貧しい私には新しいクラブなど買えないので、ゴルフ雑誌の「新発売クラブ特集」などという記事は絵に描いた餅で、単に邪魔っけに過ぎません。今月の'Golf Magazine'および'Golf Digest'の特集がまさにそれです。私としては無視したいところですが、読者のためになるのかと思うとそうもいかず、紹介する次第です:-<。
'The hot list'
by Ashley Mayo ('Golf Digest,' March 2013)
「・速くスウィングするというより、どうスウィングするかだ
多くのゴルファーが速くスウィングする人はロフトの少ないドライヴァーを必要とし、ゆっくりスウィングする人はロフトの多いドライヴァーを必要とすると思い込んでいる。
だが、実はボールへの攻撃角度が重要なのである。コロラド州のD'Lance Golf Performance CenterのCEOであるDan Sueltzは、『ボールを打ち上げるタイプのゴルファーには、水平に打つ人やヒットダウンする人よりロフトの少ないドライヴァーが必要だ。多くの急速にスウィングする人たちはヒットダウンしようとする』
本誌は、スウィング・スピードが90〜100 mphの人々に、ロフトが9.5〜10.5°のドライヴァーを打って貰うテストを行った。あなたの想像とは反対に、最速のゴルファーは10.5°のロフトのドライヴァーで、ボールを高く遠くへ飛ばした。あなたのスウィング角度と最適のロフトを確認するには、クラブフィッターを訪れるべきである。
・フェアウェイウッドかハイブリッドか?
うまいゴルファーたちは、フェアウェイウッドの代わりにハイブリッドを打つべきだと決めてかかっている。しかし、本誌のテストによれば、様々な技量のゴルファーたちは、20°のハイブリッドより7ウッドで高く長い飛距離を得た。
しかし、そこには重大な二律背反がある。われわれのテストにおけるゴルファーたちは、ハイブリッドだとフェアウェイウッドよりずっと真っ直ぐにボールを打ったのである。Carlsbad Golf CenterのオーナーSusan Rollは『あなたの目的に応じてハイブリッドかフェアウェイウッドかを選択すべきだ。選択の前に、自分が欲しいのは飛距離か正確さなのか?と自問すべきである。このクラブでグリーンを攻めるのか、ひたすら遠くへ飛べばいいのか?…と』
・SGIアイアンで高く遠くへ
SGIアイアン(Super Game-Improvement irons=ソール巾の広い軽量アイアン)は、全てのゴルファーに(とりわけ平均的ゴルファーに)高く遠くへのショットを約束してくれる。本誌のテストで、初級者・中級者はPlayers Irons(ツァー・プロたちが愛好する伝統的アイアン)よりもSGIアイアンで打った時に8ヤードも高く、16ヤードも遠くに飛ばした。上級者では平均6ヤード増だった。これはSGIアイアンが概して少ないロフトであるにもかかわらず生み出す性能なのである。
どのアイアンがあなたに向いているか?SGIアイアンは、ボールを高く上げ、ミス・ヒットのダメージを軽減してくれる。あなたが上級者で弾道を操作したいなら、Players Ironsが飛距離を減らすことなく望ましい結果を与えてくれるだろう。あなたがGame Improvementアイアン(薄型ヘッドのアイアン)を好むなら、ミスに対する許容度の高い広いソールのアイアンを選ぶべきだ」
【おことわり】画像はhttp://www.golfing-excellence.com/にリンクして表示させて頂いています。
(February 09, 2013)
パッティング専門インストラクターMarius Filmalter(マリウス・フィルマルター)が説く、他とはちょっと異なる練習法。
'A better way to practice'
by Marius Filmalter ('Golf Magazine,' March 2013)
「練習グリーン上に木の葉か枯れた芝を見つけ、それをターゲットにする。そのターゲットを定めたら、あなたが何のための練習をするのかを決定する。
距離感の養成が目的なら、全てのボールが上述のターゲットの近くで止まるようにパットする。
新しいグリップやスタンスその他の習得が目的なら、ひたすらそれを追求する。
ボールをカップに沈めることはパッティングの究極の目標ではあるが、上のような練習の際の目標とすべきではない」
(February 15, 2013、改訂June 04, 2015)
インストラクターButch Harmon(ブッチ・ハーモン)によるスウィングの鍵四つ。
'Last thought before driving'
by Butch Harmon with Peter Morrice ('Golf Digest,' March 2013)
「1) 左肩をボールの背後(ターゲットの反対方向)へ廻せ
2) ダウンスウィングで、可能な限り背中をターゲットに向け続けよ
スライスを打つゴルファーは、右肩をボールに向かって突き出すことでダウンスウィングを開始するのが常だ。これはボールに対し、スウィング軌道を急でアウトサイド・インに横切るようにする。
あなたは右肩が後方に留まるようにし続け、ダウンスウィング開始に当たってクラブをインサイドに落下させる必要がある。あなたにとってベストのスウィング・キイは、ダウンスウィングで背中を長くターゲットに向け続けるというものだ。
ボールの背後にフル・ターンし、上体が飛び出さないように右肩を不活発な状態にし続けることだ。クラブをインサイドに落下させれば、ボールをインサイド・アウトでスウィング出来、腕のリリースとスクウェアなクラブフェースが達成出来る。
3) 身体の回転を止めるな
大方の凄まじいフックはインパクト・エリアで身体の動きがスローダウンするせいであり、それがスウィングの勢いをクラブを返す動きに変え、フェースがパチンとクローズになる症状である。これを避けるには、身体全体をターゲットに向けて廻し続けることである。左サイドにシフトしてダウンスウィングを開始し、胸がボールを指す感じを抱きながら、左へハードに回転させる。クラブは返らず、フックは退治出来ることになる。
4) 腕のスピードをフィニッシュまで維持せよ
ティー・グラウンドで途方に暮れるような人は、起こりがちな様々のトラブルと闘うスウィング・キイが必要だ。
インパクトからフィニッシュまで、腕を一定のスピードで振るように努力しなさい。多くのゴルファーが、ボールを打ったら、そこで止まってしまう。こういう人々はボールを当てに行っているのだ。これは諸悪の根源であり、そういう症状に正しい処方をするのは難しい。
腕の速度にムラがなければ、よいリズムとインパクトへのよい流れを作り出せる。そうなると、万事うまく収まることにびっくりすることだろう。
ボールを攻撃的に振り抜くことは、フェアウェイを狙って舵を取るのに数段優る。あなたはゴルフ・スウィングをしているのであり、腕をスウィングし続けることを忘れないように」
(February 18, 2013)
ストレート・ヒッターだが、もう少し飛距離を増したいという人にお勧めのドリル。
'Use the "standing 8-count" drill for more power'
