Golf Tips Vol. 135

ラフからの脱出(フライヤー・ライ篇)

ラフにボールが入った場合の状況の一つに“フライヤー・ライ”というのがあります。"flyer/ flier"(フライヤー)と云われるのは、「高く上がってよく飛ぶ」からです。フライヤー・ライはフェアウェイとラフの間の"first-cut of rough"(ファーストカット)と呼ばれる、フェアウェイほど短く刈られてはいないが、ラフほどは長くないという地帯のライのことです。

以下は、インストラクターMike McGetrick(マイク・マゲトリック)によるフライヤー・ライの処理法です。

'The Scrambler's Dozen'
by Mike McGetrick with Tom Ferrell (HarperResource, 2000, $25.00)

「ボールをいかにクリーンにクラブフェースで捉えられるかは、ライが決め手である。ゴルフというのは往々にしてミリメートルのゲームであり、インパクトの瞬間にボールとクラブフェースの間に挟まった数本の草が、ショットの結果に劇的な違いをもたらす。

あなたのボールが、ファーストカットの芝の上に完璧にちょこんと座っているのを見て幸運に感謝し、浮き浮きと10ヤード向こうのグリーンめがけて航空便を送ろうとしたことがあるなら、あなたはフライヤー・ライを経験済みである。フライヤー・ライを一瞥すると、それはギリシア神話のサイレン(セイレーン)の歌声のようにあなたを魅了し、誘惑する。だが、ラフの上に鎮座ましましているボールを見たら、知将ユリシーズ(オデッセウス)のように警戒心を働かすべきである。

朝露が乾いていない早朝や、夕立の後などもフライヤーになり易い。

[rough]

なぜわれわれが“フライヤー”と呼ぶかというと、草あるいは水分がボールとクラブフェースの間に挟まってスピンを減らすからだ。あなたが通常7番アイアンで150ヤード飛ばすとすると、フライヤーでは160ヤード、場合に寄っては170ヤードも飛んでしまう。

フライヤー・ライからのショットで私の生徒に教えていることは、普通のショットに次のような変更を加えよということだ。
1) 1クラブ短いものを選ぶ。
2) 1インチ(約2.5センチ)短く持つ。【スウィング弧の最低点を上昇させ、払うようなスウィングが出来る】
3) 肩幅ぐらいに広めのスタンスを取る。【浅めのフォワード・スウィングが出来る】
4) ボール位置は、左足踵の前方。
5) テンポに集中し、インパクトにかけて水平を保つことに心掛ける。

【重要】《フライヤー・ライではボールを払うように打つ》ことが鍵である。

もし、ボールがフライヤー・ライで沈んでいたら、上と同じ手法を用いるが、以下の点を変更する。
4) ボール位置はスタンス中央。【ディセンディング・ブローで急角度に打つため】
5) 3/4スウィングをする。
ボールは、通常より低く出て、着地してからかなり転がることに注意」

【おことわり】画像はhttps://www.golftipsmag.com/images/stories/2010/GIA/bad-lies/deep-rough-lg.jpgにリンクして表示させて頂いています。


(October 10, 2011)


ラフからの脱出(ボールの半分が草の中に沈んでいる場合)

インストラクターMike McGetrick(マイク・マゲトリック)による「ラフからの脱出」続編。

'The Scrambler's Dozen'
by Mike McGetrick with Tom Ferrell (HarperResource, 2000, $25.00)

「ボールの半分が草の中に沈んでいる場合の問題点は、クラブヘッドがボールに接触する前に、長い草がクラブヘッドに絡まってクラブをシャットに捩ることだ。その結果、そのクラブをフェアウェイで用いる場合よりもボールは低く、しかも左方向に飛ぶ。

1) 深いラフでは距離の不足を補うため、通常より1〜2クラブ長いクラブを選ぶ。(ただし、私は4番アイアンより上のクラブを使うことはしない)
2) 1インチ(約2.5センチ)短く持つ。
3) ボール位置はスタンス中央。【草の介入を避けるため。急角度のダウンスウィングをするため】
4) 1インチ(約2.5センチ)ボールに近く立つ。【早期にボールと接触するため】
5) フェードを打つスウィングする。【編註:当サイトにはフェードの打ち方が沢山あります】
6) ディヴォットを取るように心掛け、フィニッシュへと身体を充分に回転させる」

(October 13, 2011、改訂June 04, 2015)


ストローク・メソッド別セットアップ法

インストラクターMike Adams(マイク・アダムズ)による、あなたのストローク法のテストと、それに合ったパター・フェースのバランス、およびセットアップの仕方。

[balance]

先ず、写真を御覧下さい。AとCは"face balanced"(フェース・バランスト)型と呼ばれるタイプで、ストレート・ストロークに向いています。写真のBとDは"heel-toe balanced"(ヒール=トゥ・バランスト)型と呼ばれますが、Mike Adamsはもっと詳細に区分しています。写真のBは"full toe hang"(フル・トゥ・ハング、約70°オープン)と呼ばれるブレード型パターで、円弧型ストロークをするためのもの。写真Dは"1/2 toe hang"(1/2トゥ・ハング、約50°オープン)と呼ばれるPING Anserタイプで、これも円弧型ストロークに相応しい。"3/4 toe hang"(3/4トゥ・ハング、約60°オープン)というのもあり、これも円弧型用。"1/4 toe hang"(1/4トゥ・ハング、約30°オープン)は浅い円弧型およびストレート・ストローク両方に用いられます。

'Golf Magazine's The Best Putting Instruction Book Ever!'
Edited by David DeNunzio (Time Home Entertainment Inc., 2010, $32.00)

【2ボール・テスト】

パターのスウィートスポットを挟んで二個のボールを並べます。二個を同時にパットし、ボールの行方を見ます。

「a) もし、パターのトゥに近い方のボールが他のボールより遠くへ転がったのなら、あなたはトゥの重いパター(写真のBやD)を用いるべきだ。なぜなら、あなたは自然に円弧型ストロークを行なっていて、トゥ側のボールを先に打って遠くへ転がしているからだ。

b) もし、パターのヒールに近いボールが遠くへ転がったか、あるいは同じ距離に到達したのであれば、フェース・バランストのパター(写真のAやC)を用いるべきだ。あなたはほとんどパターを回転させない(あるいはマイナスの回転)で、自然にストレート・ストロークを行なっているからだ。

【ストレート・ストロークのセットアップ】

・フェース・バランストのパターを用いる。
・ボール位置はスタンス中央の少しターゲット寄り。
・上のボール位置が両肩をスクウェアにする(これはストレート・ストロークにとって非常に重要)。

・股関節から前傾し、目がボールの真上になるように。
・両腕は肩から自然に垂らす(これは円弧型ストロークになるのを防いでくれる)。【註】
・体重が両脚に平均になるように調整する。

【註】角度が増えれば増えるほど円弧型ストロークになり易い。

・鏡で、両方の前腕部とシャフトが一直線になっているかどうか、確認する。

【円弧型ストロークのセットアップ】

・トゥの傾斜が緩やかなパター(例:写真D)であれば、ボール位置はスタンス中央のややターゲット寄り。トゥの傾斜が急(例:写真B)であれば、あなたのシャツのロゴマークの真下の前方をボール位置とする。

・トゥの角度が急であればあるほど、ボールをターゲット方向に置き、立つようなポスチャーで円弧を作り出す。

・どのパターでも目はボールの真上ではなく、ターゲット・ラインの内側にする。"full toe hang"なら約5センチ、"3/4 toe hang"なら約4センチ、"1/2 toe hang"なら約2.5センチ、"1/4 toe hang"なら約1.3センチほどターゲット・ラインの内側に目があるようにする」

(October 18, 2011)


高い軌道のソフト・フェード

1978年のPGA選手権優勝者で、1975年のU.S.オープンに二位に入り、ツァーで計11勝を挙げたJohn Mahaffey(ジョン・マハフィ、1948〜)の留意事項。

'Slide your lower body for a high, soft fade'
by John Mahaffey ('Swing Thoughts' edited by Don Wade, Contemporary books Inc., 1993, $12.95)

「メイジャー・トーナメントに参加すると、否応無く固く早いグリーンに直面することになる。いくつかの最高に手強いグリーンを持つU.S.オープン開催コースのOakmont(オークモント)などは特にそうだ。

