左脇にタオルやヘッドカヴァーを挟む練習法は珍しくありませんが、これは両脇に挟みます。「体型別スウィング」共著者の一人Mike Adams(マイク・アダムズ)によるtip。
'Add 10 yards—now!'
by Mike Adams ('Golf Magazine,' December 2008)
「長めのタオルを胸に巻き、その両端を左右の脇の下に挟んで保持する。ボール無しでアドレス体勢をとり、タオルを落とさないように素振りをする。
このドリルはバックスウィングで右腕を正しく折り、フォロースルーで左腕を正しく折ることを教えてくれ、スクウェアなクラブフェースを保ってくれる。1/2スウィングから始め、タオルを落とさないでスウィング出来る範囲内で大きなスウィングへと移行する。
・バックスウィングで左脇が胸から離れたら、クラブはあまりにもあなたの背後に引かれている。
・ダウンスウィングで左肘が浮いたら、クラブシャフトはあまりにもあなたの身体から離れ過ぎている。
・インパクトで左肘が折れると(=チキン・ウィング)、スライスへの直行便である。
両腕を胸に付けたままスウィングするのは、パワーへの鍵である。スウィングのどの時点をとっても、両方の肘が地面を指しているようにすべきだ」
(September 05, 2013、改訂June 04, 2015)
インストラクターJimmy Ballard(ジミィ・バラード)が六つの有名な格言に反論します。全て有名なものばかりなので急には信じられないかも知れません。しかし、「肩関節」ではなく《左上腕部と左脇を密着させた左肩周辺一帯を廻せ》というJimmy Ballardメソッドを実行するには、これらのいくつかを理解していないといけません。
'How to Perfect Your Golf Swing'
by Jimmy Ballard with Brennan Quinn (Golf Digest/ Tennis Inc., 1981, $13.50)
「1. 頭を上げるな
疑いもなく最古の、しかも神聖なる訓戒とされている格言だが、スウィングの鍵として最も危険なものの一つだ。これを遵守するため頭を固定しようとすると、バックスウィングでリヴァース・ピヴォット【編註:左足体重でバックスウィングし、右足体重でインパクトを迎えるギッコンバッタンするミス】になり易い。パワーを生み出そうとするなら、頭は背骨に追随して動かなくてはならない。頭を静止させようとする努力は、自然なリズムと身体各部の協調動作を破壊する。頭を下げ続けようという意図的な試みは、肩と上体の動きを制限し、掬い打ちを招く。この格言は捨て去るべきである。
2. 左腕を伸ばせ
クラブ、バット、ラケット、櫂(かい)、棒などを扱ういかなるスポーツでも、活き活きとした、基本的に柔軟な腕が不可欠である。腕を硬直させると、パワーと正確さを奪う望ましくない緊張と制限を生じる。
一般的ゴルファーには手・腕が主体のスウィングは最大の敵である。優れたゴルファーは地面をしっかりと踏まえ、下半身でスウィングを開始する。その結果身体と腕が動くのだ。意識的に左腕を堅くすると両脚と上体の動きを制限し、プレイヤーの自然なリズムと身体各部の協調動作が破壊される。堅くした左腕を維持しようという気持ちは忘れ去ること。腕と手は身体全体の動きに反応すべきもので、絶対に支配的であってはならない。
3. グリップエンドを引き下ろせ
これは手首のコックを保ち、レイトヒットを生み出そうという企てであり、スウィングの分解写真を見たインストラクターやプレイヤーたちが意識的に模倣しようとして始めたものだ。しかし、急速に動くゴルフ・スウィングにおける一局面の動きは、原因ではなく結果に過ぎない。そういう一局面の形を教えるなんてことは所詮不可能である。ゴルファーがグリップエンドを引き下ろそうと意識的に努力すると、ムラのないスクウェアなインパクトを迎えるチャンスを抹殺する。
『引き下ろせ』とか『レイトヒットせよ』などの指示に従ってはならない。左腕は横への動きをするものであって、縦の動きではないからだ。このアイデアはあなたの記憶装置から消し去ってほしい。
4. ボールの後ろに留まれ
これはトップ・ショットへの近道である。ボールの後ろに留まろうとする努力は、両脚と身体の大きな筋肉の動きを殺し、自然なリズムと筋肉の共同作業を破壊し、正しくヒットダウンして打ち抜くのではなく掬い打ちする結果に繋がる。
5. ターンせよ
