下記の本は、2002年のPGA選手権優勝者Rich Beem(リッチ・ビーム)の出世噺ですが、発行年で分るようにメイジャーであるPGA選手権優勝については書かれていません。その二年前、新人としてPGAツァーに参加し、1999年のKemper Open(ケンパー・オープン)に優勝するまでの物語です。そして、奇妙なことに主人公Rich Beemと同等に(あるいはそれ以上に)、彼のキャディだったSteve Duplantis(スティーヴ・デュプランティス)の私生活についてかなり克明で赤裸々な描写がなされています。この本からキャディに関する裏話を拾ってみました。
’Bud, Sweat, & Tees'
by Alan Shipnuck (Simon & Schuster, 2001, $24.00)
・カナダ生まれのSteve Duplantisは(カナダ生まれだからフランス系の苗字なんですね)、ルーキーだったJim Furyk(ジム・フューリク)のキャディとなり、Jim Furykがスター・プレイヤーとなった1999年まで仲良く全米を経巡りました(全英オープンも含む)。
キャディの三原則と云われる、次のような文句があります。
1. "Show up"(トーナメント会場に間違いなく定刻に現れること)
2. "Keep up"(プロに遅れないでついて歩くこと)
3. "Shut up"(余計な口を叩かないこと)
Steve Duplantisは遅刻常習犯で10分や20分の遅刻はざらでした。女出入りが多かったことと、前妻との間に生まれた幼い娘(二歳未満)を抱えていたため、彼の私生活が多忙を極めていたせいもあります。Jim Furykは「身辺整理のためひと月ぐらい仕事を休んだらどうか?」と提案しましたが、現金収入が途絶えるのを恐れたSteve Duplantisは全く休みませんでした。
Bay Hill Invitational(ベイヒル招待)トーナメントの会場はSteve Duplantisの自宅から80キロのところにあり(都心から大月の距離に相当)、毎日車で通える距離でした。気楽な自宅で寛げるのにわざわざホテルに泊まる馬鹿はいません。当然、Steve Duplantisも喜んで自宅に帰りました。トーナメント初日、Steve Duplantisが会場に向かおうとした時、高速道路でタンカー・トラックが横転し、高速道路は二時間閉鎖されてしまいました。彼はJim Furykに何度も携帯電話し事情を説明しました。やっと彼が会場に着いた時、Jim Furykは臨時雇いのキャディにバッグを担がせ、No.8のグリーン近くでプレイしていました。Steve Duplantisは、バッグを奪うようにして交代しました。Jim Furykは何も云わず、ラウンド終了後になって、Steve Duplantisに馘を宣告しました。
私はSteve Duplantisが馘になったのは前夜飲み過ぎたか、ご乱行のせいか、ちゃらんぽらんな性格のせいのどれかだと思い込んでいました。事実は違うのでした。いつもと異なり、ちゃんと胸を張って云える理由があったのです。Jim FurykはSteve Duplantisがいいキャディであることは認めつつも、遅刻常習犯としてのSteve Duplantisに我慢出来なかったのでしょう。
・Jim Furykがスター・プレイヤーになった頃からキャディ志願者が急増しました。大物のバッグを担げば莫大な報酬が得られることが知れ渡ったからです。弁護士や教師、警官などの職を辞めてキャディになろうという人間がうじゃうじゃ群れ集まりました。Jim Furykの携帯電話には、Steve Duplantisを押しのけて雇われようという人間たちのメッセージが溢れ返っていました。Steve Duplantisがひと月たりともJim Furykの傍を離れたがらなかったのは、いつ自分の職を奪われるか分らないという心配もあったからでしょう。
・1999年は他のキャディにとっても御難の年でした。前年にメイジャー二冠を果たしたMark O'Meara(マーク・オメラ)は、長い間の相棒Jerry Higginbotham(ジェリィ・ヒギンボサム)を馘にしました。理由は、もっと安い歩合のキャディを雇うためでした(その後、Mark O'Mearaの優勝は皆無)。Earnie Els(アーニィ・エルス)もJesper Parnavik(ヤスパー・パーナヴィク)もキャディを解雇しました。
・Tiger Woods(タイガー・ウッズ)のキャディMike "Fluff" Cowan(マイク “フラッフ” カウアン)も御難に遭った一人。彼はTiger Woodsの人気に相乗りして有名人となり、いくつものTV-CMに出演し、並のプロ・ゴルファーよりも多くのファンにサインし、DVDまで出すほどになりました。Tiger Woodsは観衆が自分にではなくキャディに声援を送るのを苦々しく思っていました。'Golf Digest'誌の1999年1月号に、有名キャディ四人による座談会が掲載され、その中でMike "Fluff" Cowanは驚くほど率直に彼の報酬について語りました。週給$1,000、予選を通過したら8%増、トップ10に入ったら9%増、優勝したら10%増し。Tiger Woodsはこの雇用関係の秘密の暴露にむっとしていました。L.A. Open(L.A.オープン)の最終ラウンドが始まる前に、Tiger Woodsは翌週のMatch Play Championship(マップレイ選手権)では彼の大学の同窓生の医学生に(学業資金援助のため)キャディをさせると告げました。そのトーナメントは記録破りの賞金額が設定されていてMike "Fluff" Cowanも楽しみにしていただけに、つま弾きにされると知った彼はむかっ腹を立てました。気まずい雰囲気の沈黙が支配したラウンドの終盤、Tiger Woodsは最終ホールでバーディならプレイオフというチャンス。無視出来ぬ風が吹き渡るフェアウェイから中間クラブの距離を残していたTiger Woodsは、その日初めてMike "Fluff" Cowanの意見を求めました。Mike "Fluff" Cowanはもごもごと「どのクラブがいいか分らない」と答えました。それはタイミングから云って、ボスに対する最悪の返事でした。Tiger Woodsはボールをスライスさせ、アイス・クリーム売り子の傍に着地させました。それにてMike "Fluff" Cowanは一巻の終わりとなりました。
