Annika Sorenstam(アニカ・ソレンスタム)も左上腕を身体に密着させること("connection")を推奨しています。
'Golf Annika's Way'
by Annika Sorenstam with editors of Golf Magazine (Gotham Bools, 2004, $30.00)
「腕と身体が一緒に動く感覚を得るには、左の脇の下にヘッドカヴァーを挟み、ウェッジでフル・スウィング、他のクラブでなら1/2か3/4のスウィングをしてみることだ。もしあなたの腕と身体が互いにシンクロしていないなら、ヘッドカヴァーは落下してしまう。腕・クラブ・胸などがシンクロして動けばヘッドカヴァーが落ちることはない。
このドリルは、アマチュアに見られる一般的過ちである掬い打ちをなくすのに役立つ。掬い打ちすると、ターゲット方向への回転をせず、身体はインパクトで失速する。クラブは動き続けるが、左手首は折れ、クラブヘッドはボールの手前で座礁する。
だが、もしあなたの身体が動き続けるなら、シャフトはインパクトで前腕と一直線になる。これが望ましい形である」
Jimmy Ballard(ジミィ・バラード)が広めたこの練習法は、いまや多くのプロ、インストラクターに支持されていると云って過言ではありません。脇の下ぶ挟む物はハンカチ、タオル、手袋など、何でもオーケー。本番ではそういう物を使うわけにはいきませんが、PGAツァーの若手Keegan Bradley(キーガン・ブラッドリィ)やRickie Fowler(リッキィ・ファウラー)らは、シャツの左袖を脇の下に押し込んでスウィングしているそうです。
(November 03, 2013、改訂June 05, 2015)
Nick Faldo(ニック・ファルド)は左右の脇の下にタオルを挟む練習法を提唱しています。
'A Swing for Life'
by Nick Faldo with Richard Simmons (Penguin Books, 1995, $19.95)
「ショートゲームの練習にはタオル・ドリルが最適である。【この練習法は短いショット(最長50〜60ヤード)のためだけに考案されたものであることを断っておく】
長めのタオルを胸の前に渡して、両端を左右の脇の下に挟む。通常のセットアップ体勢をとり、スムーズな3/4スウィングをする。クラブをオンプレーンにするため手首は自然にコックさせる。そして、膝と腰の抵抗を感じつつ上体を捻転しながら、(腕と身体の)『結合』の感覚に慣れ親しむ。前後にスウィングする間じゅうタオルを落とさないように。
この練習をする際、私はピュアな打撃と、クラブヘッドをバランスのとれたフィニッシュに向かわせることに集中する。ボールを先に打ち、次いで地面を打つというコンタクトはあるものの、私が腕と胸を正しく回転させている限り、攻撃角度はかなり浅い。大きなディヴォットはとらない。ディヴォットをとろうとすると距離の判断能力を複雑にしてしまう。イーズィにスウィングし、ボールをソフトに飛行させることを忘れないように」
【参考】「両脇にタオル挟んで10ヤード増」(tips_151.html)
(November 03, 2013)
'The new thing on Tour'
by Ron Kaspreske ('Golf Digest,' December 2013)
「読者がこれから知る事実は極秘事項のように思えるだろう。それほど、これは限られた範囲でだけ話され、熱心なツァー・ファンにも事実上知られていなかったことだ。だが、このピッチングに関するテクニックは、現在無視出来ないほどツァーで優勢となっている。
Adam Scott(アダム・スコット)はこのテクニックを使って今年のthe Masters(マスターズ)に優勝し、Jason Duffner(ジェイスン・ダフナー)も今年のPGA選手権でこれを用いて、63という好スコアを出して優勝した。Zach Johnson(ザック・ジョンスン)もBrandt Snedeker(ブラント・スネデカー)も、この技法を使っている。 それは"straight-arm pitch"(腕を伸ばしたピッチング)というもので、Steve Stricker(スティーヴ・ストリッカー)に五年間に八勝という成功をもたらした技法なので"Stricker style"(ストリッカー・スタイル)とも呼ばれている。伝統的なピッチングはバックスウィングで手首をコックし、ダウンスウィングでそれをアンコックするものだが、Steve Strickerがウェッジをスウィングする時の手首の動きはごく僅かである。彼の手と腕はショットの間じゅうピンと伸ばされ、積極的には動かない。彼はバックスウィングで単純に胸をターゲットから遠ざけ、その後、身体全体を前方に回転させるだけだ。胴体の動きが腕とクラブを推進させるのであって、意識的なハンド・アクションは見られない。 『このメソッドがシンプルに聞こえるとすれば、実際シンプルそのものだからだ』とSteve Strickerは云う。しかし、その効果を過小評価してはならない。この九月のシーズン終了時までに、グリーンに30ヤード付近からのショットを平均して最も近くへ寄せたプロのNo. 1は誰か?そう、それはSteve Strickerであった。彼のショットのピンまでの平均距離は約2.4メートルだった。二位は?Zach Johnsonで、彼も"straight-arm pitch"派の一人だ。 |
Steve Strickerは次のように云う。『多くのプロは、飛距離、スピン、ボールの高さなどを変化させるために、手首を折ってスウィングの長さを変える。しかし、私はムラのない結果を生んでくれる、この自分のメソッドを好む。高さや距離を変えたければ、クラブを替えるか、ボール位置を前後させればいいのであって、スウィングを微調整する必要はない』
Adam Scottはこのメソッドによって、手首のアクションがショットにどのような影響を与えるかという当て推量をせずに済むようになったと云う。以前、彼はタイミングよくアンコック出来ずボールを低く強く飛ばし過ぎることがあった。またある時は、手首をあまりに突然にリリースしてしまい、ボールが高く飛び過ぎてショートすることもあった。"straight-arm pitch"だとボールの軌道とスピンは予測出来、自信を持って打てる…とAdam Scottは云う。彼は『マスターズでそれは最高潮に達した。私はこれまでピッチングをほとんど手で打って来のだが、このスタイルで手の動きを取り除き、身体の回転を使うようになった。腕と手と手首は真っ直ぐのまま。後方へ回転する時、胴体以外の動きはほとんどなく、それからターゲット方向にハードに回転する。私は胸がインパクト・エリアを横切り、手と腕は単にそれにくっついて動く感じを受ける』と云う。
インストラクターRick Smith(リック・スミス)は次のように云う。『この"straight-arm pitch"は、古典的な手首を使うピッチングより浅いボールへの攻撃角度を生む。伝統的なスタイルは高さとスピンを与えるので、ラフからのショットやグリーンで急速にボールを停めたい時に役立つ。一方、短く刈られた芝の上では、"straight-arm pitch"であればダフりやトップを防いでくれる。クラブはターフを掘るのではなく、ターフに沿ってボールを掬い取るからだ』
Jason Duffnerは『"straight-arm pitch"がとても効果的なので、120ヤード以内ではほとんどこれを用いている』と云う。彼は2012年のグリーンサイドからのショットを平均して約1.9メートルにつけた。彼は『このショットは、インパクトでフェース角度を一定にしてくれる』と述べている」
(November 09 2013)
Annika Sorenstam(アニカ・ソレンスタム)による拇指球(ぼしきゅう)を基盤とするポスチャー。「拇指球って何?」って思いません?私は知りませんでした。「親指の下の丸い膨らみ」のことを「拇指球」というのだそうです。
'Golf Annika's Way'
by Annika Sorenstam with editors of Golf Magazine (Gotham Bools, 2004, #30.00)
「体重が均等に左右の足の拇指球に乗るまで、私のポスチャー構築は完結しない。これはスウィングの間じゅういいバランスを保ち、両腕のスウィングを自由にしてくれる。
だが、多くのアマチュアは爪先に体重をかけ、それはバックスウィングで頭とターゲット側の肩を下げさせるため、スウィングのバランスを完全に崩してしまう。
拇指球を見つけるには次のようにする。
両足を広げて、膝を伸ばし、クラブを胸の前で垂直に立てる。そのまま爪先で立つ。ゆっくりクラブヘッドを下ろし、両足も地面につけ、両膝を緩め、アドレスの形を作る。すると、すぐに拇指球の在り処が分る。何故なら、ほんの僅かでも体重を踵や爪先に移すと、バランスを失ってしまうからだ」
これを読んでから、私は全てのショット(ドライヴァーからパットまで)で拇指球を意識するようになりました。確かに両足の拇指球で立つと安定します。前傾も後傾もせずフラットなスウィング(ストローク)が出来るようになります。
(November 15, 2013)
グリーンサイド・バンカーからのホームランほど腹立たしいものはありません。苦笑したり、「わはは…」と笑い飛ばして見せたりするものの、胸の内は「又か!」という怒りと、パートナーたちへの恥ずかしさで煮えくり返っています。現在の私のバンカー・ショットは、練習だとピン傍に寄る素晴らしい妙技を披露出来るのですが、本番となると1ラウンドに少なくとも一回はホームランを放ってしまう体たらく。猛練習した甲斐は全くありません。
あのJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)でさえも、ある時期バンカー・ショットに自信を失ったそうです。The Masters(マスターズ)に三度、U.S.オープンに一度、全英オープンとPGAに一度ずつ優勝したその後なのに…です。ですから、メイジャーに一度も優勝していない私がバンカー・ショットに自信を失っても不思議はありません:-)。
「ホームラン防止策」(tips_128.html)という記事にあるグリップをしてみましたが、効き目はありませんでした。このグリップは手を返さず、ロフトを保つためのグリップですが、私は既に手を返さないスウィングを修得していましたから、効き目がなくて当然です。となると、クラブヘッドを砂に突入させるポイントと角度が問題解決の糸口になりそうです。
ホームランの原因は二つあります。直接ボールを打つのが一番目(これは誰にでも分る)。二つ目は固い(湿った)砂でサンドウェッジを使って、弾かれたウェッジでボールをトップするケース。ここではごく普通の砂、普通のライを前提に話を進めます。
ボールを直接引っぱたかないためには、とりあえず《ボールの後方の砂にクラブを突入させる》ことが絶対に必要です。では、どれだけボールの後ろにクラブヘッドを入れるか?これが、実はプロやインストラクターによってまちまちなのです。インストラクターたちの多くは5センチ後方と云います。手近な本でプロやインストラクターたちの突入地点を調べてみました。いずれも乾いた砂の、クリーンで平坦なライのグリーンサイド・バンカーという想定です。
名前 | インチ | センチ | 備考 |
---|---|---|---|
Chi Chi Rodriguez(チチ・ロドリゲス) | 1インチ | 約2.5センチ | |
Greg Norman(グレッグ・ノーマン) | 1〜1.5インチ | 約2.5〜4センチ | |
Annika Sorenstam(アニカ・ソレンスタム) | 1〜2インチ | 約2.5〜5センチ | |
Harry Vardon(ハリィ・ヴァードン、英国) | 1〜2インチ | 約2.5〜5センチ | ヴァードン・グリップで有名 |
Cary Middlecoff(ケアリ・ミドルコフ) | 2インチ | 5センチ | メイジャー三勝、生涯に41回のPGAツァー優勝 |
Gary Player(ゲアリ・プレイヤー) | 2インチ | 5センチ | バンカー名人 |
Fred Couples(フレッド・カプルズ) | 2インチ | 5センチ | |
Ray Floyd(レイ・フロイド) | 2〜3インチ | 5〜7.6センチ | ショートゲームの名手 |
David Leadbetter(デイヴィッド・レッドベター) | 2〜3インチ | 5〜7.6センチ | |
Tiger Woods(タイガー・ウッズ) | 3インチ | 7.6センチ | |
Harvey Penick(ハーヴィ・ピーニック) | 3〜4インチ | 7.6〜10センチ | 伝説的インストラクター |
Claude Harmon, Sr.(クロード・ハーモン一世) | 3〜4インチ | 7.6〜10センチ | Butch Harmon, Jr.の父であり師匠。The Masters優勝者 |
Jackie Burke, Jr.(ジャッキー・バーク二世) | 4インチ | 10センチ | メイジャー二勝、現在ツァー・プロのコーチ |
Jim Flick(ジム・フリック) | 2〜5インチ | 5〜13センチ【註】 | Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)のコーチ |
Dave Pelz(デイヴ・ペルツ) | 4.5〜5.5インチ | 11〜14センチ | ショートゲーム専門インストラクター |
Hank Haney(ハンク・ヘイニィ) | 4〜6インチ | 10〜約15センチ |