身体の『ターン』を強調すると、ゴルファーの95%の自然なリズムと筋肉の共同作業を損なってしまう。スウィング・キーとしてのこの文句は、自然で充分な『体重の水平移動』を生むのではなく、身体を捩る原因となってしまう。あなたがフラミンゴのように一つの股関節で立っているならともかく、ゴルフ・スウィングは二つの股関節の上で遂行されるものだ。【編註:彼はMIT(マサチューセッツ工科大学)に行って、彼の説が正しいことを確認したそうです】 望ましいのは単純な『ターン』ではなく、体重を右脚の内側に移しながらの『捻転』である。
6. リヴァースCのフィニッシュをせよ
『ボールの後ろに留まれ』という文句の悪影響で、頭がほぼ右足の真上になる弓なり(逆C)のフィニッシュが一時流行した。これを強健で優雅でさえあると受け止めた人が多かったが、トップするボールが好きでぎっくり腰が苦にならなければどうぞおやんなさい。偉大なゴルファーの全ては肩を水平にし、背を伸ばして立ったバランスのいフィニッシュをする。Johnny Miller(ジョニィ・ミラー)が成功したのもそういうフィニッシュによるスウィングをしていた時だったが、リヴァースCのフィニッシュをするようになってからスランプに陥った。水平な肩のフィニッシュに戻ってから、彼はまた優勝するようになった」
【おことわり】画像はhttps://pbs.twimg.comにリンクして表示させて頂いています。
(September 08, 2013)
インストラクターJimmy Ballard(ジミィ・バラード)のメソッドは、彼の師匠から受け継いだものだそうです。彼の師Sam Byrd(サム・バード、1906〜1981)は世にも珍しい人物でした。
Sam Byrdは1929〜1936にニューヨーク・ヤンキースに在籍し、"Babe Ruth's Legs"(ベイブ・ルースの脚)と呼ばれました。Babe Ruthのピンチランナーとして頻繁に登場したからです。新人としてBabe Ruthと二人揃ってファウル・ボール拾いをさせられていた当時、バッティング練習の時には左脇の下にタオルを挟んで、左上腕と上体の大きな筋肉を密着させるというアイデアを用いました。Babe Ruthがホームラン王になったのは御存知の通り。
Sam Byrdは球界を引退してプロ・ゴルファーに転身。1941年と1942年のthe Masters(マスターズ)に二度とも三位に入り、1945年のPGA選手権では優勝者Byron Nelson(バイロン・ネルスン)に次いで準優勝。PGAツァー全体で25勝を挙げたそうです。
Sam Byrdはアラバマ州Birmingham(バーミングハム)で練習場経営者兼インストラクターとなりました。そこでアシスタント・プロとして雇われたのがBirmingham近郊で生まれ育ち、ゴルフの才能を発揮していたJimmy Ballardでした。師匠Sam Byrdは彼にハンカチを左脇に挟む練習法を伝授しました。これは現在ではVijay Singh(ヴィジェイ・スィン)を始めとするツァー・プロたちの、ゴルフ用手袋を挟んでの練習に引き継がれています。
Jimmy Ballardは次のように云っています。「私は基本的にウン十年も前にSam Byrdが教えてくれたのと同じ基礎を教えているに過ぎない」 つまり、Jimmy Ballardメソッドは元をただせばホームランを打つためのメソッドだったわけです。飛距離が伸びる筈です。
(September 11, 2013)
インストラクターJimmy Ballard(ジミィ・バラード)が著書'How to Perfect Your Golf Swing'『完璧なスウィングの構築法』で展開した理論は、古今の名著のエッセンスを集めた二冊の本に抜粋で紹介されています。2005年に出版された'Great Golf'(大型判360ページ)は150年のゴルフの歴史の中から127冊の書物の粋を網羅したもので、これにはJimmy Ballardの本から二ヶ所、1) 'Triangle and Center'(両腕の三角形とセンターを保て)という部分と、2) 'The backswing: Coiling behind the ball'(ボールの後ろで捻転せよ)という部分を選んでいます。
もう一冊、同年刊行の'The Secret of Golf'(中型判405ページ)は、1905年から2005年までの100年間に発表された47冊の本の核心部分を紹介していますが、これにもJimmy Ballardの本の一部が採録されています。こちらの編纂者は'Connecting the arms to the body'(上腕部と身体を密着させよ)という部分を選んでいます。
それほどの名著を著したインストラクターなのに、なぜ彼はButch Harmon(ブッチ・ハーモン)やDavid Leadbetter(デイヴィッド・レッドベター)らと肩を並べていないのか?