by editors of 'Golf Magazine’ ('Golf Magazine,' October 2006)
「1) ボールをティー・アップし、アドレスする。フル・スウィングしてもボールと接触しないように、真後ろに数センチ下がる。
2) その状態から八つ数える。バックスウィングで1、フォロースルーで2。同じように3〜6まで数える(計三回の素振り)。この間、一瞬も停止しないこと。
3) 最後の段階(7と8)で、腰から少し前傾してボールに接触し、完全なフォロースルーを取る。
このドリルでは、クラブはメトロノームのようにシンプルに振られる筈だ。素晴らしいスウィングに驚くことだろう。このドリルはテンポをスムーズにしパワーを増すだけでなく、ボールは目的地ではなくスウィングの途中にあるものだということを教えてくれるだろう」
(February 18, 2013)
スポーツ心理学者Bob Rotella(ボブ・ロテラ)博士の以下の本に、1938年のPGA選手権決勝戦の模様が比較的詳しく書かれています。当時のPGA選手権はメイジャー・トーナメントには珍しくマッチ・プレイ方式で、準決勝に勝ち残っていたのはSam Snead(サム・スニード、当時28歳)とPaul Runyan(ポール・ラニャン、当時30歳)の二人でした。観客もスポーツ記者たちもSam Sneadの勝利を疑っていませんでした。何故なら、Sam Sneadはその頃のJohn Daly(ジョン・デイリィ)とも呼ぶべき存在で、身長1.80 m、体重84 Kgの身体から、ドライヴァーを通常280〜290ヤード飛ばしたのに対し、Paul Runyanは身長1.70 m、体重54 Kgという小兵で、ドライヴァーは常にSam Sneadから50〜60ヤードおいていかれるという“ショート・ノッカー”だったからです。
とうに推察されていると思いますが、このPGA選手権はPaul Runyanが勝利するのです。それはショート・ゲームの勝利と呼べるものでした。どのようにPaul Runyanがショート・ゲームの達人になったか、Bob Rotella博士の本を読んでみましょう。
'Golf Is a Game of Confidence'
by Bob Rotella with Bob Cullen (Simon & Schuster, 1996, $21.00)
「Paul Runyanは、アメリカ南部アーカンソー州の温泉地Hot Springs(ホット・スプリングス)で1908年に、貧しい酪農家の息子として生まれた。Paul Runyanの少年時代、その町にゴルフ場が作られ、彼はキャディを務めるようになった。小柄だったため、一人前にちゃんとバッグを担いで歩けることを客に納得させなければならないこともあった。彼自身もゴルフを始め、学校への行き帰りにゴルフ場に忍び込んで数ホールプレイしたりした。
ゴルフ場がキャディの少年たちに試合を許可してPaul Runyanも参加すると、彼は飛距離では多くの仲間たちに敵わないことを知り、自己防衛として身体のサイズやパワーとは無縁のショート・ゲームに焦点を合わせた。
Paul Runyanは、ゴルフ場のメンバーの一人のパッティング・スタイルを真似した。【編註:それは彼が亡くなるまで用いたグリップで、当サイトの「手首封じのRunyanグリップ」(tips_143.html)として詳述】
14歳の時、Paul Runyanはゴルフ場のレッスン・プロの弟子となった。プロはPaul Runyanがあまりにも若いので『髭を伸ばせ』と云った。数年を経て、彼は客にゴルフを教えるようになった。そして、彼が19歳の時、同じ町にユダヤ人のための9ホールのコースが造られ、彼はそこの筆頭プロとして雇われた。あまり会員も多くなかったので、彼は日に5〜6時間練習出来、その半分以上を短いピッチング、チッピング、パッティングに費やした。
今でこそ、ショート・ゲームの重要性が認識されていて(何しろスコアの70%は100ヤード以内で打たれるのだから)、誰でもウェッジとパターがスコア・メーキングの鍵となるクラブであることを知っている。しかし、当時それを知る者は少なく、Paul Runyanがウェッジとパターを愛し始めた時、彼はショート・ゲームのパイオニアだったのだ。彼はショート・ゲームに磨きをかけて新たな水準を作った。グリーンの周りからピンに寄せるだけではなく、チップインさせることを考え始め、実際に彼はそれを実現した。寄せワンではなく、チップイン・バーディを達成するようになったのだ。
グリーンの周囲どこからでも寄せワンが出来ると考えるゴルファーは、リラックスし自信を持った心境でアプローチ・ショットを打てる。ティー・ショットをオーヴァー・スウィングしたくなる誘惑を感じることなく、ゴルフの他の要素の改善に集中出来る。
私【編註:ロテラ博士】はゴルファーたちに、Paul Runyanのようにショート・ゲームを愛して欲しいと思う。練習時間の少なくとも半分をショート・ゲームに費やして欲しい。
私はツァー・プロもアマチュアも、一つの例外を除いて同じように指導する。プロは120ヤード以内をしきい値としてピッチ・イン/チップ・インを考えるべきであり、それが出来ないなら他の職業を探すべきである。アマチュアは60〜40ヤードをしきい値とすべきである。
残念ながら、こうした私の理論に耳を貸さず、ドライヴァーでぶっ飛ばすことこそがゴルフの醍醐味であると信じ込んでいるゴルファーが多い。
1938年のPGA選手権決勝戦(36ホールのマッチ・プレイ)の七つのパー5ホールの三つで、Paul RunyanはバーディでSam Sneadを凌ぎ、残りをパーでタイにした。7ホールを残し8アップでPaul Runyanが勝った。『(Paul Runyanのプレイを)見たよ。でも信じられない』と、ラウンド後の表彰式でSam Sneadが云った」
(February 21, 2013)
ゴルフ・クラブの会社PINGの創立者Karsten Solheim(カーステン・ソルハイム、1911〜2000)が、ある雑誌編集者に語った、彼のゴルフ入門からPINGパターの発明、クラブ製造販売会社創設にいたるまでの年代記。
'Chicken Soup for the Golfer's Soul'
edited by Jack Canfield et ai. (Health Communications, Inc., 1999, $12.95)
「1950年代の初め、私【Karsten Solheim】はニューヨーク州Ithaca(イサカ)にあるGE(ゼネラル・イレクトリック)で働いていた。天気のいい気候の時に、同僚たちが月曜と金曜にはしゃぐ現象に気づいた。彼らの会話を聞いていて謎が解けた。彼らは金曜に土曜のゴルフの計画をし、月曜に互いのプレイをからかい合っていたのだ。とても楽しそうなので、私も入れて貰えないかと頼んだ。
その時、私は42歳で、ゴルフ・クラブを持ったことはほとんどなかった。『難しいもんだろうか?』私は自問した。クラブを借り、その週の土曜日に仲間と落ち合った私は、想像したよりずっと難しいことに気づいた。