【註】Jim Flickは「週末ゴルファーに何インチ後方などと云っても無駄である。『3〜4インチ後ろに入れろ』などと強制すると緊張を生み、身体が金縛りになるだけだ」と云っています。ですから、彼の2〜5インチ(5〜13センチ)というのは大雑把で良いという意味です。
古くから云われているバンカー・ショットの格言に《ドル紙幣を弾き出せ》というのがあります。ドル紙幣の真ん中にボールがあるとして、ボールを乗せた紙幣を掬い出せという手法です。ドル紙幣の長さは15.6センチでボールの直径は約4.3センチですから、差し引き11.3センチ、その1/2は5.65センチで、ボール右端から紙幣の右端までは約6センチということになります。
Nick Faldo(ニック・ファルド)、Ernie Els(アーニィ・エルス)やColin Montgomerie(コリン・モンガメリ)らは、彼らの本で何インチ後ろにクラブを入れるかについては言明を避けています。Colin Montgomerieは「砂の質や、どれだけスピンをかけ、どれだけ転がすかによって、砂の取り方は変わるので、一概に何インチとは断言出来ない」と説明しています。正確を期すならば、多分それが正しいのでしょう。
しかし、素人のわれわれはどの長さを選べばいいのか、途方に暮れてしまいます。で、私は幸運にも乾いた通常の砂の場合の万能の尺度(センチ数)を見つけました。【続く】
(November 15, 2013)
私はホームラン王の汚名を返上すべく、自分のこのサイトの「バンカー・ショット」関連の記事を読み漁りました。妙薬がありました。「当世風バンカー・ショットの習得」(tips_74.html)です。このtipは「約30cm離して二本の線を引き、(ボール無しで)線の間全体を浅くスライドさせる」という練習法(右図)で、2003年の'Golf Magazine'誌主催のテストで最もピン傍に寄る成果を挙げたという素晴らしい実績がある手法です。バンカーでこの練習法をしばらく実施し、実際にボールを真ん中に置いて打つと見事にボールが出ます。
30センチからボールの直径4.3センチを引くと25.7センチで、その1/2は12.85ですから、ボールの後方約13センチにクラブを突入させればいいことになります。これは前回の「突入ポイント」比較表の中のDave Pelz(デイヴ・ペルツ)の11〜14センチに近い数字です。
私はそれまで、多くのインストラクターが説く、ボールの後方5センチにサンドウェッジを叩き込むという方式を実践して来たのですが、上のtipはボールの後方約13センチにクラブを潜らせることになり、5センチと較べると信じられないくらい後方です。これをドル紙幣を用いてイメージ化してみると写真Bのようになります。巷間推奨されている写真Aの「約6センチ」に較べ、エラい違いであることは一目瞭然です。ドル紙幣の半分どころか、その全長に近い後方にクラブヘッドを突入させることになります。
試した日の砂はやや湿った感じでしたが、それでも鍋物の灰汁(あく)を取るような浅く長いバンカー・ショットが出来、ボールはピン傍へと転がりました。この場合、ボールの後方13センチを凝視しなくてはいけません。「13センチ後方を打つけど、目はインストラクターたちが云う通り5センチ後方を見るかんね」というのは駄目です。絶対駄目です。アイ=ハンド・コーディネーション(目と手の協調作業)の働きによって、クラブは正直に目が注視した5センチ後方に入り、お約束のホームランが出現します。
「13センチも後方でダフっていいのかいね?」と思われるかも知れません。もちろん、エクスプロージョン型の急降下爆撃をして、その地点でクラブヘッドが砂に突き刺さされば、ボールの運命は保証出来ません。ソフトに灰汁を取るように長くスウィングをすれば、クラブヘッドはボールの下をモグラのように前進し、ボールをふんわり弾き飛ばします。フェアウェイでのダフりのガツンという衝撃こそないものの、ダフりには違いないので一瞬「しまったっ!」と思っちゃいますが、バンカーではそれでいいのです。
なお、砂が湿っていたり固い時にサンドウェッジでボール後方の砂を打つと、そのバウンス(日本語でバンス)が災いしてクラブヘッドが弾き返され、トップします。こういう場合はリーディング・エッジの鋭い60°ウェッジ(バウンスの少ないタイプ)かピッチング・ウェッジを使うしかありません。その際はランが多くなることに注意します。
「当世風バンカー・ショットの習得」のように役立つtipが揃えてあるなんて、なんて素晴らしいサイトなんでしょう、ここは!
しかし、まだ不安です。一体どういうスウィングをするのがベストなのか?それは【続く】
(November 18, 2013)
インストラクターやツァー・プロたちの本(記事)では、あたかもバンカー・ショットの基本は一つであるような書かれ方をしていることが珍しくありません。実は異なる二種類のスタイルがあり、それらを混同しないようにしなければなりません。その二つとはエクスプロージョンとスプラッシュです。Greg Norman(グレッグ・ノーマン)の本'Shark Attack!'(1988)に解り易い説明がありました。お風呂かプールで実験してみて下さい。水を高く短く撥ねるには、手を上から鋭く急降下させなければなりません(これがエクスプロージョン)。長く低く水を撥ねるには手の甲で水面を水平に近い角度で薙ぎ払うようにします(これがスプラッシュ)。それぞれのスウィング軌道とボールの軌道は、水と砂の違いだけで、全く同じだそうです。
'Scrambling Golf'
by George Peper (Prentice-Hall, 1977)
「バンカー・ショットの90%は二つのテクニック(エクスプロージョンとスプラッシュ)の変形である。これらを効果的に打てれば、少なくとも三回に一回は寄せワンが達成出来、砂への恐怖心が消えることだろう。
エクスプロージョン | スプラッシュ | |
---|---|---|
ライ | 良好〜並(ボールは砂に潜っていない) | 同左 |
スタンス | オープン【着地点の60〜90cm左を狙う】 | 広めのオープン |
グリップ | 短く持つ【足を砂に潜らせた分の相殺】 | 同左/ 両手をボールの後ろでアドレス |
ボール位置 | 左足内側の前方 | 同左 |
クラブフェース | ターゲットにスクウェア | クラブ背面が砂と平行になるほどかなりオープンに |
体重 | 左側に70% | 同左 |
バックスウィング | 急速に手首を折るが’、全てをスローに | 低く、スローなテイクアウェイ |
トップ | 3/4スウィング | 肩の高さ |
突入目標 | ボール後方約5センチ地点【*】 | 同左 |
ダウンスウィング | 手を先行させダウンブローに | 灰汁(あく)を取るように、ボールの下を浅く滑らす |
【*】①「砂への突入ポイント」および②「盛大にダフってOK、バンカーショット」を参照のこと。
エクスプロージョンとスプラッシュの違いは以下のようである。
・スプラッシュは両手をボールの後ろで構えるので、エクスプロージョンのようにダウンブローに打つことにならない。
・上の要件と共に、かなりオープンにしたクラブフェースによってボールは高くポーンと跳び上がり、着地後すぐ停止するか戻って来る。だから、スプラッシュは(ランの多い)エクスプロージョンよりも攻撃的になれる」
われわれは《バンカー・ショット=エクスプロージョン》という風に教えられて来ました(あるいは、われわれの先入観か)。そして、「エクスプロージョン(爆発)」なる語感から、急速にありったけのパワーでクラブヘッドを砂にめり込ませようと考えていました。上の記事でお気づきかと思いますが、エクスプロージョンでは「全てをスローに」、スプラッシュも「低く、スローなテイクアウェイ」という説明があります。どっちの場合も急速にスウィングしてはいけないのです。慌てると、ボールの背後13センチから目を外らし、ボールも見ないで打っちゃったりします(これもホームランの原因)。
では、上の二つをどう使い分ければいいのか?Nick Faldo(ニック・ファルド)とColin Montgomerie(コリン・モンガメリ)らは、彼らの本でスプラッシュしか紹介していません。Dave Pelz(デイヴ・ペルツ)も、彼の本でスプラッシュを勧め、旧来のエクスプロージョンを否定しています。
Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)は少年時代からプロ入り後も古典的な1〜2インチ(約2.5〜5センチ)後方にクラブを入れるというセオリーで通していたそうですが(多分、エクスプロージョン)、ある時、バンカー・ショットに自信を失い、彼のコーチJack Grout(ジャック・グラウト)に教えを乞いに行きました。Jack Groutは自分が考案した新しいコンセプトを弟子に伝えました。それはどれだけ後方にクラブを入れるかではなく、(砂の質や距離などにもよるものの、例えば)横6インチ×縦3インチ(15センチ×7.6センチ)で厚み2.5センチの長方形の砂の塊を抉り出す…というイメージでした。Jack Nicklausはこのコンセプトを元に、ソフトなスプラッシュ型のバンカー・ショットをマスターしたそうです。
エクスプロージョンが必要なのは、
・砂が固いか、湿っている時
・バックスピンをかけたい時
・ボールを高く上げたい時
・目玉の時
・ボールがバンカーの顎の下にある時
…などと云えます。それ以外ではスプラッシュを実行するのがミスの許容範囲も広く、安全であると云って間違いないようです。
私の研究論文は以上ですが、さて研究の成果はどうだったのか?それは【続く】
(November 21, 2013、追補February 27, 2017)
ハードパンは草はあっても禿げちょろけ、多くの場合固い土が剥き出しになった地域です。そういうコンクリートのようなライからボールを打つのは容易ではありません。インストラクターMike McGetrick(マイク・マゲトリック)は、長いショットと、グリーンへのピッチショットとによって異なる技法を勧めます。
'The Scrambler's Dozen'
by Mike McGetrick with Tom Ferrell (HarperCollins, 2000, $25.00)
「・長い距離
ボールをクリーンにヒットダウンするには、目一杯打つような余計な動きを排除するため、より長めのクラブを選択し、クラブの端を持って楽にスウィングするのが望ましい。
ボール位置をスタンス中央より1インチ(約2.5センチ)後方にしてハンドファーストで構え、ボール背面にシャープにヒットダウンし、地面より先にボールを打つことを確実なものとする。【編註:掬い打ちは不可】
上半身でバランスよくコントロールされたバックスウィングをする。腕主体の3/4の長さのスウィングをし、トップからダウンへと腕のリードによるスムーズな切り返しでヒッティング・エリアへ。クラブはボールを先に打ち、その後地面と接触する。弾道はフラットであり、膨らむような軌道にはならない。それがロフトを活かしたスウィングの結果である。
このショットのコツは、一貫してスムーズなテンポを保ち、クラブのロフトを信じることだ。機会さえあればこのショットを練習するとよい。
・ピッチング
バウンス【日本語でバンス】の多いクラブ(一般的サンドウェッジやロブウェッジ)は、固い地面で跳ね返され、トップする危険大なので使えない。バウンスの少ないウェッジを持っていればいいが、そうでない場合はパンチショットかバンプ&ランをするのがベター。
ピッチ・ショットをする場合、1インチ(約2.5センチ)ほどクラブを短く持ち、やはり1インチほどボールに近く立つ。ボール位置もスタンス中央より1インチ(約2.5センチ)後方。手首をきつめにした上半身主体のスウィングをする。
以上の調節が、クラブがボールに地面より先に接触することを確実にする」
【参考】
・「裸地から寄せる」(tips_135.html)
・「サスペンション・ポイント【パート1】」(tips_147.html)
(November 21, 2013)
右の連続写真をご覧下さい(私のバンカー・ショットではありません)。かなりオープン・フェースのクラブが低く進入して来て、黄色矢印のところで砂に突入します。【註参照】ボールと突入地点の間の距離が長く、また突入後もクラブは水平にスライドしている【←重要ポイント】のがよく分ります。砂に深く打ち込まれたり、しゃくり上げたりされてはいないのです。水平移動するクラブヘッドが、フェース表面に砂を乗せたまま直進するため、その砂の上に乗っていたボールが、ヘッドの勢いで砂とともに撥ね上げられます。これがスプラッシュの見本です。
【註】連続写真のクラブヘッドは、ボール二個半ほど後ろの砂に突入しています。ボールの直径は約4.3センチですから、10.75センチ後方ということになり、これはドル紙幣の真ん中にボールがある場合の5.65センチの約二倍ですが、'Golf Magazine'誌のテストで好成績を収めた13センチよりは短い。
われわれがイメージすべきなのは、「爆発」という一撃ではなく、砂の津波でしょう。クラブヘッドが砂に進入した地点を震源地とする地震が発生し、引き続き水平移動するクラブフェースが砂を押しのける動きによって砂の波が大津波に変貌します。小さな漁船のように砂の上に浮いていたボールは、砂の波の高まりによって抛り出されます。高速度写真の一齣では爆発の印象が強いかも知れませんが、よく見るとクラブヘッドは長く低く砂を押しのけています。われわれに必要なのはこの低いスライドの動きです。前回、「長く低く水を撥ねるには掌で水面を水平に近い角度で薙ぎ払う」と説明した通りのことを砂で実現すればいいわけです。
