バンカー・ショットの距離調節はクラブ選択(ロブ・ウェッジ、サンド・ウェッジ,ギャップ・ウェッジ等)でも出来ますが、このtipは一定の法則によるバックスウィングの長さで調節しようとするもので、アイデアとして非常に優れています。
'Blast bunker shots to tap-in range'
by Fred Griffin ('Golf Magazine,' September 2014)
「あなたが多くの週一ゴルファーの一人で、グリーンサイド・バンカーからは単にグリーンに乗せるだけで、滅多にピンに寄らないのであれば、サンディ(バンカーから乗せて1パットの寄せワン)など覚束ない筈だ。それは多分あなたが異なる距離を飛ばすために、スウィングの速度を早くしたり遅くしたりで調節しようとしているからではないか。そんなやり方は複雑過ぎるだけだ。
私の簡単な解決法:
1) ピンまでのヤーデージを測る。
2) ボールがフェアウェイにある場合の、その距離のスウィングを思い出す。
3) バンカーで、上の三倍のスウィングをする。
私はこれを“三倍の法則”と呼んでいる。
例えば、あなたのボールがピンまで10ヤードのバンカー内にあるとしよう。バンカーの傍に立ち、フェアウェイでピンから30ヤード地点にボールがあるとして素振りをする【三倍】。もしピンまで15ヤードなら、45ヤード飛ばすための素振りをする【三倍】。三倍のスウィングをする用意が出来たらバンカーに歩み入り、同じスウィングをする。
通常の砂であれば草の上からのショットの1/3ほど飛び、サンディ(バンカーからの寄せワン)のチャンスが増大する」
私の場合、これは大歓迎のtipです。なぜなら、以前「チッピングの距離調節」(tips_153.html)に書いた方法は、10ヤード、15ヤード、20ヤード、30ヤード、40ヤードなどをバックスウィングの長さで調節するもので、これは抜群の成果を挙げているのですが、バンカーからはそれを三倍にすればいいだけなのですから。ただし、私の場合、チッピングの常用クラブは60°のロブ・ウェッジなので、56°のサンド・ウェッジを使う際に単純に同じ法則を適用出来るとは思えませんでした。ロフトが違えば、当然キャリーとランの長さが異なる筈ですから、何とかうまく換算しなければなりません。そこで、ある試みをしてみました。
私のクラブには全て右図のように1.25センチずつ離して計四つのマークがあります。通常の左の親指の位置(一番下の弓形)からヘッド方向へ白点、緑点、赤点です。《クラブは1インチ(約2.5センチ)短く握ると飛距離が10ヤード減る》という法則があるので、1.25センチだと5ヤード減る計算になります。
私のサンド・ウェッジ(56°)はフル・スウィングで80ヤードですので、白点、緑点、赤点で握ると、それぞれ75ヤード、70ヤード、65ヤードと変化します。
私の場合、60°ウェッジのフル・スウィングは60ヤードなので、サンド・ウェッジの飛距離を60°ウェッジに合わせるには、あと5ヤード飛距離を減らすように握ればいいことになります。《1.25センチ短く握ると5ヤード減る》のですから、サンドウェッジの赤点からさらに1.25センチ(全部合わせて5センチ)短く持てば完璧に60°ウェッジと同じ距離になる計算です。そして、比較テストを行った結果それが正しいことが判明しました。で、サンドウェッジの赤点の下1.25センチに青点をつけました。サンドウェッジをこの青点で握れば、60°ウェッジのバックスウィングの長さをそのまま適用出来るのです。これなら面倒な換算も必要なく、計算に弱い私にも楽勝です。
私はバンカーから10ヤードを三倍、20ヤードを三倍などでピン傍に寄せることに成功し、このtipの恩恵に与っています。
【参考】「グリップのマーク」(tips_99.html)
(October 01, 2014)
ある日、市営ゴルフ場でThe First Teeグループの少年・少女たちの練習を目にする機会がありました。The First Teeは、8歳から18歳までの少年少女たちにゴルフを通じてスポーツマンシップなどを体得させようという全米的な非営利団体で、歴代のアメリカ大統領たちも支援を惜しみません。当市にも支部があり、毎土曜日の朝、市営ゴルフ場で練習と数ホールのラウンドをしています。
腕の筋肉が成長していない少年少女たちが手打ちで飛ばせるわけがありませんから、飛ばそうとするには柔軟な身体をフルに使うしかありません。身体全体のバネで飛ばすのです。私は、以前にもジュニア・ゴルフからスウィングを学んだことがあったのですが、すっかり忘れていました。
手・腕はとても微妙に動くため、人間の生活の他の分野(芸術、工芸、手芸、料理、医療など)では大活躍するのですが、ことゴルフでは(特にストレートにボールを打とうとする場合)手・腕はじゃじゃ馬的存在となります。ドライヴァーからパッティングまで、小器用に動く手首は方向性の敵でしかありません。アドレスしたクラブフェースをスクウェアに保つには、手・腕の動きを殺す必要があります。それには身体で飛ばすジュニア・ゴルフ式スウィングが一番。手・腕が胴体の動きに追随するだけなら、手首が暴走してクラブフェースを捩じ曲げることが避けられます。
右のは当地のThe First Teeのメンバーの写真ではありませんが、この少女が下半身を先行させ、目一杯身体の力を使うスウィングをしていることは一目瞭然です。手・腕とクラブは下半身に引っ張られているだけで、こねくり回されていませんから、クラブフェースはアドレス時のままスクウェアにボールに戻っています。
ラウンド後、手・腕・肩がくたびれていたり、だるかったりしたら、それは身体で飛ばすスウィングをしていない証拠です。私は一時、二日続けてのラウンドなど考えられないほど手・腕・肩がくたびれた時期がありましたが、それは手打ちの悪弊に染まっていたせいでした。現在は足と脚こそくたびれるものの、上半身は全然くたびれません。
最近キッズ・ゴルフのスウィングに感化されてからの私は、それ以前より5〜25ヤードも飛距離が伸びました。ホールによっては50ヤード増ということもあります。「50ヤードなんて嘘だろう!」とお思いでしょうが、下半身で飛ばすショットは方向の正確さも伴うため、ティー・ショットの落としどころを狙えるのです。地面の固い地点に落とせば50ヤードは余計に転がるというホールがあるものでして、そこを狙ってうまく行けば50ヤード増という夢のようなことが実現するわけです。もちろん、ロング・ヒッターを追い抜いてしまい、一人ほくそ笑むことが出来るのです。
【参考ヴィデオ】
・「4th Annual Little Linksters Best Pee Wee Golf Swing in the World Video Contest」(6:03)http://vimeo.com/84484174
・「3rd Annual Little Linksters "Best Pee Wee Golf Swing in the World" Video Contest」(4:18)http://vimeo.com/57983363
("Download"メニューで簡単にダウンロード出来ます)
【参考】「下半身主導のダウンスウィング」(tips_129.html)
(October 04, 2014)
The Golf Channel(ゴルフ・チャネル)の'The Golf Fix'という週一の番組で、インストラクターMichael Breed(マイケル・ブリード)が「右腕を伸ばしてスウィングせよ」という理論を提唱していました。
Michael Breedは、PGAツァー随一の手堅いプレイの第一人者Steve Stricker(スティーヴ・ストリッカー)のスウィング・ヴィデオを見せながら、彼のテイクアウェイで左右両腕が伸ばされていることを指摘します。確かに、Steve Strickerの右腕は、手が地面と水平になる頃まで伸ばされ続け、その後トップを形成する時点までに徐々に肘が折られます。
Michael Breedは「Steve Strickerの右腕はロングで始まり、ロングのまま振り上げられ、バックスウィングの終わりでショートになり、ショートのままダウンスウィングを開始し、インパクト前にまたロングに戻る」と要約します。
これは私のスウィングと全く異なるものでした。私はテイクアウェイでクラブシャフトを飛行線と平行にし(ここでもう既に右肘は折られている)、それから肩を廻してトップへ向かいます。右肘は終始折られたまま。私の飛距離が伸びないのはこれが原因ではないか?と思われました。
で、練習場で右腕を伸ばすバックスウィングを試してみました。《右腕を伸ばし続けるということは左肩を充分に廻すことである》ということを実感させられました。苦しい。しかし出来ます。練習場の200ヤード付近は向こうへ下り坂になっているので、実質的にどれほど飛距離が伸びているのかは確認出来ません。しかし、伸びている手応えはありました。方向性もほぼ完璧。
さて、ラウンドした結果はどうか?