ゴルフ・ライターJim Dodson(ジム・ドッドスン)による'The Ballad of Jimmy Ballard'『ジミィ・バラードのバラッド(譚歌)』という記事を見つけました【http://www.departures.com/articles/ballad-of-jimmy-ballard】。これには「Jimmy Ballardメソッド創世記」(上の記事)よりも詳しい前史が記されていて、なおかつJimmy Ballard理論がなぜ一般に膾炙していないかの理由も明らかにされています。筆者Jim DodsonはJimmy Ballardメソッドによって、7のハンデを2.5に出来たそうです。
筆者はJimmy Ballardに単刀直入な質問をした。「何故あなたはDavid Leadbetter(デイヴィッド・レッドベター)、Dave Pelz,(デイヴ・ペルツ)、Rick Smith(リック・スミス)、Butch Harmon(ブッチ・ハーモン)などのように有名人でないのか?彼らを束にしたよりも多くのチャンピオンを生んだというのに?」
Jimmy Ballardは笑いながら次のように答えた。「性格の問題だと思うね。私は気性が激しく、気分を隠さないからな。善かれ悪しかれ旧派であって、最近の連中のように口先がうまくなく、洗練されてもいない。私の理論は、そういう連中が崇めている最近の理論(それはあなたのスウィングを完全に破壊するものだ)と正反対だしね。そもそも私のキャリアの初めから、私はインストラクター・ビジネスのアウトサイダーだった。私は今もPGA of America(レッスン・プロ、インストラクターを統合する組織)のメンバーじゃない。私はゴルフ界の異端者なんだ。しかし、私の原理はBen Hogan(ベン・ホーガン)にヒントを与えたものと同じだ。新奇なものじゃないが、見事に役立つ」
Jimmy Ballardの思想の基盤は1960年に遡る。彼は元ニューヨーク・ヤンキースの野球選手で、PGAツァーに転身して活躍後に引退したSam Byrd(サム・バード、1906〜1981)のもとで働いた。Sam ByrdはPGAツァー全体で25勝を挙げただけでなく、1941年と1942年のThe Masters(マスターズ)に二度とも三位に入り、1945年のPGA選手権では優勝者Byron Nelson(バイロン・ネルスン)に次ぐ準優勝を遂げた。Sam Byrdは、アラバマ州Birmingham(バーミングハム)のパー3のゴルフ・コースと打ちっ放し練習場のオーナーとなり、アシスタントにアラバマ州ジュニア・アマ・チャンピオンとなった17歳のJimmy Ballardを雇ったのである。
Jimmy Ballardは師Sam Byrdについて次のように語る。「Sam Byrdはピュアなボールを打った。しかし、論争を呼ぶ人物でもあった。彼は野球とゴルフのスウィングは同じものであり、両者の違いはスウィング・プレーンでしかなく、野球の打法はゴルフにもそっくり当てはまるという立場を貫いた」Sam Byrdはヤンキース時代ホームラン王Babe Ruth(ベイブ・ルース)と遠征先のホテルでのルームメイトであり、Babe Ruthが彼に《左脇の下にハンカチを挟み、スウィングの間中左腕を身体に密着させ続ける》という秘訣を教えてくれたのだった。
Sam Byrdはまた、巧いゴルファーは野球の強打者同様、バックスウィングで右足をがっちり支え、身体が自然に捻転するにつれ頭を若干右に動かし、身体の右サイドによってターゲット方向に火を吹くパワーを獲得するのだということを確信していた。
「一方は水平のプレーン、他方は傾いだプレーン。それ以外はゴルフも野球も全く同じだ」とJimmy Ballardが師匠の福音を口真似する。「有名なスポーツ・ライターのGrantland Rice(グラントランド・ライス)が、『ゴルフと野球のスウィング比較の本を出そうじゃないか』と云って来たが、Sam Byrdは『その本は凄く薄っぺらなものにしかならんよ』と笑っただけだった」