この場合も、私はMike "Fluff" Cowanが解雇されたのは給料についての詳細の暴露(雑誌記事)が原因だとばかり思っていましたが(それが最重要な理由だったでしょうが)、人知れぬ第二幕があったわけです。Mike "Fluff" Cowanは、Steve Duplantisを解雇したばかりのJim Furykにすぐさま雇われてセーフ。
・Jim Furykに解雇され五週間仕事にあぶれていたSteve Duplantisは、古い顔なじみのプロに雇われてNew Orleans Open(ニューオーリンズ・オープン)で仕事をします。初日、二日目、同伴プロは新人のRich Beemでした。Rich Beemに常雇いのキャディがいないことを知ったSteve Duplantisは互いに電話番号を交換し合いました。
・Rich Beemにはヤーデージに関して完全に信頼出来るキャディが必要でした。彼がSteve Duplantisに連絡を取ろうとすると、その電話番号は間違っていたことが分ります。Kemper Open会場に出発予定の二日前、Rich Beemの電話が鳴りました。Steve Duplantisからでした。Rich Beemは大喜び。Steve Duplantisがついていてくれれば予選落ちなど心配せず、25位以内に入ることも夢ではないと心を躍らせます。実際には、彼は初日からトップに立ち、Steve Duplantisの助言と励ましによって、最終日まで優勝街道を驀進したのでした。
Steve Duplantisは、2008年にカリフォーニア州でタクシーにはねられて亡くなりました。その週のBuick Invitational(ビュイック招待)では、多くのキャディ仲間がSteve Duplantis追悼のリボンを着用していました。
【おことわり】画像はmedia.zuza.comにリンクして表示させて頂いています。
(November 06 2013、増補December 18, 2016)
著者Cary Middlecoff(ケアリ・ミドルコフ、1928〜1998)は、U.S.オープン二回、the Masters(マスターズ)に一回、生涯に計41回のPGAツァー優勝を達成したプロ。
'Advanced Golf'
by Cary Middlecoff (Burford Books, 1957, $16.95)
「先ず第一に快適さと動きの自由を伴ったものを着ることだ。それには、分厚いものを着るより、二つかそれ以上を重ね着するのが望ましい。携帯用カイロを使うと非常に助かる。
わたしの作戦の一つは、余分の5〜6個のボールを身につけておくことだ。【編註:多分キャディのポケットに入っているのでしょう】ゴルフ・ボールは30°の温度下で打たれた時に最も遠くに飛び、よく反応することが証明されている。そういう風に作られているのだ。【編註:ラウンド中にカイロでボールを温めると競技失格です。ラウンド直前まで使用するのは問題なし】
もし地面が凍っていたら、それは焼け付くような真夏の地面とそっくりの状態になる。主な違いはグリーンが遅めになることだ。凍った地面でアイアン・ショットをする時、ディヴォットを取ろうとするのは賢明ではない。堅い地面はあなたのクラブを跳ね返し、貧弱なショットと手に刺すような痛みを残す結果となりがちである。
だから、掃くような軌道でボールを地面からクリーンに摘み取るようにすべきだ。それにはボール位置を通常よりやや後方(右爪先)にする。
凍てついた地面は、実質的にボールを停止させる技を排除してしまう。ぽこんぽこん弾み、焼け付いた地面のようにごろんごろん転がる。
多少凍ったグリーンはパッティングを困難にする。ボールは芝の間を潜り抜けるのでなく、芝の上を転がるのだと覚えておくこと、だから、あなたが目にする最高のブレイクを見積もるべし」
【おことわり】画像はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。
(November 12, 2013)
「飛距離は内蔵されている」(tips_126.html、2010年5月13日)という記事に書いたように、「クラブヘッドのロフトとフェースの反発力によって、設計時点で飛距離は決まっている。ゴルファーは力む必要はなく、ポカーン!と弾けばいいのです、下半身のリードで」。そうなのです。手や腕の力で飛ばそうと思ってはいけないのです。
特にパー3では手や腕を使ってはいけないと悟りました。ニアピン賞があってもなくても、パー3ではニアピンにつけなくてはならない。ごく小さなターゲットを目標にするのですからベラボーに長いパットと同じだと考えるべきです。となると、インパクトで是が非でもクラブフェースをスクウェアに戻さなくてはなりません。パッティングで手や手首を多用してはいけないように、パー3のティー・ショットでも手・手首に出しゃばられては困るのです。パッティングでは肩主導でストロークしますが、パー3のティー・ショットでは下半身主導で打ちます。足腰・肩に引っ張られて落下するクラブだとスクウェアなクラブフェースが保たれ、方向性は抜群です。
「腕・手を使わないとグリーンに届かない」なんて云わないで下さい。U.S.オープンじゃあるまいし、われわれがプレイするコースで、ドライヴァーで届かないパー3は普通ないでしょう。飛ぶ人の真似をしてアイアンを使うから届かないのであって、届かなければ素直にドライヴァー、3番ウッド、ハイブリッドなどを使うべきなのです。腕・手を使わないスウィングで届くクラブを見つけるべきです。私が通っている市営ゴルフ場のNo.7(パー3)は172ヤードで、アイアンを使う人もいますが、私はここで3番ウッドを1インチ(約2.5センチ)短く持って打ちます。先日は2メートルほどピンの上につけて1パット、バーディをせしめました。
いつもですと、つい手・腕に力が入り、プルしたりプッシュしたりするのですが、この日は「クラブのスプリング効果を信じよう」と決意し、下半身のリードで上半身を振りほどくだけのダウンスウィングをしたのです。この考えは、ハイブリッドが必要なパー3やアイアンで打てるパー3にも適用すべきだと思いました。
残念ですが、パー4やパー5のティー・ショットでは手首・腕も使わなくてはなりません。90歳の老人のゴルフ・スウィングのようにポコーン!と打つだけでは、クラブフェースが凹まず最大のスプリング効果が得られないからです。
(December 06, 2013)
これはFred Couples(フレッド・カプルズ)によるメンタルtip。
'Total Shotmaking'
by Fred Couples with John Andrisani (HarperPerennial, 1994, $15.00)