練習不足のせいでしょうか、毎回必ず飛距離が増すわけではなく、時たまプッシュさえ出たりします。左脇を閉めつつ右腕を伸ばしたバックスウィングをするのは苦しいので、ややもすると短過ぎるトップになるせいかも知れません。しかし、いい時は通常より25ヤードも距離が増え、方向も正確です。
飛ばそうという欲でスタンスを広めにするとプッシュを招きます。フィニッシュで両膝が触れ合う広さのスタンス巾に制限する必要があります。【註参照】このtipを思い出してからはプッシュは激減しました。
【註】「最適のスタンス」(tips_52.html)
いろいろ試行錯誤の末、完全に右腕を伸ばすバックスウィングを活かすには、ターゲットに完全に背中を向けるほどのトップを作るべきであることが分りました。そうしないと右手を伸ばし続けるわけにいかないのです。若く柔軟な身体と無縁の私にターゲットに背中を向けるのは容易ではないのですが、右爪先を開くとかなり楽に出来ます。頭もJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)風に右に廻し、肩の右回転を助けます。これはキッズ・ゴルフによく似ています。インストラクターJim McLean(ジム・マクレイン)の「Xファクター」理論など知らない子供たちの半数以上は、目一杯飛ばそうとすると肩だけでなくお臍が飛行線後方を向くほど腰も目一杯回転させます。それは腰の回転を抑え肩を多く廻すXの字の形などではなく、腰も肩も一線になってしまう「I(アイ)ファクター」とでも呼ぶべきほどの捻転です。
私はこの「右手を伸ばしてスウィング」をする自分のヴィデオをまだ撮っていないのですが、キッズ・ゴルフに近いスウィングに見えるのではないかと思っています。私は実利を取りたいので、結果がいいのなら何と思われようが構いません。
肩と頭を限界まで廻してターゲットが視野から消え去ると不安が生じ、つい焦ってダウンスウィングを急ぎたくなります。「慌てる乞食は貰いが少ない」という言葉を肝に銘じ、ゆっくりスウィングする必要があります。目一杯身体を捩っても、左目の隅でボールを見続けないといけません。でないとダフったりプッシュしたりします。ダウンスウィングは腕や手のことを忘れ、下半身主導で振り解(ほど)きます。ターゲットに背を向けるほど身体を廻すと、「ボールは右方向に飛んでっちゃうのではないか?」と心配になるものですが、それは杞憂に過ぎず、ボールはフェアウェイのド真ん中に向かって行きます。
《右手を伸ばしてスウィング》は“短尺”だった右腕を“長尺”にするわけで、5〜25ヤードの増加(当社比)と方向性の良さをもたらしてくれます。右腕を伸ばすとつられて左腕も伸びるので、これが方向性と飛距離を良くしてくれるのではないでしょうか。
(October 04, 2014)
'Golf Digest'誌に四年間連載されたアメコミ風カラー・イラスト満載のインストラクション'Jack Nicklaus' Lesson Tee'(ジャック・ニクラスのレッスン・ティー)の総集編。好評だったようで、コース戦略をテーマとした続編'Jack Nicklaus' Playing Lessons'(ジャック・ニクラスのプレーイング・レッスンズ)も刊行されました。
'Jack Nicklaus' Lesson Tee'
by Jack Nicklaus with Ken Bowden (Golf Digest/Tennis Inc., 1977)
「身体的強靭さは飛距離の鍵ではない。ツァーには、身体的に私より強いのに私の飛距離を越えられない人が沢山存在する。
どれだけボールを遠くに飛ばせるかを決定する要素は、次の三つであると私は信ずる。
1) スウィング弧の幅
2) バックスウィングにおける身体の捻転の度合い
3) ダウンスウィングにおける脚と腰のアクションの質
もちろん、他の要素(例えば、ボールをスクウェアに打てるか否かなど)もあるが、あなたが大体においてボールとの妥当なコンタクトを得ていると仮定して、さらに飛距離を望むなら次のように考えなくてはならない。
1) スウィング弧の幅を広げる
2) バックスウィングにおける身体の捻転を増やす
3) ダウンスウィングにおける脚と腰のアクションをシャープにする
…以上のどれか欠けているもの(あるいは全部)を改善する。
1) あなたがアップライトな軌道で大きなスウィング弧にする決意をした時、最初の危険はスウェイしがちなことと、捻転して腕を伸ばす代わりに肩を持ち上げたりしかねないことだ。そういう動きを防ぐには、スパイクシューズで地面をがっちり噛むことと、頭を静止させてクラブヘッド、腕、肩、腰などの動きをワンピースにスムーズにボールから遠ざけることだ。
2) (単なる弱々しい回転ではなく)本当の捻転を達成するには、当然ながら肩の回転動作への抵抗として下半身を安定させなくてはならない。ここで鍵となるのは右膝である。それはバックスウィングの間じゅう柔軟であることが重要で、さもないとあらゆる不具合が噴出する。
3) バックスウィング完了に伴い、あなたの脚はターゲット方向へと横に突進する。同時に腰もターゲットめがけて廻し、スウィングの最後まで止めないこと。
私の(時々批判の的となる)アップライトなスウィング・プレーンと“フライイング・エルボー”は、大きな広いスウィング弧の土台である。これらを控え目にしたら、私はパワーを失ってしまう。
腰の回転を制限するのが時流であるのは百も承知だが、ドライヴァーを振る場合、肩をフルに捻転させるためには腰を廻すべきだと信ずる。腰の回転を過度に制限しようとすると、多くのゴルファーは身体の回転を止めてしまうが、それは過度な身体の回転よりもずっと悪い。あなたの肩は実際には腰の回転よりも大きくなければならない。あなたが、腰のフル回転なしに肩をちゃんと廻せないなら、腰を廻せばよい。腰の回転が右脚を硬直させる原因とならない限り、ゼロ回転よりはずっとましである。
ロング・ドライヴの重要な要素の一つはテコの要素(レイト・ヒット)である。全てのロング・ヒッターは手首のコックを解くのを、最後の一瞬まで抑える。ダウンスウィングでクラブヘッドは長い旅行をするが、手の動きは極めて短い。ロング・ヒッターたちはダウンスウィングを脚と腰で始めることでレイト・ヒットを達成する。
多くのゴルファーは、ボールを遠くへ飛ばそうと努力することによって遠くへ飛ばせるチャンスを台無しにする。彼らは両手を使ってボールにクラブヘッドをぶち当てたいというほとんど抗し難い衝動に屈服してしまう。それは次のような原因で常に距離を減らす。1) クラブフェースを正確にボールに戻すことが出来なくなること、2) あまりにも早期にアンコックしてしまい、凄いクラブヘッド・スピードを浪費してしまうこと」
『右手を伸ばしてスウィングせよ』(10/04)は右手を精一杯伸ばして(つられて左手も伸びる)スウィングをするという方法で、そのためには肩も腰も限界まで捻転させるべきだという私の発見を書きました。これらはJack Nicklausの飛距離増の三要素のうち「1) スウィング弧の幅を広げる、2) バックスウィングにおける身体の捻転を増やす」を満足させるものです。そして、次項『Inbee Park(朴仁妃)のヘッドアップ打法を頂く』によって「爆発的な下半身の巻き戻し」を実行すれば「3) ダウンスウィングにおける脚と腰のアクションをシャープにする」も満足させられるようになります。こうして、「右手を伸ばしてスウィングせよ」は単なるスウィングtipの一つではなく、立派なメソッドとして確立出来ることになりました。
(October 10, 2014)
LPGAのTV中継で、二人の韓国のプロのパッティング・ストロークが似ているのに気づきました。その二人とはInbee Park(【米】インビー・パーク、【韓】朴 仁妃、【韓】パク・インベ)と、Na-Yeon Choi (【米】ナヨン・チョイ、【韓】崔 羅蓮、【日】チェ・ナヨン)で、共通点は左肩を上げて上昇軌道のフィニッシュをすることです。YouTubeのヴィデオで確認したところ、So-Yeon Ryu (【米】ソヨン・リュ、【韓】柳 簫然、【日】ユ・ソヨン)も僅かですが上昇気味にストロークしています。この三人はいずれもメイジャー優勝者であり、パット名人であると云っていいと思います。
かつてJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)は「パットは上昇軌道で打て」と云っていましたが、私は彼よりもパット名人とされているDave Stockton(デイヴ・ストックトン)の「パットの間じゅうパターヘッドは出来る限り低く保持すべきだ」の方をずっと信奉して来ました。一時、「ショルダー・ストローク」で振り子のように肩を上げ下げしていた時期はありましたが、意識的にボールの北半球を撫でるように打とうとはしていませんでした。
ある日、私は練習グリーンでロング・パットの距離感を改善しようとしていました(ロング・パットといっても、せいぜい10メートル前後のものですが)。私の方針としては30センチほどオーヴァー目に打ちたいのに、どうしても10〜20センチほどショートする結果になります。カップ目掛けて一直線に転がるにもかかわらず、カップの10センチ手前でピタと停止するというのは、私がラウンドに少なくとも二回は経験する手痛いミスです。インパクトで力を入れればオーヴァー目にはなりますが、力というのは調節が難しい。あくまでもバックストロークの幅で距離を調節すべきであって、ストロークの最中に強さを変えるのは邪道だと思います。
ふとInbee Parkらのストロークを思い出し、上昇軌道のストロークを試してみました。何と、私の距離感ぴったりに打てるではありませんか!上昇軌道のストロークだと、トップ・スピン(オーヴァー・スピン)によって自然にボールがよく転がるのです。力を介在させる必要はありません。
思うのですが、私が10メートル先のカップを見る時、アイ=ハンド・コーディネーションにより、私の身体は適切な距離を打つべく準備完了している筈です。それは長いゴルフ生活の間に脳と身体に滲み着いた個人的距離感であり、インパクトで無理に力を加える必要がない自然な距離感です。その感覚に従ってストロークしたのにショートするとしたら、何かが間違っていると考えていいのではないでしょうか。私の場合、低く引き、低く打ち出すストロークが間違いで、脳と身体の距離感にストロークが対応出来ていなかったのだと思われます。私は上昇軌道でストロークすべきだったのです。
Inbee Parkの場合、大袈裟に表現すれば「左肩でカチ上げるストローク」と表現しても過言ではありません。振り子運動を完全に模倣する「ショルダー・ストローク」とまではいきませんが、ある程度それに近いものです。考えてみれば、アドレス時の左手首の角度を堅持しながらインパクトを迎えようとすれば、否応なく左肩を上げてフォワード・ストロークしなければならないと云えましょう。もし、インパクト・ゾーンの30センチ前後でヘッドを低く保とうとすると、折った左手首を伸ばす(角度を広げる)ことが不可欠となり、これは1センチの誤差が正否を別けるパッティングでは大罪と云える行為だと思います。左手首の角度を終始保とうとするなら、左肩が上がるフィニッシュをするしかありません。
【閑話】プロ・トーナメントのTV中継を見ていて、パットの成功・不成功を予言することが出来ます。インパクトでプレイヤーの左手首の角度が変わったら(広がったり狭まったりしたら)、かなりの確率で結果は失敗です。堅固に手首の角度を維持したストロークは成功率がかなり高い。
上昇軌道で打つには、ボール位置をやや左足寄りに置き、右肩を下げ気味のアドレスをします。低く引くものの、フォワード・ストロークは左肩を上げて上昇軌道で打ちます。Inbee ParkもNa-Yeon Choiも、明瞭に左肩を上げています。この方法を用いるとカップにぴったしか、数十センチほどカップをオーヴァーするところへ打てるようになります。
So-Yeon Ryu(ユ・ソヨン)もやはりボール位置は左足寄り、左手首の角度を変えずに、僅かですが上昇気味にストロークしています。
一般的に、左腕主導だったりショルダー・ストロークをしたりすると、方向性はよくてもショートする傾向がありますが、上昇軌道のストロークだとショートする心配はなくなります。
【おことわり】画像はhttps://media.golfdigest.com/にリンクして表示させて頂いています。
(October 13, 2014)
‘Golf Magazine’ September (2014)の記事で、PGAツァーのAdam Scott(アダム・スコット)やLPGAツァーの”Stacey Lewis(ステイシィ・ルイス)が'AimPoint Express'(エイムポイント・エクスプレス)というメソッドを使っていることを知りました。二人とも記事が執筆された当時賞金ランキング世界No.1のプロでした。
’AimPoint Express’セミナーは参加料が100ドルもするそうです。私が住むような田舎町でAimPoint Expressセミナーが開催される筈はなく、あったとしても100ドルは高過ぎます。そこでネットの英文記事やYouTubeヴィデオを見て総合した結果、以下のようなものと見当をつけました。 1) ボールの背後でラインの延長線を跨いで立ち、どちらの足に尺度1〜7の中のどの程度の傾斜がかかるかを感じ取る。 2a) 右足に尺度2の傾斜を感じたら、立てた指二本の右端をカップの中心に合わせる。 2b) 右足に尺度3の傾斜を感じたら、立てた指三本の右端をカップの中心に合わせる。 ・開発者Mike Sweeney(マイク・スウィーニィ)は「10フィート(約3メートル)のパットにおける一本指はカップの2インチ(約5センチ)外側になり、四本指はカップの2フィート(約61センチ)外側になる」と云っています。('Golf Digest' November 2014) |