こういう早いグリーン、狭いフェアウェイ、深いラフに対応する最高の方法は、高い軌道のソフト・フェードしかない。このショットの利点は、ドローよりもソフトに着地することだ。この方法だとピンを直接狙うことが出来る。コントロールされたフェードはフェアウェイ・キープにも役立つ。こういうタフなコースでラフからのショットを何度も打つことになると、予選ラウンドを終えた時点で荷造りしなければならなくなる。

私はLee Trevino(リー・トレヴィノ)から多くを学んだが、これは彼の名人級のショットである。このショットの鍵は、下半身でダウンスウィングを先導することだ。両脚と腰がクラブヘッドに先行してボール位置をスライドして通過する。もう一つの鍵は両手がクラブヘッドに先行してボールに向かうことだ。その際、左手首がインパクトで折れぬように注意すること。このスウィングならボールが左に出ることはあり得ない。

私はこのスウィングによってOakmontで大過なくラウンドし、Tom Watson(トム・ワトスン)とJerry Pate(ジェリィ・ペイト)とのプレイオフを制することが出来た」

(October 21, 2011)


簡単ショート・ロブ

下りのグリーンとかピンまでの距離が短いグリーンにチップする場合、またバンカー越えなどには、ボールを高く上げて最少限のバウンドで停止させなくてはなりません。そういう時に役に立つ重宝なショットです。

'Drop it, stop it'
by editors of 'Golf Magazine' ( 'Golf Magazine, October 2011)

「・高く上げてソフトに着地させる方法

1) ワイド・スタンスで膝を曲げ、クラブを握った手をかなり下げる。【浅いスウィング弧と、クラブヘッドにボールの下をくぐらせるインパクトの準備】
2) クラブシャフトを右の太股に寄せる。【結果としてクラブフェースがオープンになる】
3) 距離に見合った通常のバックスウィング。【註参照】
4) 右掌が終始空を向くようなダウンスウィング。【右掌で何個ものサイコロを転がす感じ。これがフェースをオープンにし続け、ヘッドがボールの下を潜り抜け、高くソフトなショットを生む】」

【註】「 距離に見合った通常のバックスウィング」となっていますが、クラブが何か、何が通常なのかで話が違って来ます。60°ウェッジでフェースをオープンにし高く上げると格段に距離が減るので、通常のチッピングより長めのバックスウィングが必要です。

このショットは数回の練習で実行可能で、しかも効果的です。「右掌が終始空を向くようなダウンスウィング」はバンカー・ショットに共通する特徴なので、それに慣れていればこのショットは簡単に遂行出来ます。

(October 24, 2011)


パッティング十戒

これは、インストラクターScott Munroe(スコット・マンロー)が執筆したロング/ベリィ・パターを用いる人のための戒律なのですが、☆印をつけた項目はどんなパターを使う人にも役立ちます。

'Golf Magazine's The Best Putting Instruction Book Ever!'
Edited by David DeNunzio (Time Home Entertainment Inc., 2010, $32.00)

「1. 右肘を身体の右に糊付けし続けること。インパクト後にストロークをターゲット方向に拡張すると、右肘は身体の前をスライドするだろうが、それについて考えてはいけない。《右肘を引きつけておく》ことはNo.1のルールであり、それによってストロークをガイドし、クラブヘッドを軌道に乗せ続けることが出来るのだ。

2. ☆パットを成功させようと思うな。いいストロークをしようと考えよ。

3. ☆ストロークの強さはラインよりも重要である。狙うのが上手ければ、ラインは単純である。

4. ロング・パターで打たれたボールは、スタンダードなパターよりも早く動き、いい転がりが得られる。だから、スタンダード・パターの時よりもブレイクを少なめに見積もってよい。

5. ☆パット名人たちは、一般的に短いバックストロークと長いフォロースルーをしない。両方、同じ長さにせよ。

6. ☆パターをボールに向かって落っことすように考えること。

7. ☆パターヘッドが左爪先を越えるまで頭を動かさず、ボールがカップインする音を聞く。

8. ☆遅いグリーンではきつめにグリップし、早いグリーンおよび短いパットでは軽くグリップせよ。

9. ☆練習グリーンでカップを狙ってはいけない。それはミスする練習に他ならない。グリーン上の何か(変色した部分やコイン)をターゲットに、いいストロークを目指す。

10. ☆絶え間なく練習すること。どんな大発見をするかも分からないからだ」

(October 24, 2011)


スローなバンカー・ショット

PGAツァーなどのTV中継を観ていると、プロたちの多くは力まない、優雅なテンポのバンカー・ショットをしています(雨の後の湿った砂の場合は別ですが)。もちろん、彼らがプレイするコースの砂はさらさらしていて、抵抗が少ないという理由はあるでしょう。私がプレイしているゴルフ場はそんな上等の砂を入れてはいませんし、雨の後は固くなって目玉になりようがないほどです。そんな砂ですと、つい力瘤を作って急速なバンカー・ショットをしなければいけないような気になります。

この記事の筆者Barbara Romack(バーバラ・ロマック、1932〜)は、1954年の全米女子アマに優勝し、翌年の全英女子アマにも二位となり、後にLPGAツァーで活躍した人。

'The slow-motion trap shot'
by Barbara Romack ('Golf Magazine's Pro Pointers and Stroke Savers'
edited by Charles Price, Harper & Brothers, 1959)

「バンカー脱出を試みるゴルファーにとって最も困難なこととは何か?恐怖と緊張への対処である。バンカー・ショットは他のショットより難しいものではないのに、人々は難しいものだと思い込んでいる。

ショット遂行に恐れを抱く場合、われわれの身体は固くなる。その状態だとわれわれは過度に急速にスウィングしようとする。ゴルファーは一刻も早くバンカーから出たいと考え、その感情が速いスウィングに反映する。そういう傾向に抵抗するには、落ち着いて出来る限りゆっくりスウィングすることである。

1) オープン・スタンスで、ボール位置は左足踵の前方。
2) クラブフェースをかなり開く。
3) ボールが右に出るので、リーディング・エッジは旗のやや左を差すように構える。
4) 可能な限りゆっくりスウィングする。
5) バックスウィング開始と同時に手首をコックする。
【編註:僭越ながら、ここに「手首を返さずスウィングする」を挿入したいと思います】
6) ゆっくりボールの下を打ち、いいフィニッシュを作る。

 

最初から最後まで、スウィング全体をスロー・モーションで行なうこと。この方法に最初違和感を抱くかも知れないが、少し練習すれば、緊張を和らげ素晴らしいコントロールが得られるスロー・テンポのショットを身につけられる筈だ」

砂の質や雨の後で固くなったバンカーでは「スローでソフトなスウィング」はショートします(出せないこともある)。あくまでも足がさらさらの砂にめり込むような場合に限定すべきです。さらさらであれば「鍋物の灰汁(あく)を取るような、ゆっくりのバンカー・ショットが効果的です。

(October 27, 2011、改訂July 13, 2016)


ストローク法とポスチャーの相性

パターとストローク法の相性については、既にいくつかの記事を紹介済みです。ストロークとポスチャーの相性に触れた記事もあることはあるのですが、重複を恐れずもう一つ、パッティング・コーチMarius Filmalter(マリウス・フィルマルター)の理論を紹介します。

'Making the putt'
by Marius Filmalter ('Golf Magazine,' June 2010)

「・俗説

『トゥが重いパターなら円弧型ストロークをせよ。"face balanced"(フェース・バランスト)と呼ばれるフェースが天を向くパターであればストレート・ストロークをせよ』

・真実

上のようにパターの重心がストローク軌道に影響するのは事実だが、あなたのポスチャーの方がずっと影響が大きい。ポスチャーとストローク法をマッチさせれば、パッティングをもっと楽しめる筈だ。

・円弧型ストロークをする人の場合

アドレスでアップライトに立つ。逆もまた真:アップライトに立つのが快適なら、円弧型ストロークをすべきである。

・ストレート・ストロークをする人の場合

アドレスで屈むべきである。逆もまた真:屈み込むポスチャーが快適なら、フェースの(円弧型)回転を最少限に留めるべきだ」

[icon]

以上の記事の証明として、Ernie Els(アーニィ・エルス)の例が出ています。彼は2009シーズンまではレギュラー・パターを用い、背骨を約60°折る前傾姿勢のアドレス(どちらかと云うとゆったり立った姿勢)でストレート・ストロークをしていました。彼のパッティング・コーチMarius Filmalterは、「Ernie Elsのポスチャーとストローク軌道がマッチしていなかった」と指摘します。で、Marius Filmalterはもっと屈んだアドレスを勧め、Ernie Elsは約40°も深く屈んだポスチャーにし、2010年に入って二勝を挙げたそうです。