プロやインストラクターによってクラブの突入地点がまちまちだったり、「クラブの突入地点は大雑把でよい」、「バンカー・ショットはミスの許容範囲が広い」などと云われるのは、スプラッシュ型で上のようにクラブを砂の中でスライドさせればいいからでしょう。インパクト・エリアはエクスプロージョン(V字型)のように一瞬ではなく、かなり長いのがミスの許容範囲が広い理由のようです。
このシリーズの原稿を書き始めた頃、私のコースのNo.5のグリーンサイド・バンカーから18ヤード先のピン傍30センチにつけることが出来ました。その一週間後、同じホールの異なるバンカーから12ヤード先にチップインのバーディを達成。自信がつくというのは恐ろしいもので、同じ日、No.18(パー4)の二打目が顎の真下になってしまったものの、9番アイアンの薪割り打法はピンの横30センチにつきました。
ある日、No. 8グリーンのピンはバンカーから25ヤードの距離に切られていました。「バンカー・ショットはクラブ選択で距離を調節せよ」(tips_151.html)によって、20ヤード以上の距離にはGW(ギャップウェッジ)が必要だと知っていた私は、サンドウェッジと同じ打ち方でGWを振り、見事ピン横50センチにつけることが出来ました。
サンドウェッジを「肩から肩へ」(右肩の高さのトップ、左肩の高さのフィニッシュ)で振ると約20ヤード飛びます。10ヤードにしたい時は「胸から胸へ」です。それ以下は60°ウェッジ。
しかし、ここまで研究し、練習に練習を重ねても本番でホームラン王の汚名は返上出来ませんでした。何が欠けていたのか?【続く】
(November 24, 2013)
Jackie Burke, Jr.(ジャッキー・バーク二世)は、The Masters(マスターズ)とPGA選手権の二つのメイジャー優勝を含む全18勝、五度のRyder Cup参加など、華麗な経歴を誇っています。現在は自分がオーナーであるテキサス州ヒューストンのChampions G.C.を根城に、PGAツァー・プロからアマチュア、青少年までを相手に、幅広くゴルフの指導にあたっているそうです。
'It's Only a Game'
by Jackie Burke, Jr. with Guy Yocom (Gotham Books, 2006, $22.50)
「出来るだけ高く砂を投げ上げることを念頭に置く。そう考えて4インチ(約10センチ)ボールの後方を打つことが、ボールをピンに近づける鍵である。
グリーンサイド・バンカーではピンの左に身体を向け、他のショット同様に捩った腰と肩をその方向に振り抜く。どれだけ早く捻転を振りほどくかはピンまでの距離次第である。距離が長ければ、ダウンスウィングを目一杯早くする」
《ダウンスウィングの速度によって距離が変わる》というのは、経験的には知っていましたが、法則として認識してはいませんでした。「スウィングの速度」=「スウィングの強さ」ではなく、ソフトなスウィングを早くするか遅くするかだと思われます。
Jackie Burke, Jr.の言葉で目を見張ったのは「他のショット同様に捩った腰と肩をその方向に振り抜く」という部分です。これだと特殊な手打ちではなく、全く普通のスウィングではありませんか。調べているうちに、Butch Harmon(ブッチ・ハーモン)の次のような記事も見つかりました。
'The Four Cornerstones of Winning Golf'
by Claude "Butch" Harmon, Jr. and John Andrisani (Fireside, 1996, $15.00)
「通常のフルショットと同じように、下半身のリードでダウンスウィングをスタートする。次いで右手によるハードな水切り動作で、ボール後方3インチ(7.6センチ)に集中してクラブヘッドを素早く落下させる。攻撃的であるべし。ボールが乗っかった薄い砂の一塊を弾き出せ。
サンドウェッジのフランジ(底部の膨らみ)が飛行機の昇降舵【註参照】のように働くので、クラブは砂を掘るのではなく砂の中を滑るように進む。この昇降舵を利用出来るという事実が、ボール後方の遥か手前で砂と接触していい理由なのだ。これの美点は、ボールに近過ぎる接触をしようとしてトップする可能性を除去出来るということだ」
【編註】Butch Harmonは"rudder"(方向舵)と書いているのですが、方向舵は垂直尾翼についているもので、これは文字通り水平方向の舵取りをします。サンドウェッジの発明者Gene Sarazen(ジーン・サラゼン)は飛行機の水平尾翼についている昇降舵を見て、自然に砂から浮き上がるクラブ開発のヒントを得たのですから、Butch Harmonは勘違いしています。
Butch Harmonも「下半身のリードでダウンスウィング」と云っていますね。それなら、下半身主導のダウンスウィングを心掛けている私には問題なく受け入れられます。
また、サンドウェッジには昇降舵が内蔵されているので砂にめりこむことはなく、砂とともにボールを弾き出せるというのは、実にいい説明です。トップ=ホームランですから、クラブを砂に突入さえすればホームランは根絶出来るわけです。
【おことわり】写真はwww.collegegolfresumes.comにリンクして表示しています。
(November 27, 2013)
私は「バンカー・ショットは手打ちでいい」という昔の教えを引き摺っていました。で、脚・腰を踏ん張って不動の構えとし、上半身(主に手と腕)だけでスウィングしていたのです。しかし、スプラッシュ型バンカー・ショットで灰汁(あく)を取るようなスウィングをするにしても、手・腕の力はいかにも弱く、砂の抵抗に勝てません。強く打てばホームラン、弱く打てばショート…でした。ムラがあり過ぎです。
その原因の半分は技術というより、私の住む地域の特色に由来するものかも知れません。ここアメリカ南部一帯の土壌は、粘土質の赤土なのです。バンカーを埋めている土も"Washed red sand"(水洗いした赤い砂)と呼ばれる安価な砂で、水捌けのいいバンカーではサラサラですが、同じゴルフ場でも水捌けの悪いバンカーでは一旦雨が降ると砂の粒子同士がべったりくっついてしまい、砂というよりねっとりした土に化けてしまいます。この町一番のメンバー・コースではさすがに白い砂を入れていますが、安いところは一様に赤っぽい"Washed red sand"のようです。この砂(土)に対抗するのに、手・腕の力だけではパワー不足なのがお分かり頂けるでしょう。
そんな時出会ったのが、上の「バンカー・ショットの鍵」のJackie Burke, Jr.(ジャッキー・バーク二世)とButch Harmon(ブッチ・ハーモン)の言葉でした。Jackie Burke, Jr.は「他のショット同様に捩った腰と肩をその方向に振り抜く」と云い、Butch sHarmon(ブッチ・ハーモン)は「通常のフルショットと同じように、下半身のリードでダウンスウィングをスタートする」と明言しています。やはり、手打ちではなく下半身がスウィングを司るべきなのです。それなら赤土の抵抗に負けることはありません。試してみると、腰でリードし、ソフトにスプラッシュ型バンカー・ショットをしてもホームランは出ません。
ホームランは出なくなったのですが、まだショートしたりピンをオーヴァーするムラがあり、とても免許皆伝とは云えない状態でした。ある日、シニア・グループのゲーム前の時間にバンカーの練習をしていると、グループの一人Jim Goodman(ジム・グッドマン、68歳)がやって来て私のショットを見物し始めました。彼は私の悪戦苦闘を見兼ねた様子で私に助言をくれました。この数日前、Jim Goodmanが上手なバンカー・ショットをする場面を目撃していた私は、素直に彼の助言に耳を傾けました。彼の云ったことをまとめると次のようになります。
1) クラブフェースを最大限オープンにする(寝せる)。
2) クラブのリーディング・エッジをターゲットにスクウェアに揃える。
3) 身体(足・腰・肩)のラインはターゲットの30°左に揃える。
4) バックスウィングはアップライトに上げ、トップは右肩の高さ。
5) 上記身体のラインに沿ってダウンスウィング。
6) 手・腕ではなく、下半身のパワーで砂を弾き出す。
文字によるインストラクションではなく、口と言葉による指導はインパクトが強い。しかも、その指導者が見守っているという重圧。云われたことを完璧に実行しなければなりません。最初のトライは、四発に一発がピン傍1メートルへ。二回目は四発に二発。しかし、まだ半信半疑で自信が持てません。Jim Goodmanが自分の練習のために去った後も、私は何度もバンカー・ショットを反復しました。そのうち、一発がピン傍40センチへ。次の四発のうち二発がOKの距離に。最後に四発の一発がチップイン!
九月に「バンカーから寄せワンを目指す」というテーマで練習を始め、この「ホームラン王の汚名返上プロジェクト」へと続いたのですが、上のような成果は初めてで自信がつきました。いやあ、バンカー・ショットってほんっとに面白いもんですねー(水野晴郎調)。Jim Goodmanの教え以外で、私が採用している細部を書きとめておきます。
・絶対に手首を返さないための保険として、右手はウィーク・グリップでクラブを握る。
・ボール後方13センチを凝視し続ける。
・砂に負けないしっかりしたグリップ。
・急ぐ必要はないので慌てないでスウィング。
・テイクアウェイ直後から早めにコックする。
・フォロースルーは左肩の高さまで振り抜く。
Jim Goodmanは、距離調節はクラブフェースのオープンの度合いで行うと云っていました。私の場合、サンドウェッジで上の「肩から肩へ」の方法で約20ヤード飛びます。フェースの度合いを変えるよりも30ヤードならギャップウェッジで同じスウィング、10ヤードならサンドウェッジを「胸から胸へ」と振るのが安全ではないかと思います。
以上が、私が学んだグリーンサイド・バンカーの骨子です。寄らないという不満は今後も続くでしょうが、少なくともホームランとはおさらば出来ました。めでたし、めでたし。
(November 27, 2013)
英語の文献だけ渉猟していたのですが、日本のインストラクターはどう教えているのか気になりました。私も連載記事を書かせて頂いた『週刊朝日百科 坂田信弘の最新100レッスン』を引っくり返して驚きました。そのNo. 25(2003年刊)で坂田信弘氏はこう書いていたのです。
「どんなに短き距離であっても、バンカーは手打ちじゃ出ません。ボディターンが必要です。手先のクラブ操作では、ヘッドを打ち込んで終わり。これをザックリという。砂の爆発は抜かねば得られません。打ち込んで、そして抜く。これで初めて砂が爆発し、打球は舞い上がってくれるのです」
Jackie Burke, Jr.(ジャッキー・バーク二世)とButch Harmon(ブッチ・ハーモン)の記事「バンカー・ショットの鍵」を待つまでもなく、坂田信弘氏の教えが2003年以来私の本棚で埃を被って眠っていたのでした。やはり下半身のパワーが大事だったのです。坂田信弘氏は続けて次のように述べています。
「ボディターンの効用はもう一つある。それはスウィングの中心が体のターンにあるため、必然的に手首操作が抑えられるということ。手首を使うとインパクトゾーンでのフェース向きやヘッド弧の軌道が急激に変化する。安定した砂打ちができません。イメージとして、バンカーショットでのヘッドの動きは、球の下、砂中での水平移動です。ならばリストは使えない。だからターン重視なのです」
なるほど。身体を使えば手首を返したくなる誘惑を退けることが出来ます。いいこと云ってる。
以下はショートゲームの達人Ray Floyd(レイ・フロイド)の本に載っていたバンカー・ショットの智慧。
'From 60 Yards In'
by Ray Floyd with Larry Dennis (Harper Perennial, 1989, $12.00)
「・バックスウィングと同じ高さのフォロースルーをすべきである。
・きめの荒い固まった砂から打たれたボールは勢いよく飛び出し、遠くへ飛ぶ。だからゆっくりしたスウィングをすべきだ。
・ソフトでさらさらした砂はインパクトでクラブヘッドを急停止させてしまいがちである。だから長いスウィングで勢いを作り出すべきである。
・スウィング弧(浅いか、急角度か)がショットの高さと飛距離を決定し、ボールはクラブが砂に突入したのとほぼ同じ角度で飛び出す。高く上げ、短いショットをしたければ、砂に急角度で鋭く下降する突入をすべきだし、低く長いショットをしたいのなら、砂を浅く掃くように進入する。【編註:灰汁(あく)を取る軌道に同じ】
・ボールが砂に埋まっていてもクラブフェースをクローズにしたりシャットにしたりしてはいけない。私はかなり埋まっていて遠くに飛ばす時にはスクウェアにするが、ほとんど常にオープンである。
・広いクレーターに囲まれた目玉の場合は、そのクレーターの縁に強めの力で打ち込めばよい。
・ヴィジターとしてプレイするコースへ行ったら、ラウンド前に必ずバンカー・ショットの練習をすること」
最後のtipは、砂の質を見極めて慣れておけということでしょうね。
(November 30, 2013、改訂July 13, 2016)
'Scrambling Golf'
by George Peper (Prentice-Hall, 1977)
「基本的ピッチ・ショットの最も一般的なヴァリエーションは、低く転がるピッチ&ランである。これはフラットで風の強い、グリーンの大きなコースで重宝する。
