダーでなくてはなりません。これなら手・腕は肩の動きに追随するだけになります。

以前やっていたショルダー・ストロークはバックストロークで左肩を下げ、フォワード・ストロークで右肩を下げる…というギッコンバッタンで、パターヘッドの上下運動が激しく(スウィート・スポットで打つのが難しい)、距離が長いとコントロールしにくいという欠点がありました。しかし、現在の方式は地面と平行にパターヘッドを動かすごく一般的なストロークなので、難しくもなく距離感の調節もきわめて容易です。

この方式は、私の意識の上では左肩が直接パターヘッドを右へ押す感じなのです。それをイラスト化しようと試みましたが、どうしても左肩がパターヘッドを(真横にではなく)右前方へ押し出す円弧型の図になってしまうので、上のような模式図が精一杯です。しかし、私の意識では左肩とパターヘッドは直結しており、遠く離れた関係ではありません。

アドレスでは左腕・左手主体で構え、右肘はフリーな状態にします(右肘を強ばらせると方向性が損なわれやすい)。フォワードストロークは、FLWで左手首の角度を変えないようにし【絶対厳守】、パターのスウィートスポットでボールの中心を(ややアッパーに)打つことに集中します。これが龍の目玉に瞳を描き入れる工程です。手を抜くと龍は天に昇って行きません。

【参考】「パットのFLW(固定した左手首)」(このページ上)

(October 18, 2015)

Ben Crane(ベン・クレイン)の 排気でパット

当サイトには「排気でパット」という記事が既にありますが、今回のはパット巧者として知られているPGAツァーのBen Crane(ベン・クレイン)によるtipです。

'Waiting to exhale'
by Ben Crane with David Allen ('Golf Magazine,' August 2003)

「滑らかなダウンヒルのパットで遂行したいのは、可能な限りソフトにボールを打つことだ。こういう場合、私はフォワードストロークの間に息を吐く。これが私の手と腕をリラックスさせ、打つ強さを弱めにする。

実際には、私はどんなダウンヒル・パットの練習ストロークでもフォワードストロークを開始しながら口から息を吐く。その後、普通にボールにアドレスし、グリップ圧が軽めであることを確認し、バックストロークを始め、普通に息をする。フォワードストロークしつつ、インパクトにかけてゆっくり息を吐く。

次回、タッチが必要な場合に試されたい」

【参考】「排気でパット」(tips_155.html)

(October 18, 2015)

尺度を定めてぴったりの距離に転がす

パッティング専門インストラクターMarius Filmalter(マリウス・フィルマルター)が推奨する距離調節法。

'Roll it the right length'
by Marius Filmalter ('Golf Magazine,' November 2011)

「あなたが正しい距離感で打てない悩みを抱えているなら、次の三つの距離をマスターするドリルを試されたい。

・12メートル

小さな篭一杯のボールを携えて練習グリーンに赴く。通常のスタンスをとり、両手がちょうど右太腿の外になるところまで後退させ、あなたのベストの強さでストロークする。何個か打ってみた後、この方法では約12メートル転がることに気づく筈だ(あなたのスタンス幅とストロークのテンポによって長短があり得る)。

・6メートル

いくつかのボールを、今度は両手が右太腿の真ん中を折り返し点として打ってみる。スタンス、テンポおよび強さは前と同じでなくてはならない。この方法では、約6メートル転がる筈である。

・3メートル

今度は両手が右太腿内側に達したところを折り返し点として、ボールを打つ。スタンス、テンポおよび強さは前と同じにすること。これを完璧に行えば、ボールは3メートル転がる筈だ。

ジャーン!これらよくある三つの距離を自信を持って打てるようになった。このドリルをいつもの練習の一部とするべきだ。このドリルに上達すれば、三つの距離それぞれにボールを集合させることも可能になる筈。もし、上の距離を増減したければ、単純に長い距離にはスタンスを広げ、短い距離では両足を近づける。ストロークの長さは変えないこと」

(October 18, 2015)


