私のサイトには既にMike McGetrick(マイク・マゲトリック)による傾斜地のtipがあります。No.1インストラクターとされるButch Harmon(ブッチ・ハーモン)の方法も、大綱においては同じなのですが、彼の記事には「斜面のショットがなぜ曲がるか、それにどう対処すべきか?」が明快に書かれています。重複を恐れず採録する由縁です。
'Four shots for beating the slopes'
by Butch Harmon with Peter Morrice ('Golf Digest,' April 2011)
「○傾斜地でのショットの基本
傾斜地でソリッドにボールを打つには、《傾斜に逆らうな》ということだ。次の三点に留意すること。
1) 身体を安定させるため、通常より広めのスタンスを取る。
2) 傾斜の上方に体重を乗せる。スウィングの間に重力が斜面の下方に身体を引っ張るからだ。
3) 目一杯打たないこと。バランスを保つため、70〜80%の力で打つ。
○左足上がり
・傾斜によってクラブのロフトが増え、結果的にショートするので、長めのクラブを選択する。
・ボール位置は通常よりスタンスのやや前方(ターゲット寄り)。【編註:「ボールは斜面の上方」と覚える】
・両肩は傾斜と平行にする。もし、両肩が水平だとインパクトでクラブを地面にめり込ませてしまう。《傾斜に沿ってセットアップせよ》
・《左足上がりでは、身体とクラブフェースでターゲットの右を狙え》 左足上がりの場合、インパクトでクラブが上方にリリースされるためクラブフェースがクローズになり、ボールはターゲットの左に向かうからだ。
○左足下がり
・短かめのクラブを選ぶ。傾斜によってクラブのロフトが減り、距離が増すからだ。【編註:これは一般論。ライが左足下がりであっても、グリーンへ打ち上げになるような状況では長めのクラブを選ぶ必要があります】
・ボール位置は通常よりスタンスのやや後方。【編註:「ボールは斜面の上方」と覚える】
・両肩を傾斜と平行にする。実際には困難だろうが、気持の問題である。こうしないと、盛大にダフることになる。
・《左足下がりでは、身体とクラブフェースでターゲットのやや左を狙え》 左足下がりの場合、斜面に沿って腕が伸ばされるため、クラブフェースの回転が不充分になりオープンのままインパクトを迎えてしまう。しかし、そういう理屈を心配するより、ターゲットのやや左を狙えばよい。
○爪先下がり
・このライではしゃがみ込んだ姿勢で、そのままインパクトを迎えなくてはならない。往々にして伸び上がったり、爪先に体重をかけてしまいがちになり、ボールとの適切なコンタクトに失敗する。《しゃがみ込んで、踵に体重を乗せよ》
・《爪先下がりでは手打ちでよい》 何故なら、しゃがみ込んだ姿勢で身体を充分回転させるのは難しいからだ。
・《膝の柔軟性を失うな》 これがアドレスの体勢を保つ鍵である。
・《ターゲットの左を狙え》 窮屈な体勢によって、クラブフェースの回転が不十分になる。そのためフェースがオープンのインパクトになりがちだからだ。
○爪先上がり
・《クラブを5〜7センチほど短く持つ》 爪先上がりのライでは、自然に伸び上がったポスチャーになってしまう。身体とボールの間隔を適切に調整する必要がある。
・《爪先体重》 スウィングの間に、重力によって身体が踵の方に引っ張られるのを予防する。
・《ターゲットの右を狙え》 このライからのスウィングは、野球のように身体の周りを回るフラットなものになる。これは手と腕による回転なので、ダウンスウィングでクラブフェースが急速にクローズになり、ボールは左へ向かうことになるからだ」
(April 03, 2011)
'How to get the ball rolling quicker'
by Don Hunter ('Golf Digest,' February 2011)
「最近のパターはフェースがボールと接触する際、バックスピンの量を抑えるようにデザインされている。だが、あなたが真剣にボールのスタート時の滑走をなくそうと思うなら、ストローク法を改善する必要がある。
練習グリーンに、ティーの頭だけが出るように深く刺す。そのすぐ前にボールを置き、ティーに触れないようにパットする。ほどなくして、あなたはボールの赤道から上を打って、ピュアな転がりが得られる方法を身につける筈だ」
(April 03, 2011)
Dr. T.J. Tomasi(T.J.トマシ博士)はPGA of Amaricaのインストラクターであり、Keiser(カイザー)大学の教授兼ディレクターでもあります。10冊以上のゴルフ・インストラクション本を執筆し、新聞連載のコラムも持つ人気インストラクター。
'Crank up your power'
by T.J. Tomasi ('Golf Magazine,' May 2010)
「ドライヴァーの飛距離を増す方法は色々あるが、それらの多くには体力増強と練習が不可欠である。ティーからの飛距離を増す最も簡単な方法の一つは、ローンチ・アングル、特に攻撃角度を最適化することだ。
ティーから最大限遠くに飛ばすには、若干上向きの角度のクラブヘッドでボールと接触しなければならない。それには、以下の手順を実行されたい。
1) アドレスの体勢をとる。
2) ターゲット側の足はそのまま固定し、もう一方の足を約5センチほど広げる。これは結果的にボールをターゲット方向に移動させたことになる。
3) 【重要ポイント】通常よりボールとの距離を狭めて(ボールに近く立って)スウィングする。ボールをスタンスの前方に移したことによって、ボールを上昇軌道で打つことは可能になるのだが、ボールを身体に近づけないとクラブのトゥで打つことになってしまう。トゥで打ったのではクラブヘッド・スピードも飛距離も減少してしまう」
(April 07, 2011)
Bobby Clampett(ボビィ・クランペット)はアマチュア時代に数々の優勝を遂げ、当時の“神童”のようにみなされた人。PGAツァーでも二勝し、1982 年の全英オープンでは二日目を終えて七打差でトップに立ち、「優勝か?」と思われたほどの好成績を残しました。その後はTVのゴルフ中継解説者として活躍しています。
'The Impact Zone'
by Bobby Clampett and Andy Brumer (St. Martin's Press, 2007, $24.95)
著者Bobby Clampettは、練習場における素振りでも芝生を削ります。友人が驚くと、「本番のショットでもディヴォットを取るんだから、練習で取るのも当然だろ?」と云うそうです。彼の論理は「練習でディヴォットを取ってはいけないと云うのは、ボウリングで練習だからピンを弾いてはいけないと云うのと同じだ」というものです。
彼はスウィング弧の最低点はボール位置ではなく、ボールのターゲット側10センチのところでなくてはならないと説きます。その地点を彼は"Aiming Point"(照準ポイント)と呼びます。ディヴォット跡は、"Aiming Point"の場所で最も深く抉れなければいけません。
練習法その1:芝生を削るのが一番。何故なら、自分のスウィング弧の最低点(ディヴォット跡の最も深いところ)がどこか、一目で分かるから。
練習法その2:マットからしか打てない練習場がある。練習マットでは10センチ向こうがスウィング弧の最低点であったかどうか、ディヴォット跡によるフィードバックは得られない。マットを打った時の音も不快である。だから、多少遠くても芝の上で打てる練習場を探したいものだ。しかし、あなたがスウィング弧の最低点を感じ取れるのなら、マットによる練習でもOK。
練習法その3:深いラフ(あるいは雑草)に向ってアイアンを振る。草の抵抗を受けながら両手と身体を回転させる。これがあなたの求めるインパクトの瞬間である。【編註:古タイヤやImpact Bagを打つのと同じ効果】このインパクトの感覚が消えないうちに練習場でボールを打つと、最も効果的。
練習法その4:アップヒルになっているバンカー内に線を引き、それをボールに見立て、充分コックし身体を捻転させ、線の10センチ前方にスウィング弧の最低点が来るようにスウィングする。アップヒルのせいで、身体の捻転が難しい。これは素晴らしいドリルである。
練習法その5:練習場の中でアップヒルの部分を探す(右足が左より低い状態になるなら、どこでもよい)。ボールをティーアップし、重力に逆らいながらドライヴァーで打つ。体重を過激に左へ移す必要に迫られる。これは"Aiming Point"(照準ポイント)の練習に最適である」
【参照】
・「The Golfing Machine」(tips_87.html)
・「インパクトの研究」(tips_112.html)
・「インパクトの研究(パット篇)」(tips_112.html)
・「インパクトの研究(チッピング篇)」(tips_114.html)
・「インパクトの研究(ピッチング篇)」(このページ)
・「インパクトの研究(フルスウィング篇)」(tips_114.html)
・「インパクトの研究(ドライヴァー篇)」(tips_114.html)