ピッチ&ランはどのクラブ(3番アイアンからピッチング・ウェッジまで)でも実行出来るし、多くのインストラクターが数本のクラブを状況(ライ、グリーンまでの距離、エッジからピンまでの距離、勾配と芝目、風の強さと方向など)によって使い分けるべきだと主張している。しかし、そういう複数クラブメソッドはアマチュア向きではない。週末ゴルファーは一本のクラブの練習に費やす時間をとるのも難しいのだから、いくつかの状況に応じた複数のクラブの練習など土台無理である。
ピッチ&ランの90%を一本のクラブ、8番アイアンで遂行するのが賢い方法だ。ボール位置をスタンスの前方や後方に置くことによって、8番アイアンで高く上げることも低く転がすことも出来る。一本のクラブを練習することによって、急速に感覚を磨き芸域を広げることが可能になる。 基本のピッチ&ランは、20ヤード〜40ヤードの範囲で、半分キャリー、半分ランというショットである。狭めのオープン・スタンス、ボール位置は中央、クラブフェースはスクウェア、ハンド・ファーストの構え。体重を左にかけ、地面より先にボールを打つお膳立てをする。クラブを5センチほど短く持ち、左手甲がターゲットにスクウェアなアドレス。 バックスウィングは全て手と腕で行い、ほとんど手首を動かさない。クラブをベルトの高さ以上に上げてはならない。クラブをボールに戻すにつれ左手首を固くする。左手甲がターゲットにスクウェアであれば、ショットは成功である。 ボール位置を3センチほどスタンス後方に配置して同じスウィングをすれば、ロフトが減ることによってランを増やすことが出来る。反対にボールをスタンス前方に配置すればボールの軌道を高く出来る。それは数回バウンドし、短く転がった後停止するショットとなる。このように様々なボール位置で練習すれば、芸域と自信を身につけることが可能なのだ。 |
ピッチ&ランを行う決意をする以前に、地形的にピッチ&ランが可能であるかどうかを確認せよ。このショットに理想的なのは、平坦で、グリーン手前のフリンジからピンが遠く離れている開けたグリーンである。中間の地形が凸凹だったり、ハザードがグリーンを守っていたり、ピンがグリーン手前に切ってあったりしたら、ピッチ&ランは成功率が低い。高いピッチ・ショットを選ぶのがベターだ。
ピッチ&ランを遂行する場合、常に先ず心の中でプレイすること。着地点を明確にし、どれだけのランとブレイクを見込むか決断する。クラブヘッドからカップまでの完璧なショットの飛行を視覚化せよ。そして、想定した着地点まで充分届かせられる力の度合いを探りながら、数回の素振りをする」
【参考】
・「Butch Harmonのピッチ&ラン」(tips_129.html)
(November 18, 2013)
「チッピングの距離調節」(このページの上の方)という記事で「私は60ヤード以内は60°ウェッジ一本で処理する」と書きました(もちろん、木の枝などが邪魔で転がさねばならない場合は別ですが)。この技法によって、60°ウェッジによる寄せワンの数は増え続けていて、バッグから60°ウェッジを抜き出すとき嬉しくなるほどです。そんな私をHank Haney(ハンク・ヘイニィ)が非難します。
'The Only Golf Instruction You'll Ever Need'
by Hank Haney with John Haggan (HarperCollins, 1999, $25.00)
「あなたが一本のクラブでいつもチップするなら、ものごとは複雑になる。どこからでも一本のクラブで処理しようとする人々を見掛けるが、それはあまりにも難し過ぎるやり方だ。異なる距離に同じクラブを用いるにはかなりのフィーリングが必要だが、われわれの多くにそんな能力はない。どのショットでも着地点は変わらざる得ないので、クラブが正しい軌道を生むよう、かなり巧みに操らなくてはならない。それはテクニック過剰であり、着地点の数も多過ぎる。
どのクラブにするか決定する要素は、グリーンの早さ、着地点とピン間の距離、そして着地点までどれだけのキャリーが必要かである。例えば、グリーンから1メートル離れている場合と2メートルの場合だと、後者は遠くまで運ばなくてはならず、グリーンへ届かせるため力を入れて打つことになり、ランも増える。だから、もっとロフトのあるクラブが必要になる」
私の「チッピングの距離調節」法では力加減は一定です。距離が10、15 、20ヤードのそれぞれでバックスウィングのトップを変えるだけ。もちろんグリーンの勾配や湿り気などで多少塩梅しなければなりませんが。これは驚くほど効果的で、なんで今まで考えつかなかったのか悔やんでいます。
「チッピングの距離調節」は人によりクラブにより調整が必要でしょうし、ヤーデージも変わることでしょう。しかし、いったん身についたらその後のこの距離のチッピングは楽勝です。私からHank Haneyへの反論でした:-)。
【おことわり】画像はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。
(November 30, 2013)
Ray Floyd(レイ・フロイド)はThe MastersとU.S.オープンに各一回、PGA選手権に二回優勝し、世界中で66回の優勝を遂げたプロ。特に60ヤード以内のショート・ゲームは名人級。
''The Elements of Scoring' 「ゴルフで最も重要なのは2メートルのパットである。あなたが2メートル以内で確実にパットを沈められれば、チップ、ピッチ、ラグパットのターゲットを直径4メートルの円に広げられる。その円の広さは快適そのものだ。なぜならチップ、ピッチ、ラグパットなどの2メートル以内への寄せ方を修得するのは、そう難しくないからだ。だから2メートルのパットの練習には、いくら時間をかけても足りないほどだ。2メートルのパットに自信が持てれば、ロングパットを攻撃的に打てる。失敗しても、返しのパットに不安を抱く必要はないのだから。 2メートルのパットにおけるツァー・プロの成功率は平均して50%である。だからといって、あなたが三回に一回2メートルのパットに失敗するとしたら(これはシングル級にも極めて一般的なことだが)、あなたがストロークを無駄にしていないと云えるようになるにはかなりの練習が必要である。初心者でもないのに短いパットを慢性的にミスするのは、他のどんな要素よりもスコア・メーキングを害するものだ。 ミスしたショート・パットは取り返しがつかない。乱れたティー・ショット、切れ味の悪いアプローチ、あるいはお粗末なピッチやチップでさえ、ある程度までは確実なパットによって帳消しに出来る。だが、2メートル以内のパットの失敗は万事休す、一打を無駄にすることでしかない。 私がゴルフの要素のどれかの名人になれるとしたら、パット名人を選ぶ。私はパッティングというものは腕前、精神的強靭さ、知性などが組み合わさったものと考える。私は仲間たちからパット巧者とみなされ、さらに重要なことには自分自身でもそうみなしていることを誇りに思う。PGAツァーにおいては、ボールを打つのが巧くてもパッティング能力が凡庸では先ず勝てない。ボールを打つ能力が並であっても、パット名人なら優勝出来る。 私が思うに、パット名人には三つの共通項がある。 1) 常に変わらぬルーティーン プレパット・ルーティーン(ストローク前の段取り)は、ボールをカップに転がすためのベストを尽くす以外のあらゆる想念を除去してくれる。あなたのルーティーンが真にあなたの身体に滲み込んだものなら、たとえ借りて来た猫のようにナーヴァスになっていても、人生最大のパットを成功させることが出来るだろう。パット名人たちのストローク前後の動作はいつも一定で、構えてからインパクトまでの時間も不変である。効率よくてきぱきしたルーティーンを身につければ、パッティングの内容も改善される筈だ。 練習でルーティーンを構築する際、目的もなしにパットしてはならない。U.S.オープンかクラチャンの優勝がかかったパットのように想像し、常にその集中心を抱き続けること。 |
2) 快適な構え
Arnold Palmer(アーノルド・パーマー)のようにX脚の構えや、Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)のせむし男みたいな構えは、一見窮屈そうに見える。しかし、彼らはソリッドにパットするし、そのパットの成功を疑うことは出来ず、そのアクションは優雅でさえある。
フル・スウィングでのアライメントは重要だが、パッティングでは身体のアライメントよりは快適さを優先すべきだ。インストラクターたちはターゲット・ラインにスクウェアに両足、腰、肩を揃えよと云うが、パット名人であるBen Crenshaw(ベン・クレンショー)、Brad Faxon(ブラッド・ファクスン)、Jack Nicklausなどはターゲットに対しオープンに構える。私も、ラインがよく見えるので常にややオープンにしている。
パットが不調になった時、最も一般的な原因は快適さが感じられないことに由来する。パッティング・ストロークやアライメントの間違いを疑うよりも、単純に快適なスタンスを見つければ解決することが多い。
3) 不動の体勢
大きなスウィングを必要とする長いパットは例外だが、それ以外ではパット名人たちは身体を静止させ続ける。短いパット失敗の大きな原因は、インパクト前に身体を動かすことだ。特にボールを見送ろうとする頭がパット・ミスに繋がる。
かろうじてカップの縁に届くような強さで打たれたボールは、正面だけでなく左右の横からもカップに転げ込むチャンスがある。だがそういう大人し目のパットは地面の凸凹の影響を受け易く、ラインを逸れがちである。短いストレートなラインであれば、カップの奥の壁を目掛けてしっかり攻撃する方がよい」
【参考】「2〜3メートルのきわめて重要なパット」(このページ下)
(December 03, 2013)
Ben Hogan(ベン・ホーガン)は二冊の本を遺しています。
a) 'Power Golf' (1948年初版)
b) 'Five Lessons; The Modern Fundamentals of Golf' (1957年初版)
これらは以下のような題名で邦訳が出ています。
a)『ベン・ホーガン パワー・ゴルフ: 完璧なスウィングの秘訣はここにある』(2012年刊 ¥1,785)
b-1) 『モダン・ゴルフ』(1988年刊 中古)
b-2) 『モダン・ゴルフ』(2002年刊 中古、ハンディ版2006年刊 ¥1,365)
たまたま、数年前に録画しておいたThe Golf Channel(ゴルフ・チャネル)の'Ben Hogan: The Golf Swing'という番組を見直しました。インストラクーJim McLean(ジム・マクレイン)がBen Hoganのスウィングの未公開映像と二冊の本の内容を手掛かりに、われわれ一般ゴルファーが学ぶべき点と注意点を教えてくれるものです。このヴィデオはDVDとして入手可能です(2010年刊、85分)。
また、Ben Hoganの'Five Lessons'のイラストの元になった写真をDavid Leadbetter(デイヴィッド・レッドベター)が分析した本'The Fundamental's of Hogan'(2000)にも一般ゴルファーへの注意があったのを思い出し、以上二つをまとめてみることにしました。
先ず、'Power Golf'。これは1948年に出版されています。Ben Hoganの黄金時代(一年に三つのメイジャーを制覇した年)は1953年です。Ben Hoganは1940、1941、1942年と連続で賞金王になっていますが、'Power Golf'出版前のメイジャー優勝は1946年のPGA選手権只一つです。1948年にU.S.オープンとPGA選手権には優勝していますが、それは出版後のことであって、「まえがき」の筆者はその二勝について触れていません(間に合わなかった)。
二冊目の'Five Lessons'がBen Hoganの持病であったひどいフックを克服したメソッドであることは、今や誰も知らぬ人はいません。ということは、'Power Golf'が執筆された時期は、彼がフックで地獄の苦しみを味わっていた頃ということになります。
Jim McLeanは「'Power Golf'の時期、Ben Hoganの左手のグリップはロング・サム(親指を伸ばすメソッド)だった。ロング・サムはクラブの自由度があり過ぎる」と指摘します。確かにBen Hoganのトップはクラブヘッドが背中まで垂れ下がるようなオーヴァー・スウィング。まるでわれらの友人の一人みたいです。Jim McLeanは「オーヴァー・スウィングの傾向があるゴルファーは、ショート・サム(親指を縮めるメソッド)にすればオーヴァー・スウィングを制限出来る』と語っています。'Five Lessons'の時期になると、Ben Hoganはショート・サムを採用しています。
また、同じ左手のグリップですが、'Five Lessons'でBen Hoganは親指をシャフトの上に真っ直ぐ伸ばしています。Jim McLeanは「一般ゴルファーは僅かに親指を右に捩って、二つか三つのナックルが見えるようにすれば、パワフルなショットが出来るようになる」と云っています。
Jim McLeanはBen Hoganのアドレス時の腕の角度にも疑問を呈します。'Power Golf'にはBen Hoganが左肘と右肘の間にクラブを一本差し込んだ飛行線後方からの写真(ペーパーバックではイラスト)を掲載しており、「このように右腕は左腕の下に位置すべきである」とコメントしています。Jim McLeanは、「これはBen Hoganが実際にはやっていなかったことだ。これだとインパクトで右肘が内側になり過ぎ、左肩を上げ過ぎることになるのでよくない」と云っています。