ワグルはドレス・リハーサルである

トップ・インストラクターButch Harmon(ブッチ・ハーモン)は「ワグルはドレス・リハーサルである」と云います。「ドレス・リハーサル」は演劇における舞台稽古の総仕上げで、観客はいないものの衣装もメークも本番そのままに行います。

[waggle]

'The Four Cornerstones of Winning Golf'
by Claude "Butch" Harmon, Jr. and John Andrisani (Fireside Book, $15.00, 1996)

「静止状態からそのままバックスウィングに移るゴルファーはまずいない。本当にいいゴルファーは絶対にそんなことをしない。全てのいいゴルファーはセットアップとバックスウィング開始との間に準備の橋渡しの動きをする。これはワグルと呼ばれる。

ワグルの動作は人によって異なるものの、それは緊張によるソワソワした動きなどではなく、ショット遂行の重要な部分であり、実際のスィングが生まれるミニチュアの素振りと云ってもよい。

私の父Claude Harmon, Sr.(クロード・ハーモン一世、1948年のthe Mastersにレッスン・プロとして優勝)は私がゴルフを始めた頃に、ワグルの重要性を強調した。父はBen Hogan(ベン・ホーガン)との練習ラウンドやトーナメントで彼の見事なワグルを目にしていた。Ben Hoganの主に手と手首による動きで、リズミカルにコックしながらクラブをボールから上に遠ざけ、それをまた戻す。【アニメ参照】このワグルの際に、彼の両脚、両腕、そして上体も、手と手首の拍子を学び取る。それゆえ、彼はスウィング開始前に、微かではあるが絶えず動き続ける。重要なポイントは、Ben Hoganが(他の名人たち同様)ワグルを完結させることなく、ワグルをバックスウィングそれ自体へと融け込ませることであろう。

私の父はワグルがスウィングをプログラムするものと信じていた。言葉を替えれば、プレイヤーはワグルの通りにスウィングする傾向があるということだ。Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)はかなり長い、ゆったりとした穏やかなワグルで、手首によるクラブの持ち上げやコックは見られない。彼は、どちらかと云うと目立つような手の動きのない身体本位のゆったりとしたスウィングする。Arnold Palmer(アーノルド・パーマー)のワグルは素早くきびきびした動作で、彼の手・腕主体の速いスウィングの動きの反映である。

あなたがこれからワグルを取り入れようとしているのなら、それは早いせかせかした動きではなく、スムーズでリズミカルであるべきだ。あなたがこれから遂行しようとしているショットに相応しいワグルによって、そのスウィングを身体に覚え込ませる。バンカー越えのピッチ・ショットなら、多めのコックを含む長くゆったりしたワグル、強風下のショート・アイアンによるパンチ・ショットなら、短く速いワグル。かように、ワグルと実際のスウィングを関連づけるべし」

Ben Hogan自身の本に、彼のワグル法が書かれています。

'Five Lessons'(邦題『モダン・ゴルフ』)
by Ben Hogan with Herbert Warren Wind(Golf Digest/ Tennis, Inc.、1957、$21.00)

「ワグルはショットメーキングにおいて極めて重要な部分であり、ミニチュア版の素振りか、これから遂行するショットの簡略化された予行演習とも云えるものだ。ワグルの間に、プレイヤーは脳内のショットのイメージを筋肉に伝える。

肩は動かさないが、足はほんの少し微調整動作をする。両手・両腕はリズムとテンポを脚と足に伝える。胴体と肩も、その拍子を腕と脚から受け取る。実質的に身体全体が、そのリズムに同期する。ワグルにおいては左手が全てをコントロールする。後方へのワグルの度に、右肘は右腰の前部に当るべきで、左手はボールを約7.5センチほど通過する。【編註:David Leadbetter(デイヴィッド・レッドベター)は下記の本で「最大15センチ」と云っています】ボールに向かう前方へのワグルにおける左手は、ターゲット方向にボールを約2.5〜5センチほど通過する。