最初のティーで、私は仲間たちのスウィングを見ながら、出来るだけ彼らの真似をすべく何回か素振りをした。私の番になった。私はボールをティーアップし、仲間たちがやったようにドライヴァーをワッグルした。ヒューっ!完全な空振り。そして同じことをもう一度。『リラックスしろ!目をボールから離さず、スムーズに振れ』仲間たちが云った。そうやった。そして土の塊(かたまり)を引っ掛けたが、ボールは動かなかった。その後、土と芝がそこら中に吹っ飛んだが、ボールは依然としてそこにちょこんと座っていた。私はそれでもクラブを振り回していたが、仲間たちは『次のティーで会おう』と云って去って行った。
頑強に最初のグリーンまで行き着いたが、そこで発見したのはパッティングはもっと苛立たしいものだということだった。技術者だからグリーンのスロープを読め、ボールの正しい軌道も予想出来ると自信を持っていた。違った。私はパターでボールを送り届けたいところへ送ることが出来なかった。『パッティングがこんなに難しくていい訳はない』私は思った。
この日のラウンドのスコアは、ボウリングだったら褒められるような数字だった。私はがっくりしたが、土曜日にゴルフするのは気に入った。仲間たちと一緒なのも楽しかった。だから私は練習した。簡単に見えるゲームが、なぜこうも難しいのか見極めようと決心していた。
数回のラウンドを経て、私は多少上達したことで自信を持った。そして妻のLouise(ルイーズ)に云った。
『パットがうまい奴が上達するのは確かだ。でもって、このパターに関してアイデアがあるんだ』
『あなたが解決策を見出すのがいつなのかって思ってたわ』とLouise。
『こいつがパッティングを難しくしている原因だと思う』と、私は借り物のパターを見せた。
『それを気に入ったように変えちゃおうってわけね』彼女は訳知り顔に頷いた。
彼女は正しかった。私は自分のクラブを購入し、心に期していた改良に着手した。私は手作業や修理が大好きだ。それは、父の職業だった靴の修繕を手伝ったことに起因する。私は技術者になるべくカレッジに行ったのだが、大恐慌のせいで、たった一年しか通えなかった。父の靴修理店を手伝っている時、高校を出たばかりのLouiseと教会で出会い、彼女の父親に結婚を許してくれと頼んだ。答えはノーだった。私たちはがっかりしたが、私は彼女にこう云った、『僕たちの結婚は定められたものであることを確信している。僕らが忍耐強く神様を信じていれば、正しい道へ導いて下さる筈だ』と。彼女の父親は、われわれの意志の固さを知り、結婚を許してくれた。
私は工学の勉強を再開したが、第二次大戦が勃発し、私はレーダーやミサイルなどの防衛産業に従事した。そしてGEに移り、ポータブルTVなどの開発に携わった。新しいパターを手作りしようとしたのは、全てこの工学的経験ゆえであった。私はアルミのブロックから単純なブレード型パターを形成し、ヒールとトゥに錘をインサートした。その狙いは手の中でパターが捩じれないようにすることだった。ついに、私にとってパッティング動作が正しいと感じられ始めた。
私は地元のコースの練習グリーンに入り浸りになり、私のハンデは下がる一方となった。プロたちまで、私と一緒にラウンドしたがるようになった。ある日、レッスン・プロが私に『あんたはほんとにパットが上手い』と云った。私は笑いながら『このパターを作る前の私を見てないからだ』と応じた。『あんたがそのパターを作ったの?』彼は驚いた。『もっと作って売るべきだ。いいパターなのは間違いないんだから』
その日、私は自分のパターをもっと良くしようと決意した。自分のデザインを工具製作所に持って行き、パターヘッドを作って貰った。私はそれにシャフトをインサートし、ボールを打ってみた。Ping!(ピン!)その音が、自分のパターをPINGと呼び始めた理由だ。それを地元のゴルフ・ショップで売ろうとした。半年かかって一本売れた。
私はプロのゴルフ・トーナメントを追って旅行を始め、自分のパターを使って貰って意見を聞いた。私は彼らの示唆によって、自宅の車庫の工房で改良を重ねた。私の末子であるJohn(ジョン、現社長)が応急設備のドリル・プレスでクラブヘッドに穴を開け、私がそのヘッドを台所の電気コンロで熱してシャフトをインサートした。
いくら改良してもPINGパターは見栄えが良くなかった。あるプロは『そいつは串で刺したホットドッグみたいだ』と云った。私には見てくれはどうでもよく、パフォーマンスだけが全てだった。
私はこの巣立とうとしている事業が楽しく、これに24時間費やしたいほどだった。何人かのツァー・プロがPINGパターを使い出し、売り上げが伸び出した。そして、有名プロのJulius Boros(ジュリアス・ボロス)がPhoenix Open(フェニックス・オープン)に、PINGパターで優勝した。
その頃、妻のLouiseと私はある決断を迫られていた。GEが私をOklahoma City(オクラホマ・シティ)の工場に転勤させようと考えていたのだ。私の心は引き裂かれた。仕事は手堅く安全だったし、私は家族を守りたかった。だが、われわれはパターの事業にかなりの時間と金を注ぎ込んでいた。私のパターは羽根が生えたように売れ、注文に応じられない有様だった。
『どう思う?』私は妻に尋ねた。
『私は、私に求婚していた自信たっぷりな若者のことを思い出してるの』とLouiseが云った。『あなたが云ったこと覚えてる?神様が私たちの道を示して下さる。神様の思し召しが私たちを導いて下さるって。私が経理をやります。私たち絶対成功するわ』
というわけで、1967年の初めに私はGEを退職し、テキサス州Phoenix(フェニックス)に借りた小さな建物で、フル・タイムでパターを製造した。次から次へとツァー・プロがPINGパターで優勝した。で、私はいいアイアンも作る気になり、次いでウッドや他の製品も手掛けるようになった。私の会社はお伽噺に出て来るようなめでたしめでたしの成功を収めた。
40年前の初めてのラウンドと、懸命に入れようとして沈められなかったパットが、今日世界中にクラブを出荷し、1,500人の従業員を抱える会社を作る切っ掛けになったのだ。だが、ある意味で私は驚いてはいない。Louiseと私がずっと以前に学んだように、あなたが神を信じて、そのお導きに従えば、ものごとはいい方に向かうものなのだ」
【参考】「PINGパター余聞」(tips_71.html)
(February 27, 2013、増補January 02, 2017)
これは、1961年にアメリカ最初の宇宙飛行士となり、その10年後にアポロ14号で五人目の月面歩行を行ったAlan Shepard(アラン・シェパード、1923〜1998)が明かす、月面ゴルフの計画と達成までの物語。
'Chicken Soup for the Golfer's Soul'
edited by Jack Canfield et ai. (Health Communications, Inc., 1999, $12.95)
「あなたはドライヴァーで1,500ヤード打つとか、6番アイアンで900ヤード打つなんてことを考えたことがあるだろうか?あるいは、白いボールが暗い空に向かって25〜30秒も飛ぶのを見つめるなんてことを?そんなことを夢見るなんて、どんなゴルファーであろうか?