同じ飛行線後方からの両腕は'Five Lessons'では逆転し、Ben Hoganの右腕は左腕より上に位置します。David Leadbetterは「これはフック対策のセットアップである。右腕が左腕の下ならドローを打つセットアップ」と説明しています。David Leadbetterは「両腕ともターゲットラインに平行なのが望ましい」と云っています。
'Five Lessons'には「両腕はこうあるべきである」として、左右の肘の内側の窪みが身体の正面を向き、さらにそれらがきつく縛られているイラストが掲載されています。Jim McLeanは「イラストではなくBen Hoganのスウィング映像を見ると、右肘は軽く曲げられリラックスしている。正面を向いたりはしていない」と云い、「一般ゴルファーは、イラストを真似して両肘を近づけたりしないように」と警告します。
'Five Lessons'の「グリップ」の章の最後の方にBen Hoganのトップの後ろ姿のイラストが出て来ます。David Leadbetterはこれを「リヴァース・ピヴォットである」と指摘します。これはBen Hoganと同時期のプロJimmy Demaret (ジミィ・デマレ)が云っていたことと同じです。もちろん、Ben Hoganのはアマチュアのリヴァース・ピヴォットとは違い、体重は右に移っているのに上体が中央に留まっているからそう見えるという程度です。しかし、Jimmy Ballardメソッド ⑥《ボール後方で捻転せよ》の趣旨(左図)に較べれば確かにリヴァース・ピヴォットに近い。
Jim McLeanは新発見の映像をスロー・モーションで見せつつ、「バックスウィングの3/4で左腕が地面と平行になった時、Ben Hogaはクラブが90°になるコックをしている。素晴らしい形だ」と云っています。これは'Five Lessons'のイラストの通りですが、'Power Golf'ではそこまでのコックはされていません。
'Five Lessons'でBen Hoganが有名にした言葉が"supination"(スーピネイション)で、これはインパクトで左手甲を弓なりに(ターゲット方向へ)反らす動きです(右の写真)。これについてDavid Leadbetterは、「Ben Hoganはフック対策のウィーク・グリップ(左手のナックル数が少ない)だったので"supination"出来たが、一般ゴルファーがこれをやるとフックになりがちである」と警告しています。
'Five Lessons'でBen Hoganは「パワーに関する限り、私は三本の右手が欲しい」と云っていますが、David Leadbetterは「彼は(手だけではなく)右サイド全体を使っているので、『三つの右サイドが欲しい』と書くべきだった」と云っています。いたずらに右手で強打しようとすると手打ちやスライスになりますので御注意。
(December 06, 2013)
ショートゲームの達人Ray Floyd(レイ・フロイド)の助言。「2メートルのパットの名人となれ」の続き。
'The Elements of Scoring'
by Raymond Floyd with Jaime Diaz (Simon & Schuster, 1998, $20.00)
「短いパットのミスはスコアを損なうが、その影響は軽微である。最終的にラウンド全体を素晴らしいものにするのも台無しにするのも、原因を辿るともう少し長い2〜3メートルの範囲のパットということになる。そういうパットは往々にしてグリーンに寄せるのに失敗した後のパーセーヴだが、実はそんなことはどうでもよい。パットに成功すれば一打儲けたような気になり、失敗すれば絶好のチャンスを逃した気にさせられる。テニス・マッチの得点のように、2〜3メートルのパットはしばしばきわめて重要である。 それでもスコア・メーキング巧者は、ラウンド中の正念場のこうした距離のパットを成功させるのが得意である。競技ゴルフで成長した人々は、この距離のパットに前向きの姿勢で全力を尽くすように見える。彼らのパットはソリッドに打たれ、澄み切った心、強靭な意志などが報われる結果を得る。 私がこの距離のパットに直面する時、私はものごとを単純化する。私は常にストローク動作に関する思考を退け、パット名人Jakie Burke(ジャッキー・バーク)の『お粗末なパットは、"where"(どこへ)でなく"how"(どのように)と考えることに由来する』という名言を思い出す。私は可能な限りソリッドにボールを打ちたい。ソリッドなコンタクトが達成出来るということは、パターがインパクトにかけてスムーズでスクウェアに振られているということを意味する。 心理的には、ストロークを始める前に私はボールがカップに入るところを視覚化しようとする。だが私はまた、自分に『パットを成功させるには完璧にボールを打つ必要はなく、適切な強さをボールに与えればカップの前後左右の四つのドア全てを利用出来る』と云い聞かす。 2〜3メートルのパットに直面する際、それが生きるか死ぬかの問題と考えるのではなく、好機としてとらえるべきである。それがあなたをリラックスさせ、可能な限りベストのストロークをさせてくれる。実際のところ、あなたに可能なのはそれが全てなのだが」 |
【参考】「2メートルのパットの名人となれ」(このページ上)
(December 12, 2013)
伝説的インストラクターHarvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)の、重い練習用クラブを振って筋肉を鍛える方法。
'The Game for a Lifetime'
by Harvey Penick with Bud Shrake (Fireside, 1996, $10.00)
「私が思うに、ゴルフの最高の訓練は重い練習用クラブを毎日振ることだ。重いクラブはゴルフに不可欠な筋肉を築き上げる。ある人が手紙で『なぜあなたは重いクラブを振れと、繰り返し繰り返し云うのか?ゴルフの筋肉を構築する技術は他にも沢山あるに違いない。重いクラブを振るのは退屈だ』と云って来た。ゴルフの筋肉は築き上げ強化され、調和が取れていなくてはならない。そのための近道はない。重いクラブを毎日数分振ることが、ボールを遠くへ飛ばすための確実な方法なのだ」
'For All Who Love the Game'
by Harvey Penick with Bud Shrake (Simon & Schuster, 1995, $20.00)
「・三週間、毎日10回重いクラブを振る。ラウンドする日は、ラウンド後(前ではない)に振ること。
・三週間を過ぎたら、毎日25回重いクラブを振る。必ず狙い所を定め、頭を安定させること。
この二、三週間後には目立った結果が出る筈だ。以上を一年間続ければあなたはクラブのチャンピオン・フライトに出場出来るだろう。
重いクラブを振るとゴルフ用筋肉が構築される。筋肉を鍛錬しその使い方を訓練すれば、自動的にクラブを早く振り始める。イーズィにスウィングしハードに打てるようになる。あなたがこの訓練を今後ずっと継続し、練習時間のほとんどをグリーンの周辺で費やせば、あなたはクラブ・チャンピオンだ。どんな相手をも打ち負かすことが出来る」
'The Swing Reaction System'(当サイト「生体力学的鍛錬ヴィデオ」tips_50.htmlで紹介)というゴルフに特化した体操プログラムは、1セッション18分かかるのですが、制作者の注意として「多くて一日おき、少なくて週に二回」という制限があります。毎日ではないのです。理由は中間の日に筋肉の組織細胞を成長させるためだそうです(制作者はワシントン大で理学療法と整形外科療法を修めた人)。このHarvey Penickの飛距離増プログラムも、一日休んでは筋肉を成長させながら続ける方が理想的かも知れません。
【参考】レンセラー工科大学(ニューヨーク州)のサイトhttp://www.muellercenter.rpi.edu/musclegrowth.phpに次のような記事があります。 「身体の特定の部位を鍛える時には24時間のインターバルを置くこと。筋肉を鍛えようとすると、多少筋肉にダメージを与える。それを修復するには時間が必要だが、その時間は同時に筋肉を僅かながら強化するプロセスでもある。言葉を替えれば、筋肉は実際には休んでいる間に成長するのだ」
【おことわり】画像はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。
(December 15, 2013)
ショートゲーム専門インストラクターDave Pelz(デイヴ・ペルツ)による厳しい戒め。
'My new research on makable putts'
by Dave Pelz with David DeNunzio ('Golf Magazine,' August 2007)
「あまりにも多くのゴルファーが、パットに失敗した後『プルした』、『プッシュした』と不平を云う。これらの不平は、強さ(あるいは距離)に注目しているのではなく、ラインに焦点を合わせていることを露呈している。本当のところは、パットの強さがブレイクの影響とラインを決め、それがカップに近づくにつれてボールが右に行くか左に行くかを決定するのだ。ゴルファーたちは、それほどラインにこだわる癖に、ラインを充分に読むことをしない。
パットの失敗を防ぐには、次の四項目を実行してほしい。
1) 平均して、ボールがカップの向こうに転がるように集中せよ。
2) ブレイクのあるパットでは、見た目よりも多めに見積もること。
3) ショートすることは、パット成功のチャンスを放棄することと考えよ。
4) アマ・サイド(カップの下方)へミスするのと同じぐらいプロ・サイド(カップの上方)にミスするまでは、あなたはまだブレイクを正しく読んでいないのだと反省せよ。
以上四つが厳守出来れば、あなたはプロのようにパットをし始めたと考えてよい」
(December 15, 2013)
私の室内パット練習はアップグレードされ、目標は2,000パット成功に倍増、距離も常時2.5メートルへと延長されました。
1,650パットを過ぎてから、練習方法も変えました。続けて何発もパットすることをやめ、一回につき1パットするだけにしたのです。TV番組のCMの時や、背を伸ばしたくなった時など、思い出したように一発だけ挑戦します。時間はかかりますが、これだとインターバルといいテンションといい、かなり本番に近いパッティングになります。その一発に失敗したら、ハイそれまでよ。口惜しいです。成功すれば、あるホールを寄せワンでしのいだようなハッピーな気分になれます。
この方式は難しい。何個ものボールを連続してパットするのは、打ちっ放しで五個も六個も続けざまにボールを打つのに似ています。失敗しても次のボールをちゃんと打てばよいとリラックスしていられます。そういうのは本番の重圧下とはまるで異なる状況であって、コースでの一発勝負でベストのショットが再現出来る保証は全くありません。パット練習でも本番と同じような一発勝負のテンションを作り出し、それを乗り越え、集中してパットを成功させる必要があることを痛感しています。
(December 15, 2013)
英語の俗語でグリーンを"dance floor"(ダンス・フロア)と呼ぶ人がいますが、ショートゲームの達人Ray Floyd(レイ・フロイド)は「グリーンはゴルファーにとっての檜舞台だと思え」と云います。「この世は舞台。人間は全て役者」と云ったシェイクスピアの言葉を彷彿とさせる発想です。
'The Elements of Scoring' 「Attitude(態度)はパッティングの要(かなめ)である。あなた自身をパット巧者にする最善の方法の一つは、グリーンにおいて存在感/貫禄を示すことだ。尊大な剥き出しの態度でなく、グリーン上で目立たない程度に傲慢になるのだ。パット出来るチャンスを楽しめ。自分の番が来たら、あなたは袖から檜舞台に進み出る。演じるのだ。 パット名人かどうかは、彼のくつろいだ動作、優雅なグリーン上の歩行、彼のストロークのリズムなどで判断出来るのが常だ。“パット迷人”の場合は動作がぎごちなく、ためらいがちな態度である。私はパット名人たちに、玉突きのハスラーが撞球台の周りを動き回る時に見せる優雅さを感じる。Ben Crenshaw(ベン・クレンショー)はグリーン上で美しいし、Corey Pavin(コリィ・ペイヴン)だってそうだ。こういう名人たちの態度を見守り、あなたもそんな風に動くべきだ。 プレッシャー下のパッティングの鍵、それはパットしたいと熱望することだ。絶好のチャンス到来と思うこと。多少背筋が寒くなる感じがしなければお楽しみのうちに入らないと思うのだ。 グリーン上での過去の良い経験を思い出せ。私はそれを『メモリー・バンク』と呼ぶ。あなたが後に活き活きと容易に呼び起こせるように、経験を深く楽しむことがとても重要だ。重圧のもとで、過去の成功の記憶が強い後ろ盾となってくれるのだ。 だから、グリーンでは多少見せかけのポーズであっても自信たっぷりに振る舞うこと。私は自分がパットに成功した後、誰かが『あんたの態度は、絶対沈めるんだという自信に満ち満ちていたよ』と云ってくれるのを好む。それは、グリーン上の態度としてこうありたいと私が願っていることであり、あなただってそうであるべきなのだ」 |
(December 18, 2013)
伝説的インストラクターHarvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)の、ショート・パットを失敗しない方法。
'For All Who Love the Game'
by Harvey Penick with Bud Shrake (Simon & Schuster, 1995, $20.00)