ワグルの間、二の腕は胸の両脇にくっついたままである。繰り返すが、肩は動かさない。

ワグルはゴルファーに助走を与えてくれる。バックスウィングはワグルの延長と云える。クラブはワグルと同じ軌道、同じ速度で引かれる。バックスウィングとワグルの違いは、ワグルでは肩を動かさないが、本番では肩を動かすという一点である」

'Five Lessons'出版のための素材として撮影された写真を分析したDavid Leadbetterの次の本には、彼が推奨するワグル法が紹介されています。

'The Fundamentals of Hogan'
by David Leadbetter (Sleeping Bear Press, 2000, $27.50)

「私が勧める拍子は、『ワグル→ワグル→フォワード・プレス→スウィング』というものだ。この拍子は思考時間を減らし、緊張も軽減する。私の方式にもBen Hogan方式にも馴染めないゴルファーは、独自のワグル法を開発すべきである」

次はJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)のワグルに関する見解。

'Golf My Way'
by Jack Nicklaus with Ken Bowden (Fireside, 1974, $14.00)

「私はワグル名人ではない。だが、私はワグルする際、クラブの動きに同調して体重が片足から他方へと移動するのに気づいた。それは脚の筋肉を柔らかくし続けることを助けてくれる。

あなたがワグルするなら、望ましいスウィング軌道に沿ってワグルすることにより、そのアクションがこれからプレイするショットの予告篇となるようにすべきだ。フェードを打ちたいならアウトサイド・イン、ドローを打ちたいならインサイド・アウト…というように」

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私はワグルもフォワード・プレスも無しで長年バックスウィングしていました。私のスウィングの相談役でありシニア・グループの長老Jack Rushing(ジャック・ラッシング)はBen Hoganに心酔している人なので、以前から私にもBen Hogan式ワグルを実行するように示唆していました。しかし、バックスウィング開始に当たって何の不都合も感じていなかった私は、真剣にワグルする気になりませんでした。

最近、Jack Rushingから勧められた長い半径のテイクアウェイによって飛距離が伸び出し、私のゴルフがガラッと好転し始めました。で、それに味を占め、彼が推奨するワグルもやってみる気になりました。最初のうちは三回のワグルをしていましたが、これは私には多過ぎることが判り、ワグルは二回にとどめ、三回目のワグルを始めたかのような感じで実は本番のスウィングに突入しちゃうという方法を取っています。2013年PGA選手権優勝者Jason Dafner(ジェイスン・ダフナー)は、ドライヴァーでは何と7〜10回もワグルします。ワグル回数は異なるものの、私のスタイルは彼に似ています(^-^)。

【参考】YouTubeヴィデオ:
・「Ben Hogan : Antithetic Waggle」https://www.youtube.com/watch?v=HJltn9dnK4Y【1:26】
・「Dufner's Waggles (a Supercut)」https://www.youtube.com/watch?v=LBoUmLN__SA【5:06】

(October 21, 2015)

体型別スウィング【妙薬と毒薬を見分けよ】

原著では各体型に役立つ微調整ポイントの選択を"magic"(マジック、魔術的)、逆に命取りとなる選択を"tragic"(トラジック、悲劇的)と韻を踏んだ対語にしているのですが、ここでは前者を「妙薬」、後者を「毒薬」と云い換えました。この項は「体型別スウィング【微調整ポイント一覧】」の詳細な解説ともなっています。体型別スウィング実施のための注意事項が説明されている「体型と微調整ポイントの相性を知れ」も、併せて参考にして下さい。

[Body type]

'The LAWs of the Golf Swing'
by M. Adams, T.J. Tomasi and J. Suttie (HarperCollins, 1998, $25.00)

体型別スウィングの執筆者たちは、以下の三つをゴルファーの典型的体型としました。
「テコ型」:中肉中背の平均体型(大方の女性を含む)。例:Steve Elkington(スティーヴ・エルキントン)。【図左】
「円弧型」:長身・腕の長いスリム体型。例:Davis Love III(デイヴィス・ラヴ三世)。【図中】
「幅広型」:中背だが胸が厚く短めの腕と脚のがっしり体型。例:Craig Stadler(クレイグ・スタッドラー)。【図右】