私はそういうことを考えた。1971年のアポロ14号の時だ。月の重力って地球の1/6でしかないのを御存知だと思う。同じクラブヘッドスピードなら、ボールは六倍遠くに飛び、六倍も空中に(この場合は真空に)長く留まることを意味する。
実際のところ、月面でゴルフするというアイデアは、コメディアンのBob Hope(ボブ・ホープ)がヒントだった。彼がある日NASAを見学に訪れ、彼が無重力状態の装置に入って爪先でぽーんぽーんと跳ね回った時、彼は始終持ち歩いていた古いドライヴァーでバランスを取った。彼を案内していた私は、心の中で月面でボールを打つ方法を見つけ出さなきゃ…と自分に云い聞かせた。
地球上で私の行動をTVを見ていた人々には、それはとっさの思いつきのように見えただろうが、実は打ち上げ前にちゃんと予行演習され、上からも承認されていたものだった。
私は土の標本を掬い取るために通常用いる折り畳み式アルミニューム製ハンドルを使うことにした。なぜなら、宇宙服を着ていると屈むことはかなり難しいからだ。そしてゴルフ・プロの設計で、スコップの代わりにクラブヘッドをハンドルにパチンと止められるようにした。ハンドルが6番アイアンのシャフトの長さに等しかったので、6番アイアンのヘッドを選んだ。私はそのクラブヘッドを携行し、二個の普通のゴルフボールをポケットに入れて行くことにした(自前のボールであって、納税者の負担ではないですぞ!)。
宇宙飛行の前に、私は何度かトレーニング・ルームで、宇宙服着用で安全にスウィング出来るかどうか試した。宇宙服は扱い難く、クラブを両手で握ることは出来ないが、片手のハーフ・スウィングなら可能だった。最後に私は上司に私の計画を話した。もし、月面滞在の最後の日まで全て順調なら、その日に二個のボールを打ちたいと。彼は了承した。
幸運にも、トラブルは初期の段階で起り、月面滞在中は全て順調だった。したがって、地球に戻るために梯子を昇る前に、私はティー・ショットの準備をした。私が最初のボールを月面に落とすと、それは着地まで三秒かかり、灰色の土で数回バウンドした。私は勿論ライを改善し(二月だったからウィンター・ルールなのだ)、私に出来る最善のスローモーションの、片手によるハーフ・スウィングを行った(宇宙服でフル・スウィングは不可能)。私はボールと良いコンタクトを得て(地球上でなら30〜40ヤードのショットだったろうが)、ボールは何と200ヤードも飛んだ。ボールは暗い空を30秒も浮遊した。興奮した私は次のボールをハードにスウィングした。それは40ヤードもシャンクして、近くのクレーターに吸い込まれた。私はそれをホール・イン・ワンと呼ぶことに決めた(たとえ、ホールの直径が数マイルあろうとも)。
私はクラブを折り畳んで離陸のために梯子を昇った。二個のボールはまだそこにあり、ニュー・ボールだったから再利用可能である。だが、クラブはニュージャージー州Far Hills(ファー・ヒルズ)にあるUSGAの展示品となっている。そこでそれを見れば、誰もが1,500ヤードのショットってどんなものだろう?と想像することが出来る」
(March 09, 2013)
このお話はツァー・プロのトロフィ・ルームにまつわるものです。トロフィ・ルームと云えば、Annika Sorenstam(アニカ・ソレンスタム)の部屋が有名です。何しろ、プロとして93勝を挙げたわけで(LPGAツァー72勝+その他)、訪れたYani Tsen(ヤニ・セン、台湾)もその部屋の大きさとトロフィの数にぶったまげたそうです。Annika Sorenstamがその家を売りに出した時、彼女を英雄視していたYani Tsenが買い取り、「自分もトロフィ・ルームを一杯にしよう!」と決意したとか。以下の記事はBrad Brewer(ブラッド・ブリューアー)執筆のものです。
'Chicken Soup for the Golfer's Soul'
edited by Jack Canfield et ai. (Health Communications, Inc., 1999, $12.95)
「私【Brad Brewer】は、ツァー・プロだった時期と現在のインストラクターとしての生活を通して、メイジャー優勝者も含む何人かのツァー優勝者たちと交遊がある。トーナメントで優勝するということは、ツァー・プロのキャリアの指標であり、その思い出は非常に大切なものだ。多くのチャンピオンたちは、彼らが得たトロフィや記念品を集めた部屋をまるで神殿のようにように呼んでいるのに気づいた。私はまた、彼らが頂点に到達したあと、同じような結果を出せず、多くの場合スランプに陥り、中にはリーダーボードから消え失せて、二度と戻って来ないことも稀ではないことにも気づいていた。
1980年代後半、私はArnold Palmer(アーノルド・パーマー)のゴルフ・アカデミーのディレクターとして採用され、Arnold Palmerの家のディナーに招待された。私はその夜、数分早く訪れた。Arnold Palmer夫人が丁重に出迎えてくれ、家の中に招じ入れてくれた。『Arnie(アーニィ、Arnoldの愛称)はまだなの。すぐ下りて来るでしょうけど』と夫人。で、私は彼女にトロフィ・ルームを見せて頂いても差し支えないか?と尋ねた。彼はツァー生活で92勝していたから、さぞや壮観だろうと期待していたのだ。彼女は『宅にはそんな部屋はないのよ、ブラッド』と云った。
その夜、ディナーの間の会話で、私はこの家を訪れて以後ずっと引っ掛かっていたことを持ち出した。『ミスタ・パーマー。ツァーで92勝と云えば、相当な数の金物【編註】を意味します。どうしてトロフィを飾る部屋がないのですか?』
【編註】優勝カップやメダルなどは概ね金属製なので、業界用語としてこれらを"hardware"(金物)と云ったりする。
彼はフォークを下ろし、私の目を見つめて『何のために?そんなのは昨日のニュースじゃないか!』と云った。
短い間(ま)の後、彼は説明を続けた…Arnold Palmer独特の自信たっぷりな笑みを浮かべながら。『誤解しないでくれ、ブラッド。ぼくはどの勝利も楽しんだし、その思い出も大切だ。それぞれの勝利の後でお祝いさえしたしね。だが、次の月曜になれば、ぼくは前週予選落ちした男と何ら変わりないんだ。実際には、彼はぼくよりずっとハングリーだろう。だからぼくが新たな勝ち抜き合戦に臨むためには、昨日のことは忘れ、今日のことに専念しなくちゃならん。いつか、過去を振り返る時も来るだろう。だが、ぼくが競技生活を続けようと思う限りは前進あるのみだし、自分が過去に達成したことにうっとりしてるよりも、目前の次なるチャレンジだけを待ち望むべきだと思うんだよ』」