皮肉なことに、Ernie Elsは2011年春にベリィ・パターに鞍替えしてしまいました。屈んだポスチャーへの変更でも満足すべき成果が得られなかったということでしょう。Ernie Elsはかつて「長いパター(ベリィもロングも)は禁止されるべきだ」と主張し、Adam Scott(アダム・スコット)も「Ernie Elsに賛成だ」と述べていたのですから、お笑いです。

(October 30, 2011)


ラインの読み方

'Golf begins at 45'
by Tom Scott and Geoffrey Cousins (A.S. Barns and Company, Inc. 1960)

「南ア出身のパット名人Bobby Locke(ボビィ・ロック、1917〜1987)のグリーンの読み方は、地面に這いつくばったりプラムボビングこそしなかったが、全てを抜かりなく綿密に調べるもので、アドレスに入るまでにはグリーンの全体像を脳内に構築し終え、ボールが正しく正確に打たれたらどう転がるかを熟知済みだった。

【参考】「Bobby Lockeのパッティング手順」(tips_131.html)

一般的ゴルファーの1ラウンドの打数の1/3以上はパットに費やされる。だから、パットのストローク数を減らすのが賢いゴルファーと云える。だからと云って、みんながBobby Lockeのように入念にグリーンを観察したら、それでなくても渋滞するラウンドがもっと遅くなってしまう。読み方の要点を知り、効率よく読むべきである。

1) パットする前に先ず知るべきなのは、そのグリーンが早いか遅いかということだ。もし芝が青々として見えれば、スピードが遅いと云ってよい。もし茶色で短い芝であればほとんどの場合早いと云える。そんなの初歩だって?かも知れない。しかし、かなりのヴェテラン・ゴルファーであっても(しかも数ホールを終えた後でも)グリーンの早さの判断に失敗することがあるのだ。

2) 次のチェック・ポイントは、あなたのパットが上りか下りかということだ。ボールの後ろからの一瞥では充分ではない。それはしばしば誤った印象を与えるものだ。カップの後ろからも調べるべきである。その後、ラインの横に廻ってじっくり全体像を掴む。

【編註】私はチップやパットの前に、住宅の表示の"Beware of dog"(ビウェア・オヴ・ドッグ、猛犬注意)をもじって"Beware of downhill"と呟くことにしています。上り坂は下からよく判るのですが、上からだと下り坂を認識出来ないことがあります。うっかり下りのラインであることを見過ごすと、ボールはごろんごろん転げてグリーンを出て行ってしまう大惨事に繋がります。

3) 以上の手順により、もしラインが斜面を横切るものであれば、どれだけ"borrow"(迂回巾)を見込むかという問題に突き当たる。

 

上りでしかもサイドヒルの場合は、ストレートの上りのパットよりももっとしっかり打たねばならない。下りでサイドヒルも似たような判断が必要になる。これに対処するには訓練された目と豊富な練習がものを云う。

"borrow"(迂回巾)の問題点は、ゴルファーが充分に"borrow"を見込むことを恐れることだ。「そんなに多い筈はないだろう」と、彼らは直観を否定する。しかし、多くの場合、直観は正しいのだ。

海や川のある谷に近いコースのグリーンでは、目には反対のように見えても、勾配は水のある方向に向かっていると云って間違いない。それは、下りのように見える道路が実は上りであって、運転者はギアを一段階落さなければ登れない坂があるのに似ている」

(November 02, 2011)


Corey Pavin(コリィ・ペイヴン)流フェード

'Breaking 90 with Johnny Miller'
by Johnny Miller (Callaway Editions, 2000)

Johnny Miller(ジョニィ・ミラー)執筆による"Shot Encyclopedia"(ショット百科事典)にフェードの打ち方が四つ出ています。それぞれ、状況・球筋などが異なります。Corey Pavin(コリィ・ペイヴン、1959〜)は、U.S.オープン1995の優勝者で、2010年のRyder Cupのキャプテンも務めました。

「・適する状況

 ドライヴァー、フェアウェイ・ウッド、ロング・アイアンなどで、あまり激しくない、高い、左から右への軌道で打ちたい場合。

・スタンスとボール位置

 オープン・スタンスで、ボール位置は通常より1インチ(約2.5センチ)ターゲット方向で、クラブフェースはターゲットにスクウェア。

・クラブ選択

 目前の距離に普通に打つクラブより1クラブ長いものを選ぶ。【編註:フェードはランが少ないので】

・打ち方

 8の字のスウィングをイメージする。インサイドに引き、トップでループさせアウトサイドから打ち下ろす。ボールにスライス・スピンを与えるようにヒットすることになる。結果は、急速に空中に舞い上がり、ソフトに着地してランの少ないフェードになる。距離は若干減るが、正確度を増すことが出来る」

(November 05, 2011)


廻せ、傾げるな

これは1993年のPGA選手権優勝など、計14回のツァー優勝を果たしたPaul Azinger(ポール・エイジンガー)の留意事項。

'Turn, don't tilt'
by Paul Azinger ('Swing Thoughts' edited by Don Wade, Contemporary books Inc., 1993, $12.95)

「私は勝利したトーナメントごとに異なる留意事項(swing key)を持っていたが、最も永続しているのは『水平にスウィングする』というものだ。私は、バックスウィングで左肩を下に傾(かし)げる傾向があり、それはスウィング・プレーンを過度に急角度にした。それはまた、(身体のタイトな回転ではなく)左右へのスライドに繋がった。私はスウィングの間じゅう両肩を水平に保つようにすれば、身体の回転がよくなり、ボールをちゃんと打てることに気づいたのだ」

(November 05, 2011)


ショート・アイアンをマスターせよ

'The short irons'
by Barbara Romack from 'Golf for Women' edited by Louise Suggs (Doubleday, 1960)

パーオン率を上げるにはショート・アイアンを正確に打たねばなりません。これは女性向けに書かれた本の一章ですが、ショート・アイアンの打ち方に女性と男性の区別があるわけもなく、当然男女両方に役立ちます。筆者Barbara Romack(バーバラ・ロマック、1932〜 )は20年近くLPGAツァーに参加したヴェテランで、LPGAの副会長も務めた女性。

「ショート・アイアンは、あなたにバーディや90切り、80切りをもたらすクラブである。

ショート・アイアンを用いる時は“パワー”という言葉を忘れ、あなたの語彙集から消し去ること。正確さだけを追求する時にのみ、ショート・アイアンは最大の効果を発揮する。

ショート・アイアンを使う際は体重を安定させ、手・腕・クラブヘッドが一体となって動くワンピース・スウィングをすること。

ミドル・アイアンやロング・アイアンのようにスウィング弧を大きくする必要はなく、クラブが首に巻き付くようなバックスウィングではなく3/4スウィングをするように。

ボール位置については、私があるプロから教わり、私のゲームに限りなく役立っているtipをお教えしよう。それは《常に鼻の先にボールを置け》というものだ。これは(打ち上げや打ち下ろしを除く)アイアン・ショット全てに共通する鍵である。

 

オープン・スタンスを取り、腰と肩を楽にする。この構えはバックスウィングを制限するため、前述した3/4スウィングを自動的に実行することに繋がる。

ショート・アイアンでは大きな身体の動きはせず、手が活躍する。アドレスではハンド・ファーストに構え、最初から最後まで左手がスウィングをリードする。慌てずゆっくりディセンディング・ブローでボールを打ち、両手をターゲット方向に向かわせる(これはショート・アイアン全てに共通のポイントである)」

(November 08, 2011)


バンカー・ショットの方向チェック

'How to land bunker shots where you want them'
by Scott Sucket ('Golf Magazine," September 2007)

「バンカー・ショットはオープン・スタンス(ピンの左を狙う)で構えると知ってはいても、いざバンカーでボールに向い足を砂に埋めると、果たして必要充分にオープンか、オープン過ぎなのか、さっぱり分らなくなるものだ。

ピンの左を狙うと云っても、爪先を結んだ線がピンの左20°を超えてはならない。それ以上はオープン過ぎである。それを念頭にアドレスし、足を砂に潜らせる。ここで一旦アドレスを解き、後方から自分の足跡をチェックしよう。大方のゴルファーは45°も左を狙う過度にオープンなミスを冒す。あなたの場合、スクウェアか、ひょっとするとクローズになっているかも知れない。