勿論、数多の人間の身体をそう簡単に三つに分類出来るものではなく、Tom Lehmn(トム・レーマン)のように基本的に背が高い円弧型だが胸が厚く幅広型の特徴を持っている人、Greg Norman(グレッグ・ノーマン)のように中肉中背のテコ型だが腕が長いので円弧型の傾向でプレイする人、Nick Price(ニック・プライス)のようにテコ型の体型だが胸が厚いので幅広型の特徴も取り入れてプレイする人…などの混合型が存在します。あなたが三つの典型的体型のどれかなら話は簡単ですが、こういう風に混合型に属する場合は「体型別スウィング・微調整ポイント一覧」を縦に一瞥するだけでなく、各自の特徴次第で横の欄の他の体型のポイントも試してみる必要があるでしょう。この項の内容は多過ぎるので、重要なポイントだけ紹介します。

「ある体型にベストの妙薬となる要素(例えばグリップやポスチャー)が、他の体型にとっては逆に毒薬となり得る。誰かが『あんたのスタンスはクローズ過ぎる』とか、『あんたのボール位置は前方(ターゲット側)過ぎる』と云っても聞き流すべきである。あなたが幅広型のプレイヤーであれば、スクウェア・スタンスは毒薬であるし、あなたが円弧型のゴルファーならターゲット方向のボール位置は妙薬だからだ。あなたに助言する人々は、まるで『1足す1は常に2である』とでも云うように(←これは正しい)『ゴルフにはただ一つの方法しかない』(←これは間違い)とあなたに納得させようとする。あなたは悪い助言だけでなく、こうしたあなた個人のスウィングに当てはまらない“良い”助言からも身を守るべきである。

・ストロング VS. ウィーク・グリップ

ウィークな左手のグリップは、円弧型のプレイヤーの手と腕主体のリリースには妙薬であるが、テコ型と、身体でリリースする幅広型とには毒薬である。ストロングな左手はボール位置にマッチするため幅広型には妙薬であり、腰の動きが素早いテコ型プレイヤーにも妙薬である。しかし、過度にストロングな左手グリップは円弧型にとってはインパクトでクローズになり過ぎる。円弧型でフックを多発する人はグリップを点検すべし。

ウィークな右手のグリップは円弧型と幅広型には正しいが、テコ型にとってはインパクトでフェースがオープンになるため毒薬である。カット・ショットを多発させるテコ型プレイヤーは、右手をストロングに調節すべきだ。

過度にストロングな右手は、体型のいかんにかかわらず余りにも身体の周囲でスウィングする原因となるので毒薬である。このミスは目も当てられぬフックを生じる。

・爪先を開く VS. ラインに直角

単純に思える足の角度だが、あなたのスウィングの連続性全体に影響を与える。これが狂っていると、あなたは一日中ボール探しに追われることになる。

例えば、右足をターゲットラインに直角にしようとするなら、あなたは柔軟性に富んでいなくてはならない。直角の右足は、テコ型と幅広型プレイヤーの腰の右方への水平回転を妨げる。もしテコ型と幅広型プレイヤーが腰を(水平でなく)傾斜させてしまうと正しく回転出来ず、インパクトでのクラブヘッドの位置も正しくなくなる。もし、テコ型プレイヤーの腰に気泡管水準器を取り付けたら、気泡はスウィングの間、終始真ん中になくてはならない。もし、ゴルフ場内にくまなくボールをバラ撒いているなら、あなたは足の開き方を間違えているのだ。右足を開くのはテコ型と幅広型には妙薬だが、円弧型には毒薬である。

【編註】左右の脚の長さが異なると、水平な腰の回転は望めない。「体型別スウィング【微調整ポイントの相性を知れ】」中の「スウィングのカスタマイズ」が必読。

左足の状態もスウィングを良くしたり悪くしたりする。左足を大きく開くことは横方向への動きを促す。それは円弧型には妙薬であるが、テコ型と幅広型にはボールへのクラブヘッドの到着を遅らすため毒薬となる。