(March 12, 2013、改訂December 07, 2015)
'Catch more distance'
by Jason Birnbaum ('Golf Digest,' April 2013)
「10分間フリスビーを投げれば、正しいリリースが可能になる。
右利きのゴルファーは右手にフリスビーを持って、通常のスタンスをとる。フリスビーはバックハンドで投げるのが一般的だが、このドリルではフォアハンドで投げる。親指をディスクの内エッジにかけ、右腕一本で打つように投げる。目標はタイトな螺旋旋回を達成することだ。さらにお望みなら、ゴルフに応用出来るドローやフェードを試されたい。
もしフリスビーがすぐ地面に落下しても心配ない。多分、ダウンスウィングのごく早期にアンコックしてしまう多くの初心者と同じなのだ。フリスビーを30〜40ヤード飛ばせられるようになるまで頑張ってほしい。インパクトまで右手首のコックをほどかない訓練によって、かなりの飛距離を増すことが出来るようになる」
(March 18, 2013)
このQ&A欄の回答者Stina Sternberg(スティナ・スターンバーグ)は女性コラムニストで、TGC(ザ・ゴルフ・チャネル)にもしばしば登場します。
'Ask Stina'
by Stina Sternberg ('Golf Digest,' April 2013)
「Q: ゴルフ仲間、自分の妻、あるいは初対面のゴルファーであれ誰でもいいのだが、彼らがとんでもなくひどいショットをしたり、簡単なパットをミスしたりした時に、こっちまでばつが悪い思いをしてしまう。こういう場合、何と声をかければいいのか?
A: 私には簡単なルールがある。《何も云わない》というものだ。ドラマティックである必要はさらさらないからだ。平然とプレイを継続すればよい。そういうゴルファーを励ます言葉をかけるのが相応しい状況もある。例えば、不運なバウンドなどに遭った際や、半ダースもの空振りの後でやっとボールを打てた時など。
しかし、多くの場合、同情、冗談、スウィングtip、おべんちゃら、励ましなどは、単にきまり悪さを増幅し、その次のショットをプレイしようとするゴルファーを気詰まりにさせるだけである。
大体、こんな場合にあなたがばつが悪い思いをするのは何故?こういうハプニングはゴルフにつきものだし、誰にでも起ることなのだ。あなたにさえも。大失敗を大変なこと考えるべきではない。それはちっとも大変なことじゃないのだから」
(March 22, 2013)
あまり頻繁にラウンド出来ず、黙々と打ちっ放しに通って腕を磨いている人にぴったりのドリル。
'Shrink Your Handicap'
by Phil Lee, M.D., and Jeff Warne (Hyperion, 2000, $14.95)
「14というのはゴルフにおけるマジック・ナンバーである。なぜなら、ゴルフ場にはパー3を除くと、ドライヴァーを打つホールが14あるからだ。
練習場で、平均的フェアウェイの広さと同じになる左右の地点に目印(旗や草、裸地など)を見つける。ドライヴァーで14個のボールを打つ。フェアウェイ(左右の目印の中の範囲)をキープした数を記録する。"fairwai hit"(フェアウェイ・ヒット)はPGAツァーなどで重要なスタッツ(統計値)とされているものである。
あなたのフェアウェイをキープした数に7を掛けて、あなたのラウンドのフェアウェイ・ヒットの成功率を得る。これは重要な数字である。
【編註】7を掛けるのは計算の簡略化のための数字。フェアウェイ・キープ数が14(完璧)の場合、ちゃんと計算すると14/14=1で100%になりますが、14 * 7 = 98になってしまいます。フェアウェイ・キープ数が12だと12/14=86%ですが、12 * 7 = 84になります。しかし、かなり近似値なので許容範囲と云えます。
これは14個のボールによる挑戦として楽しいものであり、あなたはフェアウェイ・ヒット率を向上させたいと思うようになる筈だ。これはドライヴァーの正確度を増す素晴らしい練習法であり、練習場であっても本番のティー・ショットと同じような緊張を作り出してくれる。
このドリルは、理に適った期待を確立してくれる。あなたが練習場でフェアウェイをキープした数が8個なら、コースに出た時に8ホールを上回ってフェアウェイ・キープが可能だと期待する正当な理由は見当たらない。自分のフェアウェイ・ヒット率を知らないゴルファーは、一、二度フェアウェイをミスすると怖じ気づいてしまい、練習場で発揮したフェアウェイ・キープ数すらにも届かない結果を得ることになる」
(March 25, 2013)
Arnold Palmer(アーノルド・パーマー)によるメンタルな戦略、その序盤篇。後日公開の終盤篇「最後の三ホールの重要性」と対をなしています。
'My Game and Yours'
by Arnold Palmer (Simon and Schuster , 1963)
「私がプロになり立ての頃、トーナメントの序盤で一生懸命になるやつなんかいないという先入観を抱いていた。どんなスポーツでも、最終盤のように序盤を真剣に取り組むのは難しいという自然な思いからであった。野球やフットボール、バスケットボールの序盤で、結構な割合でぞんざいなプレイが見られるのは御存知の通り。他のスポーツがそうなら、最初の三ホールでの失敗を帳消しにするために69ホールのチャンスがあるゴルフ・トーナメントだって同じじゃないか…という思い込みであった。
だが私は間違っていた。完全な考え違いであった。ゴルフ・プロの誰もが、最初のホールを他のホール同様一生懸命にプレイしていることを知った。私のような考えでイージーなスタートをする者は、ツァーから脱落した。最初のホールでバーディを達成出来なければ、最後までバーディは得られない。マッチ・プレイの最初の三ホールは、最後の三ホールと同じようにカウントされる。実際のところ、最初の三ホールは心理的に途方もない効果を与えるがゆえに、他のホールよりずっと重要であろうと思われる。
出来の悪いスタートを克服して後方から追い上げるのは爽快だが、それは容易いことではない。まずいスタートは、あなたの気を挫かせ、完全にあなたをまごつかせる。われわれプロは、まさに最初の九ホールでその他大勢から抜け出すように感じている。アマチュアがまずいスタートを切ると、挽回するのはほぼ不可能のように感じることだろう。自信と集中力が消え去り、これなら家に帰った方がいいと思うようにさえなる筈だ。