「上級者に共通する過ちは、グリーンであまりにも賢くあろうとすることだ。ブレイク(曲がり)に神経質になり、プロ・サイド【カップの高い方】を狙おうとする。
あなたが真にグリーンを読む名人でないなら、短いパットで微妙なブレイクを巧妙に処理しようとするよりも、カップを狙うべきだ。カップの横からボールを滑り込ませるのでなく、カップの正面に向かってストロークする。多分、正面より左右のどっちか寄りを狙うとしても、カップの外ではなく中を狙うよう心掛けるべきだ。
短いパットでカップを狙い、パターのスウィートスポットで打つべく集中すれば、あなたは使命を達成出来る。
誰でも経験があることだが、どうでもいい1メートルのパットを片手で大胆に打つ時、失敗することはほとんどない。あなたの潜在意識が実権を握り、理論家としてのあなたのどーたらこーたらという講釈を無視してボールをカップに叩き込むからである」
【おことわり】画像はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。
(December 18, 2013)
この本の著者Larry Miller(ラリィ・ミラー)は70年代にPGAツァーに参加し、その後インストラクターに転身。作家Michael Murphy(マイケル・マーフィ)の小説'Golf in the Kingdom'『王国のゴルフ』の強い影響を受け、心技体のゴルフの研究に勤しんでいます。
'Golfing in the Zone'
by Larry Miller (MJF Books, 1996, $6.98)
「日本のプロ野球選手王 貞治は、合氣道の修行から『氣』について学んだ。彼はそれがバッターボックスでの成功の理由だと語った。合氣道入門者が最初に学ぶことの一つは『一点』を意識することだとして、彼は次のように述べている。
『これはエネルギー、あるいは精神の中心であって、臍の下指二本のところに位置している。【註参照】武道の多くがこの中心を用いるが、合氣道の稽古においてもここは不可欠なものだ。合氣道にはすぐれたバランスと機敏さが必要だが、そのどちらもあなたが中心に集中していないと得られない。
【編註】「臍下丹田」は面積的に多少広がりを持つイメージですが、「一点」はその臍下丹田の中心の一点なので、非常に狭い部分であることに注意。臍下丹田は力を篭められる場所ではないので、臍下丹田の「中心(一点)」に「氣」を集中するのが「センター」(名詞、動詞)および「センターリング」(動名詞)。心身統一合氣道では心の状態が身体を動かすということを「氣の原理」と称しています。
私は身体の中に精神の中心(一点)を見つけ出せば、他のどこよりも良いバランスがとれることを発見した。例えば、もし私がエネルギーを胸に置くと、私は過度に感情的になること、またそのエネルギーを上体に置くと身体が不安定になることが分った。バランスと落ち着いた心は、このように「一点」と結びついているのだ』
私(Larry Miller)は合氣道の原理をかなり深くゴルフ指導に応用している。事実、それは効果的なテクニックの最も重要な要素の一つかと思う。私はゴルフ入門者にグリップの仕方や正しいポスチャーで立つこと以前に、合氣道の原理を教えている。
ゴルファーがメンタルな焦点を手や腕、あるいは思考(スウィングの留意事項)に合わせると、中心を用いてスウィングをする機会は、よくても最小限となる。だが彼らがプレショット・ルーティーンを始めながら彼らの『一点』に集中し、ショットの間じゅう集中し続ければ、身体は中心に留まり続け、かつ効率の良い遠心力を生み出す大きな機会が得られる。バランスは効率の良い動作の土台だから、このセンターリング(『一点』に集中すること)はどんな運動的パフォーマンスにも不可欠なものである。
ゴルファーが不安定で上体の動きに専念していると、『スウィング』するのではなく『打つ』動作に堕してしまい、結果としてパワーと正確さを犠牲にすることになる。『一点』の訓練には一本足で立ち、次に足を替えて一本で立つことだ。この動作を行う能力は、時間の長短にかかわらず『一点』に焦点を合わせることによって増幅させられる。これを行わない人は不安定でバランスを失いがちになる」
【参考】下記URLに心身統一合氣道の藤平光一氏が説く「一点の見つけ方」が掲載されています。
http://fullconkarateaikido.seesaa.net/article/34784409.html
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(December 21, 2013)
伝説的インストラクターHarvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)の、「腰の回転は45°」セオリーへの反論と警告。
'The Game for a Lifetime'
by Harvey Penick with Bud Shrake (Fireside, 1996, $10.00)
「ナウなインストラクターたちは、肩の捻転を大きくし、腰の回転をかなり制限することを強く主張する。彼らはこうすれば、身体の巻き揚げ、肩と腰の間のパワフルな緊張を作り出し、それが解き放たれる時すさまじいパワーを生むと云う。それはその通りだが、それは腰痛をも生み出し、上手・下手にかかわらず多くのゴルファーを犠牲にする。
あまりにも多くのゴルファーが腰のターンを45°にし、腰のターン抜きで身体を捩ろうとする。もし、あなたのスウィングがおかしくなり、以前の格調が微塵もなくなったとすれば、それはあなたが腰を廻していないからだ。あなたがバックスウィング、フォワードスウィング双方で腰のフル回転をすれば、あなたの格調あるスウィングも戻って来ることだろう。
腰のよい回転をする一つの方法は、バックスウィングであなたの体重が右足に感じられるまでお臍を右に廻すことだ。そしてダウンスウィングでは体重が左足にかかるまでお臍をターゲット方向に廻す。ダウンスウィングでのもう一つ別な方法は、ズボンの右ポケットがターゲットを向くまで身体を廻すことだ。
間違いなく腰をターンさせること。身体を左右に揺らして体重を片方の足から別の足に移すのではない。そんなのはターンと云えるものじゃない。私はそういうゴルファーをいやと云うほど目にしている。
お臍に水平運動をさせよ。それどころか、お臍はスウィング動作を駆動するエンジンだと思うべきなのだ」
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(December 24, 2013)
ヴェルクロは、日本では面ファスナー、マジックテープなどと呼ばれている鉤と輪の構造でくっつく着脱可能な衣類用ファスナー。インストラクターDr. T.J. Tomasi(T.J.トマシ博士)は、Jimmy Ballard(ジミィ・バラード)が提唱した《左腕を身体に密着させよ》と同じ趣旨のことを著書に書いています。注意事項付きなので熟読されたし。
'It's Good for Your Game'
by Dr. T.J. Tomasi (Andrews McMeal, 2003, $12.95)
「アドレスで左腕は胸の上に位置すべきである。スウィングの間の目標はこの腕と胸のコネクションを維持することだ。多くのゴルファーがバックスウィングでこのコネクションを失い、クラブフェースが正しくインパクトに戻るのを困難にしている。そのコネクションを感じ取るには左脇の下にヘッドカヴァーを挟み、軽く押し付けてスウィングの間じゅう保持することだ。フォロースルーで腕が肩よりも高くなれば、自然にヘッドカヴァーは落下する。
アドレスで胸の上部につけた左腕を、スウィングの間ふらふらと自由行動させないための確かな方法が一つある。左胸上部と左腕の内側に、鉤と輪の一対のヴェルクロがあり、ビッタリとくっついていると想像するのだ。あなたがそのヴェルクロのコネクションを剥がそうとすると、お馴染みのベリベリベリッ!という音を聞くことになる。あなたの使命は、その音を立てずにスウィングすることだ。
だが、そのコネクションを維持しようとする時に避けねばならない危険がある。テイクアウェイでクラブをトゥ・ライン(左右の爪先を結ぶ線)の内側に引いてしまうミスで、これは立て直すことが不可能なミスなのだ。私はあなたにコネクションは維持して貰いたいが、クラブを急激にインサイドに引くような危険は冒してほしくない。
次のガイドラインを守れば大丈夫だ。トップでクラブが地面と平行になった時、左腕と手首がシャフトと一線に並んでトゥ・ラインの真上にあること。これならあなたのコネクションは完璧で、フィニッシュに行くまでの準備が完了している印である」
実は私がJimmy Ballardメソッドを習い始めた初期に、上に書かれたのと同じ過ちを犯しました。ミドル・アイアンから下では問題ないのですが、特にドライヴァーで左脇をくっつけたままにしようと努力すると腕を高く上げられず、勢い後方へインサイドに引くしかない事態に追い込まれます。結果は盛大なプッシュやプル。これでは折角のコネクションが台無しです。左脇に隙間が出来なければいいと考えるべきでしょう。ヴェルクロだって多少伸びますからね:-)。ベリベリッ!と剥がれる音さえしなければいいのです。
(December 24, 2013)
これはDavis Love III(デイヴィス・ラヴ三世)の亡父でインストラクターだったDavis Love, Jr.(デイヴィス・ラヴ二世)が遺したノートにDavis Love IIIが自分の経験を加えて出版した本。
'Every Shot I Take'
by Davis Love III (Simon & Schuster, 1997, $24.00)
「私の父は、バンカー・ショットやチッピング、ピッチングをする前に、時々右手のアンダーハンドでボールを投げる真似をする一派だった。それはそのショットに必要なソフトさ、クラブヘッドののったりした動き、グリーン上での転がり方などを感じるためであった。あなたにもそういうやり方が有益かも知れない。彼は特にウェッジによるピッチングでそういう予行演習をした。
ピッチショットを高くソフトに打つため、彼は生徒たちに右手だけでピッチングを練習させた。ボールの下でウェッジを滑らすのは右手だからだ。【編註:ウェッジのロフトを活かすには、右手を返さずに振り抜かなくてはならない】一方、左腕はスウィングの真のクリエイターであり(これが原則)、微調整は右手によって行われる」
私【編者】もずっと以前、この下手投げの予行演習をする“一派”でした。私が初めて80を切った日(1999年)に二つのチップイン・バーディが得られたのも、この予行演習のお蔭です。60°ウェッジの高い軌道を右腕による下手投げの模擬投球でイメージし、望む着地点までの距離が得られるバックスウィングの幅を決定します。この手法はお勧めです。
(December 27, 2013)
これはインストラクターRoger Hyder(ロジャー・ハイダー、英国)によって書かれた本で、イギリス、カナダとアメリカで印刷されています。ボール位置の変更と、どこを見てスウィングするかについての関連が目から鱗のtipです。
'Golf Skills' 「多くのシニアが加齢とともに柔軟性を失う。ストレッチングを行い、肩を充分回転させることに努めること。 スタンスをやや狭めにし、両爪先を少し開く。左肘を少し折る。バックスウィングで左踵が上がるのを許す。これらによって総合的にスウィングを長くすることが可能になる。 フック・グリップを採用する。両足と腰でターゲットラインのやや右を狙う。これによってドローが打て、ボールは着地後長く転がる。 心に留めておくべきことは、ダウンスウィングでクラブヘッドの加速が最高となるポイントは、実際にはボールを打った直後であるということだ。ボール位置を左爪先前方(正面)に移せば、そのクラブヘッド・スピードの恩恵を受けることが出来る。 クラブヘッドの上にボール全体が見えるくらいティーアップを高くする。目は現在のボール位置【左爪先前方】ではなく、以前のボール位置(5〜7センチ後ろ)に集中する。実際のボールを見てはいけない。以前のボール位置を見つめること。 リラックスし、通常のスウィングをする。遠く、しかもストレートなボールが打てることにうっとりすることだろう」 最後の方の「ボールを見てはいけない」があっと驚きでした。私も上のようなボール位置を試したことはあるのですが、ボールそのものを見ちゃっていました。これだとアイ=ハンド・コーディネーションで自ずとスウィングの最低点はボール位置そのものになってしまって、打ち上げる結果にならなかったわけです。実際のボールの5〜7センチ後ろを見るというのは、何やらバンカー・ショットみたいですが、云われてみれば「なるほど!」と納得出来ます。 |
【参考】
・「飛距離の損失」(tips_113.html)
・「忌むべきヒール・ショットを回避せよ」(tips_139.html)
(December 30, 2013、改訂February 11, 2017)
これはJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)が雑誌などに書き散らしたパッティングに関する原稿をまとめた本から、バランスを改善して上達したアマチュアの実例。
'Putting My Way'
by Jack Nicklaus with Ken Bowden (John Wiley & Sons, Inc., 2009, $25.95)
「私がゴルフと実生活における体調維持に関して長年お世話になっている運動生理学者ピート・エゴスキュー氏は、完全なバランスを獲得し維持する能力が偉大なスポーツマンと人並み以上のスポーツマンとを隔てるものだと主張する。氏は、ゴルフの全ての局面においてバランスが重要であることを私に納得させた。