私は練習グリーンに水準器(泡式)付きの三脚を持って行って試してみました。
・水準器も私の目も過去の記憶も「もっと切れる」と示唆しているのに、指による狙いポイントほどには切れないということがあります。
・逆に、水準器も私の目も過去の記憶も「あまり切れない」と示唆しているのに、指による狙いポイントより切れるということもあります。
・ボールの背後とカップ周辺での傾斜が異なる場合、カップ周辺のブレイクの方を重視すべきです。これだと、ラインの中間地点よりカップに近いところまで歩いて行き、その地点の傾斜を感じなければなりません。
下記のフォーラムの発言で「セミナー参加料は$100.00でなく$50.00ぐらいが適当」と云っている人がいましたが、あまりに簡単なメソッドだから教わることもあまりない…ということではないかと推察します。また、これは足の感覚で読んだ後、実際のパットの結果がどうであったか、かなりの数の試行錯誤により、正しい足の感覚を磨かなければいい結果は得られないと思われます。
ところで、私の脚の長さは同一ではなく左足がやや短いので(左右どちらかが短い人は、世間で珍しくないそうです)、傾斜の度合いを正確に感じとるのが難しい。ですから、残念ながらこの方法は私には向いてはいないと云わざるを得ません。
【参考】
・https://www.youtube.com/watch?v=eMyCtApx6X0 「AimPoint Green Reading Explained by Mark Sweeney」(開発者の説明)
・https://www.youtube.com/watch?v=_jtN1CG76ow 「Golf Channel Thailand - AimPoint Express Interview」(開発者側近の説明)
・http://golfweek.com/news/2014/may/27/adam-scott-putting-routine-pga-tour-express-read/ (記事)
・http://www.golfwrx.com/forums/topic/990355-adam-scott-using-aimpoint-express-for-putting/ (フォーラム)
(October 13, 2014、改訂November 26, 2016)
Ben Hogan(ベン・ホーガン)は彼の'Five Lessons'『モダンゴルフ』(1957)で、「Supination(スーピネーション【註】=手首が甲側に膨らんだ形、右図)は飛距離と正確さの土台である。良いゴルファーの誰もがインパクトで左手首をsupinationにする。お粗末なゴルファーの全ては逆で、左手首をpronation(プロネーション、手首の甲側を凹ませた形)にしてしまう」と云っています。
【註】正しい発音:http://www.merriam-webster.com/dictionary/supinationを参照。「スーピネーション」と語頭を少し伸ばす。
最近、二打目がちゃんと乗らないのにうんざりした私は、“飛距離と正確さの土台”とされるインパクトでのsupinationを試してみることにしました。うまく行くとBen Hoganが「この方法だと、ターフを取る前にボールを完璧にクリーンに捉えることが出来る」と云っているように、小気味よく突き刺すような弾道でボールが飛ぶようになります。うまくいかないと、シャンクしたりします。インパクト直前に手首を甲側に膨らますというのは大変難しいので、手首に集中していると、あまりにも手首が固くなり過ぎ、それがシャンクを生むようです。また、左手首を伸ばそうと一生懸命になると、チキンウィングを生じたりします。また、supinationはクラブフェースを若干クローズにするためフック気味の弾道になりがちです。
いい解決法はないかとYouTubeのヴィデオを総まくりする決意をしたら、何と二番目に見たヴィデオが秘訣を教えてくれました。'Ben Hogan - Supination at Impact - Golf'(http://www.youtube.com/watch?v=6WPeVDlrj-I)というものです。
このヴィデオによるsupinationの秘訣は単純で、《トップで左手首を上に折って凹形にし(pronation)、ダウンスウィング開始と同時に左手首を凸形にする(supination)》のだそうです。Ben Hoganが述べているようにインパクトで超特急でsupinationさせるのは難しいのですが、トップでsupinationの形を作ってしまえばインパクトで何も小細工する必要はないというわけです。ただし、フックになるのを防ぐため、Ben Hoganのようにウィーク・グリップにしておく必要があるそうです。上のYouTubeヴィデオのメソッドでボールを打ってみたのですが、なぜかボールは右に出てしまい、正確なアイアン・ショットを望んだのと逆の結果となり始めました。
David Leadbetter(デイヴィッド・レッドベター)がBen Hoganの'Five Lessons'『モダンゴルフ』を解説した'The Fundamentals of Hogan' (2000)『モダン・ゴルフ徹底検証』によれば、「万人がインパクトで左手首をsupinationさせるべきではない」と云っています。「Hoganはインパクト直前にクラブフェースをオープンにし、それからsupinationさせた。このsupinationの動きがインパクトでクラブフェースをスクウェアにし、ほぼ同時に(ボールが打たれるにつれ)彼は左手首に僅かなpronation(凹形)を加えた」と書いています。これは超絶技巧と云っていいもので、複雑過ぎて、私などに真似出来るものではありません。
(October 16, 2014)
「Ben Hoganのsupination(スーピネーション)を試す」で書いたように、私にはBen Hoganの真似は出来ないことが判りました。そこで、単純にインパクトで左手首を先行させることだけに専念する決意をしました。この"Flat Left Wrist"(フラット・レフト・リスト=平らな左手首)を、今後FLWと略すことにします。FLWは少なくともpronation(凹形)だけは防ごうというものですが、これは大成功でした。「キッズ・ゴルフに学ぶ」(このページ上)の下半身主導のダウンスウィングに、FLWを併用するとアイアンの正確度が見違えるように改善されたのです。大袈裟に云えば、私は別人に生まれ変わったと云ってもいいほどの変化です。無理矢理ディヴォットを取ろうとするのでも、がむしゃらにsupinationを試みるのでもなく、ただ単に平らな左手首によるインパクトを志向しただけなのにこの大変化!さあ、ゴルフが面白くなりました!
理論に強いゴル友(というより私の相談役)のJack Rushing(ジャック・ラッシング)に聞くと、「自分の場合、supinationを試みてボールが右に出るのは(身体に沿って左へスウィングするのではなく)クラブヘッドをターゲットに向かわせた時である。もしボールが真っ直ぐ右へ出るなら、それはブロックしたことによるプッシュであり、スライスならクラブフェースがクローズしないせいだ。クラブが身体の周りを廻るようにスウィングすべきである」と解説してくれました。彼の云うように、身体をターンしないでFLWさせようとするとブロックやチキン・ウィングの害を生じるので、これは重要な注意事項です。
なお、Ben Hoganが「supinationさせたショットは、インパクトでクラブヘッドよりも手が若干先行するため、クラブのロフトが減る。トップ・プレイヤーたちが5番アイアンで4番アイアンの距離を飛ばすのはこれが理由である」と述べているように、FLWを完全実行すると否応なく距離が伸びます。これはクラブ選択に大きく影響するので要注意です。
私が充分に研究済みのあるパー4ホールの残り100ヤード付近から、過去にオン出来たクラブと現在オンさせられるクラブを比較してみたら、完全に1クラブ違いました。これまで8番アイアンだったのが9番アイアンでぴったしになったのです。ある日のラウンドで、残りヤーデージがまさに100ヤードになり、迷うことなく9番アイアンを選択。FLWだけに集中したショットはデッドにピン方向へ。ところがグリーンにボールは乗っておらず、周辺にもボールは見えません。(もしや?)と思ってカップを覗いたら、ちんまりと私のボールが隠れていました。イーグル!
家の裏の芝生でFLWのトレーニング(素振り)をしていて気がついたことがあります。FLWを志向すると、クラブヘッドに先行する両手によって、自然にボール位置のターゲット方向でディヴォットが取れるようになるのです。2008年頃、「インパクトの研究」(tips_112.html)としてターゲット方向でディヴォットを取ることに腐心しましたが、あんな苦労が嘘のようです。FLWを目指せば自動的にクラブフェースがボールを地面に押しつぶし、ターゲット方向でディヴォットが取れるようになります。プロやインストラクターたちが口を揃えて、「ボールを押しつぶせ」と説いていますが、FLW一つでそれが達成出来ます。
「インパクトの研究」の著者Bobby Clampet(ボビィ・クランペット)は次のように述べています。
「インパクト・ゾーンにおけるFLWを実現するため、インパクトでのFLWの重要性を意識し続けるべきである。それを意識すればするほど、そしてスウィングを始める前からインパクト時のFLWを視覚化すればするほど、実際のスウィングでそれを達成出来る可能性が高くなる」
実は私もそうしていました。FLWを念頭において二度の素振りをし、実際にスウィングします。この際、達成すべきことはFLWだけ。他の一切は二の次です。
FLWに専念して以後、ハーフを1オーヴァーで二回、2オーヴァーで一回廻ることが出来ました。トータル7オーヴァーのラウンドが二回。勿論、毎回というわけではないので、単なるまぐれかも知れません。しかし、まぐれでもいい、そういうラッキーなことが起って欲しいと願っている人にはFLWをお勧めします。
【留意点】FLWだけに専念すると手打ちになる危険があります。あくまでも「キッズ・ゴルフに学ぶ」(tips_155.html)の下半身主導でダウンスウィングを始め、FLWで仕上げをするという段取りがベスト。
【参考】
・「ショート・アイアンではボールを押し潰せ」(tips_137.html)
・「インパクトの研究(練習篇)」(tips_131.html)
・「FLW(フラットな左手首)練習法」(tips_159.html)
(October 16, 2014、増補April 29, 2015)
インストラクターJim McLean(ジム・マクレイン)は、様々な有名インストラクターから彼らの理論を吸収しました。その中にJimmy Ballard(ジミィ・バラード)の理論も含まれています。そのJimmy Ballardメソッドの一つである《左上腕を身体に密着させよ》について、Jim McLeanが書いた記事を見つけました。その要旨を紹介します。
'Left Arm Connection'
by Jim McLean (Jim McLean's Golf Blog, June 12, 2012)
「先頃のトーナメントでRickie Fowler(リッキィ・ファウラー)が左脇の下にシャツの袖をたくし込んでいるのに、解説者たちが驚いていた。彼らはそれについて考えを巡らせ、何か目新しいことのようにとらえていた。実はそれはちっとも新しいものではなく、Jimmy Ballardが初めて私にコネクションの重要性について教えてくれたのはずっと以前のことである。それは彼の師匠で元プロ野球選手だったSam Byrd(サム・バード)が、同僚のBabe Ruth(ベイブ・ルース)から教わった左脇にハンカチーフを挟む打撃練習法に由来する。
Jimmy Ballardはそれをコネクションと呼び、生徒たちにハンカチか手袋を左脇に挟む練習をさせ、それによってPGAツァーのプロたちのスウィングを向上させることに成功した。彼は70年代と80年代にかなり多くのPGAツァー・プロを教えて、その数は一時100人を越えるほどだった。現在彼はRocco Mediate(ロッコ・ミディエイト)とJoe Durant(ジョー・デュラント)を教えている。Rocco Mediateは2008年のU.S.オープンでTiger Woods(タイガー・ウッズ)と18ホールのプレイオフを闘い、Joe Durantはツァーでも有数の正確なボール・ヒッターである。
私もJimmy Ballardのコンセプトをツァー・プロたちに教えた。Peter Jacobsen(ピーター・ジェイコブセン)、Brad Faxon(ブラッド・ファクスン)、Len Mattiace(レン・マティース)などだ。特に新人だったLen Mattiaceには大々的に教え、彼はソリッドなプレイヤーに成長して2003年のMasters(マスターズ)のプレイオフをMike Weir(マイク・ウィア)と闘った。