Jimmy Ballardによれば、Ben Hogan(ベン・ホーガン)に初めてハンカチと身体の捻転について話したのはSam Byrdだった。そのアイデアは明白にBen Hoganに多大な衝撃を与えた。それ以前のBen Hoganは慢性のダック・フックに悩まされており、ツァー生活を諦めてテキサス州でレッスン・プロにでもなるほかないところへ追い込まれていた。しかし、Sam Byrdのアイデアの【左前腕と身体を密着させる】"connection"と、独自の不屈の粘り強さを武器にしてBen Hoganは史上最高の正確無比なプレイヤーに変貌し、'Five Lessons: The Modern Fundamentals of Golf'『モダン・ゴルフ』(1948)の著者ともなったのである。
【編註】1991年、'Golf Digest'『ゴルフダイジェスト』誌編集部にBen Hoganのマネージャーから連絡があり、「Hoganにはまだ公開していない秘密がある。六桁(10万ドル)くれるなら話してもいいと云っている」という話。あまりにも高額なので'Golf Digest'誌がこの申し出を断わったため、Ben Hoganは1997年に“最後の秘密”と共にあの世に逝ってしまいました。私はHoganが漏らさなかった最後の秘密とは、Sam Byrdから頂いた左前腕と身体を密着させる"connection"のことだったのではないかと推測しています。
Jimmy Ballardは云う、「Ben HoganはSam Byrdにちゃんと感謝の言葉を呈しなかった。私が教えた偉大なプレイヤーたちの幾人かが私に謝辞を呈してくれないのと同じだ。私は彼らのゲームを高みに引き上げるため、スウィングの原理を理解させる手伝いをしたんだが…。私は彼らに云うんだ、『私は一発もボールを打ってないからあんたの優勝に関して謝辞を得たいとは思わない。私が欲するのは、あんたのスウィングを助けるための情報を与えたことについての言及だけだ』とね」
練習場における21年間のSam ByrdとJimmy Ballardの共同作業は、全米、アラバマ州などの女子アマ、ジュニア・アマ等のチャンピオン軍団を輩出し、周囲が刮目し、同時に妬みを買う因にもなった。Sam ByrdはPGA of AmericaのA級インストラクターの資格認定証を持っていたし、彼の下で五年の修行を重ねたJimmy Ballardも同様だった。「しかし、あるプロ=アマに出た後、PGA of Americaから破門状を叩き付けられた」とJimmy Ballard。「裁判で争うことも出来たが、私は独自の道を歩むことにしたんだ」
1970年代初頭、Jimmy Ballardはアラバマ州の田舎のコースで晴れてレッスン・プロに昇格し、その田舎へPGAツァーの紳士録が出来るほど有名プロが続々押し掛けて来た。アラバマ州のPGA of Americaグループの名簿には載っていないのだから、口コミだけが頼りだった。そのうち、PGA of Americaが彼を捜し出し、再度メンバーになるよう勧誘した。だが、正式の認可を得るにはPGA of Americaのティーチング・スクール(インストラクターを教える学校)を卒業することが条件だった。Jimmy Ballardは云う、「PGA of Americaとの関係を修復するのはこちらの希望でもあったが、彼らの学校で彼らのスウィング理論を受け入れることは不可能だった。私は石頭だったんで、彼らに『ゴルフ・ショットを手と腕でコントロールするなんて大間違いだし、スウィングの間に頭を動かしてはならないと主張するのも間違いだ』と云ってやった。彼らは間違いだらけなので、PGA of America会員の称号を得るためだけに彼らの学校に通い、彼らの理念を受け入れたりしたら、私は大嘘つきになったことだろう」