・クローズ VS. オープンスタンス

クローズド・スタンスは円弧型【註】と幅広型には妙薬だが、テコ型には毒薬である。クローズド・スタンスはテコ型にバックスウィングで過度に腰の回転をさせ、インパクトへのクラブヘッドの到着を遅らせる。このケースでは、ボールを完全に右へ出すか、両手を返してフックを放つ。どちらも容認出来ないショットである。

【原註】円弧型では踵をクローズにし、トゥはスクウェアである。

あなたが筋肉質のプレイヤーであるなら、オープンスタンスは最悪の選択である。幅広の胸は柔軟性に限界があるので、オープンスタンスはボール後方への回転能力を減じてしまい、それは幅広型の偉大な長所であるパワフルな胸を骨抜きにし、バックスウィングをする際の邪魔物と化してしまう。

・広いスタンス VS. 狭いスタンス

テコ型にとって標準のスタンスは円形の動きを促すので妙薬であるが、広いスタンスは円形の動作にマッチしない腰の横の動きを促進するため毒薬である。逆に、円弧型プレイヤーが狭いスタンスを採用すると横方向への腰の動きを失い、円形の腰の動きだけを使うことになるため、ダウンスウィングでトップから右肩での手打ちとなる。打感は素晴らしく感じるものの結果はプルで、あさっての方の左の薮を直撃する。

・直立 VS. 屈むポスチャー

ポスチャーはスウィング・プレーンを決定する。あなたが股関節から身体を折れば、クラブは上に、そして身体から離れて動くようになる。直立のポスチャーだとクラブは身体の周りでスウィングされるようになる。胸のサイズとあいまったポスチャーは腕のスウィングを決定するので、胸の小さい円弧型プレイヤーは45°の腕のスウィングを作り出すために直立ポスチャーを必要とする。しかし、円弧型プレイヤーが過度に直立して立つと、バックスウィングであまりにも身体の周りでクラブがスウィングされるため要注意である。これは手打ちを招き、ダフリと深いディヴォット跡を作る原因となり、捻転不充分でパワーが得られなくなる。

直立ポスチャーはテコ型の腕のスウィングを制限し、早期に肩を回転させる原因となり、バックスウィングでのパワフルな捻転を損なう。それは過度に身体の周りでクラブを振ることを助長し、まずい軌道でトップへとクラブを引っ張り上げる原因となる。

幅広型のスウィングにとっては、直立どころかスタンダードなポスチャーでさえ、胸から腕を遠く離すことになって悲惨なものとなる。これはダウンスウィングでアウトサイド・インのスウィングを強制し、幅広型プレイヤーにぎくしゃくした弱々しいスウィングを無理強いする。

・ボール位置

これまで挙げたセットアップの要素の中で、ボール位置は最も重要である。何故なら、これは他の要素にも影響を与えるからだ。

スタンス前方のボール位置は円弧型プレイヤーには妙薬である。円弧型プレイヤーが後方にボールを置くと、ボールへの到着が早過ぎてスライスやプッシュを出すことになる。

テコ型のプレイヤーが過度にボール位置をスタンス前方にすると、インパクトでクラブフェースがクローズになり、フックやプルを招く。

胸の厚い幅広型のプレイヤーは、ボール位置をスタンス後方にすべきである。

・テイクアウェイ

円弧型にはワンピース・テイクアウェイは妙薬である。だが、一般的テコ型プレイヤーがこれを試みると、多くの場合、価値ある左腕+胸のコネクションが失われ、肩があまりにも早期に回転を完結させ、腕によるクラブの弱々しい持ち上げに堕してしまう。

テコ型にとってスウィングを腕で開始するのは妙薬であるが、柔軟性を天から授かっている円弧型プレイヤーがテコ型のテイクアウェイを用いると、腕を上げるのではなく身体の周りであまりにも後方へ持ち去らなければならなくなる。幅広型プレイヤーが過度に腕によるスウィングに力点を置くと、右腕をあまりにも早く折り畳み、身体の遠く後方へと追いやってしまう。