その一つの結果は、私が三人のアマチュアの友人のパッティングをほとんど奇跡的に改善させることが出来たことだ。私は、もっと深くバランスに集中せよという意味のたった一つのことを告げただけだった:『体重を拇指球(ぼしきゅう。親指の下の丸い膨らみ)に乗せよ』と。
パッティングで見られる最も一般的な過ち(特にアマチュアの場合)は、ストロークの間に身体を動かすことだ。足の体重を拇指球に乗せることは、身体を動かすのを難しくし、とりわけ完全なバランスを保つために静止すべき必要性をプレイヤーに意識させる。
あなたが望み通りにボールを転がせない場合、拇指球で立ってみられたい」
David Write, Ph. D.(デイヴィッド・ライト博士)が書いたものによれば、Jack Nicklausの全盛時代、彼は体重の大半を右にかけていたそうです。私は左脚よりも右脚が1センチほど長いので、釣り合いをとるために右体重でパットします。ですから、右足の拇指球に体重を乗せるようにしています。多くのインストラクションは左体重を推奨しますが、個々の身体的条件を優先させるべきでしょう。
【参考】「Annika Sorenstam(アニカ・ソレンスタム)の 拇指球に体重を乗せよ」(tips_153.html)
(January 07, 2014)
・「両腕と肩で形成される三角形を維持すること。腕や肘、手首を独立して動かさないように」(右図)
上のはJimmy Ballard(ジミィ・バラード)の言葉ではありません。彼のメソッドの ⑤《三角形とセンターを保て》にそっくりですが、実はこれはパッティングの技術書に出て来る一行です。
・ 「直立し、両肘を身体につけたままパターを腰の高さに上げ、地面と平行に構える。その状態で水平にバックストロークとフォワードストロークの動作を行なう」
右下の図は三角形を保ちながらストロークする練習法です。以下のはJimmy Ballardによるフル・スウィングで三角形を保つドリル。
「ドライヴァーのグリップエンドを胸骨につけ、両手は普通のアドレスのように金属シャフトを握る。そのまま、クラブを腰の高さで左右に何度も振る」
これも、左上腕を身体に密着させてスウィングするための練習法なので、ほぼ瓜二つ。
・「60センチ以上のパットでは、右サイド全体の動きでインパクトへとフォワード・ストロークすべきだ。右サイド(右手、右肩、背中)がパワー源となれば、ストロークから手の動きを減少あるいは消し去ることが出来る」
これもJimmy Ballardの ⑧《右サイドで火を吹け》にそっくりではありませんか。
上のパッティングに関する言葉は下記の本からの引用です。
'The Putting Prescription'
by Dr. Craig L. Farnsworth (John Wiley & Sons, Inc., 2009, $24.95)
著者のDr. Craig L. Farnsworth(クレイグ・L・ファーンズワース博士)は“パット・ドクター”を自称しており、彼が提唱するメソッドを「パット・ドクターのストローク法」と呼んでいます。それはアーク(円弧型)ストロークの一種なのですが、Paul Ruyan(ポール・ラニャン)のメソッドともStan Utley(スタン・アトリィ)のとも細部で少なからず異なっています。詳しくは「胸でパットする【パット・ドクターのストローク法】」(tips_133.html)をご覧下さい。
【閑話その1】私の推理では、Craig L. Farnsworth博士はJimmy Ballardの本'How to Perfect Your Golf Swing'を読んでいたのだと思います。そして、左脇を締めることと三角形を保つことが完璧な方向性をもたらしてくれることについて、私が「フル・スィングからチッピングにまで役立つなら、パッティングにも役立つ筈だ」と考えたのと同じ経過を辿ったに違いありません。Jimmy Ballardの本は1981年に出版された古典で、Craig L. Farnsworth博士の本は2009年ですからね。
【閑話その2】Craig L. Farnsworth博士は長くJim McLean(ジム・マクレイン)のゴルフ・スクールでパッティングを教えていました。Jim McLeanはJimmy Ballardの友人だそうですから、彼がCraig L. Farnsworth博士にJimmy Ballardメソッドを解説したり本を見せたりしたであろうことは想像に難くありません。Craig L. Farnsworth博士の本には「Jimmy Ballardメソッドをパッティングに応用した」という記述はおろか、Jimmy Ballardの名前さえ出て来ません。しかし、重要なポイントの類似性からしてJimmy Ballardの影響は大であると云って過言ではないと思います。
Jimmy Ballardメソッドの方向性は抜群ですから、それを応用した「パット・ドクターのストローク法」が悪い筈はありません。ただ私の場合、2011年に「胸でパットする」という記事を書いた折り、並行して練習・実践を試みたのですがマスターするまでに至りませんでした。メソッドへの信心が足りなかったせいかも知れません。ですが、今は違います。Jimmy Ballardメソッドの効果を知っています。そして、上述のように同じ一つの練習法(三角形を保つ)でスウィングとパッティング・ストロークの両方がマスター出来るなら、こんな効率のいいことはありません。
私の研究が始まりました。そして、試行錯誤しているうちにある発見をし、かなりいいストロークが出来るようになりました。目覚ましい成果が挙げられたら、いつかこの場で紹介する予定です。
練習を重ねているうちに、腕を縮めて三角形を極端に押し潰し、グリップエンドをほぼお臍の間近にすると、パターのコントロールが良くなることに気付きました。実は数年前、パターのグリップエンドをお腹にくっつけるストローク法を試していました。スタンダードな長さのパター(35インチ=約89センチ)をベリィ・パターとして用いるアイデアでした。当時はストレート・ストローク・メソッドでしたし、三角形を意識してもいなかったので革命的な成果は挙げられませんでした。ベリィ・パターは2016年以降ルール違反となるそうですから、グリップエンドを身体につけてはいけませんし、前腕部を身体につけるのも許されませんが、肘を身体につけグリップエンドと身体の間に僅かな隙間を残すのなら問題ありません。これだとアンカーリングではないにもかかわらず、ほとんどアンカーリングに似た安定した感覚が得られます。
(January 10, 2014)
以下の記事はパット名人Ben Crenshaw(ベン・クレンショー)が、15歳の時にテキサス州ヒューストンのChampions G.C.の持ち主であるJackie Burke, Jr.(ジャッキー・バーク二世)にパッティングを見て貰って助言を受けた時の回想。Jackie Burke, Jr.は、The Masters(マスターズ)とPGA選手権の二つのメイジャー優勝を含む全18勝、五度のRyder Cup参加など、華麗な経歴を誇っています。
'It's Only a Game' 「私(Ben Crenshaw)のゴルフが開花し始めた15歳の時、Champions Cup Invitational(チャンピオンズ杯招待)でプレイすることになった父が、私をChampions G.C.に連れて行ってくれた。父はそのコースの主であるJackie Burke, Jr.が、私のスウィングを見て助言してくれる時間を見つけてくれないかと望んでいたのだ。私のメインのコーチは常にHaevey Penick(ハーヴィ・ピーニック)だったが、その彼の師匠はJackie Burke, Sr.(ジャッキー・バーク一世)だったから、その息子も私に何かプラスになるものを授けてくれるだろうと父は考えたのだ。 私はJackie Burke, Jr.との初めてのレッスンで多くのことを学んだ。パッティングに関して、特にそうだ。彼は『カップに向かってそんなに精密なラインを想定し、【そのラインに沿って転がすことを】自分に強要しちゃいかん』と云った。『パットする時、ボールからカップまでペンキ塗りの刷毛で塗られた広いラインを想像するんだ。ボールを、その太ったデブのラインの上で精一杯の努力で転がせ。キミは人間だから、痩せた貧相なライン上でボールを転がす能力には恵まれてない。あまりにも精密さを追求すると、キミの身体は金縛りにあってしまう。ラインを広げよ。自分に許容度を与えよ。キミにはそれが必要だ』 それは、私が現在までに得た最良のパッティング・レッスンの一つだった」 同じことを、the Masters(マスターズ)とU.S.オープンに各一回、PGA選手権に二回、世界中で計66勝を遂げたプロRay Floyd(レイ・フロイド)はもっと算術的に説明します。 'The Elements of Scoring' |
「私はパッティングに関しては完璧主義者ではない。完璧なパットだけがカップに入るとは思わないのだ。カップの直径は約10.8センチである。ということは、もしパットが適切な強さで打たれれば、【編註:直径4.3センチのボールがカップの縁にかかって転げ込むことを考えれば】理想的ラインの左右に5センチずつカップに入る余裕があるということだ。【編註:横幅20センチならペンキ塗りの刷毛よりも広い】
私は、パットは完璧に読まれ打たれねばならぬと考える罠に陥るのを避け、ミスの許容範囲を自分に思い起こさせる。完璧主義は緊張を作り出し、パッティングを苛つくものにする。あなたはDave Stockton(デイヴ・ストックトン)やBen Crenshaw(ベン・クレンショー)、そして私などのようにもっと運命論者的観点に立つべきだ。あなたはそのパットを成功させると心の底から信じ、あなたに可能なベストの努力でストロークする。結果がどうであれ、あなたはパット巧者であることを忘れてはいけない、絶対に」
確かにこの考え方は心をリラックスさせてくれます。パット・ミスの許容範囲を見込むことは、競馬なら単勝馬券ではなく連勝複式、ルーレットなら一点張りでなく三目賭け(横一列の数字3つに賭ける方式)をするのに似ています。どちらも配当は少なくなるものの安全です。幅広いパッティング・ラインも一か八かの賭けではなく安全を見込んでいるので、心理的・身体的緊張が少なく済み、いいストロークが可能になります。
(January 13, 2014)
これはU.S.オープンに二回とPGA選手権に優勝し、計24勝を挙げたJulius Boros(ジュリアス・ボロス、1920〜1994)によるアドレスのtip。
'Golf Magazine's Pro Pointers and Stroke Savers'
edited by Charles Price (Harper & Publishers, 1959)
「打たれたボールを見なくとも、アドレスだけで彼がプロであるということが分る何かがあるものだ。彼はアドレスに入る歩み寄り方からして快適でリラックスしており、自信たっぷりだ。彼にはアマの上級者にも稀な(ダッファーには皆無な)品格というものが備わっている。ダッファーがプロの真似をしようとしても、ボールを打つ前に品格を失ってしまうように見受けられる。つづめて云えば、彼らは動きを忘れてしまうのだ。
プロたちは経験から、ボールを打つ前に静止することはトーナメントの最中の自殺行為であることを知っている。彼は神経と、神経による影響で筋肉がほぼ必ずと云っていいほど硬直することを知っているのだ。このテンションに抗するために、ボールにアドレスする際、少なくとも身体のどこかしら(手、腕、膝などどこでも)を動かし続けるのが賢い方法であることを私は発見した。
打つ前にターゲットを一瞥する(たった一度である)。
以上は練習ラウンドにおけるティー・ショットでも、U.S.オープンにおける短いパットでも、常に堅く守っている手順である。アドレスする際、動き続けることを習慣にすれば、快適に、リラックスし、自信を持って打てるようになる筈だ」
(January 16, 2014)
PGAツァーの中でパット名人の一人と目されているBrad Faxon(ブラッド・ファクスン)ですが、以下の彼の記事の「三角形」はパットではなくスウィングに関するものです。
'Swing Thoughts'
by Don Wade (Contemporary Books, 1993, $12.95)
「1991年のBuick Open(ビュイック・オープン)の最終ラウンドに突入した時、私は首位から五打差だったので、実際には優勝など考えていなかった。それでも、もし私が火を吹いてスコアを縮められれば、結構な額の小切手が得られるとは思っていた。その週、当時課題として取り組んでいたスウィングの鍵によって私はボールをとてもうまく打っていた。
私は、スウィングの間じゅう腕と上半身で形成される三角形を維持することだけ考えていたのだ。その考え方を、『スウィングの間じゅう"connected"(結合された状態)に留まる』と表現する人もいる。それは肝に銘じておくべき良いイメージである。そのアイデアは、あなたの両腕は絶対に回転する上体より早くは振られないということだ。これはスウィングの間じゅういいテンポを維持するのに役立つ。プレッシャーを感じる際には特にそうだ。
私は最終ラウンドの最初の二ホールでバーディをものにし、それが自信をつけてくれた。お粗末なショットが少なく、ミスしてもセーヴ出来るという、そんなラウンドだった。12番で3メートルのパーをセーヴし、13番でバーディ、14番でイーグル、16番でバーディ、18番のパーでラウンドを終了し、プレイオフでChip Beck(チップ・ベック)を下し、私が優勝した」
