Golf Tips Vol. 132

パー3はなぜ難しいか?【試論】

私にも私のゴルフ仲間にも、ドライヴァーをびしびしフェアウェイのド真ん中に放てる日というものがあります。それなのに、パー3に差しかかると途端に右や左の旦那さまになったり、池ポチャやチョロを出したりすることが珍しくありません。これは上級者にも結構出る症状です。

ドライヴァーというのは一般的に方向のコントロールが難しいとされています。特に初級者や中級者、プロでもTiger Woods(タイガーウッズ)などはドライヴァー・ショットでフェアウェイ・キープに四苦八苦します;-)。そのドライヴァーを正確に打てるのに、なぜパー3でハイブリッドやアイアンを正確に打てないのか?

[Sawgrass]

要因は地形(高低差やグリーンの形状)などの問題から、池やバンカーの存在によるメンタル的なものまで様々考えられます。私はそれ以外の問題点もあることと、その解決法を発見しました。

ドライヴァーを打つ際、私は距離にこだわりません。そりゃ出来るだけ遠くへ飛んで欲しいのは人情ですが、無限遠の飛距離を望むのは愚の骨頂で、そういう欲望がスウィングをぶち壊しにすることを経験で知っています。ですから、ドライヴァーにおいては距離はクラブ任せ。この場合、私の関心は方向性只一つです。

ところが、パー3においては方向性だけでなく距離も重要になります。われわれは二つの課題を処理しなければならなくなります。もちろん、パー5やパー4でのアプローチ・ショットでも、われわれは距離と方向の二つの課題をこなさなくてはなりません。しかし、「80を切る!」ことが目標のレヴェルのわれわれの場合、パー5での3オンやパー4での2オンを絶対確実に達成出来るなどと思ってはいないし、周囲もそんなことを期待してはいません。パーオンは何かの間違いか、ゴルフの神様のお恵みと考えた方がいいのです:-)。

パー3は異なります。パー3は「乗せて当然」の据え膳のようなものです。ボッチチェルリやティントレット描く豊満な裸女がゆったりと寝そべり、「さ、いらっしゃいましな」とウインクしている感じ。あるいはギリシア神話のサイレン(美声によって船人を難所に誘い込んで難破させる怪鳥)の歌声と云ってもいいでしょう。われわれはそういう呼びかけに応えるべく距離と方向の二重の難題に挑戦し、その重圧によって身体が強ばったり痺れたりしたあげく、「えい、ままよ!」と急いで打ったりしてしまいます。その結果はプルやプッシュ、チョロです。

トロイ戦争の英雄ユリシーズ(=オデュッセウス)は、サイレンの歌声を是非聞いてみたいと思ったけれど船を難破させたくはなかった。そこで、サイレンの島の傍を通過する際、武将たちや漕ぎ手全員に耳栓をさせ、自分の身体を帆柱に縛り付けさせた。サイレンの歌声に誘われたユリシーズがどんな命令を発しても、部下たちの耳には聞こえない仕掛けだった。この工夫によって、ユリシーズはサイレンの歌声を聞きつつも、一行の船は安全に航行を継続出来たのだった。

われわれも、身体と筋肉(=船員)に前進だけを命じ、心(サイレンにおびき寄せられたユリシーズの命令:即ち、一打で乗せたいとか、出来ればピン傍につけたいなどという欲望)を無視すべきなのです。言葉を換えれば、距離と方向という課題のうち一つを減らすのです。私個人としては、方向より距離を選択します。ピンハイにつけられれば、乗らないまでも寄せワンが期待出来ます。方向を重視するとショートしたりオーヴァーしたりして、寄せワンを難しくする可能性大です。方向重視はショットの舵を取る過ち(プッシュやプルを招く)に繋がり、距離を優先すべきロングパットで方向にこだわる余り大幅にショートして3パットする失敗に似た結果になりかねません。