・「インパクトの研究(レイトヒット篇)」(このページ)
・「なぜディヴォットが取れないのか?」(このページ)
・「インパクトの研究(照準篇)」(このページ)
・「インパクトの研究(道具篇)」(tips_113.html)
(April 11, 2011、増補November 22-23, 2015)
この『日記』で「赤ひげコーチ」として紹介したJackie Burke, Jr.(ジャッキー・バーク二世)は、Masters(マスターズ)とPGA選手権の二つのメイジャー優勝と17回のPGAツァー優勝、五度のRyder Cup参加など、華麗な経歴を誇っています。現在は自分がオーナーであるテキサス州ヒューストンのChampions G.C.を根城に、PGAツァー・プロからアマチュア、青少年までを相手に、幅広くゴルフの指導にあたっているそうです。
'It's Only a Game' 「・トップ・クラスのゴルファーたちを教えるインストラクターの仕事は大変だ。連中は段階を踏んで教わろうとするのではなく、すぐ上達したいと熱望する。忍耐などということを考えない。一つ覚えると、すぐさま次のことに移ろうとする。彼らは柔道や空手のように、どんどん帯の色を変えたがる。ゴルフにおいて黒帯を得るには、しばし赤帯に戻らなくてはならないことがままあるのに。 ・あるラウンドで、8番アイアンを四回もピン傍に寄せたとしても、あなたが8番アイアンをマスターしたということにはならない。次のラウンドでは、コース・コンディション、天候、あなたの体重など、全てが異なっているだろうからだ。 ・両手でバックスウィングを開始したら、身体が手に追いつくことは絶対にない。バックスウィングでは、両手は身体の回転にやや遅れながらついて行くべきものだ。ダウンスウィングでも、両手は身体の動きを追いかける。手と腕は速く動くものだが、身体を追い抜いてはいけない。身体の内側(胴体)が外側(手・腕)をリードするのだ。 ・バックスウィングのトップに到達したら、重力に仕事を引き継げ。ダウンスウィングを開始するための急激なパワーなど必要ない。そんなものはあなたのタイミングを破壊するだけだ。速度とパワーは徐々に蓄積されるべきものだ。 ・私があるゴルフ・クリニックに出た時のことだ。観衆の前で、初級・中級・上級レヴェルの三人のアマチュアがボールを打った。その時の上級者は十代の青年で、素晴らしいショットを打った。クリニック終了後、私はその青年の父親に、どんな風にあれほどソリッドに打てるように教えたのか尋ねた。 その父親の方法は次のようなものだった。息子の打席の前1メートルのところに二本の杭を打ち、ロープを張った。7番アイアンを息子に渡し、『ロープの下を潜るように打て』と命じた。 |
どんなゲームであれ、低いボールは高いボールに優る。ゴルフでは特にそうだ。低いボールは風の影響を受けることが少なく、切れ味のよいショットによってターゲットに真っ直ぐ向かうボールが打てる。コントロールが良くなる。
低いボールを打つ名人は、ボールをスタンス後方に置いたりしない。アイアンのボール位置は常に不変である。Ben Hogan(ベン・ホーガン)でさえ、『おれは、ボール位置を変えて打てるほど器用じゃない』と云っていた。彼は全てのアイアンにおいて、ボールを左足踵の数センチ右の前方に置き、アドレスとインパクトでどれほど手をボールの前に出すかでボールの軌道を調節していた。フォロースルーで彼の手が低ければ、彼が低いボールを打とうとしたことが解ったものだ。
・あなたにもパットがぼんぼん入る日があると思う。しかし、翌日はからっきし駄目である。何故か?その理由は、あなたが奇跡の再現を求めていて、パットに真剣になっていないからだ。いつも同じようにパットすべきだ。リラックスせよ。絶好調だった昨日は数億年昔のことだと考えよ。そうすれば、また奇跡が起らないとも限らない。
・カップを頭から追い出せ。ストロークすることに集中し、ボールをラインに沿って転がすことだけ考えよ」
(April 15, 2011)
故・中部銀次郎氏は「アマチュアが3パットを減らすには、1メートルのパットを全て完璧に入れる練習をすること」と云いました。ショートゲームの権威Dave Pelz(デイヴ・ペルツ)は逆で、ラグパット【長いパットを(ギミー圏内に)確実に寄せること】こそ3パット対策であると主張します。彼は「PGAツァー・プロたちはそういう練習を欠かさないが、アマチュアがラグパットの練習をしている姿を見たことはほとんどない」と指摘します。
'Change your practice, drop 3 strokes' 「18ホールのラウンドで3パットする率の平均は、PGAツァーで0.5回、ハンデ0〜5の人で1回、ハンデ9〜12で1.8回、ハンデ18〜22で2.9回、ハンデ28〜32で3.5回だ。【PGA ShotLinkとPelz Golf Instituteの調査によるデータ】 多くの3パットはロング・パットで出現する。これを寄せることに上達すれば、ハンデを多くて三打は下げることが可能である。 【練習法】 この1セッション五分もかからない練習は、パッティングの機械的動作ではなく、正しい距離を転がす感覚に焦点を当てるものだ。 ほどなくして、あなたは15メートルのパットをまるでヴェテランPGAツァー・プロのようにスムーズかつリズミカルに転がすようになるだろう。それが身につけば、ラグパットもスコアも改善されるのは確実である」 |
(April 19, 2011)
この記事は、Tom Watson(トム・ワトスン)の近著'The Timeless Swing'から抜粋されて'Golf Digest'に転載されたものの一部です。'The Timeless Swing'にはヴィデオも用意されているようですが、スマートフォン専用だそうですので御注意。
'My key to consistency'
by Tom Watson with Nick Seitz ('Golf Digest.' May 2011)
「ゴルファー誰しもが、全てのショットにおいて一貫したスウィング弧の最低点を持つよう努力すべきだ。それが反復可能なスウィングのための最も重要な要素である。それはティーアップせずに地面から打つアイアン・ショットの全てに適用される。
ディヴォット跡がボールの背後(ターゲットの反対側)から始まるダフり、ボールの天辺近くを叩くトップを打つ場合、そのゴルファーは一貫したスウィング弧の最低点を見出していない。それがプロとアマの大きな違いである。
【編註:よく間違われるが、抉られて飛んだターフの小片が「ディヴォット」であり、削られて凹んだ地面は「ディヴォット跡」と呼ぶのが正しい。USGAのルール・ブックも後者を"divot hole"と表現している】
私の練習法はこうだ。私のスタンスの中央に線を描く。その線上にボールを置き、ディヴォット跡がその線から始まるように努力する。ディヴォット跡の最深部(=スウィング弧の最低点)はボールのターゲット方向であり、ボールの背後では絶対にない。
コースでも素振りでスウィング弧の最低点を見極めるべきだ。大抵のゴルファーは本番同様の練習スウィングをしない。多くのアマチュアは貧弱な体重移動をして、ディヴォットを取ってからボールを打つ(=ダフり)。もしダウンスウィングで正しく体重移動をしていれば、インパクトで右膝がボールに向かう筈だ。そうなっていなければ、スウィング弧の最低点はボールの背後に留まってしまう」
(April 26, 2011)
インパクト・ゾーンの研究家Bobby Clampett(ボビィ・クランペット)の処方箋。
'The Impact Zone'
by Bobby Clampett and Andy Brumer (St. Martin's Press, 2007, $24.95)
「ディヴォットを取れないのは、クラブを地面に打ち込むことに対する本能的恐怖があるからだろう。私が話したことのある数人のゴルファーは、母なる大地を傷つける不快感を表明した。しかし、チッピング、ピッチング、フル・スウィングをちゃんと遂行するには、恐怖や不快感を乗り越えなくてはならない。チッピングでも打ち下ろすのだが、ピッチングからは攻撃的に地面に打ち込み、大量のディヴォットを取る必要がある。
ディヴォットを取ることを躊躇(ためら)うもう一つの理由は、人々がゴルフを学び始める時、ボールの前方(ターゲット方向)ではなく、ボールの後方をスウィング弧の最低点にするからだ。彼らはボール後方の地面で盛大なザックリ(=ダフり)を経験し、ディヴォット恐怖症に罹ってしまう。
そういうゴルファーは、スウィング弧の最低点をターゲット方向に移す(←これが正しい方法)代わりに、地面との接触を避けようと決意する。クリーンな掬い打ちでボールを空中に浮かべようとして、インパクトで左手首を折ってしまう。打ち下ろすのではなく、打ち上げようという無意識の努力である。ザックリを避けるため、スウィング弧の最低点を地面から高くする結果、ボールの天辺を叩いて(=トップ)ゴロを放つ。