後半になって疲れた時より、肉体的にフレッシュで力強い段階の方がいいスコアを重ねるのは容易だ。また、いいスタートは心理的な基盤を整え、あなたのベスト・プレイに必要な自信を与えてくれる。
あなたは最初の三ホールの重要性について自分にしっかり思い起こさせるべきだ。もしあなたが18ホールのラウンドで、No.1で失敗してもNo.2がある、No.2でも失敗してもまだ16ホールもある…などというだらけた心理的落とし穴にはまり込んでいるなら、あなたの一日は自分で気づく前に台無しになってしまっている。残りのホールは、掃除・洗濯と同じようなうんざりする雑役と化してしまう。
大抵のゴルファーは、肉体的にもメンタル面でも最初の三ホールで問題を抱えている。そう、私はウォーミングアップという陳腐なことを持ち出そうとしている。分かっている、誰かが次のように云うのを聞いてあなたが飽き飽きしていることは。『ゴルフって、世界で唯一ウォームアップしないスポーツだって考えたことある?野球、フットボール、テニス、どんな競技だってウォームアップする。でも、ゴルファーは真っ直ぐNo.1ティーに上がってドライヴァーを打つんだ』 OK、こういう話は退屈だろう。だが真実なのだ。あなたがウォーミングアップなしでプレイしているのなら、たった三分ウォーミングアップすれば、ラウンドにつき3ストロークは減らせると無条件で保証しよう。
他の日にはほとんど練習をしないプロでさえ、ラウンド前には練習する。彼らは練習場で50発はボールを打ち、練習グリーンで50回はパットする。彼らがNo.1ティーに上がる時、彼らは準備完了であることを感じている。
どうしてウォーミングアップを試みないのか?あなたがラウンドに四時間捧げるのなら、数分準備することによってあなたのベストを発揮し、ゲームの最大の楽しみを得ることが出来るのに。身体の固さと不安とを感じつつ最初のティーに歩み寄り、誰もがやるように大勢の前でドライヴァーでドジっても楽しくないではないか。
練習場での15分でさえ、計り知れないほどの助けになる。混乱の因となるようなスウィングの分析に没頭してはいけない。すべきことはラウンドへの準備であることを忘れないように。ウォーミングアップの間に何も変更せずとも、充分いいプレイが出来る筈だ。リラックスして柔軟になれば準備完了なのだ。
警告。あなたがどれだけウォーミングアップに時間をかけても、最初のホールでしくじらないという保証はない。コースのどこであれ、ミスするということはあり得る。あなたの一生で最高のラウンドをしていてさえ、No.6で、あるいはNo.12で、あるいは最終ホールで突然チョンボすることはあるのだから、No.1 でチョンボしたっておかしくない。だがそれでめげてはいけない。肉体的にもメンタル的にもウォーミングアップしてあり、プレイに集中出来るのなら、チョンボの後でもあなたのタッチは必ず戻って来る」
(March 28, 2013)
Arnold Palmer(アーノルド・パーマー)によるメンタルな戦略、その終盤篇。前回掲載の序盤篇「最初の三ホールの重要性」と対をなしています。
'My Game and Yours'
by Arnold Palmer (Simon and Schuster , 1963)
「良いゴルフをするには攻撃的ゴルフをすべきで、いいラウンドの最後の重要な三ホールに到達し、攻撃の手を緩めたくなる誘惑が襲った時には、あなたがコントロール可能な意思の力すべてをもって抵抗しなければならない。これは馬鹿げたギャンブルをせよという意味ではない。2パットであなたの生涯最高のスコアが達成出来るという場面に、それを1パットで沈めよと云っているのではない。そんな行為は馬鹿げている。そういう場面では私だって2パットで充分だと考え、ボールがカップに沈むか、さもなければ3メートルもオーヴァーするようなパットなどは絶対にしない。そんな状況なら、少し守りの姿勢になるのが常識である。しかし、一般的に云って、ベストのプレイをしたければ攻撃的ゴルフをすべきである。これはどんなスポーツにも共通することだ。
ラウンドの終盤には別な難関がある。これはプロではなくアマチュア、特に週一とか月一ゴルファーにとっての難関だ。一週間デスクワークに従事し、玄関からバス停までを往復するだけの人にとっては、ゴルフは疲れるものに違いない。週一ゴルファーの多くが打ちのめされた状態で最後の三ホールにやって来る。脚は疲れ、手は痛み始め、肩は思うように動かなくなっている。
こんな状態の時に陥る傾向は、がむしゃらになることだ。疲れているのだから最初の九ホールの強靭さはもう備わってないわけで、ボールを打つために余分な努力をしなければならない。身体をさらに捻転し、長いバックスウィングをし、秘蔵の肉体的パワーで疲れを補おうとする。しかし、疲れていると脚はいつものように早く動かず、身体の動きも緩慢になる。あまりにも懸命になると、オーヴァースウィングをし、バランスを崩し、ショットをミスし始める。あなたのゲームは粉々になって、いいラウンドとしてスタートしたものが竜頭蛇尾に終わる。
ゴルフコースで疲れと添い寝する秘訣は、懸命になるのではなく、あなたのフル・パワーより少なめに打つことだ。長いスウィングではなく、コンパクトなスウィングをするのだ。あなたは、ラウンド前半より10歳年老いたようにプレイしなければならない。なぜなら、疲れは実際にあなたの筋肉を一時的に10歳老けさせているからだ。前半で6番アイアンを打っていた距離に、5番、あるいは4番が必要になる。プロたちは疲れた時、しょっちゅうこういうことをしており、私も何百回もやっている。あなたも同じように試してみるべきだ。
上のような話は攻撃的ゴルフと矛盾しているとお思いだろうか?とんでもない。あなたのレヴェルに応じてだが、なおもバーディやパーを目指すべきである。状況次第とは云え、あなたに可能なベストを尽くす決意を保持すべきだ。
状況が変わり、熱いシャワーでも浴びた後のように前半9ホールをプレイしていた時の筋肉が戻ったとしよう。この状況を考慮に入れるべきだが、無鉄砲に期待してはいけない。あなたの身体は疲れていることを知っている。無意識な、潜在意識の心の一部もあなたが疲れていることを知っている。にもかかわらず、筋肉にラウンド前半と同じように打てとあなたが命じると、起るのはたった一つのことだ。命令を遂行すべく、あなたの神経系と筋肉群と反射神経は、ストレッチし緊張する。あなたのスウィングはあなたから逃げ去り、あなたは本来必要なゆったりしたバランス感覚を失うことになる。あなたのゲームは完全に崩壊する。