課題を一つ減らすことによって、先ず心理的に楽になり、その結果筋肉もリラックスします。完璧を望まない心理が、練習場でショットするようなゆとりをもたらしてくれます。【リラックスとは云っても、緩んだグリップや身体を充分捻転しないダラけたスウィングだと落第です。われわれのレヴェルでは、常にビシッとフル・スウィングするのがベストだからです】

そう悟った日のラウンド、四つのパー3のうち三つでパーを達成出来ました(一つはボギー)。これは、最近の私のラウンドではとてもいい成果でした。

【おことわり】画像はhttps://cmgpbpfromthebunker.files.wordpress.com/にリンクして表示させて頂いています。

(April 07, 2011)


ディヴォットを取る練習 [divot]

私は長年ボールを直接打つスウィングをして来ました。数年前にBobby Clampett(ボビィ・クランペット)の『インパクトの研究』を読んで、ディヴォットを取ることの重要性は認識しながらも、習い性となった打ち方はそう簡単に変えられませんでした。

しかしある時、ダフると盛大にディヴォットを取っていることに気づきました。「なあんだ!おれってディヴォットを取ってたんじゃないか!」と思いました:-)。ディヴォットを取らない打ち方をしているというのは単なる思い込みでした。ダフってディヴォットを取るのなら、普通のアイアン・ショットでディヴォットを取っていけない理由はありません。

ボールの前方(ターゲット側)でディヴォットを取れば、トップを防止出来るだけでなく、ボールはロフト通りの正しい軌道で舞い上がり、方向性も抜群に良くなります。その際、《下半身主導のスウィング》(左膝でダウンスウィングを開始)をするのは云うまでもありません。

私が通っている市営ゴルフ場は、以前練習ボールを盗む馬鹿者がいたため、もうボールの貸し出しをしておらず、練習場はゴルファーが自分のボールを打って自分で拾う「打ちっ放さない練習場」となっています。私は草の上に十個ほどのボールを並べ、ボール位置を示すためにクラブ清掃用ブラシを配置し、一発打つ毎にディヴォット跡を点検し始めました。以前はボールの右かボールの下の地面が掘られるインパクトでしたが、練習の甲斐あってディヴォット跡はボールのターゲット側へと移動しました。

まだ完璧に打てていませんので飛距離は一定せず、ボールの飛距離はターゲットを中心に5ヤードほど前後しています。よく打てた時は以前より5ヤード増という感じですが、平均すれば以前とそう変わりません。飛距離よりも、方向性が抜群なのが取り柄です。

一発毎にボール位置を示すブラシを動かさないといけませんが、ディヴォットを取ると否応無くフェースを清掃しなければならないので、一石二鳥のアイデアだと思っています。

(April 11, 2011)


無視しちゃならないパターのロフト

'Why putter loft matters'
by E. Michael Johnson ('Golf Digest,' February 2011)

「認めなさい。あなたはドライヴァーのロフトには関心があるが、パターのロフトには無関心であることを。どんなパターにもロフトがある。標準は3〜4度だが、2度のパターもある【編註:Guerin Rife(ゲリン・ライフ)という会社の'Two Bar Putter'はロフト1度ですが、「バックスピンを生むことなく平均4度ロフトのパターによくあるボールのジャンプや滑走を無くすことに成功している」というのが謳い文句】

どれだけのロフトが必要かは、あなたのストローク法によって決定される。フォワードプレスを行なうゴルファーは、ボールを地面に埋め込むことを防ぐためにかなりのロフトが必要だ。【編註:フォワードプレス派のDave Stockton(デイヴ・ストックトン)は「最低4度は必要」と主張する】

ボールをアッパーに打つゴルファーは、ボールの滑走を防ぐため、少ないロフトが適切である。

ボール位置も、ロフト決定に重要な関係を持つ。もしボール位置が左足の前方であるなら、ロフトは少なくてよい」

(April 15, 2011)


グリーンにおける禁止事項

'Your point of view could cost you'
by Jeff Patterson ('Golf Digest,' February 2009)