つまり、ダフりとトップは悪循環の両端なのだ。ダフりには地面に打ち込もうというパワーがあるので、トップよりはまだましである。インパクトで地面はクラブヘッドに抵抗してクラブの動きを押し留めようとする。それはフラットな左手首という理想的な状態を作り、インパクトでハンド・ファーストの構えをもたらす。【編註:「ダフり・トップに曲がりなし」なので、方向性は良い】この感覚を得たゴルファーは、スウィング弧の最低点を前方に移しさえすれば、素晴らしい結果が得られる。地面との接触を避けようとする人々は、決して上達しないであろう。
ボールをソリッドに空中に放つには、打ち下ろすべきなのだ。打ち上げるのではなく。
ディヴォット跡の形状について触れておく。アップライトにシャープに打たれるショート・アイアンのディヴォット跡は深い。ロング・アイアンやフェアウェイ・ウッドはフラット目に打たれるため、ディヴォット跡は浅くなる」
【参考】「驚異のFLW(フラット・レフト・リスト)」(tips_155.html)ディヴォットを取るのと同じ効果(正確なショット)が得られ、結果として自然にディヴォットが取れるようになる。
【参照】
・「The Golfing Machine」(tips_87.html)
・「インパクトの研究」(tips_112.html)
・「インパクトの研究(パット篇)」(tips_112.html)
・「インパクトの研究(チッピング篇)」(tips_114.html)
・「インパクトの研究(ピッチング篇)」(このページ)
・「インパクトの研究(フルスウィング篇)」(tips_114.html)
・「インパクトの研究(ドライヴァー篇)」(tips_114.html)
・「インパクトの研究(レイトヒット篇)」(このページ)
・「インパクトの研究(練習篇)」(このページ)
・「インパクトの研究(照準篇)」(このページ)
・「インパクトの研究(道具篇)」(tips_113.html)
(April 26, 2011、改訂June 04, 2015、増補November 23, 2015)
'Putting Strategy: Bent vs. Bermuda'
by editors of 'Golf Magazine' ('Golf Magazine,' May 2010)
「ベントとバミューダの二つは、アメリカのグリーンで用いられる最も一般的な芝である。あなたがいくつもの異なるコースでプレイするのが好きなのであれば、二つの違いを学んでおくことは不可欠である。
・ベント
ベントは暑い気候を好まないので、主に涼しい地域のコースで用いられる。ベントは真っ直ぐ伸び、ソフトで、バミューダより繊細である。だから、ボールは真っ直ぐ狙った通りに転がる。
・バミューダ
この芝はアメリカ南部で一般的である。バミューダの場合、まばらな生育パターンに影響されるだけなく、芝目も大問題となる。バミューダを採用しているコースでパットする際は、ブレイクに加えて芝目の方向を調べることが重要だ。逆目であれば、ボールはベントよりも急速にスピードを落とす。芝目を横断するパットの場合、ブレイクはより強くなる。目がブレイクと同方向に向いていると、ブレイクは最大となる。逆にブレイクが芝目と反対に向いていれば、ブレイクは減少し、ボールは若干ストレートに近い感じで転がる。
あなたがベントでのパッティングに慣れていると、バミューダでショックを受けるだろう。しかし、ブレイクと芝目に注意すれば、多少の練習の後、癖を飲み込むことが出来る筈だ」
(April 30, 2011)
インパクト・ゾーンの研究家Bobby Clampett(ボビィ・クランペット)によるパッティングの考え方。
'The Impact Zone'
by Bobby Clampett and Andy Brumer (St. Martin's Press, 2007, $24.95)
「完璧なパッティングの鍵は、インパクトまでフラットな左手首を維持することである。それには、曲げた右手首の角度を絶対に変えてはならない。それは素振りをする時のように、スムーズなストロークを心掛ける時に達成される。“ボールを打つ”という動作に意識を集中すると、否応無く右手首が伸び、その結果左手首はフラットでなくなってしまう。
かく云う私にでさえ、時折“ボールを打つ”意識が忍び寄って来る。そういう時は、手のグリップ・プレッシャーを維持しながら素振りすることに意識を集中する。効果はたちどころに現われる。ストロークの間にグリップ・プレッシャーが変わるとしたら、それは“ボールを打つ”ことを試みた証しである。(パッティングだけでなく、どのゴルフ・ショットにおいても)グリップ・プレッシャーを変化させるのは有害であり、ことにクラブをごく小さくゆっくり動かすパッティングにおいては破壊的行為である。
私のカレッジの先輩であるJohnny Miller(ジョニィ・ミラー)がU.S. Open 1973で63で廻って優勝した時、「右手首の角度をアドレスからインパクトまで終始維持することを心掛けた」と云っていた。フラットな左手首が右手首の角度を維持するのを助け、右手首の角度がフラットな左手首を確実なものにするのである。
U.S. Open優勝の後、Johnny Millerはパットのスランプに陥った。1976年、彼はボールを見ず、カップを見ながらパットする方法を採用した。普通にアドレスし、ストローク開始直前に目をカップへと移してパットする。あまり知られていない事実だが、彼はこの年の全英オープンにボールを見ないパッティングで優勝したのだ」
Davis Love III(デイヴィス・ラヴ三世)の弟Mark(マーク)は、アマチュアながら兄に拮抗出来るゴルファーですが、彼もボールを見ないでカップを見てパットします。
Ben Hogan(ベン・ホーガン)は『インパクト(クラブヘッドとボールとの衝突)は、スウィングの間に起る偶発亊に過ぎないと考えよ』と云ったそうです。パッティングでもボールを無視し、完璧なストローク(スタートからフィニッシュまで)の実現だけに集中すべきなのでしょう。次項「パッティングを妨害するもの」も必読です。
(May 02, 2011)
「クラブ投擲レッスン」の筆者Fred Shoemaker(フレッド・シューメイカー)は、ゴルフ・スクールを経営するティーチング・プロ。彼のユニークな好著'Extraordinary Golf'に続くパット編の紹介の第二弾。
'Extraordinary Putting'
by Fred Shoemaker with Jo Hardy (G.P. Putnam's Sons, 2006, $21.95)
Fred Shoemakerは彼のゴルフ・スクールで面白い実験をしています。生徒たちを練習グリーンに連れて行き、一人の生徒にパターを持ってアドレスさせます。生徒の前に篭一杯のボールを用意したパートナーがしゃがむ。パットする人は延々と振り子の動作をし、それが自由で愉しいストロークになるまで続け、安定して来たと実感出来たらパートナーに合図する。パートナーはパットする人の前にボールを置いたり、置くように見せかけて直前に取り去ったりして、いつ本当にボールを置くのか見当がつかないようにする。パートナーは、もちろんパターに触れたりせず、パットする人の動きを一切妨げないことが前提。
【註】日本人には、これは餅搗きをイメージすれば理解しやすいでしょう。私の両親が若かった頃は、父が杵を搗き、母が濡らした手で餅を引っくり返しました。父は同じテンポでぺったんぺったんと餅を搗きます。母は杵で手を砕かれないように、タイミングよく素早く餅を返さなくてはなりません。上の実験の「パートナー」役は、この餅を返す役目と同じです。パットする人のテンポに合わせてボールを置いたり置かなかったりします。
安定した自由で自然で愉しいストローク(振り子運動)をしている筈の人が、ボールが置かれると(置かれたと思うと)、95%の割合でストロークを変えてしまうそうです。多くの場合、明白な急停止の気配が窺え、その変化は見物の生徒たちが笑ってしまうほど。ボールがあると概ね動きがスローダウンし、ジャブ(突く)風の動作となり、ボールが突如取り除かれた場合もぎくしゃくした動きになったり、軌道が変わってしまったりするそうです。
Fred Shoemakerはこう云います。「彼らが自然なストロークと考えたものとはほど遠いこのジャブのようなストロークは、実は彼らが我知らずゴルフ・コースで用いているものなのだ。それがこの実験で露呈したのだ」
フル・スウィングでもパッティングでも、「ボールはゴールではない。スウィング(ストローク)軌道にたまたま横たわっている物体に過ぎない」と説かれます。Fred Shoemakerの実験結果からすれば、この理論は「云うは易く」の典型かも知れません。しかし、「行なうは難し」であっても、スウィング(ストローク)の終点がボールでないことは真理だと思われます。あたかもボールが無いようにスウィング(ストローク)出来るようにならないといけないのです。
【参考】「クラブ投擲レッスン」(tips_51.html)
(May 02, 2011)
'The Putting Prescription'
by Dr. Craig L. Farnsworth (John Wiley & Sons, Inc., 2009, $24.95)