Jimmy Ballardは1983年にフロリダ州のDoral(ドラル)に移り、Hal Sutton(ハル・サットン)やCurtis Strange(カーティス・ストレンジ)らのメイジャー優勝を手助けし、本('How to Perfect Your Golf Swing'『完璧なスウィングの構築法』)も出版して成功した。'Golf Digest'誌がティーチング・スタッフの講師として招聘しようとした。「思い返すと後悔しきりだが、私はその話を断ったんだ」とJimmy Ballard。「そこには既にJim Flick(ジム・フリック)とBob Toski(ボブ・トスキ)という有名な二人が揃っていて、私と異なる理論を教えていただけでなく、私の理念の多くを愚弄していたんだ。例えば、右脚で踏ん張るとか自然な捻転とかについてだ。彼らは腕と手がゴルフ・ショットをコントロールすると断言し、それはPGA of Americaの多くの教師たちによって支持され普及されていた。だがそれは私には支持出来ないものだったし、私は彼らの原理を是認出来なかった。だから、私は'Golf Digest'スクールには加わらず、『知る人ぞ知る』という存在に甘んじることにしたんだ」
Jimmy Ballardの最も論争の的となる技術は、スウィングの定説を根底から覆すものだ。彼は「スウィングの間中、頭を動かすな」、「左腕を真っ直ぐ伸ばせ」、「グリップエンドを引き下ろせ」、「インパクトではボールの後ろに留まれ」、「リヴァースCのフィニッシュをせよ」などを真っ向から攻撃する。彼にとって、それらは全て"connection"の敵なのである」
【おことわり】画像はhttps://pbs.twimg.comにリンクして表示させて頂いています。
(September 17, 2013)
'Putting under stress' Greg Norman(グレッグ・ノーマン)の有名なThe Masters(マスターズ)における大破綻の後、NBCのニュース番組が「なぜビビるのか?」についてアリゾナ州大に調査・研究を依頼した。スポーツ心理学者であり、LPGAのインストラクターでもあるDebbie Crews, Ph.D.(デビィ・クルーズ博士)が、NBCの資金援助を得てゴルファーたちにパットさせ、脳の活動状況を脳波測定装置を用いて調査した。ゴルファーたちは、次のような段階でプレッシャーを与えられた。 その結果、5人のゴルファーが成功して300ドルを勝ち得、5人が失敗した(NBCは罰金を不問に付した)。驚くべきことに、成功したゴルファーたちは、失敗したゴルファーたちと同程度の不安感を抱いていた。何がNick Faldo(ニック・ファルド)とGreg Normanを分けたのか? Dr. Crewsは云う、「失敗したゴルファーたちはプレッシャーが増すと、左脳主体でパットしていた。成功したゴルファーたちは、左右の脳を平均的に活動させていた。重大な局面を乗り切るには、右脳の創造性に任せるべきなのだ。視覚的イメージとターゲット認識は右脳で生み出される。左脳が優勢過ぎると、ゴルファーは「おれは何をしているのか?」、「おれのストロークはどうか?」、「アライメントは正しいだろうか?」などという自己確認に終始する。こういう想念はトラブルに繋がる」 以下はDr. Debbie Crewsによるプレッシャー克服法である。 1) 深呼吸せよ:単純だが効果的である。排気と共に雑念も吐き出す。 2) 主たる目的を設定せよ:右脳の活動を助けるため、ターゲットを目的とせよ。例えば、70ヤードのピッチングを行う場合、「3メートル手前に着地させカップに向けて転がす」というポジティヴ・イメージを抱く。もし、あなたが設定した目的が「完璧な3/4のバックスウィングを行う」というものだとすると、左脳が全てを統御し、身体は自由な遂行能力を失ってしまう。 |