今回、Rickie Fowlerが毎ショットで左袖を左脇にたくし込んでいたのが解説者たちを驚かせたのだが、十年前のMastersでもアナウンサーのJim Nantz(ジム・ナンツ)と解説者のLanny Wadkins(ラニィ・ワドキンス)も今回と似たような発言をしていた。多分それが『たくし込まれた左袖』について初めてTVでコメントされた瞬間だったろう。私はLanny Wadkinsに、手袋やハンカチの代わりにシャツの袖を左脇に織り込むのだと説明した。私はそれがルール違反ではないと考える。
私はこれをKeegan Bradley(キーガン・ブラッドリー)にも教えた。左腕のコネクションは極めて重要である」
【参照】「Jimmy Ballardメソッド ④《左上腕を身体に密着させよ》」(tips_151.html)
(October 22, 2014)
英語だと動詞に"-er"をくっつけて簡単に表現出来ても、そんな単語は日本語になく、簡潔に訳すことが出来ないという言葉がいくつもあります。例えば"putter"です。これはわれわれがすぐイメージするクラブとしてのパターと、「パットする人」の二つの意味があり、その一例は"He was a great putter."という文章です。「彼はパット名人だった」とでも意訳するしかありません。
以下の記事は"ballstriker"と"shotmaker"に関するもので、これらも日本語にしにくい。「ボールを打つ人」、「ショットを作る人」てな間が抜けた意味ではなく、日本語に同じような言葉は見当たりません。後者は、ある英英辞典の"shotmaking"(ショットメーキング)に"the playing of aggressive or decisive strokes in tennis, golf, and other games."(テニス、ゴルフその他での、攻撃的な、あるいは断固たるプレイ)という定義がありますが、これも正確ではありません。正確な意味、以下の通り。
'Golf Magazine's Complete Book of Golf Instruction'
by George Peper et al. (Harry N. Abrams, Inc., 1997, $45.00)
「TVのゴルフ中継を見ていると、プロを形容する際に"great ballstriker"と"great shotmaker"という二つの文句を聞く筈だ。その違いであるが、"ballstriker"の事実上の語義は、ボールをA地点からB地点へと、(普通は右から左、あるいは左から右への飛行で)ムラなく打てる人を指す。"Shotmaker"はボールをA地点からB地点へと、異なる方法(高い、低い、フェード、ドロー、高スピン、低スピンなど)のどれでも必要なものを期待通り打てる人である。
Ballstrikerの例:Nick Faldo(ニック・ファルド)、Moe Norman(モウ・ノーマン、カナダの伝説的鬼才)、Hal Sutton(ハル・サットン)、Johnny Miller(ジョニィ・ミラー)など。
Shotmakerの例:Sam Snead(サム・スニード)、Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)、Lee Trevino(リー・トレヴィノ)、Seve Ballesteros(セヴェ・バレステロス)など。
物理的には、"shotmaking"は目の前の状況を処理するため、スピン、カーヴ、ショットの軌道などをコントロールして意図したターゲットに向けて打つことである。メンタル的な面については、彼自身"shotmaking"の魔術師だったKen Venturi(ケン・ヴェンチュリ)が次のように云う。『創造力こそ偉大なプレイヤーと良いプレイヤーとを隔てるものだ。偉大なプレイヤーはあるホールが差し出す問題を解く沢山のオプション、沢山の解法をイメージ出来る。それが"shotmaker"の神髄である』
"Shotmaker"たらんとするには、四つの基本的ショットをマスターする必要がある。フェード、ドロー、高いショット、そして低いショットである」
(October 25, 2014)
'Golf Digest'『ゴルフダイジェスト』誌に四年間連載されたアメコミ風カラー・イラスト満載のインストラクション'Jack Nicklaus' Lesson Tee'(ジャック・ニクラスのレッスン・ティー)の続編'Jack Nicklaus' Playing Lessons'(ジャック・ニクラスのプレーイング・レッスンズ)より。この項の原題は"Finessing the ball for lower scores"ですが、"finesse"(フィネス)は「巧妙、技巧、精妙、鮮やか」という意味です。
'Jack Nicklaus' Playing Lessons'
by Jack Nicklaus with Ken Bowden (Golf Digest/Tennis Inc., 1981)
「技巧的ショットというのは、すぐれたゴルファーが自在にボール軌道を操ることを指す言葉だ。それは基本的には、特定の軌道や着地の特質を操作するため特別なスピン効果を生むことと関係している。あなたが技巧的ショットに上達すればするほど、もっと戦略的にプレイ出来るようになり、スコアを減らすことが出来るだろう。高いショットと低いショットが、あなたの最初に目指すべきものだ。
a) 高いショット
ボールの高い軌道は、クラブフェースに備わっているロフトを最大限に活かしたバックスピンと、次いで、クラブフェースをクローズにすることなく、フルにクラブヘッドをボール目掛けてのびのびとリリースすることによって生じる。インパクト時にこれらの要素を得るには、アドレスでのセットアップが大切である。クラブシャフトを長く使うため、グリップエンド近くを持ち、グリップ圧は可能な限り軽くする。ボール位置は快適にアドレス出来る範囲内でスタンスの前方にし、クラブフェースをオープンにする。左から右へのボール軌道を想定してターゲットを狙う。軽いグリップ圧とリラックスした手首によって、ボールへと放り投げる感覚を抱くようにクラブヘッドをリリースする。
コースでプレッシャーがかかる場面になる前に、この動作を練習しておくこと。右手は、ボールがかなり離れるまで左手の下にあるように努力する。このテクニックはタイトなライでは難しいので、まずまずのライの時だけ用いるように。
b) 低いショット
すぐれたゴルファーであっても、低くしかも程よく真っ直ぐなボールを打つのには手こずり、フックやプルフックになりがちである。しかし、ボールを上方へではなく前方へ推進することによって高度を減らすことを学ぶのは、90を切れる人ならさほど難しいことではない。この手のショットは、向かい風、木の枝の下、目一杯距離を得るため余分のランを得たい時などに役立つ。このショットの時はクラブを短く持ち、グリップ圧、手首、前腕部などをアドレスの時からインパクト以降までしっかりと保ち続ける。ボール位置はスタンス後方で、かなりのハンドファーストで構え、クラブフェースはスクウェアかややクローズ。これらの調整によりクラブフェースのロフトを減らし、それをインパクトにかけて保ち続けるのがあなたの使命だ。
このショットでは腕が身体を通過して自由に振り抜けるよう、タイミング良く腰を振り解くことが肝要だ。それに失敗すると、手首がクラブヘッドをあまりにも早期に返してしまい、無用の(多分、左方向への)高度を得てしまう。実戦の前に練習し、ロフトの少ないクラブでドローやフックに慣れておくこと。
c) 追加のバックスピン
ゴルフではエクストラのブレーキが役立ったり、不可欠であったりすることがよくある。これを達成する唯一の方法は、ボールにおまけのバックスピンを与えることだ。それはボールの飛行高度を増し、その結果急角度の下降によって着地後急停止する。
最高のバックスピンを得る目標は、ボールをクリーンに(=草や地面に接触する前に)ヒットすることだ。これを達成する最も簡単な方法は、ボールに向かって急角度の攻撃を与えることだ。すぐれたプレイヤーたちは、しばしば単純に少しボール位置を下げ、アップライトなスウィングをする。多分、バックスウィングの早期に手首もコックする筈だ。
もしこのテクニックが難しかったら、フェードによってブレーキをかける方法がある。これは自動的に急な攻撃角度を作り出し、それによって高い軌道を生じる。アドレスで単純にクラブフェースをオープンにし、ターゲットの左を狙い、普通にスウィングする。地面が固い時は、ボールがジャンプし、空中で左から右に切れたのと同じく、地面でも同じように転がる。
d) 部分的ショット
すぐれた技巧的プレイヤーである目印は、武器庫に沢山の部分的ショット(各アイアンの中間距離における様々な弾道のショット)のテクニックを蓄えていることだ。これには三つの鍵がある。
1) スウィングを短くすることによって飛距離を減らす。この場合、インパクトにかけて力をゆるめるのでなく、通常の力で打つ。
2) 充分な素振りによってバックスウィングの長さを計って、心と筋肉に短縮されたアクションの青写真を渡す。フルスウィングでないショットをする際、プロたちがそうしているのを見て御覧なさい。
3) 三つ目の鍵は経験で、それは唯一練習によって得られるものだ。こういうショットの練習の準備が出来ていないのなら、単純に距離に合いそうなクラブを選び、フルスウィングをしていい結果を期待する方が危険が少ないだろう」
(October 25, 2014)
私のコースのほとんどのグリーンは、サラダ・ボウルを伏せたような形で乗せるのが難しい。本当に「バックスピンをかけるのが簡単」なら最高なのですが…。以下はヨーロピアン・ツァー・プロDavid Howell(デイヴィッド・ハウエル)によるtip。
'Golf Tips from the Pros'
edited by Tim Baker (David and Charles Limited, 2006, $14.99)
「人々は、ボールにバックスピンをかけるのはツァー・プロだけに出来る神秘的・魔術的なことだと考える。実際のところは誰にでも可能なのである。次に、グリーンでボールを止めるためのtipをいくつか列挙してみた。
・クリーンであること
クラブのグルーヴ(溝)が綺麗に清掃されていること。土や草などの夾雑物があってはスピンをかけられない。
・ハードに打つ
ショットを信じ、(優しい打ち方ではなく)ボールの後ろ半分に確実な一撃を加えるのがスピンのコツ。
・ボール
スウィングだけではスピンはかからない。スピン率の高いボールを使うこと。【編註:スピン率の高いボールは値段も高い(:_;)】
・考慮すべきこと
スピンをかけるなら、ロング・アイアンよりはショート・アイアンやウェッジの方がずっと簡単である。何故かというと、ショート・アイアンにはロフトが多く、急な攻撃角度でボールの後ろ半分に打下ろすことが出来るからだ。
・打ち方
ボール位置を通常よりスタンスのやや後方にする。僅かにハンドファーストの構えで、ディセンディング・ブローを遂行する。
【参考】
・「バックスピンをかける」(tips_52.html)
・「スピンの完全理解」(tips_156.html)
【おことわり】画像はhttp://3.bp.blogspot.com/にリンクして表示させて頂いています。
(October 31, 2014)
インパクトでパター・フェースをターゲットにスクウェアに戻すのが至上命題ですが、どうしても手や手首が強ばったり捩れたりして、完全にスクウェアにならない憾(うら)みがあります。完璧にスクウェアに戻すにはどうすればいいか?私が考えた解決策が三つあります。どれか一つでも役立つ筈ですが、三つ全部一緒に実行出来れば万全でしょう。その三つとは、
a) 「排気でパット」
b) 「パッティングにForce(フォース)を使え」(このページ下)
c) 「重力まかせのストローク」(このページ下)
今回は、その第一弾「排気でパット」をお届けします。
1) バックストロークを始める前に息を吸い込む。そのまま止める(なんか、X線撮影みたい)。
2) バックストロークがトップに到達したら重力がパターヘッドをボールに戻す動きを待つ。
3) 戻る動きが感じられたらフォワードストロークを開始し、同時に「ハァーッ!」と息を吐く。声が出るぐらいの方が効果的(でないと、息を止めたままになったりしがち)。
4) インパクトでは、ハンマー投げの選手がハンマーを投げ出すように遠心力にパターヘッドを委ねる。フォローは長く出さないで、短く。
(4)を詳しく説明すると、フォワードストロークでパターのハンドル(グリップ部分)からエネルギーがシャフトを一直線に下って行き、インパクトでそのエネルギーがパターヘッドから外に投げ出される感じ。ここでいうエネルギーとは高低差に由来するパワーに関連するものではなく、あくまでもメンタルなイメージです。また、パターは多少緩めに握っておかないと遠心力の効果が出ません。排気と脱力はセットです。息を吐くだけでは成功しません。パターを投げ出す感じなので、インパクトはカツン!という小気味よい打感です(このせいで球がよく走ります)。掃くような、撫でるようなストロークではありません。
息を吐きながらグリップに力を篭めることは出来ないので(やれないことはありませんが、難しい)、上の呼吸法を用いると確実にフェースはスクウェアに戻ります。人間がストロークの全てを取り仕切ろうとするのではなく、仕上げは遠心力に任せればいいのです。ボールをターゲットに向かわせようという人為的努力は一切放棄すべきです。私の現在のテーマは2メートル以内のパットを着実に沈めることですので、脱力しても大幅ショートということは先ずありません。適切なバックストロークの長さと、完全な脱力が鍵となります。