あなたが多くの場合前半を42で廻り、後半を53で廻るようなパターンのゴルフをしているのであれば、まさに上に述べたようなことが起っているのだ。次回、あなたが終盤の三ホールにさしかかったら、状況をつぶさに検討せよ。脚の感じはどうか?肩は?強がらず、正直に!疲れてはいまいか?疲れていても恥ではない。自問自答し、それ次第で戦略を変えよ。コンパクト・スウィングで踏ん張れ。あなたの対戦相手は同じように疲れているのに、あなたほど賢くないかも知れない。あなたが賢く行動すれば、No.16、No.17、No.18はあなたを破滅させず、勝利さえ恵んでくれるだろう!」
(March 31, 2013)
Butch Harmon(ブッチ・ハーモン)が説く、練習場からNo.1ティーに向かう際の心構え。
'Be the Ball'
edited by Charlie Jones and Kim Doren (Andrews McMeal Publishing, 2000, $14.95)
「ゴルフにおける最も長く感じられる歩行距離は、練習場から最初のティーへと向かうものだ。それは、完全にメンタルなものでしかない。あなたは練習場で肉体的には何でも来いという状態になっている。唯一の違いは、あなたが練習場でお粗末なショットをしても、手を伸ばして別のボールをかき寄せ、打つことが出来るという点だ。
最初のティーに上がった以上、打てるのはたった一個のボールでしかないのだから、なすべきことは最初のホールのショットにメンタルに心の準備をすることだ。それは生きるか死ぬかの問題ではない。単にゴルフ・ショットの一つに過ぎない。通常のルーティーンを遂行し、いいショットを打つためのチャンスを作るべきだ。ゴルフでは二つのことが起り得るに過ぎない。いいショットを打つか、お粗末なショットを打つかのどっちかである。
アマチュアの多くは、いいショットについて考えるよりも、目も当てられないショットに思いをいたす。練習場ではお粗末なショットについて思い煩ったりしない。そこにはOBもバンカーも池もないからである。彼は最初のティーに歩を運びつつ、それまでの心の状態と集中心から完全に脱しなくてはならない。彼がすべきなのは、最初のティーに向かいながら、これから起るのは単に二つのうちどちらかでしかないということを悟ることだ。彼は、いいショットを打つための100%のチャンスを自分に与えることが出来るかも知れない」
(April 21, 2013)
Dr. T.J. Tomasi(T.J.トマシ博士)は10冊以上のゴルフ・インストラクション本を執筆し、新聞連載のコラムも持つ人気インストラクターです。
'Ask The Pro'
by Dr. T.J. Tomasi (Andrew McMeel Publishing, 2001, $12.95)
「Q: 毎回80台前半では廻れるのだが、80を切れない。チャンスがやって来る度に私はドジを踏んで、台無しにしてしまう感じ。90を切るのは簡単だったが、80は難しい。
A: こう云うと奇妙に聞こえるかも知れないが、問題はあなたの脳である。最後の数ホールに到達して70台で廻れそうな場合、あなたは自分のメンタル・スクリーン(目を閉じれば見られるもの)を、望ましいイメージで埋め尽くすのだ。あなたはそのスクリーンをトラブルと失敗で埋め尽くすことも出来る。パットのリップアウト、水をはね散らかすボール、OBへのスライス等々。そうではなく、ド真ん中へ飛ぶティー・ショット、カップの底へボールを届けるパットなどで埋め尽くすことも可能である。
イメージはしばしば実現に結びつく予言となり得る。なぜなら、それは筋肉の作用にキュー(指示)を送るものであり、ショットを放つ際、メンタル・スクリーンをネガティヴなイメージで埋め尽くしておくわけにはいかないからだ。だから、あなたは望ましいと思われるどんなことでもメンタル・スクリーンに表示することが出来る。だったら、あなたが聞きたい予言に繋がるポジティヴなイメージを表示させればよい。それは《信じれば実現する》という偽薬効果の一部である」
(April 24, 2013)
筆者Wally Armstrong(ウォリィ・アームストロング)はPGAツァーに10年間参加し、The Masters(マスターズ)に五位タイに入ったりしましたが、その後インストラクターに転向。多くの著書やDVDを出している人。
'The Heart of a Golfer'
by Wally Armstrong with Frank Martin (Zondervan, 2002, $14.99)
「私はPGAツァーの参加資格を得る前、Gary Player(ゲアリ・プレイヤー)のキャディを勤めるという光栄に浴し、プロ入りしてからも数え切れぬほどの練習ラウンドを彼と共にした。
Gary Playerと私はバンカーや裸地、生い茂ったラフ、垂れ下がった木の枝をくぐるショット、木や障害物の上を越えるショットなど、あらゆる練習をした。グリーンの周りで、Gary Playerは彼の忠実なキャディに挑戦したものだ。『おれに出来ないショットを考えろ』と云い、キャディは高い草の中や深いバンカーの高い顎の下にボールを埋め込んだりした。だが、Gary Playerはそれらを必ず寄せワンにしてしまった。彼にとっては、一見不可能と思えるショットをやり遂げることが、何よりもスリリングな喜びだったのだ。
Gary Playerがかくもパワフルなプレイヤーだった理由の一つは、彼がどう練習をすればよいかを知っていたことだ。彼はトーナメントの最中に、打ったこともないショットの必要に迫られることを望まなかった。彼はトーナメントの間に起り得るあらゆるショットや、ハザードからのショットを練習した。だから、私が知っているどんなプレイヤーよりも、彼はもの凄い自信を持ってプレイ出来た。どんなひどいライやトラブルであっても、彼は常にどう処理すればよいかを知っていたし、自分がそういうショットを成功させられることを知っていた。彼にとって、当てずっぽうというものは存在しなかった。彼の“引き出し”には、想像出来る限りのあらゆるショットがしまい込まれていたのだ」
(April 27, 2013)
「グリーンに近づく時に知っておくべき10のルール」と題された記事。