ただし、左脳の働きは完全に排除すべきものではない。ショット遂行には、左脳の分析能力も必要である。注意すべきは、多くのゴルファーは右脳の創造性が入り込めないほど、左脳優先になりがちだということだ。
3) 特定せよ:右に池があるホールの長いティー・ショットを放つ場合、「池を避けたい」とか、「フェアウェイに打ちたい」というぼやけた方針ではなく、「左のラフ方向にフェードを打ち、フェアウェイ中央の茶色い地点までカットさせたい」という風に考えるべきだ。意図が鮮明であれば集中するのも容易である。
4) ボールの後方で思考をやめよ:どこにどう打つかの決断はプレショット・ルーティーンの前に終わらせること。アドレスを始める前に思考段階は完了していなければならない。
5) 素振りはプレショット・ルーティーンに含めるな:どこにどう打つかの決断をした後の素振りは、心理的な弾みを停止させてしまう。素振りしたいなら、思考段階以前にすべきである。
6) 快適であれ:Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)のように屈み込んで背中が痛むなら、そのポスチャーはやめるべきである。
7) 大切な最後の一瞥:ターゲットを見る知覚体験は右脳を刺激する。最後の一瞥で、ターゲットとあなたが視覚的に結びつくようにせよ。
8) 深呼吸で終了せよ:深呼吸をバックスウィング開始の引き金とする。完全に排気し、それからクラブを引く。毎回これを行えば、タイミングを整えるだけでなく、生理的なスウィング開始のシグナルとなる」
(September 21, 2013)
「プレッシャーを克服する」で紹介したスポーツ心理学者であり、LPGAのインストラクターでもあるDebbie Crews, Ph.D.(デビィ・クルーズ博士)によるプレショット・ルーティーンのあるべき姿。
'Putting under stress'
by Debbie Crews, Ph.D ('Golf Magazine,' March 2001)
「1) ターゲットを1/2秒長めに凝視せよ。それは、潜在意識に動きを作り出す全ての要素を駆り出す時間を与える。この凝視の際、意識的には何も行わないこと。単にターゲットに目を向け、心がそこに赴き、戻って来るままにする。
2) ルーティーンを遂行しながら、各段階で"yes"(イエス)と云う。"Yes"は各段階が終了し、やり直す必要がないことの宣言である。全てが終了した時、残されているのはスウィングを実行することだけある。
3) 心象を完結させよ。宙に浮かぶボールだけでなく、その飛行、着地、転がり、そして停止までを感じ取る。これは脳へのプログラミングを完結させる。
4) ルーティーンの間に何かに邪魔されたり、集中心を失ったりしたら、起った問題に妥協するのでなく、急停止し、振り出しに戻って各段階をやり直す」
(September 21, 2013)
87歳となったBob Toski(ボブ・トスキ)ですが、老いてなお矍鑠(かくしゃく)として、75でラウンドしていることを自慢したりしています。ここではLPGAについての部分を紹介。
'They call me godfather'
Interview by Alan Bastable ('Golf Magazine,' October 2013)
「Q(編集部):あなたはTom Kite(トム・カイト)やJudy Rankin(ジュディ・ランキン)など偉大なプレイヤーを教えたことがあるが、成金物語の最たるものは2005年のU.S.女子オープンに優勝したBirdie Kim(バーディ・キム)でしょう。 Q:お金が動機付けになったんだ。 Q:一打差でU.S.女子オープンに優勝した後、彼女はどうなったんです? |
Q:育てたいプレイヤーがいるとしたら、それは誰ですか?