「マスコミは未だに、私をベーブ・ルース以来の最も気楽なスポーツマンと見なしている。それは批判と考えるべきなのだろうが、私は褒め言葉と思い込むことにしている。なぜなら、コースで気楽でいられることは、私が一貫していいスコアを出せる秘訣の一つだからだ。
私は、あなたに'Summertime'【編註:ミュージカル『ポギーとベス』の中の一曲】を口笛で吹きながらプレイせよと云っているのではない。だが、あなたが気楽にしていられるならリラックス出来、リラックスしていられるならもっと自由にスウィングが可能だと確信している。それら全ては、あなたがドライヴァーで最高のクラブヘッド・スピードを生み出せることを意味している。アイアンでは、一般ゴルファーに多く共通する過ちの一つである『ショットの舵を取る』悪弊が減少するということだ。
多くのアマチュアはゴルフを死活にかかわる問題のように考え、まるで全盛時のBen Hogan(ベン・ホーガン)のように真剣に集中しようとする。そんな風に考える一般ゴルファーたちが、No.1からNo.18まで極度の集中の殻にこもってプレイすると、大体においてガチガチに緊張しがちだ。その結果、彼らのスウィングは滑らかに流れることが出来ず、そのショットはフェアウェイや旗竿を見出すことが出来ない。さらに悪いことには、こういうゴルファーはたった1ホールの躓きでくよくよし、その後のラウンド(丸一日!)をメンタル的に台無しにしてしまう」
Fred Couplesの指摘は、ことに日本のゴルファー(私当人も含めて)に当てはまるのではないでしょうか?。われわれは吉川英治が描いた『宮本武蔵』の影響や、剣道、柔道、柔術、空手などに由来する求道精神が旺盛で、スポーツを楽しむよりは技を磨くことに傾斜しがちす。ゴルフで技が上達したかどうかを計るのは結果(スコア)であり、その結果ばかりを追い求め、プロセス(ゲーム)を楽しむことを忘れてしまう。
以下は、精神一到求道派と目されるBen Hoganによる、意外や意外のリラックスの勧め。
'The Best Advice Ever for Golfers'
edited by Robert McCord (Andrews McMeal, 2001, $12.95)
「なぜ、リラックスすることがかくも重要なのか?痛みを予感する時、なぜあなたは歯を食いしばり、背を丸め、身体をコチコチにして緊張するのか考えてみなさい。その理由は、そうすればあなたは痛みを感じる感覚を殺すことが出来るだろうと願うからだ。リラックスした状態だと、あまりにも激しく痛みを感じるに違いないと信じているからだ。逆にゴルフでは感覚の鋭敏さが望まれる。だからプロたちはリラクセーションに重きを置くのだ」
次はスポーツ心理学者Gregg M. Steinberg(グレッグ・M・スタインバーグ)博士による「楽しむこと」の勧め。
'MentalRules for Golf'
by Gregg M. Steinberg, Ph.D. (TowleHouse, 2003, $12.95)
「アマチュアは一日を楽しむことを忘れがちだ。彼らはいいスコアを作ることに夢中で、お粗末なプレイをしたりハンデに相応しいスコアにならないと楽しむことが出来ない。忘れてはいけない、ハンデは20ラウンドの中の10ラウンドに基づいて計算されるのだということを。ハンデ通りのスコアにならなければ楽しめないというのであれば、常に全ラウンド合計の1/2しか楽しめないということになるではないか」
(December 27, 2013)
以下の名言集は当サイトが独自に収集・翻訳したものです。無断転載・引用を禁じます。
「バックスウィングでは何も打たないんだから、慌ててはいけない」
Doug Ford(ダグ・フォード)
「可能だと思えば可能、不可能だと思えば不可能。あなたは常に正しい」
Henry Ford I(ヘンリィ・フォード一世、自動車王)
「どのゴルファーにも繰り返し蘇って来る慢性のミスがあり、それは指紋のように個人的なものである」
Hank Haney(ハンク・ヘイニィ)
「私は"bad looser"(潔く負けを認めない者)だ。これまで常にそうだった。私は敗北が嫌いなのだ。だから勝つように努力している」
Colin Montgomerie(コリン・モンガメリ、スコットランドのプロ)
「様々なショットを全て練習するには、日照時間が少な過ぎる」
Ben Hogan(ベン・ホーガン、彼は一日八時間練習した)
「二つのスウィング・キイ(留意事項)は多過ぎる。一つならOK。ゼロがベスト」
Tom Kite(トム・カイト)
「お好きなワルツをハミングし、その拍子に合わせてスウィングせよ」
Sam Snead(サム・スニード)
「私はコースでしょっちゅうハミングするが、ある特定の歌が頭から離れない傾向がある。"Moon River"(ムーン・リヴァー)では66だった」
Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス、右図)
「ゴルフは【強靭な身体による】粗野な力強さではなく、【柔軟な身体による】速さのゲームである」
Johnny Miller(ジョニィ・ミラー、彼は自分の牧場を作るための力仕事で筋肉をつけ過ぎて、トップから転落した)
「ゴルフは塀を作るように構築すべきものだ、一度に一個のブロックを積み上げながら」
Tony Lema(トニィ・リマ)
「ゴルフ・ショットを決定するきわめて重要な法則は頭を動かすことで、それは身体の動作を台無しにする」
Tommy Armour(トミィ・アーマー)
「スコアを良くしたい女性は攻撃的ゴルフをすべきだ。ボールをぶっ叩け!大嫌いな奴の名前をボールに書けば、目一杯引っぱたける」
Nancy Lopez(ナンシイ・ロペス)
(January 01, 2014)
以下はBen Hogan(ベン・ホーガン)の本の序文の一部。励ましの言葉でもあります。
'Ben Hogan's Power Golf'
by Ben Hogan (Pocket Books, 1948, $6.50)
「ゴルフ・スコアは相対的なものである。私の見解では、偉大なラウンドというものはツァー・プロや若手の一流アマによって作られるものではなく、85〜90で廻る人々によるものだ。これは誇張した発言に思えるかも知れないが、私はそれが真実であると確信している。その理由を明らかにしよう。