この三角形は、Jimmy Ballard(ジミィ・バラード)メソッドを学んだインストラクターJim McLean(ジム・マクレイン)が、この頃コーチしていたBrad Faxonに伝授したものだそうです。
次のも同書からで、PGAツァー・プロDon Pooley(ドン・プーリィ)の回想。
「私の身長は1.88センチで腕が長く、長いのったりしたスウィングをしがちで、ショットの結果が不安定な悩みがあった。それに抗するため、スウィングを引き締める鍵となるメソッドをいくつか試した。その中で最も効果的だったのは、バックスウィング、ダウンスウィング両方で可能な限り長く三角形を維持することに集中した時だった。それはフルスウィングで無理なくスウィング半径を広げてくれ、短いショットでは過度に手首を使うことを防いでくれ、私のムラのないゲームに貢献してくれた」
【参考】「Jimmy Ballardメソッド ⑤《三角形とセンターを保て》」(tips_151.html)
(January 16, 2014)
'Ball position'
from 'Golf Magazine's Complete Book of Golf Instruction'
by George Peper et al. (Harry N. Abrams, Inc., 1997, $45.00)
「ボール位置に関しては二つの流派、あるいは考え方がある。Arnold Palmer(アーノルド・パーマー)が一方の旗頭で、この一派はドライヴァーではアッパーに打つために左足踵の前方が適切だが、クラブが短くなりロフトが増えるにつれディセンディング・ブローで打つため、徐々にボール位置を後方に下げるべきであると云う。
Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)やGreg Norman(グレッグ・ノーマン)は、普通のフル・スウィングのボール位置は全て左足踵の前方で統一する。彼らは土にクラブを叩き込んでコントロール不能なフライヤーを打つ危険を冒すよりは、たとえショート・アイアンでも草の上を掃くようなショットを好む」
以下はそのJack Nicklausのメソッド。
'Golf My Way'
by Jack Nicklaus with Ken Bowden (Simon % Schuster, 1974, $14.00)
「ボール位置を一定にするゴルファーの代表にはByron Nelson(バイロン・ネルスン)やBen Hogan(ベン・ホーガン)などがいる。
私がボール位置を一定にする理由は以下の三つである。
1) シンプルであることは私のゴルフ・スウィングの目標だ。地形のせいでボール位置を変えなければならない時や尋常でないショットをする時以外にアドレスでボール位置を変えることは、不必要にスウィングを複雑にする。
2) 自由でパワフルなスウィングにおいて、クラブヘッドが真っ直ぐ動くのはほんの一瞬でしかない。もしボールを1インチか2インチ(2.5〜5センチ)下げて普通にスウィングしたら、クラブヘッドはあまりにも早くボールを打つことになる。クラブヘッドはターゲットラインの内側からボールに向かうため、フェースは右を向いているだろう。これではトップ、プッシュ、プッシュ・スライスのどれかになってしまう。逆にボール位置をターゲット方向にして普通にスウィングすると、クラブヘッドはターゲットラインの内側へ向かいつつボールを打つため、フェースはクローズになりダフりやプル、プル・フックを多発させてしまう。
3) 私のボール位置はテコの作用に関連している。テコの原理によってクラブヘッド・スピードを生むため、フォワード・スウィングで脚と腰を力強く用いなければならない。その影響はスウィング弧を少しターゲット方向に動かす。ボール位置を左足踵の前方にすることは、クラブヘッドがスウィング弧の最低点に達する前に打つため、両脚を積極的に進めることを促す。
だが、私のメソッドが万人向けだとは云うつもりはない。各人の理想的ボール位置は個々のスウィング・スタイルによって変わるものだ。一般的に云って、脚と腰で打つ人はターゲット方向、手と腕で打つ人はスタンスのかなり後方に、自然にボールを配置する。銘々が理想的ボール位置を見つける実験をすべきである」
Greg Normanにも補足して貰いましょう。
'Shark Attack!'
by Greg Norman with George Peper (Simon & Schuster, 1988, $12.95)
「短いクラブでボールを後方に下げると、基本的にクラブのロフトを変えることになる。例えば7番アイアンを使う際、6番アイアンのボール位置から1/2インチ(約1.3センチ)下げると、7番アイアンのロフトを減らし、事実上短めの6番アイアンに変貌させてしまう。私に関する限り、12種類ものボール位置を覚えるどころではなく、たった一つのインパクト・ポイントを心配するだけでもとても大変なのだ。
背が低くがっしりした体型の人は比較的重心が低く、フラットなスウィングで浅く短いスウィング弧である。こういう人はスウィングの最低点に早期に達するため、後方のボール位置を用いる。一方、背が高くひょろっとした人は重心が高く、スウィング弧も大きく広い。こういう人はスウィング中に必要とする水平の動きのために、ターゲット方向のボール位置が望ましい」
最初の本の編集者たちは次のように結論づけます。
「インストラクターJohn Jacobs(ジョン・ジェイコブズ、英国)は生徒たちのボール位置を決めるため、彼らに全部のクラブを振らせる。クラブが地面を打ったところが(そこがどこであれ)ボールを置くべき位置なのだ」
【参考】
・「体型別スウィング」(tips_54.html)
・「体型別スウィング(幅広型篇)」(tips_92.html)
(January 19, 2014)
Harvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)は「(余計なことは考えず)金槌で釘を打つ時のようにボールを打つことに集中せよ」と云いました。彼の「贅沢を云ってられない場合のように打て」という記事は大きなスウィングに関するものでしたが、その趣旨はパッティングにも応用出来ます。
右図のようにボールに釘が出ていて、その釘を金槌代わりのパターで打ち込む気になるのです。トンカチで釘を打つ時にも、釘をトンカチの真ん中(スウィート・スポット)で打とうとしますよね?パッティングの場合も、パターフェースのスウィート・スポットで釘(ボールのド真ん中)を打たなくてはなりません。
ボールの直径は約4.3センチ、それを10〜13センチのパター・フェースで打とうとすると、結構大雑把なストロークでいいような気になります。しかし、ボールの中心を外すとサイド・スピンがかかりますし(リップアウトの原因)、パター・フェースのスウィート・スポットを外すと距離が減ります。
釘を打つようにボールを打つと、以下のような効用があります。
・「これを入れればパー/バーディだ」…という邪念に邪魔されず、ストローク動作に集中出来る。
・トンカチを打つ時のように重力を利用した自然なリズムとテンポでストロークが可能。
・“釘を打つ”繊細なタッチに集中するため、頭を残したストロークが出来る。
・望んだ通りの距離を、ストレートに転がせる。
これはかなりの効用と云えるのではないでしょうか?
(January 25, 2014)
メイジャーに七勝、各ツァー総計165勝を挙げたSam Snead(サム・スニード)は技術書めいたものは出版していませんし、もともと感覚(右脳)派なので理論にはさして関心がなかったようです。で、彼のテクニックを理解するには彼が語ったことや、彼の自伝とかエッセイ、フィルムやヴィデオなどを手掛かりにするしかありません。この記事の筆者Dick Aultman(ディック・オールトマン)は'Golf Digest'誌の元編集者であり、Sam Sneadの本の共著者でもありますから、信頼出来る観察眼を持った最良の理解者と云えるでしょう。
'The Methods of Golf Masters'
by Dick Aultman & Ken Bowden (The Lyons Press, 1975, $19.95)
「Sam Sneadはヴァージニア州の田舎の牛と鶏を飼育する農家の四男として生まれた。彼は300ヤード飛ばす長兄のスウィングを、カエデの木を削ったクラブで模倣した。彼のスウィングは試行錯誤の結果であり、大部分は彼自身のフィール(感触)で学んだものだ。自己流であるがゆえに、スウィングであれパッティングyipsであれ、問題は自分で解決出来るのが取り柄だった。
彼はスウィングする時、意識的に考え過ぎることを意図的に避けた。『行動するより考えることは、ゴルフのビョーキNo.1だ。もし私が最初のショットを放った時、スウィング動作についての理論にがんじがらめになっていたら、ただのダッファーに過ぎなかっただろう』と彼は云う。Sam Sneadは確かに書かれたものであれ耳で聞くものであれ、ゴルフ・インストラクションなるものとは無縁だった。だが彼はゴルフを学ぶ者がテクニックを適用する際、快適に感じられなければそのテクニックは無価値であると強く意識していた。彼はまた、スウィングのいくつかの部分は何千回も練習場で試さない限り快適に感じられないことも覚っていた。
’Golf Digest’誌が何人かのツァー・プロやインストラクターに正しいスウィング・テンポについてアンケートを取った時、Sam Sneadは簡単に"I try to feel oily."(油っこい感じを追求する)と述べた。われわれは加齢とともに、意識による身体のコントロールが困難になる。『バックスウィングを遅くしようと思っても、そうならない!』という愚痴は一般的なものだ。Sam Sneadのようにいいゴルフを息長く続けるには、彼の"feel oily"(油っこい感じでスウィングする)を学ぶべきではなかろうか?
Sam Sneadの鍵の一つは、バックスウィングの間にクラブを単に“slot”(定位置)にセットすることだ。バックスウィングでその位置にクラブを収めることが、伸び伸びしたフォワードスウィングによってクラブヘッドにインパクトへ向かう素晴らしいスピードを与えてくれることを知っている者は彼以外にいまい。彼のバックスウィングのトップにおける“slot”は、彼の右肩と頭の間の空間である。彼は単純にクラブを引き上げ、その“slot”に収め、クラブヘッドが彼が望む方向(ターゲット)を指すようにするだけである。
その定位置に繰り返し繰り返しクラブをセットするため、彼は自分のスウィングを車輪とした場合、頭はハブ(中心)、真っ直ぐ伸ばした左腕はスポークだと想像する。このスポークを引き上げて手が“slot”に辿り着けば、クラブシャフトは自動的に正しく配置されたことになる。
Sam Sneadの鍵の二番目は最大速度以下でスウィングすることにより、急がないペースであることだ。彼は、バックスウィングもダウンスウィングもゆっくりスタートさせることを強調する。通常、彼は自分の持てるパワーの80〜90%で打つと云う。大概のゴルファーが余分の飛距離を得ようとする場合、無意識にスウィングのトップから手か肩、あるいは手と肩双方を攻撃的に用いるが、それは概ねアウトサイドへのループを描き、急激過ぎるダウンスウィング・プレーンとなってしまう。Sam Sneadのような両足・両脚にリードされた場合にのみ、正しいダウンスウィング・プレーンを維持しつつテコの作用を増大させることが出来る。
三番目の鍵は、インパクトで彼の腕とクラブシャフトを単純にアドレスと同じ位置に戻そうと考えることだ。
もう一つの鍵となる想念は、両手を高く上げたフィニッシュである。
Sam Sneadのスウィングは、急がない流れるような優雅さでよく知られている。そう見えるのは、主に全ての動きが一体となっているせいだ。彼が登場した30年代は、まだ“ハンド・アクション”が強調されていた時代である。しかし、彼のスウィングは胴体、両脚、両腕を“ワン・ピース”として統合した模範となった。彼の腕は身体の回転と直接結びついて持ち上げられる。手と手首による独立した持ち上げや回転といったものは全く見られず、ダウンスウィング開始時の手による投擲めいた動作もない。つづめて云えば、彼の手はスウィングの間じゅうずっと控え目である。Sam Sneadのスウィングがとてもスムーズに見えるのは、何にもまして手首のギクシャクした動きがないせいだ。それはまた、彼が長い間驚くべきムラのなさを達成している主な理由でもある。
彼はクラブを主に左手の最後の二本の指(薬指と小指)でコントロールするが、彼はそのグリップ圧をフォークを握ることやビリヤードのキュー(玉突き棒)を握る強さになぞらえている。
アドレス時、彼は優雅にワグルし、その間じゅう足と脚を動かして"oily"(油っぽい)感じを得ようとする。
Sam Sneadはクラブを低くゆっくり引き始める。それは左腕をフルに伸ばすことと肩を充分回転させることを促す。遅めのテイクアウェイは、無意識に右手が主導権を握ろうとしてクラブを引っ掴む(これは右腕と肩を緊張させ、バックスウィングを短くしてしまう)懸念を最小限にする」
Sam Sneadの言葉:「遠くへ飛ばそうと考えない時、ボールはかなりの頻度で遠くへ飛ぶ」
【参考】「Sam Sneadのヴィデオ」(tips_37.html)
*インストラクターJim Mclean(ジム・マクレイン)によるSam Sneadのスウィングの詳細分析。
(January 28, 2014)
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