Bob:うむむ。私はプレイヤーに接近する類いじゃない。あなたは病気なら医者を探すだろうが、医者は患者を探し廻ったりしないもんだ。そうは云っても、私はMichelle Wie(ミシェル・ウィ)を育てたいとは思う。あの子は出来る!彼女は信じられないほどの力強い才能を持っている。
Q:何がいけないんでしょう?2010年以来優勝してませんが。
Bob:潜在的エネルギーは運動エネルギーに変換されねばならない。稲妻は偉大な運動エネルギーを持つが、どこに落雷するか自分じゃ解らない。私の仕事は潜在的エネルギーを運動エネルギーにし、どのように、どこへ落雷すべきかを教えることだ」
(September 24, 2013、改訂January 02, 2017)
Raymond Floyd(レイモンド・フロイド、愛称レイ)はPGAツァーで四つのメイジャーを含む35勝を挙げ、世界名誉の殿堂入りしているプロ。1998年に出版された本ですから、現在のプロたちのクラブヘッド・スピードや飛距離のデータは異なるでしょうが、彼の論旨には変わりない筈です。
'The Elements of Scoring' 「プロたちはほぼ常にゴルファーとしての彼ら自身の強みと弱みを把握している。ところがアマチュアは彼らのゲーム(どれだけ飛ばせるか、フェアウェイ・ヒットとパーオン率、どれだけボールの軌道を曲げられるか、どれだけスピンをかけられるか、自分の傾向、自分の能力の限界等々)に関して大きな考え違いをしている。 ハイハンデのアマチュアの多くがショートする。それはボールをソリッドに打てないせいもあるのだが、ソリッドに打てたとしても情けないほどショートする人が多い。これはTVで見るプロの飛距離に毒されたクラブ選択のミスでもあるし、多くのアマチュアが自分のキャリーを知らず、ラン込みの距離だけを覚えているせいでもある。また、アマチュアはどのショットでもフル・スウィングする。彼らは、いいゴルファーはアイアン・ショットでは常に余力を残して打っていることを知らないのだ。また、ボールを遠くに飛ばすというエゴの要素も絡んで来る。それはアマチュアが彼のある日のベスト・ショットを自分の実力と考え、一生に一度のショットの記憶に基づいてクラブを選択するせいだ。 これを解決する方法の一つは、レンジ・ファインダーを用いてボールの着地点によってキャリーを調べることだ。 もう一つの方法はクラブヘッド・スピード計測器を用いることである。ここで参考にすべきことは、平均的PGAツァー・プロのドライヴァーのクラブヘッド・スピードは47.4 m/secだということだ。1996年のPGAツァーにおけるドラヴァーの飛距離は266ヤードだった。これはほぼ完璧なボールとのコンタクトと効率的なクラブヘッドの軌道によって遂行された結果であり、おおむね固くランの多いフェアウェイに打たれたものであることに注意。 あなたのクラブヘッド・スピードが40.2 m/secだと仮定すると(それは尊敬に値する数字である)、あなたの良好なドライヴァー・ショットの飛距離は(最高でも)15%少ない225ヤードとなることだろう。私(Ray Floyd)のドライヴァーのクラブヘッド・スピードは49.2 m/secで、270ヤード弱が私の平均的飛距離だ。私は7番アイアンをスムーズに振って155ヤード飛ばす。その伝で計算すれば、クラブヘッド・スピードが49.2 m/secのアマチュアの7番アイアンの飛距離は130ヤード以下の筈だ。だが私は、アマチュアが150ヤード必要な時に7番アイアンを選んでショートする姿をうんざりするほど目撃している。これは、トランプの一人ゲームでインチキをするのと同じ感覚に近い。 あなたのドライヴァーのクラブヘッド・スピードが40.2 m/sec以下で、ボール軌道が極めて低い傾向があるなら、あなたの2番アイアン、3番アイアン、4番アイアン等の飛距離は実質的にほとんど変わらない筈だ。だとすれば、あなたは4番アイアンより上のクラブを持つ必要はなく、9番や11番ウッドなどを持つべきだということを意味する。 |
あなたのクラブヘッド・スピードが44.7 m/secに近いかそれ以上だとしても、あなたもショート病に冒される危険はある。多くのプロが85%の努力でアイアンを打つことを忘れないでほしい。私もそうしており、飛距離とボール軌道のよいコントロールが得られる。もしあなたのアイアン・ショットが高く舞い上がったり、風でショートしたりするなら、あなたは過度にハードに打っているのだ。鍵は、同じ距離をイーズィに打てるクラブヘッド・スピードを探すことだ。
遅いクラブヘッド・スピードはボールのスピンが減ることを意味する。2ピースの固いカヴァーのボールを使っている場合には、とりわけそうである。これだと、あなたはピンの周りでボールを止めることは出来ない。グリーンが湿っている場合でもなければ、あなたのバンカー越えなどのショットの成功率は低くなる。
自分の飛距離を知らなければ、あなたは距離をコントロールすることが出来ない。これに時間をかけ、あなたの真のゲームを学ぶことを始めなさい」
(October 04, 2013)
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