元検眼医で各種スポーツにおける眼の能力を発展させる方面の第一人者となり、現在はPGAツァー・プロにパッティングを指導しているDr. Craig L. Farnsworth(クレイグ・L・ファーンズワース博士)の、'See It & Sink It'(1997)に続く二冊目の本。今回の本は内容も濃く、パッティングの全ての側面が網羅されており、Dave Pelz(デイヴ・ペルツ)の'Putting Bible'を凌ぐ出来映えとなっています。原題'The Putting Prescription'(パットのための処方箋)は、全ての記事を医師による処方箋に見立てている洒落。
著者はストレート・ストロークより円弧型ストロークの方が優っていると主張していますが、ストレート・ストロークに相応しいポスチャーやストローク法についても触れています。
以下は傾聴すべきいくつかのポイント。
「・左腕(左利きの場合は右腕)主導のセットアップをすべきである。左腕は若干胸の前に位置し、右肘を左肘よりも多めに曲げ、左腕が右腕の上になる構え。あなたがプルしがちであれば、このセットアップによって改善出来る。あなたがインパクトでフェースをオープンにしがちであれば、左腕を身体の脇に引きつけると、右腕のフォワード・ストロークがよりスムーズに運ぶ。いずれにしても左腕主導のアドレスをすべきである。
・アドレスで屈められた太股が形成する角度はパター・シャフトの角度と一致すべきである。言葉を替えれば、太股とシャフトは平行になるということだ。 ・アドレスで手首、前腕部、手などは一直線になるべきで、凸や凹の形に折れるべきではない。 ・あなたが右利きで、利き目も右であれば、スタンス中央よりボール一個分ターゲット方向をあなたのボール位置とすると、ストローク弧の最低点でソリッドにボールを打てるようになる。 ・体重を過度に踵にかけると、パターのトゥで打つ傾向が生じる。逆に爪先体重だと、ストロークの間にボールに向かって沈み込み易い。 ・グリップ・プレッシャーは軽めが良い。グリップ・プレッシャーを1(軽い)〜10(きつい)と想定した場合、パットの上手い人々の多くは4の強さで握っている。 ・ある調査によれば、ツァー・プロの91%がボールのロゴをラインに合わせてパットしている。彼らの多くがロゴを延長し、長く太い線を描いている。 ・肩の大きい筋肉ではなく、手を主体にストロークするとプルし易い。 ・ボールを通過するようにストロークするのでなく、ボールに当てようとすると腕と肩の動きが減速し、手のパターを返す動きによってプルを生じる。 |
・パターを減速させないためには、ボール前方のパターの停止位置を見つめながらパットすると効果的である。
・以前は『短いバック・ストロークで長いフォワード・ストロークをせよ』と云われたものだ。しかし、腰の高さでフィニッシュするようなパッティング・スタイルは、上体を使い過ぎて左腕主導でなくなってしまい、インパクトでフェースをオープンにし易くなる問題点がある。
・パットの全行程を100とした場合、最後の25%の距離でブレイクの75%が生じる。【編註:前半の75%の距離ではボールの勢いがあるためブレイクは弱い。勢いが弱まる残り25%の距離で75%のブレイクがボールの転がりに影響を与える】これは"75-25 Rule"と呼ばれる。
・ゴルフを楽しむために最重要な道具は、あなたの目である。にもかかわらず、多くのゴルファーは太陽の紫外線から目を守る対策を講じない。『UVカット』、『紫外線対策』などの表示のあるサングラスを用いるべきである」
(May 06, 2011)
インパクト・ゾーンの研究家Bobby Clampett(ボビィ・クランペット)によるピッチングのあり方。
'The Impact Zone'
by Bobby Clampett and Andy Brumer (St. Martin's Press, 2007, $24.95)
「チッピング」と「フルスウィング」の中間ということで「ピッチング篇」の紹介はこれまで省いていましたが、今回同書を読み返してみて、重要と思われる事柄を見つけたのでメモしておきます。
「ピッチングはフルスウィングのミニチュア版であり、チッピング以上に左手首による早期コックが必要となる。そのコックが梃子となってスウィングにパワーを与えてくれる。
ボールとクラブヘッドに意識を集中するのは、スウィングを破壊する因である。たとえゴルファーがバックスウィングで手首をコックしても、人間誰しもが抱く不安が忍び寄り、振り抜くスウィングを忘れてボールに当てに行こうとする余り、発作的にクラブをインパクト・ゾーンの手前で振り解いてしまう。Ben Hogan(ベン・ホーガン)は『インパクト(ボールとの衝突)は、スウィングの間に起る偶発亊に過ぎないと考えよ』と云っていた。その意味は、ボールに焦点を合わせてはいけないということだ。
左手首のコックは、インパクト直前に遠心力と重力の作用によって、完全にしかも自然に解かれることを理解すべきである。地球上のどんな人間にもそれを妨げることは出来ない。《パワーやスピード、ロフトなどを増そうとして、ダウンスウィングの早期にアンコックすると、フラットな左手首でボールを打つこと、および"Aiming Point"(照準ポイント:ボールの10センチ前方)でディヴォットを取ることなどは先ず不可能になる》と強調しておく。
ピッチングはチッピングより長いスウィングになるので、身体の捻転が必要になる。私は、グリップエンドがベルトバックルを差すような、身体の中心で構えるアドレスを勧める。これは、身体の捻転を開始する際、体重を若干右足に移すのを楽にしてくれる。
フラットな左手首を維持したスウィングのインパクトでは、クラブはアドレス時よりターゲット方向(=ハンドファースト)の位置になり、左手首が左足を隠すことになる。インパクトでは、両手だけでなく身体全体がターゲット方向にシフトする。アドレス時の位置に留まるのは頭だけである。
練習法その1:室内でボール代わりに枕を打つ。枕の抵抗を感じるように。フラットな左手首で打った場合と、早期にアンコックした左手首とで、枕の飛び方がどう変わるかに注目する。【編註:羽毛や豆が詰まった枕はやめましょう。布が破れて中身が飛び散ると、奥様がかんかんになって怒るでしょう:-)】
練習法その2:ゴルフボールではない何か別の物を打つ。松かさ、紙くず、煙草の吸い殻など、なんでもよい。こういう物を打つと、早期にアンコックを誘発するボールとクラブヘッドに集中される意識が消え、フラットな左手首による理想的なインパクトが実現する。
練習法その3:コースで必要となる20、30、40、50ヤードのピッチングを練習する。距離は変わっても、コックと身体の捻転、そしてフラットな左手首を忘れないように。Phil Mickelson(フィル・ミケルスン)はトーナメントに出場しない休養期間中も、この練習を欠かさない」
【参照】
・「The Golfing Machine」(tips_87.html)
・「インパクトの研究」(tips_112.html)
・「インパクトの研究(パット篇)」(tips_112.html)
・「インパクトの研究(チッピング篇)」(tips_114.html)
・「インパクトの研究(フルスウィング篇)」(tips_114.html)
・「インパクトの研究(ドライヴァー篇)」(tips_114.html)
・「インパクトの研究(レイトヒット篇)」(このページ)
・「なぜディヴォットが取れないのか?」(このページ)
・「インパクトの研究(練習篇)」(このページ)
・「インパクトの研究(照準篇)」(このページ)
・「インパクトの研究(道具篇)」(tips_113.html)
(May 10, 2011、増補・改訂November 22-23, 2015)
'The 3 Scoring Clubs'
by Jim McLean (Gotham Books, 2005, $30.00)
「グリーンの周囲にグラスバンカーを取り入れているゴルフ・コースが増えている。ボールが草の中に沈んでいて、ピンが近い場合の対処法、以下の通り。
・アウトサイド・インのソフトなスウィングをするため、ややオーヴァーなくらいのオープン・スタンスを取る。
・ボールを左足踵の前方に置き、サンドウェッジかロブウェッジのフェースをオープンにする。
・左手首を早期にコックしつつ、コンパクトでアップライトな(垂直に近い)バックスウィング。
・バンカーショットのように、ボールの背後目掛けて鋭くクラブを振り下ろす。
(ただし、バンカーショットのように地面を掘らず、両手を充分にリリースすること)
・クラブヘッドはボールの下を潜り抜け、ボールはぴょんと飛び上がってソフトに着地する」
(May 13, 2011)
'The Impact Zone'
by Bobby Clampett and Andy Brumer (St. Martin's Press, 2007, $24.95)