プロにとって公式競技の際の62は最少のスコアであり【編註:1948年当時の話】、私も二回、Walter Hagen(ウォルター・ヘイゲン)やByron Nelson(バイロン・ネルスン)など数人もその記録を持っている。そのコースの難易度がどうあれ、62は偉大なスコアである。だが、私にとっては85〜90で廻る人々が75で廻れば、それはプロの62よりも偉大なスコアである。その75はプロにとっての59に匹敵する。これは公平な比較である。何故なら、85〜90プレイヤーには、大概のコースでグリーンを二打で捉えるのは不可能だからだ。
彼らがグリーンに二打で乗せようとするとウッドを使わねばならないが、われわれプロにはアイアンで充分だ。ウッドでグリーンを狙うのは、アイアンで打つのに較べると段違いに的が小さい。85〜90プレイヤーがウッドでグリーンに向かって打ち、ボールをグリーンに留めるのはほとんど不可能だ。一方、プロはショート・アイアンでボールにかなりのスピンをかけ、ほぼ望んだ場所でボールを止めることが出来る。
85〜90プレイヤーは、幸運が味方してくれてストレートなショットが打てればボールはグリーンに留まってくれるだろうと願う。これはまたもや不可能な願いだ。もし、ストレートなショットを打ったとしたら、ウッドで打たれたボールはかなりの速度を持っており、グリーンでブレーキがかかることはまずない。われわれプロは、おかれた状況に合わせて高いボールか低いボールをかなりバックスピンをかけながら打つ。
多くのコースは、85〜90プレイヤーのティー・ショットをバンカーの罠に陥れるように設計されている。プロはバンカーを飛び越えるショットを打てるので、バンカーなど全く意に介さない。
85で廻る人々に脱帽である。誰かがある時、『ゴルファーと下手っぴとを分ける境界は90だ』と云った。それが正しければ、ゴルフをする人の15〜20%だけが自分をゴルファーだと明言出来ることになる。幸い、そのパーセンテージはもっと高い。あなたにゴルフを学ぼうという意図があるなら、スタートを切る材料を持っているわけだ。もし問題を抱えているなら、この本の中にその答えを見つけることだろう」
(January 01, 2014)
メイジャーに六勝し、LPGAツァーで計34勝を挙げたBetsy King(ベッツィ・キング)は、名誉の殿堂入りがかかったトーナメントの最終日のNo.1ティーで、たった40ヤード前進というミスを犯したそうです。
PGA選手権(メイジャー)に優勝した直後のトーナメントのNo.1ティーで、Jeff Sluman(ジェフ・スルーマン)は自分に「ミスターPGAチャンピオンさんよ、このショットをとちっちゃ駄目だぜ」と囁いて30ヤードのチョロを放ったそうです。
ツァー・プロでさえビビるNo.1のティー・ショット。われわれがカーッとなり、ボールも見ずにスウィングしてしまうのもむべなるかな。空振りしないで済めば御の字という状況。この状況を打開する方策について、スポーツ・ライターMichael Clarkson(マイケル・クラークスン)はスポーツ心理学者Dr. Bee Epstein-Shepherd(ビー・エプスタイン=シェパード博士)の文章を引用しています。
'Pressure Golf' 「Dr. Bee Epstein-Shepherdは、生徒がその日最初のショットをする前に、潜在意識に指示を与えるメンタル・リハーサルを行えと説く。『靴紐を結ぶ時、黙っていても潜在意識があなたの指の筋肉を動かして蝶結びを作る。あなたが長くストレートなボールを打ちたい場合も、潜在意識がそれを実現しようとする。もしあなたがトップだのシャンクだのを脳裏に描いていたとしたら、潜在意識に誤った指示を与えていることになり、潜在意識はあなたが思い描いたもの【編註:トップやシャンク】を実現しようと努めるだろう。靴紐を意識的に結ぼうとしたことがありますか?そんなことを考えない方がコトは早く運ぶ。あなたが恐れたり不安に駆られたり、動作そのものについて考えたりすると、潜在意識は何をどうしてよいか途方に暮れ、あなたの筋肉は緊張し、ショットはまともじゃなくなってしまう』 Dr. Bee Epstein-Shepherdは自分の番が来るまで、呼吸によってリラックスすることを勧める。先ずゆっくり、穏やかに、深く息を吸い、三つ数える、それから五つ数えながらゆっくり息を吐く。『ゆっくり呼吸するにつれあなたの筋肉はリラックスし、数を数えることに集中すると不安は頭から消え去る。リラックスした心とすっきりした頭は、あなたのベスト・ショットを生み出す。不安になった時はいつでも呼吸運動をすべきタイミングである』 視覚化はあなたのプレショット・ルーティーンの一部であるべきだ。『どこのコースの経験でも構わないから過去に放った素晴らしいティー・ショットを視覚化しなさい』とインストラクターJim McLean(ジム・マクレイン)は云う。『本気で集中する。そうすれば、あなたはうまく打てた正確なティー・ショットのイメージを鮮明に思い浮かべ、同じことを何度でも繰り返すことが出来る。不安は軽くなり、身体はリラックスし始め、理想的な加速するスウィングをする用意が整う』 最初のショットに過度のプレッシャーを与える問題点の別の側面は、多難なスタートを切ると、その日のラウンドをおしゃかにするだろうとあなたが思い込むかも知れないことだ。現実には、それはただの1ショットに過ぎないのだ。…あなたがそれをただの1ショットで済ませられるなら」 最初に例を引いたBetsy Kingですが、最終日No.1ティーからのミスにもかかわらず、二打差で優勝しました。 |
(January 04, 2014)
クラブ・プロPete Coe(ピート・コウ)の体験と示唆。
'Be the Ball'
by Charlie Jones and Kim Doren (Andrew McMeel Publishing, 2000, $14.95)
「私がこれまでで最悪のウェッジ・プレイヤーを教えていた時のことだ。彼はボールの後ろでダフるのに疲れると、インパクトで立ち上がってトップし始めた。彼は絶対に正しくボールを打てなかった。彼にはテイクアウェイすることさえ難しくなった。
彼は非常にいい素振りをするものの、いったんボールがそこにあると打つことが出来なかった。そこでわれわれは目を閉じてボールを打つことを始めた(彼だけでなく、私も同じことをした)。彼が楽にスウィング出来るよう、ボールをティーアップさせ、ピッチングウェッジを目を閉じて打たせた。
あなたがこれを試したことがないなら、これはスウィングする際のバランス感覚を磨く最高のドリルである。あなたが踵で立っているのか爪先なのか感じとれないなら、目を閉じて二、三回スウィングしてみるべきだ。