「パッティングに遠心力だって(フルスウィングでもないのに)?」と疑問に思われるでしょうか?では、日本のアマチュアの最高峰中部銀次郎に応援して貰いましょう。彼も「パター・ヘッドの重みを感じながら、その遠心力を使う。その遠心力の働きが最大となるのはストローク軌道の最低点なので、その位置でボールをヘッドの真芯で捉えれば、ボールは真っ直ぐカップに向かう筈」と云っています。その遠心力を使うための方策として、排気・脱力をするというのが私の工夫です。
フォワードストロークでは、「精密にストロークするイメージ」(tips_153.html)で紹介したメンタル・テクニックを併用することも大切です。ボールの中心をパターフェースのスウィート・スポットで打たないと、折角の努力が水の泡になりますので、左図のようにボールの真ん中に出ている釘を打つつもりになるのです。これは遠心力を使う動作と相反することではありません。動作は遠心力に任せて舵を取ることはしないものの、目だけはボールから出ている“釘”を見据え続ける。ボールの中心をスウィート・スポットで打てれば、正しい転がり、正しい方向性が得られます。
ルックアップ(=ヘッドアップ)はパッティングの大敵ですが、それを防ぎ、なおかつ上述の“釘”を凝視し続けるのに最適な方法を考えました。バックストローク直前からインパクトまで、ターゲット側の目をつぶったままにするのです(右利きなら左目をつぶる)。これによってボールの行方を追う動作を妨(さまた)げ、ルックアップしたいという衝動を抑制出来ます。私の利き目は右なので、ボールを見続けるのにも好都合。
以上の方法を総合的に練習グリーンで試したところ、球はよく走るし真っ直ぐカップに向かって行き、すこんすこん入ってしまうので、呆れて独りで笑ってしまいましたよ。
(November 03, 2014)
Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)が'Golf Digest'『ゴルフダイジェスト』誌に四年間連載したアメコミ風カラー・イラスト満載のインストラクション'Jack Nicklaus' Lesson Tee'(ジャック・ニクラスのレッスン・ティー)の続編'Jack Nicklaus' Playing Lessons'(ジャック・ニクラスのプレーイング・レッスンズ)より。
'Jack Nicklaus' Playing Lessons'
by Jack Nicklaus with Ken Bowden (Golf Digest/Tennis Inc., 1981)
「フェアウェイ・バンカーでもライ(砂の質、ボールの状態、傾斜、顎など)が理想的であれば、3番ウッドを打つことも可能だ。そうでない場合、あなたが考えるべきことは距離ではなく、ポジション(どこに打つか)であるべきだ。
何が可能か判断するには、次の三つのルールを適用せよ。
a) ボールの埋まり具合が深いほどクリーンに打つことができなくなり、距離も短くなる。
b) スタンスが傾斜して打つのが厄介になればなるほど、方向の過ちが大きくなる。
c) 進行方向の顎が高ければ高いほど、それをクリアするためにロフトの大きいクラブを使わなければならず、従って飛距離が減る。
これらのどれか(あるいは全部)が当てはまるなら、脱出した後のショットを考慮してリカヴァリーの方策を練る。難しいライとスタンスに見舞われたら、多くのゴルファーにとっての安全なリカヴァリーはサンドウェッジで横に出すことだろう。もし状況が深刻でないなら、8番や9番アイアンでグリーンの傍に寄せられるかもしれない。どんな選択をするにせよ、最初のエラー(バンカーに入れたこと)を大惨事に発展させないこと。
たとえグリーン(あるいはその近く)へ攻め寄せられると感じられても、前方に何が待っているかダブル・チェックすべきだ。出来る限りエラーに対する許容範囲を得るべきである。例えば、池がグリーンの右を守っていてピンがそっちに寄っているとしたら、左側を狙って後はパターに頼る。あなたとグリーンの間に大きなトラブルが待っていて、あなたがそれを越えられるかどうか不確かなら刻むべきである。距離だけ考えるのはあなたのエゴに関わることだが、同時にそれはあなたのスコアにダメージを与えかねないことを忘れてはいけない。だから、たとえあなたがバンカーから距離を得られると感じても、理知的に行動すべきである。
あなたは長いバンカーショットでボールをクリーンに打つには、ボール位置をスタンス後方にし、かなりハンド・ファーストで構えれば簡単だと思うだろう。しかし、その構えだとクラブフェースのロフトが減ってしまうので、もっとロフトのあるクラブ(4番アイアンの代わりに5番か6番)を選ばなくてはならない。どのクラブを使うにせよ、足を砂に潜らせる分、クラブを短く持つことを忘れてはいけない。ライが悪い場合のバンカー・ショットをクリーンに打つには、ボールの後方(ターゲットの反対方向)を見るのではなく、ボールの天辺を見るのがコツである」
(November 06, 2014)
Butch Hamon(ブッチ・ハーモン)がGreg Norman(グレッグ・ノーマン)を指導したこの記事はずっと前に読み、重要なポイントをハイライターでマークしたりしてあったのですが、この「日記」では紹介していませんでした。その理由は、Greg Normanが半ば過去の人になりつつあったことと、私が長くストレート・ストロークを行っているのに反し、ここでButch Hamonがアーク(円弧型)ストロークを推奨していたせいです。しかし、参考になる点が多々あることに気づき、掲載することにしました。
'The Four Cornerstones of Winning Golf'
by Claude "Butch" Harmon, Jr. and John Andrisani (Fireside, 1996, $15.00)
「1992年、私とGreg Normanのフル・スウィング改造は順調で、彼は前年の賞金獲得額ランキング53位から18位に躍進した。しかし、パッティングのランキングは73位と低迷しており、それが彼の勝利を阻んでいた。
そのシーズン終了後、私は彼のパッティングをじっくり観察した。私はパット名人たちのヴィデオや写真を調べ、彼らの共通項とGreg Normanとの違いを見つけようとした。Greg Normanは振り子式ストローク(バックとフォワードの両ストロークの振幅が同じで、パターヘッドはインサイドに引かれ、インパクトでスクウェア、フォローでインサイドに向かう)をしておらず、外側に突き出された腕によって、インパクト前後でターゲットラインのやや外側に向かうストロークをしていた。
私は彼のグリップを変えるところから始めた。左手はかなり左に廻されたウィーク・グリップ。これはBen Crenshaw(ベン・クレンショー)、Corey Pavin(コリィ・ペイヴン)、Paul Azinger(ポール・エイジンガー)などと同じである。右手は右を向いたストロング。この『ウィーク+ストロング』ミックスのグリップは、パターヘッドを終始低く保つ役目もした。これによって、Greg Normanは毎回スクウェアでソリッドにボールを打てるようになった。
以前のGreg Normanは狭いスタンスで、背を伸ばして立つような姿勢だったが、身体を静止させるための広いスタンスで、腰も膝もかなり曲げるようにさせた。腰を深く折ると目がボールの真上になるし、もっと重要なことには両肘を折って身体につけなくてはならない。以前の彼の両手は、だらんと垂れ下がって身体とのコネクションがなかった。両肘を身体につけることによって、彼は振り子式ストロークの感覚を発展させた。
上のセットアップは、彼のフル・スウィングのミニチュア版である。彼は両手、両腕、両肩で形成される三角形によってクラブを引くことが出来る。その三角形以外の独立した動きは一切ない。ボールにパターヘッドを戻すには、単純に三角形をボール方向に動かせばよい。パターヘッドは地面に近く低く保たれる。腕と肩は一緒に動くので、クラブヘッドの軌道はターゲットラインからややインサイドに引かれ、インパクトでスクウェアになり、フォローでややインサイドに向かう。
テクニックの調節とGreg Normanの猛練習によって、彼のパッティングのランキングはトップ10に返り咲いた。あなたがパッティングに問題を抱えているなら、Greg Normanがマスターした上の方法を考慮すべきだろう」
この後Greg Normanは1993年のU.S.オープン、1994年のPGA選手権ほかに優勝しています。
【おことわり】画像はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。
(November 12, 2014、改訂December 04, 2015)
パッティングのインストラクションでは、「目をボールの真上にせよ」という言葉がお題目のように聞かれます。正しくそうなっているかどうか具体的に知る方法として、「アドレスして先ずボールを両目の間につけ、それを落下させて地面のボールに当たるかどうか確認する」というtipがあります。当たらなければ真上ではないという趣旨です。「両目の中間から棒を垂らし、それがラインを隠すかどうかチェックする」という方法もあります。しかし、これらには落とし穴があり、こうしたチェックに合格したからといって、ポスチャーが正しいとは云えないのです。
1) ゴルファーがどんな風に身を屈めているか
2) ゴルファーが首をどんな角度にしているか
…これらを不問にして、両目の間からボールを落としてみても始まりません。
試みに以下のようなテストをして、両爪先を結んだ線から目の真下までどれだけ離れているかを計測しました。【おことわり:以下の数値は、ゴルファーの体型によって異なるでしょう】
a) ゆったり立つ姿勢からウェスト(腰の上のくびれ)で背を折り、心持ち顔を上げている場合: 9センチ
b) 上の姿勢から、首と頭を地面と平行にした場合: 12.5センチ
c) 伸ばした背を股関節から折り、心持ち顔を上げている場合: 16.5センチ
d) 伸ばした背を股関節から折り、首と頭を地面と平行にした場合: 19センチ
【参考】「股関節とはどこか?」(tips_110.html)
なんと10センチも差があります。定番の「目をボールの真上にせよ」というtipを単純に実行したつもりでも、体勢によってかなりの違いが出るわけです。
インストラクターTodd Sones(トッド・ソーンズ)は「首を胸に埋めるようなポスチャーはよくない。胸を張って背筋を伸ばし、頭を上げ、誇り高きゴルファーのような姿勢をとれ」と主張します。私がこのポスチャーをとると、ボールを下目遣いで見ることになりました。このポスチャーをしばらく続けた後、私はこれが間違いであることに気づきました。Todd Sonesは「首を胸に埋めるな」と云っているだけで、「顎を上げろ」とまでは云っていなかったのですが、私は“誇り高き男”のように顎を上げた体勢でパットしていたのです。これが間違い。
ツァー・プロには二つの流派があります。一つは上の(a)のようにゆったりと立つスタイルで、この代表はBobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)、Ben Crenshaw(ベン・クレンショー、図左)、Tiger Woods(タイガー・ウッズ)、Ernie Els(アーニィ・エルス)など。もう一つは(d)のように深く屈んで、首・頭を地面と平行にする一派(私の命名ではカジモド派)で、この代表はWalter Hagen(ウォルター・ヘイゲン)、Paul Runyan(ポール・ラニャン)、Arnold Palmer(アーノルド・パーマー)、Nick Fald(ニック・ファルド、図の右)など。
私は(d)のように、伸ばした背を股関節から折り、首と頭を地面と平行にするのが正しいと確信します。なぜ(d)が正しいか?色々文献を当たりましたが、プロたちもインストラクターたちも首の角度については何ら言及しておらず、傍証は得られません。Dave Pelz(デイヴ・ペルツ)も、Hank Haney(ハンク・ヘイニィ)も、Dave Stockton(デイヴ・ストックトン)も、Ray Floyd(レイ・フロイド)も、Tom Watson(トム・ワトスン)も…。首と頭を地面と平行にしてパットしているプロたちの写真はいくらも見つかりますが、なぜそうするかの説明は見当たりませんでした。
目をボールの真上にする効用は、多くの場合、ラインが歪まずに正しく見えることとされています。しかし、私の場合はラインを読んだらボールに描いた直線をそれに合わせてしまうので、アドレス後はもうラインを見る必要はありません(距離の確認だけです)。元検眼医で現在パッティング・インストラクターのDr. Craig Farnsworth(クレイグ・ファーンズワース博士)は、「目をボールの真上にすれば、ヒールやトゥで打つミスを防止出来る」と述べていますが、首を地面と平行にせよとは主張していません。彼の本に登場するモデルの写真は全て(c)の感じです。パッティング・インストラクターのStan Utley(スタン・アトリィ)は(b)のポスチャーを不可とし、(d)に近い体勢を推奨していますが、彼の首と頭は地面と平行ではありません。
頼みの綱としていたカジモド派総本家Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)は「私の頭を落とすセットアップは個人的好みであって、あなたの場合はどこであろうと快適と感じられる場所に位置させればよい」と説明を避けています。理由を明らかにしたくないのでしょうか?