Bobby Clampett(ボビィ・クランペット)による"lag"(ラグ)の定義は、「左手とクラブシャフトが形成する角度」で、これこそが「パワーの源」であり、インパクトを過ぎるまでその角度を維持すべきだと説きます。言葉を換えれば、「クラブヘッドが手を追い越すことは絶対にない」というスウィングです。正確に、しかも遠くに飛ばす秘訣は《ラグを保つ》ことだそうです。
「どこでラグの完成を感じ取るか?それは引き金を引くように曲げた右手人差し指の第二関節である。これを"trigger-finger pressure point"(引き金指・圧点)と呼ぶ。バックスウィングの完了以降、この圧点にクラブの重みを感じ続けなくてはいけない。それによって、クラブと手・腕が一体になった感覚が得られるようになる。
レイトヒットを達成する次の手順を視覚化し、あなたのスウィングを向上させてほしい。
1) ダウンスウィング開始にあたって、左手首のラグの角度が増す。
2) クラブを握る指は締まっているが、手首は自由にリラックスしている。
3) 腰がターゲット方向への体重移動と回転を交えながらダウンスウィングを始め、それ(腰)がラグの角度を可能な限り長く持続させる。
4) ラグを絶対に緩めてはならない。フラットな左手首のコックを絶対に(ごく僅かであっても)解いてはならない。
遠心力は自動的にクラブをリリースするものの、ラグに影響するものではない。強い指によるグリップとリラックスした手首によってラグを維持する。ラグを持続させる正しい感覚は、インパクトを遥かに越えるまでリリースさせないというものだ。
【レイトヒットの練習法】
バンカー内に線を引いて、それをボールに見立て、5番アイアンか6番アイアンを手に、充分コックし身体を捻転させる。"Aiming Point"(照準ポイント、線の10センチ前方)にスウィング弧の最低点が来るようにフル・スウィングする。バックスウィングで形成したラグの角度を、ダウンスウィングまで維持する。ディヴォット跡が線の10センチ前方で最も深く抉れれば成功。
もしうまく行かなければ、線を少し後退させる(ただし、10センチ以内に留めること)。ラグを持続出来た場合とそうでない場合で、砂への侵入位置がどう変わるか確認する。
ボール無しの練習が正確に打てるようになったら、今度は同じようにバンカー内でボールを打ってみる。ボールに意識が集中するあまり、ボールの向こうの"Aiming Point"を忘れ易い。すぐにうまく出来ないからといって嘆かないように。これは大抵のゴルファーにとって難しい練習なのだ。時間はかかるだろうが、ラグの角度と"Aiming Point"に執着して練習すれば、いつかはマスター出来、あなたのショットを測り知れぬほど向上させてくれる。
このバンカーでの練習は、左足上がりのライだともっと効果的である」
【参照】
・「The Golfing Machine」(tips_87.html)
・「インパクトの研究」(tips_112.html)
・「インパクトの研究(パット篇)」(tips_112.html)
・「インパクトの研究(チッピング篇)」(tips_114.html)
・「インパクトの研究(ピッチング篇)」(このページ)
・「インパクトの研究(フルスウィング篇)」(tips_114.html)
・「インパクトの研究(ドライヴァー篇)」(tips_114.html)
・「なぜディヴォットが取れないのか?」(このページ)
・「インパクトの研究(練習篇)」(このページ)
・「インパクトの研究(照準篇)」(このページ)
・「インパクトの研究(道具篇)」(tips_113.html)
(May 17, 2011、増補November 23-25, 2015)
'The Golf Immortals'
by Tom Scott & Geoffrey Cousins (Hart Publishing Company, Inc., 1968)
「初期のBen Hogan(ベン・ホーガン)は、鞭のようなクラブヘッドの動きでボールをぶっ叩いた。彼は大柄な体格ではなかったから、パワフルに打つためにタイミングに依存した完璧なヒッティングをしなければならなかった。しかし、その打法はクラブフェースを左に向けてしまいがちで、トラブルに陥ることも珍しくなかった。
その頃のBen Hoganは、両足をがっちりと構え、屈み込むような体勢でボールに突進するのが常だった。それは意図された動作ではあったが、期待通りに必ずソリッドに打てるとは限らなかった。当時の彼のスウィングの長さ(捻転の度合い)は他のプロ以上で、その長さがボールを左に向かわせる原因でもあった。
瀕死の自動車事故の後、彼の身体はもはや以前のような長いバックスウィングが出来なくなり、ぶっ叩くのではなくスムーズにスウィングせねばならなくなった。新しいスウィングは多少飛距離が減ったものの、フェードが打てるようになり、ボールを狙ったところに自在にに運べるようになった。言葉を換えれば、事故による彼の肉体的・精神的地獄の苦しみは、あることを証明したのだ。それは、《ボールをぶっ叩いて飛距離を得ることは、ゴルフの成功には結びつかない》ということだった。
Ben Hoganは自動車事故以前にも非常に成功していたプロだったから、勝利をもたらしていたスウィング・スタイルを変えるのは容易ではなかった筈だ。
ここに、全てのレヴェルのゴルファーに役立つ教訓がある。幸運にもBen Hoganがくぐり抜けねばならなかった苦難は味わわないにしても、能力がないにもかかわらず飛距離と正確さを望んで目一杯の力でボールをぶっ叩いて欲求不満の歳月を費やしているあなた。特に、ずば抜けた体力を授かっていない男性諸君。充分な力でボールを打ち、しかもまだ余力を残していられるゴルファーというのは、かなり稀なのだ。力を使おうというゴルファーは、Ben Hoganに倣ってひたすらボールを運ぶことに専念すべきである」
(May 22, 2011)
南ア出身のプロBobby Locke(ボビィ・ロック、1917〜1987)は、全英オープンに四回優勝し、米PGAツァーでは「あまりにも上手過ぎるのでツァー参加資格を剥奪された」という伝説があるほど。彼の強力な武器はパッティングで、今でも名人として語り継がれています。
'The Golf Immortals' 「グリーン上のBobby Lockeの動きは、まるでバレエ・ダンサーのステップのように正確だった。彼の最初の行動は、ラインに沿って地面を綿密に調べ、時折顕微鏡的視点で見つけたルース・インペディメントを摘まみ上げたり、パターヘッドで払い除けたりした。カップに近づくと、左手でパターを握って右手を膝に置いて屈み、ラインの最後の2フィート(約60センチ)を細心の注意で調べた。ボールの後ろに戻ると、前方の地面にパターを伏せてしゃがみ、ラインの左右の勾配を一瞥。最後に、二回の素振りの後、やっとストロークした。 彼はスロー・プレイで非難されることもあり、特に慎重にならざるを得ないラウンドではそれが目立った。しかし、パッティングに時間を費やす時、彼は一秒も無駄にせず、賢く時間を使った。彼はプレパット・ルーティーンを実行しながら、心の中で計算をした。アドレスするまでには、全ての要素が熟慮され、ストロークの強さとグリーンの勾配やうねりを勘案した方向とが決定された。 ストローク法について、Bobby Lockeには三つの原則があった。ボールにトップ・スピンを与えること、ストロークの間中パターフェースをスクウェアに保つこと、手を同じプレーン上で動かし続けること…の三点である。彼のグリップはオーソドックスなオーヴァーラッピング・グリップだったが、左右の親指はシャフトの正面で下を指していた(シャフトの横ではない)。彼のボール位置は左足爪先の前方で、右足は若干ラインから引かれてクローズド・スタンスにしていた。このスタンスによってパターはインサイドに引かれるものの、パターがターゲットに向けて送り出されることによってフェースはラインにスクウェアに保たれた。 |
彼のトップ・スピン理論は、トップ・スピンをかけられたボールは他のスピンよりカップ到達率が高く、またカップの左右の縁に触れたボールはカップ中央からよりも落下率が高いという事実に基づいている。アンダー・スピンがかかったボールは、カップ到達前に息絶えることが多く、カット打ちされたボールはカップの縁から転げ込むのでなくリップ・アウトし易い。
彼はパットに失敗すると、距離の長短にかかわらず、同じようにプレパット・ルーティーンを実行した」
【参照】「Bobby Lockeのパッティング」(tips_109.html)
(May 25, 2011)
'Grip down the right way'
by Mark Hackett ('Golf Magazine,' July 2009)
「クラブを短く持たねばならない場面は結構多いものだが、その方法をちゃんと知っていないと失敗してしまう。
《誤》セットアップし、それからグリップ・ダウンする。
これは否応無く膝を曲げ、手が肩の真下ではなく身体にごく近いセッティングを自分に強制してしまう。こうなると手・腕にとって、ボールをソリッドに打ち抜く充分な空間が得られなくなる。【編註:手が膝にぶつかるか、それを避けようとして手が正しい軌道から逸れてしまう】
《正》グリップ・ダウンし、それからセットアップする。