「チーム競技の場合、同じチームのメンバーはグリーン上のどの場所に立ってパートナーのパットを見ても構わない…たった一つの例外を除いて。

Rule 14-2bによれば、誰であってもプレイヤーのライン後方の延長線上に立つことは許されない。これはラインの延長線上のリーズナブルな巾の両脇も含む。【編註:ラインというものは糸のように細いものではなく、和服の帯のような太さを持っていると解釈する】これに違反した場合、パットしたプレイヤーは2ペナを課せられる。

ストロークされボールが転がり出したら、パートナーがライン後方に歩み寄ってボールを見守ることは禁止されていない。

ラインを延長したカップの向こう側に誰かが立つことは禁止されていない点に注目しよう。プレイヤーがパットするのを、パートナーがカップ側から見守るのは構わないわけだ。

ストロークの前にラインを決定する際、パートナーやチームのキャディはどこに立ってもよい。しかし、Rule 8-2bによって、ラインを示すためにグリーンの芝に触ることは許されない。クラブで触ることやマーカーを置くことも出来ない。指差すことは構わないが、タッチしてはいけない。これに違反した場合、パットしようとしたプレイヤーには2ペナが課せられる」

(April 19, 2011)


快適領域への回帰を拒否せよ

「赤ひげコーチ」Jackie Burke, Jr.(ジャッキー・バーク二世)のメンタルtip。

'It's Only a Game'
by Jackie Burke, Jr. with Guy Yocom (Gotham Books, 2006, $22.50)

「アウトをパーで廻ったハンデ10のゴルファーが、インでもその勢いを保つことはとても難しい。ある種の恐怖が忍び寄って来る。ハーフとはいえパープレイ出来たなんて何かの間違いだ…という感覚である。彼はNo.10でダボを叩くとホッとしたりする。

私が1952年にPGAツァーで四連勝した時、Otey Crisman(オテイ・クリスマン)製作のパターによって驚くべきフィーリングを得ていた。二勝目を挙げた時、私はこの好調を持続出来ないだろうという一寸した疑念が忍び寄って来るのを感じた。同時に、もし私がその想念を受け入れたら、私の好調がストップすることも知っていた。私はそうした想念が私の可能性に蓋をするのに怒りを感じた。

あなたは快適領域に戻ろうとする意識を無視する術(すべ)を学ぶべきである。最初のステップは、快適領域への回帰を模索する心理が普遍的なものであり、それがあなたから何かを奪うものであることを認識することだ。

その後は、どんな方法であれ、快適領域への回帰を図ろうとする心理に対し、メンタルに対抗するテクニックを用いるべきだ。場合によっては意思の力が必要である。私の場合、私のクラブは私が勝ち続けていることを知らず、私のパターは私がかなりの数のロング・パットを成功させていることを知らないと感じることだった。クラブやパターは、私が次のショットをどう打つかとは全く無関係であることを知ったのだ」

[icon]

Tom Kite(トム・カイト)の次の言葉も役に立つでしょう。

「あるショットの成否、勝利や敗北について心配が湧いて来たら、中国の13億の人たちを思い浮かべるべきだ。彼らはあなたの一打のことなど知っちゃいない。どうでもいいことなのだ」

自分のスコアが中国13億の人々に無関係であると感じた時、限りなく透明に近い心境になれるものです。無心になれば、快適領域もへったくれもなくなります。

(April 22, 2011)


絶対ショートしない方法

距離ぴったりのクラブでピン傍につけようとしたりするから力んでミスするのでしょう。そういう美技はプロに任せ、われわれは分相応な攻め方をすべきなのではないか?と思いました。

ピンを10ヤード越えられるクラブを選択し、クラブを短く持ちます。《クラブを1インチ(約2.5センチ)短く持つと、飛距離は10ヤード減り、約1.25センチ短く持つと5ヤード減る》という法則があります。ウッドやハイブリッドではティーアップを低めにします。長いクラブを持っているわけですから力む必要は全くありません。