・スウィングのトップ

幅広型プレイヤーにとってJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)風のフライイング・エルボーは妙薬だ。何故なら体型のせいで、スウィングのトップで前腕の角度が背骨の角度とマッチしているからだ。フライイング・エルボーは胸の中央に両手を揃え、幅広型プレイヤーにとっての弔鐘である過度な身体の周りでのスウィングを防止してくれる。それはまた、身体と腕の間に空間を作り出すため、ダウンスウィングの間に肘を脇にたくし込む余裕が出来る。このたくし込む動作は、クラブにボールへの正しい進路を与えるために必要なものだ。

しかし、テコ型プレイヤーにとってはフライイング・エルボーは毒薬となり得る。何故なら、テコ型にとってはシャフト・プレーンの角度が正確にプレイする上での強みだからだ。フライイング・エルボーにするとシャフト・プレーンの角度を無理矢理変えてしまうため、プルやプル・スライスを避けるためにインパクトまでに何らかの帳尻合わせをせねばならなくなる。かように、フライイング・エルボーはある体型にはバックスウィングのフォーカスであるが、他の体型にはスコアを台無しにする疫病として恐れるべきものである。

・ダウンスウィング

テコ型スウィングは手を落下させるのと体重の左への移動の同時進行が必要であり、この型のトレードマークである Sam Snead(サム・スニード)風ガニ股姿勢を生じる。同時進行はテコ型プレイヤーにとってボールにまっしぐらに向かう唯一の選択肢である。体重移動と腕の落下の間に時間差があると毒薬となり、ボールの進路を歪めてしまう。

円弧型プレイヤーにとってはターゲット方向への腰の顕著な水平移動によるダウンスウィング開始が妙薬であり、それがクラブ・腕・腰が一緒にゴールインするまでの時間稼ぎをする。それは簡略に表現すれば《水平移動→回転》となる。これ以外の組み合わせは、時間稼ぎが短縮されるため毒薬となる。

幅広型は《回転→水平移動》で、上体が先ずダウンスウィングを開始し、1000分の1秒後に体重を移すが、これは手打ちの印象を与えることになる。【註】幅広型はクラブをアドレス時のままの正しいプレーンに戻すために体重移動が完了するまでに余分な時間を必要とする。幅広型プレイヤーが水平移動→回転をするとプッシュとなり、テコ型のように同時進行をするとボールを左に打ってしまう」

【編註】「Inbee Park(朴仁妃)のヘッドアップ打法を頂く」(tips_155.html)に書いたように、LPGAツァー・プロのInbee Park(【米】インビー・パーク、【漢】朴 仁妃、【日】パク・インビ)のスウィングも手打ちの印象があります。彼女は女性ながらLaura Davies(ローラ・デイヴィス)と同じく幅広型体型に入るでしょうから、回転を先にし、それから体重移動しているのだろうと思われます。

【参照】
・「体型別スウィング(序章+テコ型篇)」(tips_54.html)
・「体型別スウィング(幅広型篇)」(tips_92.html)
・「体型別スウィング再履修(含・円弧型)」(tips_107.html)
・「体型別スウィング(プレーン篇)」(tips_137.html)
・「体型別スウィング(テコ型の補遺)パート1および2」(tips_157.html)
・「体型別セットアップ法」(このページ)
・「体型別・腰のアクション・ドリル」(このページ)
・「体型別スウィング【微調整ポイント一覧】」(このページ)
・「体型別スウィング【微調整ポイントの相性を知れ】」(このページ)

(October 25, 2015、増補December 08, 2015)

それでもなおバンカーで苦しんでいる方へ

当サイトには、初級篇から上級篇まで様々なバンカーtipが収録されており、充分過ぎるほどではないかと思われます。しかし、今回紹介するこの一篇は他の記事と一線を画すユニークものなので、敢えて取り上げることにしました。

インストラクターJim Flick(ジム・フリック、1930〜2012)は、Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)の二人目のコーチとなり、Nicklaus-Flick Golf School(ニクラス=フリック・ゴルフ・スクール)の共同経営者ともなった人。彼は、練習時間の少ない一般ゴルファーはバンカーで特殊なスウィングをするのでなく、通常のスウィングで脱出すべきだという観点から、バンカー・ショットのコツをごく易しく説いています。