唯一、私が求めていた説明に近いのは『ブッチが飼育した鮫のパッティング』の一節です。「以前のGreg Normanは狭いスタンスで、背を伸ばして立つような姿勢だったが、身体を静止させるための広いスタンスで、腰も膝もかなり曲げるようにさせた。腰を深く折ると目がボールの真上になるし、もっと重要なことには両肘を折って身体につけなくてはならない。以前の彼の両手は、だらんと垂れ下がって身体とのコネクションがなかった。両肘を身体につけることによって、彼は振り子式ストロークの感覚を発展させた」
Jimmy Ballard(ジミィ・バラード)メソッド(tips_151.html)で紹介したように、「左上腕を身体に密着させる」こと(=コネクション)がスウィングを完璧にする重要な要素であり、それはショートゲームにもパッティングにも当てはまるものです。首と頭を地面と平行にする体勢そのものよりも、Butch Harmon(ブッチ・ハーモン)が云うように、それが否応なく両肘を身体につけることを強制させるのがメリットなのかも知れません。 私がこのポスチャーにしてから、1ラウンドにつき最低二回は比較的長いパットが入るようになりました。私のゴルフ仲間は、「一体どんな練習をしたのか?」と尋ねるほどです。しかし、練習法などではなく、ボールの見方一つ、首の角度一つを変えたに過ぎないのです。私の証言だけでこのポスチャーを一考するには不足だというのであれば、最近のMichelle Wie(ミシェル・ウィ)の異様なポスチャーを見て下さい(写真)。彼女は首と頭だけでなく、上半身全体を地面と平行にしています。その体勢で2014年のU.S.オープンに優勝したのですから、「尋常でないポスチャーだから駄目」と文句はつけられないでしょう。首から上だけか、上半身全体かの違いだけで、私とMichelle Wieの考え方は基本的に同じなのです。 (a)と(d)の双方にメイジャー優勝者がいるのですから、どちらが正しいという問題ではないかも知れません。どちらがゴルファーに合っているか、どちらがいい結果を生むかで判断すべきであるとも云えます。(a)でスランプのゴルファーは(d)を、(d)で不調なら(a)を…という風に試すのがいいのでしょう。 この記事は、実は既出の二つのtip「ボールを見る方法」(tips_72.html、2003年)と「パッティングの際の頭の角度」(同左)を統合し、最新の考察も含めて改稿したものです。後者は坂田信弘氏の文体(口調)を真似て書きましたので冗談に過ぎないと受け止められたのではないかと危惧しています。文体模写は絶品だったと自負しておりますが(笑)、実はtipとしてもかなり立派なものだったのです。これが埋もれているのは惜しいので、今回普通の文体でリヴァイヴァルさせました。 |
【参考】
・「ピュアに転がす秘訣」(tips_139.html)
・「熊さん、虎さんの背中」(tips_119.html)
(November 12, 2014、増補May 13, 2015、再増補June 19, 2015、改訂November 26, 2016)
バックスウィングのトップで、クラブシャフトの向きは大まかに云って三つに分かれます。
A) "square"(スクウェア):シャフトがターゲットを指す。【ノーマル】
B) "laid off"(レイド・オフ):シャフトがターゲットの左(上のAよりも左)を指す。
C) "crossing the line"(クロッシング・ザ・ライン):シャフトがターゲットの右を指す。
BとCでは、次のような影響が出ます。
'"Laid off" versus "Crossing the Line"'
by editors of 'Golf Magazine' ('Golf Magazine,' April 1997)
「B: "laid off"(レイド・オフ)
これはアウトサイド・インのインパクトでボールをカットすることになる。もし、クラブフェースがオープンならスライスが出る。フェースがスウィング軌道にスクウェアならプルを生じる。このトップは以下のような動作の結果起るものである。
a) バックスウィングの際に腕でクラブを持ち上げた時。
b) 身体の捻転が短いか制限された時。
c) 左手のグリップがウィーク・グリップである時。
このトップを防ぐには、先ず左手でニュートラル・グリップ(ナックルが少なくとも二つ見える)にする。次に、上体の回転に伴う腕が、テイクアウェイの最初の数センチでターゲットラインに沿うように真っ直ぐ引くこと。そして、上体を可能な限り捻転する。
C: "crossing the line"(クロッシング・ザ・ライン)
これは単なる軽犯罪の一つなのだが、もし野放しにしておくと重罪の原因となる。このトップからだと、インサイドからのインパクトになり易く、いいドローとなるパワーを生じる。だから、多少の"crossing the line"はOKである。しかし、クラブシャフトがターゲットの遥か右を指すようだと、それはあなたが身体を捻転させる代わりに傾斜させてしまっているか、あるいは右肘がトップで非常に高いかどっちかである。
【編註】この代表はFred Couples(フレッド・カプルズ)です。
どちらの場合もダウンスウィングで手打ちを誘発し、スライスやプルとなるアウトサイド・インのクラブヘッド軌道を生む。これを防ぐには、バックスウィングで上体の回転に集中し、右肘を身体に近づけながらトップを形成すること」
(November 15, 2014)
インパクトで左右に捩じれる手首の微細な動きを完封するのは至難の業(わざ)です。私の探求は続きました。私が考えた解決策が三つあります。どれか一つでも役立つ筈ですが、三つ全部一緒に実行すれば万全でしょう。その三つとは、
a) 「排気でパット」(このページ上)
b) 「パッティングにForce(フォース)を使え」
c) 「重力まかせのストローク」(このページ下)
私のゴルフ仲間とプレイしていて2メートルのパットを沈めたりしたら、やんやの喝采が得られます。3メートルのパットに成功しようものなら、奇跡でも目撃したかのように全員呆気に取られ、そして我に返って大騒ぎとなります。「それはバーディか?パーか?」と、興奮冷めやらぬ一人が私に聞きます。私が情けない声音で「ボギーだ」とか「ダボだ」と応えると、一同「はらほれひれはれほ」とズッコケます。
しかし、そんな出来事はさほど珍しくないのです。誰も気づかぬ間にチョロしていたり、木に当てて一打や二打を無駄にした後、「もう駄目だ。今日のラウンドは諦めた」とスコアメーキングへの欲がなくなった時、突如素晴らしいパットが実現しちゃったりします(でも、ボギーですけどね)。何度か続けてそういう体験をした後、私はその冴え渡るパッティングは一体どこからやって来たんだろう?と考えました。
そして思い当たったのが「潜在意識」です。「このバーディ・パットは是が非でも沈めるぞ!」などと決意すると、われわれは完璧なストロークをしようと努力します。緊張して手・腕が強ばり、スムーズに動かなくなります。パット専門インストラクターであるDr. Craig L. Farnsworth(クレイグ・ファーンズワース博士)が提唱するテストがそれを証明しています。博士は「先ず紙にさらさらっとサイン(署名)して下さい。次に、それを見ながらごく正確に複製するつもりで、もう一度書いて下さい」と促します。最初のサインは、われわれがどう書こうかなどと意識することなく、ごく自然に潜在意識によって書かれたサイン。そして、それを真似した二つ目のサインは、最初のサインの筆法を完璧に模倣しようとする努力によって勢いと流麗さが失われ、たどたどしく不自然な出来映えにしかなりません。われわれがバーディ・パットを成功させようとする瞬間に起るのもこれです。理想的かつ完璧なストロークをしようと努力すればするほど、不自然な動作と化してしまうのです。
赤ん坊が水を怖がらずにプールで泳げるのは羊水に浮かんでいた潜在的記憶からで、われわれが20年も自転車に触ってないのに倒れずに乗れるのも潜在意識のお蔭です。また、われわれが文字を書く時、筆順を一画ずつ考えたりすることなく自然に上から下へ、左から右へと順に滑るように書けるのも潜在意識によるもの。食事する際、指遣いを考えたりせずに自在に箸を操れるのも潜在意識の賜物であり、われわれは指で箸をコントロールする努力など決してしません。潜在意識に任せておけば自然で滑らかな動作が遂行出来るのです。いちいち手順やテクニックを考えながらの動作だと、自然に流れるスムーズさは望めません。パッティングも同様。“過度に真剣に努力すること”を放棄し、スコアメーキングを諦めた時、われわれのパッティング動作を司るのも潜在意識であり、それが自分でも驚く目の覚めるようなストロークを実現してくれる立役者なのです。であれば、最初から潜在意識にまかせるべきです。しかし、どうやって?