この足跡チェック法を用いて、ピンの左20°を狙うスタンスをマスル・メモリに植え付けよう。クラブのリーディング・エッジはピンを狙い、両爪先を結んだオープンな線に沿ってスウィングする」

(November 11, 2011)


Ben Hogan(ベン・ホーガン)のチッピング・ヴィデオ

以前、「Hogan(ホーガン)のチッピング」という記事を掲載しました(tips_103.html)。それは、以下の本の中のチッピングの部分を紹介したものでした。

'Afternoons with Mr. Hogan'
by Jody Vasquez(Gotham Books, 2004, $20.00)

著者Jody Vasquez(ジョディ・ヴァスケス)はBen Hogan(ベン・ホーガン)のボール拾いを数年勤め、Ben Hoganの練習を間近に見ることが出来た人で、チッピングについて次のように書いています。

「最近のインストラクターが教えるのはスクウェアなバックスウィング、スクウェアなフォロースルーだが、それはあまり練習しないゴルファーにとって安全確実な方法だからである。しかし、この方法だとボールはクラブフェースを駆け上がるので、あまりソリッドなフィーリングは得られない。

Mr. Hoganはバックスウィングでクラブフェースをオープンにし、フォロースルーでクローズにした。彼はクラブフェースの底の部分しか使っていなかったことになる。私はMr. Hoganが扇のようにクラブフェースを開き、インパクト後に閉じたりするのを見て、私もそのメソッドを真似してみた。すると、クラブフェースを一寸オープンにしただけでも、いいショットを生み出せることが分った。ボールとの接触は非常にソリッドだし、手でボールを投げたかのように完璧に転がるのだ」

私も「扇のようにクラブフェースを開き、インパクト後に閉じるチッピング」をしているので、それがBen Hoganのチッピングに似ているのか違うのか確認したいと思い、ヴィデオを探していました。“Hogan命”の私のゴル友Jack(ジャック)が、最近ヴィデオの在り処を教えてくれました。

http://www.youtube.com/watch?v=43ZtYs77Uoo

上のスウィングのトップ、インパクト、フィニッシュだけを抜き出すと下図のようになります(クラブが見にくいので目立つように加工しました)。トップで手首が折られてフェースがオープンになり、インパクトからフィニッシュにかけて手首をリリースしないで(掬い上げず)、ロフトを活かしながらフェースをクローズにしています。インパクト後のボールの高さにも御注目。

[square]

【註】このヴィデオの最後にBen Hoganの言葉が字幕として出て来ますが、これは「Ben Hoganの手紙」として流布されている偽の文書からの引用です(アメリカのあるサイトで、これが贋作であることを数人が明快に立証しています)。

このヴィデオのBen Hoganのチッピングは、私が「変則ロブ」と呼んでいたロブ・ウェッジによるチッピング・メソッドにそっくりです。1999年頃に自己流でボールを高く上げる技法を開発し愛用していたものの、こんな方法を推奨している本や雑誌は皆無だったので“変則”と卑下していました。偶然にもBen Hoganに似たチッピングだったとは驚きです。

現在の私のメソッドでは、(ごく短い距離を除いて)バックスウィングでロブ・ウェッジのシャフトを飛行線に揃えます。距離が長い場合はシャフトを飛行線に沿わせたままクラブを持ち上げます。フィニッシュではトゥが天を向き、クラブフェースはクローズになってターゲットを指します。低くランがあるボールにしたい場合は低いフィニッシュ、高く上げてすぐ止めたいたい場合は高いフィニッシュをしています。

Ben Hoganのバックスウィングが飛行線に揃っているかどうかは確認出来ません。ですから、彼と私のメソッドが完全に同じとは云い切れません。「かなり似ている」と表現すべきでしょうが、手でボールを抛り上げるようなショットになる結果は全く同じです。そしてこれは寄せワンの秘密兵器です。

【参考】
・「Eiji Takanoの変則ロブ」(tips_15.html)
・「“変則ロブ”のルーツを探る」(tips_30.html)
・「変則ロブ・再履修」(tips_43.html)
・「超変則ロブ」(tips_110.html)

(November 14, 2011)


ミドル・アイアンをマスターせよ

LPGAプレイヤーRuth Jessen(ルース・イェッセン、1936〜2007)は、LPGAツァーで11勝を挙げた女性。これは1960年当時の人気プロたちが女性ゴルファーのために共著した本の一章ですが、当然男性ゴルファーにも役立つ内容です。

'The medium irons'
by Ruth Jessen from 'Golf for Women' edited by Louise Suggs (Doubleday, 1960)

「ミドル・アイアンとは4番、5番、6番アイアンのことだが、4番アイアンはロング・アイアンの打ち方が必要なので、この章では触れないことにする。

5番アイアンは距離を稼ぐクラブと、ボールをグリーンに抛り投げるクラブの中間に位置し、シャフトの長さもフェースの角度(ロフト)もアマチュアに扱い易い範疇である。入門者の多くが5番アイアンの練習を勧められるだろうから、本格的にゴルフに取り組もうとする際、5番アイアンは昔馴染みの旧友との再会となる筈だ。

ミドル・アイアンは、ややオープンにした肩幅のスタンスで、股関節から屈んでアドレスすること。ボール位置は5番アイアンでスタンス中央、6番アイアンでやや右足寄りにする。初心者はボールを掬い上げようとするが、上げたいならボールに向かって打ち下ろし、若干のディヴォットを取らなくてはならない。掬い上げるのは、ボールに切腹の痕をつけるだけである。

女子プロは6番アイアンで135〜140ヤード、5番アイアンで150ヤード打とうとする【編註:キャリーであってラン込みではない】。もちろん、毎日ラウンドするわけではない女性ゴルファーにその距離は期待出来ない。ドライヴァーを150ヤード飛ばす女性であれば、5番アイアンをは110〜115ヤードは打てる(キャリー)。6番アイアンでは90〜100ヤード。

【編註:時代ですね。クラブもボールも良くなった現在は、少なくとも20ヤードは増えているでしょう】

女子プロが、フックやスライス、高い軌道、低い軌道などの打ち分け方をデモする時は5番アイアンを使う。5番アイアンは風の強い日にも役立つクラブだ。クラブフェースを僅かにかぶせ気味にして打つと、地面にほぼ平行に飛び、風にも関わらず飛距離を稼ぐことが出来る。

5番と6番アイアンは一定の距離を飛ばす際のみならず、アプローチ・ショットにも有効である。6番アイアンによる寄せの例として次のようなケースを挙げよう。速いグリーンの遠くの端にカップが切られていて、ボールのライが良くないという場合、こういう場合はロフトの多いクラブではなく6番アイアンの出番である。6番アイアンの、どちらかと云えば立ち気味のフェースによって正確に転がすことが出来る。

 

もう一つのケース。カップがグリーンのこちら側の端に切られていて、ボールとグリーンの間に丘がある場合。この場合は6番アイアンで土手に打ち、丘を越えてカップに向かって転がすのがベストである。こんな状況でショート・アイアンで打たれたボールは、丘に着地した後こっちへ転がり戻って来るか、やっとこさ丘を越えても減速してしまい、充分に転がってくれない。

5番アイアンもアプローチ・ショットに役立つ。ボールがグリーンから約2メートルの平らな場所にあるとする。こういう場合、8番や9番アイアンでトップしたりダフったりする危険を冒すより、5番アイアンを使うべきだ(カップまでの距離によっては4番や6番アイアンでも可)。5番アイアンでは右足の前方をボール位置とする。

ミドル・アイアンでピッチ・アンド・ランをする場合、ディヴォットを取ってはいけない。フォロースルーもパッティングに準ずる。インパクト後、クラブフェースはかぶせ気味(クローズ気味)で、ピンに向かってボールが転がすようなフォロースルーを行なうべきである。【編註:低いフィニッシュをするの意】

(November 17, 2011)


アドレスで腕・手を前に突き出すな

名人Tom Watson(トム・ワトスン)による正しいポスチャーの基本。

'Don't reach for the ball'
by Tom Watson with Nick Seitz ('Golf Digest,' December 2011)