クラブを最終的な長さに握った後、股関節から上半身を前傾し、ほんの僅か膝を曲げる。お尻が突き出され、腕は肩から真っ直ぐ垂れている筈だ。この体勢なら、腕は身体に巻き付くことなく充分な空間が得られ、計画通りのショットが可能になる」
(May 25, 2011)
'Jimmy Thomson discusses the drive'
by Jimmy Thomson with Joan Flynn Dreyspool
from 'Golf Magazine's Pro Pointers and Stroke Savers'
edited by Charles Price, Harper & Brothers, 1959)
PGAツアー・プロJimmy Thomson(ジミィ・トムスン、1908〜1985)は、スコットランドのプロ・ゴルファーの息子として生まれました。彼の父は身体のバランスの重要性を説き、静かな下半身で立てば両手を早く振れるという信念を持っていました。
父が米国に移り住んでクラブ・プロとなり、息子Jimmy Thomsonも父の後を追って移住。父の教えを身につけたJimmy Thomsonは、13歳の頃に両足をくっつけたまま9番アイアンを打って普通の飛距離を出し、16歳の頃には両足をつけたままドライヴァーで225ヤード打てたそうです。
1929年の全英オープンのあるホールで、彼は375ヤードのドライヴを放ち、そのボールはグリーンでパットしているプロの足の間に転がったとか。その後彼は数々のトーナメントで優勝。
彼は1937年の北米ロング・ドライヴ・コンテストに優勝しています。参加者は20発ずつ打ち、そのうちのベスト十打の平均飛距離が競われました。Jimmy Thomsonの平均は316ヤードで、最高飛距離は386ヤードだったそうです。Byron Nelson(バイロン・ネルスン)がスティール・シャフトを広めたのも1937年ですが、Jimmy Thomsonがそれを使っていたかどうかは不明。いずれにしてもグラファイト・シャフトやデカヘッド以前の時代です。
以下はJimmy Thomsonの回想。
「両足をつけてバランスよくスウィングすることを学んだ後、私は両足を離して打ち始めた。普通は肩幅のスタンスが推奨されるが、私は捻転や逆転の際の下半身の使い方に長けていたし、インパクトでバランスを失わないという事実を前提に、肩幅よりも30センチ以上両足を離して立った。私は捻転を解くスピードが速かったので、ボールに手が届く頃には両手が飛ぶような有様だった。
正しいバランスを獲得していないゴルファーたちは、両足ではなくどっちか片方の足しか使っていない。成すべきことは(そして、ほとんどの人がインパクトで達成していないことだが)ボールに向かってアドレスしたスタンスに戻ることだ。もちろん、正しいグリップ、スタンス等の基本は大事だが、私に云わせればバランスこそが決定的な要素であると強調したい。バランスなくしてショットなし。
誰も気づいていないが、Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)はロング・ヒッターだった。彼はいいコントロールを得るため、普段彼のパワーの90%しか使わなかった。しかし、長いホールで、本当に必要となった時だけ彼は残りの10%も用いたのだ。
強靭なゴルファーで、しかも自分の能力の限界内でプレイする人だけがロング・ドライヴのリスクに挑戦出来る。それ以外のゴルファーは(ロー・ハンデであっても)常に自分の能力の限界内でプレイするとは限らない。これはドライヴァーだけの話ではなく、他のクラブにも共通することだ。距離ぴったしの7番アイアンを目一杯強く打てば、エラーの出る可能性が高くなる。7番アイアンではなく、6番アイアンをイーズィに打ってコントロールを確保すべきなのだ。距離をカヴァー出来るよりもっと上のクラブで打てば、低い軌道のボールが得られ、これまたいいコントロールの助けとなってくれる。高い軌道のフル・ショットよりも、3/4スウィングによる低めのショットの方が確実にターゲットへ向かうものだ」
この最後の部分を読んで、私は膝を打ちました。「絶対ショートしない方法」という記事で私は次のように書きました。「ピンを10ヤード越えられるクラブを選択し、クラブを短く持つ。ウッドやハイブリッドではティーアップを低めにする。長いクラブを持っているわけだから、力む必要は全くない。1クラブ上げたことによってロフトが減っている。その上ティーアップを低くしたことによって、弾道は低くなり、ランが増える。クラブを短く持つことによってコントロールが良くなる。力む必要がないから理想に近いスウィングが出来る」。よく似ていますが、これは私のアイデアであってJimmy Thomsonの受け売りではありません。自慢させて貰えば、私の方が芸が細かい:-)。
【おことわり】画像はhttps://alchetron.com/にリンクして表示させて頂いています。
(May 28, 2011)
Gene Sarazen(ジーン・サラゼン、1902〜1999)はメイジャー優勝七回(生涯グランドスラム達成者)、PGAツァーで計39勝を挙げ、1935年のThe Mastersにおけるアルバトロスや、サンドウェッジの発明・開発者としても有名です。
'Sarazen says'
by Gene Sarazen ('Golf Magazine's Pro Pointers and Stroke Savers'
edited by Charles Price, Harper & Brothers, 1959)
「シニアの誰もが身に覚えのあることだが、加齢とともにゲームの質が低下する最初の分野はパッティングである。妙な話だが、距離感も方向の正確さにも問題があるようには思えない。だが、パッティングのタッチがごく僅かずつ失われて行く。 この悲しくも紛う方なき事実は、1959年にWinged Footで開催されたU.S. Openで明らかになった。当時57歳のBen Hogan(ベン・ホーガン)のティーからグリーンへボールを運ぶ手際は、キラ星のような名人級の参加者の中でも断トツだった。しかし、二日目を終え、誰の目にも彼が優勝に絡むなどとは思えなくなった。彼が以前のパッティング技能の半分でも発揮していれば、彼は優勝カップを持って家に帰れただろうが。 私は常々『最初にゲームの質が変化するのがパッティングなのは何故だろう?』と不思議に思っていた。そして、私はその原因は膝にあるという結論に達した。シニアは身体をぐらつかせずには立っていられないのだ。想像だが、もしメイジャー・トーナメント参加者全員が海水パンツでプレイすることを義務づけられたら、賭けてもいいが彼らの膝の震えによって年齢を正しく推測することが可能になるだろう。40を過ぎると膝が震え出し、毎年その震えが大きくなって行くのだ。 パッティング・ストロークとの離別は、先ずショート・パットから始まり、次第にロング・パットへと移って行く。それは視力の低下に似ている。大きな文字は読めるが小さな文字が読めなくなる。Sam Snead(サム・スニード)を例に取ろう。彼は昨春ホームコースで59というスコアを達成した。素晴らしいスコアだ。云うまでもないが、彼は多くのパットを見事に沈めた(でなければ、そんないいスコアにはならない)。しかし、彼のスコアカードを仔細に点検すると、彼の強みは長いパットを寄せることにあった事実を知ることになる。彼は3、5、6、9メートルのパットを成功させた。しかし、彼は2.4メートル一つと、1.5メートルを二つミスしている。これら三つのミスはパー・プレイの場合なら珍しくもないだろうが、ほとんど完璧な59ラウンドにおいてはどえらいミスと云えるものだ。 |
Ben HoganとSam Sneadらがプレイ以外のビジネスへの傾斜によって、ゲームが人生における重要度の二番目になったことが、タッチを失った要因であることは間違いない。しかし、そうだとしても、45歳を過ぎるとあなたの想念は不安に占領されるものだ。常にミスを許容する。歳取ると、パットは失敗して当然のものになる。若者たちは、ただカップを一瞥して無心にストロークするだけなのに」
これを読むと、いかに堅固な下半身が必要かが解ります。運動は飛ばすためのものだけではないんですね。メルマガの『身体を鍛えて上手くなる』で様々な運動法を紹介しましたが、それらがパッティングにも必要だったとは気づきませんでした。私が実践している「生体力学的鍛錬ヴィデオ」はスクヮット(しゃがみ込み)を多く取り入れていますので、膝の鍛錬にも役立つわけです。怠けてはいけないと思いました。
(June 06, 2011)
'Mastering fast greens'
by editors of 'Golf Magazine' ('Golf Magazine,' April 2009)
「たとえ短いストロークであっても、速い下りのラインは数打のロスに繋がる恐れがあるものだ。
こういう場面では、バックスウィングをほとんどすべきではない。パターは1インチ(約2.5センチ)以上動かしてはならない。いつもよりきつめのグリップをして、ボールをトンと叩く。これなら方向がずれることもない」