さまざまな方法を試している時、2メートルぐらいの距離でしたが、ふと両目をつぶってストロークしてみました。手首の角度を変えないように手首だけに神経を集中しながら…。すると、何度やってもボールはカップのド真ん中に向かうではありませんか!驚きました。
目を開いている場合、「アイ=ハンド・コーディネーション」(目と手・腕の協調作業)が災いしているのだと推察します。修得した技法を潜在意識にまかせて素直に遂行すればいいだけなのに、ボールを見ている目の周辺視野にパターヘッドが見えているため、脳は「もっと右に引くべきじゃないか?」とか、「もっと長く引くべきだろう」などと余計なことを考えてしまう。あるいは、パターヘッドをブレイクの頂点に向かわせようとする理性と、脳裏に刻まれているカップ方向にパターヘッドを誘導しようとする衝動とのせめぎ合いが起ってしまう。これでは、潜在意識が書いたサインを克明に真似ようと書く努力をする際と同じ、不自然な動作になります。千々に乱れた心でパターを操作しようとするのでは、免許取り立ての人が運転する車のようにギクシャクした動きになってしまい、スムーズなテンポも、いいリズムも失われてしまいます。
SF映画'Star Wars'『スター・ウォーズ』の若者Luke(ルーク)が初めてライトセーバーの使い方を覚えようとした時、導師Obi-Wan(オビ・ワン)は"Let go of your conscious self and act on instinct."(意識する自己を忘れ、本能に基づいて行動せよ)と云いながらLukeの頭に目隠しつきヘルメットを被せます。呆れるLukeに、Obi-Wanは"Eyes can deceive you. Don't trust them."(目は人を欺く。信用するな)と云い放ちます。Lukeは目に頼らず、心でForce(フォース)【註参照】を使うことを学び始めるのです。
【註】Wikipediaによれば、「Force(フォース)とは目には見えない『エネルギーの流れ』のことで、生まれつきそれに敏感な者はForceを感じ、制御し、操作することが可能である」とされています。Forceにはいくつもの能力がありますが、ここで私は「ライトセーバーでの戦闘や、戦闘機やポッドレーサーといった判断力と反射神経を要する乗り物の操縦にも役立つ」という「視覚に頼らず周囲を感知する」能力について言及しています。【参考】http://ja.wikipedia.org/wiki/フォース_(スター・ウォーズ)
しかし、ジェダイの騎士の末裔でもないわれわれにForceが体得出来るものだろうか?やってみよう。私は本格的に目をつぶっての練習を始めました。次第に五感が鋭敏になり、身体のバランス感覚や筋肉の緊張の度合い、グリップ圧なども感じ取れるようになります。パターヘッドが見えないため、脳も手首をコントロールしようとしません。万歳。「だからって、恐くて本番のラウンドで目をつぶってパットなんか出来ない!」とおっしゃる?私だってそうです。しかし、まあ最後まで聞いて下さい。何回か目をつぶってパットした後、目を開いて普通にパットしました。完璧なストロークによってボールがカップに消えました!
ということは、目をつぶって素振りした時の感覚が直後まで残っているということです。それを素直にリピートすればいい。ラウンドではありきたりの素振りではなく、目をつぶって二回ほど素振りするのです。その直後、目を開いて普通にパットする。やってみて下さい。いいリズムとテンポが残っているでしょう。これはストレート・ストロークでもアーク(円弧)・ストロークでも、どんなメソッドにも効果がある方法です。
Davis Love III(デイヴィス・ラヴ三世)の弟Mark(マーク、アマチュア・ゴルファー)は、目の前のボールを見ずにカップを見ながらパットします。距離の長短にかかわらず、練習だけでなく本番でも。私も試してみたことがありますが、そのいい結果に驚きました。しかし、さすがに本番でやるのは不安で実行していません。彼のメソッドに較べると、目をつぶって素振りするだけなんてのはForceの単なる入門篇に思えますが、手・腕の動きにこだわる束縛から逃れ、自由で自然なストロークを目指そうとする点では一致しており、同じようにいいリズム、テンポ、方向性、勢いが得られます。
それでもまだ他に何か必要なら、「このおれのパットが成功しようがしまいが、中国13億の民にとってはどうでもいいことなのだ」と考えれば、ふっと身体の力が抜け、澄み切った気持ちでストローク出来る筈です。欲を捨て、完璧な動作を目指す努力も捨て去り、潜在意識に全てを委ねるのです。
"May the Force be with you."(フォースがあなたと共にあらんことを)
(November 18, 2014)
以下のはPGAツァーとChampionsツァーから14人のプロが出演して得意の技を披露するヴィデオです。1986年U.S.シニア・オープン優勝者Dale Douglass(デイル・ダグラス)の素晴らしい目玉の処理法。
'PGA Tour Golf TIPS from the Tour' Dale Douglassは二つの目玉のライを用意し、次のように説明します。 「このライはツァー・プロも嫌がるショットで、しかもピンがグリーンの縁近くに切られているととりわけ難しい。ボールの落としどころが狭く、急速に飛び出すボールはオーヴァー・スピンによってランが長くなるからだ。二つのメソッドをお見せしよう。 1) オーソドックスなバンカー・ショット ・ボール位置は右足の近く。ハンドファースト(シャフトがターゲット方向に傾ぐ)で構える。 2) 今度は全く異なるスウィング ・ボールは左足の近く。クラブフェースをオープンにし、シャフトは垂直に構える。 |
後のショットはカップに消え、「これは6メートルのパットをするよりずっと楽だね」と、Dale Douglassがにっこり。見事なデモンストレーションでした。
(November 18, 2014)
Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)が'Golf Digest'『ゴルフダイジェスト』誌に四年間連載したアメコミ風カラー・イラスト満載のインストラクション'Jack Nicklaus' Lesson Tee'(ジャック・ニクラスのレッスン・ティー)の総集編。
'Jack Nicklaus' Lesson Tee'
by Jack Nicklaus with Ken Bowden (Golf Digest/Tennis Inc., 1977)
「ゴルフで最も困難なショットは、完璧にストレートなショットである。それは無数の要素がインパクトで厳密に正しくなければならないので、物理的に達成するのが難しい。またそれはターゲット・エリアを狭めることからも難しい。仮に、あなたがフェアウェイ中央を狙ったもののスライスやフックを打ってしまったとしよう。この場合、あなたはフェアウェイの左右どちらか半分しか使っていないことになる。一方、あなたがフェアウェイ左側を狙って計画的なフェードを打てば、(ちと誇張気味に実施した場合)フェアウェイは丸々全部あなたの自由になるのだ。
私はフェードを好む。何故なら、私にとって距離は大問題ではないからだ。もし私が飛ばない少年だったらドローを好んだことだろう。
私の生涯の師Jack Grout(ジャック・グラウト)の理論の大きな要素はショットの高さであった。スピンの特質からして、高いドローよりは高いフェードの方が簡単である。Jack Groutは、達人とその他を分ける主な要素は、狭いターゲットへと高く上がって軟着陸させるロング・アイアンの能力だと信じていた。Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)は彼好みの模範だった。私も彼に100%賛成だ。
私のフェードの打ち方は最も簡単で単純であると信じている(だからといって、練習しないでマスター出来るわけではないが)。私の方法は、アドレスでターゲットの少し左に身体【編註:足、腰、肩】を揃え、僅かにクラブフェースを開き、普通にスウィングするというものだ。もしこれを練習してもうまくいかなかったら、グリップをウィークにし(=両手を反時計方向に廻して握り)、左を狙い、アドレスでクラブフェースをターゲットにスクウェアにして普通に打てばよい。
私の考えでは、ターゲットラインをアウトサイド・インにカットしてスウィングしてフェードを打とうと試みるのは最悪である。先ず第一に、意図的なアウトサイド・インのスウィングは不自然でわざとらしいし、従って当てにならない。次に、もしあなたが左を狙って、アドレスでオープンなクラブフェースにしてアウトサイド・インのスウィング軌道を混ぜ合わせたら、あなたが大きなスライスを打つのは十中八九確実だからだ。
フェードを身につけようとするゴルファーにとっての大きな危険は、アドレスでどんどんオープンに構えたくなる誘惑が忍び寄って来て、フェードがスライスに化けてしまうことだ。無意識のうちにそうなるのは極めて自然である。私はその傾向に抗するため、練習場でフェードにドローを混ぜて打つ。もしオープン過ぎると感じたら二、三個のフェードを打った後ドローを打つのだ。
私のドローの打ち方はフェード同様簡単だ。少しターゲットの右を狙って【編註:足、腰、肩のアライメントを右に揃えて】、クラブフェースを僅かにクローズにし、普通にスウィングする。ちゃんと練習してもこの方法があなたに役立たない場合は、通常よりグリップをストロングにし(=両手を時計回りに廻して)クラブを握り、(前述のようにターゲットのやや右を狙いつつ)スクウェアなクラブフェースでアドレスすればよい。
コントロールされたドローを身につけようとする際の禁止事項は、意図的にターゲットラインに対してインサイド・アウトにスウィングしようということだ。これは不自然で、従って当てにならない。あなたがこういうことを続けると、とてつもなく大きなフックを打つことになる。
ドローを打つゴルファーが避けるべき落とし穴は、アドレスで遥か右を狙い、あまりにもフラットにスウィングしてフックを製造することだ。これに抗するには、練習でドローにフェードを交えて打つことである。
フェードを打つ場合、インパクトでクラブフェースは非常に微かにクラブヘッド軌道の右を向いていなければならない。ドローを打つ時は、インパクトでクラブフェースは非常に微かにクラブヘッド軌道の左を向いていなければならない。どちらの方法であれ、これらはあなたのインパクトにおける基本的目標である。
私は絶対にデッド・ストレートにボールを打とうとしないし、他のプロ・ツァーの誰しもがそうだ。多分、ツァー・プロの大多数はフル・ショットでドローを打つ。他の人々(特にパワー・ヒッターたち)はフェードを好む。練達のショットメーカーである少数の人々は、状況に応じてドローかフェードを選択する。あなたも真っ直ぐなボールを打とうとするのではなく、腕前のレヴェルに応じてボールの軌道を曲げるやり方を採用すべきだ。
あなたがショットを曲げる決意をしたら、次の事柄について一考されたい。1) フェードはドローよりコントロールし易い。何故ならフェード・ボールにはバックスピンが多くかかり、高く飛び、鋭くは曲がらず、ドローよりはゆっくり着地し急速に停止するからだ。ドローはフェードより距離が出る。何故なら、ドロー・ボールは低く飛び、地面に鋭くバウンドしランが多いからだ。2) フェードがスライスになると飛距離はかなり落ちる。ドローがフックになると、ボールは往々にして剣呑なトラブルに向かって転がって行く。3) フェードを打つには、ドローよりも技術的能力が求められる。4) ゴルフはあなたの自然な傾向に合わせて(逆らってではなく)プレイされる時、最も単純で容易である。