「しょっちゅう見掛けるアマチュアのポスチャーに、ボールから離れ過ぎ、ボールに向かって腕・手を突き出すスタイルがある。腕を前に出せば肩が緊張する。それはアウトサイド・インのスウィング軌道を推進するためスライスの元凶となる。

どのクラブを振るにせよ、腕は肩からだらんと下がっていなくてはならない。そのだらんと下がった両手を合わせたところがグリップの位置である。ボールと身体の間隔はクラブの長さによって決まる。長いクラブほど、その間隔は離れる。背骨の前傾角度もクラブによって多少変化する。長いクラブでは身体は立ち気味になり、短いクラブでは屈み込む」

私の周りにも腕を前に突き出してアドレスする連中が多い。彼らは「クラブが長ければ長いほど飛距離が増すのだから、腕を伸ばしても同じ効果が得られる筈だ」と思い込んでいるのでしょう。彼らがミス・ショットばかりするのなら、一度忠告して上げてもいいと思うのですが、たまにそのポスチャーでいいショットをしたりするので聞いてくれそうもありません:-)。

ツァー・プロでも、ドライヴァーを打つ際に腕を前に出す人がいます。特にLPGAに多い。これもアマチュアが真似する原因かも知れません。しかし、プロとアマの練習量は天と地の隔たりがあり、しかも彼らは毎日ラウンドしている。彼らにはコーチもついています。われわれが形だけ真似していいものではないでしょう。

私がTom Watsonのメソッドを支持する理由は、物理の法則から来るものです。肩からだらんと下がった腕は引力に逆らっていません。インパクトでも、自然にその状態が再現されるでしょう。その垂直の腕に較べ、前に伸ばした腕は引力に逆らっていて一定の角度を保つための努力が必要です。インパクトの瞬間までその角度を維持出来る保証は全くありません。加えて、Tom Watsonが云うように腕と肩が緊張します。アドレスの段階から緊張していい筈はありません。

(November 23, 2011)


ドアの開閉のようにチップせよ

このメソッドは「Ben Hoganのチッピング」によく似ているのですが、完全に一致しているわけではありません。これはインストラクターTom Ness(トム・ネス)が、「リリース」という言葉の実際を、パッティングからピッチングまでのそれぞれで図解とともに説明している記事の一部で、彼の「リリース」の基本理念は、《バックスウィングのトップで右掌が身体の正面を向き、フォロースルーで右手甲が身体の正面を向く》というものです。

'Let the door swing open and closed'
by Tom Ness with Pete McDaniel ('Golf Digest,' December 2011)

「チッピングではスウィング・ドアの開閉をイメージして貰いたい。バックスウィングでクラブヘッドは手の後方に動き、スウィング・ドアのように開く(胴と腕の回転がクラブフェースをオープンにし、クラブヘッドのトゥが天を指す)。【編註:写真ではクラブシャフトが飛行線にほぼ平行に引かれ、クラブフェース(+右掌)は身体の正面を向いています】

ダウンスウィングとともに、クラブヘッドは手を追い越してスウィング・ドアが閉じる(右手甲が身体の正面を向く)。胴と腕の回転がフェースを回転させ、クラブヘッドのトゥが天を指すフィニッシュとなる。

これは、パッティングのリリースに腕と身体の動きが加わったものである」

最後の一行で解るように、この筆者はパッティングに円弧型ストロークを推奨しており、チッピングにもそれを応用せよと説いているわけです。

Ben Hogan(ベン・ホーガン)はあまり身体の動きを使っておらず、せいぜい膝の動きが認められる程度です。このTom Nessの写真では盛大に身体を使っており、フィニッシュの写真では右肩が正面を向き、腰はターゲット方向を向いています。ここがBen Hoganのチッピングと異なる点です。しかし、ドアの開閉というコンセプトは、両者とも似通っています。

「Ben Hoganのチッピング」(および私のチッピング・メソッド)が変則ではないという証明です。

(November 26, 2011)


裸地から寄せる

'Precision Wedge and Bunker Shots'
by Jim Fitzgerald with Dave Gould (Human Kinetics, 1998, $16.95)

「グリーンまで10〜20ヤードの裸の地面か、ごく薄い草の上にボールがある場合。

・サンドウェッジを使う(ロフトは必要だが、バウンスは少ない方がよい)。
・ボール位置はスタンスのやや後方。
・体重はターゲット寄り。
・両手はボールよりもターゲット方向に倒す。
・左足を中心に、身体を廻しながらダウンスウィング。
・ボールの赤道よりも下を、下降中の軌道でクリーンに打つ。

掬い打ちやボールを上げようとするスウィングは不可。ボールを叩き切るようにヒットすること。

練習では、先ずボール無しでVの字の鋭角的スウィング弧で地面をヒットする。その感覚を記憶し、ボールを打つ。最初は距離を気にしないように。地面でインパクトを迎えることと、低く出るボールの軌道に慣れること」

(November 29, 2011)


ロフトを増す効果と副作用

Tiger Woods(タイガー・ウッズ)の前コーチHank Haney(ハンク・ヘイニィ)の、傾聴に値する解説。

'Lofting your short-game shots'
by Hank Haney ('Golf Digest,' September, 2011)

「ショートゲームでロフトを生み出す要素は只一つ、どこでボールとクラブが接触したかである。ロフトを増したクラブフェースの接触がボールの底部に近ければ近いほどボールは高く上がる。サンドウェッジにエクストラのロフトを加えるアドレスの方法に二種類ある。

a) クラブフェースをオープンにする

全てのピッチショットで多少なりともフェースをオープンにすべきである。何故なら、オープンにすることによってクラブのリーディンエッジが僅かでも地面から離れ、ザックリと地面を掘り返してダフるミスを防止出来るからだ。

オープンフェースによってボールは高く上がるが、副作用もないではない。オープンにすればするほど、クラブフェースの有効面積が小さくなり、ホーゼルで打ってシャンクする危険も出て来る。

b) グリップ・エンドを下げる

この方法もクラブフェースをオープンにした場合と同様ロフトが増す。そのいい例がバンカー・ショットだ。広いスタンスによって自動的に通常よりグリップエンドが下がる。

フェースをオープンにした(あるいは手を下げた)ピッチ・ショットに関して誤解があるようだ。オープンフェースによってボールが右へ出るという先入観である。ボールの底部を打てば高く上がってストレートに飛ぶ」

先月紹介した「簡単ショート・ロブ」がグリップ・エンドを下げる方式でした。先日、あるパー3のティーショットをプッシュし、私のボールはグリーン真横10ヤードへ。ピンは私に近い方にあり、普通にチップするとランによって大巾にオーヴァーします。そこで「簡単ショート・ロブ」の出番。広いスタンスでグリップエンドを低くし、さらに右脚の方に寄せ、手が右肩に達するほど大きなバックスウィング(トップすれば大ホームラン!)。ボールはグリーン右端に着地し、驚く勿れ(私は驚いた!)、小さなワン・バウンドで停止しました。誰も見ててくれなかったのが残念。カップに1メートルのパットを入れてパー。プロになった気分でした:-)。

(December 05, 2011)


湿った砂、二つのライ

この記事の筆者は、インストラクターの世界No.1のButch Harmon(ブッチ・ハーモン)の父Claude Harmon(クロード・ハーモン)。彼は1948年のMastersで優勝し、レッスン・プロがMastersチャンピオンになったと話題になったそうです。この記事の肩書きによれば、当時Winged Foot G.C.とカリフォーニアのあるゴルフ場の二つに所属していたようです。

'Recovering from wet sand'
by Claude Harmon ('Golf Magazine's Pro Pointers and Stroke Savers'
edited by Charles Price, Harper & Brothers, 1959)

「湿った砂からの脱出には、ボールのライによって二つの方法がある。

・ボールが砂に潜っている場合

1) 普通のバンカー・ショットと同じく、オープン・スタンスで、主に左足体重。
2) クラブヘッドを急激に引き、ボールの10センチ後ろにクラブヘッドを突き刺す。意識的フォロースルーは不要。

このフォロースルーをしないショットは、どの程度強く打つべきか練習の必要がある。この方法で打たれたボールは通常より早めにバンカーを離れ、バックスピンはほとんどかからない。

・ボールが砂の表面にクリーンに座っている場合

砂が水浸しの時はサンドウェッジを使い、砂が固ければピッチングウェッジを選ぶ。ピッチングウェッジの鋭い先端なら砂にめり込ませることが出来るが、サンドウェッジのフランジ(突縁)は砂の表面で跳ね返ってしまうので役に立たない。