(June 06, 2011)
'The Impact Zone'
by Bobby Clampett and Andy Brumer (St. Martin's Press, 2007, $24.95)
下の図を御覧下さい。「インパクトの研究」の著者Bobby Clampett(ボビィ・クランペット)はボールを見ながらダウン・スウィングをするのではなく、ボールの10センチ先(ターゲット方向)を見ながらインパクトを迎えます。ボールの10センチ先は、彼の"Aiming Point"(照準ポイント)であり、まさしくそこに焦点を合わせているわけです。
【註】"Aiming Point"はBobby Clampettの専売特許ではなく、また彼の少・青年時代の師匠Ben Doyle(ベン・ドイル)の発明でもありません。Ben Doyleが聖書のように信奉した本'The Golfing Machine'の著者Homer Kelley(ホーマー・ケリィ)の発案です。Homer Kelleyは初めてのラウンドで116を叩き(これは、初めてとしてはそう悪くないスコアですが)、がっかりした彼はその後六ヶ月間練習に明け暮れ、人生二度目のラウンドで77という快挙。なぜ、そんないいプレイが出来たのか、どのインストラクターに聞いてもまともな返事が得られないので、彼は自分でその理由を解明するしかないと考えました。数週間のプロジェクトの予定だったものが、何と30年もの長期研究に変貌し、その成果が'The Golfing Machine'の原稿となりました。彼は航空機関係の技術者だったので、彼の書いた原稿は(大方の技術屋が書くマニュアル同様)非常に読み難く、出版社から相手にして貰えなかったため、彼はついに自費出版してしまいました。これを読んだインストラクターBen Doyleが他のインストラクターたちに勧め、'The Golfing Machine'はそこそこ売れたのですが、何と云ってもBen Doyleの教え子Bobby Clampettがアマ・ゴルフの少・青年部門で優勝街道を歩み、全英オープンで大活躍したことが'The Golfing Machine'を世界的に有名にし、売れ行きを飛躍的に伸ばしました。しかし、現在はamazon.comでも中古書しか入手出来ないようです。私の持っているのは、2006年にeBayで購入した第六版(1982年刊)で、落札価格は25ドルでした。
「インパクトの研究」を実践する場合、ボールを見ながら打つとボールの10センチ先ではなくボールの近くでディヴォットを取りがちです。やってみると分りますが、文字通り"Aiming Point"を見つめながらダウンスウィングすると、綺麗に10センチ先の地面を抉ることが出来ます。文字の上では難しそうですが、バンカー・ショットでボールの数センチ手前(後方)にクラブヘッドを打ち込むことの反対でしかありません。バンカー・ショットで照準をずらすことは誰もがやっていることであり、それをボールの前方に移すだけなのです。
ボールを打ってからディヴォットを取ると、クラブのロフト通りの正しい軌道のショットが得られます。それは適切な飛距離をも意味します。Bobby Clampettの云う「フラットな手首」も実行出来れば、方向も正確無比になります。
同じページの最後の写真は、"trigger-finger pressure point"(引き金指・圧点)の説明で、トップでクラブの重みを感じるべき右手人差し指の第二関節を示しています。これもHomer Kelleyが'The Golfing Machine'に書いたことです。
【参照】
・「The Golfing Machine」(tips_87.html)
・「インパクトの研究」(tips_112.html)
・「インパクトの研究(パット篇)」(tips_112.html)
・「インパクトの研究(チッピング篇)」(tips_114.html)
・「インパクトの研究(ピッチング篇)」(このページ)
・「インパクトの研究(フルスウィング篇)」(tips_114.html)
・「インパクトの研究(ドライヴァー篇)」(tips_114.html)
・「インパクトの研究(レイトヒット篇)」(このページ)
・「なぜディヴォットが取れないのか?」(このページ)
・「インパクトの研究(練習篇)」(このページ)
・「インパクトの研究(道具篇)」(tips_113.html)
(June 09, 2011、改訂June 04, 2015、再訂November 21, 2015、増補November 22, 2015)
「インパクトの研究」シリーズの"Aiming Point"を実践することでアイアンの方向性が非常に良くなったのですが、私のバッグの中の唯一のロング・アイアンである4番アイアンだけがプッシュする傾向にありました。
"Aiming Point"(照準ポイント)はHomer Kelley(ホーマー・ケリィ)著の'The Golfing Machine'(tips_87.html)のコンセプトであり、私のゴル友Jack Rushing(ジャック・ラッシング)は数十年前から'The Golfing Machine'を熟読し、実践しようとしている人です。彼に「4番アイアンだけがプッシュする…」と嘆いたら、「ロング・アイアンは少しクローズド・フェースで構えるんだ。Homer Kelleyもそう書いている」と云いました。逆にショート・アイアンやウェッジでは、ややオープン気味のテイクアウェイにすべきだそうです。
彼に教わって'The Golfing Machine'の該当箇所を読みましたが、実際にはゴルファーのインパクトに向かう手の動き(水平、垂直、斜めなど)によって異なるようです(この本は参照箇所が複雑に入り組んでいて非常に読み難い)。しかし、私の場合、単純に4番アイアンのフェースを少しクローズにするだけで、即座に理想的な方向性が得られるようになりました。当たりが良過ぎて10ヤードもピンをオーヴァーして奥につけてしまったほど。今後は4番アイアンを少し短く持たないといけないようです。
Jackに私のスウィングをスローモーションの動きで見せたところ、インパクトに向かう私の手の動きは「水平」タイプであり、このタイプのスウィングをする者は緩めのグリップ(1〜10の段階の3相当)が適している…とのこと。これは'The Golfing Machine'に書かれているわけではないようですが。
ウェッジをややオープン気味で引くというのはいささか抵抗がありましたが、半信半疑ながらやってみると、ピッチング・ウェッジは真っ直ぐ目標に向かって飛ぶようになりました。
'The Golfing Machine'という本は、ゴルフの『解体新書』とでも云うべきもので、どこに何という臓器があり、その役目はこうだと解説するだけです。『解体新書』に「だから、こうせよ」という部分がないように、Homer Kelleyもスウィングを解剖して、その各部の動きと結果を指摘するだけで、「だから、こうせよ」とは主張しません。有名プロが執筆した本が「私はこうやって成功している。あんたも成功したきゃこうしなさい」と主張するのとは大違いで、そこがもどかしい点です。
私も『解体新書』で臓器のどれかについて知りたい医師のように、その項だけ読む感じで'The Golfing Machine'を開いていたのですが、Jackが教えてくれた上のようなポイントも書かれているなら、つぶさに通読する必要があると感じました。
【参照】「The Golfing Machine(ゴルフィング・マシン)」(tips_87.html)
(June 09, 2011、追補January 12, 2017)
Alex Morrison(アレックス・モリスン、1896〜1986)は、1930年代に絶大な人気を誇っていたインストラクター。彼が教えた名人たちにはWalter Hagen(ウォルター・ヘイゲン)、Gene Sarazen(ジーン・サラゼン)、Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)、Byron Nelson(バイロン・ネルスン)、Sam Snead(サム・スニード)、Ben Hogan(ベン・ホーガン)、Jackie Burke(ジャッキィ・バーク)、Jimmy Thomson(ジミィ・トムスン)、Billy Casper(ビリィ・キャスパー)、Arnold Palmer(アーノルド・パーマー)、Jack Grout(ジャック・グラウト、Jack Nicklausの師匠)など数え切れないくらいの名前が並んでいます。当然ですが、Bing Crosby(ビング・クロスビィ)やBob Hope(ボブ・ホープ)など有名人たちも教えています。
Alex Morrisonは、高速度分解写真や映画カメラを使ってスウィングを分析するという、時代に先駆けた指導法を編み出しました。彼は生徒がプロなら10分以内、初心者なら30分以内に障害を治療出来ると豪語していたそうで、事実トーナメント会場で悩めるプロを数分間指導して優勝に導いたこともあったそうです。彼は大都市の劇場でゴルフの曲打ちを見せたり、舞台でずぶの素人に教えてその場ですぐさま立派に打たせるというショーを見せたりもしました。