「ピンを10ヤード越えるクラブを選択し、クラブを1インチ(約2.5センチ)短く持てば、距離ぴったりのショットになってしまうではないか?」…ですって?違うんです。1クラブ上げたことによってロフトが減っています。その上ティーアップを低くしたことによって、弾道は低くなり、ランが増えます。クラブを短く持つことによってコントロールが良くなります。力む必要がないのですから理想に近いスウィングが出来ます。

以上の相乗効果によってボールは正確に飛ぶことでしょう。万一トップしたとしても、ロフトの少ないクラブと低めのティーアップによって、ボールはごろんごろん転がりピン傍に駆け上がって行く…ということも期待出来ます:-)。

もちろん、ボールを高く上げてポトンと止めなくてはならない盆を伏せたようなグリーンでは、この方法は役に立ちません。受けている広いグリーンの場合に適しています。

(April 22, 2011)


努力せずにバーディを得る方法

私のコースのNo.12(パー3)は、普通は池越えの170ヤードですが、たまにゴールド・ティー(110ヤード)の数ヤード後方にマーカーが設置されることがあります。ここ数週間、その短いヤーデージが続いていました。短いのはいいのですが、ここからだともろにバンカー越えになります。どっちにしてもグリーンは砲台なので、ピタリと乗せないと斜面でショートするか、こぼれてオーヴァーになります。

昔は9番アイアンで距離はぴったりでしたが、その当時から方向は定まりませんでした。最近は力まずに打とうという方針で、長めのクラブを選ぶことにしています。それでも、ボールは右に行き、左に行き…します。手の施しようがありません。

先日、このホールに差しかかった時、ふとゴル友Mike Reekie(マイク・リーキィ)の口癖の文句が頭の中に甦りました。彼はミス・ショットの後や方向性が大事なショットになると、"Mikey, don't hit. Make a swing...Make a swing."(マイキィ、ヒットするんじゃない、スウィングするんだ。スウィングだぞ)と独り言を云います。当サイトや私のメルマガで何度も触れているように、このような際の脳は否定文の命令を理解しませんから、「ヒットするんじゃない」は脳に「ヒットする」という意識を植え付けてしまいます。しかし、その後で「スウィングするんだ。スウィングだぞ」と繰り返すことによって、脳は「ヒットする」ことを忘れ、「スウィング」に集中します。

私は、Mike Reekieの文句の無駄な前半を省き、「スウィングするんだ。スウィングだぞ」だけをティー・ショットの前に口にしました。心の中ではなく、同伴プレイヤーたちにも聞こえる音量で云ったのです。わざと聞こえるように云うのは(ベーブ・ルースのホームランの予言と同じく)一種の宣言なので、絶対に実行しなければなりません。私の力まずに「スウィング」した7番アイアンのショットはスムーズに振り抜かれ、ピンのやや左に適切な軌道で飛んで行きました。同伴プレイヤーたちが賛嘆の声を挙げました。

グリーンに行ってみると、ボールはピンから5メートル以上離れていました。バーディが期待出来る距離ではありません。この日、私のパットは悪くはなかったものの、バーディ・チャンスを三回も逃していました。キャプテンのJack(ジャック)が、"Make it, Eiji."(入れちまえ、エイジ)と云いました。私は"My putt is getting closer and closer."(カップにどんどん近づいてるからね【ひょっとするとひょっとするかも…の意】)と応じました。

私はバーディ達成に意気込むのではなく、Jackie Burke, Jr.(ジャッキー・バーク二世)の「カップを頭から追い出せ。ストロークすることに集中し、ボールをラインに沿って転がすことだけ考えよ」を実践することにしました。欲張らず、失敗を恐れる気もなくストローク。ボールは真っ直ぐカップに向かいましたが、右の縁で停止しました。「あーっ!」と私が悲痛な声を挙げたその瞬間、ボールはポトンと落下しました。

ティー・ショットを「ピン傍に!」などと力まず、無理矢理真っ直ぐ飛ばそうともせず、只々いいスウィングをすることに専念しただけでした。パットも「入れなきゃ!」と必死の形相になるのではなく、「パーでも文句はない」と虚心にストロークしただけでした。

これが、努力せずにバーディを得る方法です:-)。

(April 30, 2011)


常識の壁を打ち破れ

スポーツ心理学者Dr. Joe Parent(ジョー・ペアレント博士)が勧める発想の転換。

'Golf: The Art of the Mental Game —100 Classic Golf Tips'
by Dr. Joseph Parent (Universe Publishing, 2009, $24.95)

「普通、われわれは憶測と迷信の域を越えることが出来ない。

パー4とパー5のティー・ショットでは必ずドライヴァーを使うべしというルールがあるだろうか?グリーンには必ずパーオンしなければならないというルールもあるだろうか?