 

どちらのクラブを使うにせよ、クラブヘッドを加速させることによって、明確なフォロースルーを取るように」

(December 05, 2011)


検証・《アドレスで腕・手を前に突き出すな》

先頃、Tom Watson(トム・ワトスン)の「アドレスで腕・手を前に突き出すな」という説を紹介しました。それは、「どのクラブを振るにせよ、腕は肩からだらんと下がっていなくてはならない。そのだらんと下がった両手を合わせたところがグリップの位置である」というものでした。

で、ツァー・プロなどのドライヴァーによるスウィング分解写真を点検してみたのですが、なかなか興味深いものでした。

写真(1)はRory McIlrloy(ロリィ・マカロイ、北アイルランド、22歳、身長1.75 m)で、Tom Watsonの説のように左腕は肩からだらんと下がっています。ヨーロピアン・ツァーのドライヴィング・ディスタンス・スタッツ(統計値)では、彼は平均301.6ヤードで15位に入っています。ドライヴァーの正確度ランキングは20位。

写真(2)はLPGAの新星Lexi Thompson(レキシィ・トンプスン、アメリカ、16歳.、身長1.83 m)。2011年9月にNavistar LPGA Classicで初優勝し、LPGAの最年少優勝者の記録を作りました。彼女は2010年のあるトーナメントで327ヤードのティー・ショットを放ったことがあるそうです。彼女の左腕も肩からだらんと下がっています。18歳になるまで彼女はLPGAツァーの正式メンバーではないので、スタッツはありません。

[posture]

写真(3)はヨーロピアン・ツァーにおける飛距離No. 1のパワー・ヒッターAlvaro Quiros(アルヴァロ・クィロス、スペイン、28歳、1.91 m)です。ドライヴィング・ディスタンスは平均312.8ヤード。彼はパー5の七割を2オンさせるそうです。飛ばし屋ですが、腕は地面に垂直に垂れています。

写真(4)は、2011年の賞金王となったLuke Donald(ルーク・ドナルド、イギリス、34歳、1.75 m)で、PGAツァーのドライヴィング・ディスタンス番付では147位タイ(平均284.1ヤード)。彼はやや腕を前に出しています。一時飛距離増を図ってスランプに陥ったそうですが、その名残りかも知れません。彼のPGAツァーにおけるドライヴァーの正確度ランキングは57位。

写真(5)は堅実派の代表Steve Stricker(スティーヴ・ストリッカー、アメリカ、44歳、1.83 m)。堅実派の割には腕を前に出しています。彼のPGAツァーのドライヴィング・ディスタンスのランクは113位(平均288.8ヤード)で、飛ばない部類に入ります。この写真の解説者によれば、右腕より高い左腕はドローを打つ構えだそうです。彼のPGAツァーにおけるドライヴァーの正確度ランキングは85位。

写真(6)は2010年ReMax世界ロング・ドライヴ選手権に二位となったDomenic Mazza(ドミニック・マッツァ、アメリカ、16歳、1.83 m、アマチュア)です。彼は50インチ(1.27 m)の長尺ドライヴァーを使っていて、スタンスも肩幅より広く、腕もかなり前に出しています。最高436ヤード打つそうです。

最後のDomenic Mazzaは、云ってみれば“一発屋”に近い(スコアではなく飛距離を楽しんでいる)存在なので無視すべきでしょう。われわれは1〜5までのモデルを参考にすべきだと思います。正直云って、私はSteve Strickerの腕の角度に驚きました。予想外に前に突き出していたからです。しかし、こうやっていても飛ばない部類に入るのですから、欲張らないで垂直に下げて、いい方向性だけを追求する方が良さそうに思えます。

いま私はU.S. Open 2008のRocco Mediate(ロッコ・ミディエイト)とTiger Woods(タイガー・ウッズ)の闘いの記録'Are You Kidding Me?'(by Rocco Mediate and John Feinstein, 2009)を読んでいるのですが、Rocco Mediate(当時45歳、1.85 m)のドライヴィング・ディスタンスは278.6ヤードでツァー・ランク170位だったそうです。現在のSteve Strickerよりずっと飛ばない方なのに、U.S. Open優勝に限りなく近づくことが出来たわけですから、やはり重要なのは正確さだと思います。

上の写真の中で、メイジャー優勝者はRory McIlrloyとLexi Thompsonの二人だけです。

(December 08, 2011、改訂March 03, 2017)


フリンジからのパット

'Putt from the fringe'
by Eden Foster ('Golf Magazine,' May 2009)

「ボールはグリーンに乗ったのだが、あまりにもフリンジに近く、バックストロークで長いラフが邪魔になるというケース。

こういう場合には、通常の水平のパッティング・ストロークではなく、やや垂直に近い軌道に変更する必要がある。

・右足(あるいは右足後方)の前でパターを構える。
・体重を左足に掛け、シャフトをターゲット方向に傾(かし)げる。
【以上のセットアップにより垂直のストロークの準備が整う】
・テイクアウェイではパターを上げる意識を持ち、フォロースルーはほとんどしない。
・ボールは極度のトップスピンでぽんと舞い上がり、カップに向かって転がる。
・かなりランが多くなることに注意」

(December 08, 2011)


Luke Donald(ルーク・ドナルド)のチッピング

Luke Donald(ルーク・ドナルド)は2011年のPGAツァーとヨーロピアン・ツァー両方の賞金王の座に着きました(これは史上初)。彼は2007年頃からしばらく「飛距離を増さなきゃ」という強迫観念に駆られ、グリーンをミスするようになってしまい、そのため、チッピングとピッチングに磨きをかけて寄せワンでしのがざるを得なくなりました。やっと飛距離への執着から醒めてロング・ゲームが安定すると、既に熟達していたショート・ゲームとのコンビは最強になったのだそうです。常にピンにぴたぴた寄せる彼の打ち方を教わりましょう。

'Do's + Don'ts of the short game'
by Luke Donald with Morrice McDaniel ('Golf Digest,' October 2011)

「チッピングに限らず、私の第一の目標は常にピュアなコンタクトを得ることだ。グリーン周りでだらけた打ち方をすることなど許されない。

チッピングでは、私は下降気味に打つため次のようにする。
1) ボール位置はスタンスのやや後方。
2) 体重はどちらかと云えば左足。
3) クラブシャフトをターゲット方向に傾ける。
そして、バックスウィングで手首を固くし、ボールに向かって加速させる(フィニッシュへと加速させるのではない)。

私は地面から払うような打ち方ではなく、下降気味にカッチリとボールを打ち、クラブヘッドを低く保つフィニッシュをしたい。

多くのゴルファーの頭には『加速しなければいけない』と刷り込まれているので、彼らはボールを打った後も加速し続けようとする。それは多くの場合、短いバックスウィングに長過ぎるフォロースルーへと繋がる。こういうのは加速のし過ぎであり、様々な問題を孕む。例えばダフりやトップ、そして暴走するクラブによるフィーリングの喪失等々。代わりに長いバックスウィングをし、クラブの重みに加速させ、グリップエンドがクラブヘッドに先行するインパクトにすべきである」

(December 11, 2011)


テンポでフェード

'Breaking 90 with Johnny Miller'
by Johnny Miller (Callaway Editions, 2000)

Johnny Miller(ジョニィ・ミラー)執筆による"Shot Encyclopedia"(ショット百科事典)にフェードの打ち方が四つ出ています。それぞれ、状況・球筋などが異なります。

「・適する状況

 右ドッグレッグなどで、左の障害物を避け、急角度の左から右へのフェードを打ちたい場合。

・スタンスとボール位置

 ボール位置は通常のままで、20ヤードのスライスを打つためかなり左を狙う。ドライヴァーを打つ場合は、通常より低くティー・アップすること。地面から1インチ(約2.5センチ)以上高いのは不可。

・クラブ選択

 ロフトの少ないクラブを選ぶ。ドライヴァーかロングx・アイアンが望ましい。このショットに相応しいサイド・スピンがかかり易いからだ。

・打ち方

 ゆっくりクラブを引き、ハードに打ち下ろす。この手と腕主体の動きによって、クラブフェースがスクウェアになる前にインパクトを迎えることになる。ボールは低く左に向かい、ターゲット・ラインの遥か右に飛ぶ。このショットでは着地してから、ボールはさらに右に転がる」