[砂の女]

'On Golf'
by Jim Flick with Glen Waggoner (Villard Books, 1997, $24.00)

「一般ゴルファーはバンカーに入るより、蛇がうじゃうじゃ蠢いている巣窟に踏み込む方がマシだと思っている。大方のプロは、バンカーの周りのラフよりバンカーに入る方がマシだと思っている。

バンカー・ショットはボールを打たなくていい唯一のゴルフ・ショットなので、最も大雑把に扱えるというのが実際のところだ。それほど類のないショットだからといって、全く新しいスウィングを学ぶ必要はない。極端にアウトサイド・インに振るバンカー・ショットが長い間標準となっているのは、私に云わせればとんでもない間違いだ。一般ゴルファーは、1ラウンドに三・四回しか必要としない全く異なるスウィングの練習にかける充分な時間などない筈だ。だから、私はバンカー・ショットも他のショットと同じスウィング、同じ弧であると教える。

今日のツァー・プレイヤーたちは、バンカー・ショットを普通のスウィングに基づいてプレイし始めているというのが実情だ。何故なら、ボールがグリーンに到達した時、パットされたボールのように転がって欲しいと思うからだ。極端なアウトサイド・インの軌道でカットすると、あまりにもサイド・スピンがかかり過ぎ、ボールをコントロールしにくいことを経験しているからだ。

だから、私は一般ゴルファーの第一の目標である、シンプルな『脱出のための基本の公式』を教えることにしている。その次の目標は脱出して乗せる、後には練習いかんによって脱出→乗せる→寄せるとなるだろう。

もし私に可能なら、私は全てのサンドウェッジに次のような文句を刻みたい。《ボールは砂が飛ぶところへ向かう》 これを理解し、信じて欲しい。われわれはボールの後ろの砂を打つのであり、ボールとは直接接触しないのだから、砂が向かう方にボールが向かって当然なのだ。クラブフェースをオープンにし、フェースがターゲットの右を向いているとしても、ボールはその方向に飛ぶのではない。ボールはスウィングされた方向(=砂が飛ぶ方向)に飛ぶのである。

私には『バンカー安全ルール』と呼ぶものがある。

1) グリーンサイド・バンカーのいいライの場合、クラブフェースをオープンにし、サンドウェッジのバウンス(底部の膨らみ)が先ず砂に突入し、ボールの下をスライドし、ボールを押し上げるようにする。このような現象は、クラブフェースをオープンにしない限り起らない。

2) アドレスで足を砂に埋める時、爪先を先にする。これは身体を低くし、スウィング弧を下げる。爪先で砂を掘り、体重を拇指球(親指の下の丸い膨らみ)に乗せ、上体を前傾させる。このポスチャーは上下のスウィング弧を促し、クラブフェースがボールの下をスライドするのを助けてくれる。踵で砂を掘って寄りかかると、スウィングが過度にフラットで身体の周りを廻る弧になり易い。

3) ボールの前方(ターゲット方向)の側面が見えるように、やや左に寄りかかる

4) 普通のライであれば、両手をボールのやや後方で構えるように。埋もれたライであれば、リーディング・エッジを砂にめり込ますため、両手をボールに先行させる。だが、ボールが砂の上に出ているなら、手を先行させると砂を深く取り過ぎてしまう。スウィングの最低点でクラブを掬い上げてはならない。ボールを押し上げるのはあなたではなく、サンドウェッジの仕事である。

5) 通常のスウィングのようにすっくと立つこと。ただし、腰から屈み、膝をほんの僅か緩める。一般ゴルファーはあまりにも膝を曲げ過ぎる。これはダウンスウィングで膝を伸ばす過ちを誘発する。

[coffee]