'Alex Morrison teaches the pros'
by Robert Joseph Allen ('Golf Magazine's Pro Pointers and Stroke Savers'
edited by Charles Price, Harper & Brothers, 1959)
「Alex Morrisonは云う。『傑出したゴルファーたちのスウィングを目の当たりにすると、多くの人々は名人たちはインパクトで物凄いパワーをボールに与えていると思い込む。それは大きな間違いで、見る目のない人の錯覚に過ぎない。実際にどういうことが起っているかというと、トップクラスのゴルファーはダウンスウィングの開始から徐々に、スムーズにインパクトの瞬間へとパワーを増しているのだ。
その結果、インパクトの瞬間に、名人の胴体、両腕、両手首、そしてクラブなどは段階的な加速の頂点に達する。それがプロたちのフォロースルーを優雅に見せる理由である。彼らは自分たちが培ったリズムに自然にスウィングを完遂させる。
プロがスウィングする際、急速にスウィング弧の最低点に向かうクラブヘッドの動きに、さらに彼らが突然力を加えて加速させることが可能だなどと考えるのはナンセンスである。どんな人間にも下降中のクラブを手の動きで速めるなどということは不可能なのだ』」
【編註】これはトップで重力の戻りを待ち、重力と遠心力に任せてスウィングするということと同意義に思えます。
「あるライターは次のようにAlex Morrisonの教えを要約した。『目をボールの上に据え、顎をボールの後ろに置き【インパクト後までそのままの位置で留める】、左腕を伸ばし右腕は身体の傍。そして体重を移動させる際には綱渡りの芸人のようにバランスを維持し、伸び伸びと、そしてスムーズにボールに向かって打ち下ろす』
上の動作を容易に達成させるには、【Alex Morrisonによれば】『両手首、両肘、両肩、両足、両足首、両膝、腰、歯、左右の眉毛、喉、扁桃腺、足の爪、鼠径輪などが正しく機能し調整されているかどうか確認する。それらがOKなら、正しいスウィングを敢行する他の身体部分がちゃんと面倒見てくれる筈だ』」【編註:列挙された身体各部が目立った動きをしてはいけないということを冗談めかして云っている】
(June 13, 2011)
'Hit solid irons'
by Steve Atherton ('Golf Magazine,' June 2011)
「アイアンでしゃくり上げるように打つと、ボールとのコンタクトにムラが多くなり、ダフりやトップを頻発する。私のお勧めは、次の簡単なドリルである。
クラブは持たずにアドレス姿勢を取り、胸の前で両腕をクロスさせる(右掌を左肩に近くに当て、左掌を右肩近くに当てる)。肩はそのままにし、腰だけを反時計方向(ターゲット方向)に廻し、出来ればベルトバックルがターゲットを指すように努力する。その結果として手がクラブヘッドに先行する体勢は、地面より先にボールと接触するプロ的シャフト前傾のインパクトを作り出す。
上のドリルの練習を継続しながら、もう一つ利き腕一本だけで打つ30ヤード以下のイーズィなショットも練習されたい。
a) 利き腕が右の人は、コックを保つように集中する。
b) 左が利き腕の場合は、左手首が若干凸型になったままインパクトを迎えるようにする。
手のグリップが必ずクラブヘッドに先行すれば、プロのようにボールを押し潰すショットが生まれる」
(June 16, 2011)
著者Dede Owens(デディ・オウエンス)は元LPGAツァー・プロで、後にインストラクターとして活躍。
'Golf: Steps to Success'
by Dede Owens, EdD and Linda K. Bunker, PhD (Human Kinetics, 1999, $15.95)
「活発に動く手首は、チッピングにおいては距離と方向をミスする因(もと)である。しかし、手首が活発に動いていても、あなたはその動きに気づかないので厄介だ。次のドリルを実施すると、あなたの手首が過度に動いていないかどうか感じ取ることが出来る」
写真のように二本のクラブを使う。クラブ1(赤線)はあなたがチッピングに使うクラブで、クラブ2(青線)はアイアンでさえあれば何でもよい。二本のクラブのグリップ部分を重ねて握って、スウィングする。
「あなたの手首が過度に動いていると【=ボールを掬うような打ち方をすると】、インパクトでクラブヘッドは手を追い越してしまうので、クラブ2(青線)があなたの身体の側面を叩く」
クラブ2があなたの身体に接触したら、それは手首を折ってボールを上げようと掬い打ちしている証拠です。アドレスした時のロフトが変わってしまい、リーディングエッジの方向もどこを向いているか不明確になります。これではチップインはおろか、ギミー(OK)の範囲に寄るかどうかも疑わしいと云わねばなりません。
なお、このテストはチッピングに役立つだけでなく、ダウンブローで打つアイアン・ショット全てに有効です。下記の記事もお読み下さい。
【参考】「ピュアなアイアン・ショットを打つ」(tips_96.html)
(June 22, 2011、改訂June 04, 2015)
当サイトには、「フル・スウィングのトップで微かな間(ま)を置け」というtipがいくつもあります。今回のは、“パット・ドクター”と自称するDr. Craig L. Farnsworth(クレイグ・L・ファーンズワース博士)の「パットでも間を置け」という理論です。
'The Putting Prescription'
by Dr. Craig L. Farnsworth (John Wiley & Sons, Inc., 2009, $24.95)
「パットの距離が長くなると、バックストロークからフォワードストロークへの方向転換を急ぐゴルファーが多い。そういう急速な切り返しは肩の準備が整う前に、手でフォワードストロークを開始する結果になり易い。往々にして右手がパターフェースをクローズにするか、少なくとも手首が折れたインパクトを迎えてしまう。これは非常に短いバックストロークの際にも起る現象だ。
パターを返す(手をこねる)動きを避けるには、方向転換の際に若干の間(ま)を置くのが理想的である。それを身につけるドリルがある。
【一時停止ドリル】
1) カップから約6メートルのところにボールを置く。
2) 必要と思われるだけのバックストロークをし、そのトップで動きを停止する。
3) 『一時停止』と呟く。
4) フォワードストロークに移る。
この1〜2秒の一時停止は極端ではあるが、あなたにパワーの源である上腕部と肩(特に右肩)の存在を認識させ、手ではなく大きな筋肉による方向転換を実現させてくれる。
私のスクールの多くの生徒たちによれば、この一時停止は単に大きな筋肉に焦点を当てるだけでなく、いつものバックストロークより遠くへパターヘッドを運ばせるそうだ。言葉を換えれば、ストローク幅が彼らの予測よりも実質的に長くなり、手の介入を避けられるようになる。パターのスウィートスポットで打てるようになって、ボールに充分なエネルギーを伝えることが可能になったと報告する生徒も多い。
実際のラウンドでは、一時停止はカンマ1秒程度でしかないだろう。あなたの大きな筋肉が主導権を握っていれば、テンポと方向転換は自動制御で行なわれる筈だ。
方向転換の際に微かな間(ま)を置くことは、距離と方向の両面に役立つ。ライン上にボールを転がし始めることだけでなく、カップの傍でボールを止めることも可能になる。距離の長いパットに備え、毎日このドリルを実践されたい」
(June 26, 2011)
'Arnie's unusual stance'
from 'The Golf Magazine Putting Handbook'
edited by Peter Morrice (The Lyons Press, 2000, $14.95)
「パットする際に身体を静止させるのがどれほど大事か?絶頂期のArnold Palmer(アーノルド・パーマー)にとって、それは何ものにも代え難いほど重要なものだった。
彼が50年代、60年代に攻撃的な姿勢で世界中の人の心を捉えた時、彼はスポーツマンらしい体格を持ちカリスマ的ゴルファーであったが、彼のスタイルは一風変わっていた。フル・スウィングは速く、強打するもので、パッティング・スタンスは遠くのトイレまでおしっこを我慢しているような感じだった。両膝は内側に折られてX脚となり、両爪先は内股、太股は互いに接触し、ボールに近い状態になるため腰から上体を折り曲げていた。
そのポスチャーは見た目に美しいものとは云えなかったが、彼の身体をしっかり固定することに役立ち、ストロークの間に動かせるのは肩、腕、手だけであった。その効果は彼の記録が充分に物語っている」
(June 30, 2011)
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