ものごとを異なる角度で見ることによって選択肢を劇的に増やし、もっと創造的なゴルフをするべきである。Tom Watson(トム・ワトスン)は『パー3で刻むのは勇気が要ることだ。しかし、状況によっては、それは賢い選択だろう』と云った。1959年にWinged Foot G.C.で行なわれたU.S.オープンに優勝したBilly Casper(ビリィ・キャスパー)は、220ヤードのパー3で、四日間ともグリーン手前に刻んで他の同僚プロたちを当惑させたが、毎回パーで次のホールへと向かったのだった」

(May 22, 2011、改訂June 04, 2015)


サンドウェッジ誕生秘話

Gene Sarazen(ジーン・サラゼン、1902〜1999)はメイジャー優勝七回(生涯グランドスラム達成者)、PGAツァーで計39勝を挙げ、1935年のThe Mastersにおけるアルバトロスや、サンドウェッジの発明・開発者としても有名です。

'Sarazen says'
by Gene Sarazen ('Golf Magazine's Pro Pointers and Stroke Savers'
edited by Charles Price, Harper & Brothers, 1959)

「『必要は発明の母』と云う。30年前、私がサンドウェッジを発明したのも必要に迫られてのことである。

1931年、私は全英オープンやU.S. Openに優勝しようと努力していたが、いつもある悲惨なショットのためにしくじっていた。何を隠そう、それはバンカー脱出の失敗で、ダボ(かそれ以上)を叩くことが原因に他ならなかった。それを改善するには、何か思い切った手段が必要だったが、不思議なことにその『何か』は、私のフロリダ州での自家用機操縦レッスンの最中に出現した。

私は飛行機を上下させる時の水平尾翼の動きを見ていた。私は、『niblick(ニブリック、9番アイアンの昔の呼称)に水平尾翼があったら、バンカー脱出に役立つだろう』と考えていた。クラブにフランジ(突縁)をつけたらロフト通りに働くだろうと思い、飛行機が着陸するのが待ち遠しかった。クラブヘッドを砂に落すとボールを上げるクラブが作りたかったのだ。パイロットが離陸したい時、彼は水平尾翼を上げず、逆に下げる。だから、私もniblickのソールの“水平尾翼”を下げようと思った。niblickのソールが砂と接触するとクラブフェースが砂の中から浮上するようにしたかったのである。

私はホームタウンにある工作所で、余分のロフトを増やしたniblickの底部に、分厚いハンダの塊をくっつけた。我が家の後ろにあるゴルフ場は素晴らしいバンカーを備えていた。私はそこで毎週何千回もこのsand-iron(サンド・アイアン)を打った。それが完璧になるまで、工作所での調整とバンカーでの練習を繰り返した。私はどんなライであれ、バンカーからピンの3メートル傍に寄せられる自信を得ることが出来た。sand-ironの誕生であった。

私はそのクラブが画期的なものであることを自覚していたので、誰かに見せることを恐れた。私はそのクラブをバッグにしまう時、ヘッドを下にして入れるようにし、夜は家に持って帰った。

 

そのクラブのテスト成功は翌1932年の全英オープンでの優勝に繋がり、その直後のU.S. Open優勝(二度目)をももたらしてくれた。バンカーから二打でホールアウト出来なかったケースなどなかったと記憶している。煎じ詰めれば、私はこのsand-ironによって二つのオープンに優勝出来たのだ。