'Tending the flagstick' 「1) "flag, pin, laser location indicators"(旗、ピン、レーザー位置表示器)などは、どれも旗竿の一部とみなされる。 2) グリーン外からのショットで、誰も介添えしていない旗竿を打った場合は無罰である。しかし、あなたがグリーン上で誰も介添えしていない旗竿を打ったら、マッチ・プレイではそのホールの負け、ストローク・プレイでは2ストローク・ペナルティを足し、ボールが止まった位置からプレイを続けなければならない。 3) あなたのボールが、取り除かれている旗竿か、あなたの要請により、あるいは当然のこととして介添えされている旗竿に当たった場合、2ストローク・ペナルティ(マッチ・プレイではそのホールの負け)となる。これは、旗竿を持っている人あるいはその人が持っている物に当たった場合を含む。 4) あなたのパートナーかあなたのチームのキャディの誰か一人の承認なしに、あるいはあなたの知らぬうちに取り除かれた旗竿に、あなたがボールを当ててもあなたにペナルティは適用されない。 5) パットしたボールが、取り除かれて地面に寝かされている旗竿に当たりそうな場合、対戦者あるいは同伴競技者は、ボールが転がっている最中であっても旗竿を動かすことが出来る。【編註:当たれば2ストローク・ペナルティ】 6) あなたのボールが旗竿に寄りかかっていても、全体がカップ表面から下にあるのなら、それはホールに入っているものとみなされる。全体がカップ表面の下に潜っていない場合は、旗竿を取り除いてボールをカップの底に落とさなくてはならない。もしボールがぴょんと飛び出てカップの外で静止したとしたら、ボールをカップの縁にプレースし、タップインせねばならない【編註:結果的に一打を足すことになる】。 7) あなたのために旗竿に介添えしている人が、意図せず【編註:きつく刺さっていて抜けないなどで】旗竿を取り除くのに失敗し、あなたのボールが旗竿に当たった場合、2ストローク・ペナルティを足して、あるがままの位置からプレイしなくてはならない。マッチ・プレイではそのホールの負けとなる。 |
8) 旗竿の代わりにゴルフ・クラブでカップの位置を示すことが出来るが、旗竿に関する全てのルールがそのクラブに適用される。
9) あなたのキャディかパートナーがあなたのために旗竿に介添えする際、スタンスを調節してラインを踏んでパッティング・ラインを示したとしたら、2ストローク・ペナルティかそのホールの負けとなる。もし、その行為が単なる偶然だった場合、彼はあなたの注意を喚起した後、あなたがパットする前にその足をラインから動かさなくてはならない。そうしなかったら2ストローク・ペナルティかそのホールの負けとなる。
10) 【編註:グリーン外からのショットの際】もし旗竿が一方に傾いでいたら、あなたは旗竿をそのままにして次のショットをすることも、直立するように調節することも出来る」
(April 27, 2013)
この記事の筆者Gary McCord(ゲアリ・マコード)はPGAツァーで活躍し、現在はCBS-TVのゴルフ中継を担当しながらChampions Tour(チャンピオンズ・ツァー)でプレイしたり、本を執筆したりしている。彼の'Golf for Dummies'(デクノボーのためのゴルフ教本)はベストセラー。
'Be the Ball'
edited by Charlie Jones and Kim Doren (Andrews McMeal Publishing, 2000, $14.95)
「私には、やさしい何の変哲も無いショットだと心が彷徨い出す傾向があった。ラフや松の木の下からとか、木の上を越すカット・ショットとか、池を越す140ヤードのショットを右に二回転させ急停止させるなんてのは得意中の得意であった。しかし、パー5の池の手前に刻むために7番アイアンを手にしたりすると、毎回池にぶち込んだりしたものだ。現在の私は余計な想念を排除し、目の前のショットに集中し、ヒットし、それから他のことを考える方法を学んだ。
先ず最初に、適切だと確信するクラブを選ぶこと。ダウンスウィングの最中に『やっぱり一つ長めのクラブにすりゃ良かったかなー?』などと考えるようなクラブを手にしてはいけない。次に、そのショットを視覚化せよ。『オッケー。ピンは右奥で風があるから低目のカット・ショットを打とう。低目のカット・ショットだ、低目のカット・ショットだぞ』その場に佇み、そのショットを視覚化出来るまで待つ。最後に大切なのは、スウィングのための留意事項を一つに絞ることだ。
これらの三つはどのショットでも守るべきことである。この方法をどのショットでも同じように行えば、速やかに全てのショットを同じように集中して打てるようになる筈だ」
(April 30, 2013)
この記事の筆者Dr. Deborah Graham(デボラ・グレアム博士)はゴルフ専門のスポーツ心理学者で、300人もの老若男女ツァー・プロのメンタル・コーチをしていると云われています。
'Be the Ball'
edited by Charlie Jones and Kim Doren (Andrews McMeal Publishing, 2000, $14.95)
「以前PGAツァーは、TPC Sawgrass(TPCソーグラス)コースでQスクール(ツァー参加資格認定テスト)を開催していた。私の依頼人の一人はNo.17(パー3)の浮き島ホールでボールを池に入れ、一打差でテストに失敗した。彼はかなり頭に来て、心の中で何度も何度もその一打をリプレイした。
その後、彼はついにツァー参加資格を得て、何回か連続でTPC Sawgrassで開催されるThe Players Championship(プレイヤーズ選手権)でプレイ出来るまでになった。しかし、彼がNo.17の浮き島ホールに来ると毎回何が起ったと思いますか?彼はボールを水没させたのである。毎回、漏れなく。
私たちは、そのトーナメントの火曜日の午後から彼とのセッションを開始し、彼がそのホールで打ちたいショットを視覚化させた。彼にはトーナメント開催前にリプログラム(行動・思考の消去・再構築)をする時間が二日間あった。彼はポジティヴなイメージを用い、自分が実にリラックスした状態にあること、No.16からNo.17への長い距離をゆったり歩く自分を視覚化し、プレショット・ルーティーンに専念する自分をイメージした。
で、何が彼に何が起ったか?彼はパーをものにした。バーディこそ達成出来なかったものの、トーナメントの四日間、彼はNo.17を毎回パーで通過したのだ。これこそマインド・パワーの効果である。
あなたもほんのちょっと過去に戻ってリプログラムしないと、過去の亡霊があなたを脅かし続けるかも知れない。呪われたホールについての記憶は永久にあなたの心に棲み着くのだが、正しく処理すれば極めて簡単に変えることが可能なのである」
【おことわり】画像はhttps://i2.cdn.turner.com/にリンクして表示させて頂いています。
(April 30, 2013)
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