誰でも口にする『スウィングする時頭を下げ続けろ』というのはナンセンスだ。ボールを睨みつける必要はない。何故なら、目隠ししてたってボールを打てるからだ。試してみなさい」
(January 07, 2014)
スポーツ心理学者Dr. Guy S. Fasciana(ガイ・S・ファスキアナ博士)による予防医学。
'Golf's Mental Magic'
by Dr. Guy S. Fasciana (Bob Adams, Inc., 1994, $12.95)
「数年前LPGAツァー・プロの一人が、集中力を良くしたいと私に助けを求めて来た。彼女は『No.14かNo.15で集中力を失ってしまうんです』と云った。それは頻繁に起るものの、常にそうなる訳ではないということだった。
私は彼女に一連のリストと日記を書く宿題を与えた。彼女の目標、望ましいプレイの質、抱えている問題点、日々のプレイ(パートナー、集中心の欠如の有無)、食事(朝食、昼食、夕食、スナック)、家族や友人との問題の有無…など。
彼女は翌週宿題をこなして私のところへやって来た。彼女は五ラウンドし、集中力に欠けた日が二回あったが、個人的生活に問題はなく、集中出来なかった原因については見当もつかないと述べた。私は食事のリストを見せて貰った。
曜日 | 朝食 | 集中力 |
---|---|---|
土曜日 | トースト、ジュース、玉子 | |
日曜日 | トースト、ジュース、玉子 | |
火曜日 | チョコレート・ドーナツ | |
水曜日 | トースト、ジュース、玉子 | |
木曜日 | チョコレート・ドーナツ |
私は彼女に、チョコレートで覆われたドーナツと集中の欠如との関連について考えたかどうか尋ねた。彼女に栄養学の知識はあまりなく、関連については分らないと答えた。
私は説明した。高濃度の単糖類(蜂蜜、果汁など)は血糖値を上げパフォーマンスを向上させるが、数時間後にその血糖値を下げ、プレイヤーをだらけさせる。その時間がたまたまNo.14かNo.15になったのだろう。低い血糖値は大体において集中力を低下させるものだ…と。彼女は私の話を面白がったが、納得したわけではなかった。私は彼女にある実験を頼んだ。朝食にオートミールや小麦など炭水化物の複合物や、シリアル(温かくても冷たくても可)、調理済みの炭水化物(イングリッシュ・マフィンやベーグル、トーストなど)だけ食べ、集中力の度合いを記した日記をつけることを。
この血糖値の件については栄養学会誌や心理学会誌、会社組織の文献などでよく論じられている事実である。経営者たちは、従業員たちが糖分の多い朝食を摂ると生産性が落ちることを知っている。従業員たちはいつも10時30分にコーヒーとドーナツのテーブルに群がり、エネルギーをどっと高めるが、午後3時頃になると常にだらけてしまう。
翌週、LPGAのプロは、集中力に何の問題もなかったと報告した。彼女は栄養学とパフォーマンスとの関係について興味を持ち、さらに運動の効果についても知りたがった。
もちろん、これは単純なケースだが、健康的な食事を始めることはスポーツの全ての要素(集中力、自信、忍耐力、エネルギー、考え方、メンタルな態度など)を向上させる。あなたが一貫して上手くプレイしたいなら、健康的なライフスタイル、特に健康的な食事を心掛ける必要がある。
糖分だけでなくアルコール分も避けるべきだ。あるアマチュア・ゴルファーが『アウトではいいゴルフが出来るのに、インではお粗末になる』と相談に来た。私は彼がインにさしかかる際ビールを呑むことを突き止めた。彼にビールをやめたらどうなるか様子を見よと示唆したところ、彼はビールを抜くとインでもアウトと同じようにいいプレイが出来ることを発見した。しかし、彼のゴルフはリラックスすることと付き合いのためなので、彼は上達よりビールの楽しみを選ぶ決意をしたのだった」
【参考】
・「80を切る食事」(tips_61.html)
・「シニアの栄養補給術」(tips_134.html)
(January 10, 2014)
伝説的インストラクターHarvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)のメンタルtip。
'For All Who Love the Game' 「次のようなことが何度あったろう? ・ティーアップされた理想的なライ。にもかかわらず、あなたは醜悪で悲惨なショットを打ってしまう。 実はそれは奇跡でも何でもなく、世界のどこにでもある単純なことなのだ。ボールがティーの上にある場合、あなたの心はバックスウィングのこと、捻転、グリップ、体重移動その他のありとあらゆる想念で一杯になる。石の間にボールがある場合、あなたが考える全てはボールを打つことだ。クリーンに打たなければそのショットは失敗だし、クラブが折れさえしかねない。だから、あなたは他の細かいことは全て心から追い出し、ボールを打つことだけに専念する。あなたは金槌で釘を打つ時のようにボールを打つことに集中するのだ。 |
ティー・グラウンドでも、ショットに災いをもたらすであろう様々なことに気を揉むのでなく、ターゲットをデッドに狙い、ボールをクリーンでしかもハードに打つべきだ」
(January 19, 2014)
Jim Hardy(ジム・ハーディ)やJohn Jacobs(ジョン・ジェイコブズ)といった有名インストラクターの下で修行したことのあるHank Haney(ハンク・ヘイニィ)による、二つのスウィング理論と流派の裏面史。
'The Only Golf Instruction You'll Ever Need'
by Hank Haney with John Haggan (HarperCollins, 1999, $25.00)
「人間が広野で棒を振り回し、小ちゃな白い球を手際よく打つ方法を見つけ出そうとして以来、その目的をどう達成するかについては意見の相違があった。その議論の中で、少なくともフルスウィングに関する限り二つの陣営が発展を遂げた。一つは、身体を正しく回転させれば手と腕も正しく振られるというもの、もう一つは反対で、手と腕が正しく振られれば身体も正しく回転するというものだ。
実際、今日のインストラクションであなたが耳にするのも「身体vs.手・腕」である。私にとってそれは、単に「フック治療vs.スライス治療」である。Ben Hogan(ベン・ホーガン)の'Five Lessons'『モダン・ゴルフ』は実は『フックを打たない方法』という題が正しく、この本をスライサーに与えたらスライスが悪化するだけである。ゴルフ・インストラクションの潮流は長続きしない。「身体」派の教師たちは、そのメリットを過去50年も唱えて来た。ゲームが進化するにつれ、インストラクションと生徒の学び方も変化する。