このクラブの扱い方だが、他のアイアンのように用いてはならない。両手で振り上げ、ボールの背後にヘッドを落す。クラブヘッドはターゲット・ラインの外側に引かれ、ボールの背後にバチンと落ちるのだ。木を刻む時の斧の動きとは全く違う。

スウィングの間中、手首は折れずにアドレス時の角度を保つこと。もし手首を折ると、トップするかボールのかなり手前を打って、ダボという大惨事をもたらす。このクラブは、そういう大惨事を防ぐために設計されたものだ」

【参照】「Gene Sarazen(ジーン・サラゼン)の娘が語るサンドウェッジ秘話」(tips_160.html)

(June 02, 2011、改訂June 03, 2015)


決断を変えるな

スウェーデン出身のメンタル・コーチPia Nilsson(ピア・ニルソン)は、Annika Sorenstam(アニカ・ソレンスタム)に「全てのホールをバーディで廻る」という'Vision54'を植え付けた女性。彼女がアメリカ人女性インストラクターLynn Marriott(リン・マリオット)と組んで'GOLF54'というゴルフ・スクールをアリゾナ州に開設しました。二人の共著の最初に出て来るアイデアが、「二つのボックス」という概念です。これはその続編。

[Pia]

'Every shot must have a purpose'
by Pia Nilsson and Lynn Marriott with Ron Sirak (Gotham Books, 2005, $22.50)

「ちょっと楽器をいじったことのある人なら知っていることだが、音符を連続して早く演奏するのは易しくても、ゆっくり奏でるのは難しい。早く演奏する時は、身体を動かすのに忙しくて考える暇がないため、心の出る幕がないように見える。音符をゆっくり奏でる場合、演奏家はあまりにも自意識過剰になり、リズムとフィーリングを失いがちになる。情熱とフィーリングを伴ってゆっくり演奏出来るのは、真に才能のあるミュージシャンである。ゴルファーもホールに近づくにつれ巧くプレイ出来るのは、真に才能のある人だけだ。

フル・スウィングは、早い楽曲のように流れるような激しさで展開するので、心がちょっかいを出す暇はない。ゴルフはホールに近づくほど難しさを増す。何故なら、成功への期待度に比例して緊張が高まるからだ。最も難しいパットは、あなたが“成功させて当然”と思われるパットをする時と云える。

パッティングほど『思考ボックス』【註】で出した結論の確信を失わせるものは他にない。ボールの後ろに立ってラインと強さを決定した後、ボールにアドレスするとラインが違うように見え、急遽狙いを変更したことが何度もあるでしょう。

『思考ボックス』で判断したラインは正しいのです。『実行ボックス』において傾けた目で見たものを信じてはいけない。

スウィングにはソフトな両手が必要だが、パッティングにはスローな目が必要だ。さり気なく穏やかにその場を眺め(素早い目と疾走するような心でなく)、ストロークのリズムを感じるように」

【註】「二つのボックス」(tips_101.html)

【おことわり】画像はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。

(June 02, 2011)


ラウンド前夜のセックス

私のメルマガの「ラウンド前夜の心得」で、男性のセックスはゴルフに悪影響があると書きました。

ジャズ・トランペッターの大御所マイルス・デイヴィスは「イっちゃいけない。イクことは男のエネルギーを全て失うことだ。仕事の前にイっちゃったら何も残ってないよ」と断言していることを紹介しましたが、その傍証が得られました。下記ページを御覧下さい。

http://www.e-909.com/archives/267/

あるスポーツ整体師が、「射精すると新しい精子を作る必要が出るので副腎皮質が活発になり、それをカバーしようと体のエネルギーが消費される。結果、疲労につながる」と述べています。つまり、身体的運動がいけないのではなく、身体内部の生成・補充作業が疲労の原因になるのです。ラウンド前に疲れてしまってはいけませんよね。

(June 13, 2011)