(December 11, 2011)


Butch Harmon(ブッチ・ハーモン)の膝でパットする

インストラクターの世界No.1として長く君臨する"Butch" Harmon(ブッチ・ハーモン)の、とっておきのパッティングtip。

'Last resort'
by "Butch" Harmon with Peter Morrice ('Golf Digest,' December 2011)

「全てのYips治療に失敗したら、私のニー(膝)・パッティングを試すべきだ。

Yipsを患うと、あなたの左腕がインパクト直前で停止する。そして右手がクラブをぐいっとプルすることになる。

ニー・パッティングは手のプレッシャーを取り除くものだ。両肘を身体の両脇にくっつけ、パターをボールの背後に据え、両膝を左右に揺らす。ストローク開始で右膝を後方に引き、フォワードストロークで左膝をターゲット方向に引く。この際、『じっとして動くな』という古い助言は忘れること。あなたの腰は動き、肩も動く。頭でさえ少し動く。意識は膝だけに集中する。両手はパターを保持しているのみである。

このニー・パッティングを試されたい。しかし、秘密厳守のこと」

ずっと以前、私と一緒に廻っていた男が「そう身体のあちこちを動かしたら大変だろう」と云いました。「どういうこと?」と尋ねると、彼は私が膝を動かしながらパットしていると指摘しました。それ以来、私は下半身を動かさないように努力して来たので、上のニー・パッティングを初めて読んだ時、まるで穢らわしいものを見たように感じました。

しかし、よく読むと"Butch" Harmonの方法は両手を動かさないのです。以前の私は両手・肩・両膝全部を動かしていました。現在の私は両手を全く動かさず、肩の動きだけでパットするようにしていますので、このニー・パッティングを応用することは可能です。これは「胸でパットする」同様、円弧型パッティングの一派で、膝の動かし加減によって、パターフェースのオープン、クローズと距離が左右されます。私は円弧型パッティングが苦手なので、このtipは試しておりません。

(December 14, 2011)


Lee Trevino(リー・トレヴィノ)流フェード [Trevino]

Johnny Miller(ジョニィ・ミラー)執筆による"Shot Encyclopedia"(ショット百科事典)にフェードの打ち方が四つ出ています。これはその三つ目。それぞれ、状況・球筋などが異なります。

'Breaking 90 with Johnny Miller'
by Johnny Miller (Callaway Editions, 2000)

「・適する状況

 風の強い日に、コントロールされた低いフェードでランを多くしたい場合。

・スタンスとボール位置

 通常より2インチ(約5センチ)ターゲット方向をボール位置とする。左の爪先を左に廻す。

・クラブ選択

 アプローチ・ショットの場合、転がりが増えるので普通に選ぶクラブより1クラブ短いものを選ぶ。グリーンに着地するのではなく、グリーンに駆け上がるショットとなる。

・考え方

 腰を攻撃的に回転させ、身体が両手に先行するスウィングをする。左爪先を廻しておくことが、最大のパワーで腰を急速に廻すことを助けてくれる。このショットは低い軌道で飛び、スピンが少ない。風に影響されず、正確なドライヴァーでランを増やすのに役立つ」

(December 14, 2011)


Luke Donald(ルーク・ドナルド)のピッチング

2011年のPGAツァーとヨーロピアン・ツァー双方の賞金王Luke Donald(ルーク・ドナルド)のピッチングtip。

'Do's + Don'ts of the short game'
by Luke Donald with Morrice McDaniel ('Golf Digest,' October 2011)

「・普通のピッチ・ショット

私にとって重要なことはクラブヘッドのスウィングが私の身体を動かすということだ。身体でクラブを動かすのではなく。

1) ボール位置はスタンスのやや前方。
2) 両手は身体の真ん前。
3) クラブフェースを少しオープンに。【これは私のピッチショット全部に共通】
4) テイクアウェイは(身体の周りを廻すのではなく)クラブのトゥが天を指すように上方にコックする。
5) テイクアウェイの逆にダウンスウィングする。

スウィング・ダウンし、振り抜く感覚を持ちたいと思っている。クラブが引っ張る勢いが私の身体をフィニッシュへと向かわせる。

・ロフトを活かすピッチ・ショット

私が通常よりもっとロフトを必要とする場合、多少セットアップを変更する。

1) ボール位置を左足の前にする。
2) クラブフェースをオープンにする。
3) シャフトを垂直か、ややターゲット・ライン後方に傾ける。
4) ウィーク・グリップ(左手をターゲット方向に廻す)。

以上の手順によってインパクトでエクストラのロフトが得られる。長くゆったりした動きのバックスウィングでコックを多くし、フォロースルーでアンコックする。

ソリッドなコンタクトが最重要課題だ。多くのゴルファーが身体を後方に反らせて掬い打ちでロフトを増そうとする。これはスウィング弧の最低点をボールの後ろに移してしまうため、貧弱なコンタクトにしかならない。いい打球にするには、ダウンスウィングで体重をターゲット方向に移さねばならない【編註:スウェイではありません】。上に述べた手順を遂行したら、ロフトが得られることを信じて、ヒットダウンすること。

・スピンをかけるピッチ・ショット

スピンをかけるには歯切れよく下降するヒッティングが必要だ。上に述べたような『長くゆったりした動き』は不可。私はさらにクラブフェースをオープンにし、バウンスを露出させる【編註:リーディンエッジを浮かすという意味】。これによって、クラブヘッドは地表を滑る。私の感覚は《クラブがボールを打った後、地面を打つ》というものだ。事実、私は二種類のインパクトの音を待ち受ける。フィニッシュはコンパクトに。

スピンをかける場合の過ちは、ボールをスタンス後方に移し、パンチダウンしようとすることだ。それは以下の理由でうまくいかない。
a) そのボール位置によって、クラブのロフトが減ってしまう。
b) リーディングエッジが急角度で降下するため、クラブは地表を滑るのではなくザックリ掘ってしまう。
こういう急角度のアクションには精密なヒッティングが必要だが、多くの場合チョロに堕してしまう。滑走させる方がずっと安全である。《クラブがボールを打った後、地面を打つ》を試されたい」

(December 17, 2011)


上りと下りのパッティング神話

インストラクターBill Moretti(ビル・モレッティ)による迷信の打破。

'Turn Three Shots Into Two'
by Bill Moretti with Mike Stachura (Andrews McMeel Publishing, 2002, $19.95)

「『上りのパットは強く、下りでは弱く打て』というのは神話でしかない。上り坂で強くパットするとプッシュに繋がる。何故かと云うと、【強く打つ意識によって】パター・グリップがフェースよりも先行してしまうため、インパクトでフェースがオープンになるからだ。

【編註】これは、フル・スウィングであまりにも急激に下半身を左にターンさせると、取り残されたクラブヘッドがインパクトに追いつかず、オープン・フェースのままプッシュを打ってしまうのと同じ原理です。

下りのパットを弱く打つと、のろのろした動きのパター・グリップがクラブフェースに追いつかず、フェースがクローズとなってプルしてしまう。

『強く/弱く』と打つ強さとして考えるのではなく、距離として考えるべきだ。上りならカップを過ぎたところをターゲットとし、下りではカップの手前を終点として選ぶ」

(December 17, 2011)


ポスチャーで打ち分けるフェード/ドロー

フェードの打ち方のいくつかを紹介していますが、いずれもクラブフェースとアライメント、スウィング軌道などの関連だけが語られていて、ポスチャーについては触れられていません。この記事はそれを補ってくれるものです。

'Shape shots with your setup'
by editors of 'Golf Magazine' ('Golf Magazine,' January 2012)

「ドッグレッグのティーからフェードやドローを打ち分けるのは難しくない。アドレスでのポスチャーを変えるだけでよい。背骨の角度がスウィング軌道を変え、フェードやドローをもたらしてくれる。

・フェード

通常のアドレスで背骨は約20°前傾する。フェードを打つ場合は前傾角度を30°に増す。これはフェードに不可欠な急角度の攻撃角度と、アウトサイド・インのクラブヘッドの軌道を生む。

・ドロー

ドローを打つ場合は前傾角度を10°に減らす。背骨は垂直気味になる。この、よりアップライトなポスチャーは、ドローに不可欠なフラットでインサイド・アウトのクラブヘッドの軌道をもたらす。