私は最少限のスウィングとして、腕を(クラブヘッドではない。腕である)時計の文字盤の10時に揃えるようにと教える。生徒たちは「たった15ヤードの距離に、そんなに大きなスウィングを?」と考える。彼らはボールを15ヤード打つのではなく、大きなコーヒー・カップの量の砂を弾き飛ばすのだということを忘れている。砂はクラブヘッドの速度を押し止めるものなのだ。

プロたちは短く攻撃的なスウィングによって、出すだけでなく、乗せるだけでもなく、寄せ、そしてチップインさせようとする。しかし、練習時間のほとんどない一般ゴルファーは、グリーンサイド・バンカーでは10時のバックスウィングで、腕による長くゆっくりな振り子運動で毎回の脱出を図るべきである。

どれだけボール後方にクラブヘッドを入れるか?上のルールに従ってくれれば、それは大した問題ではない。ボールの後方5〜12センチにヘッドを突入させれば、脱出してオンさせられる。

どれだけ砂を取るか?コーヒー・チェーンのラージ・サイズの紙コップ一杯分の砂である。私があなたに十回連続でバンカーからグリーンに乗せてくれと云ったら、あなたはそれを無理な注文だと云うだろう。しかし、もし私がラージ・サイズの紙コップ一杯分の砂を十回グリーンに運んでくれと云ったら?それらはどちらも同じことなのだ。

他のショットと同じように、ライをチェックすることが非常に重要である。ライ次第で、作戦が異なるからだ。

ボールが砂の上に座っている良いライでは、リーディングエッジであまり深く砂を掘らないよう、フェースをオープンにし、10時のバックスウィングで、バウンスを用いてラージ・サイズの紙コップ一杯の砂を取ればよい。

目玉の場合。ボールをスタンス中央に位置させ、上記『ルールNo.3』よりもっと左に寄りかかる(急角度のスウィング弧 が得られる)。クラブフェースをややクローズ気味にし、リーディングエッジを目玉の外縁(ボールの約5センチ後方)に突入させ、ボールの下をスライスする。

ボールが埋まっている場合。クラブのトゥを内側に曲げる(フェースがかなりクローズになる)。急激に下降するスウィングで、クラブを鍬(くわ)のように使ってボールの周りと下を掘る。

以上見たように、劣悪なライからでさえちゃんと脱出法があるのだ」

【参考】「バンカー・ショットの基本理解」(tips_76.html)

【おことわり】『砂の女』のスチル写真はwondersinthedark.files.wordpress.com にリンクして表示させて頂いています。

コーヒー・カップの画像はrebeccastable.files.wordpress.com にリンクして表示させて頂いています。

(October 28, 2015)

砂無しで練習するバンカー・ショット

打ちっ放しは当然のこと、れっきとしたコースでも練習用バンカーを備えているところは少なく、週末ゴルファーの悩みの種。その点、インストラクターRod Lidenberg(ロッド・ライデンバーグ)によるバンカー不要のこのtipは掘り出し物ではないでしょうか。

'How to make a perfect bunker swing'
by Rod Lidenberg ('Golf Magazine,' July 2008)

「あなたは典型的バンカーtip(左足体重、砂のクッションの上からボールをふわりと浮かび上がらせる)を、耳にタコが出来るほど聞いている筈だが、このショットをプレイするのは唯一ゴルフ・コースにおける一発本番でしかない。

三層になったケーキとしてバンカーの中のボールを考える。ボールは一番上の層で、砂が第二層、バンカーの基盤が第三層である。ここでの作戦は、第一層と第三層に触れることなくケーキの第二層を切ることだ。

ドライヴァーで打つ時のように高いティーにボールを乗せる。サンドウェッジを手にアドレスし、クラブフェースをオープンにする。いつものバンカー・ショットをし、ティーを弾き飛ばし、ボールが足元に落ちるようにする。

このドリルはボールの前後でクラブを地面と水平に保つことを強制する。もしあなたがボールを打てば、あなたは多分掬い上げようとしているのだ。あなたがいったんこのドリルに慣れたら、ティーを低くする。これはボールの近くの砂と接触することを助けてくれ、ボールを摘まみ上げ、ボールにエクストラのスピンを与える」

(October 28, 2015)


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