あなたは(ストレートなボールではなく)フェードかドローのどちらかを選ぶべきだが、仕事を難しくしてはならない。調節は必要最小限にし、自然でわざとらしくないスウィングによってソリッドに望み通りの弾道を描いてほしい」
私はこれまでずっとストレートなボール軌道を志向して来ました。Jack Nicklausが以前から「大きいクラブで完璧にストレートなボールが打てたとしたら、私が思うに、それはまぐれだ」と云っていることは充分承知していましたが、私はどちらかと云えば(距離が正確かどうかはともかく)曲がらずに打てることが多かったので、フェードで攻めるというような作為的なことを試みたことはありませんでした(木を迂回するための意図的スライスやフックを別として)。しかし、クラブフェースを僅かにオープン(あるいはクローズ)にするだけというJack Nicklausの弾道制御術がとても簡単そうだったので、ちょっと試してみる気になりました。ある日のラウンドのティー・ショットを必ずフェードかドローどっちかで打ってみました。フェアウェイ左が恐ければそっち側を狙ってフェード、右が恐ければそっち方向を狙ってドロー。
これは確かに簡単。ただ、私の場合、曲がらないで真っ直飛んじゃうことも多かったですが、危険地帯(OBや池など)から10ヤードほど内側を狙っておけば真っ直ぐ飛んでも問題ありません。つまり、最初ボールは危険地帯近くを目掛けるものの、内側にカーヴして危険地帯から遠ざかるという安全牌になります。
Jack Nicklausの云う通り、意図的スライスや意図的フックを打つ時のような(グリップやスタンス、スウィング軌道などの)小細工をする必要はありません(というか、してはいけません。そんなことをすると曲がり過ぎます)。ただし、フェードの時はターゲット方向に振り抜くフィニッシュ、ドローの時は身体の周りで半円を描くようにスウィングすべきです。折角フェースをオープンにしたのにインパクトで手首を返したり、クローズなフェースにしておいてターゲット方向に押し出したりすると、この弾道制御の試みは水泡に帰します。毒薬と解毒剤を一緒に服むようなものですから。
(November 21, 2014)
PGAツアーの若手スターChris Kirk(クリス・カーク)によるアプローチ・ショットのコツ。パンチ(ノックダウン)・ショットの一種ですが、Chris Kirkは一つ大きいクラブを短く持ち、ゆったりスウィングするという、しごく穏やかなメソッドを提唱します。
'Stare down the flag'
by Chris Kirk with Ron Kaspriske ('Golf Digest,' December 2014)
「フェアウェイからピンを狙って7番アイアン以下のクラブが使えるなら、それは非常に望ましい状況である。適切な飛距離を生むのが難しいスタンダードなショート・アイアンのショットの代わりに、私の低い軌道の戦法を試されたい。大抵の場合、これはボールをピン近くに寄せるチャンスを増大させてくれる。低く攻めることによって距離と方向のコントロールも容易になる。PGAツァーでわれわれはこのショットを年がら年中打っているし、覚えるのも簡単である。
ボールをスタンス後方でプレイすればするほど少ないロフトで打てるのだが、ここにも『収穫逓減の法則』(編註:投入量を増やすにつれ収穫の増加量は次第に漸減するという法則)が当てはまる。あまりにも後方にボールを置くとインパクトでフェースをスクウェアにするのに苦労する。あなたは低く真っ直ぐ飛ぶショットを追求していることを忘れないように。ボールはスタンス中央より後ろにしてはいけない。
通常選択するクラブより一つ上のクラブを手に、若干グリップ・ダウンする。例えば残り130ヤードとして、それがあなたの8番アイアンの距離であれば、7番アイアンを選ぶ。短く持つことで飛距離を減らし、少ないロフトによって低い軌道を保つことが出来る。
人はこれをパンチ・ショットとかノックダウンなどと呼ぶかも知れないが、そういう定義の仕方は相応しくない。大きな鍵となる要素は、ボールをハードに打つ感覚ではないということだ。早いスウィング・スピードはバックスピンを増してしまうので、結果的に高い軌道を生じてしまう。
スムーズで、バック、フォワードともに“省略気味の”スウィングをする。私が“省略気味の”と云う場合、手と腕の動きを制限することを意味する。フィニッシュでの私の腰と胸はターゲットを向いているが、クラブが首に巻き付くようなフィニッシュではなく、両手は左肩の上方で停止する程度に省略される。フルに後方へ、フルに前方へと動く身体の回転でショットするように感じること。
これによって真のバーディ・チャンスが増え始めることだろう」
(November 24, 2014)
Tiger Woods(タイガー・ウッズ)の前コーチSean Foley(ショーン・フォリィ)によるtip。
'Making half swings teaches good arm extension'
by Sean Foley ('Golf Digest,' December 2014)
「あなたがアイアン・ショットの質を向上させたいなら、9番アイアンのハーフ・スウィングを練習すべきだ。左手が地面と平行になるところまでバックスウィングし、右手が地面と平行になるところまでフォワードスウィングする。あなたの目標は、バックで左腕を伸ばし続けることと、インパク後まで両腕を伸ばし続けることだ。
こういう風に腕を後方と前方で伸ばすことは、アイアン・プレイの三つの重要な側面を向上させる。
1) 両手でクラブフェースをスクウェアに調節しなければならない必要性を軽減する。
2) クラブは、ターゲット・ラインに対して理想的なインサイド・アウトの軌道を辿る。
3) クラブは、インパクトからその直後にかけて下降する角度で動き、それがソリッドなコンタクトを生む」
3番目の実例としてSean Foleyは、インパク後ボールのターゲット側でディヴォットを取った瞬間の写真を添えています。
(November 24, 2014)
パットした直後、まだボールが転がっている最中というのに、よく「あ、プッシュした!」、「プルしちゃった!」と叫んじゃうことがありますね。そんなつもりはなかったのに、最後の最後の瞬間に自分で自分を裏切って発作的に手首をオープンやクローズにしたことに気づいて挙げる悲痛な叫びです。こういうミスを根絶する方法はないものか。私が考えた解決策が三つあります。どれか一つでも役立つ筈ですし、三つ全部一緒に実行すれば万全でしょう。その三つとは、
a) 「排気でパット」(このページ上)
b) 「パッティングにForce(フォース)を使え」(このページ上)
c) 「重力まかせのストローク」
そもそも、人間がバックストロークからフォロースルーまで全部やろうとするのはおこがましい所業なのではないか?パターを引くのは誰もやってくれないので仕方なくやるとしても、そこから先は重力にまかせることにしたらどうか?これなら、インパクト直前に手首を捻ってプッシュやプルをする恐れもありません。
絨毯上の1メートルの距離で試してみました。パターを後ろに引いたらそこで「ヘッドの戻りを待ち」、ボール方向に戻ろうとする「パターヘッドの重みにまかせてストローク」する。ウッドやアイアンを打つ時ですと「ヘッドの戻りを待ち」、その勢いに自分のパワーを加えるのですが、パッティングでは付加パワーは無し。完全にパターが戻る動きだけに委ね、意識的なフォローも出さない。
絨毯上では驚くほど威力を発揮しました。本物のグリーンに移って試しますと、短い距離なら人間がパターを操るよりずっと見事な方向性が得られます。ヘッドの重みを活かすため、パターは出来るだけ長めに持つ方がいいようです。インパクト前にボールから目を逸らすと肩が動き、それに連れて手首の角度も変わる恐れがあるので、目はボールに釘付けにします。日本のアマチュアの最高峰・中部銀次郎は「アマチュアは1メートルか、せいぜい1ピンの距離を練習すれば凄くうまくなる筈」と云っていますが、その距離なら重力まかせのストロークにおまかせ可能です。
このメソッド、傍目には昔風のパチンと弾(はじ)くパッティングに見えるかも知れませんが、決して弾いているわけではありません。地面に戻りたがるパターの意志(?)にまかせているだけ。除夜の鐘を撞(つ)いたことがありますが、撞木(しゅもく)を一杯に引いたら、ただ放す。自分から撞いたりしない。撞木にまかせる。力を篭めないのが一番いい音色で鐘を鳴らすコツだとお坊さんから伺いました。それと全く同じことです。重力まかせパッティングでも、トップで重力がヘッドを地面に戻す力を感じたらパターを緩めてパターヘッドの自由にさせる感じ。除夜の鐘を撞いたことがない人には、子供が乗ったブランコをぐーんと引っ張った後、パッと離す(押さない)というイメージがいいかも知れません。人間が押す時のようにぎくしゃく揺れず、真っ直ぐに戻るのを覚えておいででしょう。
距離が5メートルに及ぶと常識的バックストロークでは足りず、長めにパターを後退させなければいけません。このエクストラの長さに慣れるまでが大変ですが、慣れたらこっちのものです。何しろ、地球の助け(重力)で方向性は正確無比なのですから。
10メートルも離れたロング・パットともなると、もう重力まかせに出来ません。精一杯長いバックストロークをしてもショートしてしまうので、腕のパワーを足さねばならなくなります。こうなると、確かな方向性はもはや保証されませんので、この重力まかせ方式が有効なのは7メートルぐらいまでではないかと思われます。
この方式を実践する場合、「ポコンと打って止めるだけなんて恥ずかしい」などと考えてはいけません。PGAツァーのTV中継を見ていると、多くのプロたちがこのような「打って止める」式のストロークをしています。自信を持つべきです。インストラクターJim McLean(ジム・マクレイン)も「短いパットでは、打ってからフォローを長く流すように出すPGAツァー・プロなど見る筈がないと断言出来る」と云い、《打って止める》方式を推奨しています。【註】ごく普通のスタイルに見せかけようとフォローを出したりすると、いつものプッシュやプルを引き起こすパッティングに戻ってしまいます。《フォロースルーは忘れる》べし。
【註】「短いパットは打って止めよ」(tips_94.html)
トップからの戻りは重力まかせですから、集中すべきはバックストロークだけ。ゴルファーは真っ直ぐ引くことだけに専念すればいいのです。そのためには長い物差しか棒を床に置き、どうすればストレートに引けるか研究します。私の場合、「はみ出し禁止のテイクアウェイ」と呼んでいるメソッドを採用しています。右図のように両肩の前に黄色い線のようなガラス板があり、左右どちらの肩も黄色線を越えてはいけないという考え方です。バックストロークでは、左肩を垂直に降下させます。Jim McLeanも「シーソーのようにバック・ストロークで左肩が若干下がり、フォワード・ストロークで若干上がる」という方式を推奨しています。これこそ「はみ出し禁止のストローク」の核心です。これで残る問題はバックストロークの長さだけということになります。この長さは実際に練習して勘を養うしかありません。
(November 27, 2014)
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