最新科学研究成果応用の練習法

私のメルマガの「身体を鍛えて上手くなる」で紹介した'The Swing Reaction System'(私の命名は「生体力学的鍛錬ヴィデオ」)は、ワシントン大で理学療法と整形外科療法を修めたNeil Chasan(ニール・チャザン)によって開発されたプログラムですが、これは「一日おきに行なうこと」とされています。中日(なかび)は筋肉組織を安定させ、翌日の鍛錬に備える日なのです。

2010年6月15日のYomiuri onlineは「体で覚えるなら休憩が大事…脳の仕組みを解明」というニュースを報じました。理化学研究所のサイト「理研ニュース」(http://www.riken.jp/~/media/riken/pr/publications/news/2010/rn201006.pdf)に詳細な説明が載っています。

「小脳皮質の短期記憶は、どのような仕組みで前庭核や小脳核へ移動して長期記憶となるのか。永雄総一チーム・リーダーたちは最近、重要な事実を発見した。『動物に運動を記憶させる実験で、例えば練習を1時間行う場合、連続して練習するのではなく、例えば15分ずつ4回に分け、その間に30分くらいのインターバルを置くと、とても効率よく長期記憶への移動が進みます。そして、インターバルの期間に小脳皮質の働きを止めると、いくら練習を行っても長期記憶が形成されないことを発見しました』 これは、長期記憶の形成には、運動をしているときではなく、運動をしていないときの小脳皮質の活動が重要なことを示している」

奇しくも、筋肉鍛錬同様、休憩の間に人間の身体の中で定着作用が起るわけです。Nancy Lopez(ナンシーロペス)の証言。「Ben Hogan(ベン・ホーガン)ほどの練習魔はいない。しかし、彼には秘密があった。彼はたった25個のボールしか練習場へ持って行かなかったのだ。25個打ち終えると休憩して、キャディがボールを集めるのを待った。Mr. Hoganが云うには、『ボールが25個以上あると、あまりに数多く急速に打ってしまい、何のために練習しているのか考える時間も無くなってしまう』」 Ben Hoganは脳の研究などとは無関係だったものの、科学的に正しい練習法を本能的に行なっていたことになります。

理化学研究所の永雄チーム・リーダーは、上達の秘訣について次のように述べています。

「インターバルを入れた練習を毎日繰り返すことです。一流のスポーツ選手や演奏家は、運動の短期記憶や長期記憶の形成の効率が普通の人よりも勝っているのでしょう。しかし繰り返し練習しなければ運動の記憶は作られません。しかも運動の精緻な情報は長期記憶になりにくいことを考えると、天才といわれる人であっても日々の努力の積み重ねは必要な筈です」

 

この研究成果は「なぜゴルフtipsが身体に定着しないか?」という疑問に答えるものではないでしょうか?われわれはゴルフtipを頭で理解し、コースで実践して成功したりしますが、それが長期的運動記憶となる前に(そのtipは身についたものと決め込み)関心は他のtipへと移ってしまいます。演奏家があるパッセージを何度も何度も繰り返し練習するようには練習しない。一旦成功はしたものの、そのtipは長期記憶とはなっていないので、実際には小脳皮質の短期記憶は新しいtipを蓄えてしまい、最初のtipは消去され忘れ去られる。多分、こういうシナリオなのでしょう。

【参考】
・「休憩が練習の鍵」(tips_142.html)
・「生体力学的鍛錬ヴィデオ」(tips_50.html)
・「練習に熱中せずに休憩せよ」(tips_160.html)

(June 16, 2011、増補April 19, 2015)


抜群のパッティング・ドリル

この記事の筆者Dr. Dede Owens(デディ・オーウェンス博士、1946〜1999)は、元LPGAツァー・プロで、後にインストラクターとして活躍した女性。

'Golf (Steps to Success)'
by Dede Owens, EdD and Linda K. Bunker, PhD (Human Kinetica, 1999, $15.95)

[ladder]

・梯子ドリル

「スタート地点から3メートル離れた場所にクラブを一本置き、そこから1メートルおきに四本のクラブを揃えて置く(3、4、5、6、7メートルの計五本)。パットのスタート地点から見ると、寝せたクラブは梯子(はしご)のように並んで見える。