例えば25年前、Bob Toski(ボブ・トスキ)、John Jacobs、Jim Flick(ジム・フリック)らに率いられたほとんどの教師たちは、「手と腕」派だった。これらの人々の理論は、一般大衆(ほとんどがスライサー)に教えるゴルフ・スクールから発展したものだった。
【編註】'Golf Digest'誌が1991年にリリースしたヴィデオ、Bob Toski主演の'How to Get Distance & Accuracy'(飛距離と正確さを得る方法)というVHSを見てみましたが、Bob Toskiは開口一番「成功の鍵があるとすれば、こうです。手と腕に身体の回転軸を作らせなさい。クラブを振り、身体にそのスウィングを引き継がせるのです。スウィングを過度な身体の動きで作り出そうとしてはいけません。そんなことをすると、非暴力のゲームが暴力的なものに変貌してしまいます」と云っていました。まさしく「手と腕」派の言ですね。
その後、状況は一変した。主にDavid Leadbetter(デイヴィッド・レッドベター)とNick Faldo(ニック・ファルド)のコラボレーションの影響で、1980年代中頃に「身体」理論が大流行した。それは数年間続いた。
現在、一般ゴルファーを相手にしているインストラクターたちは主流ではない。最も影響力のある教師たちは、もはやゴルフ・スクールでは働いていない。最も目立つインストラクターたちはツァー・プロを教えており、その方法がスウィング指導法に影響を与えている。
大まかに云ってツァー・プロたちは卓越した手の持ち主である。彼らはスウィングの間に一般ゴルファーよりずっと巧く手を用いる。それが、ほぼ全てのすぐれたゴルファーがキャリアのどこかの時点でフックに悩む理由である。お粗末なゴルファーには決してそんな悩みは起きない。彼らはほどんどフックしない。彼らはプルを打ってそれをフックと呼ぶが、彼らのボールは右にスタートして左へ曲がるフック軌道ではない。彼らには真のフックは打てないのだ。
すぐれたプレイヤーはフックと苦闘するが、それは彼らが素早い手を持っているからだ。否定する人もいるだろうが、彼らの全てがスウィングの底辺で手を多用する。だから、彼らの思考の中では逆に「身体」の動きを強調するのだ。なぜ?彼らは手のアクションを考える必要がないからだ。彼らは既に素晴らしい手を持っているので、彼らの焦点は身体に合わされる。彼らは正しいタイミングを得るためと、スウィングから手の存在を無にする感覚を得るため、身体と手・腕とを仲良くさせる必要があると感じている。
彼らがスウィングから手の存在を取り去った感覚を得たとしても、ツァー・プロは依然として一般ゴルファーよりずっと多く手を活用するが、彼らは手と腕の動きではなく身体で打っていると感じたがっている。大きい筋肉の方が小さな筋肉よりプレッシャー下ではずっと効果的であるという考え方は、プロが求めている感覚と合致するのだ。
それはそれで結構。大きい筋肉を強調するのはツァー・プロには適しているだろうが、それはハンデ15のスライサーに適しているとは云い難い。身体の動きを強調すると、一般ゴルファーのスライスを助長するだけになるだろう。彼にはもっと手と腕のスウィングが必要なのに。
「手と腕」派の教師は、「身体」派よりずっと長くお山の大将だった。彼らは概して一般大衆を教えることに専念していたからで、その一般大衆はスライサーだ。実際、ゴルファーの90%以上はスライスする。彼らがスライスするのは、彼らにはすぐれた手と腕のアクションが出来ないからだ。彼らは大きな筋肉を過度に用い、小さな筋肉を充分に使わない。彼らは肩で打ち、身体で打つ。彼らはしばしばボールをを打つためにクラブを使う以外のことを何でもする。不幸にも、彼らはスウィングに注ぎ込んだ偉大な努力を、偉大なパワーに変換出来ない。
あなたが手と腕で打つ時、手はゴルフ・スウィングの主たるパワー源に他ならない。スウィングに関与する部品のうち、手は身体の中で最速に動くものだ。だから、手はかなりのスピードを生むことが出来る。偉大なスポーツマンは偉大な手の持ち主だ。一般ゴルファーはスピードを生む手を活用しようとしない。クラブフェースが素早くスクウェアにならないので、スライスが発生する。教師たちはなおも『身体を回転させよ』と教えるだろうが、それは大多数の生徒が必要とするものではない。焦点は必然的に手と腕に移るべきなのだ」
と云いつつ、Hank Haneyも完全な「手と腕」派ではありません。「手と腕」派、「身体」派の両サイドに偉大なインストラクターがいるということはどちらにもメリットがある筈だとして、「どちらも正しく、どちらも大事」と結論づけ、「身体」派のインストラクターたちにゴマをすっています。
【おことわり】画像はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。
(January 22, 2014)
スポーツ心理学者Gregg M. Steinberg(グレッグ・M・スタインバーグ)博士が提唱するリラックス・ゴルフのコツ。
'MentalRules for Golf'
by Gregg M. Steinberg, Ph.D. (TowleHouse, 2003, $12.95)
「Fuzzy Zoeller(ファズィ・ゼラー)は口笛を吹いてゴルフする。一寸した音楽はあなたのムードを陽気にし、血圧を下げ、心をトラブルから遠ざけてくれる。Fuzzy Zoellerその他のプロたちが口笛を吹くのは、適切に呼吸することによってプレッシャー下でリラックスし続けるためだ。
緊張するとわれわれは不適切に呼吸しがちである。われわれの呼吸は浅く、速くなる。たまには、呼吸を完全に止めたりする。これは侵入者や侵略者の動きに聞き耳を立てる自然な手段である。浅く弱い呼吸は、筋肉への酸素供給を減少させる。筋肉は強ばり、われわれはゴルフ・スウィングをコントロールする能力を失いかねない。さらに、不安が原因での浅い呼吸は極端なまでに血液の流れを制限する。こうなると、われわれは感覚を失ってしまう。さらに、競技のさなかにわれわれが深い呼吸を怠ると、ビビる可能性が著しく増大する。Byron Nelson(バイロン・ネルスン)はビビりを防ぐ鍵の一つは、深くリズミカルに呼吸することだと云っていた。
口笛を吹くことは腹式呼吸をすることを強制する。口笛を吹く時、音を出すために否応なく空気が吐き出される。専門家は、呼吸することが困難な人に口笛を吹くように呼吸しろと云うほどである。