これはBen Hogan(ベン・ホーガン)が1953年に歴史的なカムバックをした時のアドレスであり、彼はこの年三つのメイジャーに優勝した」

(December 20, 2011)


フィニッシュで打ち分けるフェード/ドロー

「フェードのフィニッシュは高く、ドローのフィニッシュは低く」というのがこれまでの定説でしたが、以下の記事はそれと反対であるだけでなく、かなりディテールに拘っています。

'Draw it and fade it at will'
by Keith Lyford ('Golf Magazine,' January 2012)

「ボールが右へ行くか左に行くかは、インパクトにおけるクラブフェースの向きで決まる。クラブフェースの向きを決定する唯一の方法はリリースを変えることである。

・フェード

クラブシャフトが地面と平行になり、後頭部を水平に横切るようなフィニッシュを練習せよ。

一旦、このリリースに慣れたら、セットアップをややオープンにして、上のフィニッシュを迎えるようにボールを打つ。ボールが必ずフェードするのを目にすることだろう。

・ドロー

クラブシャフトが背中を斜めに横切り、クラブシャフトが地面を指すようなフィニッシュを練習せよ。『手は高く、クラブヘッドは低く』と覚える。

このリリースに慣れたら、ややクローズ目のスタンスでボールを打ち、上の形のフィニッシュを迎えるようにする。簡単にドローが打てるようになる」

(December 20, 2011)


凄〜く技巧的な寄せ

'Wedge yourself close'
by editors of 'Golf Magazine' ('Golf Magazine,' January 2012)

「エッジからピンまであまり距離がないグリーンに寄せなくてはならない。フリンジにボールをそっと落し、カップにとろとろと転がす必要がある。これは凄く技巧的なショットであり、猛練習が必要であるが、困難に見える寄せワンを可能にしてくれるショットでもある。

その1) 短いカット・ショット

これは卵を投げるようにボールをフリンジに着地させ、推進力のほとんどを殺(そ)いでしまおうというショット。60°ウェッジを使う。

・身体と足をややオープンにし、ボール位置はスタンス前方。
・多少手首をコックするバックスウィング。
・アウトサイド・インのダウンスウィングでカットする。
・地面と平行なフラットな軌道のスウィングで(急角度は不可)、払うようにボールを打つ。
・振り抜く際は左肘を身体から離すことによって、フェースをオープンにしロフトを保つ。

その2) 長くのったりしたロブ

タイトなライから寄せて、ボールをすぐ止めたい場合は、Phil Mickelson(フィル・ミケルスン)が得意とするフロップ・ショットの出番だ。これも60°ウェッジを用いるが、バウンスの少ない型が望ましい。

・ボール位置はスタンス中央。体重は右足。
・長くのったりしたスウィングをする。
・クラブがボールの下をスライドするように打つ。
・インパクト後、腕を伸ばさず、オープンになる腰の動きにつれ両肘を身体に引きつける。この動きによってロフトが増すため、天を向いたクラブフェースによってボールはソフトに着地する」

 

【参照】「ウェッジのバウンス角の選び方」(tips_135.html)

(December 23, 2011)


背の高さほど深いバンカーから一打で出す

1,000万ドルのFedex Cup賞金がかかったTour Championship(ツァー選手権)2011は、プレイオフ二ホール目でボールを水に浸けたBill Haas(ビル・ハース)の、見事なリカヴァリー・ショットで永久に記憶されることでしょう。水の要素を別にすれば、グリーンの反対側からはBill Haasの頭が見えないほどの高低差でしたから、背の高さほど深いバンカーと同じと考えられます。

'How to hit a high blast'
by Scott Sacket ('Golf Magazine,' July 2011)

「身の丈ほどもあるバンカーからの脱出を成功させるには、下記のいくつかの要素を忘れてはならない。

自動的にサンドウェッジを選ぶのではなく、あなたが持っている中で最もロフトの多いクラブを選ぶ。理想的なのはロブ・ウェッジである。【編註:上のBill Haasのショットで使われたのも60°ウェッジ(実際には59°に加工されたもの)で、バウンス角は7°だそうです】

1) 肩幅よりもっと広いスタンスにして、両手を低く構える。

2) クラブフェースは気持オープンにし、スタンスはターゲットにスクウェア。

3) グリップがターゲットと逆方向(=右)を指すように構える。【編註:ロフトが増す】

4) コンパクトなバックスウィングで、テイクアウェイの早期にクラブヘッドが天を指すようにする。これは急激な攻撃角度を得るために重要。【上のショットでBill Haasも早めにコックしていました。距離が長かったせいか、トップは天を指す度合いを超え、シャフトが頭の上になり、水平から45°ほどの角度でターゲット方向を指していました】

5) スタンス・ライン(両爪先を結んだ線)に沿ってスウィングする(線を越えてはいけない)。

6) クラブが砂を通過したら、直ちに手を胸の方に引きつける。これはインパクト前後双方で急角度なスウィングを行なうことを確実にする」【編註:上のBill Haasのショットでも、彼はインパクト後に手を身体に引きつけていました】

 

(December 26, 2011)


下りのパット、二つの工夫

早いグリーンで、しかも急な下りの場合、パターのトゥでストロークするというアイデアがありますが、それを遥かに凌ぐグッド・アイデア。パット専門インストラクターMalius Filmalter(マリウス・フィルマルター)のtip。

'Down hillers made easy'
by Malius Filmalter ('Golf Magazine,' July 2011)

「トゥでストロークしても強過ぎる結果になることが多い。以下の二つの工夫は極めて単純なので、ちょっと練習すれば直ちに利用することが出来る。

1) パターを短く持つ

これはパターヘッドのコントロールを良くし、効果的にストロークの速度をスローダウンさせる。パターの金属シャフト部分を握ることを恐れてはいけない。

2) ヒールで打つ

パターのトゥで打つのは、パターへッドをぐらつかせてしまいがちだ。(シャフトとの接点に近い)ヒールで打つ方が安定したストロークが出来、インパクトの強さを殺すのにも効果的である」

(December 26, 2011)


スティンガーの秘訣

スティンガーに関する記事はこれまでにもいくつかありますが、手首の使い方に焦点が当てられている今回の記事が最も役に立ちそうです。

'Put the sting on your tee shots'
by editors of 'Golf Magazine' ('Golf Magazine,' January 2011)

「2000〜2001年にかけて、Tiger Woods(タイガー・ウッズ)はスティンガーを多用していた。スティンガーは、当時の彼のコーチ"Butch" Harmon(ブッチ・ハーモン)が父親Claude Harmon, Sr.(クロード・ハーモン一世)から教わったテクニックである。低く、コントロールされたショットは風のある日や乾いたフェアウェイで効果的だ。Tiger Woodsはこのショットで280ヤードも稼ぎ、多大な恩恵を受けた。

あなたにそんな距離は期待出来ないとしても、ロング・アイアンやフェアウェイ・ウッドによるスティンガーで、もっとフェアウェイをキープすることは期待出来る。要領、以下の通り。

【打ち方】

1) ボール位置を、通常より5〜6センチほどスタンス後方に下げる。【ロング・アイアンやフェアウェイ・ウッドの場合である】
2) 数センチ短く持つ。【コントロールを良くするため】
3) "y"の字のアドレスをする。ややターゲット方向に傾いだ左手・腕とクラブ・シャフトを一直線にする。
4) インパクトで両手・腕とシャフトが上と同じ形になり、しかも左手首の甲側が凸型になる(ターゲット方向に膨らませる)ように。
5) フィニッシュは、通常のスウィングより短く、左肘が地面を指し、両手首を固いままにする。捻転を速く振り解けばボールはより遠くへ飛ぶ。

【練習法】

凸型に膨らませた手首が低いレーザーのようなボールの軌道を生む。この手首の形を身につけるため、5番アイアンでボールと接触したらすぐクラブを止めるようなパンチ風スライスを打ってみる。これを達成する唯一の方法は、手首をあたかもセメントで固められているかのように固く保つことだ。左手首の甲側はターゲット方向にカーヴしていなければならない。

上のような左手首の形に慣れたら、5番アイアンでパンチ・ショットを打ってみる。30ヤードから初めて、次第にフォロースルーを長くして距離を伸ばす」

(December 30, 2011)


前頁 ← | → 次頁


 Copyright ©  1998-2022  高野英二  (Studio BE)
[Mail]
 Address: Eiji Takano, 421 Willow Ridge Drive #26, Meridian, MS 39301, U.S.A.