特にターゲットを設けたりせず(方向はほとんど無視)、距離だけに専念する。例えば、『5メートルと6メートルの間にボールを届ける』と決めて、その通りに打てるように練習する」

ラウンドの場合、いくら方向が正確でも1センチでもショートすればパーにもバーディにもなりません。方向については、ボールに引いた線をターゲット・ラインに合わせ、それに身体を揃えることで準備完了とし、後はボールをカップに届かせることに集中すべきです。それには、この梯子型ドリルはとても効果的です。自分の距離感の善し悪しがハッキリ判ります。

「・全員集合ドリル

三個のボールを用いる。このドリルでは、最後のボールを打ち終わる迄顔を上げてはならない。最初のボールをあなたの周辺視野の外に出る距離にパットする(目の隅に見えるようでは駄目)。結果を見ないこと。自分が最初のボールをどの程度の距離に打ったのかを見ずに、全部のボールが団子になるように残りの二つのボールをパットする。これは、何度もムラなく繰り返せるストロークを身につけさせてくれる」

このドリルも距離感養成に役立ちます。自分が決定したストロークの強さは一定でなくてはならず、打つ度にころころ変わってはいけないわけです。強さを変えて、このドリルを何度も繰り返します。

(June 19, 2011)


サラゼンの秘密

Gene Sarazen(ジーン・サラゼン、1902〜1999)はメイジャー優勝七回(生涯グランドスラム達成者)、PGAツァーで計39勝を挙げ、1935年のThe Mastersにおけるアルバトロスや、サンドウェッジの発明・開発者としても有名です。

'Sarazen says'
by Gene Sarazen ('Golf Magazine's Pro Pointers and Stroke Savers'
edited by Charles Price, Harper & Brothers, 1959)

「私は1920年に初めてU.S. Openに参加した。37年後、私はPGAシニア選手権で65で廻った。私が1922年のU.S. Openで優勝した時のトータル・スコアは288。38年後の1958年にPGAシニア選手権に優勝した時のスコアも288だった。以上の事実は、私が長期にわたってゴルフのレヴェル維持に成功している証しと云ってよいと思う。

私がほぼ40年以前と同じ程度にプレイ出来る理由は、何十年も意識的に努力し維持している"hand action"(ハンド・アクション=手の動き)にある。ハンド・アクションは金で買えるものではないし、教わることも出来ない。ゴルフ入門の初期から自分で開発しなければならないものであり、その維持に務めなくてはならないものでもある。それは加齢とともに失う最初のものだ。ツァー・プロでさえ40歳を過ぎると、手のスナップ力の衰えに気づく。

偉大なゴルファーの全てが最高のハンド・アクションを身につけている。それはトーナメントで強みを発揮するスウィングに不可欠な要素の一つだ。偉大なゴルファーの全てが若い時にハンド・アクションを開発した。彼らはキャディとして働きながら、メンバーである大人の重いクラブでスウィングしながらリズムを身につけた。重いクラブヘッドを扱うには、大人のゴルファーよりも手を活用しなくてはならない。彼らが体力的に成熟するまでには(何年も重いクラブでスウィングしたことによって)強健なハンド・アクションが身体に滲み込んでいた。

偶然だが、数年前私はこのハンド・アクションを維持する方法を見つけた。私はプロ野球選手Ty Cobb(タイ・カッブ)のファンなのだが、彼は鉛を詰めたバットを振ってシャープなバッティングを維持していると私に語ってくれた。私はその方法がゴルフに役立たない理由はないと思い、古いドライヴァーのヘッドに230グラムの鉛を詰め、計624グラムにした。それ以来、私は毎日それを振っている。この練習が私のゴルフ・レヴェル保全の最も重要な要素であることは疑いもなく、誰にでも心から推薦する次第だ。一日に十回振り、その後25回振れるようになるまで努力する。この方法は手の強化に役立つだけでなく、ワンピース・スウィングをも身につけさせてくれる。そのヘッドの重さだとスウィングする以外のどんな方法をも許してくれないからだ」

(June 30, 2011)


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