もし口笛を吹くのがあなたの好みでなければ、歌をハミングする方法がある。ハミングも深い呼吸を促す。口笛もハミングも嫌だとしても、プレッシャー下では適切に呼吸するように気をつけること」
(January 22, 2014)
Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)が'Golf Digest'『ゴルフダイジェスト』誌に四年間連載したアメコミ風カラー・イラスト満載のインストラクション'Jack Nicklaus' Lesson Tee'(Jack Nicklausのレッスン・ティー)の総集編。好評だったようで、コース戦略をテーマとした続編'Jack Nicklaus' Playing Lessons'(Jack Nicklausのプレーイング・レッスンズ)も連載され、これも後に総集編が刊行されています。あまりラウンド出来ない冬季は、以前のゴルフを反省し、来季の目標を設定すべき好機だそうです。
'Jack Nicklaus' Lesson Tee'
by Jack Nicklaus with Ken Bowden (Golf Digest/Tennis Inc., 1977)
「先ず、次の二点について自分に100%正直に考えてほしい。1) 昨年、自分がプレイしたゲーム内容、2) これからの一年の努力目標…。あなたが本当にゴルフを楽しみ、満足を得たいなら、どちらの項目も甘く考えてはいけない。
昨シーズンのあなたの最大の問題点は何だったか?どの問題が最も高くついたろうか?これに答えることによって、ゲームを部分部分に分け、それぞれのパフォーマンスの査定が可能になる。私は毎冬、これを実施する。私の分類は、ドライヴィング、アプローチ(パーオン)、リカヴァリー・ショット(ピッチング、チッピング、バンカー・ショット)、パッティング、コース・マネジメント…等である。過去一年のプレイを本気で反省すれば、弱点の一つや二つが浮かび上がって来る筈だ。
あなたがドライヴァーに弱点があると反省したと仮定しよう。最初に検討すべきは、あなたの使用クラブだ。ツァー・プロの全ては彼ら独自のスウィングにドライヴァーをフィットさせるために懸命になる。僅かな重量の増減が、一般ゴルファーのウン千人に奇跡をもたらすこともある。方向性が問題なら、スティッフ・シャフトを試すべきだし、飛距離があなたに制限を与えている重大な要素なら、ソフトなシャフトと多めのロフトを試すべきだ。
上の方法に困難を感じるのであれば、新シーズンの最初の5ラウンドをあなたが快適と感じられる最も長いクラブで打つことで解決出来る。それは3番ウッドあるいは4番アイアンかも知れないが、(パー3以外の)全てのティーでそれを用いるのだ。あなたは、そのクラブでティーから放ったボールが、次のショットをいかに容易にするか、驚くに違いない。その後、短いクラブからドライヴァーへと一本ずつ練習する。その際、あなたが先ほど選んだイーズィに打てるクラブと同じスウィングをするように。
アマチュアの多く(ほぼ80%)はスライスでグリーンの右へミスしがちだ。彼らは『今度こそストレートに打つぞ』と自分に云い聞かせ、性懲りも無くピンを真っ直ぐ狙って又もや右へ外す。こういうあなたに二つの選択肢がある。1) レッスン・プロについて練習し、スライスを矯正するか、2) 左を狙ってターゲットにカットバックさせるか…だ。後者は容易であり、私やLee Trevino(リー・トレヴィノ)が生活の糧を得るためにやっていることと同じだと考えればいいのだ。もちろん、あなたの右カーヴはスケールが大き過ぎるのだが。
あなたの自己分析がお粗末なピッチングにあるとしたら、80ヤード以内からしっかり打つことを心掛けるべきだ。オーヴァースウィングはインパクトで減速する結果に繋がり、ウェッジ・ショット失敗の主たる原因である。ショート・アイアンを裏庭や車庫で毎日数分間振るのは冬季を有効に過ごす方法だ。イメージした距離に対するバックスウィングの長さを測ることによって、ピッチングを見違えるものに出来る。
パッティングがあなたのアキレス腱であることが判明したら、ツァーにおける次のような事実を知るべきだ。ラインの読みの失敗より距離コントロールの失敗が多い。さらに強さの過ちによって大幅ショートや大幅オーヴァーを招く。これらを防ぐにはパターフェースのスウィートスポットでしっかり打つことが必要で、その技術は冬季にカーペットの上で磨くことが出来る。
チッピングが弱点であるとしたら、絨毯の上で自然な、手や手首、腕のストレス・フリーなしっかりしたスウィング動作でボールとコンタクトする練習をすれば、スコアから数打減らせるようになる」
(January 25, 2014)
Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)が'Golf Digest'誌に四年間連載したアメコミ風カラー・イラスト満載のインストラクション'Jack Nicklaus' Lesson Tee'(Jack Nicklausのレッスン・ティー)の総集編。好評だったようで、コース戦略をテーマとした続編'Jack Nicklaus' Playing Lessons'(Jack Nicklausのプレーイング・レッスンズ)も六年間連載され、これも後に総集編が刊行されています。
実はこれらは二冊ともずっと以前から市の図書館にあり、私も何度か手に取ったことはあったのですが、どぎついカラーのイラストが何やら初心者向けの本のような印象を与えたのと、Jack Nicklausは'Golf My Way'『ゴルフマイウェイ』一冊だけで充分じゃないかという気がして、真剣に読む気になりませんでした。しかし、'Golf My Way'にない話題や解説がいくつも含まれていることに気づきました(順次紹介予定)。そして、読み進むうちにいつの間にか私はJack Nicklausファンの一人になってしまいました。
'Jack Nicklaus's Lesson Tee'
by Jack Nicklaus with Ken Bowden (Golf Digest/Tennis Inc., 1977)
「飛距離は女性とシニア双方にとっての問題である。私は加齢とともに軽量クラブを好むようになっていて、将来はもっとその方向に突き進むことになるだろう。その一つの理由は、飛距離という点ではクラブヘッド・スピードが他の要素全体の二倍も価値があるからだ(クラブが軽ければ軽いほど早く振るのが容易になる)。また、軽いクラブを使えば肉体的に疲れず、ラウンド後半に有利である。柔らかいシャフトと軟らかいコンプレッションのボールも、身体的に弱いプレイヤー(特に、ヒッターでなくスウィンガー)を助けてくれる。
私はいつもLPGAツァー・プロのスクウェアな打ち方に舌を巻いている。彼女たちのフェアウェイウッドでピン傍につける手際の良さの背後にあるのは、そのスクウェアな打ち方である。それは筋肉のコントロールと「アイ=ハンド・コーディネーション」(目と手・腕の協調作業)の賜物であり、筋肉のパワーではない。たとえクラブヘッド速度を多少犠牲にしたとしても、クラブフェースをスクウェアにボールに送り届けるテクニックに上達すれば、あなたはほぼ間違いなくヤーデージの問題を解消出来る。
加齢とともにスウィングに手・腕の参加度が増すものだが、それに依存してはいけない。シニアと女性は、バックスウィングでの身体に可能な限りの大きな回転をすることと、腕を可能な限りフルに伸ばすことを安易に諦めている印象がある。頭がスウェイせず、グリップが緩まず、左足が1インチ(約2.5センチ)以上地面から上がりさえしなければオーヴァースウィングにはならないのだから、余計な心配をせずに努力すべきである。
腰のフル回転は、シニアと女性がダウンスウィングを効果的に始動する際の大きな助けとなる。パワー不足でソフトな筋肉の場合、下半身をターゲットに向かって動かすことによってダウンスウィングを始めるのが難しくなる。弱々しいプレイヤーがバックスウィングに不可欠である横移動を腰のターン抜きで実行しようとすると、きまって腰と脚は(本来向かうべきターゲット方向ではなく)ターゲットの左に直ちに動く。これは身体全体が左へスピンする原因を作る。バックスウィングで腰を右に廻しておけば、ダウンスウィング開始時に腰をターゲット方向に動かすことがずっと容易になる。
女性はゴルフスウィングに脚を使いたがらないように見受けられる。それは女性らしからぬ動きだという懸念からではないだろうか。正しい脚のアクションについてのレッスンを二、三度受ければ、その他大勢から抜きん出られると思われるのだが。
可能な限り長く大きなバックスウィングをすべきであり、決して捻転を制限しようとしてはならない。Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)はほぼ肩と同じくらい腰を廻して13勝を挙げたではないか。
私の友人の一人は60代だというのにハンデを17から8に下げた。彼は、その成果はひとえにドローを打つことを学んだ結果だと云う。それにはレッスン・プロの助けを得た練習を週三回三ヶ月続けたが(その間ラウンドはゼロ)、ハンデだけでなく素晴らしい飛距離も得て、彼は今や幸福の絶頂にある。ほとんど全てのトップ・レヴェルのシニア・アマや女子プロたちは、基本的にドローを打つことで助けられると思われる」
(January 31, 2014)
われわれには(少なくとも私には)心を無にしてパットすることなど出来ません。ストローク動作の遵守事項や、「このパー(バーディ)・パットを入れなきゃ」とか、前ホールでのミスなど色んなことが頭の中を駆け巡ります。これで素晴らしいパットが出来たら奇跡です。
で、頭の中で般若心経を唱えながらパットしたらどうか?と思いました。お経で頭を一杯にすれば、余計なことを考えることは不可能になります。アドレスしてからストロークするまでの10秒ぐらいの時間ですから、般若心経全部を覚える必要はありません。
観自在菩薩
行深般若波羅蜜多時、
照見五蘊皆空、
度一切苦厄。
舎利子。
色不異空、空不異色、
色即是空、空即是色。
これをお坊さんたち独特の読み方と区切り方で記すと以下のようになります。
かんじざいぼさ(つ)
ぎょうじんはんにゃはらみった
じしょうけんご うんかいくうど
いっさいくうやく
しゃーりーしー しき
ふういーくう くうふーいーしき
しきそくぜーくう くうそくぜーしき
【参考】「般若心経」http://www.youtube.com/watch?v=TPsYd7EXJOU
私がここまで空で唱えられるようになるには、三週間かかりました。しかし、ここまで唱えるとパットとしては長過ぎます。長くても「しゃーりーしーしき」ぐらい迄にパットしないと、Yipsを患ってると思われるか、緊張して手が金縛りにあっていると勘違いされることでしょう。
最後の四行だけでもいいかも知れません。短いし、尻取りスタイルなので覚えやすいし…。これだと5秒でパットすることになります。
色不異空 しきふーいーくう
空不異色 くうふーいーしき
色即是空 しきそくぜーくう
空即是色 くうそくぜーしき
ずっと以前、ある国際的学者を主人公にしたドキュメンタリーの撮影で、京都の西芳寺(通称「苔寺」)に行きました。庭を見せて貰う前に何十人もの観光客と一緒に座敷に上げられ、外国人もわれわれもいきなり「般若心経」を写経させられたのです。これにはびっくり。意味も解らず、ちんぷんかんぷんなものを漢字の形だけなぞるなんて馬鹿馬鹿しいと思いました。お経の押し売りに思え、それがお寺への反感をもたらした反面、全276文字を写経したことがあるという「般若心経」への親近感も残したのでした。ですから、上の「般若心経でパット」もずっと温めて来たアイデアで、決して昨日や今日の思いつきではありません。
やってみました。「精密にストロークするイメージ」と併用すると中々いいです。どっちの効き目か分らなくなりますが:-)。
以下は花山勝友氏による現代語訳です。
観自在菩薩 | 観音菩薩が、 |
行深般若波羅蜜多時 | 深遠な知恵を完成するための実践をされている時、 |
照見五蘊皆空 | 人間の心身を構成している五つの要素がいずれも本質的なものではないと見極めて、 |
度一切苦厄 | すべての苦しみを取り除かれたのである。 |
舎利子 | そして舎利子(弟子)に向かい、次のように述べた。舎利子よ、 |
色不異空 | 形あるものは実体がないことと同じことであり、 |
空不異色 | 実体がないからこそ一時的な形あるものとして存在するものである。 |
色即是空 | したがって、形あるものはそのままで実体なきものであり、 |
空即是色 | 実体がないことがそのまま形あるものとなっているのだ。 |
【おことわり】画像はa-w-i-p.comにリンクして表示させて頂いています。
(January 31, 2014、増補December 24, 2016)
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